JP2005304670A - 電子血圧計 - Google Patents

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Abstract

【課題】 測定部位の周囲長にかかわらず精度のよい血圧測定を可能とする。
【解決手段】 血圧算出に先立って、血圧測定部位に巻付けて装着する血圧測定用袋内に予め空気を封入し、その圧変化を参照して測定部位に対する巻付けの適正判別を行う過程における圧変化に基づき測定部位の周囲長を把握する(ST1)。その後、血圧測定に移行すると、血圧測定用袋に加える圧力を加圧または減圧して(ST2、ST3)、血圧測定用袋内の圧力を検出する。検出された圧力に基づく血圧を、予め把握している測定部位の周囲長に従い算出する(ST5、ST50〜ST5n)。
【選択図】 図1

Description

この発明は、生体の測定部位に空気袋を巻付け装着して血圧を測定する電子血圧計に関し、特に、巻付けされる測定部位の周囲長を検出する電子血圧計に関する。
従来の電子血圧計としては以下に示すようなものがある。使用者が測定部位に空気などの流体が供給されると膨張する空気袋を内蔵する腕帯を巻き付け、測定部位を該空気袋の膨張により加圧・減圧し、そのときに得られる空気袋内の圧力(カフ圧)と脈波信号をもとに所定のアルゴリズムを適用して血圧を算出する。血圧計によっては脈波信号のかわりにコロトコフ音を使用するものもある。
しかしながらこのような従来の電子血圧計にあっては、使用者の腕帯が巻付けられる測定部位の周囲長を自動的に把握することが困難であったため、血圧算出精度が測定部位の周囲長に左右されるという問題点があった。なぜなら、血圧の算出精度は、腕帯の幅と測定部位の周囲長の関係に大きく起因しているからである。正確な血圧値を算出するには、適切な圧力で測定部位の動脈を圧迫する必要がある。この動脈を圧迫するのに必要な力(以後、圧迫力)が強すぎても、弱すぎても、正確な血圧値は算出できない。適切な圧迫力は、測定部位の周囲長毎に適切な幅の腕帯を適用することが必要となる。
その一方で腕帯の幅は、一般には測定部位のある範囲の周囲長に適用できるサイズとなっているため、測定部位の周囲長によっては、想定した血圧算出精度を得ることができなかった。そこで、測定部位の周囲長に応じた血圧測定手順を適用することが望まれるが、従来の血圧計の中には、血圧の算出アルゴリズムを脈波振幅の特徴やコロトコフ音の特徴により数パターンを準備して選択的に適用する方法は提案されていたが、測定部位の周囲長による影響をカバーするものではなかった。
そこで、測定部位の周囲長を把握する機能が特許文献1により提案された。特許文献1では、周囲長を外部から入力する機能、腕帯に設けたスライド抵抗の値により検出する機能、腕帯内の圧力が一定レベルになるまでの所要時間により検出する機能などが提案されている。
特開平6−245911号公報
特許文献1の外部から周囲長を入力する方法は被験者があらかじめ周囲長を測定して把握する必要があり、また、血圧測定のたびに周囲長を入力する必要があるなど、操作性に優れない。また、腕帯をゆるく巻くまたはきつめに巻くなどの巻き方によって検出される周囲長にばらつきが発生するため、スライド抵抗を利用する方法または所要時間を利用する方法は、正確な周囲長を検出する方法とはいえなかった。
それゆえに、この発明の目的は、測定部位の周囲長を精度よく検出できる電子血圧計を提供することである。
この発明の他の目的は、測定部位の周囲長にかかわらず精度のよい血圧測定を可能とする電子血圧計を提供することである。
この発明のある局面に従う電子血圧計は、流体が供給されて膨張する測定用袋を測定部位に巻付けて測定用袋内の圧力に基づく血圧を、測定部位の周囲長に従い算出する血圧算出手段と、巻付けに際して測定用袋に所定量の流体を供給して閉じ込めた後に、測定用袋が測定部位に巻付けられる過程における測定用袋内の圧力の相対的な変位に基づき、測定部位の周囲長を検出する周囲長検出手段とを備える。
したがって、測定用袋内の圧力に基づく血圧を算出するために用いられる測定部位の周囲長は、測定用袋が測定部位に巻付けられる過程における測定用袋内の圧力の相対的な変位に基づき検出できるから、測定用袋の巻付けがきつめまたは緩めにかかわらず、周囲長を正確に検出できる。
好ましくは、周囲長検出手段は、流体を測定用袋に閉じ込めて測定部位に巻付けて装着するときの測定用袋内の圧力と、その後に測定用袋を測定部位にさらに巻付ける過程において逐次検出される測定用袋内の圧力との差分が所定値に達するまでの所要時間に基づき、測定部位の周囲長を検出する。
したがって、測定用袋が測定部位に巻付けて装着された時点の測定用袋内の圧力と、その後の巻付け過程における測定用袋内の圧力との差分が所定値に達するまでの所要時間に基づきすなわち相対的な圧力の変位に基づき周囲長を検出できるから、測定用袋の巻付けがきつめまたは緩めにかかわらず、周囲長を正確に検出できる。
好ましくは、所定値は、測定用袋が測定部位に最適に巻付けられた状態を示す値である。したがって、測定用袋が最適に巻付けられた状態において周囲長を検出することになるから、より正確な周囲長を検出できる。
好ましくは、周囲長検出手段は、流体を測定用袋に閉じ込めて測定部位に巻付けて装着するときの測定用袋内の圧力と、その後に測定用袋を測定部位にさらに巻付ける過程の所定時間において検出される測定用袋内の圧力との差分に基づき、測定部位の周囲長を検出する。
したがって、測定用袋が測定部位に巻付けて装着された時点の測定用袋内の圧力と、その後の巻付け過程の所定時間における測定用袋内の圧力との差分、すなわち相対的な圧力の変位に基づき周囲長を検出できるから、測定用袋の巻付けがきつめまたは緩めにかかわらず、周囲長を正確に検出できる。
好ましくは、血圧算出手段は、血圧を算出する複数個の手順のうちから、周囲長検出手段により検出した周囲長に基づき選択した手順に従い、測定用袋内の圧力に基づく血圧を算出する。
したがって、検出した周囲長に基づき血圧算出の手順を選択的に切替えることができるから、測定部位の周囲長にかかわらず精度よく血圧を算出できる。
好ましくは、血圧算出手段は、周囲長検出手段により検出した周囲長に基づき選択した血圧算出のための特徴量に従い、測定用袋内の圧力に基づく血圧を算出する。
したがって、検出した周囲長に基づき血圧算出のための特徴量を選択的に切替えることができるから、測定部位の周囲長にかかわらず精度よく血圧を算出できる。
好ましくは、血圧算出手段は、算出した血圧を、周囲長検出手段により検出した周囲長に応じた補正パラメータ値に従い補正する。
したがって、検出した周囲長に基づき算出した血圧を補正するパラメータ値を選択的に切替えることができるから、測定部位の周囲長にかかわらず正確な算出血圧を得ることができる。
好ましくは、血圧を算出するために測定用袋内の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備えて、圧力調整手段は、周囲長検出手段により検出した周囲長に応じた調整パラメータ値に従い測定用袋内の圧力を調整する。
したがって、血圧算出のために測定用袋内の圧力を調整するときに、調整のためのパラメータ値は、検出した周囲長に基づき選択的に切替えることができるから、測定部位の周囲長にかかわらず圧力調整が適正となって精度よく血圧を算出できる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照し説明する。本実施の形態に係る電子血圧計はオシロメトリック方法に従う血圧測定方法を採用してもよく、またコロトコフ音に従い測定する方法のいずれを採用しても良い。
また、ここでは測定部位として上腕を想定するが、上腕に限定されず他の部位、たとえば指や手首などであってもよい。
また、本実施の形態に係る電子血圧計は、腕帯を自動的に測定部位に巻付けるものを採用する。自動的に巻付けるものとしては、特開平6−237906号公報で開示されるようなモータの回転によって腕帯の測定部位に対する巻付け径が小さくなるように腕帯の張力を増加させるような血圧計であってもよく、また本実施の形態で示すようにカーラーを介した圧迫固定用空気袋の膨張力により血圧測定用空気袋の測定部位に対する巻付け径を縮小するものであってもよい。
図1(A)と(B)には、この発明の実施の形態に係る血圧測定フローチャートが示される。図2には、この発明の実施の形態に適用される電子血圧計のブロック構成が示されて、図3には電子血圧計のエアー系が示されて、図4(A)と(B)には電子血圧計の外観と使用状態が概略的に示されている。
(装置構成について)
図2を参照して電子血圧計1は、血圧測定用空気袋50、圧迫固定用空気袋51、血圧測定用空気袋50にチューブ53を介して空気を供給または排出するための血圧測定用エアー系52、血圧測定用エアー系52に関連して設けられる増幅器35、ポンプ駆動回路36、弁駆動回路37およびA/D変換器38を備える。さらに電子血圧計1は、圧迫固定用空気袋51にチューブ55を介して空気を供給または排出するための圧迫固定用エアー系54、圧迫固定用エアー系54に関連して設けられる増幅器45、ポンプ駆動回路46、弁駆動回路47およびA/D変換器48を備える。さらに電子血圧計1は、各部を集中的に制御および監視するためのCPU30、CPU30に所定の動作をさせるプログラムや測定された血圧値などの各種情報を記憶するためのメモリ39、血圧測定結果を含む各種情報を表示するための表示器40および測定のための各種指示を入力するために操作される操作部41を備える。
血圧測定用エアー系52は血圧測定用空気袋50内の圧力(以下、カフ圧Pcという)を検出して出力する圧力センサ32、血圧測定用空気袋50に空気を供給するためのポンプ33および血圧測定用空気袋50の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁34を有する。増幅器35は圧力センサ32の出力信号を増幅してA/D変換器38に与え、A/D変換器38は与えられたアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU30に出力する。ポンプ駆動回路36はポンプ33の駆動をCPU30から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路37は弁34の開閉制御をCPU30から与えられる制御信号に基づいて行なう。
圧迫固定用エアー系54は圧迫固定用空気袋51内の圧力を検出して出力するための圧力センサ42、圧迫固定用空気袋51に空気を供給するためのポンプ43、圧迫固定用空気袋51の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁44を有する。増幅器45は圧力センサ42の出力信号を増幅してA/D変換器48に与え、A/D変換器48は与えられるアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU30に出力する。ポンプ駆動回路46はCPU30から与えられる制御信号に従いポンプ43の駆動を制御する。弁駆動回路47はCPU30から与えられる制御信号に従って弁44の開閉を制御する。
図4(A)を参照して電子血圧計1は、被験者の測定部位である上腕を固定するための固定用筒状ケース57および血圧計本体部58を備える。血圧計本体部58には、表示器40としてのLCD59およびランプ60を有する。また血圧計本体部58には、外部操作が可能なように操作部41として電源スイッチ61、血圧測定の開始および停止を指示するためのスタートスイッチ62およびストップスイッチ63を有する。固定用筒状ケース57の内周面には、測定部位に装着される血圧測定用空気袋50を有する。図4(B)には、血圧測定するために固定用筒状ケース57の図面手前方向から被験者の測定部位である上腕が挿通されて状態が示される。
図3には、図4(B)の状態における固定用筒状ケース57の横断面が模式的に示される。固定用筒状ケース57には測定部位である上腕の外周から固定用筒状ケース57の内周面方向に向かって、測定用空気袋50、その径が伸縮自在の圧迫固定用カーラー56および圧迫固定用空気袋51が設けられる。圧迫固定用エアー系54により空気が徐々に供給されて圧迫固定用空気袋51が膨張すると、その作用により圧迫固定用カーラー56は径を縮ませるので、それに伴い圧迫固定用カーラー56と人体(上腕)の間に介在する測定用空気袋50が測定部位に対して押圧される。これにより、測定用空気袋50は圧迫固定用カーラー56および圧迫固定用空気袋51により人体(腕)の周囲に巻付けられて、血圧測定可能な状態となる。
後述のカフ最適巻付け処理においては、ポンプ33は停止した状態でポンプ43を駆動し、圧迫固定用空気袋51に徐々に空気を供給するようにして圧迫固定用空気袋51が膨張することで測定用空気袋50は上腕の周囲に巻付けられると想定する。
(血圧測定手順について)
図1(A)と(B)には本実施の形態に係る血圧測定のフローチャートが示される。このフローチャートに従うプログラムは、メモリ39に予め記憶されて、CPU30がメモリ39からこのプログラムを読出し実行することにより血圧測定が行なわれる。
図1(A)と(B)の手順では、測定部位に腕帯である血圧測定用空気袋50を圧迫固定用空気袋51の膨張により巻付けて最適巻付け状態になったときに、すなわち血圧測定用空気袋50のカフ圧Pcが周囲長検出のための所定レベルに達したときに、測定部位の周囲長を取得し、取得した周囲長に基づき最適な血圧算出手順を選択することで、血圧測定の精度を向上させている。手順の概略を図1(A)を参照して説明する。
まず、図4(B)の状態で被験者が電子血圧計1の電源スイッチ61を操作して電源ONすると電子血圧計1の初期化がなされる(ステップST0)。
次に被験者によりスタートスイッチ62が操作されると、CPU30は血圧測定用空気袋50が最適巻付けの状態になったときに測定部位の周囲長を検出する(ステップST1)。この詳細は後述する。
測定部位の周囲長が検出されると、次にCPU30は駆動していたポンプ43を停止してポンプ33を駆動開始し、血圧測定用空気袋50のカフ圧Pcを徐々に上昇させる(ステップST2)。徐々に加圧する過程において、血圧測定のための所定レベルにまでカフ圧Pcが達すると、CPU30はポンプ33を停止し、次に閉じていた弁34を徐々に開いて、血圧測定用空気袋50の空気を徐々に排気し、カフ圧Pcを徐々に減圧させる(ステップST3)。本実施の形態ではカフ圧Pcの微速減圧過程において血圧を測定する。
まず、カフ圧Pcが徐々に減圧する過程において、CPU30は圧力センサ32から出力されるカフ圧Pcの検出信号を取得し、該信号に重畳している脈波信号を検出する(ステップST4)。ステップST2〜ステップST4の処理手順は公知の手順であるので、詳細は略す。
次に、CPU30はステップST4で求められた脈波信号に基づき、公知の手順で血圧(最高血圧、最低血圧、平均血圧)を算出する(ステップST5)。この血圧算出においては、血圧算出のための適切なアルゴリズムが、ステップST1で求められた測定部位周囲長に基づき選択的に起動される。この詳細は後述する。
ステップST5において血圧が算出されると、CPU30は算出された血圧値をメモリ39に記憶するとともに(ステップST6)、算出された血圧値をディスプレイ59に表示する(ステップST7)。このとき、弁34と44は全開とされる。これにより一連の血圧測定は終了する。
(測定部位周囲長検出について)
ステップST1では、まず、血圧測定用空気袋50に対して次の手順で予備加圧がされる。つまり、CPU30は、血圧測定用空気袋50に対して、弁34を閉じポンプ33を駆動してカフ圧Pcが後述の最適巻付け判定を可能ならしめる圧力レベル、たとえば大気圧と同等レベルとなるような所定容量の空気を供給した後、ポンプ33を停止する。この供給量は少量であって実験的に予め求められており、血圧測定用空気袋50のサイズによってこの量は変るであろう。その後、最適巻付け判定処理が実行される。
最適巻付け判定処理では、CPU30は弁44を閉じ、ポンプ43を駆動して圧迫固定用空気袋51に徐々に単位時間あたり一定量の空気を供給するので、それによる圧迫固定用空気袋51の膨張力により固定用カーラー56の径は縮小して測定用空気袋50は測定部位である腕周に徐々に巻付けられるようにして圧迫固定される。これに並行してCPU30は圧力センサ32が逐次出力する検出信号が示すカフ圧Pcに基づき、血圧測定用空気袋50が測定部位に血圧測定のための適切な与圧で巻付けされた状態になったか否かを判定する。血圧測定用空気袋50が被験者の測定部位に最適に巻付けられた状態に達したことが判定されると、CPU30はポンプ43を停止して、測定部位周囲長を検出する。
CPU30による最適巻付け判定手順と測定部位周囲長の具体的な検出手順例1と2を以下に説明する。
(検出手順例1)
図5(A)と(B)を参照して、腕帯巻付け時のカフ圧Pcの巻付け開始時すなわち予備加圧終了時からの変化量(差分)が所定値(例えば20mmHg)に達するのに要する時間に基づき測定部位周囲長が特定されることを説明する。
図5(A)には縦軸にカフ圧Pcがとられ横軸に最適巻付け判定処理であるポンプ43の駆動開始時(巻付け開始時)からの経過時間がとられている。図示されるようにカフ圧Pcは、予備加圧終了後に圧迫固定用空気袋51を加圧して膨張させる過程において、腕周が大きい(腕が太い)ほど急激に上昇し、逆に腕周が小さい(腕が細い)ほど上昇は緩やかである。これは、腕が太い場合には巻付け開始時点(すなわち予備加圧終了時点)で既に測定部位から受ける圧は高いので、その分カフ圧Pcが上昇するのに時間を要さないが、腕が細い場合はその逆の現象となることによる。
図5(A)に示す腕帯巻付け過程においてCPU30はカフ圧Pcの変化を監視して、カフ圧Pcの巻付け開始時点からの変化量が所定値に達したとき、CPU30は最適巻付け状態になったと判定する。図5(B)においては、縦軸にカフ圧Pcの変化量が所定値を満足するのに要する時間(巻付け開始時点からの経過時間)がとられて、横軸に測定部位周囲長がとられている。図5(B)の関係を示す情報は実験により予め取得してテーブルとしてメモリ39に格納されていると想定する。
CPU30は図示のない内部のタイマを用いて、カフ圧Pcの巻付け開始時点からの相対的な変化量が所定値に達するための所要時間を計測しており、計測された所要時間に基づきメモリ39のテーブルを検索して対応する測定部位周囲長を特定して読出す。これによりカフ最適巻付け状態において被験者の測定部位周囲長を把握することができる。
なお、ここではテーブルを検索することで測定部位周囲長を把握しているが、図5(B)の関係を示す式を用いて測定部位周囲長を算出するようにしてもよい。
(検出手順例2)
図6(A)〜(C)を参照して、予備加圧終了後の腕帯巻付け過程における任意の所定時間におけるカフ圧Pcの巻付け開始時点からの相対的な変化量ΔP(=予備加圧終了時のカフ圧Pcと所定時間におけるカフ圧Pcの差分)により測定部位周囲長を特定する手順について説明する。
図6(A)には図5(A)と同様に縦軸にカフ圧Pcがとられて横軸に予備加圧終了時点からの腕帯巻付けの経過時間がとられている。図6(B)には測定部位周囲長に従う(腕の太い→細いに従う)カフ圧変化量ΔPと腕帯巻付けの経過時間の関係が示されている。図6(B)の破線で示す所定時間における予備加圧終了後からのカフ圧変化量ΔPと測定部位周囲長の関係が図6(C)に示される。図6(C)によれば所定時間における巻付け開始時点からの相対的なカフ圧変化量ΔPに基づき測定部位周囲長を求めることが可能となる。
図6(C)の関係を示す情報は実験により予め取得してテーブルとしてメモリ39に格納されていると想定する。
CPU30は図示のない内部のタイマを用いて、カフ圧Pcの巻付け開始後からの任意の時間を計時すると、その時点のカフ圧変化量ΔPを算出して、算出したカフ圧変化量ΔPに基づきメモリ39のテーブルを検索して対応する測定部位周囲長を特定して読出す。これにより被験者の測定部位周囲長を把握することができる。
なお、ここではテーブルを検索することで測定部位周囲長を把握しているが、図6(C)の関係を示す式を用いて測定部位周囲長を算出するようにしてもよい。
(血圧算出手順切換えについて)
血圧算出の手順の切換え例1〜3を説明する。
(手順切換え例1)
例1による切換えの概略手順は図1(B)に示される。図1(A)のステップST5の血圧算出の手順は複数パターン準備されており、例1では複数パターンのうちからステップST1で求めた測定部位周囲長に応じて選択されたパターンの手順を適用する。
まず、ステップST1で求めた測定部位周囲長が判別される(ステップST50)。たとえば、測定部位周囲長が“a”であれば、周囲長“a”に応じた血圧算出手順が選択されて実行され(ステップST51)、“b”であれば、これに応じた別の血圧算出手順(ステップST52)が選択されて実行され、“n”であれば、これに応じたさらに別の血圧算出手順(ステップST5n)が選択されて実行される。
ステップST51〜5nの手順はプログラムとしてメモリ39に予め格納されており、CPU30は測定部位周囲長に応じたプログラムをメモリ39から読出すことで選択切換えがなされる。これにより、測定部位周囲長に拘わらず精度よく血圧を測定できる。
(手順切換え例2)
上述の手順切換え例1ではCPU30が実行するプログラムそのものを切替えているが、実行するプログラムを切替えるのではなく、血圧算出アルゴリズム(プログラム)中で参照される特徴量の値を、測定部位周囲長に応じて選択的に切換えるようにしてもよい。
例えば血圧は図7に示すカフ圧Pcに応じた脈波信号の振幅値の変化を示す波形の特徴量を用いて算出することができる。具体的には、最高血圧および最低血圧それぞれは、図7の脈波振幅の波形の脈波最大振幅値から所定割合の位置で検出できることが知られている。図7に従えば最低血圧は脈波最大振幅×β%の位置におけるカフ圧Pcとして検出でき、最高血圧は脈波最大振幅×α%の位置におけるカフ圧Pcとして検出することができる。本実施の形態では、ステップST1で取得できた測定部位周囲長に応じて、脈波信号の振幅値の変化を示す波形の特徴量である変数αおよびβの値を変更する。これにより、測定部位周囲長に拘わらず精度よく血圧を測定できる。
(手順切換え例3)
手順切換え例1と2では血圧算出開始時または算出時に手順を切替えるようにしているが、これとは異なり、本手順切換え例3に示すように血圧算出後において、測定部位周囲長に応じたパラメータの値を用いて算出結果を補正するようにしてもよい。たとえば、測定部位周囲長に応じた値の比例係数などを用いた重み付けを行い算出結果を補正するようにしてもよい。
また、手順切換え例1による測定部位周囲長に基づく血圧算出アルゴリズムの選択的切換え、手順切換え例2による測定部位周囲長に基づく血圧算出アルゴリズムの特徴量の選択的切換え、および手順切換え例3による血圧算出後の測定部位周囲長に応じた補正のうちの、複数個を組合わせて適用しても良い。
[他の実施の形態]
上述の実施の形態では取得した測定部位周囲長を血圧算出手順の適正化にのみ適用したが、本実施の形態のようにステップST2の血圧測定用空気袋50の加圧制御またはステップST3の血圧測定用空気袋50の減圧制御の適正化に適用しても良い。つまり、血圧を算出するために血圧測定用空気袋50のカフ圧を、検出した測定部位周囲長に応じた調整パラメータ値に従い前記測定用袋内の圧力を調整する。これにより、測定部位周囲長による最適な加圧制御または減圧制御が可能となり、血圧算出の精度向上につながる。これを以下に説明する。
(測定部位周囲長による加圧速度調整)
血圧測定用空気袋50の加圧時には、測定部位周囲長に基づき加圧制御に使用するパラメータ値を変更する。ここでは、例えばポンプ33を駆動する電圧レベルを測定部位周囲長に基づきを補正し、補正後レベルの電圧をポンプ33に印加することで測定部位周囲長にかかわらず最適な加圧制御を実現する。
図8(A)と(B)を参照して、測定部位周囲長による血圧測定用空気袋50の加圧速度調整の手順について説明する。ステップST2におけるカフ加圧時、ポンプ33を駆動するためにポンプ駆動回路36からポンプ33に供給される電圧のレベルを、測定部位周囲長にかかわらず一定とした場合、図8(A)のように破線で示す最適加圧速度(カフ圧上昇速度)と比較した場合に周囲長が大きい(腕が太い)場合は加圧速度は遅くなり、逆に周囲長が小さい(腕が細い)場合は加圧速度は速くなる。
このように、同じレベルの電圧を供給してポンプ33を駆動した場合、測定部位周囲長によって、血圧測定するための最適な加圧状態に至るまでの所要時間は異なるから、測定部位周囲長により加圧期間の長さは異なる。これはカフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出できないことになり、また、被験者に過度のストレスを与えることになり正確な血圧測定を阻害する要因となり得る。
そこで、加圧過程においてカフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出できるようにし、また、被験者に過度のストレスが与えられないようにして血圧測定精度を向上させるには、取得した測定部位周囲長に基づき加圧速度を調整する、すなわちポンプ33を駆動する電圧レベルを選択的に切替えることが必要となる。
そのために本実施の形態では、ステップST2における加圧速度が図8(A)の破線で示されるような最適加圧速度となるように、ステップST1で取得した測定部位周囲長に応じた調整パラメータの値である駆動電圧のレベル、または印加期間を決定して、決定したレベルまたは印加期間に従い駆動電圧をポンプ33に供給する。この結果、測定部位周囲長にかかわらず、加圧速度は図8(B)に示されるように最適加圧速度となり、カフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出でき、また、被験者に対する過度のストレスが与えられることが回避できて正確な血圧測定が可能となる。
(測定部位周囲長によるカフ減圧調整)
血圧測定用空気袋50の減圧時には、測定部位周囲長に基づき減圧制御に使用するパラメータ値を変更する。ここでは、例えば弁34を駆動する電圧レベルを測定部位周囲長に基づき補正し、補正後レベルの電圧を弁34に印加することで測定部位周囲長にかかわらず最適な減圧制御を実現する。
図9(A)と(B)を参照して、測定部位周囲長による血圧測定用空気袋50の減圧速度調整の手順について説明する。ステップST3におけるカフ減圧時、弁34を開くように駆動するために弁駆動回路37から弁34に供給される電圧のレベルを、測定部位周囲長にかかわらず一定とした場合、図9(A)のように破線で示す最適減圧速度(カフ圧下降速度)と比較した場合に周囲長が大きい(腕が太い)場合は減圧速度は遅くなり、逆に周囲長が小さい(腕が細い)場合は減圧速度は速くなる。
このように、同じレベルの電圧を供給して弁34を開くように駆動した場合、測定部位周囲長によって、血圧測定するための最適な減圧状態(微速排気状態)を維持する期間が異なるから、測定部位周囲長により減圧期間の長さは異なる。これは、カフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出できないことになり、また、被験者に過度のストレスを与えることになり正確な血圧測定を阻害する要因となり得る。
そこで、減圧過程においてカフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出できるようにし、また、被験者に過度のストレスが与えられないようにして血圧測定精度を向上させるには、取得した測定部位周囲長に基づき減圧速度を調整する、すなわち調整パラメータの値である弁34を駆動する電圧レベルまたは電圧印加期間を選択的に切替えることが必要となる。
そのために本実施の形態では、ステップST3における減圧速度が図9(A)の破線で示されるような最適減圧速度となるように、ステップST1で取得した測定部位周囲長に応じた駆動電圧のレベル、または印加期間を決定して、決定したレベルまたは印加期間に従い駆動電圧を弁34に供給する。この結果、測定部位周囲長にかかわらず、減圧速度は図9(B)に示されるように最適減圧速度となり、カフ圧に重畳している脈波信号を正確に検出でき、また、被験者に対する過度のストレスが与えられることが回避できて正確な血圧測定が可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(A)と(B)は本実施の形態に係る血圧測定のフローチャートである。 この発明の実施の形態に適用される電子血圧計のブロック構成図である。 この発明の実施の形態に適用される電子血圧計のエアー系の構成図である。 (A)と(B)はこの発明の実施の形態に適用される電子血圧計の外観と使用状態を概略的に示す図である。 (A)と(B)はこの発明の実施の形態に適用される周囲長検出手順の一例を説明する図である。 (A)〜(C)はこの発明の実施の形態に適用される周囲長検出手順の他の例を説明する図である。 この発明の実施の形態に適用される血圧算出手順の切換え例を説明する図である。 (A)と(B)は測定部位周囲長による加圧速度調整の手順を説明する図である。 (A)と(B)は測定部位周囲長による減圧速度調整の手順を説明する図である。
符号の説明
1 電子血圧計、50 血圧測定用空気袋、51 圧迫固定用空気袋、Pc カフ圧、ΔP カフ圧変化量。

Claims (8)

  1. 流体が供給されて膨張する測定用袋を測定部位に巻付けて前記測定用袋内の圧力に基づく血圧を、前記測定部位の周囲長に従い算出する血圧算出手段と、
    前記巻付けに際して前記測定用袋に所定量の流体を供給して閉じ込めた後に、前記測定用袋が前記測定部位に巻付けられる過程における前記測定用袋内の圧力の相対的な変位に基づき、前記測定部位の周囲長を検出する周囲長検出手段とを備える、電子血圧計。
  2. 前記周囲長検出手段は、
    前記流体を前記測定用袋に閉じ込めて前記測定部位に巻付けて装着するときの前記測定用袋内の圧力と、その後に前記測定用袋を前記測定部位にさらに巻付ける過程において逐次検出される前記測定用袋内の圧力との差分が所定値に達するまでの所要時間に基づき、前記測定部位の周囲長を検出する、請求項1に記載の電子血圧計。
  3. 前記所定値は、前記測定用袋が前記測定部位に最適に巻付けられた状態を示す値であることを特徴とする、請求項2に記載の電子血圧計。
  4. 前記周囲長検出手段は、
    前記流体を前記測定用袋に閉じ込めて前記測定部位に巻付けて装着するときの前記測定用袋内の圧力と、その後に前記測定用袋を前記測定部位にさらに巻付ける過程の所定時間において検出される前記測定用袋内の圧力との差分に基づき、前記測定部位の周囲長を検出する、請求項1に記載の電子血圧計。
  5. 前記血圧算出手段は、
    前記血圧を算出する複数個の手順のうちから、前記周囲長検出手段により検出した前記周囲長に基づき選択した手順に従い、前記測定用袋内の圧力に基づく血圧を算出することを特徴とする、請求項1に記載の電子血圧計。
  6. 前記血圧算出手段は、
    前記周囲長検出手段により検出した前記周囲長に基づき選択した血圧算出のための特徴量に従い、前記測定用袋内の圧力に基づく血圧を算出することを特徴とする、請求項1に記載の電子血圧計。
  7. 前記血圧算出手段は、
    算出した血圧を、前記周囲長検出手段により検出した前記周囲長に応じた補正パラメータ値に従い補正することを特徴とする、請求項1に記載の電子血圧計。
  8. 前記血圧を算出するために前記測定用袋内の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備えて、
    前記圧力調整手段は、前記周囲長検出手段により検出した前記周囲長に応じた調整パラメータ値に従い前記測定用袋内の圧力を調整することを特徴とする、請求項1に記載の電子血圧計。
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