JP2005294417A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 欠陥の少ない保護層を形成可能であり、しかも磁気特性を良好に維持することができる希土類磁石の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の希土類磁石の製造方法は、磁石素体と、その表面に形成された保護層とを備える希土類磁石を製造するための方法であって、希土類元素を含有する磁石素体に、有機モノマー含有液を塗布した後、電子線を照射することにより重合反応を生じせしめ、磁石素体の表面に高分子保護層を形成する工程を有するものである。
【選択図】 図3
【解決手段】 本発明の希土類磁石の製造方法は、磁石素体と、その表面に形成された保護層とを備える希土類磁石を製造するための方法であって、希土類元素を含有する磁石素体に、有機モノマー含有液を塗布した後、電子線を照射することにより重合反応を生じせしめ、磁石素体の表面に高分子保護層を形成する工程を有するものである。
【選択図】 図3
Description
本発明は、希土類磁石、特に、表面に保護層を備える希土類磁石の製造方法に関する。
希土類磁石は高性能の永久磁石として知られている。希土類磁石は、従来の空調機、冷蔵庫等の家庭用電化製品のみならず、産業機械、ロボット、燃料電池車、ハイブリッドカー等の駆動用モータへの応用が検討されており、これらの小型化、省エネルギー化を実現し得るものとして期待されている。このような希土類磁石のなかでも、R−Fe−B(Rは希土類元素)系の磁石は、25MGOeを超えるような高いエネルギー積を示す高性能磁石であることから注目を集めている。
しかし、このような希土類磁石は、磁石の主成分として希土類元素及び鉄を含有していることから極めて酸化されやすかった。しかも、温度に対する耐性が低いという性質を有していた。よって、これらの磁石は耐食性が低い傾向にあり、長期使用による経時的な磁気特性の低下を避けることが困難であった。
そこで、このようなR−Fe−B系の希土類磁石を用いる場合には、その耐食性を向上させることを目的として、磁石素体の表面上に保護膜を形成することが行われている。保護膜の形成方法としては、主に、化学的又は物理的気相堆積法等が実施されている。
それに対して、さらに簡便で生産性の高い方法として、磁石素体の表面を熱的に酸化して、磁石素体表面に保護層である酸化膜を形成させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法においては、磁石素体の表面が変換されて保護層を形成していることから、上述したような素体表面上に膜を形成させた場合の不都合を生じることが極めて少ない。
特許文献1の方法は非常に簡便な方法であるが、200〜1100℃という高温条件で10分〜10時間という長時間の熱処理を実施していることから、このような熱処理による磁石素体の劣化が生じ易い傾向にあった。このため、こうして得られた希土類磁石は、保護層が形成されていない状態の磁石素体に比して、磁気特性が著しく低下してしまっていた。
そこで、高温加熱を伴わない保護層形成方法として、希土類磁石の最表面に高分子薄膜を形成し、希土類磁石の表面を保護する技術が提案されている。この方法では、モノマーと重合開始剤を含む塗料を磁石素体表面に塗布し、これを100〜200℃に加熱して重合反応を生じさせ、高分子保護膜を形成することができる。
特開2002−57052号公報
しかしながら、従来の重合開始剤を形成時に用いた高分子保護膜の場合には、重合時にピンホールが形成されることが多く、希土類磁石の表面保護膜としての機能を実現することは困難であった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、欠陥の少ない保護層を形成可能であり、しかも磁気特性を良好に維持することができる希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含有する磁石素体に有機出発材料を含有する有機物層を形成する堆積工程と、前記有機物層を設けた磁石素体に電子線を照射する電子線照射工程とを有することを特徴とする。
上記本発明の希土類磁石の製造方法においては、電子線照射工程において電子線を照射することにより、素体表面に塗布された有機物層において重合反応を生じさせて前記保護層を形成する重合反応工程となる。こうした重合反応工程に於いては、有機出発材料、例えば、モノマーに対して重合開始材を添加することなく重合反応を生じさせることができる。
本発明のように重合開始剤を用いることなく重合反応を行うことが可能となるため、重合開始剤の残留に起因する保護膜の欠陥(例えば、ピンホールなど)を回避することができる。重合開始剤は、ラジカル生成等に寄与するものの他、未反応のまま残留するものも存在する。こうした残留重合開始剤は、外部からのエネルギー(熱、光等)を受けて高分子中に酸化反応を誘起し、ラジカル生成を起こさせる傾向がある。これにより、高分子中のマトリクスを解離させ、高分子膜中に欠陥を生じさせる場合がある。
電子線照射によって有機物層に架橋反応が生じるか否かは、電子線照射により生成したラジカルの性質によって決まる。すなわち、有機材料は電子ビームの照射に対して架橋反応が促進される架橋型と分解反応が促進される分解型とに大別される。架橋型の場合、電子線の照射によってラジカルが生成し、これらが相互に結合することによって重合反応が促進され、分子量が増加していく傾向にある。分解型の場合、ラジカル生成と共に主鎖が切断されて分子量が低下していく傾向にある。
本発明の有機出発材料とは、保護層を形成する高分子の原料となる材料をいい、具体的には、架橋型のモノマーを用いることが好ましい。架橋型のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、アクリル酸エステル、ブタジエン、クロロプレン、シロキサン、エステル、アミド、イミド、等を用いることができる。これらモノマーの少なくとも1種を用いることによって、電子線による架橋反応を起こさせることができる他、高分子膜表面が親水性とならないため、外部の湿度等の環境に対する耐久性を高めることができる。これらモノマーは、複数種を混合して用いても良い。
また、本発明の有機出発材料には、ラジカル重合性の不飽和基を持つオリゴマーを用いてもよい。このようなオリゴマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和アクリル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエン/ポリチオール、等を用いることができる。これらオリゴマーの少なくとも1種を用いることによって、電子線による架橋反応を起こさせることができる他、高分子膜表面が親水性とならないため、外部の湿度等の環境に対する耐久性を高めることができる。また、オリゴマーは上記の架橋型モノマーの1種類以上と混合して用いても良い。また、複数のオリゴマーを混合して用いても良い。
本発明の堆積工程は、有機物出発材料を、薄膜形成方法、例えば、蒸着法を用いて真空中で蒸発させ、磁石の表面に堆積させることが好ましい。あるいは、モノマーあるいはオリゴマーをそのまま磁石表面に塗布することができる。あるいは、適当な溶媒に分散させて塗布することができる。これらの方法を用いることによって、希土類磁石の表面に均一な膜厚で有機物層を形成することができる。
本発明の電子線照射工程は、不活性ガス雰囲気ないし真空中で行われることが好ましい。電子線は一般に線量率が極めて高いため、電子線照射中における形成途中の高分子膜に酸化反応が生じることを押さえることができる場合がある。ただし、多くのモノマー/オリゴマーでは、電子線照射により生じたラジカルと酸素との反応により、重合反応が阻害される傾向がある。電子線照射を、不活性ガス雰囲気ないし真空中で行うことにより、各種モノマー/オリゴマーの重合反応を速やかに行うことができる。
また、上記希土類元素としては、Ndを含むことが好ましい。このようにNdを含む希土類磁石は、極めて優れた磁気特性を有するものとなる。
このような、電子線照射による高分子保護層の形成は、具体的には以下のようにして実施することができる。すなわち、上記電子線が磁石素体の表面における一部領域に照射されるものである場合、磁石素体の表面における電子線の照射領域を徐々に変化させることによって高分子保護層を形成することができる。
このように、照射される電子線が磁石素体の一部領域のみへの照射が可能である場合には、この電子線を、磁石素体表面を走査するようにしてその照射領域を移動させながら、磁石素体表面の保護層を形成させるべき領域に照射する。こうすることで、磁石素体表面の所望の領域に選択的に高分子保護層を形成させることが可能となる。
また、磁石素体に照射される電子線は、短辺及び長辺を有するスリット状のものであってもよい。特に、その長辺が、磁石素体における所定の幅方向よりも大きいと好ましい。この場合、スリット状の電子線をその長辺に対して垂直方向に移動させることによって、より広い領域に電子線を照射することができ、これにより保護層の形成が更に容易となる。また、磁石素体全面に至るような平面状の電子線を用いる場合、電子線照射工程を更に短時間で行うことができ、好ましい。
そして、上述した方法により保護層を形成させる場合、その厚さは0.1〜5μmとなるように形成させることが好ましい。本発明の希土類磁石は、欠陥の少ない高分子保護層を形成されるため、表面保護膜を必要以上に厚くする必要はない。このような厚さの保護層を有する希土類磁石は、磁石素体内部のダメージが殆どなく、良好な耐久性及び磁気特性を備えるものとなる。
本発明の希土類磁石の製造方法によれば、欠陥が少ない高分子保護層を低温で形成できることから、耐久性に優れ、かつ、応力の影響のない保護膜を得ることができる。そのため、良好な磁気特性を有する耐久性の高い希土類磁石を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した希土類磁石1のII−II線に沿った断面構造を模式的に示す図である。
希土類磁石1は、磁石素体2と、この磁石素体2の表面領域に形成された保護層4とを備えており、略直方体構造を有する磁石である。磁石素体2は、希土類元素を含有するものである。ここで、希土類元素とは、長周期型周期表第3周期の元素及びランタノイドに属する元素のことをいい、このような希土類元素には、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
これらの希土類元素を含有する磁石素体2としては、上記希土類元素と遷移元素とを組み合わせて含有させた組成を有するものが好ましい。かかる組み合わせの磁石素体2としては、希土類元素として、Nd、Dy、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有していることが好ましく、これらの元素にLa、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものがより好ましい。
より具体的には、磁石素体2の構成材料としては、R−Fe−B(Rは希土類元素)系やR−Co系の構造を有するものが例示できる。前者の構造を有する材料においては、RとしてはNdが好ましく、また後者の構造を有する材料においては、RとしてはSmが好ましい。
なかでも、希土類磁石1における磁石素体2の構成材料としては、R−Fe−B系の構造を有する材料が好ましい。このような材料は実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有しており、また、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及びホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有している。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相であり、このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
R−Fe−B系の構成を有する磁石素体2においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保持力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であるとBrが小さくなり、また、90原子%を超えるとiHcが小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これによりiHcが小さくなる傾向にあり、また28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これによりBrが小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−BにおけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体2の磁気特性が小さくなる傾向にある。
また、上記構成材料におけるBの一部は、C、P、S又はCu等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、iHcの向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Ga、Cu、Hf等の元素を添加してもよい。これらの添加量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。また、その他、不可避的に混入する成分としては、O、N、C、Ca等が考えられ、これらは構成原子総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
保護層4は、上述した構成を有する磁石素体2の表面上に形成されたものである。この保護層4は、上述したモノマー/オリゴマーを磁石素体2の表面に蒸着した後、あるいは、モノマー/オリゴマーを分散した溶液を磁石素体2の表面上に塗布した後、その表面に電子線を照射して溶液中のモノマーを重合させることによって形成されたものである。すなわち、保護層4は、電子線により重合された高分子膜を含むように構成されている。
ここで、図3を参照して、希土類磁石1における磁石素体2と保護層4との界面付近の構造について説明する。図3は、希土類磁石1における磁石素体2と保護層4との界面付近の断面構造を模式的に示す図である。
図3に示すように、磁石素体2は、主相22と、ホウ素リッチ相24と、これらの間に形成された希土類リッチ相26とから構成されている。
また、磁石素体2の表面に形成された高分子からなる保護層4は、希土類磁石1の表面から略一定の厚さに形成された状態となっている。この保護層4の厚さとしては、0.1〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましく、1〜2μmが更に好ましい。
このように、好適な実施形態に係る製造方法により形成された希土類磁石1においては、保護層4が、磁石素体2における表面から一定の深さ領域にのみ選択的に形成されている。一般に、希土類磁石の磁気特性は磁石素体の粒界に存在する希土類リッチ相に大きく依存していると考えられる。したがって、上述のように構成された希土類磁石1は、保護膜形成に高温過熱を必要としないことから、磁石素体2内部の希土類リッチ相26が良好な状態となっている。したがって、従来の熱酸化により保護膜を形成させたものに比して、極めて良好な磁気特性を発揮し得る。
次に、このような構成を有する希土類磁石1の好適な製造方法について説明する。希土類磁石1は、磁石素体2を製造した後、この磁石素体2の表面領域に保護層4を形成することで得ることができる。以下、その具体的な方法について詳述する。
磁石素体2は、例えば粉末冶金法によって製造することができる。この方法においては、まず鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金(インゴット)を作製する。次に、この合金を、ジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕した後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。
こうして得られた粉末を、好ましくは磁場のなかで圧力を加えて成形する。この場合、磁場中の磁場強度は10kOe以上であると好ましく、成形圧力は1〜5トン/cm2程度であると好ましい。その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施した後、焼結体を所望の形状に加工して、磁石素体2を得る。
なお、磁石素体2は、上述した方法以外にも、例えば公知の超急冷法、温間脆性加工法、鋳造法、メカニカルアロイング法によって製造することもできる。さらに、磁石素体2としては、市販のものを準備してもよい。
次いで、このようにして得られた磁石素体2の表面に、有機出発材料を含む有機層を形成する。
有機出発材料は、真空槽内部で蒸発させ、磁石素体2の表面に堆積させることができる。蒸着の方法としては、抵抗化熱蒸着、電子ビーム蒸着のいずれを用いても良い。これにより、磁石素体2の表面に均一な膜厚の有機層を形成することができる。
また、有機出発材料は、溶液の状態で磁石素体2の表面に塗布して堆積させることができる。溶液状態には、適宜溶剤を用いることができるが、例えば、オリゴマーであるエポキシアクリレートの場合は常温で液体として存在するため、そのままの状態で塗布することができる。
図5は、磁石素体2に電子線を照射するための第1の方法を模式的に説明する図である。この方法においては、内部が酸化性雰囲気に維持された真空装置(図示せず)内において、電子線照射部30から磁石素体2の一面における一部領域にスポット状に電子線40を照射する。その後、コイル50により電子線40に所定の電界を印加して、磁石素体2の表面を走査するようにして、磁石素体2に対する電子線40の照射領域を徐々に変化させる。そして、最終的に磁石素体2の上記一面全てに対して電子線40の照射を行う。このような電子線40の照射を、磁石素体2の各面に対して同様に実施することで、磁石素体2の全面への電子線40の照射を行うことができる。なお、電子線40の照射領域の変化は、上述したコイル50による方法以外に、電子線照射部30又は磁石素体2のいずれかを徐々に移動させるようにして実施してもよい。
電子線照射部30は、電子線40の照射が可能な装置であれば特に制限はなく、電子放出源、アノード、電子を加速するカソード等を備える公知の電子銃に、電子線40の放射を調節するための各種外部磁場印加機構を組み合わせたもの等を適用できる。電子放出源としては、フィラメントの加熱等により熱電子を放出する熱電子放出源や、放電等により電子を放出する電子放出源を用いることができる。この電子線照射部30は、熱電子放出源や電子放出源を単体で備えていてもよいし、複数で備えていてもよい。このように熱電子放出源や電子放出源を複数備えている場合は、比較的広範囲に電子線の照射を行うことが可能となる。
電子線照射部30においては、アノード、カソード等と共に、あるいはアノード、カソード等に代えて、外部磁場印加機構により電子の加速を行ってもよい。この外部磁場印加機構としては、公知の永久磁石、コイルなどの手段を適宜選択して用いることができる。このような電子線照射部30としては、例えば、電子顕微鏡で使用されている電子銃や、蒸着装置に使用されている熱陰極電子ビーム源や、蒸着装置に使用されているホローカソード放電電子ビーム源を好適に用いることができる。
また、上記雰囲気は、不活性ガス雰囲気中あるいは真空中において、有機出発材料に生ずる酸化反応をできる限り押さえ、重合反応のみを進行させることができる雰囲気である。不活性ガス雰囲気とは、例えば、N2ガス、Arガス等が好ましい。真空の条件としては、電子線照射装置内部の初期圧力を10−6〜10−4Pa程度として、その後、電子線照射を初期圧力と同じ圧力において行うか、あるいは、上述の不活性ガスを導入して分圧を10−3〜100Paとして行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、5×10−2〜10−1Paとすることがより好ましく、1×10−1〜5×10−2Paとすることが更に好ましい。このような条件で電子線40を照射すると、有機層は良好に重合され、これにより保護膜4の形成が容易となる。
また、スポット状の電子線40の照射時間は、その一度に照射可能な領域に対して、好ましくは0.5〜600秒程度、より好ましくは1〜400秒程度、更に好ましくは5〜200秒程度とする。この照射時間が0.5秒未満であると、電子線40による有機出発材料の重合反応が不十分となり、保護層4が十分に形成されない傾向にある。一方、600秒を超えると、局所的な再ラジカル化と高分子の解離反応が生じるおそれがある。
また、図6は、磁石素体2に電子線40を照射するための第2の方法を模式的に説明する図である。図示されるように、電子線照射部32は、磁石素体2に対して、長方形のスリット状の照射領域となるように電子線40を照射することが可能なものである。かかる電子線照射部32としては、スリット状の電子線を放出できるように構成されたものや、上述したようなスポット状に電子線を放出する電子線照射部を複数並列に配置したもの等を用いることができる。
このような電子線40に、コイル52により所定の電界を印加して、磁石素体2におけるスリット状の電子線40の照射領域を、その長辺に対して垂直な方向に徐々に変化させる。この場合、上述したスポット状の照射領域となる電子線40に比べて、一度の走査で広い領域の照射を行うことができる。特に、図示のように、スリット状に照射された電子線40の長辺が、磁石素体2における所定の一辺と同じかこれよりも長いと好ましい。こうすれば、このスリット状の照射領域を一方向に移動させることで、磁石素体2の一面全てをカバーするように電子線40を照射することができるようになる。
そして、このようなスリット状の電子線40の照射を、磁石素体2の各面に対して同様に行う。これにより、この電子線40が照射された領域で有機層の重合反応が進行し、磁石素体2表面に、緻密な高分子材料からなる保護層4が形成される。なお、電子線40照射時における他の条件は、第1の方法における好適条件と同様である。
このように、上記第1の方法や第2の方法によって、磁石素体2における表面近傍領域に、緻密な高分子材料からなる保護層4を形成することができる。例えば、第1の方法においては、電子線40をスポット状に照射することができることから、磁石素体2表面における所定の領域のみに電子線40を照射することができる。よって、第1の方法によれば、磁石素体2表面における所望の領域に、選択的に保護層4を形成させることが容易となる。また、第2の方法においては、スリット状に電子線40を照射することができることから、一方向への移動で広い範囲に電子線40の照射を行うことができる。このため、例えば、磁石素体2の全面に保護層4を形成させる場合等に、短時間で作業を終了することができるといった利点が得られる。
このようにして磁石素体2に電子線照射を行うことによって、磁石素体2の表面に保護層4が形成された希土類磁石1が得られる。こうして製造された希土類磁石1は、以下に示す特徴を有している。
すなわち、希土類磁石1は、磁石素体2に電子線を照射するによって、当該磁石素体2に形成された有機層が重合した緻密な高分子材料からなる保護層4を有している。電子線の照射によれば、短時間で磁石素体2の表面近傍領域のみに選択的な重合反応を生じさせることができるため、保護層4は、磁石素体2の表面に均一な厚さで形成されたものとなる。このような希土類磁石1は、従来の長時間・高温加熱により保護層を形成させたものに比して、また、重合開始剤が残留する高分子膜に比して、磁石素体2内部のダメージが極めて少なくなっている。このため、保護層4の形成後であっても、十分に優れた磁気特性を維持している。
また、保護層4は、上述の如く、低温重合で、すなわち熱膨張を伴わずに形成されたものであるため、応力の影響をこうむることなく磁石素体2への密着性が極めて高い。よって、保護層4の形成時に、当該層が剥離してパーティクルを形成したり、また当該層に応力が発生したりすることも極めて少ない。したがって、こうして形成された保護層4は、従来に比して、ピンホール、剥離等の発生が極めて少ないものとなる。
このように、本実施形態の製造方法により得られた希土類磁石1は、その磁石素体2が本来有している、優れた磁気特性が十分に維持されている。しかも、保護層4の欠陥が極めて少ないことから、優れた耐久性を有している。よって、例えば、燃料電池車やハイブリッドカーの駆動用モータ等、優れた磁気特性及び耐久性が必要とされる分野に好適に用いることができる。
以上、本発明の希土類磁石の、好適な製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、希土類磁石1は、保護層4の表面上に、耐久性を向上させるための金属酸化物層、金属層等を更に備えるものであってもよい。
また、電子線照射の工程は、必ずしも上述したような真空装置内で減圧して行う必要はなく、良好な不活性ガス雰囲気を保持することができれば、大気圧若しくは大気圧近傍の圧力下で実施することもできる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
(希土類磁石の製造)
粉末冶金法によって作製した14Nd−1Dy−7B−78Fe(数字は原子比)の組成を有する焼結体を、アルゴンガス雰囲気中、600℃で2時間、熱処理した後、56×40×8(mm)の大きさの直方体形状に加工し、さらにバレル研磨処理により面取りを行って磁石素体を得た。次いで、この磁石素体を、アルカリ性脱脂液で洗浄した後、硝酸溶液により表面の活性化を行い、その後十分に水洗した。
(希土類磁石の製造)
粉末冶金法によって作製した14Nd−1Dy−7B−78Fe(数字は原子比)の組成を有する焼結体を、アルゴンガス雰囲気中、600℃で2時間、熱処理した後、56×40×8(mm)の大きさの直方体形状に加工し、さらにバレル研磨処理により面取りを行って磁石素体を得た。次いで、この磁石素体を、アルカリ性脱脂液で洗浄した後、硝酸溶液により表面の活性化を行い、その後十分に水洗した。
水洗後の磁石素体を、アクリレートモノマーを載置したタングステンボートと共に、所定の真空装置内に配置して、この装置内を、圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気した。その後、この真空装置内でタングステンボートを通電加熱し、アクリレートモノマーを磁石表面に蒸着した。
その後、真空装置内に設置された電子銃を6kV、50mAの条件で駆動させて、磁石素体における一面の所定領域にスポット状の電子線を照射した。そして、この一面における電子線の照射領域を徐々に変化させて、当該面の全面に電子線の照射を行った。そして、同様の作業を磁石素体の各面に対して行い、これにより磁石素体における全ての表面に厚さ1.5μmの高分子層を形成させた。
(特性評価)
得られた希土類磁石について、水蒸気雰囲気下、120℃、0.2×106Paにおける24時間の加湿高温試験(PCT試験)を行った。その結果、PCT試験後の希土類磁石の重量減少は見られなかった。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、保護層にピンホール、クラック等の欠陥は生じていないことが確認された。
得られた希土類磁石について、水蒸気雰囲気下、120℃、0.2×106Paにおける24時間の加湿高温試験(PCT試験)を行った。その結果、PCT試験後の希土類磁石の重量減少は見られなかった。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、保護層にピンホール、クラック等の欠陥は生じていないことが確認された。
1…希土類磁石、2…磁石素体、4…保護層、22…主相、24…ホウ素リッチ相、26…粒界、30,32…電子線照射部、40…電子線、50,52…コイル。
Claims (10)
- 希土類元素を含有する磁石素体に、
有機出発材料を含有する有機物層を堆積した後、
前記有機物層を設けた磁石素体に電子線を照射することを特徴とする希土類磁石の製造方法。 - 前記有機出発材料が、架橋型モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記希土類元素として、Ndを含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記電子線を照射することにより、前記有機物層を重合させて前記保護層を形成する重合反応工程を含むことを特徴とする請求項1〜3の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記電子線の、前記磁石素体表面における照射領域を変化させることを特徴とする請求項1〜4の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記電子線は、長方形のスリット状に照射されることを特徴とする請求項1〜5の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記電子線照射工程は、
不活性ガス雰囲気又は真空中で行われることを特徴とする請求項1〜6の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。 - 前記保護層を、その厚さが0.1〜5μmとなるように形成させることを特徴とする請求項1〜7の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記堆積工程は、
前記有機物出発材料を、蒸着法を用いて前記磁石素体の表面に堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜8の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。 - 前記堆積工程は、
前記有機物出発材料を、
溶媒に分散させて磁石表面に塗布する工程を含むことを特徴とする請求項1〜9の内のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
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CN114999807A (zh) * | 2022-06-29 | 2022-09-02 | 矿冶科技集团有限公司 | 用于柔性钕铁硼磁体的防腐剂和柔性钕铁硼磁体表面防腐处理的方法 |
-
2004
- 2004-03-31 JP JP2004105142A patent/JP2005294417A/ja not_active Withdrawn
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CN114999807B (zh) * | 2022-06-29 | 2023-12-01 | 矿冶科技集团有限公司 | 用于柔性钕铁硼磁体的防腐剂和柔性钕铁硼磁体表面防腐处理的方法 |
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