まず、本発明の吸水性樹脂の連続製造方法について、図面を参照しながら、簡単に説明する。
図1は、本発明の連続製造方法に用いられる連続重合装置10の概略図である。ただし、連続重合装置10は、本発明に用いられる連続重合装置の一実施形態にすぎず、図1に示す連続重合装置に、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
まず、単量体、重合開始剤および架橋剤を含む単量体水溶液が、単量体水溶液の投入口110を通じて、エンドレスベルト120上に供給される。エンドレスベルト120は可動性であり、エンドレスベルト120の移動に伴い、供給された単量体水溶液が搬送される。エンドレスベルト120上を搬送される過程で、単量体水溶液が沸騰状態で蒸発しながら、単量体が重合する。その結果、発泡した含水重合体130が生成する。含水重合体とは、単量体の重合によって形成された重合体であって、乾燥工程によって乾燥される前の重合体を意味する。含水重合体130は収縮し、エンドレスベルト120の下流側の排出口140から、連続重合装置の外部へ排出される。連続重合装置は、装置の側面150および天井面160がステンレス板などの部材で覆われている。連続重合装置には、重合反応を開始させるための紫外線照射装置170が設置されてもよい。また、含水重合体中に含まれる残存モノマーを除去するための紫外線照射装置180が設置されてもよい。本発明においては、吸水性樹脂の連続製造方法において、用いられる連続重合装置の装置構成および式1で表される装置空隙率などの重合条件が制御される。これにより、吸水特性に優れる吸水性樹脂が連続的に製造される。
本発明の連続製造方法を用いて最終的に製造される吸水性樹脂に求める特性に応じて、連続重合装置の後には、必要な工程が付加される。例えば、表面架橋された吸水性樹脂を得るのであれば、図2に示すように、乾燥工程、分級工程、表面架橋工程に、製造された含水重合体が搬送される。
図2は、連続重合装置10を用いて、単量体水溶液から表面架橋吸水性樹脂を製造する工程を説明する概略図である。連続重合装置10において製造された含水重合体は、解砕機20において、乾燥に適した大きさに解砕され、乾燥機30に搬送される。含水重合体の乾燥によって生じたベースポリマーは、分級機40に搬送される。なお、ベースポリマーとは、含水重合体の乾燥によって生じた重合体を意味する。後工程で表面架橋される場合には、表面架橋される前の重合体を意味する。所定の大きさのベースポリマーは、表面架橋装置50に搬送される。粒径が大きすぎるベースポリマーは、ロールミルなどの粉砕機60を用いて粉砕され、再度、分級機40に搬送される。粒径が小さすぎる、微粉末状のベースポリマーは、造粒機70に搬送される。ベースポリマーは、スプレー75から散布された水性液を用いて造粒され、含水重合体として、再度、解砕機20に搬送される。表面架橋装置50において、ベースポリマーを表面架橋剤を用いて表面架橋することによって、表面架橋吸水性樹脂を得る。表面架橋された吸水性樹脂は、整粒などの必要な処理を施されたのち、製品となる。ただし、本発明の連続製造方法の技術的範囲は、図2に示すような後工程が付加される実施形態に限定されない。本発明の規定に従って連続重合された含水重合体に由来した吸水性樹脂の製造方法は、少なくとも本発明の技術的範囲に属する。
続いて、本発明について、構成要件ごとに詳細に説明する。
本発明において吸水性樹脂とは、水膨潤性・水不溶性架橋重合体を意味し、水を吸収してアニオン性、ノニオン性、カチオン性、またはこれらの2種以上の性質を有するヒドロゲルを形成する架橋重合体を意味する。なお、水膨潤性とは、イオン交換水中で自重固形分に対して2倍以上、好ましくは10〜3000倍、より好ましくは50〜2000倍もの多量の水を吸収することを指す。水不溶性とは、吸水性樹脂中の未架橋の水に対する可溶分が50質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であることを意味する。可溶分の測定方法については、実施例で規定される。
単量体水溶液の投入口110は、単量体、重合開始剤および架橋剤を含む単量体水溶液を、エンドレスベルト120上に供給する部位である。
本発明で吸水性樹脂の原料として用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。単量体は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
吸水性樹脂の吸水性能やコストを考慮すると、アクリル酸および/またはその塩が単量体として用いられることが好ましい。塩の具体例としては、アクリル酸の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。コストを考慮すると、好ましくはアクリル酸のナトリウム塩が用いられる。他の単量体を含んでも良いが、アクリル酸および/またはその塩の使用量が、単量体の総モル数に対して、好ましくは70モル%以上100モル%以下、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
エンドレスベルトに供給される単量体水溶液における、単量体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは45質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは55質量%以上である。単量体の濃度を高めることによって、吸水性樹脂の生産性が向上する。本発明においては、高濃度の単量体水溶液を用いて、重合反応を進行させうる。従来の連続重合のように、重合熱による重合温度の上昇を抑制しなくても、高品質の吸水性樹脂が製造可能である。単量体の濃度の上限も、特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。単量体の濃度が高すぎると、吸収倍率が低くなる虞がある。
原料として酸基を含有する単量体を用いる場合には、重合前に中和しておいてもよい。例えば、アクリル酸を単量体として用いる場合には、水酸化ナトリウムなどでアクリル酸を中和して、アクリル酸塩とするとよい。酸基を中和しておくことによって、重合後に中和せずとも、紙おむつや生理用ナプキンなどの衛生用品などに適用させうる。酸基を含有する単量体の中和率は、特に制限されないが、好ましくは50モル%以上80モル%未満、より好ましくは55モル%以上78モル%以下、さらに好ましくは60モル%以上75モル%以下である。
連続重合装置においては、好ましくは、エンドレスベルト120に供給された単量体水溶液が加熱され、水が激しく蒸発しながら重合反応が進行する。したがって、エンドレスベルト120に供給される単量体水溶液は、予めある程度の温度にまで昇温されていることが好ましい。単量体水溶液の加熱は、ヒーターなどの加熱装置を用いて行ってもよいし、アクリル酸の中和熱および/または溶解熱を利用してもよい。製造コストを考慮すると、アクリル酸の中和熱および/または溶解熱を利用することが好ましい。
重合開始剤は、特に制限されないが、熱分解型開始剤や光分解型開始剤が使用されうる。熱分解型開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシドなどの過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドなどのアゾ化合物が挙げられる。上記過酸化物と、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、硫酸第一鉄、アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせて、レドックス重合を行っても良い。光分解型開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独または適宜組み合わせて使用されうる。残存モノマー低減能を考慮すると、熱分解型開始剤と光分解型開始剤とを併用することが好ましい。重合開始剤の使用量は、単量体に対し、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%である。
単量体水溶液中に含まれる架橋剤は、分子内にビニル基を複数有する化合物;分子内にカルボキシル基やスルホン酸基と反応することのできる官能基を複数有する化合物等が、使用する単量体や吸水性樹脂に求める性能に応じて適宜選択される。
分子内にビニル基を複数有する化合物としては、具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分子内にカルボキシル基やスルホン酸基と反応することのできる官能基を複数有する化合物としては、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物、多価アミンとハロエポキシ化合物との縮合物、多価イソシアネート化合物、多価オキサゾリン化合物、アルキレンカーボネート化合物、ハロエポキシ化合物、多価金属の水酸化物および塩化物等が挙げられる。例えば、(ポリ)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等などが用いられうる。
ただし、架橋剤は、例示した架橋剤に限定されず、公知の架橋剤が適宜用いられうる。例えば、参照として、特開平11−188727号公報が本願に組み込まれる。水溶液中に含まれうるその他の成分についても、該公報が参照されうる。他の文献を参照してもよい。
架橋剤の使用量は、特に限定されないが、単量体の総量に対して、好ましくは0.0001〜10モル%、より好ましくは0.001モル%〜1モル%の範囲内である。
その他の成分が単量体水溶液中に含まれてもよい。例えば、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤;キレート剤などが、含まれうる。これらが含まれる場合には、前記単量体成分に対して0〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。単量体水溶液の溶媒は、通常は水である。場合によっては、水以外の成分が、重合反応性や吸水性樹脂の性能を向上させるために添加されてもよい。
エンドレスベルト上に供給される単量体水溶液の温度は、予め高くしておくことが好ましい。単量体水溶液の温度を高くすることで、単量体水溶液中の溶存酸素が除去される。また、単量体水溶液の温度が高いと、高温で水を蒸発させながら重合する本発明の連続製造方法を適用する上で好都合である。
具体的には、エンドレスベルト上に供給される単量体水溶液の温度は、10℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上である。単量体水溶液の温度の上限は特に限定されないが、単量体水溶液の温度は、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下である。単量体水溶液の温度が低すぎると、単量体水溶液中の水の沸点にまで単量体水溶液の温度が上昇するまでに時間がかかり、生産性が低下する虞がある。また、吸水性樹脂の物性が低下する虞がある。
アクリル酸などの酸基を含有する単量体が用いられる場合には、酸基をアルカリで中和する際に発生する中和熱を利用して、エンドレスベルト上に供給される水溶液の温度を高めることが好ましい。単量体およびアルカリの溶解熱によって、エンドレスベルト上に供給される水溶液の温度を高めてもよい。中和熱および溶解熱の双方を使用してもよい。また、中和熱および/または溶解熱によって、水溶液中の溶存酸素が揮散されうる。
均一な重合を実現するためには、単量体水溶液は、エンドレスベルト120への供給前に撹拌されることが好ましい。撹拌手段は、本発明では特に限定されない。例えば、スタティックミキサーが用いられる。
単量体水溶液の組成や供給量は、製造する吸水性樹脂や装置の構成に応じて決定されるべきであり、一義的には決定されない。例えば、単量体水溶液の供給量は、装置の大きさに応じて決定される。品質が均一な吸水性樹脂を製造するためには、供給量は一定であることが好ましい。
エンドレスベルト120は、好ましくは、耐食性および耐久性を有する材料からなる。また、単量体水溶液が沸騰しながら重合反応が進行する場合、耐熱性を有する材料から構成されることが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレンシートなどのフッ素樹脂が、エンドレスベルトとして用いられる。
エンドレスベルト120の単量体水溶液の投入口110付近には、エンドレスベルト120の走行方向に沿って、エンドレスベルト120の両側部付近にエンドレスベルト120に摺接するように固設された側部堰(図示せず)が設けられていてもよい。側部堰は、エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液がエンドレスベルトから溢流することを防止する。側部堰を設ける場合には、側部堰は少なくとも投入口110よりエンドレスベルト120上に供給される単量体水溶液がゲル化を開始する位置まで設けられていることが好ましい。エンドレスベルトが供給された単量体水溶液の重さによって撓む形態であれば、その撓みを利用して、水溶液のエンドレスベルトからの溢流を防止してもよい。
単量体水溶液の投入口110より走行方向上流に、端部堰(図示せず)が、エンドレスベルト120の走行方向に対してほぼ直交してエンドレスベルト120に摺接するように設けられていてもよい。端部堰は、単量体水溶液が上流側に流れ出し、水溶液がエンドレスベルト120から溢流するのを防止する。端部堰は、側部堰と別体的に形成してもよいし、側部堰と端部堰とが一体的であってもよい。場合によっては、エンドレスベルト120上に供給された水溶液の逆流を防ぐために、連続重合装置は、下流側が低くなっていてもよい。なお、側部堰や端部堰については、特開2000−17004号公報などに記載されている公知技術が適宜参照されうる。
本発明の吸水性樹脂の連続製造方法においては、側面および天井面が覆われた連続重合装置が用いられる。つまり、図1に示すように、連続重合装置の側面150および天井面160が、金属板などの部材によって覆われる。なお、連続重合装置の側面とは、エンドレスベルト120の進行方向に対する2つの側面を意味し、連続重合装置の天井面とは、エンドレスベルト120の上方に配置される面を意味する。ただし、「天井面が覆われている」とは、含水重合体と外気との接触が完全に防止されることまでは要求しない。少なくとも形成された含水重合体の側面および上部が、側面150および天井面160によって蔽われていればよい。例えば、図1に示すように、エンドレスベルトの側面および天井面が覆われる。
連続重合装置の側面および天井面を覆うことによって、重合時の放熱が少なくなり、中和熱および重合熱が効率的に利用され、重合がより効率的に進行する。その結果、残存モノマーが少なくなる等、吸水性樹脂の性能が向上する。連続重合装置の天井面および側面を覆うことによって、装置外部への単量体水溶液の揮散を著しく減少させることが可能であり、製造環境の改善にも寄与しうる。また、連続重合装置の天井面および側面を覆うことによって、製造される重合体への不純物の混入が防止される。
連続重合装置の側面および天井面を構成する材料は、重合反応中に生じる成分によって変質しづらい材料であれば、特に制限されない。好ましくは、重合反応は、水溶液を沸騰させながら進行するので、高温の水蒸気に対する耐久性が高いことが好ましい。その他、使用する成分を考慮して、構成材料を決定すればよい。例えば、ステンレス鋼、強化ガラス、テトラフルオロエチレン板などが用いられうる。
エンドレスベルト120に供給された単量体水溶液は、重合の進行とともに、液体からゲル状の含水重合体へと変化していく。紫外線により重合反応を開始させる光重合開始剤が単量体水溶液中に配合されているのであれば、紫外線照射装置170から発せられる紫外線によって重合を開始させる。紫外線照射装置の設置位置は、溶液に紫外線を照射し、重合反応を進行させうるのであれば、特に限定されない。図1に示すように、装置天井面160に設置されてもよい。装置天井に設置するには、ボルトやナットを用いてランプを装置天井から吊り下げてもよいし、装置天井の一部を穿ち、光がその穴から照射されるように、ランプを設置してもよい。
単量体水溶液中の単量体は、エンドレスベルト120上を搬送されながら重合され、重合に伴う重合熱によって水溶液の温度が上昇する。そして、沸点にまで加熱された水が沸騰状態で蒸発している溶液において、単量体の重合反応が進行する。その結果、生成する含水重合体130は、エンドレスベルト120上を搬送される過程で膨張し、含水重合体130は発泡した状態となる。膨張により含水重合体が発泡体になる過程で、含水重合体130はエンドレスベルト120から不規則状に剥離する。含水重合体130中に含まれる水は、徐々に蒸発する。
水を蒸発させながら重合反応を進行させて、発泡した含水重合体を製造すると、最終的に得られる吸水性樹脂は、吸水特性に優れる。激しい反応条件で重合反応を進行させると、吸水特性が低下すると考えられていたが、本発明の製造方法を用いれば、緩やかな反応条件下で製造された吸水性樹脂と同等の品質を有する吸水性樹脂が製造されうる。理由は明確ではないが、ある程度の高温で重合反応を開始させ、発泡した含水重合体を製造する方法を採用すれば、吸水特性に悪影響を及ぼす高分子量の含水重合体の形成を抑制できるためと推測される。
また、特許文献3および特許文献4に記載の方法においては、緩やかに重合反応を進行させるために、重合反応が進行する単量体水溶液の温度および単量体の濃度が低く制御されていた。つまり、発生した重合熱によって、単量体水溶液の温度が必要以上に上昇しないように、必要に応じて、単量体水溶液から熱を取り除く必要があった。一方、本発明の方法は、重合熱を、単量体水溶液の温度を上昇させるために利用する。したがって、本発明の方法は、エネルギー効率に優れる。
その上、単量体水溶液が高温であると、十分な速度で重合反応が進行する。エンドレスベルトを用いた連続重合は、本来的に生産性に優れる。しかし、エンドレスベルトから含水重合体が回収される前に、十分に重合反応が進行している必要がある。このため、エンドレスベルトを用いた連続重合の生産性は、重合反応速度に大きく影響される。例えば、エンドレスベルトへの単量体水溶液の供給量を十分確保するためには、幅が広いエンドレスベルトを用いる、または、エンドレスベルトを長くしてエンドレスベルトの搬送速度を上昇させる必要がある。しかしながら、いずれの場合にも連続重合装置の大型化を招き、吸水性樹脂の製造コストが増大する。エンドレスベルトに供給された単量体水溶液中の水分が激しく蒸発する程の高温で重合反応を進行させると、重合反応の反応速度が非常に大きい。このため、従来のエンドレスベルトを用いた連続重合では想像できないような短時間での重合が可能であり、吸水性樹脂の生産性が大幅に向上する。
また、エンドレスベルトを用いて発泡重合させる場合には、ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを厚くさせうる。バッチ重合により発泡重合を行なう場合には、四方に自由に膨張するため、厚いゲルシートを得ることが困難である。一方、エンドレスベルト上を移動させながら連続重合する場合には、進行方向への膨張が拘束されるため、上方向へ膨張し、厚いゲルシートを得ることができる。このため、生産性がいっそう向上する。
また、エンドレスベルトを用いた連続重合により、吸水性樹脂を製造すると、驚くべきことに、得られる吸水性樹脂の品質が向上する効果も得られる。バッチ重合により吸水性樹脂を製造する場合には、重合装置の壁が四方にあるので、壁に付着するモノマーが多く、そのモノマーが形成されたゲルに再付着して、含水重合体中に残存するモノマーが多い。一方、エンドレスベルトを用いた連続製造方法であれば、連続重合装置の両サイドには壁があるが、進行方向には壁がない。このため、含水重合体に再付着する残存モノマーが少なくなるためと推測される。
重合反応は、通常、常圧下で進行させるが、重合系の沸騰温度を下げるために減圧下で行ってもよい。好ましくは、作業性の点から、重合反応は、常圧下で進行させる。
重合開始温度は、通常30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上である。重合開始温度が低すぎると、重合の生産性が低下する。また、吸水性樹脂の物性が低下する虞がある。また、重合開始温度は、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下である。重合開始温度が高すぎると、発泡や延伸が十分におこらず、吸水性樹脂の吸水特性が低下する虞がある。重合開始温度は、単量体水溶液の白濁、粘度上昇、温度の上昇などにより観測することができる。
重合中の最高到達温度は、特に限定されないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下、最も好ましくは115℃以下である。150℃を超えると、得られる吸水性樹脂の吸水性が大きく低下しかねない。
本発明においては、重合開始温度と重合中の最高到達温度との差ΔTが、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらにより好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下である。ΔTが小さいほど、得られる吸水性樹脂の吸水特性が向上する傾向がある。
好ましくは、重合開始後、系の温度は急速に上昇し、10〜20モル%程度の低い重合率で系の温度が水の沸点に達する。そして、水蒸気を発し、固形分濃度が上昇しながら重合が進行する。重合熱を有効に利用して固形分濃度が上昇する。
重合時間は、特に限定されないが、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、さらに好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。重合時間が短いほど、重合反応の生産性が向上する。ここで重合時間は、重合開始剤を添加した単量体水溶液を連続重合装置に供給した時点から、含水重合体が連続重合装置から排出されるまでの時間を指す。
重合反応が進行するに伴い、含水重合体の固形分濃度が徐々に向上する。本発明の製造方法によって製造される含水重合体は固形分濃度が高いため、後工程である乾燥工程で含水重合体を乾燥させるために必要なエネルギーが少なくてすむ。この効果を高める上では、含水重合体の固形分濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは66質量%以上である。一方、固形分濃度が高すぎると、含水重合体の取り扱いが困難になる。また、最終的に得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下し、可溶分量が増加する傾向がある。そこで、含水重合体の固形分濃度は、好ましくは82質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下に制御される。
本発明においては、含水重合体と装置の大きさとの関係が規定される。即ち、本発明の連続製造方法においては、下記式1で規定される装置空隙率が1.2〜20の範囲である。
式1において、A(cm2)は、重合時の含水重合体の、エンドレスベルトの幅方向に対する最大断面積である。図3は、含水重合体が搬送されている連続重合装置の、エンドレスベルトの幅方向の断面図である。エンドレスベルトの進行方向に対して、垂直な方向の断面を想定した場合、図3に示すように、エンドレスベルト120の上部に、膨張した含水重合体130が存在する。図3において、斜線部が、含水重合体の断面積である。断面を観察する部位によって、含水重合体130の断面積は変化するが、この断面積のうち、最大の断面積が、式1における「A」に該当する。含水重合体の断面積は、重合中の含水重合体をビデオで撮影し、撮影した画像から最大膨張時のエンドレスベルト幅方向の断面積を読み取ることによって、計測されうる。ある程度正確な値が算出可能であれば、他の方法が用いられてもよい。
式1において、B(cm2)は、連続重合装置のエンドレスベルトと連続重合装置の天井面との間の空間の、エンドレスベルトの幅方向に対する最大断面積である。図4は、含水重合体が搬送されていない連続重合装置の、エンドレスベルトの幅方向の断面図である。図4に示すように、斜線部が、エンドレスベルト120と天井面160との間の空間の断面積である。断面を観察する部位によって、この断面積は変化するが、この断面積のうち、最大の断面積が、式1における「B」に該当する。
前記Aおよび前記Bから算出される、装置空隙率が、1.2〜20の範囲となるように、重合反応を進行させる。かような装置空隙率で重合反応を進行させると、重合時の放熱が少なくなり、中和熱および重合熱が効率的に利用され、重合がより効率的に進行する。その結果、残存モノマーが少なくなる等、吸水性樹脂の性能が向上する。また、装置空隙率が上記範囲であると、連続重合装置内の気流通路が確保され、重合中に蒸発した水や単量体の回収が容易となる。さらに、装置空隙率が上記範囲であると、形成された含水重合体が連続重合装置の側面や天井面に付着して、残存モノマーが増加する事態や、含水重合体が搬送できず連続製造ができなくなる事態を回避できる。装置空隙率が1.2より小さいと、含水重合体が連続重合装置の側面や天井面に付着して、残存モノマーが増加する問題や、含水重合体が搬送されずに連続製造ができなくなる問題が生じる虞がある。また装置内の気流通路が狭くなるために、蒸発した水や単量体の回収が困難となり、残存モノマーの増加や重合体の固形分低下の原因となる虞がある。逆に、装置空隙率が20よりも大きいと、放熱が大きくなるため中和熱および重合熱が効率的に利用されず、残存モノマーが増加する等、吸水性樹脂の性能が低下する虞がある。
また、好ましくは、含水重合体と単量体水溶液の仕込み量との関係が以下の条件を満たす。即ち、下記式2で規定される重合体膨張倍率が、好ましくは2〜500倍の範囲となるように、重合反応を制御する。
式2において、Aは式1におけるAと同様である。このため、ここでは説明を省略する。式2において、C(cm2)は、単量体水溶液の、エンドレスベルトの幅方向に対する仕込み断面積である。図5は、単量体水溶液が供給された連続重合装置の、エンドレスベルトの幅方向の断面図である。エンドレスベルトの進行方向に対して、垂直な方向の断面を想定した場合、図5に示すように、エンドレスベルト120の上部に、重合開始前の単量体水溶液190が存在する。図5において、斜線部が、単量体水溶液の仕込み断面積である。単量体水溶液の仕込み断面積は、エンドレスベルト120への単量体水溶液の仕込み量、およびエンドレスベルト120の搬送速度から算出されうる。
式2で表される重合体膨張倍率が小さすぎると、重合中の熱劣化が著しくなり、生成する吸水性樹脂の吸収倍率の割に可溶分量が多くなるなど、吸水性樹脂の性能が低下する虞がある。また、重合体膨張倍率が大きすぎると、連続重合装置の大型化をまねき、製造コストが増大する。重合体膨張倍率を2〜500倍の範囲となるように調節することによって、吸収特性に優れた吸水性樹脂を低コストで製造することが可能となる。
また、好ましくは、単量体水溶液の仕込み量と装置の高さとの関係が以下の条件を満たす。即ち、重合区間の90%以上の区間において、下記式3で規定される装置高さ比が10〜500の範囲となるように、重合反応を制御する。重合区間とは、単量体水溶液の投入口から含水重合体の排出口までの区間を指す。
式3において、D(cm)は、単量体水溶液の仕込み厚さである。図6は、単量体水溶液が供給された連続重合装置の、エンドレスベルトの幅方向の断面図である。エンドレスベルトの進行方向に対して垂直な方向の断面を想定した場合、図6に示すように、エンドレスベルト120の上部に、重合開始前の単量体水溶液190が存在する。単量体水溶液の仕込み厚さとは、エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液の厚さを意味する。図6において、「D」で示された長さが、単量体水溶液の仕込み厚さである。単量体水溶液の仕込み厚さは、エンドレスベルトの形状によって異なる。例えば、図6に示すように、端部が中心部と比べて高くなっている場合には、中心部の仕込み厚さが大きくなる。このような場合には、最も仕込み厚さが大きい部位の値を、「D」の値として採用する。Dの値は、単量体水溶液の供給量によって制御されうる。
式3において、E(cm)とは、エンドレスベルトから連続重合装置の天井面までの最大高さである。図6において、「E」で示された長さが、エンドレスベルトから連続重合装置の天井面までの最大高さである。エンドレスベルトが撓んでいる場合や、エンドレスベルトが折れ曲がっている場合には、エンドレスベルトから天井面までの高さは、エンドレスベルトの部位によって異なりうる。このような場合には、エンドレスベルトから連続重合装置の天井面までの最大高さが最も長い部位の値を、「E」の値として採用する。例えば、図6のような天井面が水平である場合には、エンドレスベルトの最も低い部位からの高さが、「E」に相当する。装置高さ「E」は、エンドレスベルトの進行方向に応じて変化しうる。例えば、図1に示すように、天井面が、含水重合体の排出口140に近い部位において低くなっている場合には、装置高さ「E」も低くなる。従って、装置高さ比も、小さくなる。
式3で表される装置高さ比が小さすぎると、含水重合体が重合装置の天井面に部分的に付着して、残存モノマーが増加する虞や、含水重合体が搬送できず連続製造できなくなる虞がある。また、連続重合装置内の気流通路が狭くなるために、蒸発した水や単量体の回収が困難となり、残存モノマーの増加や重合体の固形分低下の原因となる虞がある。さらに、紫外線を照射する場合、紫外線照射装置に重合体が接近しすぎて紫外線照射装置から発せられる熱により含水重合体が劣化する虞や、紫外線の照射面積が小さくなるために数多くの紫外線照射装置を設置する必要性が生じ、製造コストが増大する虞がある。逆に、装置高さ比が大きすぎると、放熱が大きくなるため、中和熱および重合熱が効率的に利用されず、残存モノマーが増加する等、吸水性樹脂の性能が低下する虞がある。また、紫外線を照射する場合には、含水重合体に到達する紫外線の強度が低くなり、適度な強度の紫外線を照射するために出力の大きい紫外線照射装置を設置する必要性が生じ、製造コストが増大する虞がある。式3で表される装置高さ比を、上記範囲に調整することによって、これらの問題が解決されうる。
式3で表される装置高さ比は、一定でなくてもよく、好ましくはエンドレスベルトの進行方向に対して変化する。装置高さ比をエンドレスベルトの進行方向に対して変化させることによって、蒸発した水や単量体の回収、天井面への重合体付着の回避、製造装置の小型化、適度な強度の紫外線照射などが可能となる。例えば、単量体水溶液の投入口側の装置高さ比を、前記含水重合体の排出口側の装置高さ比より大きくする。含水重合体が大きく膨張している区間(重合装置前半)は装置高さ比を大きくすることで、蒸発した水や単量体の回収、天井面への重合体付着の回避を容易にすることができる。一方、含水重合体が収縮している区間(重合装置後半)は装置高さ比を小さくすることで、製造装置の小型化、適度な強度の紫外線照射を行うことができる。
連続重合装置の天井面には、紫外線照射装置が設置されてもよい。紫外線照射装置は、光重合開始剤を含む単量体水溶液に紫外線を照射して、重合反応を安定して開始させるために設置されてもよいし、含水重合体に紫外線を照射して、残存モノマーを減少させるために設置されてもよい。双方を達成する目的で、紫外線照射装置が2以上の部位に設置されてもよい。
紫外線照射装置は、例えば、UVランプが用いられる。残存モノマーを減少させるための紫外線照射装置の設置位置は、含水重合体130に光を照射し、残存モノマーを反応させ、残存モノマーの含有量を減少させうるのであれば、特に限定されない。図1に示すように、連続重合装置の天井面160に設置されてもよい。装置天井に設置するには、ボルトやナットを用いてランプを天井面から吊り下げてもよいし、天井面の一部を穿ち、光がその穴から照射されるように、ランプを設置してもよい。紫外線照射装置の設置数や照射光の強度については、特に限定されない。例えば、残存モノマーの除去が強く望まれるのであれば、設置数や強度を上げればよい。
好ましくは、紫外線照射装置は、必要な部位にのみ設置される。例えば、図1に示すように、重合反応を開始させるための紫外線照射装置170と残存モノマーを減少させるための紫外線照射装置180との間には、紫外線照射装置が設置されない。含水重合体が大きく膨張している間は、紫外線が重合体下部まで到達することができず、照射した紫外線が有効に利用されない。また紫外線照射装置に重合体が接近しすぎて紫外線照射装置から発せられる熱により重合体が劣化する危険性が高い。したがって、含水重合体が大きく膨張している区間は紫外線照射装置を設置せず、紫外線照射装置を間欠的に設置することで製造コストを低減し、紫外線照射装置から発せられる熱により重合体劣化の危険を回避することができる。
また、好ましくは、連続重合装置の天井面160の少なくとも一部は、高さに関して可動性である。つまり、連続重合装置の天井面160の高さを変化させうる。より好ましくは、紫外線照射装置が配置されている天井面の高さを変化させうる。製造する重合体によって、重合体膨張倍率や適切な紫外線強度が異なる。天井高さを可変とすることで、天井面への重合体付着等の問題を回避でき、紫外線強度も調節することができる。このため、重合反応に応じて適切な条件の高さとすることができる。また、生産量増などの製造条件変更にも柔軟に対応できる。
連続重合装置の天井面の高さを変化させる手段は特に限定されないが、好適な例として図7に示す機構が挙げられる。図7は、天井面の高さを昇降させるネジ式昇降機構の概略図である。天井部を含むフレーム161を垂直に配した調節螺軸162に螺合した調節ナット163を回転させて、装置天井を昇降させる。
連続重合装置の天井面や側面に、重合中に蒸発した水やアクリル酸を回収して再使用する手段を設置することによって、水やアクリル酸の再使用を図ってもよい。重合反応系から発せられた水蒸気には、単量体が含まれうる。単量体を含む水蒸気は、回収して、再利用されうる。単量体を含む水蒸気を回収して再利用するには、装置天井160に水蒸気を回収するための穴を設け、そこから配管を通じて水蒸気を回収すればよい(図示せず)。他の回収手段を用いても、勿論よい。回収された水蒸気は、コンデンサーで濃縮され、単量体水溶液となる。この水溶液を、濃度を調整した後に、単量体供給手段を通じて連続重合装置へ再度供給すればよい。
含水重合体中の含水量は、エンドレスベルト120が進行するに従って、徐々に減少していく。また、図1に示すように、エンドレスベルト120の進行に伴い、含水重合体130からの水の蒸発も緩やかになり、発泡した含水重合体130は徐々に収縮していく。
エンドレスベルト120上を搬送された含水重合体は、エンドレスベルトの下流部に位置する含水重合体の排出口から連続重合装置の外部に排出される。含水重合体の排出口140は、含水重合体が排出されうるのであれば、特に形状や機構については限定されない。含水重合体の回収機構としては、巻き取りローラが用いられうる。含水重合体は、連続重合装置から連続的に解砕機に搬送されてもよいし、一定の大きさに切断されてから、解砕機に搬送されてもよい。
単量体水溶液中の水を蒸発させながら発泡させる重合方法を用いれば、エンドレスベルト120上に形成される含水重合体は、発泡体となっており、エンドレスベルト120と発泡体との、接触面積は小さい。このため、エンドレスベルト120から、含水重合体130を容易に剥離させることができ、回収に要する労力を低減できる。連続的に含水重合体を製造する上で、かような利点は大きい。また、回収されなかった含水重合体がエンドレスベルト120に残存して、製品の品質を劣化させることも防止しうる。
本発明においては、形成される含水重合体が発泡体となり、含水重合体とエンドレスベルトとの付着力が、重合の過程で自然に弱まる。したがって、エンドレスベルトが平坦であっても、含水重合体はエンドレスベルトから容易に剥離されうる。また、含水重合体は、側端部から連続的に剥離するのではなく、発泡の過程においてエンドレスベルトと含水重合体との付着力が、全体的に弱まり、不規則状に剥離する。ここで、「不規則状に剥離する」とは、数多くの箇所が、不規則に剥離することを意味する。例えば、エンドレスベルトの進行に伴い、サイドから徐々に剥離が進行する形態は、「不規則状に剥離」には該当しない。一方、エンドレスベルトの進行に伴い、エンドレスベルトと含水重合体との剥離箇所が、数多く不規則に出現する形態は、「不規則状に剥離」に該当する。ただし、場合によってはエンドレスベルトが凹部上に撓んでいてもよい。例えば、エンドレスベルトが自重で凹部上に撓んでいても良い。
解砕機に搬送された後の、工程は、従来知られている装置や条件を参照して実施される。例えば、特開2002−212204号公報や特開平11−188727号公報が参照として本願に組み込まれる。
重合後の含水重合体は、そのまま使用してもよく、添加剤を加えてもよく、裁断/粉砕などの成形が加えられてもよい。また、乾燥されてもよい。好ましくは、含水重合体は、解砕された後、乾燥されて、さらに粉砕することによって、粒子状のベースポリマーとされる。好ましい乾燥温度(熱媒温度)は、物性面から、60〜230℃、より好ましくは165〜230℃である。乾燥時間は、好ましくは1〜60分である。熱風乾燥が特に好ましい。また、乾燥後の粉砕は、質量平均粒子径(JIS標準ふるい分級で規定)で、好ましくは10〜2000μm、より好ましくは100〜1000μm、さらに好ましくは300〜600μmである。特に好ましくは、150μm未満の微粒子は、0〜10質量%に制御される。また、乾燥前の含水重合体粒子または乾燥後のベースポリマー粒子は、さらに表面架橋(2次架橋)され、吸水性樹脂粒子となる。用いられる添加剤としては、キレート材、酸化剤、還元剤、消臭剤などが挙げられる。添加剤の使用量は、例えば、0〜10質量%(対吸水性樹脂)である。
本発明で得られた吸水性樹脂やベースポリマー、含水重合体は、衛生材料(おむつ、ナプキン)、農園芸、土木、建築など、公知の用途に広く適用される。
<実施例1>
図8に示す連続重合装置11を用いて重合を行った。エンドレスベルト120は、単量体水溶液の投入口110からエンドレスベルト120の下流末端までの距離として定義される有効長が600cmであり、ベルトの全幅が50cmであり、ベルトの底面幅が20cmであり、トラフ角度が10°のガラス繊維基材上にフッ素樹脂がコーティングされたベルトを用いた。連続重合装置は、側面150および天井面160が覆われており、装置高さは、上流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが40cm、下流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが15cmであった。
単量体水溶液を、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を23.1g/秒、アクリル酸を28.4g/秒、30質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液(I)を0.314g/秒、20質量%アクリル酸水溶液97.9質量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノンを0.989質量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムを1.08質量部溶解した溶液(II)を0.354g/秒、水を24.5g/秒の流量になるよう設定して、連続的にミキサーに供給し混合することによって調製した。このとき、単量体水溶液の温度は98℃であった。この単量体水溶液に、さらに3質量%過硫酸ナトリウム水溶液を1.07g/秒の流量で加えたのち、約100℃に保温された400cm/分の速度で走行する前記エンドレスベルトに、単量体水溶液を供給した。単量体水溶液は、単量体水溶液の仕込み厚さDが0.49cm、単量体水溶液の仕込み幅が20cmとなるように、連続的に供給された。装置高さ比(E/D)は、前半が82、後半が31である。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、5mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、速やかに重合し水蒸気を発しながら膨張した。最大膨張時の重合体膨張倍率(A/C)は64倍であり、装置空隙率(B/A)は3.1であった。膨張した含水重合体は、重合開始から約1分後に収縮した。この収縮した含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、110mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを、エンドレスベルト末端で回収し、排出口を通じてミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した。次いで粉砕物を目開き600μmと300μmの篩網で分級することにより、大部分が300〜600μmの粒子径を持つベースポリマー(1)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
<実施例2>
図9に示す連続重合装置12を用いて重合を行った。エンドレスベルト120は、単量体水溶液の投入口110からエンドレスベルト120の下流末端までの距離として定義される有効長が400cmであり、ベルトの全幅が50cmであり、ベルトの底面幅が10cmであり、トラフ角度が10°のガラス繊維基材上にフッ素樹脂がコーティングされたベルトを用いた。連続重合装置は、側面150および天井面160が覆われており、装置高さは、上流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが40cm、下流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが15cmであった。
単量体水溶液を、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を8.25g/秒、アクリル酸を10.2g/秒、30質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液(I)を0.112g/秒、20質量%アクリル酸水溶液97.9質量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノンを0.989質量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムを1.08質量部溶解した溶液(II)を0.126g/秒、水を8.75g/秒の流量になるよう設定して、連続的にミキサーに供給し混合することによって調製した。このとき、単量体水溶液の温度は96℃であった。この単量体水溶液に、さらに3質量%過硫酸ナトリウム水溶液を0.381g/秒の流量で加えたのち、約100℃に保温された250cm/分の速度で走行する前記エンドレスベルトに、単量体水溶液を供給した。単量体水溶液は、単量体水溶液の仕込み厚さDが0.57cm、単量体水溶液の仕込み幅が10cmとなるように、連続的に供給された。装置高さ比(E/D)は、前半が70、後半が26である。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、8mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、速やかに重合し水蒸気を発しながら膨張した。最大膨張時の重合体膨張倍率(A/C)は41倍であり、装置空隙率(B/A)は8.1であった。膨張した含水重合体は、重合開始から約1分後に収縮した。この収縮した含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、170mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを、エンドレスベルト末端で回収し、排出口を通じてミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した。次いで粉砕物を目開き600μmと300μmの篩網で分級することにより、大部分が300〜600μmの粒子径を持つベースポリマー(2)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
<実施例3>
図10に示す連続重合装置13を用いて重合を行った。エンドレスベルト120は、単量体水溶液の投入口110からエンドレスベルト120の下流末端までの距離として定義される有効長が300cmであり、ベルトの全幅が50cmであり、ベルトの底面幅が10cmであり、トラフ角度が10°のガラス繊維基材上にフッ素樹脂がコーティングされたベルトを用いた。連続重合装置は、側面150および天井面160が覆われており、装置高さは、上流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが40cm、下流側におけるエンドレスベルト120から天井面160までの高さが15cmであった。
単量体水溶液を、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を4.95g/秒、アクリル酸を6.10g/秒、30質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液(I)を0.0672g/秒、20質量%アクリル酸水溶液97.9質量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノンを0.989質量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムを1.08質量部溶解した溶液(II)を0.0758g/秒、水を5.25g/秒の流量になるよう設定して、連続的にミキサーに供給し混合することによって調製した。このとき、単量体水溶液の温度は95℃であった。この単量体水溶液に、さらに3質量%過硫酸ナトリウム水溶液を0.229g/秒の流量で加えたのち、約100℃に保温された200cm/分の速度で走行する前記エンドレスベルトに、単量体水溶液を供給した。単量体水溶液は、単量体水溶液の仕込み厚さDが0.42cm、単量体水溶液の仕込み幅が10cmとなるように、連続的に供給された。装置高さ比(E/D)は、前半が95、後半が36である。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、10mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、速やかに重合し水蒸気を発しながら膨張した。最大膨張時の重合体膨張倍率(A/C)は28倍であり、装置空隙率(B/A)は16であった。膨張した含水重合体は、重合開始から約1分後に収縮した。この収縮した含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、210mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを、エンドレスベルト末端で回収し、排出口を通じてミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した。次いで粉砕物を目開き600μmと300μmの篩網で分級することにより、大部分が300〜600μmの粒子径を持つベースポリマー(3)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
<比較例1>
図11に示す、装置高さが15cmで一定の連続重合装置14を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、エンドレスベルトに単量体水溶液を供給した。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、9mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、速やかに重合し水蒸気を発しながら膨張した。最大膨張時の重合体膨張倍率(A/C)は65倍であり、装置空隙率(B/A)は1.1であった。膨張した含水重合体は、重合開始から約1分後に収縮した。この収縮した含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、110mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを、エンドレスベルト末端で回収し、排出口を通じてミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した。次いで粉砕物を目開き600μmと300μmの篩網で分級することにより、大部分が300〜600μmの粒子径を持つベースポリマー(4)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
<比較例2>
図8に示す連続重合装置11を用いて重合を行った。
単量体水溶液を、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を8.25g/秒、アクリル酸を10.2g/秒、30質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液(I)を0.112g/秒、20質量%アクリル酸水溶液97.9質量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノンを0.989質量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムを1.08質量部溶解した溶液(II)を0.126g/秒、水を8.75g/秒の流量になるよう設定して、連続的にミキサーに供給し混合することによって調製した。このとき、単量体水溶液の温度は96℃であった。この単量体水溶液に、さらに3質量%過硫酸ナトリウム水溶液を0.381g/秒の流量で加えたのち、約100℃に保温された400cm/分の速度で走行する前記エンドレスベルトに、単量体水溶液を供給した。単量体水溶液は、単量体水溶液の仕込み厚さDが0.35cm、単量体水溶液の仕込み幅が10cmとなるように、連続的に供給された。装置高さ比(E/D)は、前半が114、後半が43である。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、8mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、速やかに重合し水蒸気を発しながら膨張した。最大膨張時の重合体膨張倍率(A/C)は20倍であり、装置空隙率(B/A)は27であった。膨張した含水重合体は、重合開始から約1分後に収縮した。この収縮した含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、170mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。ゲル状の含水重合体からなるゲルシートを、エンドレスベルト末端で回収し、排出口を通じてミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、卓上粉砕機で粉砕した。次いで粉砕物を目開き600μmと300μmの篩網で分級することにより、大部分が300〜600μmの粒子径を持つベースポリマー(5)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
<比較例3>
図8に示す連続重合装置11を用いて、重合を行った。
ミキサーの後に冷却装置を設置して冷却することにより、過硫酸ナトリウム水溶液を加える前の単量体水溶液温度を75℃とした以外は実施例1と同様の手順にしたがって、エンドレスベルト上に、単量体水溶液を供給した。
エンドレスベルト上に供給された単量体水溶液に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置170(東芝ライテック株式会社製MT−4020)を用いて、5mJ/cm2の光量の紫外線を照射したところ、ベルト上に供給された単量体水溶液は、激しい破裂音を発しながら重合したが、沸点に達する前に重合および架橋が過度に進行し、ほとんど膨張しなかった。重合体膨張倍率(A/C)は1.0倍であり、装置空隙率(B/A)は198であった。この含水重合体に、連続重合装置上部に設置した紫外線照射装置180(ウシオ電気株式会社製VB15201BY)を用いて、110mJ/cm2の光量の紫外線を照射した。実施例1と同様の手順に従い、含水重合体を回収し、細断、乾燥、分級をおこない、ベースポリマー(6)を得た。重合条件およびベースポリマーの物性を、まとめて表1に示す。
なお、A(cm2)および各評価値は、以下の方法で算出した。
<Aの算出>
重合中の含水重合体をビデオで撮影し、撮影した画像から最大膨張時のベルト幅方向に対する断面積を算出した。
<残存モノマーの測定>
脱イオン水1000gに吸水性樹脂0.5gを加え、撹拌下で2時間抽出した後、濾紙を用いて膨潤ゲル化した吸水性樹脂を濾別し、濾液中の残存モノマー量を液体クロマトグラフィーで分析した。一方、既知濃度のモノマー標準溶液を同様にして分析して得た検量線を外部標準とし、濾液の希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂中の残存モノマー量を求めた。
<無荷重下吸収倍率の測定>
吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250×9.81m/s2(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、そのときの質量W0(g)を測定した。そして、これらの質量W1およびW0から、次式
に従って、GV(無荷重下吸収倍率)を算出した。
<可溶分量の測定>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加え、16時間撹拌することにより樹脂中の可溶分量を抽出した。この抽出液を濾紙を用いて濾過することにより得られた濾液50.0gを測り取り、測定溶液とした。
はじめに、生理食塩水だけを、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液で、pH2.7まで滴定して、空滴定量([bNaOH])ml、[bHCl]ml)を求めた。
同様の滴定操作を、測定溶液についても行うことにより、滴定量([NaOH])ml、[HCl]ml)を求めた。
例えば、アクリル酸とそのナトリウム塩とからなる吸水性樹脂の場合、その重量平均分子量と上記操作により得られた滴定量とをもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。
<紫外線光量測定>
紫外線積算光量計UIT−150(ウシオ電機株式会社製)に受光機UVD−S365(ウシオ電機株式会社製)を取り付け、吸水性樹脂の重合時と同様の照射位置、照射時間における紫外線光量を測定した。
表1に示すように、側面および天井面が覆われた連続重合装置を用いて、本発明で規定する条件に合致するように重合反応を進行させることによって、得られる吸水性樹脂の特性が向上する。