JP2005305416A - 陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウムまたは金属塩化物導入植物,炭化物ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウムまたは金属塩化物導入植物,炭化物ならびにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 安価で環境にやさしく、陰イオン吸着性に優れた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウムまたは金属塩化物導入植物,炭化物並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】 植物からなる原料2を炭化した炭化物31が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料32の製造に用いられるカルシウム導入植物30であり、植物からなる原料2を炭化する前にカルシウムイオンを含む溶液Hを接触させてなる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、硝酸イオンやフッ化物イオンなどの陰イオンを吸着する陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウムまたは金属塩化物導入植物,炭化物ならびにそれらの製造方法に関するものである。
重金属、農薬、有機塩素化合物による水質や土壌の汚染は、環境を破壊するものとして問題になっている。これらの有害物質は活性炭やゼオライトなどの吸着材で吸着除去できるが、陰イオンの形態で存在する硝酸性窒素または亜硝酸性窒素、フッ素、ヒ素、シアンなどは吸着材による処理が難しいのが現状である。
例えば、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素は、茶畑やゴルフ場芝地などでの施肥により地下水汚染が深刻な問題となっており、その対策が必要であるが有効な方法が見出されていない。硝酸イオン及び亜硝酸性イオンはマイナス電荷を持ち、他の物と結合して難溶性の塩にならないため、マイナスに荷電している土壌から最も溶脱しやすく、現在、地下水等の水質汚染が大きな問題となっている上、最近では環境ホルモンである疑いが出てきている。脱窒菌などを利用した微生物処理でも嫌気条件が必要であるなどの制限があり、また、陰イオンを吸着する安価な材料がないため、硝酸汚染はさらに広まりつつある。その他の陰イオンにおいても同様に一度汚染されるとその修復には多大なコストが必要となる。
また、フッ素は半導体、ガラス、メッキ工場などの排水に含まれており、工場排水中のフッ素はカルシウム化合物を添加しフッ化カルシウムとして除去する方法がとられているが、さらに活性アルミナやフッ素用の陰イオン交換樹脂による吸着塔の設置が必要で大きなコストがかかっている。また、環境基準0.8mg/L以下にしようとすると、高価な専用の陰イオン交換樹脂が必要となる。その他、ヒ素やシアンなども工場排水や、地下水汚染の処理には高価な陰イオン交換樹脂が必要である。
特開平10−165824号公報
そこで安価で環境にやさしい陰イオン吸着素材が求められている。活性炭とともに多孔質炭素材料の代表である木炭は、調湿材や河川浄化、土壌改良材として広く普及しており、例えば排ガス中の塩素系ガスや硫黄酸化物などの除去にも利用されているが、これは活性炭と同様に多孔質炭素材料の内部の微細孔による吸着特性だけを利用しているに過ぎず、陰イオンの形態で存在する硝酸性窒素または亜硝酸性窒素、フッ素、ヒ素、シアンなどはほとんど吸着しない。
本発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、安価で環境にやさしく、陰イオン吸着性に優れた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウムまたは金属塩化物導入植物,炭化物ならびにそれらの製造方法を提供することである。
請求項1に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物であり、植物からなる原料を炭化する前にカルシウムイオンを含む溶液を接触させてなることを特徴としている。
請求項2に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物の製造方法は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物の製造方法であり、植物からなる原料を炭化する前にカルシウムイオンを含む溶液を接触させることを特徴としている。
請求項3に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物であり、植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させたカルシウム導入植物を炭化してなることを特徴としている。
請求項4に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法であり、植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させたカルシウム導入植物を炭化することを特徴としている。
本発明者らは、植物原料を炭化する前に、当該原料に予めカルシウムイオンを含む溶液(陽イオンとして主にカルシウムイオンが含まれるのが望ましい)、例えば、水酸化カルシウムの溶液(石灰水)または懸濁液(石灰乳)を接触させて当該原料にCa(カルシウム)を導入しておき、その後、このCa導入原料を炭化し、得られたCa導入木炭をHCl,H2 SO4 等の酸を接触させた材料について陰イオンの吸着性能を検討した結果、天然繊維、木質材料等の植物原料に対する炭化温度、酸の濃度にも依るが、優れた陰イオンの吸着性能を知見するに至った。
カルシウムイオンを含む溶液を前記植物からなる原料に接触させる方法としては、カルシウムイオンを含む溶液の滴下、塗布、吹付け、噴霧などが可能であるが、前記原料をカルシウムイオンを含む溶液に浸漬させることが最も効率的である。また、酸溶液を炭化物に接触させる方法としては、酸溶液の滴下、塗布、吹付け、噴霧などが可能であるが、前記原料を酸溶液に浸漬させることが最も効率的である。
カルシウムを含む溶液としては、石灰水、石灰乳の他、酢酸カルシウム溶液や塩化カルシウム溶液等が挙げられ、カルシウムとして0.03〜30重量%、より好ましくは0.1〜7.0重量%含まれるものが好適である。
本発明においては、植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液、例えば、石灰水または石灰乳等を接触させる。すなわち、前記原料をカルシウムイオンを含む溶液に浸漬させると、溶液が原料に染み込むことでCa導入チップを得ることができる。特に、カルシウムイオンを含む溶液としてアルカリ性の溶液を用いる場合、図6(A)に示すように、植物からなる原料としての例えば木質チップ2を例えば石灰水Hに接触させるとCa導入チップ30〔図6(C)参照〕が得られるが、これは、図6(B)に示すように、アルカリによって木質チップ2中の有機物が溶け出し、カルシウムイオンが木質チップ2の成分と反応するからであると考えられる。この場合、石灰水または石灰乳の濃度は、水酸化カルシウム0.1〜50重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましい。
続いて、得られた前記Ca導入チップ30〔図7(A)参照〕を炭化することによりCa導入炭(以下、単にCa炭という)31〔図7(C)参照〕を得るが、この炭化時に、Ca導入チップ30〔図7(B)参照〕中の有機物が熱によって分解するのと同時に、カルシウムイオンがCa導入チップ30の微細孔壁表面に析出する〔図7(C)参照〕と考えられる。この場合、カルシウムイオンがCa導入チップ30の微細孔壁表面に析出してくるので〔図7(B)参照〕、微細で高分散状態となることにより、多くの官能基を微細孔壁の隅々から引出すものと考えられる。
また、本発明者らは、鋭意研究の結果、植物からなる原料を炭化する前に、当該原料に予め金属塩化物を含む溶液、例えばCaCl2 を含む溶液を接触させて原料内にCaCl2 を導入しておき、その後、このCaCl2 を導入した原料を炭化すれば、これにより得られる炭化材料が優れた陰イオンの吸着性能を有することを知見するに至った。
したがって、請求項5に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物であり、植物からなる原料を炭化する前に金属塩化物を含む溶液を接触させてなることを特徴としている。
請求項6に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物の製造方法は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物の製造方法であり、植物からなる原料を炭化する前に金属塩化物を含む溶液を接触させることを特徴としている。
請求項7に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物であり、植物からなる原料に金属塩化物を含む溶液を接触させた金属塩化物導入植物を炭化してなることを特徴としている。
請求項8に記載の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法は、植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法であり、植物からなる原料に金属塩化物を含む溶液を接触させた金属塩化物導入植物を炭化することを特徴としている。
請求項5〜8に記載の発明では、炭化物内に含有する金属塩化物の塩化物イオンが陰イオン交換能を発現するため、炭化物は陰イオン吸着素材として機能するのである。なお、原料植物への金属塩化物の導入処理は、金属塩化物を含む溶液を前記原料植物に接触させることによって行え、この接触方法としては、前記溶液の滴下、塗布、吹付け、噴霧等が可能であるが、前記原料植物を前記溶液に浸漬させることが最も効率的である。
上記請求項5〜8に係る発明において、原料植物を、金属塩化物として例えばCaCl2 を含む溶液に浸漬して、原料にCaイオンとClイオンとを導入処理し、その後、このCaCl2 導入材を炭化して得られるCaCl2 導入炭には、優れた陰イオン吸着性能が認められる。
すなわち、例えば、図12(A)に示すように、原料としての木質チップ2をCaCl2 溶液100に浸漬してCaCl2 溶液100に接触させると、CaCl2 溶液100中のCaイオンとClイオンが木質チップ2に導入され、同図(C)に示すように、CaCl2 導入チップ101が得られる。これは、同図(B)に示すように、木質チップ2中の組織、特に通道組織にCaCl2 溶液100が染み込むからである。なお、原料の前処理(接触処理)に用いる前記CaCl2 溶液100の濃度としては、CaCl2 0.1重量%〜50重量%が好ましく、1重量%〜20重量%がコスト的により好ましい。0.1重量%を下回ると高い陰イオン吸着能は発現されず、50重量%を越えても陰イオン吸着能は向上しない。
続いて、前記CaCl2 導入チップ101を、図13(A)に示すように炭化すると、同図(C)に示すように金属塩化物炭90aが得られる。この炭化の過程では、CaCl2 導入チップ101中の有機物が熱で分解するのと同時に、ClイオンおよびCaイオンがCaCl2 導入チップ101の微細孔壁表面に析出する。このとき、同図(B)に示すように、ClイオンおよびCaイオンはCaCl2 導入チップ101の微細孔壁表面に微細で高分散状態に析出し、多くの官能基を微細孔壁の隅々から引き出す。その結果、同図(C)に示すように、Clイオンが、微細孔壁表面に引き出された多数の官能基に金属(この場合Caイオン)を介してまたは直接結合された状態になると考えられる。
なお、前記金属塩化物の含有量としては、前記炭化物内に結合される金属塩化物を灰分として2%〜25%含有させてあることが好ましい。炭化物内に結合される金属塩化物とは、炭化物内に単に付着している金属塩化物を除く金属塩化物であり、炭化物内に結合しているため、水や酸で洗い流した後に溶解せずに残留する金属塩化物をいう。2%を下回ると陰イオン吸着能が劣り、25%を上回っても陰イオン吸着能は向上しない傾向がある。
さらに、請求項5〜8に係る発明では、前記炭化物を水および/または酸に接触させてあることが好ましい。なお、水および/または酸を前記炭化物に接触させる方法としては、水および/または酸の滴下、塗布、吹付け、噴霧などが可能であるが、前記炭化物を水および/または酸に浸漬させることが最も効率的である。
ここで、前記炭化物に水および/または酸を接触させることが好ましいことの理由は以下のように考えられる。すなわち、図12および図13に示したようにして得られた金属塩化物炭(CaCl2 炭)90aを、図14(A)に示すように、例えば塩酸102や硫酸等の酸に浸漬(接触)させると、浄化材1に付着していた余分な金属塩化物の結晶が除去される。しかも、酸として塩酸102を用いた場合は、前記浄化材1の官能基と結合するClイオンが新たに増加し、同図(B)から同図(C)に示す状態に変わり、これらのことから、製造した陰イオン吸着能が高まって好ましい。なお、前記炭化物に塩酸102等の酸ではなく水を接触させた場合にも、金属塩化物炭90aに付着していた余分な金属塩化物の結晶が除去され、陰イオン吸着能を高めることができる。
具体的には、前記金属塩化物としてCaCl2 またはBaCl2 が挙げられる。
請求項1〜8に係る本発明における植物からなる原料としては、植物体であれば適用できるが、天然繊維、木質材料の1種以上からなるもので前記原料の炭化物が微細孔を有するものが望ましく、例えば、間伐材,伐採木,廃木材等全ての木質材料や麻等の天然繊維を挙げることができる。具体的には、吸水性の高いヒノキ、スギ等の針葉樹を例えば50mm以下(好適には10mm以下)のサイズにチップ化した木質チップを用いるのが好ましい。また、竹、おが屑、籾殻、椰子、ビンロウジュ、ジュート、藁も植物からなる原料として用いることができる。これ以外に、前記植物からなる原料として、ミカンやリンゴの皮・絞りかす等の農産廃棄物を挙げることができる。また、植物体の中で特に通道組織(道管、仮道管、または、師管)を有する部分が植物からなる原料として好ましい。
前記原料を接触させる溶液として吸着対象陰イオンとイオン交換可能な陰イオン(例えば塩化物イオン等)をほとんど含まずカルシウムイオンを含む溶液(例えば石灰水や石灰乳等)を用いる場合、前記原料としては、カルシウムを導入した後炭化すると、その炭化物の微細孔に100nm以下の粒径のCa化合物が無数に形成されるようなものが好ましい。
また、吸着対象陰イオンとイオン交換可能な陰イオン(例えば塩化物イオン等)とカルシウムイオンを共に含む溶液(例えば塩化カルシウム溶液や酢酸カルシウム溶液等)を用いる場合は、前記原料として、溶液に浸漬する際、溶液が染み込み易いようなものが望ましい。
植物からなる原料の炭化温度としては、400℃〜1000℃を挙げることができ、500℃〜900℃が好ましく、650℃〜750℃がより好ましい。400℃を下回る温度では、細孔が発達せず吸着材としての性能が劣るという不都合が生じる。また、1000℃を越える温度では、炭素化が進みすぎることにより吸着特性が得られないという不都合が生じる。
請求項1〜4に係る本発明の陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物は、カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化させてあるので、この炭化物に酸溶液を接触させることにより、炭化物の微細孔壁から引出した官能基に、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることができる。本発明者らは、鋭意研究の結果、炭化の過程で、温度及び時間を制御することにより炭化物の官能基をより多く生成させることができることを見出した。
つまり、前記原料に予めカルシウムを接触してある場合、650℃〜750℃の炭化温度を例えば1時間持続させた後自然冷却させる場合の方が、約600℃および約800℃の炭化温度を1時間持続させた後自然冷却させる場合に比して、より多くの官能基が形成できることを本発明者らは確認した。特にカルシウムを接触した場合、電子顕微鏡で観察すると、上記のように650℃〜750℃の炭化温度で炭化させた炭化物ではカルシウム化合物の微粒子が前記微細孔壁面に半ば析出して均一に分散している様子が観察された。一方、約600℃の炭化温度では、カルシウム化合物の微粒子の前記微細孔壁面への析出が十分行われていない様子が観察された。また、約800℃の炭化温度では、カルシウム化合物の微粒子の前記微細孔壁面への析出は見られるものの、欠落が多くなっている様子が観察された。このように、カルシウムが炭化物の前記微細孔壁面から官能基をできるだけ多く引出すために必要な炭化温度として前述したように650℃〜750℃を挙げることができる。
請求項1,2に記載の発明は、陰イオン吸着炭素材料を製造する中間体としてのCa導入植物、およびそのCa導入植物の製造方法であり、植物からなる原料にCaイオンを含む溶液を接触させることにより、植物にCaが導入され、単に植物からなる原料を炭化した炭化物と比較して、炭化物を酸溶液に接触した際に、非常に多くのイオン交換可能な陰イオンを炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に結合させることができるCa導入植物を得ることができる。
請求項3,4に記載の発明は、陰イオン吸着炭素材料を製造する中間体としての炭化物、およびその炭化物の製造方法であり、上記Ca導入植物を炭化することにより、Ca導入植物中の有機物が熱によって分解すると共に、CaイオンがCa導入植物の微細孔壁表面に析出する。このとき、Caイオンが微細孔壁表面に析出し、微細で高分散状態となることにより、多くの官能基を微細孔壁の隅々から引き出すので、酸溶液に接触させたときに、非常に多くのイオン交換可能な陰イオンをその官能基に結合させることができる炭化物を得ることができる。
また、請求項1,2の発明におけるCa導入植物を炭化させて形成される炭化物や、請求項3,4の発明における炭化物は、その微細孔壁に例えばHCl溶液等の酸溶液を接触させることにより、前記微細孔壁から引出した官能基に、吸着対象とする例えば硝酸性窒素や亜硝酸性窒素等の陰イオンとイオン交換が可能な例えば塩化物イオン等の陰イオンを結合させることができる。これは、例えば前記Ca炭31を例えばHCl溶液3a〔図8(A)参照〕に浸漬させると、塩化物イオンが、前記Ca炭31の微細孔壁表面の官能基に結合したカルシウムイオンおよび前記官能基に結合して〔図8(B)および(C)参照〕、当該官能基に塩化物イオンがカルシウムイオンを介してまたは直接結合している酸処理Ca炭32〔図8(D)参照〕が得られると考えられる。この酸溶液として、HCl,H2 SO4 を用いた場合には、製造時の排水処理に問題がないので環境にやさしい。
請求項5〜8に係る発明でも、請求項1〜4に係る発明と同様の効果が得られる。
以下、本発明の実施形態を、図を参照しながら説明する。なお、それによって本発明は限定されるものではない。
図1,2は、本発明の第1実施例を示す。
図1,2において、陰イオン吸着炭素材料の一例である酸処理Ca炭32は、麻等の天然繊維や木材等の植物性の木質材料(植物からなる原料の一例)2をCa導入装置(植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液Hである適宜濃度の石灰水または石灰乳を接触させる手段)9に用意されているカルシウムイオンを含む溶液Hに浸漬した後乾燥機12で乾燥させ、続いて、炭化炉(炭化手段の一例)1で炭化し、その後、炭化手段1で生成した炭化物を酸溶液に浸漬する酸処理装置3でHCl,H2 SO4 等の酸溶液3aに浸漬させ、更に、乾燥機6で乾燥させることにより得られる。
この実施形態では、前記植物からなる原料(以下、単に原料という)2として木質チップを用いている。この木質チップ2は、例えば吸水性の高いヒノキ、スギ等の針葉樹を例えば50mm以下(好適には10mm以下)のサイズにチップ化したものである。前記Ca導入装置9は、木質チップ2にCaを導入する装置であり、木質チップ2が浸漬されるカルシウムイオンを含む溶液Hが収容された容器10を備えている。この実施形態ではカルシウムイオンを含む溶液Hに木質チップ2を浸漬しており、カルシウムイオンを含む溶液Hとしての所定濃度(例えば5重量%)の石灰水に木質チップ2を浸漬した後容器10から取り出すことでCaが導入されたCa導入チップ30が得られる。
この場合、溶液Hを木質チップ2へ充分染み込ませるため、或いはカルシウムイオンを木質チップ2の成分と充分反応させるために、木質チップ浸漬中に、容器10の内部に設けた攪拌羽根10aを駆動させるのが好ましい。得られたCa導入チップ30を前記乾燥機12で乾燥する。この実施形態では、乾燥機12は、Ca導入チップ30を炭化炉排熱を利用して乾燥させる。なお、石灰乳を用いた方が処理効率がよい。また、溶液Hとしては、石灰水や石灰乳に代えて、塩化カルシウム溶液や酢酸カルシウム溶液を用いることもできる。
すなわち、前記Ca導入チップ30が請求項1における陰イオン吸着炭素材料32の製造に用いられるCa導入植物の一例であり、図1,2において、二点鎖線で囲んだ工程M1 が請求項2における陰イオン吸着炭素材料32の製造に用いられるCa導入植物30の製造方法の一例を示している。しかしながら、本発明のCa導入植物30の製造方法は乾燥機12を用いることに限定されるものではなく、この乾燥機12を用いた乾燥工程を省略することも可能である。
次いで、乾燥させたCa導入チップ30は炭化炉1で炭化され、チップ状のCa炭31が得られる。この実施形態においては炭化条件は、炭化温度が650℃〜750℃とし、できるだけ700℃前後とするのが好ましい。すなわち、Ca炭31が請求項3における陰イオン吸着炭素材料32の製造に用いられる炭化物の一例であり、図1,2において、一点鎖線で囲んだ工程M2 が請求項4における陰イオン吸着炭素材料32の製造に用いられる炭化物31の製造方法の一例を示している。
前記酸処理装置3は、HCl,H2 SO4 等の酸溶液3aを収容してある容器4を備えており、この容器4の内部に攪拌羽根5が設けられている。この酸溶液3aの濃度は、例えば5mol/Lである。前記酸処理装置3は、炭化炉1で得られたチップ状のCa炭31を酸処理して酸処理Ca炭32を得るためのものである。そして、Ca炭31の表面の炭酸カルシウム(CaCO3 )が酸によって溶解するのを促進させるとともに、塩化物イオンおよびカルシウムイオンを前記Ca炭31の微細孔壁表面の官能基と充分反応させるために、容器4の内部に設けた攪拌羽根5を駆動させるのが好ましい。得られた酸処理Ca炭32を前記乾燥機6で乾燥する。この実施形態では、乾燥機6は、酸処理Ca炭32を炭化炉排熱を利用して乾燥させる。
そして、(1)酸処理・乾燥後ただちに使用できる酸処理Ca炭32は陰イオン吸着炭素材料としてそのまま製品に加工される。また、(2)必要に応じて、酸処理後に酸処理Ca炭32をアルカリで中和してもよく、この場合、(3)中和した酸処理Ca炭を、必要に応じて水洗いしてもよい。なお、湿潤状態で使用される場合は乾燥を省略してもよい。
7’は、酸処理Ca炭32がペレット化された製品、8’は、酸処理Ca炭32を粉砕して成形された製品である。なお、製品の加工は、下記に示すように、用途によって使い分けられているが、加工を施さずにそのままの形状で使用することもできる。また、製品7’,8’以外の製品として、酸処理Ca炭32を例えば不織布へ添着してなるものを挙げることができる。
二点鎖線で囲んだ工程M1 を一つの工場で行ってCa導入チップ30を製造することができる。次いで、このCa導入チップ30を別の工場の炭化炉1において炭化してCa炭31を生成し、このCa炭31を酸溶液3aに接触させることにより酸処理Ca炭32を製造することができる。
同様に、一点鎖線で囲んだ工程M2 を一つの工場で行ってCa炭31を製造することができる。次いで、このCa炭31を別の工場において酸溶液3aに接触させて酸処理Ca炭32を製造することも可能である。
本発明のカルシウム導入植物または炭化物を用いて製造される陰イオン吸着炭素材料は、以下の用途に主として利用される。
(硝酸性窒素、亜硝酸性窒素の吸着に関して)
(1)水質浄化のために用いられる[前記Ca炭31との組み合わせによりリンも同時に吸着することが可能となる〔図3(A)参照〕。また、微生物担体としても機能する。]。
(2)畜産による汚染の防止のために用いられる[畜産糞尿堆積地、堆肥化設備近傍等糞尿の流出するおそれのある地域への適用〔図3(B)参照〕。]。
(3)農業用として過剰施肥汚染防止のために用いられる[過剰施肥により植物に利用されない窒素分を吸着し、その後の木炭は緩効性肥料として利用可能〔図3(C)参照〕。。また、特に、火災が発生した場合には大量の窒素肥料、アミノ酸の散布など窒素汚染が激しく、そのような地域への適用も可能。]。
(フッ素吸着に関して)
(1)排水(廃水)処理のために用いられる[フッ酸による洗浄を行っている半導体、ガラス、メッキ工場などの最終処理設備への適用〔図3(D)参照〕。]。
《硝酸性窒素、亜硝酸性窒素吸着試験》
〔試験方法〕
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の硝酸溶液及び亜硝酸溶液50ml(ミリリットル)(標準液)をそれぞれ五つ用意し、
(1)木質チップ2を700℃で炭化させた比較例に用いる木炭200mg(単に木炭という)
(2)木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を1mol/LのFeCl3 溶液に浸漬させた後、水洗いした比較例に用いる塩化鉄木炭200mg、
(3)前記木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた後、水洗いした酸処理木炭200mg、
(4)木質チップ2を5重量%の石灰水に浸漬した後700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)200mg、
(5)比較例に用いる陰イオン交換樹脂200mgの五つのサンプルを、それぞれ対応する標準液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液及び亜硝酸溶液中の硝酸性窒素の濃度及び亜硝酸性窒素の濃度をそれぞれ測定し、吸着量を計算した。
〔結果〕
図4は、上記各サンプルの硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素吸着能の比較を表す。
(1)の700℃炭化の木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をほとんど吸着しないのに対して、(2)の塩化鉄木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ2.75mg/g及び2.35mg/g吸着した。また、(3)の酸処理木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ2.50mg/g及び2.20mg/g吸着した。(5)の陰イオン交換樹脂は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ10.80mg/g及び10.00mg/g吸着した。
一方、木質チップ2を石灰水Hに浸漬した後炭化し、続いて、HCl溶液に浸漬させてなる(4)の酸処理Ca炭32は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ10.75mg/g及び9.80mg/g吸着し、(5)の陰イオン交換樹脂と同等以上の吸着能力を示した。
そして、前記酸処理Ca炭32が例えば硝酸イオンを吸着するメカニズムは、以下のように考えられる。図9(A)に示すように、例えば酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を硝酸溶液Lに漬けると、酸処理Ca炭32の表面の官能基にカルシウムイオンを介してまたは直接結合した塩化物イオン〔図9(B)参照〕と硝酸溶液L中の硝酸イオンが交換され〔図9(C)参照〕、硝酸イオンが酸処理Ca炭32に吸着される〔図9(D)参照〕。図9(E)は、図9(D)に示す酸処理Ca炭32を、例えば濃いKCl(またはNaCl)溶液に漬けたときの変化を示す。すなわち、吸着された硝酸イオンはKCl(またはNaCl)溶液で再度、塩化物イオンと硝酸イオンを交換させて再生可能となる。以下、この再生試験について説明する。
《再生試験》
〔試験方法〕
前記硝酸性窒素吸着試験を行った後の酸処理Ca炭32の試料を1mol/LのKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換して硝酸性窒素濃度が50mg/Lの硝酸溶液50ml(ミリリットル)を用意し、水洗いした200mgの前記試料の一回目の再生試験を行った。すなわち、前記試料を硝酸溶液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液中の硝酸性窒素濃度を測定し、吸着量を計算する一回目の再生試験を前記試料を用いて行った。
次に、一回目の再生試験で用いた前記試料を1mol/LのKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換して硝酸性窒素濃度が50mg/Lの硝酸溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の再生試験を行った。すなわち、前記試料を、硝酸溶液50ml(ミリリットル)に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液中の硝酸性窒素濃度を測定し、吸着量を計算する二回目の再生試験を前記試料を用いて行った。この処理をあと二回繰り返した。
〔結果〕
酸処理Ca炭32による硝酸性窒素の吸着量
初回…10.8mg/g
再生一回目…10.6mg/g
再生二回目…10.9mg/g
再生三回目…10.7mg/g
以上のことから、使用した前記酸処理Ca炭32を濃いKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが分かった。すなわち、硝酸性窒素吸着試験で硝酸性窒素(陰イオン)を吸着した酸処理Ca炭(陰イオン吸着炭素材料)32を、KCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、硝酸性窒素吸着試験で吸着した硝酸性窒素(陰イオン)が除去されて、除去された硝酸性窒素(陰イオン)に替えてCl- を結合させることにより、酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)が再生することが分かった。つまり、一度使用した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を使用後にその都度洗浄と水洗いを行うことにより、複数回使用できることが確認された。なお、亜硝酸性窒素を吸着した場合でも、再生する原理は同じである。
《フッ化物イオン素吸着試験》
〔試験方法〕
フッ化物イオン濃度が50mg/Lの溶液50ml(ミリリットル)(標準液)を用意し、
(1)木質チップ2を700℃で炭化させた比較例に用いる木炭100mg(単に木炭という)、
(2)木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を1mol/LのFeCl3 溶液に浸漬させた後、水洗いした比較例に用いる塩化鉄木炭100mg、
(3)前記木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた後、水洗いした酸処理木炭100mg、
(4)木質チップ2を5重量%の石灰水に浸漬した後700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた陰イオン吸着炭素材料(以下、酸処理Ca炭32という)100mg、
(5)比較例に用いる陰イオン交換樹脂100mgの五つのサンプルを、それぞれ対応する標準液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度をそれぞれ測定し、吸着量を計算した。
〔結果〕
図5は、上記各サンプルのフッ化物イオン吸着能の比較を表す。
(1)の700℃炭化の木炭は、フッ化物イオンをほとんど吸着しないのに対して、(2)の塩化鉄木炭は、7.50mg/gのフッ化物イオンを吸着した。また、(3)の酸処理木炭は、5.00mg/gのフッ化物イオンを吸着した。(5)の陰イオン交換樹脂は、8.50mg/gのフッ化物イオンを吸着した。
一方、木質チップ2を石灰水に浸漬した後炭化し、続いて、HCl溶液に浸漬させてなる(4)の酸処理Ca炭32は、19.00mg/gのフッ化物イオンを吸着し、(5)の陰イオン交換樹脂を大きく越える吸着能力を示した。
《再生試験》
〔試験方法〕
次に、前記フッ素吸着試験を行った後の酸処理Ca炭32の試料を1mol/Lの塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換してフッ化物イオン濃度が50mg/Lの溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の一回目の再生試験を行った。すなわち、前記試料を前記溶液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度を測定し、吸着量を計算する一回目の再生試験を前記試料を用いて行った。
次に、一回目の再生試験で用いた前記試料を1mol/Lの塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換してフッ化物イオン濃度が50mg/Lの前記溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の再生試験を行った。すなわち、前記試料を、前記溶液50ml(ミリリットル)に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度を測定し、吸着量を計算する二回目の再生試験を前記試料を用いて行った。この処理をあと二回繰り返した。
〔結果〕
酸処理Ca炭32によるフッ化物イオン濃度の吸着量
初回…18.7mg/g
再生一回目…18.2mg/g
再生二回目…18.9mg/g
再生三回目…18.6mg/g
以上のことから、使用した酸処理Ca炭32を濃い塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが分かった。すなわち、フッ素吸着試験でフッ化物イオン(陰イオン)を吸着した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を、塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いすることにより、フッ素吸着試験で吸着したフッ化物イオン(陰イオン)が除去されて、除去されたフッ化物イオン(陰イオン)に替えて、Cl- (またはSO4 - )を結合させることにより、酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)が再生することが分かった。つまり、一度使用した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を使用後にその都度洗浄と水洗いを行うことにより、複数回使用できることが確認された。
上述した実施例では、木質材料2にカルシウム導入処理したものを用いているが、木質材料2に金属塩化物導入処理したものを用いるようにしてもよい。以下、これを第2実施例として、図10および図11を参照しながら説明する。
まず、図10は、陰イオン吸着炭素材料の他の例としての金属化合物炭である炭素材料90を製造する装置の一例を概略的に示すもので、この図において、図1に示した符号と同一符号は同一物である。そして、図10に示すように、前記木質チップ(木質材料)2は、適宜濃度の金属塩化物溶液(この実施の形態ではCaCl2 溶液)91を収容した処理槽92に送られ、この処理槽92内において木質チップ2に対する金属塩化物(この実施の形態ではCaCl2 )の導入処理が行われ、金属塩化物導入チップ93が形成される。なお、94は処理槽92内に設けられる攪拌用羽根で、モータ(図示していない)によって回転駆動され、処理槽92内の液等を攪拌する際に用いられる。なおここで、金属塩化物溶液に対して、Ca(OH)2 を僅かに加えておくことが、陰イオン吸着能を向上させる上で好ましい。
上記のようにして得られた金属塩化物導入チップ93は、乾燥機12によって乾燥処理された後、炭化処理炉1に送られ、炭化処理される。なお、前記乾燥機12は、炭化処理炉1から排出される排熱を前記乾燥処理に利用するように構成されている。
そして、金属塩化物導入チップ93は、導入部95aを経て前記炭化炉本体95内に供給され、適宜の温度(後述する)および適宜の時間(後述する)の加熱により炭化され、金属塩化物炭90aとして排出部95bから炭化炉本体95外に排出される。
その後、前記金属塩化物炭90aは、水またはHCl溶液(塩酸)96を収容した処理槽97に送られ、この処理槽97内において金属塩化物炭90aの水またはHCl溶液96に対する接触(浸漬)処理が行われ、炭素材料90が得られる。なお、98は処理槽97内に設けられる攪拌用羽根で、モータ(図示していない)によって回転駆動され、処理槽97内の液等を攪拌する際に用いられる。酸への接触処理を行った後に水への接触処理を行うこともあり、またその逆の手順で行ってもよい。
続いて、上記のようにして得られた炭素材料90は、乾燥機6に送られ、乾燥処理された後、適宜径の粒体(ペレット)7’やより細かな粉体8’に形成される。なお、前記乾燥機6は、炭化処理炉1から排出される排熱を前記乾燥処理に利用するように構成されている。
次に、図10に示した装置を用いて、木質材料2から炭素材料90を得る手順の一例を、図10および図11を参照しながら詳細に説明する。まず、檜や杉等の針葉樹を10mm以下の適宜のサイズにチップ化した木質チップ2を用意する(ステップT1)。
続いて、前記木質チップ2を処理槽92内の1〜20重量%に調整されたCaCl2 溶液91内に例えば、3時間以上浸漬する。この木質チップ2の浸漬中に、攪拌羽根94を回転させることが好ましい。これによって、CaCl2 溶液91が木質チップ2に染み込むことができ、木質チップ2にCaイオンおよびClイオンが導入された金属塩化物導入チップ93が得られる(ステップT2)。
そして、前記金属塩化物導入チップ93は、乾燥機12に送られて乾燥処理される(ステップT3)。
その後、前記金属塩化物導入チップ93は、炭化処理炉1の炭化炉本体95に供給され、400℃〜1000℃の温度範囲(この実施の形態では700℃)で1時間程度加熱され炭化処理される(ステップT4)。これによって、金属塩化物炭90aが得られる。
前記金属塩化物炭90aは、処理槽97に供給され、処理槽97内の0.01mol/L〜11mol/L(例えば5mol/L)に調整されたHCl溶液96に浸漬処理される(ステップT5)。この場合、攪拌羽根98を回転させるのが好ましく、これによって、金属塩化物炭90a内に残留する余分な金属塩化物(CaCl2 )の結晶を除去することができるとともに、塩化物イオンをさらに付加させることができ、所望の炭素材料90が得られる。
そして、前記浸漬処理後の炭素材料90は、一般的には乾燥機6において乾燥処理される(ステップT6)。この場合、炭素材料90をそのまま乾燥機6に送るようにしてもよいが、適宜のアルカリ溶液に浸漬するなどして中和処理したり、さらには、中和処理後に水洗いしてもよい。なお、炭素材料90を湿潤状態で使用するときは、乾燥処理をしないこともある。
そして、前記乾燥処理後の炭素材料90は、チップ状のまま使用することもできるが、この実施例では適宜の加工機を用いて適宜径の粒体(ペレット)7’やより細かな粉体8’に形成してある(ステップT7)。
なお、前記炭素材料90は、上記ステップT1からステップT7までが全て同一工場内で行われて製造されるものに限られない。例えば、他の工場等にて上記ステップT1〜T7のうちのあるステップまで製造されている場合、途中のステップから始めて炭素材料90を製造すればよい。
なお、上記第2実施例では、金属塩化物として、最も高性能な陰イオン吸着炭素材料が得られるCaCl2 を挙げているが、BaCl2 やMnCl2 等でもよい。
また、上記第2実施例では、処理槽97内において炭素材料90のHCl溶液96に対する接触処理を行っているが、HCl溶液96に代えて水を用いてもよい。この場合、塩化物イオンの付加は行われず、金属塩化物炭90a内に残留する余分な金属塩化物の結晶を除去するのみとなる。
さらに、上記実施の形態では、金属塩化物導入チップ93を炭化処理炉1にて炭化処理して金属塩化物炭90aを得た後、処理槽97へと送って炭素材料90を得ているが、金属塩化物炭90aを処理槽97へと送らずそのまま炭素材料90として用いることもできる。この場合、前記金属塩化物炭90aを乾燥機14に送る必要がないので、上記ステップT5,T6が省かれることとなる。また、この場合、炭素材料90の製造方法としては、ステップT1〜T4で終了してもよいし、その後ステップT7を行ってもよい。
次に、第2実施例の炭素材料90の硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着性能を調べるために行った試験について説明する。硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着性能の試験方法および試験結果について説明すると、以下の通りである。
まず、以下に示す計七つのサンプル(1)〜(7)をそれぞれ200mgずつ2組用意した。すなわち、
(1)木質チップ2を700℃で1時間加熱し炭化させて得られた木炭
(2)木質チップ2を700℃で1時間加熱し炭化させ、その後、1mol/LのFeCl3 溶液に浸漬し水洗いして得られた塩化鉄木炭
(3)陰イオン交換樹脂
(4)木質チップ2を10重量%のBaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させて得られたBaCl2
(5)木質チップ2を10重量%のBaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させ、その後、5mol/LのHCl溶液に浸漬処理して得られたHCl処理BaCl2
(6)木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させて得られたCaCl2
(7)木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させ、その後、5mol/LのHCl溶液に浸漬処理して得られたHCl処理CaCl2
の計七つのサンプルを2組用意した。なお、(4)〜(7)のサンプルは上記炭素材料90に相当するものであり、(1)〜(3)のサンプルは炭素材料90と比較するためのものである。
そして、一方の組の各サンプルを、硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の硝酸性窒素溶液50mL(第1標準液)に個別に投入し、また、他方の組の各サンプルを、亜硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の亜硝酸性窒素溶液50mL(第2標準液)に個別に投入した。その後、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、第1標準液中の硝酸性窒素の濃度および第2標準液中の亜硝酸性窒素の濃度をそれぞれ測定し、各サンプルによる硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着量を計算した。
図16は、上記試験によって得られた各サンプルの硝酸性窒素吸着能および亜硝酸性窒素吸着能の比較結果を表す。なお、この図では、各サンプルの硝酸性窒素・亜硝酸性窒素吸着量を一対の棒グラフで示しており、左側の棒グラフが硝酸性窒素吸着量、右側の棒グラフが亜硝酸性窒素吸着量を示している。この図に示す結果から、本発明のサンプルはいずれも高い硝酸性窒素吸着能および亜硝酸性窒素吸着能を持つことがわかる。さらに、(4)のBaCl2 炭と(5)のHCl処理BaCl2 炭の硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着量を比較し、また、(6)のCaCl2 炭と(7)のHCl処理CaCl2 炭の硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着量を比較することにより、炭素材料90の硝酸性窒素・亜硝酸性窒素吸着能をより高めるためには、炭素材料90をHCl溶液に浸漬する処理(HCl処理)を行ったほうがよいことがわかる。しかし、HCl処理を行わなくても十分に高い硝酸性窒素・亜硝酸性窒素吸着能を持った炭素材料90が得られ、この場合には、HCl溶液の接触処理を行わない分だけ低いコストで炭素材料90を製造することができる。
ここで、前記炭素材料90が例えば硝酸イオンを吸着するのは、図15(A)に示すように、炭素材料(CaCl2 炭)1を硝酸溶液99に浸漬すると、炭素材料90の表面の官能基にCaイオンを介してまたは直接結合されたClイオン(同図(B)参照)と硝酸溶液99中のNO3 イオンが交換され(同図(C)参照)、NO3 イオンが炭素材料90に吸着される(同図(D)参照)からであると考えられる。
また、図15(E)は、NO3 イオンを吸着して図15(D)に示す状態となった炭素材料90を、高濃度の塩化物溶液(例えばKClやNaClの金属塩化物溶液、またはHCl溶液)に浸漬した後の状態を示す。すなわち、炭素材料90に吸着されたNO3 イオンは、塩化物溶液によってClイオンと交換され、これにより炭素材料90が再生され、NO3 イオンなどの陰イオンを吸着可能な状態となる。すなわち、第2実施例の炭素材料90は、上記製造方法により常に新たに得られるものに限られず、前記製造方法により得られ、陰イオン(例えばNO3 イオン)を吸着した炭素材料90から、吸着した陰イオン(NO3 イオン)が除去されるとともに、次の吸着対象の陰イオン(例えばNO3 イオン)とイオン交換が可能な陰イオン(この実施の形態ではClイオン)を前記除去した陰イオン(NO3 イオン)に替えて結合させることによって得られたもの(すなわち再生されたもの)でもよい。また、上記塩化物溶液に代えて硫酸を用いた場合は、NO3 イオンは、上記Clイオンに代えてSO4 イオンとイオン交換されることとなる。
すなわち、前記金属塩化物導入チップ93が請求項5における陰イオン吸着炭素材料90の製造に用いられる金属塩化物導入植物の一例であり、図10,11において、二点鎖線で囲んだ工程N1が請求項6における陰イオン吸着炭素材料90の製造に用いられる金属塩化物導入植物93の製造方法の一例を示している。しかしながら、本発明の金属塩化物導入植物93の製造方法は乾燥機12を用いることに限定されるものではなく、この乾燥機12を用いた乾燥工程を省略することも可能である。
また、前記金属塩化物炭90aが請求項7における陰イオン吸着炭素材料90の製造に用いられる炭化物の一例であり、図10,11において、二点鎖線で囲んだ工程N2が請求項8における陰イオン吸着炭素材料90の製造に用いられる炭化物90aの製造方法の一例を示している。
次に、上記ステップT2において木質チップ2を浸漬する金属塩化物溶液(CaCl2 溶液)91の濃度が、製造後の炭素材料90の陰イオン吸着能に与える影響を調べるために行った試験について述べる。上記試験は、木質チップ2をCaCl2 溶液91に浸漬した後、700℃で1時間の加熱により炭化し、水洗いして得た炭素材料90を、硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の硝酸性窒素溶液50mL(標準液)に投入し、前記炭素材料90の硝酸性窒素の吸着能を調べたもので、前記CaCl2 溶液91として、濃度が1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%、12重量%、14重量%、17重量%、20重量%のものが用いられた。また、比較のために、木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液91に浸漬した後、700℃で1時間の加熱により炭化し、HCl処理して得た炭素材料90の硝酸性窒素の吸着能についても調べた。上記試験の結果を図17に示す。
図17に示す結果から明らかなように、炭素材料90の陰イオン吸着能はCaCl2 溶液の濃度に比例して高くなるわけではなく、コスト面等から考えれば、10重量%程度とすることが最も好ましいといえる。また、この図17に示す結果からも、炭素材料90の陰イオン吸着能をより高めるためには、炭素材料90をHCl処理したほうがよいことがわかる。
次に、硝酸性窒素の吸着に使用された第2実施例の炭素材料90をKCl(またはNaCl)溶液によって再生し、再生された炭素材料90の硝酸性窒素吸着能を調べるために行った再生試験について説明する。
まず、炭素材料90として、木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させて得られたCaCl2 炭を200mg用意した。そして、このCaCl2 炭を、硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の硝酸性窒素溶液50mL(標準液)に投入し、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記標準液中の硝酸性窒素の濃度を測定し、前記CaCl2 炭による硝酸性窒素の吸着量を計算した(初回)。
続いて、前記CaCl2 炭を1mol/LのKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いして再生した。その後、新たに用意した標準液(すなわち、硝酸性窒素の濃度が50mg/Lの硝酸性窒素溶液50mL)に再生したCaCl2 炭を投入し、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記標準液中の硝酸性窒素の濃度を測定し、前記CaCl2 炭による硝酸性窒素の吸着量を計算した。そして、このCaCl2 炭の再生から硝酸性窒素の吸着量の計算までの処理を計3回行った(再生一回目〜三回目)。
上記再生試験の結果、すなわち、CaCl2 炭による硝酸性窒素の吸着量は、
初回 …9.5mg/g
再生一回目…9.0mg/g
再生二回目…9.1mg/g
再生三回目…8.8mg/g
であった。以上のことから、硝酸性窒素の吸着に使用した炭素材料90(CaCl2 炭)は、濃いKCl(またはNaCl)溶液で洗浄しさらに水洗いすれば再生することが確認された。これは、硝酸性窒素を吸着したCaCl2 炭をKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、CaCl2 炭から硝酸性窒素が除去され、この除去された硝酸性窒素に代わってCl- が官能基に結合されるためであると考えられる。また、上記再生試験の結果から、炭素材料90(CaCl2 炭)は、KCl(またはNaCl)溶液を用いた洗浄と水洗いとを行うことにより再生させれば、硝酸性窒素の吸着に複数回使用することができることも確認された。なお、前記炭素材料90(CaCl2 炭)を亜硝酸性窒素の吸着に使用した場合でも、再生する原理は同じである。
次に、第2実施例の炭素材料90として、木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させ、その後、5mol/LのHCl溶液に浸漬処理して得られたHCl処理CaCl2 炭を用い、このHCl処理CaCl2 炭について上記と同様に再生試験を行った結果を示す。
上記再生試験の結果、すなわち、HCl処理CaCl2 炭による硝酸性窒素の吸着量は、
初回 …11.0mg/g
再生一回目…11.0mg/g
再生二回目…10.8mg/g
再生三回目…10.8mg/g
であった。以上のことから、炭化後にHCl溶液に浸漬処理して得られる炭素材料90(HCl処理CaCl2 炭)についても、硝酸性窒素の吸着に使用後、濃いKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが確認された。また、HCl溶液への浸漬処理によって向上したHCl処理CaCl2 炭の硝酸性窒素吸着能は、KCl(またはNaCl)溶液を用いた洗浄と水洗いとを行ってHCl処理CaCl2 炭を繰り返し再生させても持続すること(向上したままであること)が確認された。
次に、第2実施例の炭素材料90のフッ化物イオンの吸着性能を調べるために行った試験について説明する。まず、この試験を行うために、上述した硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の吸着性能の試験で用いた計七つのサンプル(1)〜(7)をそれぞれ50mgずつ1組用意した。そして、各サンプルを、フッ化物イオン濃度が50mg/L(50ppm)の溶液50mL(標準液)に個別に投入し、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、標準液中のフッ化物イオンの濃度をそれぞれ測定し、各サンプルによるフッ化物イオンの吸着量を計算した。
図18は、上記試験によって得られた各サンプルのフッ化物イオン吸着能の比較結果を表す。この図に示す結果から、本発明のサンプルはいずれも高いフッ化物イオン吸着能を持つことがわかる。さらに、(4)のBaCl2 炭と(5)のHCl処理BaCl2 炭のフッ化物イオンの吸着量を比較し、また、(6)のCaCl2 炭と(7)のHCl処理CaCl2 炭のフッ化物イオンの吸着量を比較することにより、炭素材料90のフッ化物イオン吸着能をより高めるためには、炭素材料90をHCl溶液に浸漬する処理(HCl処理)を行ったほうがよいことがわかる。しかし、HCl処理を行わなくても十分に高いフッ化物イオン吸着能を持った炭素材料90が得られ、この場合には、HCl溶液の接触処理を行わない分だけ低いコストで炭素材料90を製造することができる。
次に、フッ化物イオンの吸着に使用された上記炭素材料90を塩酸(または硫酸)によって再生し、再生された炭素材料90のフッ化物イオン吸着能を調べるために行った再生試験について説明する。
まず、炭素材料90として、木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させて得られたCaCl2 炭を200mg用意した。そして、このCaCl2 炭を、フッ化物イオンの濃度が50mg/L(50ppm)の溶液50mL(標準液)に投入し、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記標準液中のフッ化物イオンの濃度を測定し、前記CaCl2 炭によるフッ化物イオンの吸着量を計算した(初回)。
続いて、前記CaCl2 炭を1mol/Lの塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いして再生した。その後、新たに用意した標準液(すなわち、フッ化物イオンの濃度が50mg/Lの溶液50mL)に再生したCaCl2 炭を投入し、200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記標準液中のフッ化物イオンの濃度を測定し、前記CaCl2 炭によるフッ化物イオンの吸着量を計算した。そして、このCaCl2 炭の再生からフッ化物イオンの吸着量の計算までの処理を計3回行った(再生一回目〜三回目)。
上記再生試験の結果、すなわち、CaCl2 炭によるフッ化物イオンの吸着量は、
初回 …22.5mg/g
再生一回目…22.4mg/g
再生二回目…21.7mg/g
再生三回目…21.9mg/g
であった。以上のことから、フッ化物イオンの吸着に使用した炭素材料90(CaCl2 炭)は、濃い塩酸(または硫酸)で洗浄しさらに水洗いすれば再生することが確認された。これは、フッ化物イオンを吸着したCaCl2 炭を塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いすることにより、CaCl2 炭からフッ化物イオンが除去され、この除去されたフッ化物イオンに代わってCl- (またはSO4 2- )が官能基に結合されるためであると考えられる。また、上記再生試験の結果から、炭素材料90(CaCl2 炭)は、塩酸(または硫酸)を用いた洗浄と水洗いとを行うことにより再生させれば、フッ化物イオンの吸着に複数回使用することができることも確認された。
次に、第2実施例の炭素材料90として、木質チップ2を10重量%のCaCl2 溶液に浸漬した後700℃で1時間加熱し炭化させ、その後、5mol/LのHCl溶液に浸漬処理して得られたHCl処理CaCl2 炭を用い、このHCl処理CaCl2 炭について上記と同様に再生試験を行った結果を示す。
上記再生試験の結果、すなわち、HCl処理CaCl2 炭によるフッ化物イオンの吸着量は、
初回 …32.0mg/g
再生一回目…31.5mg/g
再生二回目…31.4mg/g
再生三回目…31.2mg/g
であった。以上のことから、炭化後にHCl溶液に浸漬処理して得られる炭素材料90(HCl処理CaCl2 炭)についても、フッ化物イオンの吸着に使用後、塩酸(または硫酸)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが確認された。また、HCl溶液への浸漬処理によって向上したHCl処理CaCl2 炭のフッ化物イオン吸着能は、塩酸(または硫酸)を用いた洗浄と水洗いとを行ってHCl処理CaCl2 炭を繰り返し再生させても持続すること(向上したままであること)が確認された。
なお、上記第1実施例では木質材料2にカルシウム導入処理したものを用い、第2実施例では木質材料2に金属塩化物導入処理したものを用いているが、例えば、木質材料2にカルシウムおよび金属塩化物の両者を導入処理した導入植物を用いて陰イオン吸着炭素材料を製造してもよい。具体的には、前記カルシウムイオンを含む溶液H(または金属塩化物溶液91)として、カルシウムイオンと金属塩化物とを含んだ溶液(例えば塩化カルシウム溶液)を用いることが考えられる。
本発明の実施形態を説明するための全体構成説明図である。 上記実施形態における製造工程を示す図である。 陰イオン吸着炭素材料の適用例を示す図である。 陰イオン吸着炭素材料の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の吸着試験における各吸着量を示す図である。 陰イオン吸着炭素材料のフッ化物イオンの吸着試験における各吸着量を示す図である。 原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させる工程を示す図である。 カルシウム導入植物を炭化する工程を示す図である。 Ca導入炭に酸溶液を接触させる工程を示す図である。 陰イオン吸着炭素材料による硝酸イオン吸着のメカニズムを示す図である。 本発明の第2実施例を説明するための全体構成説明図である。 第2実施例における製造工程を示す図である。 (A)〜(C)は、図11におけるステップT2の工程の詳細を示す図である。 (A)〜(C)は、図11におけるステップT4の工程の詳細を示す図である。 (A)〜(C)は、図11におけるステップT5の工程の詳細を示す図である。 (A)〜(D)は、第2実施例における硝酸イオン吸着の詳細を示す図、(E)は、再生後の炭素材料を示す図である。 第2実施例の炭素材料および比較材料の硝酸性窒素・亜硝酸性窒素の吸着量の比較結果を示すグラフである。 ステップT2におけるCaCl2 溶液の濃度を変えて作成された炭素材料およびHCl処理して得られた炭素材料の硝酸性窒素の各吸着量を示すグラフである。 第2実施例の金属塩化物炭および比較材料のフッ化物イオンの吸着量の比較結果を示すグラフである。
符号の説明
1 炭化手段
2 植物からなる原料
30 カルシウム導入植物
31 炭化物
32 陰イオン吸着炭素材料
H カルシウムイオンを含む溶液

Claims (8)

  1. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物であり、植物からなる原料を炭化する前にカルシウムイオンを含む溶液を接触させてなる、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物。
  2. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物の製造方法であり、植物からなる原料を炭化する前にカルシウムイオンを含む溶液を接触させることを特徴とする、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられるカルシウム導入植物の製造方法。
  3. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物であり、植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させたカルシウム導入植物を炭化してなる、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物。
  4. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接またはカルシウムを介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法であり、植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させたカルシウム導入植物を炭化することを特徴とする、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法。
  5. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物であり、植物からなる原料を炭化する前に金属塩化物を含む溶液を接触させてなる、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物。
  6. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物の製造方法であり、植物からなる原料を炭化する前に金属塩化物を含む溶液を接触させることを特徴とする、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる金属塩化物導入植物の製造方法。
  7. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物であり、植物からなる原料に金属塩化物を含む溶液を接触させた金属塩化物導入植物を炭化してなる、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物。
  8. 植物からなる原料を炭化した炭化物が有する微細孔壁に形成された官能基に、直接または金属を介して、イオン交換が可能な陰イオンを結合させた陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法であり、植物からなる原料に金属塩化物を含む溶液を接触させた金属塩化物導入植物を炭化することを特徴とする、陰イオン吸着炭素材料の製造に用いられる炭化物の製造方法。
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