JP2005302335A - 電子線エネルギー分光装置及びそれを備えた電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
電子線エネルギー損失スペクトル計測や元素分布観察において、電子線エネルギー分光器のエネルギー分散方向でスペクトルのエネルギー分解能が異なるために、高エネルギー分解能でのスペクトル計測や元素分布観察ができないといった課題があった。
【解決手段】
電子線のエネルギーを分散する手段の上流側と下流側にそれぞれ12重極子レンズを配置し、上流側の12重極子レンズでは電子線が電子線エネルギー分光器に入射する角度の2乗に比例する収差の補正する。また、下流側の12重極子レンズでは電子線が電子線エネルギー分光器に入射する角度と入射電子線のエネルギー広がりに関係する値の積に比例する収差を補正する。このような補正手段を有する電子線エネルギー分光器、及びそのような電子線エネルギー分光器を備えた電子顕微鏡。
【効果】
高エネルギー分解能の電子線エネルギー損失スペクトルを計測したり、元素分布像を観察することが出来る。
【選択図】図1
Description
Aは4重極レンズ51の作用でエネルギー分散された電子線を電子線検出器56上でフォーカスさせる条件を示す係数、Dは分散係数である。Dは、分散距離x1,入射電子のエネルギー広がりΔU,入射電子のエネルギーUを用いて次式であらわされる。
AAとBBはそれぞれ電子線の入射角(α,β)の2乗に比例する2次収差係数である。
収差係数ADはエネルギー分散に関係する係数である。従来技術のように収差係数ADを小さい値になるよう補正しない場合には、電子線検出器56のエネルギー分散方向の位置によって、電子線の広がりが異なる。この広がりの様子を示したのが、図3(c)である。図3は電子線検出器で検出したゼロロスを模式的に示した図である。特に図3(c)は、電子線中央部で電子線がフォーカスした状態である。しかし、収差係数ADが原因で、電子線検出器のエネルギー分散方向の両端では、中央部よりも電子線が広がっている。
まず、点光源10の電子線は、電子線のエネルギーの広がりが小さい状態を実現させる。具体的には、200keVのエネルギーを有する電子線において、エネルギーの広がりは高々1eV程度である。このような状態は、電子顕微鏡において、電子線を試料に照射せずに、点光源10を形成すればよい。
点光源10を出射した電子線11は、エネルギー分散部15で分散作用を受け、電子線検出器16上に電子線エネルギー損失スペクトルを形成する。試料を透過していないため、電子線エネルギー損失スペクトルはゼロロスピークのみが観測される。エネルギー分散部15の下流側に設置した12重極レンズ14を使って、4重極レンズの磁場を形成する。4重極レンズの磁場強度が強いほど、エネルギーの分散は大きくなる。エネルギー分散部15だけではエネルギー分散が1μm/eVであったものが、12重極レンズ14を使うと、エネルギー分散を任意の大きさ(例えば、500μm/eV)に変えることが出来る。電子線エネルギー損失スペクトルを使って、詳細な化学結合状態を計測するためには、エネルギー分散を大きくして、スペクトルの微細構造を観察できるようにする。このときのゼロロスピークの形状を模式的に示したのが、図3(a)である。このような12重極レンズ14の磁場強度の調整は、式(3)の分散係数Dの値を調整することに相当する。但し、これはあらかじめ設定される場合が多く、測定の度に調整する必要はない。
このようにしてエネルギー分散を調整した後、スペクトルのフォーカスを調整する。フォーカスの調整は、エネルギー分散部15の上流側に設置した12重極レンズ12を使って、4重極レンズと同じ磁場を形成し、電子線検出器16上に形成された電子線幅を小さくするように調整する。この調整を行うと、ゼロロスピークは図3(b)に示すように、幅が狭くなる。しかしこれだけでは、式(3)の収差係数AA,BB,ADは補正することができず、電子線の広がりを更に小さくする必要がある。
次に、12重極レンズ13を使って、4重極レンズの磁場と6重極レンズの磁場を形成し、電子線検出器16上に形成された電子線幅が更に小さくなるように、4重極と6重極の磁場強度をそれぞれ調整する。この調整操作は、式(3)の収差係数AAとBBを小さくすることになる。この操作によって、電子線検出器16上の電子線の広がりは、図3
(c)に示すように、更に狭くなる。
そこで、まず、ドリフトチューブ18を使って、電子線検出器16上のゼロロスを検出器の端部に移動させる。そして、エネルギー分散部15の下流側に設置した12重極レンズ14を使って、4重極レンズの磁場に、6重極レンズの磁場を重畳させる。6重極レンズの磁場強度は、電子線検出器16上のゼロロスピーク幅が小さくなるように調整する。
このような調整をした後の様子を図3(d)に示す。
13を使い、収差係数ADは12重極レンズ14を使って、収差の影響の無いスペクトルを形成する。
(STEM)の主要部分の概略構成図である。電子線発生源1で発生した電子線2は、対物レンズ4でプローブを形成し、試料5に照射される。試料5に照射される電子線の位置は、電子線走査コイル3で偏向される。試料5を透過した電子線は、投影レンズ7によって、電子線エネルギー分光器22の物点10が形成される。その後、電子線エネルギー分光器22に入射され、電子線エネルギー分光器22によって電子線のエネルギーが分析され、電子線エネルギー損失スペクトルを計測したり、元素分布像を観察したりする。電子線エネルギー分光器22は、エネルギー分散部15,エネルギー分散部15の上流側に設置された12重極レンズ12と13,下流側に設置された12重極レンズ14,エネルギー分散された電子線を検出する電子線検出器16,電子線のエネルギーを調整するドリフトチューブ18で構成される。
29に接続されている。
以下に、スペクトル測定時の制御装置21内の動作について説明する。
28では、測定条件に基づき12重極レンズ12と13や14,ドリフトチューブ18,エネルギー分散部15を制御し、元素固有のエネルギーを含むエネルギー範囲の電子線を電子線検出器16に入射させる。電子線検出器16の各チャンネルの電子線強度信号は、電子線エネルギー損失スペクトルとなる。電子線検出器16からの電子線強度信号は、演算部23でスペクトルのバックグランド補正や電子線検出器のゲイン補正等を行う。演算後のスペクトルはメモリー部27に記憶され、かつ表示装置25で表示される。このような一連の処理によって操作者はスペクトルや元素分布像を取得することができる。
Claims (12)
- 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の第一の12重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より下流側に少なくとも1つ以上の第2の12重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に1または複数の第一の4重極子レンズと1または複数の第一の6重極子レンズと、エネルギー分散手段より下流側に1または複数の第2の12重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の第一の12重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より下流側に少なくとも1つ以上の第2の4重極子レンズと少なくとも1つ以上の第2の6重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも2つ以上の4重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の6重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より下流側に少なくとも1つ以上の4重極子レンズと少なくとも1つ以上の6重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段を出射した電子線を検出する電子線検出器と、前記エネルギー分散手段と前記電子線検出器との間に電子線のエネルギーを選択するエネルギー選択スリットと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の12重極子レンズとを有し、前記エネルギー分散手段と前記エネルギー選択スリットとの間に少なくとも1つ以上の12重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段を出射した電子線を検出する電子線検出器と、前記エネルギー分散手段と前記電子線検出器との間に電子線のエネルギーを選択するエネルギー選択スリットと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の4重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の6重極子レンズとを有し、前記エネルギー分散手段と前記エネルギー選択スリットとの間に少なくとも1つ以上の12重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段を出射した電子線を検出する電子線検出器と、前記エネルギー分散手段と前記電子線検出器との間に電子線のエネルギーを選択するエネルギー選択スリットと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の12重極子レンズとを有し、前記エネルギー分散手段と前記エネルギー選択スリットとの間に少なくとも1つ以上の4重極子レンズと少なくとも1つ以上の6重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段を出射した電子線を検出する電子線検出器と、前記エネルギー分散手段と前記電子線検出器との間に電子線のエネルギーを選択するエネルギー選択スリットと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも2つ以上の4重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも1つ以上の6重極子レンズとを有し、前記エネルギー分散手段と前記エネルギー選択スリットとの間に少なくとも1つ以上の4重極子レンズと少なくとも1つ以上の6重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 請求項1から8に記載のいずれかの電子線エネルギー分光装置を備え、電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子顕微鏡。
- 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも2つの第一の12重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より下流側に少なくとも1つ以上の第2の12重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することにより電子線エネルギー損失スペクトルを測定し、あるいは元素の分布を観察する電子線エネルギー分光装置において、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段と、前記エネルギー分散手段より上流側に少なくとも2つの第一の12重極子レンズと、前記エネルギー分散手段より下流側に少なくとも1つ以上の第2の4重極子レンズと少なくとも1つ以上の第2の6重極子レンズを備えた電子線エネルギー分光装置。 - 電子線のエネルギーを分析することによる電子線エネルギー損失スペクトルや、あるいは元素分布の観察における補正方法であって、
電子線のエネルギーを分散させるエネルギー分散手段より上流側に配置した多重極子レンズにより、電子線エネルギー分析装置に入射する電子線の入射角(α)の2乗に比例する収差を補正する工程と、前記エネルギー分散手段より下流側に配置した多重極子レンズにより、前記入射電子線の入射角(α)とエネルギー(U)を有する前記入射電子線においてその電子線のエネルギー広がり(ΔU)に関与する収差(α×ΔU/U)を補正する工程を有することを特徴とする補正方法。
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JP2016091814A (ja) * | 2014-11-05 | 2016-05-23 | 日本電子株式会社 | 電子顕微鏡および画像生成方法 |
JP2017092025A (ja) * | 2015-11-02 | 2017-05-25 | エフ イー アイ カンパニFei Company | 増強されたエネルギーレンジを有するポストカラムフィルタ |
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2004
- 2004-04-07 JP JP2004112633A patent/JP2005302335A/ja active Pending
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