JP2005298336A - 炎症性疾患治療用薬剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】炎症性疾患に対する治療用薬剤、好ましくは副作用の少ない薬剤を提供する。
【解決手段】グリコプロテインIb(GPIb)とフォンビルブランド因子(vWF)との結合を阻害する作用を有する物質、例えば、GPIbとvWFとの結合を阻害する抗GPIb抗体又は抗vWF抗体を、炎症性疾患治療用薬剤の有効成分とする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炎症性疾患を治療する目的で使用される薬剤であって、グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する物質を有効成分とする薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
炎症性腸疾患と総称される潰瘍性大腸炎やクローン病はいまだ原因不明で、再燃と緩解を繰り返す難治性慢性疾患である。潰瘍性大腸炎は主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する、大腸のびまん性非特異性炎症である。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示し、長期にわたり大腸全体を侵す場合には悪性化の傾向がある。一方、クローン病は線維化や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症性病変から成り、消化管のどの部位にも起こり得る。腸病変としては縦走潰瘍、多発性アフタ、不整形潰瘍で、次第に腸管の狭窄を起こす。あるときは内ろうや外ろうをきたし、敷石像が見られる。これら炎症性腸疾患の患者は北米では100万人近く存在し、病態の成因が未解決のまま今なお増加していることから、21世紀の重要な医療問題になりつつある。
【0003】
炎症性腸疾患に対する治療薬としては、アミノサリチル酸とコルチコステロイドが第一および第二選択薬として、広く使用されている。さらに、よりシビアな患者には免疫抑制剤、またクローン病の一部の患者には抗生物質が使われ、最近では抗TNF-α抗体に代表される抗サイトカイン療法がクローン病患者を対象に行われている。
【0004】
アミノサリチル酸としては、スルファサラジンおよび5-アミノサリチル酸が主流である。しかし、投与されている患者の45%までに頭痛、悪心、消化不良、食欲不振、発熱、発疹、関節痛、溶血、好中球減少、大腸炎増悪、男性不妊症および肺、肝臓、神経、膵臓の過敏性反応などの副作用が認められる。作用メカニズムとしては、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼを阻害することにより、プロスタグランジンおよびロイコトリエンの生成を抑制することが知られている。また、粘膜病変部の好中球や単球から産生される活性酸素種(フリーラジカル)を消去する作用、さらに病変進行に関係するインターロイキン−1、インターフェロン−γ、炎症惹起性サイトカインの産生を阻害する作用などが知られているが、正確なメカニズムはまだ把握されていない。
【0005】
さらに、コルチコステロイドは重度に近いクローン病患者の多く、また潰瘍性大腸炎の急性期に広く用いられる。コルチコステロイドはサイトカイン生成を抑制する結果、抗炎症作用および免疫抑制作用を示すことが知られているが、副作用が強く、炎症性腸疾患治療におけるコルチコステロイドの使用を制限している。初期に、特に高用量で知られる副作用としては不眠症、寝汗、食欲亢進、糖代謝異常が知られている。長期に使用すると低用量でも顔が丸くなる、にきび、頚部にの脂肪瘤形成、毛髪の過剰成長などの副作用がしばしば報告されている。さらに白内障、緑内障につながる眼圧増加、骨粗しょう症、筋肉弱化、高血圧を引き起こすこともある。また、コルチコステロイドは、クローン病および潰瘍性大腸炎患者の緩解維持効果がないステロイド抵抗性患者が、30%程度認められるなどの問題点もある。
【0006】
また、免疫抑制剤は、主に緩解誘導および維持、ステロイド依存性の低減、外科手術移行阻止、クローン病に伴う痔ろうの治癒またはドレナージの低減などの目的で使用される。プリン誘導体であるアザチオプリンとその活性代謝物6-メルカプトプリンは核酸合成を阻害し、液性免疫および細胞性免疫ともに抑制する。両薬剤は、5-アミノサリチル酸やステロイドに比べ、臨床での効果が明らかになるまでに数ヶ月かかることもある。副作用としては、一般に可逆性の白血球減少症を引き起こす他、発熱、発疹、悪心、頭痛などが約10%の患者に認められている。また投薬開始数ヶ月後に膵炎が5〜15%の患者に見られる。シクロスポリンは、特にステロイド抵抗性の潰瘍性大腸炎患者に使用されるが、比較的高用量でないと効果がなく、薬効発現までに1〜2週間かかる。シビアな潰瘍性大腸炎患者に対し、グルココルチコステロイドに代わる薬剤として有効かつ安全であることが臨床試験で証明されているものの(N Engl J Med、第330巻、第1841頁、1994年)、投薬中にも関わらず再発する患者が存在するという問題点があり、6-メルカプトプリンに切りかえるなどの工夫が必要とされている。シクロスポリンはヘルパーT細胞と細胞傷害性リンパ球の活性化を選択的に阻害する結果、免疫抑制作用を発揮する。副作用として腎不全、高血圧、感染症、発作、しびれ、振戦、頭痛、歯肉増殖症、多毛症、静脈内投与時のアナフィラキシーが知られている。
【0007】
一方、抗サイトカイン療法は、これら従来のものとはまったく異なる新しい治療法であり、最初に登場した薬剤がキメラ抗TNF-αモノクローナル抗体インフリキシマブである。ステロイド抵抗性の中度から重度なクローン病患者で有効であること(N Engl J Med、第337巻、第1029頁、1997年)、さらに緩解維持にも有効であること(Gastroenterology、第117巻、第761頁、1999年)が報告されている。副作用として高血圧、悪寒、発疹、発熱、頭痛、湿疹などが知られる。さらにインフリキシマブはキメラ型抗体であるため、抗原性を示す可能性があり、急性の超過敏反応が起こることがある。また、最近では抗生物質が必要となるような感染症や癌原性が問題視されている。
【0008】
炎症性腸疾患に対し、現状では上記薬剤が組み合わされて処方されているが、どれも深刻な副作用を有し、その使い方には注意を要する。従来の薬剤に新しい作用メカニズムを有する薬剤を併用することにより、臨床効果を維持したままステロイドなどの使用量を下げることができれば、重篤な副作用の発現を回避することができると考えられており、そのような薬剤の開発が待たれている。
【0009】
一方で、クローン病患者において腸管における血管の構造的変化が観察されることが報告されている(Lancet、第II巻、第1057頁、1989年)。すなわち、クローン病は肉芽腫を伴う血管炎であり、局所的に閉塞性のフィブリン血栓や毛細管の微小血栓が観察される。また、潰瘍性大腸炎患者においても微小血管の閉塞が認められており、これら病態の発症早期に血管傷害による循環不全が起こっている可能性が示唆されている。
【0010】
さらに、クローン病患者では血漿中の血液凝固第VII因子活性、リポ蛋白(a)およびフィブリノーゲン濃度が、また潰瘍性大腸炎患者では第VII因子活性のみが健常人と比べ有意に高値である(Gut、第38巻第733頁、1996年)。また、炎症性腸疾患患者の血小板数、フィブリノーゲン、プロトロンビン・フラグメントF1+2および全血中の血小板自然凝集が、健常人より優位に高値であるという報告もあり(Thromb Res、第82巻、第137頁、1996年)、炎症性腸疾患の患者が血栓を形成しやすい環境にあることが示唆されている。
【0011】
これらの所見から、抗血小板薬や抗凝固薬および血栓溶解薬といった抗血栓薬による腸管の循環改善が炎症性腸疾患の病態に対し有効である可能性が考えられる。実際、オープンスタディであるものの、潰瘍性大腸炎患者にヘパリンが有効であったという報告もある(Gastroenterology、第104巻、A703、1993年)。さらに、これら抗血栓薬を従来の治療薬に併用することによって、免疫抑制剤や抗サイトカイン薬などの使用量を減量することができれば、既存薬の抱える重篤な副作用を軽減することができる。しかし、臨床で有効性の証明された抗血栓薬はまだない。
【0012】
ところで、フォンビルブランド因子(von Willebrand Factor、以下「vWF」と略記することがある)は高分子量のマルチマー構造をもつ糖蛋白であり、骨髄巨核球の他に血管内皮細胞で合成される。サイトカインやずり応力刺激、人為的破壊によって内皮細胞から血中に放出されることから、血管傷害マーカーとしても知られている。vWFは血液凝固第VIII因子のキャリアープロテインとしての役割の他に、血流などの高いずり応力が存在する環境下で血小板膜上のグリコプロテインIb(glycoprotein Ib、以下「GPIb」と略記することがある)との結合を経て、血管内皮下組織への血小板の接着、さらには血小板の凝集塊を形成させる役割をもつ。
【0013】
クローン病や潰瘍性大腸炎患者において、血管障害マーカーである血清中vWF濃度が増加していることが知られている(Gut、第33巻、第502頁、1992年)。さらに、英国129施設の血友病センターにおける疫学調査の結果、血友病患者6433人とvWF欠損患者3129人のうち、クローン病の発症は4例、潰瘍性大腸炎の発症は9例であった。過去の報告値を参考にした、同じ背景をもつ集団の発症率はそれぞれ11.97〜16.58例、19.43〜31.35例であったことから、vWF欠損を含む血友病患者は炎症性腸疾患になりにくい傾向にあることが示唆されている(Gastroenterology、第108巻、第1011頁、1995年)。これらの知見から、vWFが関与する血栓形成が炎症性腸疾患の病態に何らかの関与をしている可能性が示唆されている。
【0014】
上記のような知見は、炎症性腸疾患に留まるものではない。巨細胞性動脈炎やリウマチの患者で血漿中のvWFレベルが上昇していることが知られている。また、慢性関節リウマチの初期の病理像で血管内腔の閉塞などの微小循環系の損傷が観察されている。全身性エリテマトーデスでも、皮膚組織の閉塞性血管病変が観察されること、血液凝固第VIII因子の増加、腎生検中の糸球体内血栓の存在が報告されている。さらに、高安病、バージャー病、古典的結節性多発性動脈炎、川崎病、顕微鏡的多発性動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、原発性クリオグロブリン血症性血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎なども例外ではない。これら血管炎の病態形成に微小循環障害が関与している可能性も同様に考えられる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたものであり、炎症性疾患に対する治療用薬剤、好ましくは副作用の少ない薬剤の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を加えた結果、GPIbとvWFとの結合を阻害する物質は上記の炎症性疾患全体に有効である可能性があると考えた。そして、vWF上のGPIb結合部位に対して反応性を有するモノクローナル抗体が炎症性腸疾患の病態を治療することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質を有効成分とする炎症性疾患治療用薬剤。
(2)前記グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質が、グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する物質である、(1)の炎症性疾患治療用薬剤。
(3)前記グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質が、フォンビルブランド因子に結合する物質である、(1)の炎症性疾患治療用薬剤。
(4)前記グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する物質が、グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する抗体である(2)の炎症性疾患治療用薬剤。
(5)前記フォンビルブランド因子に結合する物質が、フォンビルブランド因子に結合する抗体である(3)の炎症性疾患治療用薬剤。
(6)前記抗体がモノクローナル抗体、又は、同モノクローナル抗体に由来し、グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有するキメラ抗体、ヒト化抗体もしくはそれらの断片である(4)又は(5)の炎症性疾患治療用薬剤。
(7)前記モノクローナル抗体が、フォンビルブランド因子のGPIb結合部位又はその近傍にエピトープを有するモノクローナル抗体である(6)の炎症性疾患治療用薬剤。
(8)前記モノクローナル抗体が、フォンビルブランド因子のA1ドメインにエピトープを有するモノクローナル抗体である(6)の炎症性疾患治療用薬剤。
(9)前記モノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−5247、FERM BP−5248、FERM BP−5249、及びFERM BP−5250で寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体から選ばれる(7)又は(8)の炎症性疾患治療用薬剤。
(10)前記炎症性疾患が炎症性腸疾患である、(1)〜(9)のいずれかの炎症性疾患治療用薬剤。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炎症性疾患治療用薬剤は、GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質を有効成分とする。GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質としては、GPIb又はvWFに結合し、その結果、GPIbとvWFとの結合を阻害する物質が挙げられる。本発明者らは、後記実施例に示すように、vWFに対して反応性を有するモノクローナル抗体AJvW-2のヒト化抗体(AJW200)の治療効果を、ラット炎症性腸疾患モデルを用いて評価したところ、既知の炎症性腸疾患治療薬であるスルファサラジンと同等であった。このことと、vWFが関与する血栓形成が炎症性腸疾患の病態に何らかの関与をしている可能性が示唆されていることを併せると、GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質は、抗vWF抗体と同様に、炎症性疾患に対する治療効果を有することが強く示唆される。
【0019】
GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質として具体的には、抗生物質であるリストセチン(ristocetin)(M.A.Howard, B.G.Firkin, Thromb. Haemostasis, 26, 362-369 (1971))、蛇毒由来のタンパク質であるボトロセチン(botrocetin)(M.S.Read et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75, 4514-4518 (1978))による血小板凝集に対して阻害作用を示す化合物が挙げられる。このような化合物として、オーリントリカルボン酸(aurin tricarboxylic acid)(M.D.Phillips et al., Blood, 72, 1989-1903 (1988); Golino P, Ragni M, Cirillo P, Pascucci I, Ezekowitz MD, Pawashe A, Scognamiglio A, Pace L, Guarino A, Chiariello M. Aurintricarboxylic acid reduces platelet deposition in stenosed and endothelially injured rabbit carotid arteries more effectively than other antiplatelet interventions. Thromb Haemost. 1995 Sep;74(3):974-9)、芳香族アミジノ化合物等の色素物質(J.D.Geratz et al., Thromb. Haemostasis, 39, 411-425 (1978))の他、vWFあるいはGPIbの部分フラグメントペプチドなどが知られている(Y.Fujimura et al., J. Biol. Chem., 261, 381-385 (1986)、K.Titani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 5610-5614 (1987))。
【0020】
vWFの部分フラグメントとして具体的には、A1ループを含むフラグメントが挙げられる(Dardik R, Varon D, Eskaraev R, Tamarin I, Inbal A. Recombinant fragment of von Willebrand factor AR545C inhibits platelet binding to thrombin and platelet adhesion to thrombin-treated endothelial cells. Br J Haematol. 2000 Jun;109(3):512-8; McGhie AI, McNatt J, Ezov N, Cui K, Mower LK, Hagay Y, Buja LM, Garfinkel LI, Gorecki M, Willerson JT. Abolition of cyclic flow variations in stenosed, endothelium-injured coronary arteries in nonhuman primates with a peptide fragment (VCL) derived from human plasma von Willebrand factor-glycoprotein Ib binding domain. Circulation. 1994 Dec;90(6):2976-81)。
【0021】
なお、vWFは、分子量260kD(2,050個のアミノ酸残基)のサブユニットからなり、その中に約200個のアミノ酸からなるAドメインが3個連続している部分がある(N末端から509〜1111の位置に、順にA1、A2、A3が存在する)。このうち、A1ドメイン(509〜712)は、A3同様、ジスルフィド結合によりループ状の構造をとっており、A1ループとも呼ばれている。
【0022】
また、蛇毒中からも同様の血小板凝集阻害活性をもつペプチドが報告されており、WO9208472号国際公開パンフレットではクロタルス・ホリダス・ホリダス(Crotalus horridus horridus)、セラステス・セラステス(Cerastes cerastes)から、いずれも、少なくともN末端側のアミノ酸配列の相同性の高い、分子量約25キロダルトンの異なる2本鎖よりなるペプチドについて示している。また、Pengら(M.Peng et al., Blood, 81, 2321-2328 (1993))が報告しているエキス・カリナタス(Echis carinatus)から得た血小板凝集阻害ペプチドも、インビトロでの活性、分子量など、上記ペプチドに非常に類似のものである。その他、蛇毒については、以下の論文を参照のこと。Yeh CH, Chang MC, Peng HC, Huang TF. Pharmacological characterization and antithrombotic effect of agkistin, a platelet glycoprotein Ib antagonist. Br J Pharmacol. 2001 Feb;132(4):843-50; Chang MC, Lin HK, Peng HC, Huang TF. Antithrombotic effect of crotalin, a platelet membrane glycoprotein Ib antagonist from venom of Crotalus atrox. Blood. 1998 Mar 1;91(5):1582-9; Kawasaki T, Taniuchi Y, Hisamichi N, Fujimura Y, Suzuki M, Titani K, Sakai Y, Kaku S, Satoh N, Takenaka T, et al. Tokaracetin, a new platelet antagonist that binds to platelet glycoprotein ib and inhibits von Willebrand factor-dependent shear-induced platelet aggregation. Biochem J. 1995 Jun 15;308 (Pt 3):947-53; Peng M, Lu W, Beviglia L, Niewiarowski S, Kirby EP. Echicetin: a snake venom protein that inhibits binding of von Willebrand factor and alboaggregins to platelet glycoprotein Ib. Blood. 1993 May 1;81(9):2321-8
【0023】
また、vWFと血小板との結合を阻害する活性を有する蛇毒由来の多量体ペプチドから得られる一本鎖ペプチドも、本発明に好適に用いることができる(WO95/08573、WO 00/59926)。具体的には、クロタルス・ホリダス・ホリダス(Crotalus horridus horridus)の蛇毒由来の一本鎖ペプチドAS1051が挙げられる。同ペプチドは、GPIbに特異的に結合する(WO95/08573)。このような一本鎖ペプチドは、一般的に蛇毒が有する血小板減少を示さない点で優れている。
【0024】
上記の物質の他に、GPIbに結合する物質としては、GPIbに結合する抗体が挙げられる(Cauwenberghs N, Ajzenberg N, Vauterin S, Hoylaerts MF, Declerck PJ, Baruch D, Deckmyn H. Characterization of murine anti-glycoprotein Ib monoclonal antibodies that differentiate between shear-induced and ristocetin/botrocetin-induced glycoprotein Ib-von Willebrand factor interaction. Haemostasis. 2000 May-Jun;30(3):139-48; Cauwenberghs N, Meiring M, Vauterin S, van Wyk V, Lamprecht S, Roodt JP, Novak L, Harsfalvi J, Deckmyn H, Kotze HF. Antithrombotic effect of platelet glycoprotein Ib-blocking monoclonal antibody Fab fragments in nonhuman primates. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 May;20(5):1347-53)。本発明においては、このような抗GPIb抗体のうち、GPIbのvWFとの結合部位又は近傍に結合し、GPIbとvWFとの結合を阻害するような抗体が用いられる。
【0025】
また、vWFに結合する物質としては、vWFに結合する抗体が挙げられる。本発明においては、抗vWF抗体のうち、vWFのGPIbとの結合部位又は近傍に結合し、vWFとGPIbとの結合を阻害するような抗体が用いられる。
【0026】
本発明に用いる抗GPIb抗体又は抗vWF抗体は、GPIbとvWFとの結合を阻害する限り、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。また、GPIb又はvWFに結合し、GPIbとvWFとの結合を阻害する限り、モノクローナル抗体に由来する誘導体であってもよい。
【0027】
抗GPIbポリクローナル抗体又は抗vWFポリクローナル抗体は、抗体の製造に用いられるマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等の哺乳動物をGPIb又はvWFで免疫し、血清から免疫グロブリン画分を分離することによって、製造することができる。また、抗GPIbモノクローナル抗体又は抗vWFモノクローナル抗体は、ケーラーとミルステインの方法(Nature,495〜492頁、1975年)によってこれらのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを調製し、得られたハイブリドーマの培養上清から抗体を精製することによって、製造することができる。
【0028】
上記抗体の誘導体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体又はそれらの断片が挙げられる。キメラ抗体は、例えば、ある動物の抗体の定常領域に他の動物の抗体の可変領域が連結されたものである。また、ヒト化抗体は、非ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)の遺伝子配列だけをヒト抗体遺伝子に移植したものである。本発明においては、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である点で、ヒト化抗体が好ましい。ヒト化抗体は、例えば、マウスモノクローナル抗体の相補性決定領域をヒト骨髄腫由来の抗体可変部のフレームワーク領域に部位特異的変異により移植した重鎖及び軽鎖の遺伝子を宿主細胞で発現させることにより、製造することができる。ヒト定常領域をコードするDNA配列は、周知の手法にしたがって、種々のヒト細胞から、好ましくは不死化B細胞から単離され得る(Kabat,E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1987)、WO 87/02671参照)。また、抗GPIb抗体又は抗vWF抗体の可変領域をコードするDNA配列は、それらの抗体を産生する細胞から単離され得る。また、キメラ遺伝子を発現させる宿主は、多数の供給元、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手し得る(Catalogue of Cell Lines and Hybridomas, Fifth edition(1985)Rockville, Maryland, U.S.A.)。
【0029】
また、抗体の断片としては、F(ab')2、Fab'、FabおよびFvが挙げられる。さらに、二機能性ハイブリッド抗体(Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105(1987))、単一鎖(Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883(1988)およびBird et al., Science 242, 423-426(1988)等の技術も、本発明に適用することができる。
【0030】
抗vWF抗体としては、vWFのGPIb結合部位又はその近傍にエピトープを有するモノクローナル抗体が好ましい。そのような抗vWF抗体として具体的には、vWFのA1ドメインにエピトープを有するモノクローナル抗体が挙げられる。GPIb結合部位又はその近傍にエピトープを有する抗vWF抗体としてより具体的には、ハイブリドーマAJvW-1、AJvW-2、AJvW-3およびAJvW-4が産生するモノクローナル抗体が好適に挙げられる(WO96/17078)。これらのハイブリドーマは、平成6年8月24日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にそれぞれ順にFERM P-14486、FERM P-14487、FERM P-14488及びFERM P-14489の受託番号で寄託され、平成7年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管されて、それぞれ順にFERM BP-5247、FERM BP-5248、FERM BP-5249、FERM BP-5250の受託番号で寄託されている。尚、AJvW-2が産生するモノクローナル抗体は、文献(Br J Pharmacol、第122巻、第165頁、1997年)(Thromb Haemost、第79巻、第202頁、1998年)及び特許(WO96/17078)に詳しい。
【0031】
上記抗体のうち、AJvW-2及びAJvW-4が産生するモノクローナル抗体は、下記性質を有する。
(a)ヒト・フォンビルブランド因子に対して反応性を有する。
(b)ヒト血小板のRIPA(リストセチン惹起血小板凝集反応)、BIPA(ボトロセチン惹起血小板凝集反応)、及びSIPA(高ずり応力により惹起される血小板凝集反応)を阻害する。
(c)モルモット血小板のRIPA(リストセチン惹起血小板凝集反応)及びBIPA(ボトロセチン惹起血小板凝集反応)を阻害する。
(d)モルモット生体内で強い抗血栓作用を示すが、出血は引き起こさない。
また、AJvW-1及びAJvW-3が産生するモノクローナル抗体は、下記性質を有する。
【0032】
(イ)ヒト・フォンビルブランド因子に対して反応特異性を有する。
(ロ)ヒト血小板のRIPA(リストセチン惹起血小板凝集反応)、BIPA(ボトロセチン惹起血小板凝集反応)、及びSIPA(高ずり応力により惹起される血小板凝集反応)を阻害する。
(ハ)ラット、モルモット、及びウサギのフォンビルブランド因子とは反応しない。
【0033】
AJvW-2が産生するモノクローナル抗体がvWFのA1ループ上にエピトープを有することは、当該抗体のvWFへの結合をA1ループフラグメントであるVCLが競合阻害すること、さらには還元アルキル化しループ構造をなくしたVCLでは競合阻害し得ないことから明らかにされている(Yamamoto H, Vreys I, Stassen JM, Yoshimoto R, Vermylen J, Hoylaerts MF. Antagonism of vWF inhibits both injury induced arterial and venous thrombosis in the hamster. Thromb Haemost.1998;79:202-210)。また、WO96/17078に記載されているように、AJvW-2が産生するモノクローナル抗体のvWFへの結合を、AJvW-1、AJvW-3、AJvW-4が産生するモノクローナル抗体がそれぞれ競合阻害することが明らかにされている。したがって、これら3つの抗体についても、vWFへの結合部位は、A1ループ上のAJvW-2の結合部位の近傍にあるものと考えられる。
【0034】
本発明において最も好ましい抗体は、AJvW-2が産生するモノクローナル抗体、又はそのヒト化抗体である。同ヒト化抗体は及びその製造方法は、WO 00/10601号国際公開パンフレットに詳細に開示されている。後記実施例では、同国際公開パンフレットの実施例に記載の方法により得られたヒト化抗体(AJW200と呼ぶ)を用いた。
【0035】
本発明の炎症性疾患治療用薬剤は、上記のようなGPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質を有効成分として含有する。本発明の炎症性疾患治療用薬剤の剤型としては、注射剤、舌下剤、経皮パップ剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、シロップ剤、座薬、軟膏剤、点眼剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の薬剤中のGPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質の含量は、好ましくは当該薬剤100重量部中0.01〜100重量部である。前記物質は、1種を単独で用いてもよく、任意の2種以上の混合物として用いてもよい。
【0037】
また、本発明の薬剤は、剤型に応じて、製剤上許容される賦形剤や増量剤、例えばデキストリン、乳糖、バレイショデンプン、炭酸カルシウムまたはアルギン酸ナトリウム等を配剤してもよい。本発明の薬剤の形態は液状、粉体状、カプセル状、顆粒状のいずれでも構わない。注射剤の場合には、溶媒として注射用蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リンゲル液等が使用され、これに分散剤を添加してもよい。また、GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質以外の抗血栓成分を併用してもよい。
【0038】
本発明の薬剤が適応される患者は、炎症性疾患の患者である。緩解誘導または緩解維持の目的で本発明の薬剤を投与する。投与経路としては、経口投与、静脈内投与、舌下吸収、経皮吸収、経腸吸収、点眼等が挙げられる。抗体であれば、静脈内への単回投与で十分有効な可能性もあるが、抗原性の問題がない限りにおいて、数回投与してもよい。また、本発明の薬剤の投与量は、治療効果を奏し得る限り特に制限は無いが、通常成人あたり0.1μg/kg〜1000 mg/kgの範囲で投与すればよい。
【0039】
本発明において、炎症性疾患として、炎症性腸疾患、巨細胞性動脈炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、高安病、バージャー病、古典的結節性多発性動脈炎、川崎病、顕微鏡的多発性動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、原発性クリオグロブリン血症性血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎等が挙げられる。本発明は、これらの疾患の中で、特に炎症性腸疾患に対して好適に適用され得る。炎症性腸疾患は、広義には虚血性大腸炎・小腸炎なども含む腸管の炎症性疾患すべてを指すが、狭義には潰瘍性大腸炎とクローン病を指す。
【0040】
【実施例】
以下実施例を掲記し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
<1>AJW200のラットにおける血小板凝集抑制作用
血小板GPIbと血中vWFとの結合が関与することが知られている、高ずり応力惹起血小板凝集に対するAJW200の抑制効果を検討した。雄性SDラットに生理食塩水(コントロール)またはAJW200(0.1、0.3 mg/kg)を尾静脈内に単回投与し、5分、24時間および48時間後、エーテル麻酔下に腹部大動脈より採血した(クエン酸の最終濃度0.38%。各群、各採血ポイントにつきn=3)。採血した血液をSysmex E-2000(シスメクス)にて血液学的パラメータを測定した。次に遠心操作により、多血小板血漿および乏血小板血漿を採取し、多血小板血漿中の血小板数を測定し、500,000個/μLに調製した。細胞機能測定機(東レ)を用いて、高ずり応力(108dyne/cm2)を6分間負荷し、各個体毎の血小板凝集率を測定した。また、全自動血液凝固時間測定装置 CA-4000(シスメクス)にて血液凝固パラメータ(PT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間))を測定した。さらに、抗vWF抗体(DAKO社製ウサギポリクローナル抗体A0082とP0226)を用いたサンドイッチELISA法により血漿中vWFレベルを測定した。結果はすべて、平均値±S.E.Mで表示した。統計解析はOne-factorial ANOVAにより行い、post-hocとしてDunnett testを行った。
【0042】
結果を図1に示す。図中**はp<0.01を示す。ラットに0.3 mg/kgのAJW200を単回投与した場合、高ずり応力惹起血小板凝集に対する有意な抑制効果は24時間以上持続し、48時間後に消失した。また、AJW200の単回投与によって、血液学的パラメータ、凝固系パラメータの変動は認められなかった。さらに、抗原抗体反応による血漿中からのvWFの消失も認められなかった。
【0043】
<2>ラット炎症性腸疾患モデルにおけるAJW200の薬効評価
雄性Wistarラット(180±20 g)を24時間絶食後、カニューレを用いて結腸内に、0.5 mLの30%エタノールに溶解した30 mgのDNBS(2,4-dinitrobenzene sulfonic acid)を注入し、さらに空気を2 mL注入し、炎症性腸疾患モデルを作製した。DNBS注入24時間後から、0.3 mg/kgのAJW200を1日1回、5日間、尾静脈より単回投与した。ポジティブコントロールとして、既知の炎症性腸疾患治療薬であるスルファサラジン(300 mg/kg)をDNBS注入1日前から、1日1回で7日間、経口投与した。コントロール群にはAJW200の溶媒であるPBSを同様に投与した。群構成を以下に示す。
【0044】
1.正常コントロール群(n=5)
2.病態コントロール群(n=5)
3.スルファサラジン投与群(n=5)
4.AJW200投与群(n=5)
【0045】
最後の投与から24時間後に剖検および採血を行った。結腸を摘出後、重量を測定し、各個体ごとに体重に対する結腸重量比を算出した。血液学的パラメータも測定した。また、最終日に下痢の有無、結腸と他臓器との癒着の有無および潰瘍の有無を合わせて病変スコア付けを行った(有;+1、無;+0、最大スコア3)。
【0046】
さらに、このとき得られた血漿サンプルを用いて、ELISA法にて血漿中vWFレベル、血漿中AJW200濃度および抗AJW200抗体の測定を行った。結果はすべて、平均値±S.E.Mで表示した。
【0047】
結果を図2、3に示す。DNBS誘発ラット炎症性腸疾患モデルにおいて、DNBS注入から6日後の結腸重量比は、正常コントロール群が0.278±0.014%であったのに対し、病態コントロール群では約3倍の0.828±0.075%であった。これに対しスルファサラジンの前投与群では0.513±0.042%であり、AJW200投与群では0.681±0.058%と抑制傾向が認められた(図2)。病変スコアでは、正常コントロール群が0(5例全例でスコア0)に対し、病態コントロール群では2.0±0.4(スコア0の個体なし)であった。これに対しスルファサラジンの前投与群では0.4±0.2(スコア0が3例)、AJW200投与群では1.0±0.4(スコア0が2例)と抑制傾向が認められた(図3)。
【0048】
血液学的パラメータは、病態コントロールに対して、スルファサラジンおよびAJW200の反復投与による影響は認められなかった。また、実験最終日において血漿中vWFレベルは正常コントロールに比べ病態コントロールで2〜3倍に上昇したが、スルファサラジンおよびAJW200の反復投与による影響は認められなかった。さらに、AJW200投与群において、血漿中AJW200濃度の個体差はなく、抗AJW200抗体も検出されなかった。
【0049】
以上の実験結果より、vWFとGPIbとの結合を阻害するAJW200は炎症性腸疾患に対する治療効果を有することが示された。
【0050】
【発明の効果】
モノクローナル抗体AJW200で代表される、GPIbとvWFとの結合を阻害する作用を有する物質は、炎症性疾患治療用薬剤の有効成分として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ラットにAJW200を単回投与したときの、高ずり応力惹起血小板凝集に対する抑制効果を示したものである。
【図2】 ラット炎症性腸疾患モデルにおいて、DNBSを注入して24時間後から5日間連日投与したAJW200の結腸重量比に対する影響を示したものである。
【図3】 ラット炎症性腸疾患モデルにおいて、DNBSを注入して24時間後から5日間連日投与したAJW200の病変スコアに対する影響を示したものである。

Claims (10)

  1. グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質を有効成分とする炎症性疾患治療用薬剤。
  2. 前記グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質が、グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する物質である、請求項1記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  3. 前記グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有する物質が、フォンビルブランド因子に結合する物質である、請求項1記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  4. 前記グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する物質が、グリコプロテインIb又はフォンビルブランド因子に結合する抗体である請求項2記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  5. 前記フォンビルブランド因子に結合する物質が、フォンビルブランド因子に結合する抗体である請求項3記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  6. 前記抗体がモノクローナル抗体、又は、同モノクローナル抗体に由来し、グリコプロテインIbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有するキメラ抗体、ヒト化抗体もしくはそれらの断片である請求項4又は5に記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  7. 前記モノクローナル抗体が、フォンビルブランド因子のGPIb結合部位又はその近傍にエピトープを有するモノクローナル抗体である請求項6記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  8. 前記モノクローナル抗体が、フォンビルブランド因子のA1ドメインにエピトープを有するモノクローナル抗体である請求項6に記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  9. 前記モノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−5247、FERM BP−5248、FERM BP−5249、及びFERM BP−5250で寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体から選ばれる請求項7又は8に記載の炎症性疾患治療用薬剤。
  10. 前記炎症性疾患が炎症性腸疾患である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の炎症性疾患治療用薬剤。
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