JP2005298306A - 酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよび透明導電性薄膜 - Google Patents

酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよび透明導電性薄膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い表面平滑性を有するとともに比抵抗の小さい透明導電性薄膜を安定的に形成することを可能とする酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよびこれを用いて得られる透明導電性薄膜を提供する。
【解決手段】 タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる酸化インジウム粉末を、炭素容器中に給粉し、焼結温度:750℃〜900℃、焼結圧力:9.8MPa以上の条件で、かつ、Ar圧が0.05MPa以上、大気圧以下であるAr雰囲気中でホットプレスして酸化物焼結体を製造する。得られた酸化物焼結体をスパッタリングターゲットに用いて、スパッタリング法を行うことで、表面が平滑で、かつ、比抵抗の小さい透明導電性薄膜を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、表示デバイスの透明電極等に用いられる比抵抗の小さい透明導電性薄膜、該透明導電性薄膜をスパッタリング法で製造する際に原料として用いられる酸化物焼結体、および該酸化物焼結体を用いたスパッタリングターゲットに関する。
透明導電性薄膜は、高い導電性(例えば、1×10-3Ωcm以下の比抵抗)と可視光領域での高い透過率とを有することから、太陽電池、液晶表示素子、およびその他の各種受光素子の透明電極等に利用されている。さらに、自動車の窓ガラスおよび建築物の窓ガラス等に用いられる熱線反射膜、各種の帯電防止膜並びに冷凍ショーケース等の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
透明導電性薄膜が使用される表示素子として、近年、液晶ディスプレイ(LCD)およびプラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイが広く普及しているが、次世代のフラットパネルディスプレイとしてエレクトロルミネッセンス(EL)素子が注目されている。
EL素子には、発光材料として無機化合物を用いる無機EL素子と、発光材料として有機化合物を用いる有機EL素子とがある。有機EL素子は、無機EL素子と比べて、駆動電圧を大幅に低くすることができるので、小型化が容易であるという特徴がある。有機EL素子の構造は、透明絶縁性基板/陽極/発光層/陰極の積層構造を基本としている。そして、ガラス板等の透明絶縁性基板上に形成された透明導電性薄膜を陽極として使用する構成(ボトムエミッション型)が、通常、採用されている。しかし、TFT(thin-film transistor)基板を使用する場合には、ボトムエミッション型では、TFT回路側から光を取り出すことになるため、TFT回路の面積だけ発光面積の割合が小さくなってしまう。このため、TFT回路基板と反対側から光を取り出すことで取り出す光量を多くすべく、陰極を透明導電性薄膜とするトップエミッション型も提案されている。
透明導電性薄膜には、アンチモンおよびフッ素等をドーパントとして含む酸化スズ(SnO2)、アルミニウムおよびガリウム等をドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)、並びにスズをドーパントとして含む酸化インジウム(In23)等が広範に利用されている。このうち、スズをドーパントとして含む酸化インジウム膜(In23−Sn系膜)は、ITO(Indium Tin Oxide)膜と称され、比抵抗の小さい透明導電性薄膜が容易に得られることから、広く用いられている。
これらの透明導電性薄膜を製造する方法としては、スパッタリング法がよく用いられている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を用いて成膜する場合および精密な膜厚制御を必要とする場合等に有効な方法であり、かつ、操作が非常に簡便であるため、工業的に広範に利用されている。
スパッタリング法では、目的とする膜の成分を有する原料をターゲットとして用いることが一般的である。この方法では、一般に、真空装置を用い、約10Pa以下のガス圧のもとで、基板を陽極とし、スパッタリングターゲットを陰極として、これらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させ、これによって弾き飛ばされるターゲット成分の粒子を基板上に堆積させて膜を形成する。
スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いる高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いる直流スパッタリング法がある。高周波スパッタリング法では、絶縁性ターゲットでも成膜することが可能であるのに対して、直流スパッタリング法では、導電性ターゲットを用いる必要がある。また、スパッタリングターゲットの裏側にマグネットを配置して、プラズマをスパッタリングターゲットの直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの発生効率を上げて成膜するマグネトロンスパッタリング法もある。直流スパッタリング法および直流マグネトロンスパッタリング法は、導電性のスパッタリングターゲットを使用する必要があるが、一般に、高周波スパッタリング法に比べて成膜速度が速く、電源設備が安価で、成膜操作が簡単である等の理由で、工業的に広く利用されている。
しかし、透明導電性薄膜として用いるITO膜は、比抵抗が小さいものの、結晶化温度が150℃前後と低く、基板を加熱しない場合でも膜が結晶化するため、膜の表面には凹凸が生じる。そのため、ボトムエミッション型の有機EL素子にITO膜を用いた場合、表面の凹凸により素子に黒点が発生し、輝度の低下およびばらつき等の不具合の一因となっている。そのため、透明導電性薄膜としてITO膜を用いる時には、透明絶縁性基板に陽極となるITO膜を成膜後、研磨等により表面の凹凸をなくし、表面を平滑にしてから使用する。また、トップエミッション型の有機EL素子にITO膜を用いた場合、外界から侵入した水分および酸素等が結晶粒界を介して拡散し、有機層にダメージを与えるので、素子寿命が短くなるおそれがある。
一方、ZnO系、SnO2系ターゲットを用いて成膜した透明導電性薄膜では、比抵抗がITO膜ほど小さくないため、電極としては適さない。
ボトムエミッション型の有機EL素子であるか、トップエミッション型の有機EL素子であるかに関わらず、透明電極に用いられる材料には、非晶質(アモルファス)構造で、凹凸が生じず、かつ、比抵抗が小さいことが要求される。
この要求に対応して、酸化インジウム系透明導電性薄膜に関しては、Sn以外の添加物を含むIn23系透明導電性薄膜が検討されており、ITOにはない特徴を有する材料がいくつか見出されている。
例えば、特許文献1(特開昭61−136954号公報)には、酸化インジウム系透明導電性薄膜の作製原料として、酸化ケイ素および/または酸化ゲルマニウムを含有している酸化インジウム系焼結体が記載されている。また、特許文献2(特開昭62−202415号公報)には、酸化ケイ素および/または酸化ゲルマニウムを含有している酸化インジウム系焼結体を用い、高周波スパッタリング法と電子ビーム蒸着法で、Si添加酸化インジウム膜等を成膜する技術が記載されている。
前記酸化インジウム系焼結体をスパッタリングターゲットとして用いて成膜すれば、膜欠陥が解消されたSi添加酸化インジウム膜等が得られる。しかし、前記酸化インジウム系焼結体は、酸化ケイ素および/または酸化ゲルマニウムを含有していることから、該酸化インジウム系焼結体をスパッタリングターゲットとして使用することは、導電性物質の母体中に高抵抗物質が含まれたスパッタリングターゲットにより直流スパッタリング法を行うことを意味する。このため、アーキング等が発生して、安定して成膜することができないという問題がある。
また、直流スパッタリング法において、直流電力を多く投入すれば、高抵抗物質の帯電が起きやすく、成膜中にアーキングの発生する頻度が増す。このため、前記酸化インジウム系焼結体をスパッタリングターゲットとして使用して直流スパッタリング法により成膜を行う場合、高電力を投入しても高成膜速度を得ることが難しいという問題もある。
さらに、得られる透明導電性薄膜の結晶構造が明記されていないことから、前記酸化インジウム系焼結体をスパッタリングターゲットとして使用して、純アルゴン(Ar)ガス中で高周波スパッタリング法により成膜しても、非晶質で表面が平滑な膜を得ることができるかどうかは不明である。
また、特許文献3(特許第3224396号公報)には、LCD等の各種表示デバイスへの透明導電性薄膜として有用なZn添加酸化インジウム膜が記載されている。この膜は、非晶質構造をとりやすく、成膜時の基板温度が室温の場合だけでなく、例えば、200℃に加熱しても結晶化しない。従って、表面平滑性に優れた透明導電性薄膜を安定に作製しやすいという利点も持っている。
他方、表示装置の高性能化への要求は年々高まっており、LCDや有機EL素子用の透明電極においては、表面が平滑で、かつ、比抵抗の小さい透明導電性薄膜の必要性が高まってきている。特に、有機EL素子に用いる透明電極においては、その上に有機化合物の極めて薄い膜が形成されるため、透明導電性薄膜には高い表面平滑性が要求されている。また、工業的には、こうした特性を有する透明導電性薄膜を直流スパッタリング法により安定的に形成できるようにすることが特に求められている。
特開昭61−136954号公報
特開昭62−202415号公報
特許第3224396号公報
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、高い表面平滑性を有するとともに比抵抗の小さい透明導電性薄膜を提供することを目的とする。また、かかる透明導電性薄膜を安定的に作製することを可能とする酸化物焼結体およびスパッタリングターゲット、さらには、前記酸化物焼結体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明に係る酸化物焼結体は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなり、焼結体密度が6.5/cm3以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る酸化物焼結体は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる酸化インジウム粉末を、炭素容器中に給粉し、焼結温度:750℃〜900℃、焼結圧力:9.8MPa以上の条件で、かつ、アルゴン圧が0.05MPa以上、大気圧以下であるアルゴン雰囲気中でホットプレスすることにより得られる。
本発明に係るスパッタリングターゲットは、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなり、焼結体密度が6.5/cm3以上であることを特徴とする。
本発明に係る透明導電性薄膜は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなることを特徴とする。
なお、前記酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして使用することにより成膜された前記透明導電性薄膜の組成は、前記酸化物焼結体およびスパッタリングターゲットの組成と実質的に同じである。
前記透明導電性薄膜において、その比抵抗は6.0×10-4Ωcm以下で、非晶質であり、さらには、その平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であることが望ましい。
本発明に係る酸化物焼結体の製造方法は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる酸化インジウム粉末を、炭素容器中に給粉し、焼結温度:750℃〜900℃、焼結圧力:9.8MPa以上の条件で、かつ、アルゴン圧が0.05MPa以上、大気圧以下であるアルゴン雰囲気中でホットプレスすることを特徴とする。
本発明に係る酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いることにより、スパッタリングにおける成膜速度が速くなり、異常放電回数も少なくなる。その結果、表面が平滑で、かつ、比抵抗の小さい透明導電性薄膜を、安定的に作製することができる。
本発明に係る透明導電性薄膜は、非晶質であり、表面が平滑で、かつ、比抵抗が小さいことから、有機EL素子および各種発光デバイスの発光素子等の電極材料として好適である。
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意、研究を重ね、スパッタリング法によって種々の組成の透明導電性薄膜を形成し、得られた透明導電性薄膜の結晶構造、電気特性および光学特性を検討した。そして、酸化インジウムを主成分とし、タングステン(W)およびチタン(Ti)を特定量含有するスパッタリングターゲットを用いれば、得られる透明導電性薄膜は、表面平滑性に優れ、かつ、比抵抗が小さくなることを見出した。
1.酸化物焼結体
本発明の透明導電性薄膜用酸化物焼結体は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる。焼結体の結晶粒径は10μm以下が好ましい。結晶粒径が大きくなると焼結体強度が低くなる。焼結体の組織は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
添加されるタングステンは、透明導電性薄膜の導電性の向上と結晶化温度の上昇に寄与する。添加されるチタンは導電性の向上に寄与する。
タングステン量が0.3質量%未満であるか、チタン量が0.05質量%未満であれば、スパッタリング成膜に際し、比抵抗が大きくなるのと同時に、結晶化温度が低くなり、薄膜の表面平滑性が損なわれる。すなわち、室温で成膜しても膜が結晶化して、表面に凹凸が生じる。
一方、タングステン量が3質量%を超えるか、チタン量が2質量%を超えると、結晶化温度は高くなり、表面平滑性の優れた膜を得ることができる。しかし、比抵抗が大きくなるので、電子部品として用いるには適さない。
酸化物焼結体の焼結体密度は、6.5g/cm3以上が好ましい。6.5g/cm3未満では、該酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして用いた場合に、長時間のスパッタリングにより、エロージョン近傍にノジュール(ターゲット表面の黒色突起物)が発生して、成膜中にアーキングを生じやすくなる。また、低密度であるため成膜速度も遅くなる。
2.酸化物焼結体およびスパッタリングターゲットの製造
前記酸化物焼結体を製造するためには、平均粒径が0.1〜5μmの酸化インジウム粉末、および300μm以下に粉砕したタングステン粉末とチタン粉末を原料として用い、これらを所定の割合で調合し、乾式ボールミル、Vブレンダ等で均一に混合する。
タングステンおよびチタンを酸化物で添加してもよいが、その際には、凝集による低密度化を避けるため、いずれの粉末も平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましい。
前記原料粉末を炭素容器に給粉して、焼結により酸化物焼結体を得る。一般的に、常圧における焼結が採用されるが、本発明では、ホットプレス法で焼結を行う。
タングステンは添加量により酸化インジウム結晶相に固溶するか、WO3になると、推測される。チタンも同様に、酸化インジウム結晶相に固溶するか、TiO2になると、推測される。
ホットプレス法では、炭素容器を用いることで、還元によって酸化物焼結体に生じる酸素欠損量が多くなる。即ち、炭素雰囲気において焼結することで酸化物中の酸素が一部還元される。このことにより、焼結体中にキャリアが発生し、導電性が高くなる。ホットプレス法で作製した焼結体においては、還元による酸素欠損の発生で、拡散が促進されてWやTiは固溶しやすくなる。
ホットプレス法で製造した酸化物焼結体の酸素欠損量は多いため、常圧焼結法で製造した酸化物焼結体よりも比抵抗が小さくなり、スパッタリング時の投入電力を下げることが可能となる。また、成膜速度が速くなり、スパッタリング工程の短縮につながる。
一方、常圧焼結法で製造した焼結体は、酸素欠損量が少ない分、ホットプレス法で製造した焼結体よりも比抵抗が大きくなり、成膜速度は遅くなると考えられる。
焼結温度は、750〜900℃が好ましい。750℃より低いと、焼結体密度が6.5g/cm3未満となり、焼結体の比抵抗が大きくなるばかりでなく、スパッタリングにおける成膜速度が遅くなる。さらに、異常放電など、スパッタリング時に不具合が生じる。900℃を超えると、In23の還元が進み、焼結体中に金属インジウムが局所的に観察され均一な焼結体が得られない。
焼結圧力は、9.8MPa以上が好ましい。9.8MPaより低い焼結圧力で焼結しても、焼結体密度の高い酸化物焼結体は得られない。
ホットプレス法の雰囲気は、アルゴン(Ar)雰囲気で行うのが好ましい。真空中で行うと、In23の還元が過度に進行するためか、焼結体密度は上がらない。雰囲気のアルゴン圧は、0.05MPa以上、大気圧以下が好ましい。
得られた酸化物焼結体のスパッタリングする面をカップ砥石などで研磨し、厚さ3〜10mm程度に加工し、In系合金、Sn系合金などの冷却用金属板(バッキングプレート)に貼り合わせてスパッタリングターゲットとする。
3.透明導電性薄膜の成膜
本発明のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法またはイオンプレーティング法により、比抵抗が6.0×10-4Ωcm以下で、非晶質であり、かつ、平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下である透明導電性薄膜を作製することができる。
前記透明導電性薄膜の製造方法は、本発明のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング時のターゲット基板間距離を30mm〜150mmとし、スパッタリングガス圧を0.3Pa〜1.0Paとして、成膜することが好ましい。
ターゲット基板間距離が30mmよりも短くなると、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが高くなり、膜応力の高い透明導電性薄膜しか得られず、ターゲット基板間距離が150mmよりも長くなると、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎて、基板上で拡散による緻密化が起きず、密度の低い透明導電性薄膜しか得られず、好ましくない。
また、スパッタリングガス圧が0.3Paより低くなると、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが高くなり、膜応力の高い透明導電性薄膜しか得られず、スパッタリングガス圧が1.0Paよりも高くなると、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎて、基板上で拡散による緻密化が起きず、密度の低い透明導電性薄膜しか得られず、好ましくない。
4.透明導電性薄膜
本発明の透明導電性薄膜は、タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%を含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる。該透明導電性薄膜は、6.0×10-4Ωcm以下と比抵抗が小さい。
また、本発明の透明導電性薄膜は、結晶化温度が200℃以上であり、200℃未満の加熱に対しても、非晶質性および表面平滑性を有し、比抵抗の性質が悪化しないという特徴を有する。よって、プラズマから基板が熱を受けやすいスパッタリング法でも、安定に非晶質膜を製造しやすい。また、膜付け後の製造プロセスで、200℃未満の加熱工程が含まれても、特性が安定しているという特徴を有する。
よって、本発明の透明導電性薄膜は、有機EL素子だけでなく、無機EL素子や、LCD、電子ペーパーおよびタッチパネル用の透明電極としての利用に好適である。特に、本発明の透明導電性薄膜を用いた有機EL素子は、発光強度が強く、ダークスポットも発生しにくいため、高品位なディスプレイを製造することが可能となる。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
原料として、平均粒径0.1μm〜5μmのIn23粉(純度99.99質量%)、300μm以下に粉砕した金属タングステン(純度99.99質量%)、300μm以下に粉砕した金属チタン(純度99.99質量%)を用いた。
これらの原料を、乾式ボールミルで均一に混合し、炭素容器中に給粉して、表1に示した各条件で、雰囲気をArとして、ホットプレス法により焼結し、得られた酸化物焼結体の密度をアルキメデス法により測定した。その測定結果を表1に示す。
Figure 2005298306
焼結温度が750〜900℃の範囲で、焼結圧力が14.7MPa、Ar圧が0.09MPaである実施例1〜3の場合は、得られた焼結体の焼結体密度はいずれも6.5g/cm3以上となり、良好な焼結体が得られた。一方、焼結圧力およびAr圧を実施例1〜3と同様とし、焼結温度を700℃とした比較例1では焼結体密度は5.9g/cm3となり、焼結体密度は6.5g/cm3を下回った。Ar圧を実施例1〜3と同様とし、焼結温度を950℃、焼結圧力を4.9MPaとした比較例2では、焼結体密度は6.1g/cm3となり、焼結体密度は6.5g/cm3を下回った。また、比較例2では、焼結体中に金属インジウムが局所的に観察され均一な焼結体が得られなかった。In23の還元が進行したためと推測される。焼結温度および焼結圧力を実施例2と同様とし、Ar圧を0.03MPaとした比較例3では、焼結体密度は5.7g/cm3となり、焼結体密度は6.5g/cm3を下回った。
なお、組成および焼結条件を本発明の範囲内において変えても、得られる焼結体の焼結体密度は同様に6.5/cm3以上であった。
(実施例4、5、比較例4、5)
実施例1、2、比較例1で得られた酸化物焼結体、および常圧法で作製した酸化物焼結体のそれぞれのスパッタリング面をカップ砥石で研磨し、直径152.4mm、厚さ6mmの大きさに加工し、In系合金のバッキングプレートに貼り合わせてスパッタリングターゲットとした。
これらのスパッタリングターゲットを用いて、図1に示した装置で、直流マグネトロンスパッタリング法で成膜を行い、成膜速度および異常放電回数の測定を行った。
直流マグネトロンスパッタリング装置の非磁性体ターゲット用カソードにスパッタリングターゲット(2)を取り付け、スパッタリングターゲット(2)の対向位置に、ガラス基板(4)を設置した。さらに、ガラス基板(4)の上で、スパッタリングターゲット(2)の中心直上部の一部を、マジックインキでマークした。そして、スパッタリングターゲットと基板との間の距離を60mmとし、純ArガスにO2ガスを1%だけ混合させて導入し、ガス圧を0.5Paとし、直流160Wで直流プラズマを発生させ、ガラス基板(4)をスパッタリングターゲット(2)に対して静止対向のまま、基板加熱せずに、10分間、スパッタリングを実施した。
成膜後、マークしたマジックインキと、その上に堆積した膜を、アセトンで取り除き、マジックインキ除去によって生じた段差、すなわち膜厚を、表面粗さ計で測定し、膜厚/成膜時間から成膜速度を算出した。また、異常放電回数は、スパッタ開始10時間後の10分間当たりに発生する回数を測定した。その測定結果を、表2に示す。
Figure 2005298306
表2に示すように、実施例4、5のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うと、成膜速度が速く、異常放電も少なかった。
一方、常圧法で作製した焼結体を用いたスパッタリングターゲットである比較例5は、用いた酸化物焼結体の焼結体密度が6.6g/cm3であるにもかかわらず、成膜速度が遅かった。この理由は常圧で焼結を行った場合には、ホットプレスのように還元雰囲気ではない焼結であるために、酸素欠損量が少なくなり、ホットプレス法での焼結体に比べ酸化物焼結体の比抵抗が大きくなったことが原因ではないかと推測される。
また、比較例4のように、ホットプレス法で作製しても、焼結体密度が6.5g/cm3よりも低くなると、異常放電回数が多くなった。
(実施例6〜8、比較例6、7)
本発明による透明導電性薄膜の特性を調べるため、種々の組成範囲にある酸化物焼結体をスパッタリングターゲットして、実施例4と同様に、約150nmの厚さの透明導電性薄膜を作製した。なお、実施例4と異なり、マジックインキによるマークはしていない。また、同様に基板加熱はしていない。
得られた膜の表面抵抗を、四端針法で測定して、比抵抗を算出した。また、得られた膜の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)で観察し、表面粗さを任意の10箇所で測定し、平均表面粒さ(Ra)を求めた。膜中の組成は、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)で測定した。さらに、得られた膜の結晶化温度を高温X線回折測定により測定した。その測定結果を表3に示す。なお、X線回折測定(XRD)を行ったところ、実施例6〜8、および比較例7の透明導電性薄膜は非晶質相のみで構成されていた。また、得られたそれぞれの膜中の組成は、成膜に使用したスパッタリングターゲットと実質的に同じであった。
比較のために、ITO膜についても同様の測定を行った。その測定結果を表3に示す。
Figure 2005298306
実施例6〜8は、請求項1に記載の組成範囲の酸化物焼結体をスパッタリングターゲットに用いて成膜した場合である。表3に示すように、ITO膜よりも小さい比抵抗が得られた。また、結晶化温度は200℃以上であり、平均表面粗さ(Ra)についても、実施例6〜8では、ITO膜と比べて小さい平均表面粗さが得られた。
比較例6は、タングステンの質量%が0.2、チタンの質量%が0.03の焼結体をスパッタリングターゲットに用いて成膜した場合である。表3に示すように、比抵抗はITO膜よりも大きく、結晶化温度が140℃であるため、X線回折測定(XRD)を行ったところ、結晶の存在が確認され、平均表面粗さもITO膜よりも大きかった。
比較例7は、タングステンの質量%が3.5、チタンの質量%が2.5の焼結体をスパッタリングターゲットに用いて成膜した場合である。表3に示すように、平均表面粗さはITO膜よりも小さいが、比抵抗はITO膜よりも大きかった
本発明の実施例で使用する直流マグネトロンスパッタリング装置の概略図である。
符号の説明
1 真空チャンバ
2 ターゲット
3 直流電源
4 ガラス基板
5 供給管
6 磁石

Claims (9)

  1. タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなり、焼結体密度が6.5/cm3以上であることを特徴とする酸化物焼結体。
  2. タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる酸化インジウム粉末を、炭素容器中に給粉し、焼結温度:750℃〜900℃、焼結圧力:9.8MPa以上の条件で、かつ、アルゴン圧が0.05MPa以上、大気圧以下であるアルゴン雰囲気中でホットプレスすることにより得られる酸化物焼結体。
  3. タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなり、焼結体密度が6.5/cm3以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  4. タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる透明導電性薄膜。
  5. 比抵抗が6.0×10-4Ωcm以下であることを特徴とする請求項4に記載の透明導電性薄膜。
  6. 非晶質であることを特徴とする請求項4または5に記載の透明導電性薄膜。
  7. 平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の透明導電性薄膜。
  8. タングステンを0.3質量%〜3質量%、チタンを0.05質量%〜2質量%含み、実質的に残部がインジウムおよび酸素からなる酸化インジウム粉末を、炭素容器中に給粉し、焼結温度:750℃〜900℃、焼結圧力:9.8MPa以上の条件で、ホットプレスすることを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。
  9. アルゴン圧が0.05MPa以上、大気圧以下であるアルゴン雰囲気中でホットプレスすることを特徴とする請求項8に記載の酸化物焼結体の製造方法。
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JP2007223849A (ja) * 2006-02-24 2007-09-06 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ガリウム系焼結体およびその製造方法
JP2015072939A (ja) * 2013-10-01 2015-04-16 長州産業株式会社 光発電素子
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CN114524664A (zh) * 2022-02-25 2022-05-24 洛阳晶联光电材料有限责任公司 一种太阳能电池用陶瓷靶材及其制备方法

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