JP2005306727A - 高アスペクト比酸化鉄ウィスカー、高アスペクト比酸化チタンウィスカー及びこれらを含む構造並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鉄以外の金属原子の含有率が10at%以下、直径5nm以上2μm以下でかつアスペクト比が20以上の酸化鉄ウィスカー、チタン以外の金属原子の含有率が10at%以下であって、直径5nm以上20μm以下、かつアスペクト比が5以上の酸化チタンウィスカー、及びこれらのウィスカーを密に立設した基板などの構造体。
上記ウィスカーは磁気特性などに優れ、又これらを立設した構造体は、触媒として接触面積が大きく、かつ目詰まりを生じないなどの優れた特性を有し、有用である。
これらの酸化物ウィスカーは、鉄系又はチタン系材料を高温化で酸化性雰囲気に接触させて表面の鉄又はチタン原子と接触した酸素を反応させ、酸化物ウィスカーとして成長させる。
【選択図】 図1
Description
酸化チタンには幾つかの安定相があるが、この中でTiOは、金属的な導電性を有し、また高強度、高融点など材料として優れた性質を併せ持っている。また、TiOは触媒作用もある(特開2001−199796号公報)。チタニア(TiO2)の結晶構造には、正方晶系高温型のルチル型、正方晶系低温型のアナターゼ型および斜方晶系ブルッカイト型の3種類があり、アナターゼ型チタニアは、高い光触媒作用と光親水性作用とを有することが知られている。
酸化チタンウィスカーとしては、結晶全体が高いアスペクト比の直線構造をとる、単結晶であることが望ましい。これに加えて本発明で言うウィスカーとはそのような結晶構造のみならず、カーボンナノチューブに見られるような、断面が単層環状型、多層型、渦巻き型のものをも含み、さらに炭素繊維に見られるような、断面がオニオン型、ラジアル型の多結晶構造、まただるま落としの玩具ように長さ方向に結晶を繋ぎ合わせた多結晶構造をも含む。また、ウィスカーの外観形状は高いアスペクト比を示しながらも、直線には限定されず、全体が渦を巻いたような螺旋構造、糸同士が無秩序に絡まり合ったフエルト構造の形状のものをも含む。さらに、一点より多数のウィスカーが成長したもの、樹枝状に形成されたもの、折線状に成長したものも含まれる。
本発明は、これらの酸化物をウィスカーとして微細な針状結晶体を得ると共に、その形態をこれらの特性を発揮する高アスペクト比を実現し、且つこれらのウィスカーを密に配列した構造を実現して流体中の触媒としての接触面積確保やその他の有用な機能を提供し、さらにそれらの製造方法を提供する。
即ち、本発明は、
鉄系材料からなる基板最表層上に直接高アスペクト比の酸化鉄ウィスカーを立設した基板であり、上記酸化鉄ウィスカーが、酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄とから基板最表層上に直接析出成長したものとすることができる。
また、本発明は、チタン系材料からなる基板最表層上に直接高アスペクト比の酸化チタンウィスカーを立設した基板であり、上記酸化チタンウィスカーが酸素を含有する気体雰囲気と高温度のチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給されるチタンとから基板最表層上に直接析出成長したものとすることができる。
更に、酸化鉄ウィスカーとして、鉄以外の金属原子含有率10atm%以下、直径5nm〜2μm、アスペクト比20以上の高アスペクト比酸化鉄ウィスカーであり、その高アスペクト比酸化鉄ウィスカーとして、酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄とから、該基板上に析出形成して得られた高アスペクト比酸化鉄ウィスカーとすることができる。
また、本発明は、直径5nm〜20μm、アスペクト比5以上の高アスペクト比酸化チタンウィスカーであり、その高アスペクト比酸化チタンウィスカーとして、酸素を含有する気体雰囲気と高温度のチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給されるチタンとから、該基板上に析出形成して得られた高アスペクト比酸化チタンウィスカーとすることができる。
更に本発明は、酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄又はチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄又はチタンとから、それらの酸化物ウィスカーを析出成長させることを特徴とする、高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造方法であり、
また、酸素を含有する気体雰囲気と高温度の金属基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される金属とから、それらの酸化物ウィスカーを析出成長させる高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造において、
基板の厚み方向の温度勾配を設けてウィスカーの成長を促進することを特徴とする高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造方法である。
さらに基板表面に酸化鉄ウィスカーを密に立設した配列構造を実現したことにより、反応流体中で大きな接触反応面積を確保すると共に目詰まりや固化を起こしにくく、触媒効率が高く、かつ再利用が容易な炭酸ガス分解触媒として機能を発揮するなど、酸化鉄ウィスカーの性質を利用した多くの応用を可能とした。
本発明の酸化チタンウィスカーは、大きなアスペクト比を有して、大きな有効面積を有し、光触媒として優れた特性を発揮する。
また、基板表面に酸化チタンウィスカーを密に立設した配列構造体は、流体中で触媒として用いる場合、接触反応面積が大きいと共に目詰まりや固化を起こしにくく、触媒効率が高く、かつ再利用が容易であるなど、酸化チタンウィスカーの特性を利用した多くの用途への応用が可能である。
本発明の酸化鉄ウィスカーの特徴は、直径がこの種のウィスカーとしては微細な5nmから、充分に太い2μmまで幅広く作り分けられ、かつ製造設備と操業時間の制約が無ければ長さが10m、100mといくらでも連続して長くできることにある。しかし磁気記録用磁性粒子や触媒などの実際の用途には、長さがセンチメートルやメートルオーダーの長いウィスカーは粉砕して、アスペクト比が二桁程度の短いものにして利用されるので、望ましくは長さ1μmから100μmまでのもので十分である。ウィスカーの長さは図2に示すような顕微鏡写真で、長さをノギス等で測定し倍率を計算することで求まる。ウィスカーの直径は、図1、図3に示すような顕微鏡写真で直径を測定して得られる。アスペクト比が厳密に制御された酸化鉄ウィスカーが必要な場合は、アスペクト比が充分大きいものを粉砕して分粒するよりも、本明細書で述べる酸化鉄生成方法において生成時間を区切ることで、均一のアスペクト比の酸化鉄ウィスカーを容易に得ることができる。 ウィスカー断面は一般には多角形であるが、本発明で言うウィスカーの直径とは、これらの多角形断面を円周内に含む円の直径をさす。
すなわち、少数の原子が結晶構造をとっているマイクロクラスターは直径50nm程度の大きさに小さくなると、結晶表面にある結合手が切れた原子の割合が結晶全体の原子数に対して増加することにより不安定になり、原子同士の結合力が弱くなる。ウィスカーのような一次元(線状)物質では上記の効果が、一次元に連なる結合によってある程度緩和されるので、結合力の低下が現れる寸法上の下限が低下する。酸化鉄ウィスカーでは実用上許容される直径の下限が請求項で言う直径5nmであることが明らかになった。
上限の直径2μmの値は、本発明の目的である磁気記録用磁性体及び触媒で用いられるウィスカーの直径が2μmを越えると、記録密度もしくは触媒効率の点で、産業上役に立たなくなるということから規定される。
以上に述べた酸化鉄ウィスカーは、図5で示すような鉄系材料基板を有酸素雰囲気中で加熱する方法でも、該基板表面に成長させることができる。
第一過程:基板表層での鉄原子の優先酸化。
本明細書で述べている酸化鉄ウィスカー生成過程は平衡反応過程であるので、基板表面での原子の酸化挙動は酸化物の平衡解離圧po2[atm]で整理できる。この平衡解離圧po2は雰囲気(もしくは原子周囲の自由酸素分子)の酸素分圧に置きかえられ、酸素分圧がこれよりも大きいと原子は酸化され、酸素分圧がそれよりも小さければ酸化されない。図6に平衡解離圧の温度依存性の模式図を示す。横軸が温度、縦軸が平衡解離圧=平衡酸素分圧である。ちなみに空気は酸素を20.9vol%含むので、1気圧の大気中の酸素分圧は0.209atmである。例えばここで大気中に曝された200℃の材料が酸化されるか否かを知るには、構成原子の酸化物の平衡解離圧曲線が図6の200℃で、縦軸目盛の0.209より下にあれば酸化され、上にあれば酸化されないと読み取ることで知ることができる。図6中酸化物MOの平衡解離圧曲線はどの酸化鉄よりも上にある。これは原子Mが鉄と比較して、図示する温度範囲で酸素と化合しにくいことを意味し、雰囲気酸素は優先的に鉄を酸化する。このような原子に窒素、コバルト、ニッケル、銅、パラジウムなどが挙げられる。逆に酸化物LOの平衡解離圧曲線はどの酸化鉄よりも下にあり、酸素を鉄原子よりも先に奪ってしまうので酸化鉄ウィスカー生成のための固溶原子には不適である。この様な原子にはチタン、クロム、ニオブなどが挙げられる。
何らかの原因によって、結晶の一つの表面だけが他の表面に比べて極端に早く成長すると、非常に細長いウィスカー状の結晶が得られる。ウィスカーの成長機構には、一つ目にはただひとつの結晶表面にだけ露頭した螺旋転移による優先的なスパイラル成長、二つ目には先端に常に液滴を載せながら成長するVLS成長、そして三つ目には基板の固体表面の上に生成した結晶の根元にだけ原子の補給が行われる根元補給成長などがある。これまでに述べた酸化鉄ウィスカー生成過程は鉄原子に関して言えば上記三つ目の根元補給成長にあたるが、根元で一度生成したウィスカーの幹が根元から押し上げられて基板から徐々に離れていく過程では尚、酸化の余地がある高温と大気に曝される場合もあるので、状況は複雑である。また、図3に示す様に太さ500nm以上の酸化鉄ウィスカーには竹の節のように太さの周期的な変動を示すものもある。この現象はシリコンウィスカーのVLS成長においても見られるが、最も詳しく調べられているVLS機構においてさえ、この現象がどのようなしくみで起こるのかは明確にされていない。この様に酸化鉄ウィスカーの成長にはいまだ未知の部分が多い。
基板の厚み方向に温度勾配を設け、その高温側から不純物原子である固溶原子を拡散させる。基板の高温側と比較して低温側は固溶限が小さいので、高温側から拡散してくる固溶原子を高温側に押し戻そうという働きが生じ、その結果基板の鉄原子を低温側の表層に押し出そうとする熱力学上の力が生じる。こうして掃き出された鉄原子が雰囲気の酸素と化合して酸化鉄ウィスカーとなる。以下補足を述べると、固溶原子には水素、炭素、窒素、酸素、ボロンのような侵入型原子と、カルシウム、ニッケル、クロム、シリコン、アルミニウム、硫黄、リン、バナジウム、チタン、ニオブ、モリブデン、タングステン、マンガン、銅、コバルト、タンタル、セレンのような置換型原子とがあり、酸化鉄ウィスカー生成には侵入型、置換型双方の型の原子が固溶原子として使用できる。ただし鉄に対して固溶限がない原子は鉄掃き出し効果を生じないので使用できない。その代表的なものは酸素原子である。
固溶原子を上記の目的のために拡散させるには基板に温度勾配をつけた方が有効である。その際、固溶原子供給側の高温側は、基板が溶融する温度よりも高くても低くても構わないが、低温側は基板がウィスカーを生成させる土台となるため基板の融点以下でなくてはならない。
以上は、酸化鉄ウィスカーの形成について基板に温度勾配を形成することによりウィスカーの形成を促進できることを説明したが、これらの手法は以下に実施例においても示すように酸化チタンウィスカーの形成においても有効であり、さらに原理的にはこれら以外の金属を対象とする場合にも適用することができる。
本発明で言うウィスカーを生成させる基板となる鉄系材料は次のようなものである。
(1)純鉄。この純鉄には例えば走査型トンネル顕微鏡のプローブで鉄原子一つ一
つを並べて得られるような、原子オーダーで文字通り100%の純鉄から、不可抗力の不純物を微量に含む工業的な冶金で得られる純鉄までも含む。
(2)鉄原子を重量比で10%以上99.999%以下含む合金で、0.001重量% 以上90重量%以下含まれる鉄以外の原子が次の文に列挙される原子のどれか1種かあるいは2種以上を含む化合物や混合物。鉄以外の原子とは、原子番号3番(リチウム)から103番(ローレンシウム)までの全ての原子でかつこれらからVIII族(希ガス)原子と鉄原子とを除いたものである。これらの原子には天然同位体比で同位体を含むものや、同位体分離によって質量数の同じ原子のみからなるものも含む。ここで述べる鉄以外の原子は、前記固溶原子とは異なって、酸化物の平衡解離圧の大小によっては限定されない。
(3)鉄原子を重量比で0.001重量%以上10%未満含むもので、鉄以外に含まれ
る原子は、その酸化物が温度50℃から1500℃の間で平衡解離圧がヘマタイト(Fe2O3)よりも高いもの。この様な原子には、例えばコバルト、ニッケル、銅などがあり、そのような性質をもつ原子を1種もしくは2種以上を含む鉄化合物もしくは鉄混合物。
(4)上記1,2、3で述べた材料を層状に組み合わせたり、部分的にはめ込んで組み
合わせたり、混合させたり、共析物とさせている材料。
基板の形状は問わない、板・箔状でも棒状でも、機械加工もしくは鋳物や接着・熔接で複雑な形状に仕上げられたものでも、前記に述べた原理を満たすもので、固体であればどんな形でも良い。
基板に付加される温度は、ウィスカーが生成する低温側基板表面が50℃以上1500℃以下、望ましくは600℃以上1000℃以下。加熱側は、前者低温側よりも温度が高いという条件で、100℃以上2000℃以下が望ましく、加熱側は場合によっては基板が溶融状態でも構わない。
本発明の酸化チタンウィスカーの特徴は、直径がこの種のウィスカーとしては微細な5nmから、充分に太い20μmまで幅広く作り分けられ、かつ製造設備と操業時間の制約が無ければ長さが10m、100mといくらでも連続して長くできることにある。しかし触媒などの実際の用途には、長さがセンチメートルやメートルオーダーの長いウィスカーは粉砕して、アスペクト比が二桁程度の短いものにして利用されるので、望ましくは長さ1μmから100μmまでのもので十分である。ウィスカーの長さ、直径は酸化鉄ウィスカーと同様に顕微鏡写真で、ノギス等で測定し倍率を計算することで求まる。アスペクト比が制御された酸化チタンウィスカーが必要な場合は、アスペクト比が充分大きいものを粉砕して分粒するよりも、本明細書で述べる酸化チタンウィスカー生成方法において酸素分圧、生成時間、温度を適切に制御することで、均一のアスペクト比の酸化チタンウィスカーを得ることができる。 ウィスカー断面は図8に図示すように一般には多角形であるが、本発明で言うウィスカーの直径とは、それらの多角形断面を円周内に含む円の直径をさす。
上限の直径20μmの値は、本発明の目的である触媒で用いられるウィスカーの直径が20μmを越えると、ウィスカー体積に対し表面積が小さくなり触媒効率の点で、産業上役に立たなくなるということから規定される。
以上に述べた酸化チタンウィスカーは、何らかの原因によって、結晶の一つの表面だけが他の表面に比べて極端に早く成長するとし、非常に細長いウィスカー状の結晶がとして得られる。ウィスカーの成長機構には、一つ目にはただひとつの結晶表面にだけ露頭した螺旋転移による優先的なスパイラル成長、二つ目には先端に常に液滴を載せながら成長するVLS成長、そして三つ目には基板の固体表面の上に生成した結晶の根元にだけ原子の補給が行われる根元補給成長などがある。これまでに述べた本製造法での酸化チタンウィスカー生成過程はチタン原子に関して言えば上記三つ目の根元補給成長にあたると考えられるが、根元で一度生成したウィスカーの幹が根元から押し上げられて基板から徐々に離れていく過程では尚、酸化の余地がある高温と大気酸素に曝される場合もあるので、状況は複雑である。この様に酸化チタンウィスカーの成長にはいまだ未知の部分が多いので、酸化鉄ウィスカー生成の第二過程で既に述べたのと同様、所定の酸化チタンウィスカーを成長させる「最適な環境場」を実現させるための雰囲気は、個々の装置と設定条件に則して、試行錯誤で設定せざるを得ないのが実状である。
(5) チタン。この純チタンには例えば走査型トンネル顕微鏡のプローブでチタン原子一つ一つを並べて得られるような、原子オーダーで文字通り100%の純チタンから、不可抗力の不純物を微量に含む工業的な冶金で得られる純チタンまでも含む。
(6) チタン原子を重量比で10%以上99.999%以下含む合金で、0.001重量%以上90重量%以下含まれるチタン以外の原子が次の文に列挙される原子のどれか1種かあるいは2種以上を含む化合物や混合物。チタン以外の原子とは、原子番号3番(リチウム)から103番(ローレンシウム)までの全ての原子でかつこれらからVIII族(希ガス)原子とチタン原子とを除いたものである。これらの原子には天然同位体比で同位体を含むものや、同位体分離によって質量数の同じ原子のみからなるものも含む。
(7) チタン原子を重量比で0.001重量%以上10%未満含むもので、チタン以外に含まれる原子は、その酸化物が温度50℃から580℃の間で平衡解離圧がTiOよりも高いもの。この様な原子には、例えばスズ、バナジウム、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、シリコン、銅などがあり、そのような性質をもつ原子を1種もしくは2種以上を含むチタン化合物もしくはチタン混合物。一方、チタンへの合金元素で使用してはいけないものとして、リン、カルシウムなどが上げられる。
(8) 上記1,2、3で述べた材料を層状に組み合わせたり、部分的にはめ込んで組み合わせたり、混合させたり、共析物とさせている材料。
基板の形状は問わない、板・箔状でも棒状でも、機械加工もしくは鋳物や接着・熔接で複雑な形状に仕上げられたものでも、前記に述べた原理を満たすもので、固体であればどんな形でも良い。
図10に示すのは、全長にわたって結晶欠陥を有する酸化鉄ウィスカーの電子顕微鏡写真である。
この効果により本発明で述べるウィスカーは、触媒に使用される場合でも、ガス流れから受ける外部応力に対して、基板から脱落しにくいので、実用性に優れている。
ウィスカーの生える方向をそろえるためには、基板の酸化物結晶の方位に配向性を持たせれば良い。そのためには、面方位が(110)や(100)などに揃った基板に用い、この最表面を酸化させ、ウィスカーを成長させる基板とする。もしくは基板表層の酸化物結晶粒を選択エッチングすることで、ウィスカーの成長しやすい酸化物結晶面を残す、という方法が採れる。
また、ウィスカーの生える密度を上げるためには、基板表層の酸化物結晶粒径を細かくするという方法を取れる。そのほかの方法として、図2に示す様に、1つの酸化鉄結晶粒から複数のウィスカーを成長させるという方法を採用することができる。
また、基板のウィスカー発生側の表面に引張り、圧縮、せん断力による塑性変形を与え、基板金属の結晶粒を微細化したり、歪を与えて、多数の転位を導入することによりそこに高密度にウィスカーを成長させる方法も採用することができる。
本発明においては基板の形状は問わない。板・箔状でも棒状でも、機械加工もしくは鋳物や接着・熔接で複雑な形状に仕上げられたものでも、使用目的に応じどんな形でも良い。 ハニカム状、チューブ状の基板とし、内壁、外壁にウィスカーを成長させてもよい。
本発明で規定する酸化鉄ウィスカーは、樹枝状粒子が混在していない微細な酸化鉄ウィスカーを得ることができ、高密度の磁気記録用磁性体として最適な素材である。さらにその細さと強度の高さからマイクロマシンの部品として有用である。
また、基板上に上向きに成長した微細な直径の高アスペクト比の酸化鉄ウィスカーを形成した構造は、触媒効率の高い目詰まりを生じない炭酸ガス分解用の優れた触媒として有用である。
また、基板上に上向きに成長した微細な直径の高アスペクト比の酸化チタンウィスカー形成した構造は、光触媒として応用することにより、反応面積が大きく、目詰まりの起こりにくい特性を発揮することができる。
図4を参照しながら基板上にウィスカーを発生させる方法について説明する。まず受け台15に固定された金属製の受け円盤16に基板10を乗せる。 図4には図示されてないが、燃焼ガスボンベ、酸素ボンベ、流量計がバーナーに配管されている。燃焼ガス流量、酸素ガス流量を調整しガスに点火しテーパー穴を通して炎18により基板の加熱面12を加熱する。 熱電対で基板のウィスカー発生面11の温度を測定し、燃焼ガス、酸素ガス流量を調整し、ウィスカー成長に適切な温度を得る。次にウィスカー成長に必要な穴14を有する金属製の蓋円盤13を乗せ、成長に適切な時間加熱する。
蓋円盤13に開けられた穴14は適切な長さ径を有するウィスカーを成長させるに必要量の酸素を含む大きさであることが必要である。あるいは、ウィスカー成長に適切な酸素分圧を有する酸素ガスを含むガス(例えばアルゴンガス)を流すことでもよい。また、図示してないが穴14にガス管を配管し酸素原を含むガスを封入する事も、一定の流量で流す事も可能である。
また、加熱方法は炎18以外の方法を取ることも可能である。たとえば熱線による加熱、高温ガスによる加熱、高温の金属による接触加熱等によって基板温度のより均一化が行える。
図4では基板は蓋円盤13、受け円盤16により挟まれているが、円形である必要はなく、基板の形態により適切な形状であればよい。
本ウィスカー発生法ではウィスカー成長過程におけるウィスカー温度、加熱時間、酸素分圧はウィスカー密度、ウィスカー径と長さ、ウィスカー形態を制御し目的のものを得るため適切な条件を選ぶことが必要である。
[実施例]
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
同じサイズのSUS304箔の基板を同じ条件で加熱し、蓋円盤13を外して加熱し、該基板表面の温度変化が少なくなったところで温度測定をしたところ、酸化鉄ウィスカーの発生した部分の温度は約900℃〜450℃であリ,酸化鉄ウィスカーの発生は450℃前後から900℃前後で起こった。
同じサイズのチタン箔の基板を同じ条件で加熱し、蓋円盤13をはずし加熱し該基板表面の温度変化が少なくなったところで温度測定をしたところ、酸化チタンウィスカーの発生した部分の温度は約850℃〜450℃であリ、化鉄ウィスカーの発生は450℃前後から850℃前後で起こった。
図5には図示されていないが、ガス導入ライン24には、酸素ガス、不活性ガス、ガス流量計、反応管内の基板20の温度を測定する熱電対、反応管内のガス圧を測定する計器、ガスの流入量をコントロールするバルブが接続されている。 また、ガス排気ライン25には排気用真空ポンプ、リリーフバルブ、ガスの流出量をコントロールするバルブが接続されている。
次に電気炉23により反応管を加熱し、ガス流量に対応したウィスカー成長に適切な基板温度に適切な時間保つ。
基板20を加熱した後に適切な酸素分圧を有するガスを流すことにってもウィスカーは成長する。 あるいは、始に反応管内の酸素分圧を決めガスを反応管内に導入し、ガス導入ライン、ガス導出ラインのバルブを閉じ、ガスの流入、流出なしでウィスカーを成長させることもできる。
本ウィスカー発生法ではウィスカー成長過程におけるウィスカー温度、加熱時間、酸素分圧はウィスカー密度、ウィスカー径と長さ、ウィスカー形態を制御し目的のものを得るため適切な条件を選ぶことが必要である。
11 ウィスカー発生面
12 加熱面
13 蓋円盤
14 穴
15 受け台
16 円盤
17 テーパー穴
18 炎
19 バーナー
20 基板
21 基板ホルダー
22 反応管
23 電気炉
24 ガス導入ライン
25 ガス排気ライン
Claims (10)
- 鉄系材料からなる基板最表層上に直接高アスペクト比の酸化鉄ウィスカーを立設した基板。
- 上記酸化鉄ウィスカーが、酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄とから基板最表層上に直接析出成長したものであることを特徴とする請求項1記載の基板。
- チタン系材料からなる基板最表層上に直接高アスペクト比の酸化チタンウィスカーを立設した基板。
- 上記酸化チタンウィスカーが酸素を含有する気体雰囲気と高温度のチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給されるチタンとから基板最表層上に直接析出成長したものであることを特徴とする請求項3記載のチタン系基板。
- 鉄以外の金属原子含有率10atm%以下、直径5nm〜2μm、アスペクト比20以上の高アスペクト比酸化鉄ウィスカー。
- 酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄とから、該基板上に析出形成して得られた高アスペクト比酸化鉄ウィスカー。
- 直径5nm〜20μm、アスペクト比5以上の高アスペクト比酸化チタンウィスカー。
- 酸素を含有する気体雰囲気と高温度のチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給されるチタンとから、該基板上に析出形成して得られた高アスペクト比酸化チタンウィスカー。
- 酸素を含有する気体雰囲気と高温度の鉄系又はチタン系材料基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される鉄又はチタンとから、それらの酸化物ウィスカーを析出成長させることを特徴とする、高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造方法。
- 酸素を含有する気体雰囲気と高温度の金属基板を接触させることにより、該気体から供給される酸素と該基板から供給される金属とから、それらの酸化物ウィスカーを析出成長させる高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造において、
基板の厚み方向の温度勾配を設けてウィスカーの成長を促進することを特徴とする高アスペクト比酸化物ウィスカーの製造方法。
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