JP3718520B2 - 陰イオン吸着炭素材料とその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素は、茶畑やゴルフ場芝地などでの施肥により地下水汚染が深刻な問題となっており、その対策が必要であるが有効な方法が見出されていない。硝酸イオン及び亜硝酸性イオンはマイナス電荷を持ち、他の物と結合して難溶性の塩にならないため、マイナスに荷電している土壌から最も溶脱しやすく、現在、地下水等の水質汚染が大きな問題となっている上、最近では環境ホルモンである疑いが出てきている。脱窒菌などを利用した微生物処理でも嫌気条件が必要であるなどの制限があり、また、陰イオンを吸着する安価な材料がないため、硝酸汚染はさらに広まりつつある。その他の陰イオンにおいても同様に一度汚染されるとその修復には多大なコストが必要となる。
また、フッ素は半導体、ガラス、メッキ工場などの排水に含まれており、工場排水中のフッ素はカルシウム化合物を添加しフッ化カルシウムとして除去する方法がとられているが、さらに活性アルミナやフッ素用の陰イオン交換樹脂による吸着塔の設置が必要で大きなコストがかかっている。また、環境基準0.8mg/L以下にしようとすると、高価な専用の陰イオン交換樹脂が必要となる。その他、ヒ素やシアンなども工場排水や、地下水汚染の処理には高価な陰イオン交換樹脂が必要である。
カルシウムイオンを含む溶液としては、石灰水、石灰乳の他、酢酸カルシウム溶液や塩化カルシウム溶液等が挙げられ、カルシウムとして0.03〜30重量%、より好ましくは0.1〜7.0重量%含まれるものが好適である。
カルシウムイオンを含む溶液を前記植物からなる原料に接触させる方法としては、カルシウムイオンを含む溶液の滴下、塗布、吹付け、噴霧などが可能であるが、前記原料をカルシウムイオンを含む溶液に浸漬させることが最も効率的である。また、酸溶液を炭化材に接触させる方法としては、酸溶液の滴下、塗布、吹付け、噴霧などが可能であるが、炭化物を酸溶液に浸漬させることが最も効率的である。
また、別の観点から、この発明(第2発明)は、カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化し、その炭化物に酸溶液を接触させることにより、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることを特徴とする陰イオン吸着炭素材料の製造方法を提供する(請求項2)。
さらに別の観点から、この発明(第3発明)は、カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化した炭化物に、酸溶液を接触させることにより、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることを特徴とする陰イオン吸着炭素材料の製造方法を提供する(請求項3)。
この発明においては、植物からなる原料に、カルシウムイオンを含む溶液、例えば、石灰水または石灰乳等を接触させる。前記原料をカルシウムイオンを含む溶液に浸漬させると、溶液が原料に染み込むことでCa導入チップを得ることができる。特に、カルシウムイオンを含む溶液としてアルカリ性の溶液(例えば石灰水Hなど)を用いる場合、図6(A)に示すように、植物からなる原料としての例えば木質チップ2を石灰水Hに漬けるとCa導入チップ30〔図6(C)参照〕が得られるが、これは、図6(B)に示すように、アルカリによって木質チップ2中の有機物が溶け出し、カルシウムイオンが木質チップ2の成分と反応するからであると考えられる。尚、カルシウムイオンを含む溶液は、カルシウムを0.03〜30重量%含有するのが好ましく、0.1〜7.0重量%含有するのがより好ましい。
続いて、この発明では、得られた前記Ca導入チップ30〔図7(A)参照〕を炭化することによりCa導入炭(以下、単にCa炭という)31〔図7(C)参照〕を得るが、この炭化時に、Ca導入チップ30〔図7(B)参照〕中の有機物が熱によって分解するのと同時に、カルシウムイオンがCa導入チップ30の微細孔壁表面に析出する〔図7(C)参照〕と考えられる。この場合、カルシウムイオンがCa導入チップ30の微細孔壁表面に析出してくるので〔図7(B)参照〕、微細で高分散状態となることにより、多くの官能基を微細孔壁の隅々から引出すものと考えられる。
400℃を下回る温度では、細孔が発達せず吸着材としての性能が劣るという不都合が生じる。また、1000℃を越える温度では、炭素化が進みすぎることにより吸着特性が得られないという不都合が生じる。
この発明では、カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化させた後、その炭化物に酸溶液を接触させることで、炭化物の微細孔壁から引出した官能基に、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させている。本発明者らは、鋭意研究の結果、炭化の過程で、温度及び時間を制御することにより炭化物の官能基をより多く生成させることができることを見出した。つまり、第1発明のように、前記原料に予めカルシウムを接触してある場合は、650〜750℃の炭化温度を例えば1時間持続させた後自然冷却させる場合の方が、約600℃および約800℃の炭化温度を1時間持続させた後自然冷却させる場合に比して、より多くの官能基が形成できることを本発明者らは確認した。特にカルシウムを接触した場合、電子顕微鏡で観察すると、上記のように650〜750℃の炭化温度で炭化させた炭化物ではカルシウム化合物の微粒子が前記微細孔壁面に半ば析出して均一に分散している様子が観察された。一方、約600℃の炭化温度では、カルシウム化合物の微粒子の前記微細孔壁面への析出が十分行われていない様子が観察された。また、約800℃の炭化温度では、カルシウム化合物の微粒子の前記微細孔壁面への析出は見られるものの、欠落が多くなっている様子が観察された。このように、カルシウムが炭化物の前記微細孔壁面から官能基をできるだけ多く引出すために必要な炭化温度として650〜750℃を挙げることができる。
この発明の酸溶液としては、HCl,H2 SO4 等の製造時の排水処理に問題のない酸溶液を挙げることができる。酸溶液の濃度は、0.01mol/L以上(請求項5)、すなわち、0.01mol/L〜20mol/Lであり、0.1mol/L〜10mol/Lが好ましい。0.01mol/Lを下回る濃度では、十分な効果が得られないという不都合が生じる。尚、酸溶液としては、吸着対象陰イオンとイオン交換可能な陰イオンを含むものが望ましいが、炭化前に植物からなる材料を接触させる溶液中に、吸着対象陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを含む場合はこの限りではない。
また、この酸処理は酸溶液に浸漬させるのが効率がよいが、減圧下で行うのが好ましく、1330Pa〜13.3Paの圧力範囲で行うのが好ましい。
また、この発明は、更に別の観点から、陰イオンを吸着した請求項6に記載の陰イオン吸着炭素材料から、吸着した陰イオンが除去されるとともに、次の吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを前記除去した陰イオンに替えて結合させてなる陰イオン吸着炭素材料を提供する(請求項7)。
なお、この発明の陰イオン吸着炭素材料で吸着可能な陰イオンは、炭素材料の微細孔壁表面の官能基に予め結合させてある陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンであり、当然、前記炭素材料の微細孔壁表面の官能基に予め結合させてある陰イオン以外の陰イオンである。
また、請求項7に記載したように、前記陰イオン吸着炭素材料から、吸着した陰イオンが除去されるとともに、次の吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを前記除去した陰イオンに替えて結合させることで、前記陰イオン吸着炭素材料を繰り返し再生使用することができる。
図1、図2において、陰イオン吸着炭素材料の一例である酸処理Ca炭32は、麻等の天然繊維や木材等の植物性の木質材料(植物からなる原料の一例)2をCa導入装置(植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させる手段)9に用意されているカルシウムイオンを含む溶液(例えば石灰水H)に浸漬した後乾燥機12で乾燥させ、続いて、炭化炉1で炭化し、その後、酸処理装置3でHCl,H2 SO4 等の酸溶液3aに浸漬させ、更に、乾燥機6で乾燥させることにより得られる。この実施形態では、前記植物からなる原料(以下、単に原料という)2として木質チップを用いている。この木質チップは、例えば吸水性の高いヒノキ、スギ等の針葉樹を例えば10mm以下のサイズにチップ化したものである。前記Ca導入装置9は、木質チップ2にCaを導入する装置であり、木質チップ2が浸漬されるカルシウムイオンを含む溶液が収容された容器10を備えている。この実施形態では石灰水Hに木質チップ2を浸漬しており、所定濃度(例えば5重量%)の石灰水Hに木質チップ2を浸漬した後容器10から取り出すことでCaが導入されたCa導入チップ30が得られる。この場合、溶液を木質チップ2へ充分染み込ませるため、或いはカルシウムイオンを木質チップ2の成分と充分反応させるために、木質チップ浸漬中に、容器10の内部に設けた攪拌羽根10aを駆動させるのが好ましい。得られたCa導入チップ30を前記乾燥機12で乾燥する。この実施形態では、乾燥機12は、Ca導入チップ30を炭化炉排熱を利用して乾燥させる。なお、石灰乳を用いた方が処理効率がよい。また、石灰水Hや石灰乳に代えて、塩化カルシウム溶液や酢酸カルシウム溶液を用いることもできる。
乾燥させたCa導入チップ30は炭化炉1で炭化され、チップ状のCa炭31が得られる。この実施形態においては炭化条件は、炭化温度が650℃〜750℃とし、できるだけ700℃前後とするのが好ましい。
前記酸処理装置3は、HCl,H2 SO4 等の酸溶液3aを収容してある容器4を備えており、この容器4の内部に攪拌羽根5が設けられている。この酸溶液3aの濃度は、例えば5mol/Lである。前記酸処理装置3は、炭化炉1で得られたチップ状のCa炭31を酸処理して酸処理Ca炭32を得るためのものである。そして、Ca炭31の表面の炭酸カルシウム(CaCO3 )が酸によって溶解するのを促進させるとともに、塩化物イオンおよびカルシウムイオンを前記Ca炭31の微細孔壁表面の官能基と充分反応させるために、容器4の内部に設けた攪拌羽根5を駆動させるのが好ましい。得られた酸処理Ca炭32を前記乾燥機6で乾燥する。この実施形態では、乾燥機6は、酸処理Ca炭32を炭化炉排熱を利用して乾燥させる。
そして、(1)酸処理・乾燥後ただちに使用できる酸処理Ca炭32は陰イオン吸着炭素材料としてそのまま製品に加工される。また、(2)必要に応じて、酸処理後に酸処理Ca炭32をアルカリで中和してもよく、この場合、(3)中和した酸処理Ca炭を、必要に応じて水洗いしてもよい。なお、湿潤状態で使用される場合は乾燥を省略してもよい。
7’は、酸処理Ca炭32がペレット化された製品、8’は、酸処理Ca炭32を粉砕して成形された製品である。なお、製品の加工は、下記に示すように、用途によって使い分けられるが、加工を施さずにそのままの形状で使用することもできる。また、製品7’,8’以外の製品として、酸処理Ca炭32を例えば不織布へ添着してなるものを挙げることができる。
なお、Ca導入チップ30及びCa炭31は、それぞれ別の工場で作成される場合もあり、この場合は、それぞれ上記実施形態の途中の工程から酸処理Ca炭32を製造すればよい。
(硝酸性窒素、亜硝酸性窒素の吸着に関して)
(1)水質浄化のために用いられる[前記Ca炭31との組み合わせによりリンも同時に吸着することが可能となる〔図3(A)参照〕。また、微生物担体としても機能する。]。
(2)畜産による汚染の防止のために用いられる[畜産糞尿堆積地、堆肥化設備近傍等糞尿の流出するおそれのある地域への適用〔図3(B)参照〕。]。
(3)農業用として過剰施肥汚染防止のために用いられる[過剰施肥により植物に利用されない窒素分を吸着し、その後の木炭は緩効性肥料として利用可能〔図3(C)参照〕。。また、特に、火災が発生した場合には大量の窒素肥料、アミノ酸の散布など窒素汚染が激しく、そのような地域への適用も可能。]。
(フッ素吸着に関して)
(1)排水(廃水)処理のために用いられる[フッ酸による洗浄を行っている半導体、ガラス、メッキ工場などの最終処理設備への適用〔図3(D)参照〕。]。
〔試験方法〕
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の濃度が50mg/L(50ppm)の硝酸溶液及び亜硝酸溶液50ml(ミリリットル)(標準液)をそれぞれ五つ用意し、
(1)木質チップ2を700℃で炭化させた比較例に用いる木炭200mg(単に木炭という)
(2)木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を1mol/LのFeCl3 溶液に浸漬させた後、水洗いした比較例に用いる塩化鉄木炭200mg、
(3)前記木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた後、水洗いした酸処理木炭200mg、
(4)木質チップ2を5重量%の石灰水に浸漬した後700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)200mg、
(5)比較例に用いる陰イオン交換樹脂200mgの五つのサンプルを、それぞれ対応する標準液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液及び亜硝酸溶液中の硝酸性窒素の濃度及び亜硝酸性窒素の濃度をそれぞれ測定し、吸着量を計算した。
〔結果〕
図4は、上記各サンプルの硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素吸着能の比較を表す。
(1)の700℃炭化の木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をほとんど吸着しないのに対して、(2)の塩化鉄木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ2.75mg/g及び2.35mg/g吸着した。また、(3)の酸処理木炭は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ2.50mg/g及び2.20mg/g吸着した。(5)の陰イオン交換樹脂は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ10.80mg/g及び10.00mg/g吸着した。
一方、木質チップ2を石灰水Hに浸漬した後炭化し、続いて、HCl溶液に浸漬させてなる(4)の酸処理Ca炭32は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素をそれぞれ10.75mg/g及び9.80mg/g吸着し、(5)の陰イオン交換樹脂と同等以上の吸着能力を示した。
そして、前記酸処理Ca炭32が例えば硝酸イオンを吸着するメカニズムは、以下のように考えられる。図9(A)に示すように、例えば酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を硝酸溶液Lに漬けると、酸処理Ca炭32の表面にカルシウムイオンを介してまたは直接官能基に結合した塩化物イオン〔図9(B)参照〕と硝酸溶液L中の硝酸イオンが交換され〔図9(C)参照〕、硝酸イオンが酸処理Ca炭32に吸着される〔図9(D)参照〕。図9(E)は、図9(D)に示す酸処理Ca炭32を、例えば濃いKCl(またはNaCl)溶液に漬けたときの変化を示す。すなわち、吸着された硝酸イオンはKCl(またはNaCl)溶液で再度、塩化物イオンと硝酸イオンを交換させて再生可能となる。以下、この再生試験について説明する。
《再生試験》
〔試験方法〕
前記硝酸性窒素吸着試験を行った後の酸処理Ca炭32の試料を1mol/LのKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換して硝酸性窒素濃度が50mg/Lの硝酸溶液50ml(ミリリットル)を用意し、水洗いした200mgの前記試料の一回目の再生試験を行った。すなわち、前記試料を硝酸溶液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液中の硝酸性窒素濃度を測定し、吸着量を計算する一回目の再生試験を前記試料を用いて行った。
次に、一回目の再生試験で用いた前記試料を1mol/LのKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換して硝酸性窒素濃度が50mg/Lの硝酸溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の再生試験を行った。すなわち、前記試料を、硝酸溶液50ml(ミリリットル)に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記硝酸溶液中の硝酸性窒素濃度を測定し、吸着量を計算する二回目の再生試験を前記試料を用いて行った。この処理をあと二回繰り返した。
〔結果〕
酸処理Ca炭32による硝酸性窒素の吸着量
初回…10.8mg/g
再生一回目…10.6mg/g
再生二回目…10.9mg/g
再生三回目…10.7mg/g
以上のことから、使用した前記酸処理Ca炭32を濃いKCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが分かった。すなわち、硝酸性窒素吸着試験で硝酸性窒素(陰イオン)を吸着した酸処理Ca炭(陰イオン吸着炭素材料)32を、KCl(またはNaCl)溶液で洗浄し、さらに水洗いすることにより、硝酸性窒素吸着試験で吸着した硝酸性窒素(陰イオン)が除去されて、除去された硝酸性窒素(陰イオン)に替えてCl- を結合させることにより、酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)が再生することが分かった。つまり、一度使用した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を使用後にその都度洗浄と水洗いを行うことにより、複数回使用できることが確認された。なお、亜硝酸性窒素を吸着した場合でも、再生する原理は同じである。
〔試験方法〕
フッ化物イオン濃度が50mg/Lの溶液50ml(ミリリットル)(標準液)を用意し、
(1)木質チップ2を700℃で炭化させた比較例に用いる木炭100mg(単に木炭という)、
(2)木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を1mol/LのFeCl3 溶液に浸漬させた後、水洗いした比較例に用いる塩化鉄木炭100mg、
(3)前記木質チップ2を700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた後、水洗いした酸処理木炭100mg、
(4)木質チップ2を5重量%の石灰水に浸漬した後700℃で炭化させた木炭を5mol/LのHCl溶液に浸漬させた陰イオン吸着炭素材料(以下、酸処理Ca炭32という)100mg、
(5)比較例に用いる陰イオン交換樹脂100mgの五つのサンプルを、それぞれ対応する標準液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度をそれぞれ測定し、吸着量を計算した。
〔結果〕
図5は、上記各サンプルのフッ化物イオン吸着能の比較を表す。
(1)の700℃炭化の木炭は、フッ化物イオンをほとんど吸着しないのに対して、(2)の塩化鉄木炭は、7.50mg/gのフッ化物イオンを吸着した。また、(3)の酸処理木炭は、5.00mg/gのフッ化物イオンを吸着した。(5)の陰イオン交換樹脂は、8.50mg/gのフッ化物イオンを吸着した。
一方、木質チップ2を石灰水に浸漬した後炭化し、続いて、HCl溶液に浸漬させてなる(4)の酸処理Ca炭32は、19.00mg/gのフッ化物イオンを吸着し、(5)の陰イオン交換樹脂を大きく越える吸着能力を示した。
《再生試験》
〔試験方法〕
次に、前記フッ素吸着試験を行った後の酸処理Ca炭32の試料を1mol/Lの塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換してフッ化物イオン濃度が50mg/Lの溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の一回目の再生試験を行った。すなわち、前記試料を前記溶液に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度を測定し、吸着量を計算する一回目の再生試験を前記試料を用いて行った。
次に、一回目の再生試験で用いた前記試料を1mol/Lの塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いした。続いて、標準液を交換してフッ化物イオン濃度が50mg/Lの前記溶液50ml(ミリリットル)を用意し、前記水洗いした200mgの前記試料の再生試験を行った。すなわち、前記試料を、前記溶液50ml(ミリリットル)に入れ、例えば200rpm、20℃の条件下で、10時間振とう後、前記溶液中のフッ化物イオン濃度を測定し、吸着量を計算する二回目の再生試験を前記試料を用いて行った。この処理をあと二回繰り返した。
〔結果〕
酸処理Ca炭32によるフッ化物イオン濃度の吸着量
初回…18.7mg/g
再生一回目…18.2mg/g
再生二回目…18.9mg/g
再生三回目…18.6mg/g
以上のことから、使用した酸処理Ca炭32を濃い塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いすることにより、再生することが分かった。すなわち、フッ素吸着試験でフッ化物イオン(陰イオン)を吸着した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を、塩酸(または硫酸)で洗浄し、さらに水洗いすることにより、フッ素吸着試験で吸着したフッ化物イオン(陰イオン)が除去されて、除去されたフッ化物イオン(陰イオン)に替えて、Cl- (またはSO4 2- )を結合させることにより、酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)が再生することが分かった。つまり、一度使用した酸処理Ca炭32(陰イオン吸着炭素材料)を使用後にその都度洗浄と水洗いを行うことにより、複数回使用できることが確認された。
3a 酸溶液
H カルシウムイオンを含むアルカリ性溶液
Claims (7)
- 植物からなる原料にカルシウムイオンを含む溶液を接触させた後炭化し、続いて、酸溶液を接触させることにより、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることを特徴とする陰イオン吸着炭素材料の製造方法。
- カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化し、その炭化物に酸溶液を接触させることにより、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることを特徴とする陰イオン吸着炭素材料の製造方法。
- カルシウムイオンを含む溶液を接触させた植物からなる原料を炭化した炭化物に、酸溶液を接触させることにより、吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを結合させることを特徴とする陰イオン吸着炭素材料の製造方法。
- 前記原料の炭化温度が400℃〜1000℃である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の陰イオン吸着炭素材料の製造方法。
- 前記酸溶液の濃度が0.01mol/L以上である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の陰イオン吸着炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の陰イオン吸着炭素材料の製造方法により製造してなる陰イオン吸着炭素材料。
- 陰イオンを吸着した請求項6に記載の陰イオン吸着炭素材料から、吸着した陰イオンが除去されるとともに、次の吸着対象の陰イオンとイオン交換が可能な陰イオンを前記除去した陰イオンに替えて結合させてなる陰イオン吸着炭素材料。
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