明細 炎症性疾患治療用薬剤 技術分野
本発明は、 炎症性疾患を治療する目的で使用される薬剤であって、 グリコプロ ティン lbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する物質を有効成分とする薬 剤に関する。 背景技術
炎症性腸疾患と総称される潰瘍性大腸炎やクローン病はいまだ原因不明で、 再 燃と緩解を繰り返す難治性慢性疾患である。潰瘍性大腸炎は主として粘膜を侵し、 しばしばびらんや潰瘍を形成する、 大腸のびまん性非特異性炎症である。 通常血 性下痢と種々の程度の全身症状を示し、 長期にわたり大腸全体を侵す場合には悪 性化の傾向がある。 一方、 クローン病は線維化や潰瘍を伴う肉芽腫性炎症性病変 から成り、 消化管のどの部位にも起こり得る。 腸病変としては縦走潰瘍、 多発性 ァフ夕、 不整形潰瘍で、 次第に腸管の狭窄を起こす。 あるときは内ろうや外ろう をきたし、敷石像が見られる。これら炎症性腸疾患の患者は北米では 100万人近く 存在し、 病態の成因が未解決のまま今なお増加していることから、 21世紀の重要 な医療問題になりつつある。
炎症性腸疾患に対する治療薬としては、 ァミノサリチル酸とコルチコステロイ ドが第一および第二選択薬として、 広く使用されている。 さらに、 よりシビアな 患者には免疫抑制剤、 またクローン病の一部の患者には抗生物質が使われ、 最近 では抗 TNF-ひ抗体に代表される抗サイ トカイン療法がクローン病患者を対象に行 われている。
ァミノサリチル酸としては、 スルフアサラジンおよび 5-ァミノサリチル酸が主 流である。 しかし、 投与されている患者の 45 %までに頭痛、 悪心、 消化不良、 食 欲不振、 発熱、 発疹、 関節痛、 溶血、 好中球減少、 大腸炎増悪、 男性不妊症およ
び肺、 肝臓、 神経、 臈臓の過敏性反応などの副作用が認められる。 作用メカニズ ムとしては、 シクロォキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼを阻害することによ り、 プロスタグランジンおよびロイコ トリエンの生成を抑制することが知られて いる。 また、 粘膜病変部の好中球や単球から産生される活性酸素種 (フリーラジ カル) を消去する作用、 さらに病変進行に関係するィン夕一ロイキン一 1、 ィン夕 ーフヱロンーァ、 炎症惹起性サイ トカインの産生を阻害する作用などが知られて いるが、 正確なメカニズムはまだ把握されていない。
さらに、 コルチコステロイ ドは重度に近いクローン病患者の多く、 また潰瘍性 大腸炎の急性期に広く用いられる。 コルチコステロイ ドはサイ トカイン生成を抑 制する結果、 抗炎症作用および免疫抑制作用を示すことが知られているが、 副作 用が強く、炎症性腸疾患治療におけるコルチコステロイ ドの使用を制限している。 初期に、 特に高用量で知られる副作用としては不眠症、 寝汗、 食欲亢進、 糖代謝 異常が知られている。 長期に使用すると低用量でも顔が丸くなる、 にきび、 頸部 の脂肪瘤形成、 毛髪の過剰成長などの副作用がしばしば報告されている。 さらに 白内障、 緑内障につながる眼圧増加、 骨粗しょう症、 筋肉弱化、 高血圧を引き起 こすこともある。 また、 コルチコステロイ ドは、 クロ一ン病および潰瘍性大腸炎 患者の緩解維持効果がないステロイ ド抵抗性患者が、 30 %程度認められるなどの 問題点もある。
また、 免疫抑制剤は、 主に緩解誘導および維持、 ステロイ ド依存性の低減、 外 科手術移行阻止、 クローン病に伴う痔ろうの治癒またはドレナージの低減などの 目的で使用される。 プリン誘導体であるァザチォプリンとその活性代謝物 6-メル カプトプリンは核酸合成を阻害し、 液性免疫および細胞性免疫ともに抑制する。 両薬剤は、 5-ァミノサリチル酸ゃステロイ ドに比べ、 臨床での効果が明らかにな るまでに数ケ月かかることもある。 副作用としては、 一般に可逆性の白血球減少 症を引き起こす他、 発熱、 発疹、 悪心、 頭痛などが約 10 %の患者に認められてい る。また投薬開始数ケ月後に滕炎が 5〜15 %の患者に見られる。シクロスポリンは、 特にステロイ ド抵抗性の潰瘍性大腸炎患者に使用されるが、 比較的高用量でない と効果がなく、 薬効発現までに;!〜 2週間かかる。 シビアな潰瘍性大腸炎患者に対
し、 ダルココルチコステロイ ドに代わる薬剤として有効かつ安全であることが臨 床試験で証明されているものの (N Engl J Med, 第 330卷、 第 1841頁、 1994年) 、 投薬中にも関わらず.再発する患者が存在するという問題点があり、 6-メルカプト プリンに切りかえるなどの工夫が必要とされている。シクロスポリンはへルパ一 T 細胞と細胞傷害性リンパ球の活性化を選択的に阻害する結果、 免疫抑制作用を発 揮する。 副作用として腎不全、 高血圧、 感染症、 発作、 しびれ、 振戦、 頭痛、 歯 肉増殖症、 多毛症、 静脈内投与時のアナフィラキシーが知られている。
一方、 抗サイ ト力イン療法は、 これら従来のものとはまったく異なる新しい治 療法であり、 最初に登場した薬剤がキメラ抗 TNF-ひモノクローナル抗体ィンフリ キシマプである。 ステロイ ド抵抗性の中度から重度なクローン病患者で有効であ ること (N Engl J Med、 第 337巻、 第 1029頁、 1997年) 、 さらに緩解維持にも有効 であること (Gastroenterology、第 117卷、第 761頁、 1999年)が報告されている。 副作用として高血圧、 悪寒、 発疹、 発熱、 頭痛、 湿疹などが知られる。 さらにィ ンフリキシマプはキメラ型抗体であるため、 抗原性を示す可能性があり、 急性の 超過敏反応が起こることがある。 また、 最近では抗生物質が必要となるような感 染症ゃ癌原性が問題視されている。
炎症性腸疾患に対し、 現状では上記薬剤が組み合わされて処方されているが、 どれも深刻な副作用を有し、 その使い方には注意を要する。 従来の薬剤に新しい 作用メカニズムを有する薬剤を併用することにより、 臨床効果を維持したままス テロイ ドなどの使用量を下げることができれば、 重篤な副作用の発現を回避する ことができると考えられており、 そのような薬剤の開発が待たれている。
一方で、 クローン病患者において腸管における血管の構造的変化が観察される ことが報告されている (Lancet、 第 I I卷、 第 1057頁、 1989年) 。 すなわち、 クロ 一ン病は肉芽腫を伴う血管炎であり、 局所的に閉塞性のフィプリン血栓や毛細管 の微小血栓が観察される。 また、 潰瘍性大腸炎患者においても微小血管の閉塞が 認められており、 これら病態の発症早期に血管傷害による循環不全が起こつてい る可能性が示唆されている。
さらに、 クローン病患者では血漿中の血液凝固第 VI I因子活性、 リポ蛋白 (a)
およびフイブリノ一ゲン濃度が、また潰瘍性大腸炎患者では第 VI I因子活性のみが 健常人と比べ有意に高値である (Gut、 第 38卷第 733頁、 1996年) 。 また、 炎症性 腸疾患患者の血小板数、 フイブリノ一ゲン、 プロ トロンビン ' フラグメント F1+2 および全血中の血小板自然凝集が、 健常人より優位に高値であるという報告もあ り (Thromb Res、 第 82卷、 第 137頁、 1996年) 、 炎症性腸疾患の患者が血栓を形成 しゃすい環境にあることが示唆されている。
これらの所見から、 抗血小板薬や抗凝固薬および血栓溶解薬といつた抗血栓薬 による腸管の循環改善が炎症性腸疾患の病態に対し有効である可能性が考えられ る。 実際、 オープンスタディであるものの、 潰癟性大腸炎患者にへパリンが有効 であったという報告もある (Gastroenterology、 第 104卷、 A703、 1993年) 。 さら に、 これら抗血栓薬を従来の治療薬に併用することによって、 免疫抑制剤ゃ抗サ ィ トカイン薬などの使用量を減量することができれば、 既存薬の抱える重篤な副 作用を軽減することができる。 しかし、 臨床で有効性の証明された抗血栓薬はま だない。
ところで、 フォンビルブランド因子 (von Wil lebrand Factor、 以下 「vWF」 と 略記することがある) は高分子量のマルチマー構造をもつ糖蛋白であり、 骨髄巨 核球の他に血管内皮細胞で合成される。 サイ トカインゃずり応力刺激、 人為的破 壊によって内皮細胞から血中に放出されることから、 血管傷害マーカーとしても 知られている。 vWFは血液凝固第 VI I I因子のキヤリァ一プロティンとしての役割の 他に、 血流などの高いずり応力が存在する環境下で血小板膜上のグリコプロティ ン lb (glycoprotein Ib、 以下 「GPIb」 と略記することがある) との結合を経て、 血管内皮下組織への血小板の接着、 さらには血小板の凝集塊を形成させる役割を もつ。
クローン病や潰瘍性大腸炎患者において、 血管障害マーカ一である血清中 vWF 濃度が増加していることが知られている (Gut、 第 33卷、 第 502頁、 1992年) 。 さ らに、 英国 129施設の血友病センタ一における疫学調査の結果、 血友病患者 6433 人と vWF欠損患者 3129人のうち、 クローン病の発症は 4例、潰瘍性大腸炎の発症は 9 例であった。 過去の報告値を参考にした、 同じ背景をもつ集団の発症率は.それそ
れ 11.97〜; 16.58例、 19.43~ 31.35例であったことから、 vWF欠損を含む血友病患者 は炎症性腸疾患にな り に く い傾向 に あ る こ と が示唆さ れて い る (Gastroenterology, 第 108卷、 第 1011頁、 1995年) 。 これらの知見から、 vWFが 関与する血栓形成が炎症性腸疾患の病態に何らかの関与をしている可能性が示唆 されている。
上記のような知見は、 炎症性腸疾患に留まるものではない。 巨細胞性動脈炎や リゥマチの患者で血漿中の vWFレベルが上昇していることが知られている。 また、 慢性関節リゥマチの初期の病理像で血管内腔の閉塞などの微小循環系の損傷が観 察されている。 全身性エリテマトーデスでも、 皮膚組織の閉塞性血管病変が観察 されること、 血液凝固第 VI I I因子の増加、 腎生検中の糸球体内血栓の存在が報告 されている。 さらに、 高安病、 バージャ一病、 古典的結節性多発性動脈炎、 川崎 病、顕微鏡的多発性動脈炎、 ウェジナー肉芽腫症、チヤ一グ*ストラウス症候群、 へノッホ · シヱーンライン紫斑病、 原発性クリオグロブリン血症性血管炎、 皮膚 白血球破砕性血管炎なども例外ではない。 これら血管炎の病態形成に微小循環障 害が関与している可能性も同様に考えられる。 発明の開示 本発明は、 上記現状に鑑みなされたものであり、 炎症性疾患に対する治療用薬 剤、 好ましくは副作用の少ない薬剤の提供を目的とする。
本発明者らは、 上記課題を解決するために鋭意検討を加えた結果、 GPIbと v との結合を阻害する物質は上記の炎症性疾患全体に有効である可能性があると考 えた。そして、 v 上の GPIb結合部位に対して反応性を有するモノクローナル抗体 が炎症性腸疾患の病態を治療することが可能であることを見出し、 本発明を完成 させた。
すなわち、 本発明の要旨は以下のとおりである。
( 1 ) グリコプロティン I bとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用 を有する物質を有効成分とする炎症性疾患治療用薬剤。
(2) 前記グリコプロテイン I bとフォンビルブランド因子との結合を阻害する 作用を有する物質が、 グリコプロティン I b又はフォンビルブランド因子に結合 する物質である、 (1)の炎症性疾患治療用薬剤。
(3) 前記グリコプロテイン lbとフォンビルブランド因子との結合を阻害する 作用を有する物質が、 フォンビルブランド因子に結合する物質である、 (1)の炎症 性疾患治療用薬剤。
(4)前記グリコプロティン I b又はフォンビルプランド因子に結合する物質が、 グリコプロティン I b又はフォンビルブランド因子に結合する抗体である(2)の 炎症性疾患治療用薬剤。
(5) 前記フォンビルブランド因子に結合する物質が、 フォンビルブランド因子 に結合する抗体である( 3 )の炎症性疾患治療用薬剤。
(6) 前記抗体がモノクローナル抗体、 又は、 同モノクローナル抗体に由来し、 グリコプロティン I bとフォンビルブランド因子との結合を阻害する作用を有す るキヌラ抗体、 ヒト化抗体、 ヒト抗体、二機能性ハイプリッ ド抗体、単一鎖抗体、 もしくはそれらの断片である(4)又は(5)の炎症性疾患治療用薬剤。
(7) 前記モノクローナル抗体が、 フォンビルプランド因子の GP I b結合部位 又はその近傍にェピト一プを有するモノクローナル抗体である(6)の炎症性疾患 治療用薬剤。
(8) 前記モノクローナル抗体が、 フォンビルブランド因子の A 1ドメインにェ ピト一プを有するモノクローナル抗体である(6)の炎症性疾患^療用薬剤。
(9) 前記抗体の断片が、 F(ab,)2、 Fab\ Fab又は Fvである(6)の炎症性治療用 薬剤。
( 10) 前記モノクローナル抗体が、 受託番号 FERM BP— 5247、 FE RM BP— 5248、 FERM B P— 5249、 及び F E R M BP— 52 50で寄託されたハイプリ ドーマが産生するモノクローナル抗体から選ばれる (7)又は(8)の炎症性疾患治療用薬剤。
(11) 前記グリコプロティン I bとフォンビルブランド因子との結合を阻害す る作用を有する物質が、 フォンビルブランド因子又はグリコプロティン I bの部
分フラグメントである(1)に記載の炎症性疾患治療用薬剤。
( 12) 前記フォンビルブランド因子の部分フラグメン 1、が、 A 1 ドメインを含 むフラグメントである(11)に記載の炎症性疾患治療薬剤。
( 13)前記炎症性疾患が炎症性腸疾患である、 (1)〜(12)のいずれかの炎症性疾 患治療用薬剤。
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明の炎症性疾患治療用薬剤は、 GPIbと vWFとの結合を阻害する作用を有する 物質を有効成分とする。 GPIbと vWFとの結合を阻害する作用を有する物質としては、 GPIb又は vWFに結合し、 その結果、 GPIbと vWFとの結合を阻害する物質が挙げられ る。本発明者らは、 後記実施例に示すように、 vWFに対して反応性を有するモノク ローナル抗体 AJvW- 2のヒ ト化抗体 (AJW200) の治療効果を、 ラッ ト炎症性腸疾患 モデルを用いて評価したところ、 既知の炎症性腸疾患治療薬であるスルフアサラ ジンと同等であった。 また、 炎症に伴う好中球集積の指標である (J. Invet. Dermatol. 第 78巻、 第 206頁、 1982年) MPO (myeloperoxidase)活性を抑制する傾 向を示した。 これらのことと、 vWFが関与する血栓形成が炎症性腸疾患の病態に何 らかの関与をしている可能性が示唆されていることを併せると、 GPIbと vWFとの結 合を阻害する作用を有する物質は、抗 vWF抗体と同様に、炎症性疾患に対する治療 効果を有することが強く示唆される。
GPIbと vWFとの結合を阻害する作用を有する物質として具体的には、抗生物質で あるリス卜セチン (ristocetin) (M.A.Howard, B.G. Firkin, Thromb. Haemostasis3 26, 362-369 (1971)) 、 蛇毒由来のタンパク質であるボトロセチン (botrocetin) (M.S. Read et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75, 4514-4518 (1978)) による血小板凝集に対して阻害作用を示す化合物が挙げられる。 このような化合 物として、 ォ一リントリカルボン酸(aurin tricarboxylic acid) (M.D.Phillips et al., Blood, 72, 1989-1903 (1988); Go lino P, Ragni M, Cirillo P, Pascucci I, Ezekowitz MD, Pawashe A, Scognamiglio A, Pace L, Guarino A, Chiariello M. Aurintricarboxylic acid reduces platelet deposition in stenosed and endothelially injured rabbit carotid arteries more effectively than other
antiplatelet interventions. Thromb Haemost. 1995 Sep; 74(3) :974-9) 、 芳香 族アミジノ化合物等の色素物質 (J.D.Geratz et al., Thromb. Haemostasis, 39, 411-425 (1978))の他、 vWFあるいは GPIbの部分フラグメントペプチドなどが知ら れている (Y.Fujimura et al.5 J. Biol. Chem. , 261, 381-385 (1986)、 K.Titani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 5610-5614 (1987)) 。
vWFの部分フラグメントとして具体的には、 A 1 ドメイン (A 1ループ) を含む フラグメントが挙げられる (Dardik R, Varon D, Eskaraev R, Tamarin I, Inbal A. Recombinant fragment of von Willebrand factor AR545C inhibits platelet binding to thrombin and platelet adhesion to thromb in - treated endothelial cells. Br J Haematol. 2000 Jun; 109(3) :512-8; McGhie AI, McNatt J, Ezov N, Cui K, Mower LK, Hagay Y, Buja LM, Garf inkel LI, Gorecki M, Willerson JT. Abolition of cyclic flow variations in stenosed, endothelium - injured coronary arteries in nonhuman primates with a peptide fragment (VCL) derived from human lasma von Willebrand factor - glycoprotein lb binding domain. Circulation. 1994 Dec;90(6) :2976-81) 。
なお、 vWFは、分子量 260kD (2, 050個のアミノ酸残基)のサブュニヅ 卜からなり、 その中に約 200個のアミノ酸からなる Aドメインが 3個連続している部分がある
(N末端から 509〜; 1111の位置に、順に A 1、 A 2、 A 3が存在する)。 このうち、 A 1 ドメイン (509〜712) は、 A 3同様、 ジスルフィ ド結合によりループ状の構 造をとつており、 A 1ループとも呼ばれている。
また、 蛇毒中からも同様の血小板凝集阻害活性をもつぺプチドが報告されてお り、 W09208472号国際公開パンフレッ トではクロ夕ルス · ホリダス · ホリダス
(Crotalus horridus horridus) N セラステス - セラステス (Cerastes cerastes; から、 いずれも、 少なくとも N末端側のアミノ酸配列の相同性の高い、 分子量約 25キロダルトンの異なる 2本鎖よりなるぺプチドについて示している。 また、 Pengら (M.Peng et al. , Blood, 81, 2321-2328 (1993)) が報告しているエキス · 力リナタス (Echis carinatus) から得た血小板凝集阻害ペプチドも、 インビトロ での活性、 分子量など、 上記ペプチドに非常に類似のものである。 その他、 蛇毒
については、 以下の論文を参照のこと。 Yeh CH5 Chang MC, Peng HC, Huang TF . Pharmacological characterization and antithrombotic effect of agkistin, a platelet glycoprotein lb antagonist. Br J Pharmacol . 2001 Feb; 132(4) : 843-50 ; Chang MC, Lin HK, Peng HC, Huang TF. Antithrombotic effect of crotal in, a platelet membrane glycoprotein lb antagonist from venom of Crotalus atrox. Blood. 1998 Mar 1 ; 91 (5 ) : 1582-9; Kawasaki T, Taniuchi Y, Hisamichi N, Fujimura Y, Suzuki M, Titani K, Sakai Y, Kaku S, Sat oh N, Takenaka T, et al . Tokaracetin, a new platelet antagonist that binds to platelet glycoprotein ib and inhibits von Wi llebrand factor-dependent shear-induced platelet aggregation. Biochem J. 1995 Jun 15 ; 308 (Pt 3 ) : 947-53; Peng M, Lu W, Beviglia L, Niewiarowski S, Kirby EP. Echicetin: a snake venom protein that inhibits binding of von Wil lebrand factor and alboaggregins to platelet glycoprotein Ib. Blood. 1993 May 1 ; 81 ( 9) :2321-8
また、 vWと血小板との結 "^を阻害する活性を有する蛇毒由来の多量体ぺプチド から得られる一本鎖ぺプチドも、本発明に好適に用いることができる(W095/08573、 W0 00/59926)。具体的には、 ク口夕ルス 'ホリダス .ホリダス(Crotalus horridus horridus)の蛇毒由来の一本鎖ぺプチド AS1051が挙げられる。同べプチドは、 GPIb に特異的に結合する (W095/08573) 。 このような一本鎖ペプチドは、 一般的に蛇 毒が有する血小板減少を示さない点で優れている。
上記の物質の他に、 GPIbに結合する物質としては、 GPIbに結合する抗体が挙げ られる (Cau enberghs N, A zenberg N, Vauterin S, Hoylaerts MF, Declerck PJ, Baruch D, Deckmyn H. Characterization of murine anti-glycoprotein Ib monoclonal antibodies that differentiate between shear-induced and ristocetin/botrocet in-induced glycoprotein Ib - von Wi llebrand factor interaction. Haemostasis. 2000 May- Jun ; 30 ( 3 ) : 139-48 Cauwenberghs N, Meiring M, Vauterin S, van Wyk V, Lamprecht S, Roodt JP, Novak L, Harsfalvi J, Deckmyn H, Kotze HF . Antithrombotic effect of platelet glycoprotein Ib - blocking monoclonal antibody Fab fragments in nonhuman primates .
Arterioscler Thromb Vase Biol . 2000 May; 20(5 ) : 1347-53) 。 本発明においては、 このような抗 GPIb抗体のうち、 GPIbの vWFとの結合部位又は近傍に結合し、 GPIb と vWFとの結合を阻害するような抗体が用いられる。
また、 v に結合する物質としては、 vWFに結合する抗体が挙げられる。 本発明 においては、 抗 vWF抗体のうち、 vWFの GPIbとの結合部位又は近傍に結合し、 vWF と GPIbとの結合を阻害するような抗体が用いられる。
本発明に用いる抗 GPIb抗体又は抗 vWF抗体は、 GPIbと vWFとの結合を阻害する限 り、ポリク口一ナル抗体であっても、モノクロ一ナル抗体であってもよい。また、 GPIb又は vWFに結合し、 GPIbと vWFとの結合を阻害する限り、 モノクローナル抗体 に由来する誘導体であってもよい。
抗 GPIbポリクローナル抗体又は抗 vWFポリクローナル抗体は、抗体の製造に用い られるマウス、 ラヅ ト、 ゥサギ、 ャギ、 ヒヅジ等の哺乳動物を GPIb又は vWFで免疫 し、 血清から免疫グロブリン画分を分離することによって、 製造することができ る。 また、 抗 GPIbモノクローナル抗体又は抗 vWFモノクローナル抗体は、 ケ一ラー とミルスティンの方法 (Nature, 495〜492頁、 1975年) によってこれらのモノク ローナル抗体を産生するハイプリ ドーマを調製し、 得られたハイプリ ドーマの培 養上清から抗体を精製することによって、 製造することができる。
上記抗体の誘導体としては、 キメラ抗体、 ヒト化抗体又はそれらの断片が挙げ られる。 キメラ抗体は、 例えば、 ある動物の抗体の定常領域に他の動物の抗体の 可変領域が連結されたものである。 また、 ヒ ト化抗体は、 非ヒ ト抗体の相補性決 定領域 (C D R ) の遺伝子配列だけをヒト抗体遺伝子に移植したものである。 本 発明においては、 ヒトにおいて実質的に非免疫原性である点で、 ヒト化抗体が好 ましい。 ヒト化抗体は、 例えば、 マウスモノクローナル抗体の相補性決定領域を ヒ ト骨髄腫由来の抗体可変部のフレームワーク領域に部位特異的変異により移植 した重鎖及び軽鎖の遺伝子を宿主細胞で発現させることにより、 製造することが できる。ヒ ト定常領域をコードする D N A配列は、周知の手法にしたがって、種々 のヒト細胞から、 好ましくは不死化 B細胞から単離され得る (Kabat, E., et al., U. S. Department of Health and Human Services, ( 1987)、 W0 87/02671参照) 。
また、抗 GPIb抗体又は抗 vWF抗体の可変領域をコードする D N A配列は、 それらの 抗体を産生する細胞から単離され得る。また、キメラ遗伝子を発現させる宿主は、 多数の供給元、 例えばアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手し得る (Catalogue of Cell Lines and Hybridomas, Fifth edition ( 1985) Rockvil le, Maryland, U. S.A. ) 。
さらに現在では、 ヒト抗体産生マウスゃヒト抗体産生ゥシを用いた完全ヒト抗 体の作製技術が確立している。 ヒト抗体産生マウスとは、 ヒト抗体の H鎖と L鎖の 遺伝子を含むヒト染色体断片を導入したマウスのことであり、 様々な抗原に対し て種々のヒト抗体を作製することが可能となっている。 尚、 ヒト抗体産生マウス の作成法は、 文献 (Tomizuka et al ., Nature Genetics 16, 133 ( 1997) ) およ び国際公開パンフレッ ト (W097/07671号) に詳しい。 例えば、 ヒト GPIbまたはヒ ト vWFをヒト抗体産生マウスに免疫することによって、これら抗原に対するヒト抗 体を得ることが可能である。 このように作製されたヒト抗体は、 キメラ抗体およ びヒト化抗体より更に抗原性の問題が克服された医薬品として期待されており、 本発明に好適に用いられる。 · また、 抗体の断片としては、 F (ab' )2、 Fab\ Fabおよび Fvが挙げられる。 さら に、 二機能性ハイブリヅ ド抗体 (Lanzavecchia et al ., Eur. J. Immunol . 17, 105
( 1987) )、単一鎖(Huston et al . , Proc . Natl . Acad. Sci . U. S. A. , 85 , 5879-5883
(1988) および Bird et al ., Science 242, 423-426 ( 1988) ) 等の技術も、 本発 明に適用することができる。
抗 vWF抗体としては、 vWFの GPIb結合部位又はその近傍にェピトープを有するモ ノクロ一ナル抗体が好ましい。 そのような抗 vWF抗体として具体的には、 vWFの A 1 ドメインにェピトープを有するモノクローナル抗体が挙げられる。 GPIb結合部 位又はその近傍にェピトープを有する抗 vW抗体として、 より具体的には、ハイブ リ ドーマ AJvW- 1、 AJvW- 2、 AJvW- 3および AJvW- 4が産生するモノクローナル抗体が 好適に挙げられる (W096/17078) 。 これらのハイプリ ドーマは、 平成 6年 8月 2 4曰に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人産業技術 総合研究所 特許生物寄託センター、 〒305- 8566 日本国茨城県つくば巿東 1丁目
1番地 1 中央第 6 ) にそれぞれ順に FERM P- 14486、 FERM P-14487, FERM P-14488 及び FERM P- 14489の受託番号で寄託され、 平成 7年 9月 2 9日にブダぺスト条約 に基づく国際寄託に移管されて、 それぞれ順に FERM BP- 5247、 FERM BP- 5248、 FERM BP - 5249、 FE BP- 5250の受託番号で寄託されている。 尚、 AJvW- 2が産生するモノ クローナル抗体は、 文献 (Br J Pharmacol 第 122巻、 第 165頁、 1997年) (Thromb Haemost, 第 79巻、 第 202頁、 1998年) 及び特許 (W096/17078) に詳しい。
上記抗体のうち、 AJvW- 2及び AJvW- 4が産生するモノクローナル抗体は、 下記性 質を有する。
(a) ヒト ' フォンビルブランド因子に対して反応性を有する。
(b) ヒト血小板の RIPA (リストセチン惹起血小板凝集反応) 、 BIPA (ボトロセチ ン惹起血小板凝集反応) 、 及び SIPA (高ずり応力により惹起される血小板凝集反 応) を阻害する。
(c) モルモヅ ト血小板の RIPA (リストセチン惹起血小板凝集反応)及び B IPA (ボ トロセチン惹起血小板凝集反応) を阻害する。
(d) モルモッ ト生体内で強い抗血栓作用を示すが、 出血は引き起こさない。 また、 AJvW- 1及び A JvW-3が産生するモノクローナル抗体は、下記性質を有する。 (ィ) ヒト · フォンビルブランド因子に対して反応特異性を有する。
(口) ヒト血小板の RIPA (リストセチン惹起血小板凝集反応) 、 BIPA (ボトロセチ ン惹起血小板凝集反応) 、 及び SIPA (高ずり応力により惹起される血小板凝集反 応) を阻害する。
(ハ)ラッ ト、モルモッ ト、及びゥサギのフォンビルブランド因子とは反応しない。 AJvW- 2が産生するモノクローナル抗体が vWFの A 1 ドメイン上にェピトープを 有することは、 当該抗体の vWFへの結合を A 1 ドメインフラグメントである VCLが 競合阻害すること、さらには還元アルキル化しループ構造をなく した VCLでは競合 阻害し得ないことから明らかにされている (Yamamoto H, Vreys I, Stassen JM, Yoshimoto R, Vermylen J, Hoylaerts MF. Antagonism of vWF inhibits both injury induced arterial and venous thrombosis in the hamster. Thromb Haemost. 1998; 79 : 202-210) 。 また、 W096/17078に記載されているように、 AJvW-2
が産生するモノクローナル抗体の vWFへの結合を、 AJvW- AJvW- 3、 AJvW-4が産生 するモノクローナル抗体がそれぞれ競合阻害することが明らかにされている。 し たがって、 から、 これら 3つの抗体についても、 vWFへの結合部位は、 A 1 ドメイ ン上の A JvW- 2の結合部位の近傍にあるものと考えられる。
本発明において最も好ましい抗体は、 AJvW- 2が産生するモノクローナル抗体、 又はそのヒ ト化抗体である。 同ヒ ト化抗体は及びその製造方法は、 W0 00/10601 号国際公開パンフレッ トに詳細に開示されている。 後記実施例では、 同国際公開 パンフレッ トの実施例に記載の方法により得られたヒト化抗体 (AJW200と呼ぶ) を用いた。
本発明の炎症性疾患治療用薬剤は、上記のような GP Ibと vWFとの結合を阻害する 作用を有する物質を有効成分として含有する。 本発明の炎症性疾患治療用薬剤の 剤型としては、 注射剤、 舌下剤、 経皮パップ剤、 錠剤、 カプセル剤、 細粒剤、 シ ロップ剤、 座薬、 軟膏剤、 点眼剤等が挙げられる。
本発明の薬剤中の GP Ibと vWFとの結合を阻害する作用を有する物質の含量は、好 ましくは当該薬剤 100重量部中 0.01〜100重量部である。 前記物質は、 1種を単独 で用いてもよく、 任意の 2種以上の混合物として用いてもよい。
また、 本発明の薬剤は、 剤型に応じて、 製剤上許容される賦形剤や増量剤、 例 えばデキス トリン、 乳糖、 バレイショデンプン、 炭酸カルシウムまたはアルギン 酸ナトリウム等を配剤してもよい。 本発明の薬剤の形態は液状、 粉体状、 カプセ ル状、 顆粒状のいずれでも構わない。 注射剤の場合には、 溶媒として注射用蒸留 水、 生理食塩水、 リン酸緩衝液、 リンゲル液等が使用され、 これに分散剤を添加 してもよい。また、 GP Ibと vWFとの結合を阻害する作用を有する物質以外の抗血栓 成分を併用してもよい。
本発明の薬剤が適応される患者は、 炎症性疾患の患者である。 緩解誘導または 緩解維持の目的で本発明の薬剤を投与する。 投与経路としては、 経口投与、 静脈 内投与、 舌下吸収、 経皮吸収、 経腸吸収、 点眼等が挙げられる。 抗体であれば、 静脈内への単回投与で十分有効な可能性もあるが、 抗原性の問題がない限りにお いて、 数回投与してもよい。 また、 本発明の薬剤の投与量は、 治療効果を奏し得
る限り特に制限は無いが、通常成人あたり 0.1〃g/kg〜: LOOO mg/kgの範囲で投与す ればよい。
本発明において、 炎症性疾患として、 炎症性腸疾患、 巨細胞性動脈炎、 慢性関 節リウマチ、 全身性エリテマトーデス、 高安病、 バージャ一病、 古典的結節性多 発性動脈炎、 川崎病、 顕微鏡的多発性動脈炎、 ウェジナー肉芽腫症、 チヤ一ダ - ストラウス症候群、 へノヅホ ' シェ一ンライン紫斑病、 原発性クリオグロプリン 血症性血管炎、 皮膚白血球破砕性血管炎等が挙げられる。 本発明は、 これらの疾 患の中で、 特に炎症性腸疾患に対して好適に適用され得る。 炎症性腸疾患は、 広 義には虚血性大腸炎 ·小腸炎なども含む腸管の炎症性疾患すベてを指すが、 狭義 には潰瘍性大腸炎とクローン病を指す。 図面の簡単な説明
図 1はラッ トに AJW200を単回投与したときの、 高ずり応力惹起血小板凝集に対 する抑制効果を示したものである。
図 2はラッ ト炎症性腸疾患モデルにおいて、 DNBSを注入して 24時間後から 5日間 連日投与した AJW200の結腸重量比に対する影響を示したものである。
図 3はラッ ト炎症性腸疾患モデルにおいて、 DNBSを注入して 24時間後から 5日間 連日投与した AJW200の病変スコアに対する影響を示したものである。
図 4はラット炎症性腸疾患モデルにおいて、 DNBS注入直前に投与した AJW200の MP0活性に対する影響を示したものである。
図 5はラッ ト炎症性腸疾患モデルの病態コントロール群において、 DNBSを注入 して 6曰後の MP0活性と病変スコアとの相関を示したものである。 発明を実施するための最良の形態 以下実施例を掲記し、 本発明をさらに具体的に説明する。 もっとも、 本発明は 下記実施例に限定されるものではない。
< 1 >AJW200のラッ トにおける血小板凝集抑制作用
血小板 GPIbと血中 vWFとの結合が関与することが知られている、高ずり応力惹起 血小板凝集に対する AJW200の抑制効果を検討した。雄性 SDラッ トに生理食塩水(コ ントロール) または AJW200 ( 0. 1、 0. 3 mg/kg) を尾静脈内に単回投与し、 5分、 24 時間および 48時間後、 エーテル麻酔下に腹部大動脈より採血した (クェン酸の最 終濃度 0. 38%。各群、各採血ボイントにっき n=3)。採血した血液を Sysmex E- 2000
(シスヌクス) にて血液学的パラメ一夕を測定した。 次に遠心操作により、 多血 小板血漿および乏血小板血漿を採取し、 多血小板血漿中の血小板数を測定し、 500, 000個 こ調製した。 細胞機能測定機 (東レ) を用いて、 高ずり応力
( 108dyne/cm2 ) を 6分間負荷し、 各個体毎の血小板凝集率を測定した。 また、 全 自動血液凝固時間測定装置 CA- 4000 (シスヌクス) にて血液凝固パラメ一夕 (PT
(プロ トロンビン時間) および APTT (活性化部分トロンボプラスチン時間) ) を 測定した。さらに、抗 vWF抗体(DAK0社製ゥサギポリクロ一ナル抗体 A0082と P0226) を用いたサンドィツチ ELI SA法により血漿中 vWFレベルを測定した。結果はすべて、 平均値士 S . E . Mで表示した。統計解析は One-factorial AN0VAにより行い、 post-hoc として Dunnett testを行った。
結果を図 1に示す。 図中 **は pく 0. 01を示す。 ラッ 卜に 0. 3 mg/kgの AJW200を単回 投与した場合、 高ずり応力惹起血小板凝集に対する有意な抑制効果は 24時間以上 持続し、 48時間後に消失した。 また、 AJW200の単回投与によって、 血液学的パラ メ一夕、 凝固系パラメ一夕の変動は認められなかった。 さらに、 抗原抗体反応に よる血漿中からの vWFの消失も認められなかった。
< 2 >ラッ ト炎症性腸疾患モデルにおける AJW200の薬効評価
雄性 Wistarラット(180 ± 20 g)を 24時間絶食後、力ニューレを用いて結腸内に、 0. 5 mLの 30%エタノールに溶解した 30 mgの DNBS ( 2, 4-dinitrobenzene sulfonic ac id) を注入し、 さらに空気を 2 mL注入し、 炎症性腸疾患モデルを作製した。 DNBS 注入 24時間後から、 0. 3 mg/kgの AJW200を 1日 1回、 5日間、 尾静脈より単回投与し た。 ポジティブコントロールとして、 既知の炎症性腸疾患治療薬であるスルファ サラジン (300 mg/kg) を DNBS注入 1日前から、 1日 1回で 7日間、 経口投与した。 コ ントロール群には AJW200の溶媒である PBSを同様に投与した。また、炎症性腸疾患
を誘導していない正常ラヅ トを正常コントロール群とした。群構成を以下に示す。
1. 正常コン トロール群 (n二 5)
2. 病態コン トロール群 (n=5)
3. スルフアサラジン投与群 (n=5)
4. AJW200投与群 (n二 5)
最後の投与から 24時間後に剖検および採血を行った。 結腸を摘出後、 重量を測 定し、 各個体ごとに体重に対する結腸重量比を算出した。 血液学的パラメ一夕も 測定した。 また、 最終日に下痢の有無、 結腸と他臓器との癒着の有無および潰瘍 の有無を合わせて病変スコア付けを行った(有; + 1、無; + 0、最大スコア 3 )。
さらに、 このとき得られた血漿サンプルを用いて、 ELISA法にて血漿中 vWFレべ ル、 血漿中 AJW200濃度および抗 AJW200抗体の測定を行った。 結果はすべて、 平均 値士 S.E.Mで表示した。
結果を図 2、 3に示す。 DNBS誘発ラッ ト炎症性腸疾患モデルにおいて、 DNBS注 入から 6日後の結腸重量比は、正常コントロール群が 0.278±0.014%であったのに 対し、病態コントロール群では約 3倍の 0.828±0.075%であった。 これに対しスル フアサラジンの前投与群では 0.513±0.042%であり、 AJW200投与群では 0.681士 0.058%と抑制傾向が認められた (図 2 ) 。 病変スコアでは、 正常コントロール群 が 0 (5例全例でスコア 0) に対し、 病態コントロール群では 2.0±0.4 (スコア 0の 個体なし) であった。 これに対しスルフアサラジンの前投与群では 0.4±0.2 (ス コア 0が 3例) 、 AJW200投与群では 1.0±0.4 (スコア 0が 2例) と抑制傾向が認めら れた (図 3 ) 。
病態コントロールに比較して、 スルフアサラジンおよび AJW200の反復投与によ る血液学的パラメ一夕に対する影響は認められなかった。 また、 実験最終日にお いて血漿中 vWFレベルは正常コントロールに比べ病態コントロールで 2〜3倍に上 昇したが、 スルフアサラジンおよび AJW200の反復投与による影響は認められなか つた。さらに、 AJW200投与群において、血漿中 AJW200濃度の個体差はなく、抗 AJW200 抗体も検出されなかった。
< 3 >ラッ ト炎症性腸疾患モデルにおける結腸 MP0活性とそれに対する AJW200の
薬効評価
雄性 Sprague- Dawleyラッ ト (330± 30 g) を 27時間絶食後、 力ニューレを用いて 結腸内に、 0.6 mLの 30%エタノールに溶解した 36 mgの DNBS (2, 4-dinitrobenzene sulfonic acid) を注入し、 さらに空気を 2 mL注入し、 炎症性腸疾患モデルを作製 した。 DNBS注入直前に、 0.3および l,0mg/kgの AJW200を尾静脈より単回投与した。 コントロール群には AJW200の溶媒である PBSを同様に投与した。群構成を以下に示 す。
1. 正常コントロール群 (n二 5)
2. 病態コントロール群 (n=5)
3. 0.3 g/kg AJW200投与群 (n=5)
4. 1.0 mg/kg AJW200投与群 (n=5)
DNBS注入 6日後に剖検および採血を行った。結腸を摘出後、 写真撮影を行い、 下 行結腸を分離して重量を測定し、 -80°Cで凍結保存した。 また、 Wal laceらの方法 で (Gastroenterology 第 102巻、 第 18頁、 1992年) 、 下痢の有無、 結腸と他臓器 との癒着の程度、 潰瘍の程度および結腸壁厚を合わせて病変スコア付けを行った (表 1 ) 。 表 1. ラッ ト炎症性腸疾患モデルにおける腸管病変スコア付けの基準
さ ら に 、 こ の と き 得 ら れ た 下 行結腸 サ ン プル を 0.5 % ΗΤΑΒ
(hexadecyltrimethylammonium bromide )溶液中でホモゲナイズし、 o -dianiside hydrochlorideを基質として MPO活性をを測定した。結果はすべて、平均値士 S. E.M で表示した。
結果を図 4、 5に示す。 DNBS誘発ラッ ト炎症性腸疾患モデルにおいて、 DNBS注 入から 6日後の MP0活性は、正常コントロール群が 34.6± 5.42 (mOD/min/mg)であつ たのに対し、病態コントロール群では約 26倍の 884 ± 151 ( mOD/min/mg )であった(図 4 )。 このとき、 病態コントロール群について検討すると、 MP0活性と病変スコア は相関係数が 0.858であり、相関が示唆された(図 5 )。これに対し 0.3mg/kg AJW200 投与群では 457 ± 131(mOD/min/mg)であり、 1.0mg/kg AJW200投与群では 498士 117(mOD/min/mg)と抑制傾向が認められた (図 4 ) 。
以上の実験結果より、 vWFと GP Ibとの結合を阻害する AJW200は炎症性腸疾患に対 する治療効果を有し、 また炎症起因因子である MP0を抑制することから、抗炎症物 質として有用であることが示された。 産業上の利用の可能性
モノクローナル抗体 AJW200で代表される、 GPIbと vWFとの結合を阻害する作用を 有する物質は、 炎症性疾患治療用薬剤の有効成分として用いることができる。