以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、特定の機能を発現する化合物として具体的な化合物を例示しているが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に説明がない限り、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。また、特に説明がない限り、「重合体含有組成物」とは固形の重合体含有組成物を意味する。
(重合体含有組成物)
以下、本発明の第1および第2の重合体含有組成物について説明する。本発明の第1の重合体含有組成物は、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子(M)を含む化合物(A)の加水分解縮合物とビニルアルコール系重合体(B)とポリカルボン酸(C)とを含む。該ポリカルボン酸(C)の分子量は1000未満である。該ビニルアルコール系重合体(B)/該ポリカルボン酸(C)の重量比は99/1〜70/30の範囲である。
化合物(A)の加水分解縮合物は、縮重合反応が進めば実質的に金属酸化物となる。本発明の第2の重合体含有組成物では、上記加水分解縮合物が、金属原子(M)を含む金属酸化物である。その場合には、以下の説明において「化合物(A)の加水分解縮合物」を「金属酸化物」に読みかえることができる。
化合物(A)は、単一の化合物であっても、複数種の化合物を含んでもよい。化合物(A)に含まれる金属原子(M)は、2価以上(より好ましくは3価又は4価)の金属原子であり、たとえば、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属原子である。なお、ケイ素は類金属元素に分類される場合があるが、この明細書では金属元素として説明する。出発材料としての化合物(A)の1分子に含まれる金属原子(M)の数は通常1つであるが、複数であってもよい。
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子(M)を含む化合物(A)のうち、アルコキシ基が結合した金属原子(M)を含む化合物は、シリコンアルコキシド、シリコンアルコキシド以外の金属アルコキシド、ならびに、シリコンアルコキシドおよび/またはシリコンアルコキシド以外の金属アルコキシドから誘導されるオリゴマーから選択される少なくとも1種類以上の化合物である。そのような化合物の代表的な例は、シリコンアルコキシドである。本発明に用いられる化合物(A)がシリコンアルコキシドを含む場合、高湿度下におけるガスバリア性が高い組成物が得られる。
シリコンアルコキシドとしては、1個のケイ素原子と、それに結合した2、3または4個のアルコキシ基とを含むシリコンアルコキシドが好ましい。ここで、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の個数は3個または4個であることがより好ましく、4個であることが特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が例示される。なお、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の個数が2個または3個の場合、ケイ素原子にはさらに、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;塩素原子やフッ素原子等のハロゲン原子といった原子団が結合する。シリコンアルコキシドの具体例としては、たとえば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリメトキシシランが挙げられ、好ましくはテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランである。
シリコンアルコキシド以外の金属アルコキシドとしては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の1個の多価金属原子(好ましくは3価または4価)と、これに結合した1個以上のアルコキシ基とを含む金属アルコキシドが好ましい。多価金属原子に結合するアルコキシ基の数は、好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上である。多価金属原子に結合しているアルコキシ基およびアルコキシ基以外の置換基の具体例としては、上記シリコンアルコキシドについて例示した原子団と同様のものが挙げられる。金属アルコキシドとしては、たとえば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン等のアルコキシチタン化合物;トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、メチルジイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、ジエトキシアルミニウムクロリド等のアルコキシアルミニウム化合物;テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、メチルトリイソプロポキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物が挙げられる。
ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子(M)を含む化合物(A)のうち、ハロゲン原子が結合した金属原子(M)を含む化合物は、ハロゲン化金属またはそのオリゴマーである。ハロゲン化金属としては、上述したシリコンアルコキシドまたは金属アルコキシドのアルコキシ基をハロゲン原子に置き換えたものが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が挙げられる。ハロゲン原子を含む化合物の典型例としては、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、ブロモトリメトキシシラン、ブロモトリエトキシシラン、などが挙げられる。
本発明の組成物に含まれるビニルアルコール系重合体(B)は、カルボン酸ビニル系重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化して得られる重合体である。本発明の重合体含有組成物は、好適には本発明の製造方法によって製造される。このとき、本発明の製造方法に用いられるビニルアルコール系重合体(b)は、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子を含む化合物(a1)に由来する基を含むことが好ましい。化合物(a1)は、カルボン酸ビニル系重合体に含まれるエステル基と交換反応を生じて重合体と結合する。その場合、ビニルアルコール系重合体(B)は、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子を含む化合物(a1)に由来する基を含む。化合物(a1)には、化合物(A)について説明した化合物を適用できるが、化合物(A)と化合物(a1)とは同じであっても異なってもよい。
カルボン酸ビニル系重合体は、カルボン酸ビニル単位(ビニルエステル単位)を有する重合体であり、カルボン酸ビニル単独の重合体、および/または、カルボン酸ビニルと他の単量体との共重合体である。カルボン酸ビニル単位は、けん化されてビニルアルコール単位に変換されるが、変換率(けん化度)は80モル%以上であることが好ましい。けん化度が80モル%未満である場合には、重合体含有組成物のガスバリア性が低くなる場合がある。高度のガスバリア性を得るためには、ビニルアルコール系重合体のけん化度は90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。カルボン酸ビニル単位の一部はけん化されない場合があり、その場合にはカルボン酸ビニル単位が残存する。重合されるカルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−メチルプロピオン酸ビニル等が挙げられ、好ましくは酢酸ビニルである。
カルボン酸ビニルと共重合可能なその他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリルアルコール;ビニルトリメチルシラン等が挙げられ、その中でもエチレンが好ましい。カルボン酸ビニル系重合体に含まれるカルボン酸ビニル単位以外の単量体単位の割合は、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。ビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分けん化体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、またはエチレン−ビニルアルコール共重合体の部分けん化体であって、結晶性を有するものが好適に用いられる。エチレンを共重合する場合、レトルト処理後の酸素バリア性及び高湿度下での酸素バリア性を考慮すると、エチレンの好適な共重合比率は、1〜20モル%が好ましく、2〜18モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。
本発明で用いられるポリカルボン酸(C)は、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸であり、分子量が1000未満である。ポリカルボン酸(C)は、以下の一般式(1)で表され且つ分子量が500未満であることが好ましい。
HOOC−Z−COOH・・・(1)
[Zは、水素および酸素から選ばれる少なくとも1つの元素と炭素とによって構成される有機基を示す。]
Zの典型的な例は、炭素数が1〜60(好ましくは1〜30)の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基、またはそれらの水素の一部が置換された基である。置換基の例としては、水酸基やアルキル基が挙げられる。
本発明で用いられるポリカルボン酸(C)の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの飽和酸、マレイン酸、フマル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸などの不飽和酸、フタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸などの芳香族酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシル酸、などが挙げられる。該化合物が酸無水物を形成する場合は、酸無水物の形で使用してもよい。また、重合体含有組成物のガスバリア性、特に熱水やスチーム等で殺菌処理(以後レトルト処理と称することがある)した後のガスバリア性、および力学的物性を損なわない範囲で、該ポリカルボン酸(C)のカルボキシル基の一部を塩の形態に変換してもよい。塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、等が挙げられる。分子内に存在するカルボキシル基が2個未満である場合には、重合体含有組成物のレトルト処理後の力学物性が低下する。また、分子量が1000以上のポリカルボン酸、例えばポリアクリル酸等の高分子酸を用いた場合、重合体含有組成物に熱処理を加えた際に着色し易くなることがある。上記化合物の中でも、レトルト処理後のガスバリア性、力学的物性、着色等を考慮すると、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびフタル酸から選ばれる少なくとも1つの酸が好ましく、特にリンゴ酸、コハク酸、酒石酸が好ましい。
本発明の組成物では、乾燥時における金属酸化物(または化合物(A)の加水分解縮合物)の含有率、すなわち、溶媒以外の成分に占める含有率は、10〜65重量%の範囲であることが好ましい。該含有率が10重量%未満である場合、重合体含有組成物のガスバリア性、特に高湿度雰囲気下での酸素バリア性が低下するおそれがある。また、該含有率が65重量%を超える場合も、重合体含有組成物のガスバリア性が低下し、さらに力学的物性も低下するおそれがある。該含有率は、より好ましくは20〜55重量%の範囲であり、さらに好ましくは25〜45重量%の範囲である。
本発明において、組成物中の金属酸化物(または化合物(A)の加水分解縮合物)の含有量は、後述する実施例に示す通り、組成物の有機成分を熱分解して除去した後に得られる金属酸化物の重量と、熱分解前の組成物の重量とから求められる。
本発明の組成物では、ビニルアルコール系重合体(B)およびポリカルボン酸(C)の含有率の合計は、45重量%〜80重量%の範囲であることが好ましく、55重量%〜75重量%の範囲であることがより好ましい。
本発明の組成物では、ビニルアルコール系重合体(B)とポリカルボン酸(C)との重量比が、ビニルアルコール系重合体(B)/ポリカルボン酸(C)=99/1〜70/30の範囲である。ビニルアルコール系重合体(B)/ポリカルボン酸(C)の重量比が99/1より高くなると、レトルト処理後の重合体含有組成物の力学的物性が低下するため好ましくない。また、ビニルアルコール系重合体(B)/ポリカルボン酸(C)の重量比が70/30より低くなると、レトルト処理前後の重合体含有組成物のガスバリア性が悪化するとともに、熱処理等を施した際に着色し易くなるため好ましくない。ビニルアルコール系重合体(B)/ポリカルボン酸(C)の重量比は、好ましくは97/3〜80/20の範囲であり、より好ましくは95/5〜85/15の範囲である。なお、ポリカルボン酸(C)の一部はビニルアルコール系重合体(B)に結合していてもよい。
本発明の重合体含有組成物は、上述した重合体含有組成物を有機溶媒などの溶媒に分散させて液状としたものであってもよい。このような組成物は、コーティング剤(塗液組成物)やフィルムの原料として用いることができる。溶媒の量は、組成物の用途に応じて決定される。溶媒には、以下に示す、重合体含有組成物の製造方法の説明において例示される溶媒を用いることができる。
(重合体含有組成物の製造方法)
以下に、重合体含有組成物を製造するための本発明の方法について説明する。なお、上述した説明と重複する部分については説明を省略する場合がある。この製造方法によれば、上述した本発明の重合体含有組成物を容易に製造できる。この製造方法で製造される重合体含有組成物は、本発明の重合体含有組成物の別の側面を構成する。
本発明の製造方法では、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子(m1)を含む化合物(a1)およびカルボン酸ビニル系重合体を含む溶液(S)中において、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応と、化合物(a1)とカルボン酸ビニル系重合体との反応とを行うことによって、ビニルアルコール系重合体(b)を製造する(第1工程)。その後、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つが結合した金属原子(m2)を含む化合物(a2)および該化合物(a2)から誘導されるオリゴマーから選ばれる少なくとも1つの化合物、ビニルアルコール系重合体(b)、ポリカルボン酸(C)および溶媒を含む溶液(T)を調製する(第2工程)。ポリカルボン酸(C)の分子量は、1000未満である。溶液(T)において、ビニルアルコール系重合体(b)/ポリカルボン酸(C)の重量比が99/1〜70/30の範囲である。
ポリカルボン酸(C)には、上述したポリカルボン酸(C)が用いられる。また、カルボン酸ビニル系重合体(b)には、上述したカルボン酸ビニル系重合体について例示した1種類または2種類以上の重合体を適用できる。
金属原子(m1)および(m2)には、それぞれ独立に、金属原子(M)について説明した金属原子を適用でき、たとえば、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
化合物(a1)および(a2)には、それぞれ独立に、化合物(A)について例示した1種類または2種類以上の化合物を適用できる。化合物(a1)および/または化合物(a2)が実施形態1の化合物(A)となる。出発材料としての化合物(a1)の1分子に含まれる金属原子(m2)の数は、通常1つであるが複数であってもよい。化合物(a1)と化合物(a2)とは、お互いに同じであってもよいし異なってもよい。化合物(a1)がシリコンアルコキシドを含む場合、貯蔵性が高い溶液(S)および溶液(T)が得られ、且つ、高湿度下におけるガスバリア性が高い組成物が得られる。
化合物(a2)から誘導されるオリゴマーは、化合物(a2)の加水分解縮合物であってもよい。加水分解縮合は、公知の方法で行うことができる。たとえば、金属アルコキシドやハロゲン化金属の加水分解・縮合を、ゾル−ゲル法で用いられている方法のような公知の方法で加水分解・縮合することによって得られる。
シリコンアルコキシドから誘導されるオリゴマーの具体例としては、テトラメトキシシランの二量体または三量体以上のオリゴマー、テトラエトキシシランの二量体または三量体以上のオリゴマー、オリゴジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、テトラメトキシシランの二量体または三量体以上のオリゴマー、テトラエトキシシランの二量体または三量体以上のオリゴマーが好ましく用いられる。その重合度は、必ずしも限定されないが、2〜25の範囲内であることが好ましく、2〜10の範囲内であることがより好ましい。
シリコンアルコキシド以外の金属アルコキシドを含むアルコキシドから誘導されるオリゴマーは、1種類または2種類以上の金属アルコキシド(シリコンアルコキシド以外の金属アルコキシドを少なくとも含む)を公知の方法に従って加水分解・縮合することによって得られる。好ましい具体例としては、たとえば、テトライソプロポキシチタンの二量体または三量体以上のオリゴマーが挙げられる。その重合度は、必ずしも限定されないが、2〜25の範囲内であることが好ましく、2〜10の範囲内であることがより好ましい。
さらに、化合物(a1)に含まれる金属原子(m1)と、化合物(a2)およびそれから誘導されるオリゴマーに含まれる金属原子(m2)とがそれぞれ異なる場合は、そのモル比、[金属原子(m1)/金属原子(m2)]の値は、0.01〜18000の範囲であることが好ましい。モル比をこの範囲とすることによって、有機成分(ビニルアルコール系重合体(b)およびポリカルボン酸(C))と金属酸化物との混合状態をより良好にすることができ、レトルト処理前後のガスバリア性が特に良好な組成物が得られる。このモル比は、0.1〜5000の範囲であることがより好ましく、1〜1000の範囲であることがさらに好ましく、1〜500の範囲であることが特に好ましい。
本発明の第1工程では、溶液(S)中において、カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応と、化合物(a1)とカルボン酸ビニル系重合体との反応を行うことによって、ビニルアルコール系重合体(b)が得られる。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応は、ビニルアルコール系重合体を生成する反応である。この反応では、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシルオキシ基が水酸基に変換され、それと同時に、カルボン酸系化合物(使用する有機溶媒、触媒の種類等に応じて相違するが、通常は、カルボン酸、カルボン酸エステルおよびカルボン酸塩から選ばれる1種以上の化合物)が副生する。
一方、化合物(a1)とカルボン酸ビニル系重合体との反応は、化合物(a1)に含有される官能基が脱水・縮合する反応である。なお、第1工程では、通常、化合物(a1)同士が脱水・縮合する反応も生じる。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応と、化合物(a1)とカルボン酸ビニル系重合体との反応とを同一系中において並行的に進行させることによって、高湿度下でのガスバリア性が良好な重合体含有組成物を得ることが可能となる。
第1工程では、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基100モルあたり、化合物(a1)中の金属原子(m1)が0.01〜75モルの範囲となるような量の化合物(a1)を使用することが好ましい。上記割合が0.01モル以上である場合には、得られる重合体含有組成物の高湿度下でのガスバリア性が良好となる。また、上記割合が75モル以下である場合には、得られる重合体含有組成物は、性能斑(溶液(T)の貯蔵に伴うガスバリア性能の格差)が小さい。また、この場合には、屈曲条件下に晒された後においてもガスバリア性を高度に保持することができる。高湿度下におけるガスバリア性、性能斑、および屈曲条件下にさらされた後におけるガスバリア性を考慮すると、カルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基100モルに対して、化合物(a1)中の金属原子(m1)が0.01〜50モル(より好ましくは0.1〜20モル、特に好ましくは0.1〜10モル)の範囲になるような量の化合物(a1)を使用することが好ましい。
第1工程では、一般的なけん化反応で用いられている公知の触媒を使用できる。触媒としては、たとえば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、炭酸等の酸性触媒;水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属;アンモニア、トリエチルアミンおよびエチレンジアミン等のアミン化合物等の塩基性触媒を用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
コーティング適性(粘度および塗膜の外観)が高い溶液(T)を得るため、およびガスバリア性能が高い重合体含有組成物を得るために、一般的には、第1工程には塩基性触媒を用いることが好ましく、その中でも水酸化アルカリ金属および水酸化アルカリ土類金属から選ばれる1種類以上の化合物を用いることがより好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムの中から選ばれる1種類以上の化合物が触媒として好ましく用いられる。触媒の使用量は必ずしも厳密に限定されないが、使用する化合物(a1)中のハロゲン原子およびアルコキシ基のモル数と使用するカルボン酸ビニル系重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基のモル数との和(総モル数)の1モルあたり、0.001〜0.1モルの範囲であることが好ましく、0.01〜0.08モルの範囲であることがより好ましい。
アルカリ金属化合物(たとえば水酸化アルカリ金属)および/またはアルカリ土類金属化合物(たとえば水酸化アルカリ土類金属)を触媒として用いた場合、第1工程で得られるビニルアルコール系重合体(b)は、副生成物であるカルボン酸塩を含む場合がある。このカルボン酸塩は、たとえば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウムに代表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。溶液(S)および溶液(T)の貯蔵安定性、ならびに重合体含有組成物のガスバリア性を考慮すると、該カルボン酸塩の量は、ビニルアルコール系重合体(b)の乾燥重量に対して5重量%以下であるのが好ましく、2重量%以下であるのがより好ましく、1重量%以下であるのがさらに好ましい。ビニルアルコール系重合体(b)は、ビニルアルコール系重合体を乾燥するための公知の方法で乾燥できる。乾燥は、常温で行っても加熱下で行ってもよく、常圧で行っても減圧下で行ってもよい。
カルボン酸塩の含有量は、たとえば、第1工程における触媒の使用量や、ビニルアルコール系重合体(b)の洗浄によって調整できる。ビニルアルコール系重合体(b)は、たとえば、アルコールや、アルコールと水との混合溶媒を用いた公知の方法によって洗浄できる。
第1工程においては、溶液(S)に含まれる水分量を管理することによって、ガスバリア性、溶液溶解性および溶液安定性が良好な重合体含有組成物を得ることが可能となる。溶液(S)に含まれる水分量は、必ずしも限定されるものではないが、溶液(S)に対して300〜200000ppm(重量比)の範囲にあることが好ましく、2000〜100000ppmの範囲にあることがより好ましく、3000〜80000ppmの範囲にあることがさらに好ましく、3000〜60000ppmの範囲にあることが特に好ましい。
溶液(S)としては、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(a1)とを溶媒に溶解させた溶液(ゾル)を用いることができる。用いる溶媒は、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(a1)の両方を十分に溶解し得るものである限り特に限定されないが、有機溶媒が好適に用いられる。該有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類といった溶媒を、単独で、または複数を混合して用いることができる。これらの中でも、メタノール、エタノール、およびジメチルスルホキシド等が特に好ましい。有機溶媒の使用量は必ずしも限定されないが、カルボン酸ビニル系重合体と化合物(a1)との総重量100重量部に対して、20〜2000重量部の範囲にあることが好ましく、100〜1000重量部の範囲にあることがより好ましい。ビニルアルコール系重合体(b)中のアシル基(カルボン酸ビニル単位に由来するアシル基)の残存率を下げるには、ビニルアルコール系重合体(b)と親和性を有する有機溶媒を5重量%以上の割合で含む均一な有機溶媒を用いることが好ましい。
第1工程において、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常は20〜100℃の範囲であり、好ましくは30〜60℃の範囲である。反応時間は触媒の量、種類等の反応条件に応じて相違するが、通常は0.01〜10時間の範囲であり、好ましくは0.01〜5時間の範囲であり、より好ましくは0.02〜3時間の範囲である。また、反応系の雰囲気は必ずしも限定されるものではなく、たとえば、空気雰囲気下や窒素気流下といった雰囲気を採用することができる。
第1工程ののち、化合物(a2)および/または該化合物(a2)から誘導されるオリゴマーと、第1工程で得られたビニルアルコール系重合体(b)と、ポリカルボン酸と、溶媒とを含む溶液(T)を調製する(第2工程)。以下、化合物(a2)および化合物(a2)から誘導されるオリゴマーを化合物(a2)成分と総称する場合がある。この工程は、たとえば、ビニルアルコール系重合体(b)とポリカルボン酸とを含む溶液(t)を調製し、その溶液(t)に、上記少なくとも1つの化合物(化合物(a2)成分)を添加することによって行うことができる。化合物(a2)成分は、単独で添加してもよいし、それを含む溶液の形態で添加してもよい。
溶液(t)は、たとえば以下の方法で調製できる。まず、第1工程の反応が終了した反応溶液から溶媒を除去し、固形分を得る。該固形分は、必要に応じて、溶媒を用いて公知の方法によって洗浄、乾燥する。溶媒には、アルコール溶媒や、アルコールと水との混合溶媒等を用いることができる。このようにして得られた固形分とポリカルボン酸とを溶媒に溶解する。溶媒には、たとえば、水や、水とアルコールとの混合溶媒を用いることができる。混合溶媒に用いられるアルコールとしては、たとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。このようにして溶液(t)が得られる。
溶液(T)は、化合物(a2)成分として、化合物(a2)から誘導されるオリゴマーのみを含むものであってもよい。この構成によれば、ガスバリア性が高い組成物が得られる。化合物(a2)のオリゴマーは、化合物(a2)、酸触媒、水、および必要に応じて有機溶媒を含む反応系(R)において、化合物(a2)を加水分解・縮合して得られるオリゴマーであることが好ましい。
以下、化合物(a2)からオリゴマーを製造する方法について説明する。なお、この方法は、化合物(a1)が、金属アルコキシドまたはハロゲン化金属から誘導されるオリゴマーである場合に、化合物(a1)を製造する方法にも同様に適用できる。
オリゴマーの製造に用いられる酸触媒としては、公知の酸触媒を使用でき、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等を使用できる。その中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸および酪酸が特に好ましい。酸触媒の好ましい添加量は、使用する触媒の種類によって異なるが、化合物(a2)成分に含まれる金属原子(m2)1モルあたり、0.00001〜10モルの範囲であることが好ましく、0.0001〜5モルの範囲であることがより好ましく、0.0005〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。触媒添加量がこの範囲にある場合、重合体含有組成物のガスバリア性、ならびに溶液(t)および溶液(T)の安定性が特に優れる。
また、反応系(R)に添加される水の量は、化合物(a2)成分の種類によって異なるが、化合物(a2)成分に含まれる金属原子(a2)1モルあたり、0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜4モルの範囲であることがより好ましく、1.5〜3モルの範囲であることがさらに好ましい。水の添加量がこの範囲にある場合、重合体含有組成物のガスバリア性、ならびに溶液(t)および溶液(T)の安定性が特に優れる。なお、水を含有する成分(たとえば塩酸)を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量が決定される。
反応系(R)には、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。添加される有機溶媒は、化合物(a2)成分が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール等のアルコール類が好適に用いられ、化合物(a2)成分に含まれるアルコキシ基と同種のアルコキシ成分を有するアルコールがより好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシランに対してはメタノールが好ましく、テトラエトキシシランに対してはエタノールが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、化合物(a2)成分の濃度が1〜90重量%(より好ましくは10〜80重量%で、さらに好ましくは20〜70重量%)の範囲となるような量であることが好ましい。
化合物(a2)のオリゴマーを製造する際の反応系(R)の温度は必ずしも限定されないが、通常は0〜100℃の範囲であり、好ましくは5〜60℃の範囲であり、さらに好ましくは10〜50℃の範囲である。反応時間は、触媒の量や種類といった反応条件に応じて異なるが、通常は0.01〜60時間の範囲であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲である。また、反応系(R)の雰囲気は、必ずしも限定されず、たとえば、空気雰囲気下や窒素気流下といった雰囲気を採用することができる。
溶液(T)は、たとえば、ビニルアルコール系重合体(b)とポリカルボン酸とを含む溶液と、反応が終了した反応系(R)とを混合することによって調製できる。溶液(T)に含まれる溶媒は、たとえば、上述した溶液(t)の溶媒や、反応系(R)の溶媒である。
本発明の製造方法において、化合物(a1)を溶媒に添加して溶液(S)を調製する場合、および、化合物(a2)成分を溶媒に添加して溶液(T)を調製する場合には、添加すべき全量を1度に添加してもよいし、添加すべき全量を複数回に分けて添加してもよい。
ガスバリア性能がより良好な重合体含有組成物を製造するために、溶液(T)のpHは、1.0〜8.0の範囲であることが好ましく、1.0〜6.0の範囲であることがより好ましく、1.5〜4.0の範囲であることがさらに好ましい。
溶液(T)のpHの調整には、公知の方法を用いることができる。例えば、塩酸、硝酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウム等の酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を添加することによってpHを調整することができる。
本発明の製造方法は、溶液(T)から溶媒を除去する工程を含んでもよい。溶媒を除去することによって、固形の重合体含有組成物が得られる。溶媒が除去される過程で、溶液(T)に含まれる成分中で反応が進行する。たとえば、化合物(a2)成分、ビニルアルコール系重合体(b)、およびポリカルボン酸(C)の、成分内および/または成分間において、加水分解反応や縮合反応などの反応が進行する。化合物(a2)成分の加水分解縮合反応が進行すると、金属酸化物が形成される。なお、溶媒を除去しないでコーティング剤やフィルム原料として用いることもできる。
溶媒の除去方法に特に限定はないが、熱風等で加熱して溶媒を除去する方法が好ましく適用される。加熱温度は、通常30〜200℃の範囲であることが好ましく、50〜150℃の範囲であることがより好ましい。乾燥時間は、通常0.001〜60時間の範囲であることが好ましく、0.002〜10時間の範囲であることがより好ましく、0.002〜1時間の範囲であることがさらに好ましい。また、溶媒を除去する際の雰囲気に、特に限定はなく、たとえば、空気雰囲気下や窒素気流下といった雰囲気を採用することができる。
重合体含有組成物には熱処理を施してもよい。熱処理は、溶液(T)からの溶媒除去がほぼ終了した後であれば、いつ施してもよい。熱処理温度は、好ましくは50〜250℃の範囲であり、より好ましくは60〜230℃の範囲である。
また、重合体含有組成物には、紫外線照射または電子線照射を施してもよい。紫外線照射および電子線照射は、溶液(T)からの溶媒除去がほぼ終了した後であればいつ施してもよい。その方法は特に限定されず、公知の方法を適用できる。
熱処理、紫外線照射、電子線照射は、それぞれ単独で行っても組み合わせて行ってもよい。熱処理、紫外線照射および電子線照射の少なくとも1つを施すことによって、重合体含有組成物およびそれを用いたガスバリア性シートのガスバリア性能と、レトルト処理後の力学的物性とがより良好になる。
(ガスバリア材)
本発明のガスバリア材は、上記本発明の重合体含有組成物からなる部分を含む。ガスバリア材の典型的な一例は、ガスバリア性シートであり、該部分は、本発明の重合体含有組成物からなる層である。なお、この明細書において、「シート」とは、板状のシートに加えて薄いシート(フィルム)を含む。ガスバリア性シートは、本発明の重合体含有組成物からなる層のみで形成されてもよいし、他の層を含んでもよい。本発明の重合体含有組成物は、公知の方法でシート状に加工できる。さらに、本発明の重合体含有組成物からなる層(シート)と、他の材料からなる層(シート)とを積層することによって、様々な特性を有する積層体が得られる。他の材料からなる層(シート)としては、たとえば、ポリエチレン(以下、「PE」と略記することがある)、ポリプロピレン(以下、「PP」と略記することがある)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と略記することがある)、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と略記することがある)等のポリエステル;ナイロン6(以下、「Ny6」と略記することがある)、ナイロン66(以下、「Ny66」と略記することがある)等のポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリウレタン等の重合体;紙;金属酸化物;金属等からなるシートが挙げられる。積層の方法は、ドライラミネートであっても湿式ラミネートであってもよく、材料に応じて選択される。
溶液(T)は、コーティング剤として使用できる。たとえば、布帛、紙、木材等の繊維集合体からなる基材に溶液(T)を含浸させた後、溶液(T)から溶媒を除去して反応を進行させることによって、繊維集合体(基材)の間隙に重合体含有組成物が充填された形態の複合体を製造できる。この複合体は、ガスバリア性を有する。
また、溶液(T)を、所定の基材にコーティングしたのち、乾燥しながら反応を進行させることによって、重合体含有組成物からなる塗膜を形成することができる。基材には、シート状の基材や成形品を適用できる。シート状の基材を用いることによって、本発明の重合体含有組成物からなる層を含む積層体が得られる。基材の材料としては、たとえば、PE、PP等のポリオレフィン;PET、PBT、PEN等のポリエステル;Ny6、Ny66等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の重合体等や紙;金属酸化物;金属等が挙げられる。
上記の積層体は、ポリエステル層、ポリアミド層およびポリオレフィン層から選ばれる少なくとも1つの層を含むことが好ましい。たとえば、本発明の重合体含有組成物を「重合体含有組成物」と表記した場合に、ポリエステル/重合体含有組成物、ポリアミド/本発明の重合体含有組成物、及びポリオレフィン/重合体含有組成物といった層構成から選ばれる1種以上の層構成を含む積層体が好ましい。さらに、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリアミド、又はポリアミド/重合体含有組成物という層構成を含む積層体がより好ましい。
上記の層構成を含む積層体の構成として、具体的には、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリオレフィン/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリエステル/ポリオレフィン、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリエステル/ポリオレフィン、重合体含有組成物/ポリエステル/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン/重合体含有組成物/ポリオレフィン、重合体含有組成物/ポリ塩化ビニル/紙、等を挙げることができる。なかでも、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリエステル/ポリオレフィン、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリエステル/ポリオレフィンが好ましく、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリオレフィン、ポリエステル/重合体含有組成物/ポリアミド/ポリオレフィン、ポリアミド/重合体含有組成物/ポリエステル/ポリオレフィンという層構成がより好ましい。また、得られる積層体の力学的特性の観点からは、ポリエステルとしてはPETを使用することが好ましく、ポリアミドとしてはNy6を使用することが好ましい。
基材上に溶液(T)からなる膜を形成する方法としては、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法等の公知の手法を採用することができる。この方法によれば、金属や金属酸化物との積層体を得ることもできる。さらに、各層を積層する際に、基材の種類に応じて一般的に用いられている公知のアンダーコーティング剤又は接着剤を使用してもよい。
本発明の製造方法で得られる重合体含有組成物は、酸素、水蒸気、炭酸ガス、窒素等の気体に対して優れたバリア性を有し、しかも、その優れたバリア性を高湿度条件下でも屈曲後でも高度に保持し得る。さらに、この組成物は、熱水やスチーム等による熱処理を受けたあとでも優れたガスバリア性を示す。このように、本発明の重合体含有組成物は、湿度等の環境条件に左右されない良好なガスバリア性を有し、屈曲条件に晒された後でも良好なガスバリア性を維持し、加熱による殺菌処理も可能である。このため、本発明の重合体含有組成物は、食品等の包装材に好適であり、特に、熱水やスチーム等による殺菌処理がなされるレトルト食品用の包装材として好適である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、以下の実施例において「%」および「部」は特に説明がない限り、「重量%」および「重量部」を意味する。
実施例および比較例に用いられるビニルアルコール系重合体の分析は、以下の方法(1)および(2)によって行った。
(1)アシル基量
カルボン酸ビニル系重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、及びそのけん化によって得られた組成物について、270MHz1H−NMR(日本電子製「JNM−GSX270」)を用いて重合体の単量体単位の組成を求めた。そして、重合体のアシル基含有量と、組成物のアシル基残存率とを定量した。
けん化反応によって得られた組成物については、少量の該組成物を採取し、乾燥して溶媒等の低沸点成分を除去した後にその重量を秤量した。次に、乾燥した組成物を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、存在量(モル数)が既知の基準物質(テトラメトキシシラン)の共存下において、270MHz1H−NMRを用いて分析を行った。けん化反応後の重合体が含有する単量体単位のうち、カルボン酸ビニル単位に由来する単量体単位としては、未反応のカルボン酸ビニル単位、ビニルアルコール単位、および、ビニルアルコール単位と化合物(a1)とが化学的に結合した構造を有する単量体単位、等がある(以後、これらの単量体単位を「カルボン酸ビニル由来の単量体単位」と総称する)。該組成物の単位重量当たりに含まれる全てのアシル基(アセチル基、プロピオニル基等)のモル数、および該組成物の単位重量当たりに含まれるカルボン酸ビニル由来の単量体単位のモル数を求め、両者の比からけん化反応後のアシル基残存率(モル%)を決定した。
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応の触媒として、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属を用いた場合には、けん化反応で副生するカルボン酸塩が乾燥では除去されないため、カルボン酸塩による影響を除去してアシル基残存率を決定した。具体的には、まず、後述する方法によって該組成物に含まれるカルボン酸塩の重量割合を求め、その重量割合から、該組成物の単位重量当たりに含まれる、カルボン酸塩由来のアシル基のモル数を算出した。次に、1H−NMRによって求めた該組成物中の全てのアシル基のモル数から、カルボン酸塩由来のアシル基のモル数を差し引いて、該組成物に単位重量あたりに含まれる重合体に結合しているアシル基のモル数を算出した。そして、算出したアシル基のモル数と、該組成物の単位重量当たりに含まれるカルボン酸ビニル由来の単量体単位のモル数との比から、けん化反応後のアシル基残存率(モル%)を決定した。
(2)カルボン酸塩量
カルボン酸ビニル系重合体のけん化反応で得られた組成物から少量の試料を採取し、白金るつぼに入れて電気炉(600℃)で熱処理した。次に、熱処理で得られた灰分中の金属原子含有率を、偏光ゼーマン原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z−5300」)を用いて定量した。該金属原子は、けん化反応によって副生するカルボン酸塩の形で存在するものみなし、けん化反応によって得られた重合体含有組成物に対するカルボン酸塩の割合(単位:重量%)を算出した。該重合体含有組成物の重量は、該組成物を65℃で24時間真空乾燥することによって溶媒を除去した乾燥状態で測定した。
<実施例1>
重合度500のエチレン−酢酸ビニル共重合体(エチレン変性率8モル%)を38重量%の割合で含むメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液400重量部に、テトラメトキシシラン13.3重量部およびメタノール84.1重量部を加え、溶液が均一になるように約10分間攪拌した。その後、溶液をサンプリングし、溶液中に含まれる水分量を測定した。そして、溶液中に含まれる水分量が5000ppmになるように水を添加した。
得られた溶液(S)に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(水酸化ナトリウム10%)20.9重量部を加え、40℃でけん化反応を行った。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してから約10分間で溶液がゲル化した。ゲル化した後も、40℃の温度で生成物をさらに20分間放置し、けん化反応を進めた。けん化反応後、得られたゲルを粉砕し、これに1500重量部のメタノールを加え、系の温度を40℃に保持して1時間攪拌した。攪拌後、ろ過によってメタノールを除去し、再度1500重量部のメタノールを加えた。次に、系の温度を40℃に保持して1時間攪拌した。その後、ろ過によって生成物からメタノールを除去し、65℃に調整された熱風乾燥器中で、生成物を20時間かけて乾燥した。このようにして、ビニルアルコール系重合体(b)を得た。このビニルアルコール系重合体(b)およびその組成物を分析したところ、エチレン−酢酸ビニル共重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基の残存率が1.0モル%で、残存酢酸ナトリウム量が1.0重量%であった。また、ビニルアルコール系重合体(b)に結合しているSi原子の量は、けん化前のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基100モルに対し5.0モルであった。
このビニルアルコール系重合体(b)45.0重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した後、その水溶液にリンゴ酸5.0重量部を溶解させた。このようにして、ビニルアルコー系重合体(b)/リンゴ酸の重量比が90/10である溶液(t)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次にテトラメトキシシラン68.6重量部をメタノール68.6重量部に溶解した後、蒸留水4.6重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.3重量部とを加え、これを攪拌しながら40℃で1時間反応を行うことによってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水118.0重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに(t)を添加し、溶液(T)を調製した。溶液(T)は、その調製後、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
一方、アンカーコート剤(2液形、三井武田ケミカル株式会社製タケラックA3210およびタケネートA3072、「AC」と記載することがある)を延伸PETフィルム(東レ製ルミラー、厚さ12μm、「OPET」と記載することがある)にコートし、乾燥させて基材を作製した。この基材上に、溶液(T)を乾燥後の厚さが1μmになるようにバーコーターによってコートし、80℃で5分間乾燥したのち、さらに200℃で5分間熱処理を行った。このようにして、無色透明で外観良好な塗膜を有する積層体(重合体含有組成物(1μm)/AC/OPET(12μm))を得た。該積層体を用いて重合体含有組成物中の金属酸化物の含有量および該積層体のYIを以下の方法にしたがって測定した。本実施例における重合体含有組成物中の金属酸化物の含有量は40重量%であり、上記積層体のYIは10だった。
(3)金属酸化物含有量
予め重量を測定しておいたアンカーコート層/OPET層(12μm)からなる積層体に、上記の方法で重合体含有組成物をコートし、重合体含有組成物層(1μm)/アンカーコート層/OPET層(12μm)からなる積層体(サイズ:10cm×10cm)を作製した。作製した積層体を、60℃の真空乾燥器に24時間入れたのち、積層体に付着している水を除去した。乾燥後の積層体の重量から、予め測定しておいたアンカーコート層/OPET層の重量を引き、積層体中の重合体含有組成物の重量を求めた。
次に、該積層体を電気炉に入れ、空気を供給しながら、電気炉の温度を室温から600℃まで昇温し、さらに600℃で5時間保持し、有機成分を完全に熱分解して除去した。そして、この熱処理によって得られた白色の無機化合物の重量を測定した。熱分解前の重合体含有組成物の重量と、熱分解後に得られた重量とから、重合体含有組成物中の金属酸化物の含有量を算出した。
(4)積層体の着色の評価(YIの測定)
上記作製した重合体含有組成物(1μm)/AC/OPET(12μm)からなる積層体を8枚重ねたサンプルのYI(イエローインデックス)を、JIS−K−7103に準じて測定した。
さらに、延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ製エンブレム、厚さ15μm、以下ONyと記載することがある)、およびポリプロピレンフィルム(トーセロ製RXC−18、厚さ50μm、以下「PP」と記載することがある)上に、それぞれ接着剤(東洋モートン製AD−385、A−50)をコートし、乾燥した。この2種類のフィルムと、上記積層体(重合体含有組成物/AC/OPET)とをラミネートし、PP/接着剤/OPET/AC/重合体含有組成物/接着剤/ONyという構造を有する積層体を得た。該積層体を用いてレトルト処理用のサンプルを作製し、レトルト処理前の酸素透過度を測定した。また、該サンプルを用いてレトルト処理後の酸素透過度の測定と外観評価とを行った。この積層体を用いて熱水処理後の剥離強度を測定した。
(5)レトルト処理前の酸素透過度の測定
12cm×12cmの正方形の積層体(PP/接着剤/OPET/AC/重合体含有組成物/接着剤/ONy)を作製し、酸素透過度測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて、温度20℃、湿度95%RH且つ酸素圧24.5N/cm2(2.5kgf/cm2)の条件下でそれぞれ酸素透過度(単位:cc/m2・24hr・atm)を測定した。
(6)レトルト処理後の酸素透過度の測定およびサンプルの外観の評価
12cm×12cmの正方形の積層体(PP/接着剤/OPET/AC/重合体含有組成物/接着剤/ONy)を2枚作製し、それぞれの積層体のPP面が内側になるように2枚を重ね合わせた。そして、重ね合わせた2枚の正方形の3辺について、端から5mmの幅でヒートシールし、その後、蒸留水80gを入れた。続いて、内部に空気が残らないように空気抜きをしながら残りの1辺をヒートシールした。
次に、得られた袋を以下の方法でレトルト処理した。まず、袋をオートクレーブに入れ、オートクレーブに水を注入して袋を完全に浸漬させた。次に、オートクレーブを昇温して120℃にした後、オートクレーブを120℃に30分間保持した。その後、オートクレーブの内部温度を10分間で60℃まで降温した。温度が60℃に到達した時点でオートクレーブから袋を取出し、袋の表面に付着している水をふき取った後、20℃、65%RHに設定された恒温恒湿の部屋に1時間放置した。このようにして、レトルト処理を行った。
レトルト処理後、袋の外観を観察した。次に、袋のヒートシール部分を切って、1枚の積層体を取り出し、酸素透過度測定装置に積層体をセットした。酸素透過度測定装置には、モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」を用いた。酸素供給側にNy6面を配置し、酸素が透過していく側にPP面を配置した。酸素供給側の湿度は65%RHとし、酸素が透過していく側の湿度は100%RHとした。また、温度は20℃、酸素圧は24.5N/cm2(2.5kgf/cm2)とした。このような条件で、酸素透過度(単位:cc/m2・24hr・atm)を測定した。
レトルト処理後の外観の評価は、以下の基準に従って評価した。
○:レトルト処理前と比較して外観の変化がない。
△:袋の端部などで、僅かに剥離している部分がある。あるいは表面がやや荒れている。
×:大きな剥離がある。あるいは表面が大きく荒れている。
(7)レトルト処理後の積層体の剥離強度
2.5cm×15.5cmの長方形の積層体(PP/接着剤/OPET/AC/重合体含有組成物/接着剤/ONy)を作製し、オートクレーブに入れた。続いて、オートクレーブに水を注入し長方形の積層体が完全に浸漬するようにした。そして、オートクレーブを120℃まで昇温した後、120℃で30分間保持した。その後、オートクレーブの内部温度を10分間で60℃まで降温した。温度が60℃に到達した時点で、オートクレーブから積層体を取出し、20℃の水中に浸漬した。浸漬した状態を60分間保った。水中から取出した後、素早く1.5cm幅にカットし、重合体含有組成物と接着剤との間の界面を露出させ、剥離強度測定装置にセットした。そして、T−剥離強度を測定した。水中から取出してから、剥離強度の測定を開始するまでの時間を4分とした。測定は、株式会社島津株製AUTOGRAPH AG−5000Bを用いて行った。
<実施例2>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)45.0重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した。そして、該水溶液にコハク酸5.0重量部を溶解させ、ビニルアルコー系重合体(b)/コハク酸の重量比が90/10である溶液(t)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次に、テトラメトキシシラン68.6重量部をメタノール68.6重量部に溶解した後、蒸留水4.6重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.3重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水118.0重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t)を添加して溶液(T)を得た。溶液(T)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<実施例3>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)45.0重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した。そして、該水溶液に酒石酸5.0重量部を溶解させ、ビニルアルコー系重合体(b)/酒石酸の重量比が90/10である溶液(t)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次に、テトラメトキシシラン68.6重量部をメタノール68.6重量部に溶解した後、蒸留水4.6重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.3重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水118.0重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t)を添加して溶液(T)を得た。溶液(T)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<実施例4>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)47.0重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した。そして、該水溶液にリンゴ酸3.0重量部を溶解させ、ビニルアルコー系重合体(b)/リンゴ酸の重量比が94/6である溶液(t)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次に、テトラメトキシシラン67.9重量部をメタノール67.9重量部に溶解した後、蒸留水4.5重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.2重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水116.8重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t)を添加して溶液(T)を得た。溶液(T)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<実施例5>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)48.5重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した。そして、該水溶液にリンゴ酸1.5重量部を溶解させ、ビニルアルコー系重合体(b)/リンゴ酸の重量比が97/3である溶液(t)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次に、テトラメトキシシラン67.4重量部をメタノール67.4重量部に溶解した後、蒸留水4.5重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.1重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水115.9重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t)を添加して溶液(T)を得た。溶液(T)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<比較例1>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)49.75重量部を蒸留水450.0重量部に溶解させて水溶液を調製した。そして、該水溶液にリンゴ酸0.25重量部を溶解させ、ビニルアルコー系重合体(b)/リンゴ酸の重量比が99.5/0.5である溶液(t−c1)500.0重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。
次に、テトラメトキシシラン67.0重量部をメタノール67.0重量部に溶解した後、蒸留水4.5重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.0重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水115.2重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t−c1)を添加して溶液(T−c1)を得た。溶液(T−c1)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T−c1)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<比較例2>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)45.0重量部を蒸留水に溶解させて水溶液450重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。また、ポリアクリル酸(株式会社日本触媒製 PSA−HL415、数平均分子量1万)5.0重量部を蒸留水に溶解させて水溶液50重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。次に、2つの水溶液を混合し、ビニルアルコール系重合体(b)/ポリアクリル酸の重量比が90/10である溶液(t−c2)500.0重量部を調製した。
次に、テトラメトキシシラン68.6重量部をメタノール68.6重量部に溶解した後、蒸留水4.6重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.3重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水118.0重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t−c2)を添加して溶液(T−c2)を得た。溶液(T−c2)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T−c2)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<比較例3>
実施例1と同様の方法でビニルアルコール系重合体(b)を調製したのち、ビニルアルコール系重合体(b)45.0重量部を蒸留水に溶解させて水溶液450重量部(固形分濃度10重量%)を調製した。また、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体(P(MA/IB):株式会社クラレ製イソバン600、数平均分子量6000)を、無水マレイン酸のカルボキシル基に対して0.75倍モルのアンモニアを含むアンモニア水に、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体塩の濃度が10重量%となるように溶解させて水溶液50.0重量部を調製した。次に、2つの水溶液を混合し、ビニルアルコール系重合体(b)/イソブチレン−マレイン酸交互共重合体塩の重量比が90/10である溶液(t−c3)500.0重量部を調製した。
次に、テトラメトキシシラン68.6重量部をメタノール68.6重量部に溶解した後、蒸留水4.6重量部と0.1N(0.1規定)−塩酸11.3重量部とを加え、得られた溶液を攪拌しながら40℃で1時間反応を行ってゾルを調製した。得られたゾルを蒸留水118.0重量部で希釈した後、これを攪拌しながら速やかに上記溶液(t−c3)を添加して溶液(T−c3)を得た。溶液(T−c3)は、その調製後に、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T−c3)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
<比較例4>
重合度500のエチレン−酢酸ビニル共重合体(エチレン変性率8モル%)を38重量%の割合で含むメタノール溶液400重量部を調製した。該メタノール溶液にメタノール85.6重量部を加え、溶液が均一になるように約10分間攪拌した。
得られた溶液に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(水酸化ナトリウム10%)20.9重量部を加え、40℃でけん化反応を行った。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してから約10分間で溶液がゲル化した。ゲル化した後も、40℃の温度で生成物をさらに20分間放置し、けん化反応を進めた。けん化反応後、得られたゲルを粉砕し、これに1500重量部のメタノールを加え、系の温度を40℃に保持して1時間攪拌した。攪拌後、ろ過によってメタノールを除去し、再度1500重量部のメタノールを加えた。次に、系の温度を40℃に保持して1時間攪拌した。その後、ろ過によって生成物からメタノールを除去し、65℃に調整された熱風乾燥器中で、生成物を20時間かけて乾燥した。このようにして、ビニルアルコール系重合体を得た。このビニルアルコール系重合体およびその組成物を評価したところ、エチレン−酢酸ビニル共重合体中のカルボン酸ビニル単位に由来するアシル基の残存率が0.8モル%で、残存酢酸ナトリウム量が0.6重量%であった。このビニルアルコール系重合体45.0重量部を蒸留水450.0重量部に溶解して水溶液を調製した後、これにさらにリンゴ酸5.0重量部溶解させ、ビニルアルコール系重合体/リンゴ酸の重量比が90/10である溶液(t−c4)500.0重量部を調製した。
次に、コロイダルシリカ溶液(日産化学工業株式会社製、スノーテックスST−XS、平均粒子系4〜6nm、SiO2濃度20%)166.7重量部に水166.7重量部を加えて希釈して混合液333.4重量部(SiO2濃度10%)を調製した。この混合液を攪拌しながら溶液(t−c4)を添加し、溶液(T−c4)を得た。調製した溶液(T−c4)は、25℃の雰囲気下で1時間放置した。
実施例1で調製した溶液(T)の代わりに、上記方法で作製した溶液(T−c4)を用いることを除いて実施例1と同じ方法で評価用のサンプルを作製し、実施例1と同じ方法でその評価を行った。
実施例および比較例の製造条件の一部および評価結果を表1に示す。
実施例1〜5の積層体は、レトルト処理前後で酸素バリア性が高く、剥離強度も高かった。また、それらの積層体は、レトルト処理後においても着色が少なく良好な外観を示した。
比較例1の積層体は、レトルト処理前の酸素透過度は低かったが、レトルト処理によって重合体含有組成物の層で剥離したため、剥離強度及び酸素透過度の測定ができなかった。比較例2の積層体は、レトルト処理後の剥離強度は高かったが、レトルト処理前後の酸素バリア性が低かった。また、レトルト処理による着色が強かった。比較例3の積層体は、レトルト処理後の剥離強度は高かったが、レトルト処理前後の酸素バリア性が低かった。また、レトルト処理による着色が非常に強かった。比較例4の積層体は、レトルト処理前からすでに塗膜が白化しており外観が不良であった。そして、レトルト処理を施すことによってさらに塗膜が白化し、外観が一段と不良になった。また、比較例4の積層体は、レトルト処理後の剥離強度は比較的高かったが、レトルト処理前後の酸素バリア性は低かった。