JP2005305251A - 塗膜形成方法及び多孔質パネルの製造方法 - Google Patents

塗膜形成方法及び多孔質パネルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 光重合性組成物を用いて、多孔質基材に対して、ほぼ100%に近い塗着効率で、厚みの大きな塗膜を形成できる塗膜形成方法及び多孔質パネル(例えば、多孔質建材パネル)の製造方法を提供する。
【解決手段】 多孔質基材3に対して、室温で固体の光重合性組成物(例えば、艶消し粉体塗料)4を溶融コーティングし、形成された塗膜を加熱してレベリングした後、塗膜に活性光線を照射して硬化させる。光重合性組成物は、例えば、ロールコーター1及びドクターロール2で構成された一対のロールを有するロールコーターを使用して溶融コーティングしてもよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、木質材などに厚塗りするのに適した塗膜形成方法及び多孔質パネル(例えば、建材パネル)の製造方法に関する。
従来、基材に対して、液状紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射することにより、塗膜を形成する方法が知られている。しかし、木質材などの多孔質基材に対しては、液状紫外線硬化型樹脂組成物が浸透するため、均一な塗膜の形成、特に厚膜コーティングが困難である。一方、多孔質基材に対して、塗膜を形成する方法として、紫外線硬化型粉体塗料を塗布する方法が知られている。
例えば、特開平8−301957号公報(特許文献1)には、末端メタアクリル基含有結晶形ポリエステルを含有する放射線硬化性粉末組成物が開示されている。この文献には、摩擦電気式ガン又は静電気式ガンによる噴霧(静電塗装)によって、又は流動床(流動浸漬法)において物品に沈着させた放射線硬化性粉末組成物を、80〜150℃で加熱して溶融させた後、紫外線又は加速電子ビームを照射する被覆方法が記載されている。また、物品に沈着している紫外線硬化性粉末組成物を、強制循環式オーブン中で、又は赤外線灯を用いて、80〜150℃で加熱して溶融させ、展延させ、滑らかで、均一な連続コーティングを得ることが記載されている。さらに、木材にも適用できることが記載されている。
特開2002−212506号公報(特許文献2)には、多孔性基材(多孔性金属など)に塗布するための粉体塗料であって、ワックスを含有する紫外線硬化型粉体塗料が開示されている。この文献には、静電塗装により多孔性基材に付着させた粉体塗料を加熱して溶融させた後、紫外線を照射して硬化させることが記載されており、ワックスによって、発泡跡の発生が抑制されることが記載されている。
前記静電塗装によれば、1回の塗装において、膜厚30〜150μm程度の塗膜を形成できる。しかし、静電塗装の場合、基材への塗着効率が50〜70%程度であり、塗着しなかった塗料は回収又は廃棄される。回収された粉体塗料は、正常な塗料と比べて、粒度分布が異なるため、再度、静電塗装に用いられると、塗膜外観などを損なうおそれがある。また、木質材などの電気絶縁性の多孔質基材に対しては、均一かつ厚膜の塗膜を形成できない。さらに、塗布量のコントロールが難しく、外観の良好な塗膜を形成しにくい。一方、前記流動浸漬の場合、粉体塗料の流動性がよいことが必要である。また、形成される塗膜の厚みが、基材の熱容量に左右されるので、膜厚をコントロールしにくい。さらに、基材が木質材などである場合には、高温に加熱することが難しい。また、いずれの場合も、粉体塗料が基材の裏面にまで回り込むため、基材の所定の面だけに塗布することが難しい。
特開平8−301957号公報(請求項1、請求項18、段落番号[0045]、段落番号[0046]) 特開2002−212506号公報(請求項1、実施例)
従って、本発明の目的は、多孔質基材であっても、ほぼ100%に近い塗着効率で、均一で膜厚の大きな塗膜を形成できる塗膜形成方法及び多孔質パネル(例えば、多孔質建材パネル)の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気絶縁性の高い多孔質基材や高温加熱が困難な多孔質基材(例えば、木質材など)であっても均一な塗膜を形成できる塗膜形成方法及び多孔質パネル(例えば、多孔質建材パネル)の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、多孔質基材に膜厚の大きな塗膜を簡便かつ効率よく形成できる塗膜形成方法及び多孔質パネル(例えば、多孔質建材パネル)の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、室温で固体の光重合性組成物を溶融コーティングすると、多孔質基材であっても、ほぼ100%に近い塗着効率で、均一で膜厚の大きな塗膜を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、多孔質基材に対して、室温で固体の光重合性組成物を溶融コーティングし、形成された塗膜を加熱してレベリングした後、塗膜に活性光線を照射して硬化させる塗膜形成方法である。多孔質基材は木質材であってもよい。光重合性組成物は艶消し粉体塗料であってもよい。
本発明では、プレヒートした多孔質基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングしてもよい。本発明では、多孔質基材に対して、光重合性組成物を塗布量60〜180g/m2で塗布してもよい。
本発明では、光重合性組成物の溶融温度に加熱されたコーターロール(例えば、ホットロール)及びドクターロール(例えば、ホットロール)で構成された一対のロール(ホットロール)において、少なくともコーターロールを回転させて、光重合性組成物を溶融コーティングしてもよく、速度5〜60m/分で溶融コーティングしてもよい。コンベアにより多孔質基材を搬送しつつ、光重合性組成物を溶融コーティングする工程において、コーターロール周速V1よりもコンベア速度V2を大きくしてもよく、コンベア速度V2とコーターロール周速V1との差(V2−V1)を13〜24m/分としてもよい。
本発明は、前記の塗膜形成方法によって、多孔質基材の表面に塗膜を形成する多孔質パネルの製造方法も含む。
本発明によれば、多孔質基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングするので、ほぼ100%に近い塗着効率で、均一で膜厚の大きな塗膜を形成できる。
また、本発明によれば、電気絶縁性の高い多孔質基材や高温加熱が困難な多孔質基材(例えば、木質材など)であっても均一な塗膜を形成できる。
さらに、本発明によれば、多孔質基材に膜厚の大きな塗膜を簡便かつ効率よく形成できる。
本発明では、多孔質基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングする工程と、形成された塗膜を加熱してレベリングする工程と、レベリングした塗膜に活性光線を照射して硬化させる工程とを経ることにより、多孔質基材の表面に塗膜を形成する。
[多孔質基材]
多孔質基材は、例えば、有機質の多孔質基材であってもよく、無機質の多孔質基材であってもよい。有機質の多孔質基材としては、木質材、多孔質プラスチック、紙、布帛(織布、不織布)などが例示できる。木質材としては、天然木材及び合成木材が挙げられ、合成木材としては、MDF板(中質繊維板)、パーティクルボード(PB)、ベニヤ板などが例示できる。無機質の多孔質基材としては、コンクリートパネル、石膏ボード、多孔質金属などが例示できる。多孔質金属としては、マグネシウム合金鋳造物、アルミニウムダイキャスト、アルミニウム溶射鉄板、鋳物、亜鉛溶射鉄板(メタリコン)などが例示できる。本発明では、溶融コーティングするため、多孔質基材は、導電性の多孔質基材であってもよく、電気絶縁性の多孔質基材であってもよい。多孔質基材は、単独の基材又は二種以上の複合基材であってもよい。
[光重合性組成物]
本発明で使用される光重合性組成物は、室温(温度15〜25℃)で固体である。光重合性組成物は、光硬化性樹脂と光重合開始剤とで構成してもよい。
光硬化性樹脂としては、室温(温度15〜25℃)で固体であり、かつ光重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和結合基など)を有する樹脂であれば特に限定されず、光硬化性ポリエステル系樹脂、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などが例示される。これらの光硬化性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
光硬化性ポリエステル系樹脂は、官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基など)を有する飽和又は不飽和ポリエステル樹脂と、前記官能基に対する反応性基を有する重合性不飽和化合物との反応により生成する(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル系樹脂、光硬化性不飽和ポリエステル系樹脂(例えば、ジカルボン酸成分として、(無水)マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸成分を用いて得られたポリエステル系樹脂など)などが例示できる。光硬化性ポリエステル系樹脂としては、通常、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル系樹脂が使用される。
官能基を有するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分を主成分(例えば、70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%程度)とするポリカルボン酸成分と、ジオール成分を主成分(例えば、70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%程度)とするポリオール成分とのエステル化反応による生成物であってもよい。
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC8-16芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物)、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などのC8-12脂環族ジカルボン酸又はその無水物)などが例示できる。ジカルボン酸成分は、低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1-3アルキルエステル)などの反応性誘導体であってもよい。これらのジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのジカルボン酸成分のうち、直鎖状C6-16脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖状C6-12脂肪族ジカルボン酸)、C8-12芳香族ジカルボン酸(特にベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸)、C8-12脂環族ジカルボン酸(特にC8-10脂環族ジカルボン酸)から選択された少なくとも一種のジカルボン酸が好ましい。
ジカルボン酸成分は、分岐構造などを導入するため、必要によりポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸やピロメリット酸などのトリカルボン酸やテトラカルボン酸又はそれらの酸無水物)と併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなどのC2-12アルキレングリコール)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)オキシC2-4アルキレングリコール)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC6-10シクロアルカンジオール)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノール類、ビスフェノールA−C2-4アルキレンオキシド付加体などのビスフェノール類とC2-4アルキレンオキシドとの付加体)などが例示できる。これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジオール成分のうち、C2-8アルキレングリコール(エチレングリコールなど)及びC6-8シクロアルカンジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)から選択された少なくとも一種を用いる場合が多い。
ジオール成分は、分岐構造などを導入するため、必要によりポリオール成分(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなど)と組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系樹脂の官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基)の濃度は、重合性不飽和化合物との反応により光重合性を付与可能な範囲であればよく、例えば、酸価又はヒドロキシル価(OH価)5〜200mgKOH/g、好ましくは10〜150mgKOH/g、さらに好ましくは20〜100mgKOH/g程度であってもよい。
前記ポリエステル系樹脂の官能基に対する反応性基と(メタ)アクリロイル基とを有する重合性化合物としては、例えば、カルボキシル基に対する反応性基を有する化合物[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど)など]、ヒドロキシル基に対する反応性基を有する化合物[例えば、ビニルフェニルイソシアネート、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート成分と、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物など)、不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、クロトン酸など)又はその反応性誘導体(無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドなど)など]などが例示できる。これらの重合性化合物は、ポリエステル系樹脂の官能基の種類に応じて、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
光硬化性ポリエステル系樹脂は、結晶性(半結晶性を含む)又は非結晶性であってもよい。結晶性ポリエステル系樹脂を得るためには、カルボキシル基が分子の対称位置に置換したジカルボン酸及び/又はヒドロキシル基が分子の対称位置に置換したジオールを用いるのが有利である。対称型(又は対称構造)ジカルボン酸としては、例えば、直鎖状C4-16脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖状C6-12脂肪族ジカルボン酸)及び対称型環状ジカルボン酸(テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸)から選択された少なくとも一種のジカルボン酸が例示できる。対称型(又は対称構造)ジオールとしては、直鎖状C2-8アルキレングリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)及び対称型C6-8シクロアルカンジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)から選択された少なくとも一種のジオールが例示できる。
対称構造のジカルボン酸成分及び対称構造のジオール成分の割合が多くなると、光硬化性ポリエステル系樹脂の結晶性(又は結晶化度)が大きくなる。一方、非対称構造のポリカルボン酸成分(ジカルボン酸成分を含む)や非対称構造のポリオール成分(ジオール成分を含む)の割合が多くなると、光硬化性ポリエステル系樹脂の結晶性(又は結晶化度)が低下する。そのため、ポリカルボン酸成分(ジカルボン酸成分を含む)のうち、対称構造のジカルボン酸成分の割合は、例えば、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよく、ポリオール成分(ジオール成分を含む)のうち、対称構造のジオール成分の割合は、例えば、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよい。
ポリエステル系樹脂と前記重合性化合物との反応は、慣用の方法、例えば、不活性ガス雰囲気中、熱重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノンアルキルエーテルなど)の存在下、エステル化触媒(金属触媒、アミン類など)を用い、通常、60〜160℃(例えば、80〜130℃)程度の温度で行ってもよい。必要であれば、有機溶媒の存在下で反応させてもよい。ポリエステル系樹脂の官能基1モルに対する前記重合性化合物の反応性基の割合は、0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.3モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モル程度であってもよい。反応終了後、必要に応じて、残存モノマーや溶媒を除去することにより、室温で固体の光重合性ポリエステル系樹脂を得ることができる。
光硬化性ポリエステル系樹脂の酸価は、通常、0.1〜10mgKOH/g(例えば、0.3〜5mgKOH/g)程度である。
光硬化性アクリル系樹脂としては、反応性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基など)を有するアクリル系樹脂と、前記反応性基に対する反応性基を有する重合性不飽和化合物(例えば、ヒドロキシル基に対して反応可能なビニルフェニルイソシアネート、(無水)マレイン酸、(メタ)アクリル酸又はその反応性誘導体(無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドなど)など、カルボキシル基に対して反応可能なグリシジル(メタ)アクリレートなど、グリシジル基に対して反応可能な(メタ)アクリル酸など)との反応により生成する重合性基((メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和結合)を有するアクリル系樹脂が例示できる。
光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応により生成するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含まれる。光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂には、例えば、イソシアネート基を有するウレタンオリゴマーと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成する樹脂、ヒドロキシル基を有する樹脂(前記ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂)と、遊離のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応による生成物など)との反応により生成する樹脂などが含まれる。さらに、光硬化性樹脂は、シリコーン系樹脂などであってもよい。
光硬化性樹脂の重合性基((メタ)アクリロイル基など)の濃度は、重合性不飽和結合当量(重合性基当りの分子量)として、通常、200〜10000g/eq(特に200〜7000g/eq)程度であり、例えば、300〜7500g/eq、好ましくは300〜5000g/eq、さらに好ましくは500〜5000g/eq(特に500〜3000g/eq)程度であってもよい。光硬化性樹脂の数平均分子量は、例えば、500〜30000、好ましくは800〜20000、さらに好ましくは1000〜15000(特に1000〜10000)程度であってもよい。
光硬化性樹脂のうち、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びウレタン系樹脂から選択され、かつ重合性不飽和結合を有する少なくとも一種の光硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂(非結晶性及び結晶性樹脂)は、通常、ガラス転移温度又は熱溶融温度(又は融点)を有している。光硬化性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40〜70℃、好ましくは40〜65℃、さらに好ましくは40〜60℃(特に40〜50℃)程度であってもよい。
光硬化性樹脂は、通常、前記ガラス転移温度を示す非結晶性樹脂(例えば、結晶化度10%未満)又は結晶性樹脂(半結晶性樹脂を含む)で構成してもよく、コーティング性などの塗膜性能、塗膜の表面平滑性などの外観特性を向上させるため、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とを組み合わせて構成してもよい。結晶性樹脂の結晶化度は、例えば、10〜70%、好ましくは15〜60%、さらに好ましくは20〜50%程度であってもよく、熱溶融温度又は融点は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜100℃(特に70〜90℃)程度であってもよい。
光硬化性樹脂を構成する非結晶性樹脂と結晶性樹脂との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=50/50〜99/1、好ましくは70/30〜98/2、好ましくは75/25〜97/3(特に80/20〜95/5)程度であってもよい。
光硬化性樹脂は、重合性や練合性などを調整するために、粉粒体の成形性を損なわない範囲で、慣用のラジカル重合性希釈剤を含む光硬化性樹脂の組成物であってもよい。重合性稀釈剤としては、光硬化性樹脂を固体(例えば、粉粒体など)の形態で維持できる限り、室温(例えば、10〜25℃程度)で液状又は固体の重合性稀釈剤であってもよい。光硬化性樹脂とラジカル重合性希釈剤との割合(重量比)は、前者/後者=100/0〜80/20(例えば、100/0〜90/10)程度であってもよい。
光重合性組成物は、光硬化性樹脂に加えて、通常、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤は、活性光線の種類に応じて選択でき、紫外線硬化性組成物(又は粉体塗料)を形成してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ケトン系化合物、ホスフィン系化合物、スルフィド系化合物(ジブチルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤のうち、ケトン系化合物やホスフィン系化合物が好ましい。
ケトン系化合物としては、アセトフェノン系化合物(アセトフェノンジエチルケタール、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1―オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなど)、ベンゾフェノン系化合物[ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジメチルアミノ−4′−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトンなど]、ベンゾイン系化合物(ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾイン誘導体など)、ベンジル系化合物(ベンジル、ベンジルメチルケタールなど)、アントラキノン系化合物(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなど)、チオキサントン系化合物(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなど)、モルフォリン系化合物[2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン、3,6−ビス(2−モルホリノイソブチル)−9−ブチルカルバゾールなど]などが例示される。
ホスフィン系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6―ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(BAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)メチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)n−ブチルホスフィンオキシドなどが例示される。
光重合開始剤は、粉粒体又は塗料の色相に応じて、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。例えば、ケトン系化合物とホスフィン系化合物とを組み合わせて光重合開始剤系を構成してもよい。
光重合開始剤の割合は、光硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましくは0.2〜5重量部(特に0.3〜5重量部)程度であってもよい。
光重合開始剤とともに、増感剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸又はそのエステル、アクリジンなど)、クマリン類[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリンなど]、キノリン類[2−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル)キノリンなど]、キノン類[ベンゾキノン、アントラキノンなど]、ピレン類[1−ニトロピレンなど]、アセナフテンなどの芳香族炭化水素類などを含んでいてもよい。
光重合性組成物は、艶消し剤を含有する艶消し粉体塗料であってもよい。艶消し粉体塗料を使用することによって、艶消しされた塗膜を形成できる。艶消し剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの各種の粉粒体を使用してもよい。艶消し剤の平均粒径は、通常は、0.01〜30μm、好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.01〜10μm程度であってもよい。艶消し剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
艶消し剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは30〜100重量部程度であってもよい。
光重合性組成物は、クリアラッカーなどのように着色剤を必ずしも必要としないが、着色剤(染顔料)を含んでいてもよい。着色剤は、無機顔料及び/又は有機染顔料であってもよい。無機顔料としては、例えば、白色顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、マイカ、ケイ酸マグネシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイトなど)、黒色顔料(カーボンブラックなど)、赤色顔料(べんがら、鉛丹、モリブデンレッド、カドミウムレッドなど)、黄色顔料(黄色酸化鉄、黄鉛、リサージ、カドミウムイエロー、クロムイエローなど)、橙色顔料(モリブデートオレンジなど)、青色顔料(紺青、群青など)、緑色顔料(クロムグリーンなど)、紫色顔料(マンガンバイオレットなど)、金属粉顔料(アルミニウム粉顔料など)などが例示される。顔料には、体質顔料(炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど)も含まれる。有機染顔料としては、例えば、アゾ系染顔料(ピグメントイエロー、ピグメントオレンジ、ピグメントレッド、ハンザイエローなど)、フタロシアニン系染顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなど)、キナクリンドン系染顔料(キナクリンドン赤色など)、ペリレン系染顔料(ペリレンマルーンなど)などが例示される。着色剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
着色剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部(特に5〜30重量部)程度であってもよい。
光重合性組成物は、種々の添加剤、例えば、ワックス類、表面調整剤又はレベリング剤(アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤など)、分散剤(ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などの界面活性剤、ノニオン性やアニオン性であってもよいポリマー型分散剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、帯電剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤のうち、塗膜の表面平滑性を向上させるためには、表面調整剤又はレベリング剤が有用である。これらの添加剤の使用量は、光硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部程度であってもよい。
光重合性組成物の形態は、室温で固体であれば、特に制限されず、例えば、粉粒体、ペレット状、ブロック状、フレーク状などであってもよい。粉粒体は、例えば、非繊維状(球状、楕円体状、多角体状、無定形状など)、繊維状(針状又は繊維状など)であってもよい。光重合性組成物の形態は、通常、非繊維状の粉粒体又はブロック状である。光重合性組成物の最大粒子径は、例えば、3cm以下、好ましくは2cm以下、さらに好ましくは1cm程度以下であってもよい。光重合性組成物の最大粒子径は、通常、約5μm以上である。光重合性組成物の体積平均粒子径は、特に限定されず、例えば、5〜1000μm、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm(特に5〜100μm)程度であってもよい。
本発明では、光重合性組成物を溶融コーティングするので、光重合性組成物(特に光重合性組成物の粉粒体)が融着(ブロッキング)しても、重大な問題とはならない。そのため、必ずしも必要ではないが、必要に応じて、光重合性組成物(特に光重合性組成物の粉粒体)のブロッキングを防止するため、粉粒状ブロッキング防止剤を使用できる。ブロッキング防止剤は、通常、有機又は無機微粒子(特に無機微粒子)で構成されている。
ブロッキング防止剤としては、例えば、金属酸化物[シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛など]、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)などが例示される。これらの無機微粒子のうち、ケイ素含有無機微粒子、例えば、ケイ酸(無水ケイ酸、含水ケイ酸)、二酸化ケイ素(又は無水シリカ)、ケイ酸金属塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム)などを用いる場合が多い。ブロッキング防止剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ブロッキング防止剤としては、通常、シリカ微粒子を用いる場合が多い。
ブロッキング防止剤は、親水性又は疎水性であってもよい。好ましいブロッキング防止剤は、表面が疎水化処理されている。ブロッキング防止剤を構成する微粒子表面は、例えば、シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイルなど)、アルキルシラン(オクチルシランなど)、シランカップリング剤(トリメチルシリル基などのアルキルシリル基を有するシランカップリング剤など)などを用いて疎水化することができる。
ブロッキング防止剤を構成する微粒子(一次粒子)の平均粒子径は、通常、1〜100nmであり、例えば、5〜100nm、好ましくは5〜70nm、さらに好ましくは10〜70nm(特に5〜50nm)程度であってもよい。ブロッキング防止剤を構成する微粒子は嵩密度が小さく、例えば、嵩密度30〜200g/L、好ましくは30〜150g/L、さらに好ましくは30〜130g/L(特に30〜100g/L)程度であってもよい。
このようなブロッキング防止剤のうち、無水シリカ微粒子は、日本アエロジル(株)から商品名「アエロジルR972」、「アエロジルR805」、「アエロジルR812S」などとして入手できる。
粉粒状ブロッキング防止剤の使用量は、光重合性組成物100重量部に対して、例えば、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部(特に0.1〜0.3重量部)程度であってもよい。ブロッキング防止剤は、光重合性組成物のペレット(光重合性組成物の粉粒体)に対して添加されてもよい。ブロッキング防止剤の添加により、光重合性組成物(特に光重合性組成物の粉粒体)のブロッキングを有効に防止して、貯蔵安定性を向上できる。
ブロッキング防止剤は、光重合性組成物から遊離して、光重合性組成物の粉粒体の間に介在していてもよく、全部又は一部が光重合性組成物の表面に埋込や付着などにより結合(又は固着)していてもよい。
[光重合性組成物の製造方法]
光重合性組成物(特に光重合性組成物の粉粒体)は、例えば、光硬化性樹脂と光重合開始剤と(必要に応じて他の添加剤、例えば、艶消し剤、着色剤などと)を含む組成物を溶融混練し、冷却固化した後、粉砕し、必要により、分級することにより得ることができる。ブロッキング防止剤を使用する場合は、所定サイズに分級された光重合性組成物と混合してもよい。しかし、光硬化性樹脂及び光重合開始剤を含む組成物を溶融混練し、冷却固化した後、この固化物(ペレット状などの粒状固化物)にブロッキング防止剤を添加し、粉砕し、必要により分級する場合が多い。光重合性組成物をブロッキング防止剤の存在下で粉砕すると、光重合性組成物の表面にブロッキング防止剤が固着するためか、光重合性組成物の貯蔵安定性又は耐ブロッキング性を改善できる。
光硬化性樹脂と光重合開始剤と(必要に応じて他の添加剤と)を含む組成物の溶融混練は、光硬化性樹脂の重合又は硬化を抑制しつつ行われ、通常、溶融混練物は、粒状(例えば、ペレット状)の形態に冷却固化される。溶融混練は、慣用の方法、例えば、各成分を混合機(ヘンシェルミキサーやリボンミキサーなど)で乾式混合し、溶融混練機(一軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなど)で溶融混練することにより行うことができる。溶融混練温度は、光硬化性樹脂の重合を抑制可能な温度であってもよく、通常は、60〜160℃程度であり、例えば、60〜150℃、好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃(特に80〜100℃)程度であってもよい。
冷却固化後の粉砕工程は、必要であれば、繰り返し行ってもよい。粉砕工程では、アトマイザーなどの慣用の粉砕機を使用できる。光硬化性樹脂又はその組成物として、ガラス転移温度や融点の低い樹脂を使用する場合は、固化物(ペレット状固化物など)は、冷却下(例えば、冷風、ドライアイス、液化窒素などにより冷却しつつ)、粉砕するのが好ましい。冷却温度は、例えば、40℃以下(例えば、0〜40℃)、好ましく30℃以下(例えば、0〜30℃)、さらに好ましくは20℃以下(例えば、0〜20℃)程度であってもよい。必要であれば、粉砕した後、所定サイズの粉粒体を得るため、篩(例えば、325メッシュや250メッシュなどの標準篩)や分級機を用いて分級してもよい。
[コーティング工程]
本発明では、多孔質基材に対して、室温で固体の光重合性組成物を溶融コーティングする。溶融コーティングにより、絶縁性の多孔質基材及び導電性の多孔質基材のいずれに対しても、均一な塗膜を形成できる。多孔質基材は、必ずしも予備加熱(プレヒート)する必要はないが、形成される塗膜の外観の点より、プレヒートした多孔質基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングしてもよい。多孔質基材の種類に応じて、例えば、光重合性組成物の溶融温度より低い温度にプレヒートしてもよく、光重合性組成物の溶融温度以上にプレヒートしてもよい。プレヒート温度は、例えば、30〜130℃、好ましくは40〜110℃、さらに好ましくは50〜90℃程度であってもよい。プレヒート温度が低いと、塗膜外観に悪影響を及ぼす場合がある。プレヒート温度が高すぎると、多孔質基材が変形する場合がある。プレヒートは、加熱ヒーターなどの種々の加熱手段(例えば、遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、温風加熱ヒーターなど)を用いて行うことができる。
光重合性組成物を、その溶融温度(例えば、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜100℃程度)に加熱することによって、溶融コーティングすることができる。溶融コーティングする方法としては、例えば、ロールコーター法、溶射法などが例示できる。量産性の点より、ホットロールを用いたロールコーター法が好ましい。
図1に、ロールコーター法による塗布状態を説明するための概略図を示す。ロールコーター法では、光重合性組成物4の供給量をコントロールするためのドクターロール(又はホットロール)2と、溶融した光重合性組成物4を多孔質基材3に塗布するためのコーターロール(又はホットロール)1とで構成された一対のロールを有するロールコーターを使用する。コーターロール1及びドクターロール2(特にそれぞれのロール表面)は、それぞれ、金属製又は非金属製(例えば、耐熱性シリコーンゴムなどのゴム製など)のいずれであってもよい。コーターロール1とドクターロール2とは、材質が同じであっても、異なっていてもよい。コーターロール1及びドクターロール2を利用して、コンベアなどの搬送手段5により所定速度で一定方向に搬送されている多孔質基材3上に、溶融した光重合性組成物の塗膜を形成することができる。
ロールコーター法の場合、コーターロール及びドクターロールの加熱温度は、光重合性組成物の溶融状態を維持できる温度(溶融温度)、例えば、50〜200℃、好ましくは60〜170℃、さらに好ましくは70〜130℃程度であってもよい。各ロールの加熱温度が低いと、光重合性組成物の溶融粘度が高くなり、塗膜のレベリング性が低下する傾向がある。各ロールの加熱温度が高すぎると、光重合性組成物の安定性が低下する傾向がある。コーターロール及びドクターロールは、例えば、各ロール内部に電気ヒーターを内蔵させて加熱する方法、各ロール内部に加熱したオイルを循環させて加熱する方法などによって加熱できる。
コーターロール及びドクターロールで構成された一対のロールにおいて、ドクターロールを回転させてもよいが、ドクターロールを回転させることなく、コーターロールを回転(例えば、多孔質基材の搬送方向に回転)させて、光重合性組成物を溶融コーティングすることによって、塗布量が適切で、外観が良好な塗膜を形成できる。
多孔質基材に対する光重合性組成物の塗布量は、特に限定されず、通常、10〜300g/m2程度の範囲から選択でき、例えば、20〜250g/m2、好ましくは40〜200g/m2、さらに好ましくは60〜180g/m2(特に80〜150g/m2)程度であってもよい。塗布量は、例えば、コーターロールとドクターロールとの間隔や回転速度などによってコントロールすることができる。コーターロールとドクターロールとの間隔は、通常2500μm程度以下であり、例えば、10〜2000μm、好ましくは50〜1000μm、さらに好ましくは100〜800μm(特に200〜600μm)程度であってもよい。例えば、コーターロール及びドクターロールの少なくとも一方のロール表面が弾性材料製(ゴム製など)である場合には、コーターロールとドクターロールとが接触していてもよく、コーターロールに対してドクターロールが押し付けられ、少なくとも一方の弾性材料製(ゴム製など)のロール表面がくぼんだ状態であってもよい。
塗布量は、また、コーターロールの周速V1によってコントロールすることができる。すなわち、コーターロール周速V1を高くすることによって、塗布量を多くすることができる。コーターロール周速V1は、光重合性組成物の溶融粘度などの流動特性に応じて選択でき、例えば、2〜20m/分、好ましくは6〜17m/分、さらに好ましくは8〜14m/分程度であってもよい。
塗布量は、さらに、コーターロールの周速V1と、多孔質基材を搬送するコンベア速度V2との差(V2−V1)によっても、コントロールすることができる。すなわち、コーターロール周速V1よりも、コンベア速度V2を大きくしてもよく、コンベア速度V2を基準として、コーターロール周速V1を高くするほど、塗布量を多くすることができる。コンベア速度V2は、特に限定されず、例えば、5〜60m/分、好ましくは10〜50m/分、さらに好ましくは20〜40m/分程度であってもよい。コーターロールの周速V1とコンベア速度V2との差(V2−V1)は、例えば、10〜30m/分、好ましくは13〜24m/分、さらに好ましくは16〜21m/分程度であってもよい。
多孔質基材に対する光重合性組成物のコーティング速度は、特に限定されず、例えば、5〜60m/分、好ましくは10〜50m/分、さらに好ましくは20〜40m/分程度であってもよい。
[レベリング工程]
本発明では、光重合性組成物を溶融コーティングした塗膜を加熱してレベリングし、塗膜表面を平坦化する。加熱源としては、例えば、赤外(IR)照射ランプを備えた赤外線照射炉、熱風乾燥炉などを使用できる。これらの方法のうち、赤外線照射炉(例えば、波長700nm〜20μm程度の中波長域の赤外線照射炉)を用いる方法や、前記赤外線照射炉と熱風乾燥炉とを組み合わせて用いる方法が好ましい。
加熱温度は、光重合性組成物の種類にもよるが、例えば、50〜160℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜130℃(特に70〜120℃)程度であってもよい。加熱温度が低いと、塗膜のレベリング性が低下する傾向がある。加熱時間は、例えば、1秒〜10分間、好ましくは5秒〜5分間、さらに好ましくは10秒〜3分間程度であってもよい。加熱時間が短いと、塗膜のレベリング性が低下する傾向があり、加熱時間が長いと、光重合性組成物の安定性が低下する傾向がある。
前記コーティング工程及びレベリング工程により、多孔質基材に対する浸透を抑制しつつ、光重合性組成物を、厚塗りした場合でも、ほぼ100%(固形分)に近い塗着効率で、均一な塗膜を形成できる。
[硬化工程]
本発明では、加熱してレベリングした塗膜に活性光線を照射して硬化させる。活性光線は、例えば、ガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよいが、通常、紫外線が利用される。紫外線照射ランプとしては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを用いることができる。紫外線の波長域は、例えば、270〜460nm、好ましくは300〜460nm、さらに好ましくは350〜460nm(特に400〜460nm)程度であり、従来の光硬化性液状塗料に比べて、長波長域であってもよい。
なお、前記コーティング工程を繰り返し行ったり、コーティング工程、レベリング工程及び硬化工程で構成されたサイクルを繰り返し行ってもよいが、1回のサイクルでも、均一で、しかも厚みの大きな塗膜を形成できる。
本発明の塗膜形成方法によれば、多孔質基材の表面に、均一で、しかも平坦化した塗膜を形成することができる。そのため、種々の多孔質基材の塗装に適用できる。特に、多孔質基材に対する光重合性組成物の浸透を抑制することができ、厚塗りが可能であるので、外観が良好な多孔質パネル(例えば、多孔質建材パネル)を製造するのに好適である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、塗料配合は以下の通りである。
[塗料配合]
紫外線硬化型ポリエステル樹脂(ダイセル・ユーシービー(株)製、Uvecoat 3001、Tg=44℃)100重量部、半結晶性樹脂(ダイセル・ユーシービー(株)製、Uvecoat 9010)10重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、Irugacure 819と、チバスペシャルティケミカルズ(株)製、Irugacure 2959との混合物、前者/後者=1/1(重量比))1重量部、艶消し剤((株)龍森製、ヒューズレックスE-2)50重量部、酸化チタン20重量部及び表面調整剤(SOLUTIA(株)製、MODAFLOW POWDER M-2000)1重量部をヘンシェルミキサーで1分間乾式混合した後、エクストルーダーで溶融混練し、冷却固化した。冷却固化した後、5〜20℃でクラッシャーによって粉砕し、艶消し粉体塗料用ペレットを得た。得られた艶消し粉体塗料は、最大粒径3cm以下の大きさであれば問題なく使用できた。
実施例1
50℃にプレヒートしたMDF板(多孔質基材)3に対して、図1に示すコーターロール1及びドクターロール2で構成された一対のロールを有するロールコーターを使用し、前記艶消し粉体塗料4を130℃に加熱し、溶融コーティングした。この工程において、MDF板3は、コンベア5を搬送手段とし、30m/分のコンベア速度V2で搬送し、ドクターロール2を回転させることなく、コーターロール1を表1記載の周速V1でMDF板3の搬送方向に回転させた。コンベア速度とコーターロール周速との差(V2−V1)を表1に示す。
艶消し粉体塗料により溶融コーティングされたMDF板を、中波長域赤外線照射炉(波長1〜10μm)を用いて、90〜130℃で加熱して溶融させて、レベリングした。次いで、高圧水銀ランプ(波長280〜450nm)を用いて、塗膜に、紫外線を10秒〜3分間照射し、硬化させた。そして、以下の基準で、塗膜の外観を評価した。
A:フラットで、均一な塗膜が得られる。
B:色むらがあるが、厚膜で、均一な塗膜が得られる。
C:色むらがあるが、均一な塗膜が得られる。
D:ローピングの筋目があるが、全体として均一な塗膜が得られる。
E:基材への浸透が見られた。
塗布量及び塗膜の外観を表1に示す。
Figure 2005305251
実施例2
多孔質基材として、MDF板に代えて、組織が密な桐材を使用したほかは、実施例1の実験番号1と同様にしたところ、塗布量が少なくても、フラットで、均一な塗膜が得られた。
実施例3
多孔質基材として、MDF板に代えて、組織が粗なラワン材を使用したほかは、実施例1の実験番号6と同様にしたところ、塗布量が多くても、フラットで、均一な塗膜が得られた。
実施例4
粉体塗料を90℃に加熱して溶融コーティングしたほかは、実施例1の実験番号1と同様にしたところ、塗布量が少なくても、フラットで、均一な塗膜が得られた。
実施例5
粉体塗料を130℃に加熱して溶融コーティングしたほかは、実施例1の実験番号6と同様にしたところ、塗布量が多くても、フラットで、均一な塗膜が得られた。
図1は本発明の実施例で使用したロールコーター法による塗布状態を説明するための概略図である。
符号の説明
1…コーターロール
2…ドクターロール
3…多孔質基材(MDF板)
4…光重合性組成物(艶消し粉体塗料)
5…コンベア

Claims (10)

  1. 多孔質基材に対して、室温で固体の光重合性組成物を溶融コーティングし、形成された塗膜を加熱してレベリングした後、塗膜に活性光線を照射して硬化させる塗膜形成方法。
  2. 多孔質基材が、木質材である請求項1記載の塗膜形成方法。
  3. 光重合性組成物が、艶消し粉体塗料である請求項1記載の塗膜形成方法。
  4. プレヒートした多孔質基材に対して、光重合性組成物を溶融コーティングする請求項1記載の塗膜形成方法。
  5. 多孔質基材に対して、光重合性組成物を塗布量60〜180g/m2で塗布する請求項1記載の塗膜形成方法。
  6. 光重合性組成物の溶融温度に加熱されたコーターロール及びドクターロールで構成された一対のロールにおいて、少なくともコーターロールを回転させて、光重合性組成物を溶融コーティングする請求項1記載の塗膜形成方法。
  7. 速度5〜60m/分で溶融コーティングする請求項1又は6記載の塗膜形成方法。
  8. コンベアにより多孔質基材を搬送しつつ、光重合性組成物を溶融コーティングする工程において、コーターロール周速V1よりもコンベア速度V2を大きくする請求項6記載の塗膜形成方法。
  9. コンベア速度V2とコーターロール周速V1との差(V2−V1)を13〜24m/分とする請求項8記載の塗膜形成方法。
  10. 請求項1記載の塗膜形成方法により、多孔質基材の表面に塗膜を形成する多孔質パネルの製造方法。
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