JP2005304388A - 新規なプラスチック分解酵素及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なプラスチック分解酵素の提供。
【解決手段】これまでの無作為な生分解性プラスチック資化微生物のスクリーニングではなく、表層構造体として生分解性プラスチック様高分子を有する植物に感染する植物病原菌に着目し、それに由来する新規なプラスチック分解酵素を取得する。以下の (a)または(b)のエステラーゼ:(a) 特定のアミノ酸配列からなる蛋白質、(b) 特定のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質、それをコードするDNA、及びそれらの利用。
【選択図】図2

Description

本発明は、植物に普遍的に存在する表層構造体を生分解性プラスチックとして捉え、そこに感染する植物病原菌から新規なプラスチック分解酵素を単離したことに基づくものである。即ち、本発明は、新規なエステラーゼ、及び該エステラーゼを利用するプラスチックの分解方法に関する。
生分解性プラスチックはその普及量が増加傾向であるにも関わらず、その分解酵素に限らず、リサイクルの面でも研究は立ち遅れている。その結果、生分解性プラスチックの供給量が需要量を上回っている。
生分解性プラスチックのうち、生産量の多いものにポリ乳酸を中心とするポリエステル類がある。ポリ乳酸は、自動車部材、PC及び家電品部材としての普及が始まっており、ポリ乳酸のリサイクルと有用物質への転換を可能とする技術の潜在需要は高い。
これまでに、リパーゼ及びクチナーゼ等の酵素を用いた生分解性プラスチックを酵素分解方が知られている(特許文献1)。又、ポリ乳酸を分解する酵素として従来知られているものは、主にプロテアーゼ型のものが多く((非)特許文献1〜3)、これまでに、ポリ乳酸を良好に分解するエステラーゼは殆ど知られていない。
特表2001−512504号公報 Purification and characterization of an extracellular poly (L-lacticacid) depolymerase from a soil isolate, Amycolatopsis sp. Strain K104-1,K. Nakamura, T. Tomita, N. Abe& Y. Kamio, Appl. Environ. Microbiol., 67, 345-353 (2001) Hydrolyticand enzymatic degradation of physically crosslinked hydrogels prepared fromPLA/PEO/PLA triblock copolymers Li, S. M., I. Molina, M. B. Martinez & M. Vert, J. Mater. Sci. Mater. Med.,13, 81-86 (2002) Enzymichydrolysis of polylactic acid Williams, D. F., Eng. Med., 10, 5-7 (1985)
そこで本発明者は、これまでの無作為な生分解性プラスチック資化微生物のスクリーニングではなく、表層構造体として生分解性プラスチック様高分子を有する植物に感染する植物病原菌に着目し、それに由来する新規なプラスチック分解酵素を取得し、そのような酵素を利用したプラスチックの分解方法を提供することを目的とするものである。
即ち、本発明は第一の態様として、以下の (a)または(b)のエステラーゼ:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質、に係る。
本発明は第二の態様として、以下の (a)または(b)の蛋白質をコードするDNA:
(a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質;及び、以下の (a)または (b)のDNA:
(a) 配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNA、
(b) 配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、に係る。
尚、本発明のDNAにおいて、配列番号1に示される塩基配列は、菌体外に分泌された成熟型のエステラーゼのポリペプチド部分に相当するものであり、配列番号2に示される塩基配列は、そのN末端側に更にシグナル配列等が含まれるプレ体のエステラーゼのポリペプチド部分に相当するものである。本発明のDNAの調製方法・種類に制限はなく、cDNA、イントロンを含むゲノムDNA、又は化学合成DNAのいずれでも良い。
本発明は第三の態様として、上記DNAを含む組換え用DNAに係る。本発明は第四の態様として、上記組換え用DNAを含む形質転換体に係る。
本発明は第五の態様として、本発明の形質転換体を培地に培養し、培養物からエステラーゼを採取することを含む、エステラーゼの製造法に係る。尚、ここで「培養物」とは、本発明のエステラーゼを含有する任意の画分を意味する。従って、例えば、原核微生物又は酵母を宿主として使用する発現系においては、発現された蛋白質は通常は菌体内に蓄積されるので、この場合には、培養された菌体自体が「培養物」である。一方で、真核糸状真菌等を宿主として使用する発現系においては、発現された蛋白質は通常培地中に分泌されるので、このような場合には、「培養物」は分泌された目的の蛋白質を含む培地を意味する。
本発明は第六の態様として、本発明のエステラーゼを用いて、又は、本発明の形質転換体をプラスチックに接触させることを含む、プラスチックを分解する方法に係る。
本発明で新たに提供されるエステラーゼは、ポリ乳酸分解酵素として従来報告されているタンパク質分解酵素群には属さず、プラスチック、特に、ポリ乳酸を含むポリエステル系生分解性プラスチックに対する高い分解能を有する。更に、大規模な培養設備を活用することができる工業用真核糸状菌を宿主として発現生産可能であるために、ポリ乳酸等の生分解性プラスチックを工業的規模で、大規模且つ高密度に分解することが可能となる。
本発明エステラーゼは、本発明の形質転換体を培地に培養し、培養物からエステラーゼを採取することによって調製することが出来る。培養物からのエステラーゼの採取は、例えば、実施例に具体的に示されるような、当業者に公知の各種精製ステップを経ることによって実施することが出来る。
尚、その際に、配列番号1に示されるアミノ酸配列から成る蛋白質と実質的に同等のエステラーゼ活性を有するためには、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸のうち、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士の置換が可能性として考えられる。又、実質的に同等の機能の維持のためには、本発明の各ポリペプチドに含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は保持されることが望ましい。又、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質の一例として、以下の実施例に示されるように、用いる発現系によって、そのN末端の一部のアミノ酸が欠失し、更にそこに発現ベクター由来のシグナル配列等の一部が融合された蛋白質を挙げることが出来る。
本発明の蛋白質が有する「エステラーゼ活性」は、実施例(1)に記載の方法で測定することが出来るものである。又、「実質的に同等のエステラーゼ活性」とは、プラスチックの分解に実用上使用することができる程度に、エステラーゼ活性を有している酵素であればよく、必ずしも、配列番号1に示されるアミノ酸配列から成るエステラーゼと同じまたはそれ以上の高い活性を有している必要はない。具体的には、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列から成るエステラーゼの活性の60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上のエステラーゼ活性を有する酵素を挙げることが出来る。
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、各塩基配列間の相同性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い相同性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリッドが形成されるような条件を意味する。具体的には、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度150〜900mM、好ましくは600〜900mM、pH 6〜8であるような条件を挙げることが出来る。
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M.
Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
本発明DNAは当業者に公知の方法で調製することが出来る。例えば、実施例に記載されているように、イモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15の由来のcDNAライブラリーを作成し、適当なプライマーを用いるPCRにより調製することが出来る。配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号2で示される塩基配列情報に基づき、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の周知の方法を適宜組み合わせて調製することが出来る。或は、本明細書に記載された本発明DNAの塩基配列又はアミノ酸配列の情報に基づき、当業者に周知の方法で、化学合成により調製することも出来る。
本発明のDNAを含む組換え用DNA、及び該組換え用DNAを含む形質転換体は当業者に公知の任意の方法で容易に調製することが出来る。
本発明の形質転換体の宿主としては原核微生物又は真核微生物を用いることが出来る。原核微生物の好適例としては、エシェリシア属、バチルス属、又は、ストレプトマイセス属(放線菌)等の糸状性細菌を挙げることが出来る。糸状性細菌の具体例としては、ストレプトマイセス属のストレプトマイセス・グリゼウスまたはストレプトマイセス・セリカラーを挙げることが出来る。真核微生物の好適例としては、サッカロミセス属及びピヒア属等の酵母、並びに、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リゾプス属、メタリチウム属、モナスカス属、アクレモニウム属、及びムコール属からなる群から選択される真核糸状真菌を挙げることが出来る。特に、アスペルギルス属のアスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・ソーエが好ましい。
組換え用DNAは、当業者に公知の任意の形態が可能であり、例えば、適当な宿主細胞内で複製可能な組換えプラスミドベクターとすることが出来る。このような組換えプラスミドベクターは、当業者に公知の複製起点、アンピシリン等の各種薬剤耐性遺伝子、各種制限酵素部位、プロモーター等の各種調節配列、リボソーム結合部位、シグナル配列、及び翻訳開始配列等の各種要素、並びにその他の外来性蛋白質をコードする遺伝子を任意に含む、公知の各種プラスミドベクターに本発明のDNAを挿入することによって容易に調製することが出来る。このようなプラスミドベクターの一例として、大腸菌宿主用のpET-12b を挙げることが出来る。
既に記載したように、これら形質転換菌においては本発明蛋白質の生産誘導の抑制が解除されていることが望ましい。その為には、例えば、これらの物質をコードする遺伝子を構成的発現プロモーター又は各種の誘導型発現プローター等の制御下で発現させることができる。その結果、本発明蛋白質が高発現され、細胞表面又は菌体外に多量に生産されプラスチック分解が促進される。
これらの各種プロモーターは当業者に公知である。例えば、アスペルギルス属用の構成的発現プロモーターとしては、enoA プロモーター、pgkA プロモーター、tef1 プロモーター等を挙げることが出来る。更に、誘導型発現プロモーターとしては、マルトースを誘導基質とするグルコアミラーゼプロモーター又はα―アミラーゼプロモーター、及びキシロースを誘導基質とするキシラナーゼプロモーター等を挙げることが出来る。
尚、本発明の形質転換体は、上記ベクターの他に、外来性蛋白質を含むその他の任意の蛋白質をコードする遺伝子を含む別の一つ又は複数の組換え用DNAによって形質転換されても良い。
更に、組換え用DNAとして、 PCR増幅等により取得される本発明DNAを含む適当なDNA断片自体を用いることも可能である。そのような場合には、かかるDNA断片に加えて、更に適当な緩衝液及びその他の助剤を任意に含む溶液等の組成物として形質転換に使用することが出来る。
本発明の形質転換体はこのような組換え用DNAを用いて、適当な宿主を、例えば、プロトプラスト−PEG法、エレクトロポレーション法、Ti−プラスミド法、及びパーティクルガン等のような当業者に公知の組換え法で形質転換することよって容易に得ることが出来る。更に、複数種類の組換え用DNAを用いるコトランスフェクションも可能である。
本発明のエステラーゼを用いるか、又は、本発明の形質転換体をプラスチックに接触させることによって、本発明蛋白質のエステラーゼ活性によってプラスチックを分解することが出来る。
本発明方法で分解の対象となるプラスチックに、特に制限はない。その代表例として、「生分解性プラスチック」として知られているものを挙げることが出来る。
生分解性プラスチックとは、「使用状態ではその使用目的において必要とされる充分な機能を保ち、廃棄されたときには土中又は水中の微生物の働きによって、より単純な分子レベルにまで分解されるプラスチック」ともいうべき物質である。分解の程度に基づいて、「完全分解型生分解性プラスチック」と「部分分解(崩壊)型生分解性プラスチック」とに分けられ、更に、材料及び製造方法からは、「微生物生産系」、「天然高分子系」及び「化学合成系」に大きく分けることが出来る。本発明方法では、これらのいずれの種類の生分解性プラスチックも使用することが出来る。
従って、本発明方法において用いられるプラスチックの具体例は、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリスチレン、デンプン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。生分解性プラスチックである生分解性ポリエステルの例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸・アジピン酸、脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、又はポリハイドロキシ酪酸を挙げることが出来る。
本発明のエステラーゼを用いてプラスチックを分解する方法は、当業者に公知の任意の手段・反応系で行うことが出来る。例えば、プラスチック乳化液中でプラスチックと本発明のエステラーゼを接触させることにより反応を行うことが出来る。本発明のエステラーゼの添加量及び割合・添加の時期、反応系における本発明のエステラーゼ濃度、反応温度・時間、pH等の反応液の諸条件等は当業者が適宜選択することが出来る。通常は、エステラーゼ活性の発揮に最適な条件とすることが好ましい。
更に、形質転換体をプラスチックに接触させることを含む本発明方法においては、プラスチックを分解する反応は、プラスチック乳化液を含む液体培養系及びプラスチック固型ペレット又はプラスチック粉体等を使用する固体培養系等の当業者に公知の任意の培養系において行うことが出来る。この際に、培養液及び培地等の組成、並びに、温度、pH等の各種培養温度条件は、プラスチック及び使用する形質転換体の種類及びエステラーゼ活性の発揮に最適な条件等に応じて当業者が適宜選択することが出来る。
本発明の上記各方法において、界面活性物質若しくはバイオサーファクタントを反応系に共存させることにより、プラスチックの分解を一層促進することが出来る。プラスチックは疎水的な表面構造を有しているため、通常は水溶液中の低分子栄養素を転換して生育する微生物はプラスチック表面には接触が困難であり、そのことが生分解性プラスチックの分解を妨げている。しかしながら、界面活性物質若しくはバイオサーファクタントを反応系に共存させることによって、微生物のプラスチックへの接触が増強され、又は、プラスチック分解酵素のプラスチックへの接触が補助され、その結果、プラスチックの分解効率を一層促進させることが出来る。
例えば、それらの物質を培養系の外部より添加することにより、このような物質を共存させることが可能である。それらの添加の量及び割合・添加の時期等の諸条件は当業者が適宜選択することが出来る。これらの物質は必ずしも同時に添加する必要はなく、方法の各段階で逐次的に添加することも可能である。
或いは、本発明の形質転換体と、界面活性物質若しくはバイオサーファクタントを発現する形質転換体を共培養することによって、反応系にこれらの物質を共存させることが可能となる。
既に記載したような本発明の形質転換体をこのような界面活性物質若しくはバイオサーファクタントをコードする遺伝子で更に形質転換させることも可能である。
界面活性物質としては、当業者に公知の任意の物質を使用することが出来る。しかしながら、生物、特に、微生物が細胞表面又は菌体外に生産する生物系界面活性物質であるバイオサーファクタントが環境面等の点で好ましい。
バイオサーファクタント(菌体プラスチック吸着因子)としては当業者に公知の任意の物質を使用することが出来るが例えば、リン脂質や親水性の糖と疎水性の脂肪酸が結合しているグリコリピド等が知られている。例えば、ハイドロホービン、マンノシルエリスリトールリピッド及びラムノリピッド等の糖脂質エステル、環状リポペプチド、環状ポリペプチド、並びに、サーファクチン等の両親媒性タンパク質等を挙げることが出来る。更に、取得源となる微生物の種類に特に制限はないが、例えば、アスペルギルス・オリゼ等のアスペルギルス属カビ由来のバイオサーファクタント、例えば、アスペルギルス・オリゼ由来のハイドロホービンを使用することが出来る。
以下、実施例に則して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。尚、実施例における各種遺伝子操作は、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M.
Ausubel et al., 1987)に記載されている方法に従った。
(1)イモチ菌由来 PLA (ポリ乳酸) 分解酵素の精製
1 x 106 個胞子 / ml となるようにイモチ菌マグナポルサ・グリゼア(M. grisea )70-15
胞子懸濁液を 3 L 容坂口フラスコ内の 1.5 L の Vogel-N 培地 (6 g Na3-citrate、 10 g KH2PO4・H2O、NH4NO3・H2O、pH 6.8、30 g スクロース、1 mM CaCl2、1 mM MgSO4、34
μg / ml クロラムフェニコール) に添加した。添加後 24℃、125 rpm、5 日間振盪培養した。菌糸体を MIRACROTH (CALBIOCHEM
(登録商標)) にて濾別・回収した。その菌糸体を 3 L 容坂口フラスコ内の 1.5 L の 1 % (w/v) PBSA 乳化液 (昭和高分子) を含み、唯一の炭素源としたVogel-N
培地 Vogel-N 培地 に移し、24℃、125 rpm、2 日間振盪培養し、目的の酵素の培養上清への誘導・分泌を行った。培養液を MIRACROTH
(CALBIOCHEM (登録商標)) にて濾過し、その濾液を 8000 g、4℃、20 分間遠心分離し得られた上清を粗酵素液とした。粗酵素を蒸留水に対して透析し、10
mM トリス、1 mM CaCl2 となるようにトリスと CaCl2 を加え、pH 8.0 となるように塩酸を用いて
pH を調整した。これを 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2 にて平衡化した
DEAE-Cellulofine A500 (生化学工業) に供し、吸着画分を 0-1 M NaCl の直線濃度勾配により溶出させた。
分画した溶液に対して 0.1 % (w/v PLA)となるように、PLA 乳化液 (第一工業製薬) を添加し、37℃
にて保温し、その濁度 (O.D. 630) の低下 (PLA分解活性) によって活性画分を追跡し、さらに別の方法として、分画した溶液に対して
10-50 倍量の 100 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0 を加え、そこに 0.5 mM となるように pNP-butyrate を添加し
37℃にて保温し、その吸光度 (A405) の上昇 (エステラーゼ活性) によって活性画分を追跡した (図1)。尚、エステラーゼ活性 (katal) は 37℃、pH 8.0 で 1 秒間に pNP 1 mol 相当量の 410 nm の吸光度を得るのに必要な酵素量とした。更に公知の方法として Lowry-Folin 法等によりタンパク質を測定し、エステラーゼ活性をタンパク質量で割ることにより比活性を算出した。
各々の活性測定法により活性画分 I-III に分画され、中でも画分 I については PLA 分解活性とエステラーゼ活性が一致することから、以降画分 I について、エステラーゼ活性を指標として精製を実施した。活性画分
I を 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2 に対して透析し、再度 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH
8.0、1 mM CaCl2 にて平衡化した DEAE-Cellulofine A500 (生化学工業) に供し、吸着画分を 0-0.5
M NaCl の直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分に 30 % 飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、これを 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH
8.0、1 mM CaCl2、30 % 飽和硫酸アンモニウムにて平衡化した Phenyl-Sepharose CL4B (アマシャムバイオサイエンス) に供し、吸着画分を 30-0 % 硫酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分に再度
30 % 飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、これを 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2、30 % 飽和硫酸アンモニウムにて平衡化した
Phenyl-Sepharose CL4B (アマシャムバイオサイエンス) に供し、吸着画分を 30-0 % 硫酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分を
10 mM リン酸緩衝液、pH 6.8 に対して透析し、同緩衝液にて平衡化した GIGAPITE (生化学工業) に供し、非吸着画分として活性画分を得た。得られた活性画分を
10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2 に対して透析し、同緩衝液にて平衡化した HiTrapQ (アマシャムバイオサイエンス)
に供し、吸着画分を 0-0.3 M NaCl の直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分を再度 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM
CaCl2 に対して透析し、同緩衝液にて平衡化した HiTrapQ (アマシャムバイオサイエンス) に供し、吸着画分を 0-0.3 M
NaCl の直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分を SDS-PAGE に供し、活性画分が電気泳動的に均一であることを確認したので (図2)、ここで得られた活性画分を
PLA 分解酵素(エステラーゼ)精製標品とした。得られた活性画分の
pNP-butyrate に対する比活性は 126 mkatal/kg であった。
(2)PLA分解酵素のアミノ末端アミノ酸配列の決定
上記で得られた精製酵素溶液 500 μl に対して、250 μl の 100 % (w/v) 冷トリクロロ酢酸を加え、よく混合した後、氷中に
20 分間以上放置した。サンプルを 15000xg、4℃、20 分間遠心分離し、上清を完全に除いた後、沈澱を 15 μl の SDS 化溶液
{5 % (w/v) SDS、5 % (v/v) 2-メルカプトエタノール、0.12 M Tris-塩酸緩衝液 (pH 8.8)、0.05 %
(w/v) ブロモフェノールブルー、10 % (w/v) グリセロール} に溶解させた後、沸騰湯浴中に 5 分間放置し SDS 化を行い、これをサンプル溶液とした。サンプル溶液を
SDS-PAGE に供し、泳動後ゲル内のタンパク質を PVDF 膜に転写した。PVDF 膜上より目的のバンドを切り抜き、そのままアミノ末端アミノ酸配列の解析を行った。アミノ末端アミノ酸配列を解析した結果、アミノ末端より「TPDASLAPPT」であった。得られたアミノ酸配列に対して International Rice
Blast Genome Consortium (http://www.riceblast.org/) の BLAST 検索を利用して相同検索を行ったところ、機能未知の
hypothetical protein MG09840.4 の内部アミノ酸配列(下線部分)と一致した(図3)。
因みに、データベース上での上記の機能未知の蛋白質及びその遺伝子に関する情報は以下の通りである。
DEFINITION:hypothetical protein MG09840.4 [Magnaporthe grisea 70-15], ACCESSION: EAA53877(蛋白質), VERSION:EAA53877.1 GI:38107747,
DBSOURCE: accession AACU01001010.1(遺伝子)。
又、 マグナポルサ・グリゼア70-15はFGSC(Fungal
Genetics Stock Center: Department of Microbiology, University of Kansas,
Medical Center, Kansas City, Kansas 66160-7420 USA)で保管されており、その寄託状況についての情報は以下の通りである。
Strain number: 8958
Description:Wild
type from WICGR Magnaporthe genome project
Other
Collection # : 70-15
Depositor
:Ralph Dean
(3)PLA 分解酵素遺伝子をコードする cDNA のクローニング
PLA 分解酵素をコードする cDNA を取得するために、1 x 106 個胞子
/ ml となるようにイモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15 胞子懸濁液を 3 L 容坂口フラスコ内の 1.5 L の Vogel-N 培地 (6 g
Na3-citrate、 10 g KH2PO4・H2O、NH4NO3・H2O、pH 6.8、30 g スクロース、1 mM CaCl2、1
mM MgSO4、34 μg / ml クロラムフェニコール) に添加した。添加後 24℃、125 rpm、5 日間振盪培養した。菌糸体を
MIRACROTH (CALBIOCHEM (登録商標)) にて濾別・回収した。その菌糸体を 3 L 容坂口フラスコ内の 1.5 L の 1 % (w/v)
PBSA 乳化液 (昭和高分子) を含み、唯一の炭素源としたVogel-N 培地 Vogel-N 培地 に移し、24℃、125 rpm、2 日間振盪培養し、菌糸体を
MIRACROTH (CALBIOCHEM (登録商標)) にて濾別・回収した。得られた菌糸体の湿重量を計測した後、乳鉢中で液体窒素を注ぎながらパウダー状になるまで破砕した。湿重量の4倍量の
Sepasol-RNAISuper を入れた50 ml容チューブにパウダー状の菌体を移し、激しく撹拌後室温で5分間放置した。Sepasol-RNAISuperの1/5量のクロロホルムを加え、よく撹拌した後、室温で3分放置した。10,000×g、4℃で15分遠心した後、水層を15
ml容チューブに移し同量の水飽和酸性フェノール・クロロホルム(フェノール/クロロホルム = 1 / 1)を加え混合後、12,000×g、4℃で10分遠心し水層を別の15
ml容チューブに移した。等量のイソプロパノールを加え室温で放置10分間放置後12,000×g、4℃で10分遠心し、上清を捨て、10 mlの70%エタノールでリンスした。風乾後、適量のDEPC(diethylpirocarbonate)処理水に溶解させ、これをトータルRNA
溶液とした。
次に、トータルRNAよりmRNA の精製を Message Maker(Gibco BRL)を用いて行った。精製操作はMessage
Maker 添付マニュアルに従った。以下、トータルRNA量 1 mg を用いた時の手順を示した。1 mg のトータルRNAを15 ml容チューブに1.8 mlにDEPC処理水を用いてフィルアップ(終濃度0.55
mg/ml)し、65℃で5分間インキュべート後、氷上にて急冷した。5 M NaCl を200μl加え、よく撹拌後oligo(dT)Cellulose
Suspension を1 ml添加し、よく混合した後、37℃で10分間インキュベートした。サンプルをシリンジに入れプランジャーで押し切った後、ディスポのカップに入れた3
mlのWash buffer 1 をシリンジで吸った。シリンジ中の液をよく懸濁し、液をプランジャーで押し切った。同様の操作を3 mlのWash buffer
2 で行なった。 次に65℃に保温しておいたDEPC処理水1 mlをシリンジで吸い上げ、よく懸濁後、15 mlチューブに押し出した。再度、DEPC処理水1
mlで溶出した後、溶出液を合わせ、1,2000×g、4℃で3分間遠心し、oligo(dT)Cellulose Suspensionを取り除いた。この上清約2
mlに対し、5 mg/ml のグリコーゲン溶液を20μl、7.5 M 酢酸アンモニウム(pH 5.2)を200μl加えて混合し、エッペンドルチューブ5本に分注し、2倍量の氷冷エタノールを加え、-20℃にて一晩エタノール沈殿を行なった。12,000×g、4℃で30分間遠心した後、上清を捨て75%エタノールでリンスした、風乾後、適量のDEPC処理水に溶解させ、これを
mRNA 溶液とした。
次に、得られたmRNAを鋳型とした逆転写反応を行った。エッペンドルフチューブに、mRNA (92 ng/μl)
5 μl、oligo (dT) primer (0.5μg/μl) 1 μl、2.5 mM dNTP MIX (2.5 mM each) 4 μl、DEPC処理水2
μlを加え、70℃で10分間インキュベートした後氷上で1分間以上放置し、mRNAにoligo (dT) primerをアニーリングさせた。次に、この反応液に5×First
Strand Bufffer (250 mM Tris-HCl, pH 8.3、375 mM KCL 、15 mM MgCl2)4μl、0.1
M DTT 2μlを加え、42℃で5分間インキュベートした後、逆転写酵素Super Script II RT(200 U/μl)1μlを加えピペッティングによる撹拌後42℃で50分間インキュベートし、さらにSuper
Script II RT(200 U/μl)1μlを加えピペッティングによる撹拌後42℃で50分間インキュベートし逆転写反応させた。この溶液を70℃で15分間インキュベートすることで、逆転写酵素を失活させ、さらにRNaseH
(10 U/μl) 1 μlを加え、37℃ で20分間インキュベートすることで、未反応mRNAを分解した。この逆転写反応で得られた溶液をcDNAライブラリー溶液
とした。
次に(2)で求めた PLA分解酵素タンパク質をコードする染色体 DNA 配列の情報を基に、オリゴヌクレオチド
5’-CGCGGCCCAGGATCCCGATGCG-3’(配列番号3) と 5‘-GCCCCCTCGGATCCTATGCGAGGAACG-3’(配列番号4)を合成した。この1組のプライマーセットを用い、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行い、PLA 分解酵素遺伝子をコードする cDNA を増幅した。PCR用装置はPCR Thermal
Cycler PERSONAL(宝酒造)を用いた。cDNAライブラリーは上記のcDNAライブラリー溶液を1 μl用い、ポリメラーゼはEx taq
polymerase (宝酒造)を用いた。増幅反応は、95℃, 3 分間鋳型DNAを変性し、95℃, 1 分間、65℃,1 分間、72℃, 1 分 12 秒間保持するサイクルを
30 サイクルおこなった後、72℃、 1 分 12 秒間で完全伸長させ、4℃で保持した。得られたPCR増幅断片をアガロースゲル電気泳動に供したところ、およそ869塩基対からなる断片の増幅が確認された。
得られたPCR増幅断片を BamH I (宝酒造)で消化し、アガロースゲル電気泳動に供しエチジウムブロマイドで染色後
UV 照射下で 846 塩基対からなる断片を切り出した。ゲル中より prep A gene (BioRad) を用いて DNA を抽出し、これを挿入 DNA 断片とした。次に塩基配列中に
T7 プロモーター配列とシグナル配列 (OmpT-leader sequence) を有するプラスミド pET-12b DNA 5 μg をシグナル配列の直後にある制限酵素
BamH I 認識配列の位置で BamH I (宝酒造)で消化し、定法によりフェノール抽出、エタノール沈殿処理をおこなった後、アルカリフォスファターゼ(宝酒造)により
5’ 末端のリン酸を除去した。この反応液を定法によりフェノール抽出、エタノール沈殿処理をおこなった後 TE に溶解したものをベクター DNA 溶液とした。次に、ベクター
DNA 1 μg と挿入 DNA 断片 1.5 μg を T4 DNA ligase (宝酒造)により連結させ、連結 DNA 溶液を得た。
この連結 DNA 溶液 10 μl と 10 μl の 10x KCM (1 M KCl, 0.3 M
CaCl2, 0.5 M MgCl2)、7 μl の 30 (w/v %) PEG#6000、73 μl の滅菌水を混合し、100
μl の形質転換可能な大腸菌 DH5α(宝酒造)を加え、氷中に 20 分間、室温に 10 分間放置し形質転換大腸菌懸濁液を得た。次に
50 μg/ml のアンピシリンを含む LB 寒天培地上にに形質転換大腸菌懸濁液をまき、37℃で 16 時間培養した。培地上のコロニーを白金針にて拾い、LB 液体培地
(50 μg/ml アンピシリン) に移植し 37℃ にて 16 時間振盪培養した。培養液1.5 mlを1.5 ml容マイクロチューブに移し、15000xg,
1分間遠心分離し培地を除いた。菌体を100 μlのTEG (25 mMトリス-塩酸緩衝液, pH 8.0, 10 mM EDTA, 50 mMグルコース) で懸濁し、これに200
μlの1 % (w/v) SDS, 0.2 N NaOHを加え穏やかに混合し氷中に5分間放置した。さらに150 μlの3 M酢酸ナトリウム, pH 5.2を加え穏やかに混合し氷中に5分間放置した。これに10
M酢酸アンモニウムを150 μl加え穏やかに混合し、15000 g, 4℃, 10分間遠心分離し上清を新しい1.5 ml容マイクロチューブに移した。これに600
μlの2-プロパノールを加え、よく混合した後15000xg, 4℃, 10分間遠心分離し上清を除いた。70 %(v/v) エタノールでDNAを洗浄して15000xg,
4℃, 10分間遠心分離し上清を完全に除き沈殿を得た。沈殿を0.1 mlのTEで溶解し、これをプラスミドDNA溶液とし、大腸菌形質転換用プラスミド DNA を得た
(pET-MG09840)。このプラスミドDNA中の挿入cDNA 断片、T7 プロモーター配列及びシグナル配列を含む塩基配列をABI
PRISMTM 377 DNA sequencer Long Read (PE Biosystem) のプロトコールに従い、ABI
PRISMTM 377 DNA sequencing system (PE Biosystem) にて解析した (配列番号5)。
この配列番号5において、24番目〜32番目のアミノ酸配列である「PDASLAPPT」は、上記(2)において決定したPLA分解酵素のアミノ末端アミノ酸配列である「TPDASLAPPT」の下線部分に相当する。従って、図3に示したhypothetical protein MG09840.4 の内部アミノ酸配列の情報及び(2)で得られたアミノ末端配列を考慮し、イモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15 胞子懸濁液から生成されたPLA分解酵素、即ち、本発明のエステラーゼ(成熟型)のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は配列番号1に示されたものと決定された。又、そのN末端側に更にシグナル配列等(1〜19番目のアミノ酸配列)が含まれる本発明のエステラーゼ(プレ体)のポリペプチドのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は配列番号2に示されるものある。
(4)PLA 分解酵素の大腸菌を宿主とした発現系の構築
(3)で得られたプラスミド DNA (pET-MG09840) 1 μg を 用いて(3)と同様にして、大腸菌 BL21-SI (Invitrogen) を形質転換し、NaCl を含まない 50 μg/ml のアンピシリンを含む LB 寒天培地上にて各々の形質転換株を取得した。次に
PLA 分解酵素遺伝子が挿入されたプラスミド DNA を用いて形質転換された大腸菌形質転換株 (pET-MG09840) と、挿入されていない (pET-12b にて形質転換した) 大腸菌形質転換株のコロニーを白金針にて拾い、LB 液体培地 (50 μg/ml
アンピシリン、NaCl を含まない) にそれぞれ植菌した。植菌後 37℃, 16 時間振盪培養することで前培養とした。各々の前培養溶液 500 μl を
500 ml容坂口フラスコ内の50 mlのLB 培地 (0.5 % NaCl を含む) に添加した。 添加後 30℃ にて 12 時間振盪培養することで、目的の酵素タンパク質を培養上清中に誘導・発現させた。培養液50
mlを50 ml容マイクロチューブに移し、8000xg, 10分間遠心分離し培養上清を得た。得られた培養上清 16 μl を 1568 μl の
100 mM Tris-HCl 緩衝液 (pH 8.0) に添加し、そこに 16 μl の 50 mM pNP-butyrate を添加し、37℃で 410
nm の吸光度の上昇を測定することで、遊離する pNP 量を測定し、それをエステラーゼ活性とした。その結果、PLA 分解酵素遺伝子が挿入されたプラスミド
DNA により形質転換された大腸菌形質転換株の培養上清中にのみその活性の存在が認められた。その結果を表1に示す。
Figure 2005304388
(5)大腸菌形質転換株からの PLA 分解酵素の精製
PLA 分解酵素遺伝子が挿入されたプラスミドDNAを用いて形質転換された大腸菌形質転換株
(pET-MG09840) のコロニーを白金針にて拾い、3 mlのLB 液体培地 (50 μg/ml アンピシリン、NaCl
を含まない) 5 本に植菌し、37℃で16 時間培養し、前培養液を得た。得られた前培養液 15 ml を3 L容坂口フラスコ内の1.5 L のLB 培地
(0.5 % NaCl を含む) に添加した。添加後30℃ にて12時間振盪培養することで、目的の酵素タンパク質を培養上清中に誘導・発現させた。培養液 l.5
L を500 ml容遠沈管3本に移し、8000 g, 10分間遠心分離し培養上清を得た。粗酵素液に対して30 %飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、これを
10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2、30 % 飽和硫酸アンモニウムにて平衡化した
Phenyl-Sepharose CL4B (アマシャムバイオサイエンス) に供し、吸着画分を 30-0 % 硫酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分を10
mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2 に対して透析し、10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM
CaCl2 にて平衡化した DEAE-Cellulofine A500 (生化学工業) に供し、吸着画分を 0-0.5 M NaCl の直線濃度勾配により溶出させた。得られた活性画分を
10 mM MES-NaOH 緩衝液、pH 5.5、1 mM CaCl2 に対して透析し、10 mM MES-NaOH 緩衝液、pH
5.5、1 mM CaCl2 にて平衡化した S-Sepharose FF カラム(アマシャムバイオサイエンス)に供し、非吸着画分として活性画分を得た。得られた活性画分に対して再び
30 % 飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、これを 10 mM トリス-塩酸緩衝液、pH 8.0、1 mM CaCl2、30 % 飽和硫酸アンモニウムにて平衡化した
Phenyl-Sepharose CL4B (アマシャムバイオサイエンス) に供し、吸着画分を 30-0 % 硫酸アンモニウムの直線濃度勾配により溶出させ組換え体
PLA 分解酵素を得た。得られた酵素溶液を用いて、アミノ末端アミノ酸配列を解析した結果、アミノ末端より、「STDPD」であることが確認された。従って、この組換え体
PLA 分解酵素は配列番号5に示される OmpT leader sequenceの直後で大腸菌の有するシグナルペプチダーゼで限定分解されて活性体として発現されたものであることが確認された。
本発明を利用することによって、生分解性プラスチックの分解によるモノマーやオリゴマー回収の高密度短時間処理が可能となり、生分解性プラスチックの問題点である高コストの補償が可能となる。従って、リサイクル型ポリ乳酸分解、ポリ乳酸分解過程での有用物質生産(例:酵素、界面活性蛋白質、抗生物質)等への幅広い応用が可能となる。
更に、本発明の分解酵素エステラーゼは植物病原菌由来のものであるから、植物・昆虫などの表層を生分解性プラスチックと捉えることで、この酵素及び高発現組み換え微生物の利用価値は生分解性プラスチック分解に限ったものではなく、例えば、本発明のエステラーゼを殺虫剤助剤・除草剤助剤等の有効成分として利用することも可能である。
イモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15 菌糸の培養液のDEAE-CellulofineA500 への吸着画分を 0-1 M NaCl の直線濃度勾配により溶出させて得られた、各分画した溶液の、PLA分解活性及びエステラーゼ活性を測定した結果を示すグラフである。 イモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15 菌糸の培養液から精製したPLA 分解酵素のSDS-PAGEによる電気泳動の結果を示す写真である。 イモチ菌マグナポルサ・グリゼア 70-15 菌のコンティグ2.1889 におけるゲノムDNA及び推定アミノ酸配列を示す。

Claims (17)

  1. 以下の (a)または(b)のエステラーゼ:
    (a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
    (b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質。
  2. 以下の (a)または(b)の蛋白質をコードするDNA:
    (a) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
    (b) 配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質。
  3. 以下の (a)または (b)のDNA:
    (a) 配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNA、
    (b) 配列番号1又は2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ実質的に同等のエステラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  4. cDNAである、請求項2又は3記載のDNA。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNAを含む組換え用DNA。
  6. 組換え用DNAがプラスミドベクターである、請求項5記載の組換え用DNA。
  7. 請求項5又は6記載の組換え用DNAを含む形質転換体。
  8. 形質転換体の宿主が原核微生物又は真核微生物であることを特徴とする、請求項7記載の形質転換体。
  9. 原核微生物がエシェリシア属、バチルス属、又はストレプトマイセス属であることを特徴とする、請求項8記載の形質転換体。
  10. 真核微生物が、酵母、又は、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属、リゾプス属、メタリチウム属、モナスカス属、アクレモニウム属、及びムコール属からなる群から選択される真核糸状真菌であることを特徴とする、請求項8記載の形質転換体。
  11. 宿主がアスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・ソーエであることを特徴とする、請求項10記載の形質転換体。
  12. 請求項7〜11のいずれか一項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物からエステラーゼを採取することを含む、エステラーゼの製造法。
  13. 請求項1記載のエステラーゼ用いてプラスチックを分解する方法。
  14. 請求項7〜11のいずれか一項に記載の形質転換体をプラスチックに接触させることを含む、プラスチックを分解する方法。
  15. プラスチックがポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリスチレン、デンプンおよびそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項13又は14記載の方法。
  16. プラスチックが生分解性プラスチックであることを特徴とする、請求項13又は14記載の方法。
  17. 生分解性プラスチックがポリ乳酸、ポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸・アジピン酸、脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン、又はポリハイドロキシ酪酸である、請求項16記載の方法。
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