JP2005307448A - プレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法 - Google Patents

プレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 解体時の粉塵や騒音を低減するとともに環境に与える影響も低減することができ、コストダウンを図ることができるプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 鉄骨梁2の間に架設されるプレキャストスラブ1であって、鉄骨梁2の間に架け渡され、鉄骨梁2のフランジ2a又はフランジ2aに接合された張出板の上方に位置する箇所に穴12が形成されたプレキャスト版部材3と、穴12内に充填された充填材5と、充填材5内に上端部が定着され、下端部がフランジ2a又は張出板に形成された貫通孔に挿通されるとともに締結手段15によって締結される連結部材6とが備えられている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鉄骨梁間に架設されるプレキャストスラブと、その設置方法と、その解体方法に関する。
一般に、鉄骨構造の建造物を建設するとき、建造物のスラブは、組み立てられた鉄骨梁の間にデッキプレートを敷設して該デッキプレートの上にコンクリートを打設するデッキスラブ工法によって形成される場合が多い。この工法の場合、鉄骨梁のフランジ上面にスタッドボルトなどを溶接し、鉄骨梁とスラブのコンクリート部分との合成効果を増大させて鉄骨梁とスラブとを一体化させる。
また、近年では、プレキャストスラブ部材を用いて鉄骨構造建造物のスラブを形成するプレキャストスラブ工法が提供されている。この工法は、予め工場等で製造されたプレキャストスラブ部材を鉄骨梁間に架け渡してプレキャストスラブ部材と鉄骨梁とを剛接合し、プレキャストスラブ部材からなるプレキャストスラブを鉄骨梁間に形成する方法である。従来、プレキャストスラブ部材と鉄骨梁とを接合する構造としては、鉄骨梁のフランジ上面に溶接されたスタッドボルトをプレキャストスラブ部材の端部に形成された穴内に嵌入させ、この穴内に無収縮モルタルを充填して固定する構造がある(例えば、特許文献1参照。)。
特開平9−32171号公報
しかしながら、上記した従来のデッキスラブや従来の接合構造を備えるプレキャストスラブでは、建造物を解体する際、解体用重機等を用いてスラブや鉄骨梁に損傷を与えて行うため、解体時に粉塵や騒音が発生するという問題がある。また、解体時には、解体用重機に加えて、粉塵の拡散防止や騒音防止のための防音・防塵パネルなどの仮設設備が必要であるため、施工費用が嵩むという問題がある。さらに、解体後には多量の産業廃棄物が残るため、環境に与える影響も大きいとともに廃棄物処分に相当の費用がかかるという問題がある。
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、解体時の粉塵や騒音を低減するとともに環境に与える影響も低減することができ、さらにコストダウンを図ることができるプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法を提供することを目的としている。
請求項1記載の発明は、鉄骨梁の間に架設されるプレキャストスラブであって、前記鉄骨梁の間に架け渡され、該鉄骨梁のフランジ又は該フランジに接合された張出板の上方に位置する箇所に穴が形成されたプレキャスト版部材と、該穴内に充填された充填材と、該充填材内に上端部が定着され、下端部が前記フランジ又は前記張出板に形成された貫通孔に挿通されるとともに締結手段によって締結される連結部材とが備えられていることを特徴としている。
このような特徴により、締結手段を外して穴から充填材と連結部材とを撤去することでプレキャスト版部材と鉄骨梁とは分離される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のプレキャストスラブにおいて、前記プレキャスト版部材には管部材が埋設され、該管部材によって前記穴が形成されていることを特徴としている。
このような特徴により、内周面が平滑であって充填材を容易に抜き取ることができる穴が形成される。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のプレキャストスラブにおいて、前記管部材には、前記プレキャスト版部材内に定着する定着部材が接合されていることを特徴としている。
このような特徴により、プレキャスト版部材内に埋設された管部材のプレキャスト版部材に対する引き抜き抵抗が向上する。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のプレキャストスラブにおいて、前記プレキャスト版部材内には、前記穴の周りの該プレキャスト版部材を補強する補強筋が配筋されている。
このような特徴により、地震時における床の慣性力や架構間のせん断力の差が床面内せん断力として作用して大きな応力が発生する穴の周りのプレキャスト版部材は、補強筋によって補強される。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のプレキャストスラブの設置方法において、前記締結手段によって前記連結部材を前記フランジ又は前記張出板に締結する工程と、前記連結部材の上端部が前記管部材内に配置されるように、前記管部材が埋設された前記プレキャスト版部材を前記鉄骨梁間に架け渡す工程と、前記管部材内に前記充填材を充填する工程とを備えることを特徴としている。
このような特徴により、プレキャストスラブを鉄骨梁間に組み立てる際、プレキャスト版部材と鉄骨梁とは容易に剛接合される。
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のプレキャストスラブの解体方法において、前記フランジ又は前記張出板に前記連結部材を締結させている前記締結手段を取り外す工程と、前記連結部材と一体に形成された前記充填材を前記管部材内から抜き取る工程とを備えることを特徴としている。
このような特徴により、プレキャスト版部材や鉄骨梁に損傷を与えずにプレキャスト版部材と鉄骨梁とは分離される。
本発明に係るプレキャストスラブおよびその解体方法によれば、プレキャストスラブには、穴が形成されたプレキャスト版部材と、穴内に充填された充填材と、上端部が充填材内に定着されて下端部が締結手段によって締結される連結部材とが備えられており、締結手段を外す工程と、穴から充填材と連結部材とを抜き取る工程とによってプレキャストスラブは解体されるため、プレキャスト版部材や鉄骨梁に損傷を与えずにプレキャスト版部材と鉄骨梁とは分離され、粉塵や騒音の発生を低減することなく解体することができる。これによって、解体時の仮設設備に防音・防塵パネルなどを使用する必要はなく、コストダウンを図ることができる。また、解体後のプレキャスト版部材や鉄骨梁は損傷しないため、これらを再利用することで解体による産業廃棄物量を著しく低減することができ、環境に与える影響と廃棄物処理費用とを低減することができる。
また、本発明に係るプレキャストスラブの設置方法によれば、締結手段によって連結部材を鉄骨梁に締結する工程と、プレキャスト版部材を鉄骨梁間に架け渡す工程と、管部材内に充填材を充填する工程とによって鉄骨梁間にプレキャストスラブが形成されるため、プレキャスト版部材と鉄骨梁とは容易に剛接合され、プレキャストスラブの組立時の作業を軽減することができる。
以下、本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態におけるプレキャストスラブ1の構成について説明する。
図1はプレキャストスラブ1を表す断面図である。図1に示すように、プレキャストスラブ1は、間隔をあけて平行に並設された鉄骨梁2の間に架設されており、鉄骨梁2の間に架け渡されて四隅に管部材4が埋設されたプレキャスト版部材3と、管部材4内に充填された充填材5と、上端部が充填材5内に定着されて下端部が鉄骨梁2の上側フランジ2aに締結されている連結部材6とから構成されている。
図2はプレキャスト版部材3の平面図であり、図3は図2に示すA−A間の断面図である。図1,図2,図3に示すように、プレキャスト版部材3は、鉄筋コンクリート造からなるものであり、長方形に成形されたコンクリート部7と、コンクリート部7内に全体的に埋設された鉄筋材8と、四隅に埋設された管部材4とから構成されている。鉄筋材8には、主筋及び配力筋を上下2段に格子状に配筋したスラブ筋9と、2段のスラブ筋9の端部に被せられるU字端部筋10と、プレキャスト版部材3の外周に沿って2段に配筋された周辺筋11とがある。スラブ筋9の四隅部分の配筋ピッチは、その他の中間部分のよりも短く配筋されている。
管部材4は、鉛直方向に延在する断面形状正方形の筒状のものであり、管部材4の上下端面はプレキャスト版部材3の上面3a及び底面3bに対してそれぞれ面一に形成され、四隅に埋設された管部材4によってプレキャスト版部材3は鉄骨梁2のフランジ2aの上方に位置する箇所にプレキャスト版部材3の上下に貫通する穴12が形成される。管部材4は鉄筋材8の外側に配置されており、管部材4の4つの側面のうち2つの側面4aがコンクリート部7に接合され、残りの側面はコンクリート部7の端面と面一に形成されて露出されている。管部材4のコンクリート部7に接する2つの側面4aはそれぞれ若干傾斜されており、管部材4は上部の内径が下部の内径よりも大きい楔形に形成されている。
また、2つの管部材4の側面4aには、棒鋼等からなる定着部材13が各上下2段でそれぞれ溶接接合されている。定着部材13は、一端部が他端部よりも短くなるようにく字状に屈曲されており、一端部は管部材4の側面4aに沿って水平に配置されて側面4aに両側溶接され、他端はスラブ筋9(主筋または配力筋のうちのいずれか一方)に対して斜め45度の方向に延在してコンクリート部7内に定着されている。
充填材5は、管部材4(穴12)の上端面まで充填されており、プレキャスト版部材3の上面3aに対してそれぞれ面一に形成されている。充填材5は、例えば無収縮モルタルなどからなるものであり、充填する際は流動性に優れて穴12内に満遍無く充填される液体状のものであり、固化後は所定強度を有する楔形状の固体状のものである。固化後の充填材5と管部材4の内周面とは所定の摩擦力によって接合されている。
図4はプレキャスト版部材3と鉄骨梁2との接合部の拡大断面図である。図4に示すように、連結部材6は、上端に頭部(ナット)が付いた長尺のボルトからなり、連結部材6の下端部は鉄骨梁2の上側フランジ2aに形成された貫通孔14内に挿通されるとともに締結手段15によって鉄骨梁2の上側フランジ2aに締結されている。締結手段15は、上側フランジ2aの上方に配置されて連結部材6に螺合された上側ナット16及び上側座金17と、上側フランジ2aの下方に配置されて連結部材6に螺合された下側ナット18及び下側座金19とから構成されている。上側ナット16及び上側座金17は充填材5内に埋設されており、充填材5,連結部材6,上側ナット16及び上側座金17は一体に形成されている。下側ナット18及び下側座金19は、下側ナット18を回転させることで取り外すことができるものであり、下側ナット18は所定の締結力で締結されている。
次に上記した構成からなるプレキャストスラブ1の設置方法について説明する。
まず、工場等でプレキャスト版部材3を製造する工程を行う。具体的には、図5に示すように、平滑な表面を有する底型枠20を水平に設置し、底型枠20の上に側型枠21を建て込む。底型枠20は、コンクリートにより変質や変形しない材質からそれぞれなり、コンクリートとの剥離が容易なものを使用する。次に、底型枠20上に図2,図3に示す鉄筋材8を配筋するとともに、四隅に管部材4をセットする。このとき、図2,図3に示すスラブ筋9は上筋と下筋とを上下反対に配筋するとともに、管部材4は大口径側を下にして配置し、底型枠20側がプレキャスト版部材3の上面3aになるように組み立てる。また、コンクリート打設時に、管部材4が押し流されないように固定するとともに、管部材4の中にコンクリートが入らないように小口径側の端部に蓋をする。また、管部材4の側面4aには、定着部材13を予め溶接しておく。次に、型枠20,21内にフレッシュコンクリートを打設し、コンクリート部7が所定の厚さになるように均す。このとき、打設されたコンクリートの上面を鏝押えする必要はない。その後、所定の養生期間をおいて、底型枠20及び側型枠21を脱型する。なお、底型枠20に換えて平滑なベッドを使用してもよい。
一方、現場では、図4に示すように、鉄骨建て方前或いは後に、締結手段15によって連結部材6を鉄骨梁2の上側フランジ2aに締結する工程を行う。具体的には、中間部に上側ナット16が螺合されているとともに上側座金17が嵌装された連結部材6を、上側フランジ2aにあけられた貫通孔14内に上側フランジ2aの上方から挿入する。そして、貫通孔14内を挿通して上側フランジ2aの下方に突出した連結部材6の下端部に下側ナット18及び下側座金19を取り付け、下側ナット18を締め付けることで上側ナット16と下側ナット18とで上側フランジ2aを挟み込み、連結部材6を固定する。
次に、図6に示すように、製造されたプレキャスト版部材3を現場に搬入し、プレキャスト版部材3を組み立てられた鉄骨梁2間に架け渡す工程を行う。具体的には、型枠20,21を脱型した後、クレーン等で吊るし上げ、底型枠20側が上にくるようにプレキャスト版部材3を反転させる。コンクリート打設時には下側であった面がプレキャスト版部材3の上面となるため、鏝仕上げ作業を行うことなく平滑な上面3aを形成することができる。次に、現場でプレキャスト版部材3をクレーン等で吊り上げて鉄骨梁2間に架け渡す。このとき、鉄骨梁2の上側フランジ2aに締結された連結部材6の上端部がプレキャスト版部材3に埋設された管部材4内に配置されるように、プレキャスト版部材3の位置合わせを行い、連結部材6と管部材4とが上下で対向したところでプレキャスト版部材3を真直ぐ下方に降ろす。
次に、図1に示すように、管部材4(穴12)内に充填材5を充填する工程を行う。具体的には、液状にした充填材5をプレキャスト版部材3の上面3aと面一になるところまで穴12内に流し込む。そして、養生期間をおいて充填材5を固化させて連結部材6の上端部を充填材5内に定着させる。
充填材5の固化することでプレキャスト版部材3と鉄骨梁2とは剛接合され、プレキャストスラブ1の組立工程は完了する。
次に、上記した構成からなるプレキャストスラブ1の解体方法について説明する。
まず、図4に示すように、連結部材6を鉄骨梁2の上側フランジ2aに締結している締結手段15を取り外す工程を行う。具体的には、上側フランジ2aの下方で締め付けられている下側ナット18を図示せぬ工具を用いて回転させて緩める。そして、連結部材6の下端部から下側ナット18及び下側座金19をそれぞれ撤去する。
次に、図1に示すように、連結部材6と一体に形成された充填材5を管部材4内から抜き取る工程を行う。具体的には、下側ナット18及び下側座金19が外された連結部材6の下端部に対して図示せぬ金槌等で鉛直上方に打撃を与える。連結部材6が上方に押しあげられると、貫通孔14に挿通された連結部材6は貫通孔14内から抜け出て、楔形状で固化した管部材4内の充填材5は連結部材6と一体状態のまま上方に飛び出す。このとき、充填材5内に埋設された上側ナット16及び上側座金17は充填材5と一緒に取り除かれる。
最後に、充填材5と連結部材6とが取り除かれたプレキャスト版部材3をクレーン等で吊り上げ、鉄骨梁2間からプレキャスト版部材3を撤去する。これで、プレキャストスラブ1の解体は完了する。
上記した構成からなるプレキャストスラブ1およびその解体方法によれば、プレキャスト版部材3や鉄骨梁2に損傷を与えずにプレキャスト版部材3と鉄骨梁2とは分離されるため、解体作業時の粉塵や騒音の発生を低減することができる。これによって、解体時の仮設設備に防音・防塵パネルなどを使用する必要はなく、解体工事のコストダウンを図ることができる。また、解体されたプレキャスト版部材3や鉄骨梁2には損傷がないため、再利用することができる。これによって、解体時に発生する産業廃棄物は著しく低減することができ、環境への影響を低減することができるとともに、廃棄物処理費用を低減しコストダウンを図ることができる。
また、穴12の内周面が荒れていると、穴12の内周面と固化した充填材5との間に必要以上の摩擦力が発生し、解体時に穴12内から固化した充填材5が抜き出せないことも想定されるが、上記した構成からなるプレキャストスラブ1には、プレキャスト版部材3には管部材4が埋設され、管部材4によって穴12が形成されているため、内周面が平滑な穴12が形成される。これによって、穴12内の固化した充填材5を確実に抜き取ることができる。
また、管部材4には、プレキャスト版部材3内に定着する定着部材13が接合されているため、プレキャスト版部材3内に埋設された管部材4の引き抜き抵抗が向上する。これによって、管部材4とプレキャスト版部材3とは強固に一体化され、連結部材6に打撃を与えて管部材4内から固化した充填材5を抜き取る際に充填材5とともに管部材4がプレキャスト版部材3内から抜け出ることを防止することができる。
また、上記した構成からなるプレキャストスラブ1の設置方法によれば、プレキャスト版部材3と鉄骨梁2とは容易に剛接合され、プレキャストスラブ1の組立時の作業を軽減することができる。これによって、プレキャストスラブ1を用いた構造物の構築工事の工期短縮を図ることができる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態におけるプレキャストスラブ50の構成について説明する。
図7はプレキャスト版部材51の平面図であり、図8は図7に示すB−B間の断面図である。図7,図8に示すように、プレキャスト版部材51には、穴60を形成するための断面形状円形の管部材53が埋設されている。管部材53は、上方に向かって径が大きくなる楔形状のものであり、プレキャスト版部材51の鉄筋材54の内側に配置され、管部材53の外周面がプレキャスト版部材51のコンクリート部55に接合されている。
プレキャスト版部材51には、管部材53の周りを補強するU字形状の補強筋56が埋設されている。補強筋56は、中間部が管部材53の外周面に沿って屈曲され、両端部がプレキャスト版部材51の中心位置に向かってそれぞれ延在されており、管部材53を囲むように形成されている。
図9はプレキャスト版部材51と鉄骨梁52との接合部の斜視図である。図9に示すように、鉄骨梁52の上側フランジ52aには、上側フランジ52aの側面から鉄骨梁52の内側方向に張り出されている張出板57が接合されており、張出板57と上側フランジ52aとは溶接によって強固に接合されている。張出板57には、図示せぬ貫通孔が形成されており、この貫通孔14内に連結部材58の下端部が挿通され、連結部材58は締結手段59によって張出板57に締結されている。なお、張出板57と上側フランジ52aとをボルトによって接合してもよい。
上記した構成からなるプレキャストスラブ50によれば、プレキャスト版部材51内には、管部材53の周りを補強する補強筋56が配筋されているため、地震時におけるプレキャストスラブ50の慣性力や架構間のせん断力の差が床面内せん断力として作用して大きな応力が発生する管部材53の周りのプレキャスト版部材51は、補強筋56によって補強される。これによって、鉄骨梁52に接合されるプレキャスト版部材51の接合部(管部材53の周り)の剛性及び強度を増大させることができ、プレキャストスラブ50を備える構造物全体の架構の水平面内の剛性及び強度を増大させることができる。
また、鉄骨梁52の上側フランジ52aには張出板57が接合され、該張出板57に連結部材58が取り付けられるため、鉄骨梁52の上フランジ52aに貫通孔を形成せずに連結部材58を設けることができる。
以上、本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した第1の実施の形態では、充填材5には無収縮モルタルが使用されているが、本発明は、図10に示すように、充填材100に粒状の鋼球を使用してもよい。充填材100に鋼球を使用する場合、連結部材102には頭部(ナット)が付いていないボルトを使用し、連結部材102の上端部がプレキャスト版部材103に埋設された管部材104内に配置されるように鉄骨梁101間にプレキャスト版部材103を架け渡した後、鋼球からなる充填材100を管部材104内に詰め込む。充填材100は、管部材104内一杯に入れずに8分目程度に抑えておく。そして、管部材104内に詰め込まれた充填材100の上に鋼製の蓋105を被せ、その後、連結部材102上端部にナット106を螺合させ、このナット106によって蓋105を上から締め込む。これによって、蓋105が鋼球からなる充填材100の拘束材となり、充填材100は、抜け出しや移動することがないように拘束され、連結部材102やプレキャスト版部材103へ力を伝達させることができる。また、鋼球からなる充填材100及び連結部材102は再利用することができるため、プレキャストスラブ解体後に廃棄物が発生しない。
また、上記した第1の実施の形態では、定着部材13にく字状に屈曲した棒鋼が使用されており、定着部材13の一端部は管部材4の側面4aに沿って水平に配置されて側面4aに両側溶接されているが、本発明は、図11に示すように、定着部材200の一端部を更に屈曲させて、管部材201の側面201aに沿って鉛直に配置して側面201aに両側溶接してもよい。また、本発明は、図12に示すように、管部材210の側面210aにスタッドボルトからなる定着部材211を溶接してもよい。また、上記した実施の形態では、定着部材13は上下2段で設けられているが、本発明は1段や3段であってもよい。
また、上記した第2の実施の形態では、補強筋56はU字形状に形成されているが、本発明は、L字形状の補強筋を管部材や穴廻りに配筋してもよく、プレキャスト版部材の外周に沿って配筋された周辺筋を補強筋として用いてもよい。
また、上記した第2の実施の形態では、プレキャスト版部材51に形成された穴60は管部材53によって形成されているが、本発明は、プレキャスト版部材のコンクリート部を楔形状に型抜きして穴を形成してもよく、穴の内周面が平滑になるように表面処理して充填材が抜き取り易くなるように加工してもよい。
本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するためのプレキャストスラブの断面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の平面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の断面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するための部分断面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の製造状態図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第1の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の架け渡し状態図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第2の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の平面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第2の実施の形態を説明するためのプレキャスト版部材の断面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法の第2の実施の形態を説明するための部分斜視図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法のその他の実施の形態を説明するための部分断面図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法のその他の実施の形態を説明するための部分斜視図である。 本発明に係るプレキャストスラブ、プレキャストスラブの設置方法および解体方法のその他の実施の形態を説明するための部分斜視図である。
符号の説明
2,52,101 鉄骨梁
1,50 プレキャストスラブ
2a,52a,101a 上側フランジ(フランジ)
57 張出板
12,60 穴
3,51,103 プレキャスト版部材
5,100 充填材
15,59 締結手段
6,58,102 連結部材
4,53,104,201,210 管部材
13 定着部材
56 補強筋

Claims (6)

  1. 鉄骨梁の間に架設されるプレキャストスラブであって、
    前記鉄骨梁の間に架け渡され、該鉄骨梁のフランジ又は該フランジに接合された張出板の上方に位置する箇所に穴が形成されたプレキャスト版部材と、
    該穴内に充填された充填材と、
    該充填材内に上端部が定着され、下端部が前記フランジ又は前記張出板に形成された貫通孔に挿通されるとともに締結手段によって締結される連結部材とが備えられていることを特徴とするプレキャストスラブ。
  2. 請求項1記載のプレキャストスラブにおいて、
    前記プレキャスト版部材には管部材が埋設され、該管部材によって前記穴が形成されていることを特徴とするプレキャストスラブ。
  3. 請求項2記載のプレキャストスラブにおいて、
    前記管部材には、前記プレキャスト版部材内に定着する定着部材が接合されていることを特徴とするプレキャストスラブ。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のプレキャストスラブにおいて、
    前記プレキャスト版部材内には、前記穴の周りの該プレキャスト版部材を補強する補強筋が配筋されていることを特徴とするプレキャストスラブ。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のプレキャストスラブの設置方法において、
    前記締結手段によって前記連結部材を前記フランジ又は前記張出板に締結する工程と、
    前記連結部材の上端部が前記管部材内に配置されるように、前記管部材が埋設された前記プレキャスト版部材を前記鉄骨梁間に架け渡す工程と、
    前記管部材内に前記充填材を充填する工程とを備えることを特徴とするプレキャストスラブの設置方法。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載のプレキャストスラブの解体方法において、
    前記フランジ又は前記張出板に前記連結部材を締結させている前記締結手段を取り外す工程と、
    前記連結部材と一体に形成された前記充填材を前記管部材内から抜き取る工程とを備えることを特徴とするプレキャストスラブの解体方法。

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