JP2005293976A - ガス拡散層及び燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】撥水性分散剤の剥がれを防ぎ、撥水性を向上したガス拡散層を提供する。また、長期に亘り燃料電池を運転した際の電池性能の低下を抑制した燃料電池を提供する。
【解決手段】少なくとも一部に微細孔26及び凹部27の少なくとも一方が多数形成されたカーボン繊維25と、微細孔26及び凹部27に充填された撥水性分散剤(PTFEディスパージョン)28と、を有する複合体から形成されることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、特に、固体高分子型燃料電池に適する燃料電池用のガス拡散層及び燃料電池に関する。
燃料電池は、水素ガス及び酸素ガスを燃料として用いて発電する装置であり、発電に伴い排気ガスが生じないため地球環境保護の観点から注目されており、近年、自動車搭載用の動力源としての実用化が進められている。
燃料電池は、使用される電解質の種類に応じて、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型及び固体酸化物型等がある。そのうちの1つである固体高分子電解質型燃料電池の構成は、発電の基本単位となる単セルを複数個積層した燃料電池スタックを含むものである。より詳細には、固体高分子電解質膜の両面側に、反応触媒層及びガス透過性のガス拡散層を有するアノードとカソードとの各電極を接合し一体化した膜電極接合体(MEA: membrane electrode assembly)により単セルを構成し、各電極と電極の間に各々セパレータを配置して複数個積層して燃料電池スタックとし、アノード及びカソードに水素ガスと空気中の酸素ガスとを各々供給して発電している(例えば、特許文献1参照)。
ガス拡散層(GDL)は、アノード及びカソードの反応触媒層に反応ガスを拡散するだけではなく、電気化学反応で生成する水を排出する通路として機能し、また、電気化学反応で取り出せる電子の集電体としての役割をも担う。このため、ガス拡散層(GDL)は、気孔率を確保し、水の排出性、電子伝導性及び機械強度の各特性が良好であることが好ましい。
通常、ガス拡散層(GDL)は、カーボンペーパやカーボンクロスに、PTFEディスパージョン(分散材)を用いて撥水処理を施した材料から形成しており、各種の特性向上を図るための改良が進められている。例えば、カソード側の集電体を導電性不織布から形成し、集電体の厚さ方向に0.1mm〜1. 0mm程度の貫通孔を形成することにより、反応ガスや水の輸送を円滑化し、高い電流密度でも安定した運転を行えるようにしている。
その他にも、所定の凹凸を表面に有する炭素繊維を用いて電池用電極を形成することにより、充放電容量を高めた電池用電極(例えば、特許文献2参照)や、従来よりも気孔径を拡大して、電流密度の高い領域での急激な単セル電圧の低下を防止したガス拡散電極の製造方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されている。さらに、電極層内での撥水濃度を層の厚み方向及び表面内で制御してガス拡散の高効率化と均一化を行い、高寿命化と大電流化した固体高分子型燃料電池が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平8−111226号公報(第4頁、表1) 特開平7−6755号公報(第2頁) 特開6−36771号公報(第2頁) 特開2003−217599号公報(第5頁、第2図)
しかしながら、撥水材として使用されるPTFEコーティングなどは接着性(密着性)が低いため、燃料電池の運転を長期に亘り継続して起動と停止とを繰り返し、あるいは氷点下の環境下で長期間放置して凍結と解凍とを繰り返すと、以下に示す各種の特性に変化が発生していた。例えば、水や反応ガスの移動に伴う摩擦や、電界の印加による局所的な放電が発生し、また、電圧の上昇及び下降のサイクルによる電位変化、温度の上昇及び下降のサイクルによる熱応力、あるいは付着水の凍結及び解凍のサイクルによる界面エネルギーバランスなどが変化していた。この結果、カーボンペーパやカーボンクロスなどにコーティングしたPTFEが次第に剥がれてしまい、ガス拡散層の撥水性が失われていた。さらに、PTFEコーティングが剥がれると、PTFEがカーボンペーパの気孔内に移動して、気孔を埋めてしまう可能性を有していた。
また、カーボンペーパやカーボンクロスを構成するカーボン繊維には、本来、径が1μm〜10μm程度の微細孔が僅かに存在するため、PTFEコーティングにより撥水処理を施すと、微細孔にPTFEが染み込んだ状態となる。しかし、カーボン繊維に存在する微細孔の数が少ないことから、染み込むPTFEの量が僅かであり、燃料電池の運転を長期に亘って継続すると、PTFEコーティングを維持することができなかった。
上述した各種の問題が生じると、反応ガスの拡散性や水の排出性が悪化してしまい、燃料電池の性能である電流-電圧特性や所定電流取出し時の電圧安定性が悪化してしまう可能性を有していた。特に、カソード側では水が生成するため、カソード側のガス拡散層の撥水性が失われると、燃料電池の性能低下が著しくなっていた。さらに、ガス拡散層(GDL)、反応触媒層に近い箇所で撥水性が失われると、反応触媒層に水が溜まる傾向があり、燃料電池の性能低下が著しかった。
水の排水性を向上するために、前述の特許文献1に開示した技術では、導電性不織布の厚さ方向に0.1mm程度の貫通孔を形成しているが、貫通孔の径が大きすぎてカーボン繊維が切断されてしまい、ガス拡散層の機械強度及び電子伝導性が低下する可能性を有していた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、本発明のガス拡散層は、少なくとも一部に微細孔及び凹部の少なくとも一方が多数形成されたカーボン繊維と、前記微細孔及び凹部に充填された撥水性分散剤と、を有する複合体から形成されることを要旨とする。
また、本発明の燃料電池は、電解質膜と、前記電解質膜の両面側に形成された反応触媒を含む反応触媒層と、前記反応触媒層の両面側に各々形成され、少なくとも一部に微細孔及び凹部の少なくとも一方が多数形成されたカーボン繊維と前記微細孔及び凹部に充填された撥水性分散剤とを有する複合体から形成されるガス拡散層と、前記ガス拡散層の両面側に形成されたセパレータと、を備えることを要旨とする。
本発明のガス拡散層よれば、カーボン繊維に多数の微細孔及び凹部の少なくとも一方を形成し、微細孔や凹部にPTFEディスパージョン等の撥水性分散剤を充填したため、カーボン繊維と撥水性分散剤との接触面積が増加し、両者のアンカー効果により密着性が向上し、撥水性分散剤の剥がれを防ぎガス拡散層の撥水性が高まる。
本発明の燃料電池によれば、長期に亘り運転した場合にも、ガス拡散層での反応ガスの拡散性や水の排出性が良いため、電流-電圧特性や所定電流取出し時の電圧安定性を確保して燃料電池の性能を維持することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る燃料電池について、固体高分子型燃料電池(PEFC : Polymer Electrolyte Fuel Cell)を例に挙げて、図1から図5までを用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料電池を適用した燃料電池発電システム1の構成を示す図である。図1に示すように、燃料電池スタック2の上流側には水素ガスボンベ3とコンプレッサ4とが設置され、水素ガスボンベ3及びコンプレッサ4は各々燃料電池スタック2に水素供給配管5と空気供給配管6とを接続している。各配管5,6上には各バルブ7,8を設置し、燃料電池スタック2に供給する水素ガスaと空気中の酸素ガスbとの燃料ガスの供給量を調節している。一方、燃料電池スタック2の両端にはインバータ9とモータ10とが接続され、インバータ9とモータ10とに制御回路11を接続している。燃料電池スタック2は、発電の基本単位となる単セル12を複数個積層し、積層した複数個の単セル12の両端部にエンドプレート13a,13bを配置して一体に構成している。燃料電池スタック2には電圧モニタ14を接続し、単セル12の電圧を計測している。
上記構成の燃料電池システム1では、バルブ7,8を開き水素ガスボンベとコンプレッサとから燃料電池スタック2内に水素ガスaと空気中の酸素ガスbとを供給する。水素ガスaと空気中の酸素ガスbとは、燃料電池スタック2の単セル12内で以下の式1と式2に示す電極反応が起こり、起電力が生じると同時に水が生成する。取り出した電力は、インバータ9を通して交流に変換されて負荷であるモータ10を駆動する。
[化1]
燃料極(アノード):H2 → 2H+ +2e- ・・・式(1)
酸化剤極(カソード):(1/2)O2 +2H+ +2e- → H2 O ・・・式(2)
図1に示す燃料電池スタック2を構成する単セル12の断面構造を図2に示す。図2に示すように、単セル12は、固体高分子型電解質膜15の一方の面側にアノード16を形成し、他方の面側にカソード17を形成している。アノード16及びカソード17の各電極は同様の構成を有しており、各電極16,17は、固体高分子型電解質膜15側から、順次、反応触媒層18a,18bと、カーボン層(マイクロレイヤ)19a,19bと、ガス拡散層(GDL)20a,20bと、を積層した構成を有する。さらに外側には、セパレータとして溝21a,21bを形成したバイポーラプレート22a,22bを挟み、各バイポーラプレート22a,22bには水素含有ガスcと酸素含有ガスdを供給する図示しないガス供給装置を各々接続し、ガス供給装置からバイポーラプレート22a,22bに水素含有ガスcと酸素含有ガスdとを供給している。以下、単セルの構成材料について説明する。
固体高分子型電解質膜15は、水素イオン伝導性に優れた材料から形成することが好ましく、一般的には、パーフルオロスルホン酸系ポリマなどのフッ素樹脂系イオン交換膜を用いることができる。具体的には、米国デュポン社製のナフィオン(Nafion)膜(デュポン社商標)、旭化成社製のアシプレックス(Aciplex)膜、旭硝子社製のフレミオン(Flemion)膜を使用することができる。固体高分子型電解質膜15の厚さは、特に限定されるものではなく一般的な厚さに構成することができる。
反応触媒層18a,18b は、酸素ガスの還元反応及び水素ガスのプロトン化反応の触媒性能が優れた材料を用いて形成することが好ましい。具体的には、電子を集電する電極としてカーボンブラックを使用し、カーボンブラックから形成したカーボン粒子23間に空孔を設け、カーボン粒子23に白金24を担持している。カーボン粒子23に白金24を担持することにより、白金24からガス拡散層20a,20bに電子を伝導し、固体高分子型電解質膜15に水素イオンを伝導すると共に反応ガスを供給することができる。カーボン粒子に白金を担持する方法は、公知の方法を使用することができる。また、電極反応は、電解質−触媒電極−反応ガス(水素)の3相界面で起こるが、本実施形態のように電解質が固体である場合は、電極反応が接触界面に限定されてしまい触媒の利用率が低下する。このため、固体高分子型電解質膜の材料と同材料を含む溶液を作製し、電極と固体高分子型電解質膜との接合面側に塗布して電極作動面積を3次元化することが好ましい。
カーボン層19a,19bは、カーボンペーパ上に塗布したカーボン微粒子とPTFEディスパージョンとにより構成される。
ガス拡散層20a,20bは、ガス透過性と電子伝導性との両特性を兼ねることが好ましい。ガス拡散層20a(20b)を拡大した図を図3に示す。図3に示すように、ガス拡散層20a(20b)は、カーボンペーパ中に含まれるカーボン繊維25の一部に微細孔26と凹部27とを形成し、微細孔26と凹部27とにPTFEディスパージョン28を入り込ませて、内部にPTFEを充填して複合体を構成している。
カーボンペーパ中に含まれるカーボン繊維25の繊維径Aは10μm程度である。
このため、微細孔26の径Bや凹部27の深さが10μmを超えると、カーボン繊維25の繊維径Aよりも大となりカーボン繊維25が切断してしまう。カーボン繊維25が切断するとガス拡散層20a(20b)での機械強度や電子伝導性が低下するだけでなく、カーボン繊維25とPTFEとの接触面積が増大せず密着性が向上しない。一方、微細孔26又は凹部27に充填するPTFEディスパージョン28中のPTFE粒子の直径は0.1μm〜0.4μm程度であるため、微細孔26の径B、凹部27の径Cや深さは、0.4μm以上とすることが好ましい。上述した理由から、カーボン繊維25に形成する微細孔26の径B及び凹部27の深さは、10μm以下とすることが好ましい。さらに、凹部27の径Cは、カーボンペーパ中で隣接した配置されたカーボン繊維間の平均距離Dよりも狭くすることが好ましい。
なお、ここでは、ガス拡散層20a(20b)の構成材料としてカーボンペーパを使用した例を示したが、カーボンペーパに限定されるものではなく、カーボンクロスやフェルトを用いても良い。また、撥水性分散剤としてPTFEディスパージョンを使用したが、PTFEディスパージョンの代わりにPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体: (-CF2-CF2-)m-(-CF2-CF(ORf)n-) ディスパージョン、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体: (-CF2-CF2-)m-(-CF2-CF(CF3)-)n-)ディスパージョン、PVDFディスパージョンを使用しても良い。また、撥水性分散剤としてはフッ素樹脂系だけではなく、オルガノポリシロキサン((-Si(R2)-O-)n R:H2又は有機基)からなるシリコーン系の撥水剤を使用することもできる。
バイポーラプレート(BPP) 22a,22bは、例えば、カーボングラファイトから構成し、両面側に反応ガスである水素ガス及び空気中の酸素ガスのガス流路パターンを形成している。
上記構成の単セル12において、微細孔26又は凹部27は、反応触媒層18a,18b側に形成することが好ましく、また、バイポーラプレート(セパレータ)22a,22bよりも反応触媒層18a,18b側に多数形成することが好ましい。反応触媒層18a,18b側に微細孔26又は凹部27を形成することにより、長期に亘り燃料電池を運転した場合にも、反応触媒層18a,18b内に水が溜まるのを抑制することができる。
また、微細孔26又は凹部27はカソード17側に形成することが好ましく、あるいは、カソード17側に多数形成することが好ましい。特に、水が生成するカソード17側のガス拡散層20b中のカーボン繊維25に微細孔26や凹部27を形成することにより、ガス拡散層20bの撥水性を確保できる。この結果、長期に亘り燃料電池を運転した場合にも、図2に示すように、カソード17側の反応触媒層18bで発生した水cを効率良く排出できるため、電池性能の低下を防止することができる。
さらに、反応ガス(水素ガスa,酸素ガスb)が通過する撥水コーティングの剥がれやすい部分や、撥水コーティングが剥がれた場合に電池性能が大幅に低下する部分に、微細孔26や凹部27を形成した上で撥水性分散剤を充填することにより、電池性能の低下を効果的に抑制することができる。
上記構成のガス拡散層及びこのガス拡散層を用いた燃料電池の製造方法について、図4及び図5を用いて説明する。
まず、カーボンペーパを製造する。炭素繊維(カーボンペーパ)の原料として種々の出発原料を使用できるが、現在、主に利用されているPAN(ポリアクリロニトリル:(-CH2-CH(CN)-)n)を用いる。PANを溶媒に溶解し、紡糸・耐炎化処理を施した後、1200℃で焼成して炭化し、2500℃で黒鉛化して炭素繊維(繊維径10μm程度)を作製する。得られた炭素繊維を粉砕した後、PVDF (ポリフッ化ビニリデン: (-CF2-CH2-)n)ディスパージョン等の結着剤と混合し、加熱乾燥して結着処理を行いカーボンペーパとする。
次に、得られたカーボンペーパに、レーザ、電子ビーム、(集束)イオンビーム又はプラズマを用いて微細加工を施し、カーボンペーパに微細孔又は凹部を形成する。
イオンビーム・電子ビームの粒子の大きさは衝突断面積で1nm程度であるため、容易に直径1μm程度の微細孔や凹部を開けることができる。すなわち、イオンビームや電子ビームをカーボン繊維表面に照射すると、カーボン繊維表面から二次電子が発生し、カーボン繊維を構成する原子をはじき出すことにより(スパッタリング現象)、凹部を形成することができる。イオン(電子)ビームの量を増大し、原子をはじき出す量を増やす、カーボン繊維に微細孔を形成することもできる。また、プラズマを使用した場合にも同様の効果が得られる。
さらに、パワー又はパルス強度の高いレーザを使用すると、カーボン繊維に微細孔又は凹部を容易に形成することができる。また、短波長のレーザを使用するほど細孔径又は凹部を微細に加工することができ、特に、波長193nm のArFレーザや波長248nm のKrFレーザ等のエキシマレーザを使用することにより、直径数μmの微細孔を開けることができる。
なお、以下に説明する集束イオンビーム又はエキシマレーザ法を用いて微細加工をすることもできる。
イオンビームを用いて、カーボンペーパの表面に微細加工を施す場合は、図4に示す構成の集束イオンビーム装置を使用する。図4に示すように、集束イオンビーム装置29は、光源としてイオン銃30が設置され、イオン銃30と試料(カーボンペーパ)31との間に引出し電極32a,32bと偏向器33とを配置している。イオン銃30と引出し電極32a,32bには引出し電圧34を接続し、引出し電圧34と試料(カーボンペーパ)31とに加速電源35を接続している。
上記構成の集束イオンビーム装置29においては、先端の鋭利な金属の先端に液体金属ガリウムを流してイオン銃30から液体金属ガリウムを供給する。金属の先端と引出し電極32a,32bの間に電界をかけ、イオン銃30から供給した液体金属ガリウムを電界の力で放射させて荷電イオンを引き出す。引き出された荷電イオンは加速電源による電圧(5kV〜30kV程度)で加速されて、5 nm〜10nmに集束した後、偏向器33によりイオンビームを試料(カーボンペーパ)31表面で走査する。これにより表面から微細加工を行い、カーボンペーパ31に微細孔を形成する。なお、集束イオンビーム装置29を使用する際に、ビームのパワーを絞り、カーボンペーパ31表面に微細孔を開けずに表面に凹部を形成しても良い。
図5は、エキシマレーザ法を用いて微細加工する際に使用するレーザ装置の構成を概略的に示す図である。図5に示すように、レーザ装置36は、試料(カーボンペーパ)37を載置するステージ38を配置し、ステージ38上方にレーザ発振器39を設置している。レーザ発振器39とステージとの間にはレンズ40を配置し、レーザ発振器39から発振されるレーザ光をレンズで集束する。より詳細に説明すると、波長193nmパルスArFエキシマレーザを発振するレーザ発振器39を使用し、直径n(スポット直径)が2μmのスポットサイズとし、厚さlである試料(カーボンペーパ)37表面にレーザを照射し、ステージをx方向,y方向に移動させて走査する。なお、焦点深度に関係する共焦点パラメータが16μm程度であり、焦点からz方向に距離O(80μm)が離れると、スポット直径mが10μmとなる。これは、試料(カーボンペーパ)37の深さ方向の中央を焦点とすると、55μm離れたカーボンペーパ37両側の表面でビームにより繊維が切れてしまう恐れがあることを意味する。このため、レーザ発振器39やステージを設置したz方向の配置に注意する必要がある。なお、レーザ装置36を使用してカーボンペーパ37に微細加工する際、パルスパワーを絞りカーボンペーパ37表面に凹部を形成しても良い。
また、微細加工は、レーザ、電子ビーム、イオンビーム又はプラズマを用いた方法に限定されるものではなく、以下に説明する無機塩粉末を使用してカーボンペーパに微細加工を施すこともできる。
カーボンペーパ中のカーボン繊維を結着する結着剤に、無機塩粉末と有機溶媒とを添加して均一に混合し、その後、結着剤が融解する温度以上(350℃程度)に加熱し、結着剤を融解すると結着剤中に無機塩粉末が入り込む。添加する無機塩粉末としては、粒子径1μm以上の塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化銀、臭化ナトリウム、臭化カリウムを挙げることができる。添加する有機溶剤としては、無機塩を溶解することのない溶剤を用いることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、キシレン、トルエン、ベンゼンまたはナフサを挙げることができる。
結着剤中に無機塩を入り込ませた後、無機塩を溶解し除去するために、水とアルコールとの混合液、水とアセトンとの混合液に処理したカーボンペーパを浸漬して乾燥すると、結着剤の中(カーボン繊維の表面)に微細孔を形成することができる。
より具体的には、カーボンペーパを結着する結着剤に、無機塩粉末として粒子径1μm以上の塩化ナトリウムを80重量%以上含む塩化ナトリウム粉末と、有機溶剤としてナフサとをカーボン繊維1gに対し6ml〜7ml添加した後、超音波を用いて攪拌して混合する。次いで、200〜250℃で1時間乾燥後、350℃で5分間加熱する。さらに、十分な量のエチルアルコール80容量%、蒸留水20容量%の混合溶媒に浸漬し、処理したカーボンペーパ中の塩化ナトリウムを溶出した後、乾燥しカーボン繊維表面に微細孔を形成する。
なお、上述したように、カーボンペーパに微細孔又は凹部を形成する方法は各種あるが、特に、レーザ、電子ビーム、(集束)イオンビームを用いると、カーボンペーパの所定の領域にのみ微細孔及び凹部を形成することが可能となる。
次に、微細加工を施して微細孔及び凹部を形成したカーボンペーパを用いて、撥水処理を施す。
まず、撥水性分散としてPTFEディスパージョンを準備する。PTFEディスパージョンとしては、粒子径0.2μm〜0.4μm程度のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:(-CF2-CF2-)n)微粒子を非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル(R-O-(CH2-CH2-O)n-H, R:アルキル基) やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(R-C6H4-O-(CH2-CH2-O)n-H)を用いて安定化したものを作製する。その後、PTFEディスパージョンとカーボン微粒子とを混合してペースト状とし、ペースト状としたものを微細孔及び凹部を形成したカーボンペーパに塗布する。
次に、微細孔中のガスを抜くために真空脱気を行い、PTFEディスパージョン中の界面活性剤を除去し、380℃で1時間熱処理してPTFEを融解した後、乾燥する。この過程で界面活性剤が熱分解して排出され、PTFEが融解(融点327℃)し、カーボンペーパにPTFEをコーティングすることができる。
なお、前述した製造方法では、市販のカーボンペーパに微細孔を形成した後に、撥水処理を施したが、本方法に限定されるものではなく、カーボンペーパを製造する段階で微細加工と撥水加工との処理を施しても良い。本方法では、まず、炭素繊維の原料であるPANを溶媒に溶解し、紡糸・耐炎化処理後、1200℃の温度で焼成して炭素繊維を作製し、炭素繊維を粉砕した後、レーザにより微細加工する。その後、PTFEディスパージョンと混合し、乾燥、加熱する。さらに、必要に応じて結着と撥水処理とをすることもできる。
なお、本実施形態においては、電解質膜として固体高分子型電解質膜を適用した固体高分子型燃料電池を例に挙げて説明したが、本発明の実施の形態に係る燃料電池は固体高分子型燃料電池に限定されるものではなく、その他の種類の燃料電池に適用することもできる。また、本実施形態では、反応触媒層18a,18bとガス拡散層(GDL)20a,20bとの間にカーボン層19a,19bを形成した固体高分子型燃料電池を挙げたが、カーボン層19a,19bは必須の構成ではなく、カーボン層19a,19bの存在しない燃料電池を構成しても良い。
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
実施例1
実施例1では、アノード側及びカソード側のガス拡散層として、一部に複数の微細孔又は凹部を有し、微細孔又は凹部に撥水性分散剤を分散したカーボン繊維から形成したガス拡散層を用いて、燃料電池を構成した。
実施例1の固体高分子型電解質膜として、米国デュポン社製のナフィオン(Nafion)膜(デュポン社商標)を使用した。
アノード反応触媒層とカソード反応触媒層は、まず、塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)水溶液にカーボン担体(カーボンブラック:平均粒径50nmのカーボン微粒子(Vulcan))を加えた後、これにホルムアルデヒドを加えて白金微粒子を還元し、白金微粒子をカーボン担体(カーボンブラック)上に吸着させた。白金担持したカーボン微粒子とナフィオン溶液とを混合し電極のペーストを作製し、ペーストを固体高分子型電解質膜の両面側にスクリーン印刷し、アノード反応触媒層とカソード反応触媒層とを形成した。
カーボン層は、カーボン微粒子(Vulcan)とPTFEディスパージョン(ダイキン工業性D-1)とを混合してペースト状とし、ペースト状としたものをカーボンペーパに塗布して形成した。
ガス拡散層(GDL)として、50μm程度の気孔径を有する繊維径10μm、厚さ110μmのカーボンペーパ(東レ社製)を用いた。カーボンペーパの表面に、図4に示すガリウムイオンによる集束イオンビームを用い、イオンビームをカーボンペーパ表面で走査し、直径1μmの微細孔を面方向100μmのピッチで貫通して微細孔を形成した。その後、微細孔を形成したカーボンペーパをPTFEディスパージョンに浸した後、微細孔中のガスを抜くために真空脱気を行い、PTFEディスパージョン中の界面活性剤を除去した。その後、380℃で1時間熱処理してPTFEディスパージョンを融解し、乾燥した。
さらに、カーボングラファイトを用いてバイポーラプレートを形成し、バイポーラプレート両面側に反応ガスである水素ガスと酸素ガスとの流路パターンを形成した。
上記方法で作製したガス拡散層をアノード側及びカソード側のガス拡散層として使用し、ガス拡散層を形成するカーボンペーパの微細孔が、バイポーラプレートの溝のガス流路外周よりも内側のガスが流通する部分に配置して、燃料電池を構成し、電池Aとした。
実施例2
実施例2では、実施例1に示す方法で作製したカーボンペーパをカソード側のガス拡散層にのみ適用して組み立てを行い、電池Bとした。
実施例3
実施例3では、実施例1に示す方法で作製したカーボンペーパをアノード側のガス拡散層にのみ適用して組み立てを行い、電池Cとした。
実施例4
実施例4では、図4に示す集束イオンビーム装置を使用して、ガス拡散層カーボンペーパの深さ方向に対して半分の深さの凹部を形成したカーボンペーパを使用した。凹部を形成した側を反応触媒層側に配置してガス拡散層に適用して組み立てを行い、電池Dとした。
実施例5
実施例5では、微細孔を開けた側をガス流路側に配置してガス拡散層(GDL)として組み立てを行い、電池Eとした。
比較例
比較例では、ガス拡散層を形成するカーボンペーパに微細加工を施すことなく、カーボンペーパをそのままPTFE分散液に浸して撥水処理を施し、撥水処理後のカーボンペーパを用いて組み立てを行い、電池Fとした。
上記方法で製造した各燃料電池A 〜Fを用いて、水素1気圧、空気1気圧にて発電を行った。電流密度1A/cm2で発電して、単セルの凍結(−20℃)と解凍(+20℃)とを300回繰り返した。初期の電圧と凍結と解凍とを繰り返した後、出力電圧の低下を調査し、その結果を表1に示した。
Figure 2005293976
表1に示すように、電池Aは、比較例の電池Fに比べて出力電圧の低下が小さく、耐久性に優れていた。これは電池Aのガス拡散層として用いたカーボンペーパに塗布されたPTFE撥水材とカーボン繊維との密着性が高まり、PTFE撥水材がカーボン繊維から剥がれ難く、撥水性が高まる結果、耐久性が向上したからであると考えられる。また、電池Cに比べて電池Bの電圧低下は少ないことから、アノード側に比べてカソード側に微細孔又は凹部を形成することにより、耐久性がより一層高くなることが判明した。さらに、電池Eに比べて電池Dの電圧低下が少ないため、ガス流路側に比べて触媒層側に微細孔又は凹部を形成することにより、耐久性がより一層高くなることが判明した。
本発明の実施の形態に係る燃料電池を適用した燃料電池発電システムの構成を示す図である。 図1に示す燃料電池スタックを構成する単セルの構成を示す断面図である。 ガス拡散層の構成を示す拡大図である。 集束イオンビーム装置の構成を示す図である。 エキシマレーザ法を用いたレーザ装置の構成を示す概略図である。
符号の説明
20a,20b…ガス拡散層(GDL),
25…カーボン繊維,
26…微細孔,
27…凹部,
28…PTFEディスパージョン,
A…カーボン繊維の径,
B…微細孔の径,
C…凹部の径,
D…カーボン繊維間の平均距離,

Claims (9)

  1. 少なくとも一部に微細孔及び凹部の少なくとも一方が多数形成されたカーボン繊維と、前記微細孔及び凹部に充填された撥水性分散剤と、を有する複合体から形成されることを特徴とするガス拡散層。
  2. 前記微細孔の径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1記載のガス拡散層。
  3. 前記凹部の深さは10μm以下であり、かつ、前記凹部の径は隣接して配置されたカーボン繊維間の平均距離よりも狭いことを特徴とする請求項1記載のガス拡散層。
  4. 前記微細孔又は凹部は、イオンビーム、電子ビーム及びプラズマの中から選択される少なくとも一種を用いて、前記カーボン繊維に微細加工を施して形成したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス拡散層。
  5. 前記微細孔又は凹部は、レーザを用いて前記カーボン繊維に微細加工を施して形成したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス拡散層。
  6. 前記微細孔又は凹部は、前記カーボン繊維と結着剤に粒子径1μm以上の無機塩粉末を添加、混合、乾燥、焼結し、得られた焼結物から無機塩粉を溶剤により抽出し、得られた焼結物を乾燥して前記カーボン繊維に微細加工を施して形成したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス拡散層。
  7. 電解質膜と、
    前記電解質膜の両面側に形成された反応触媒を含む反応触媒層と、
    前記反応触媒層の両面側に各々形成され、少なくとも一部に微細孔及び凹部の少なくとも一方が多数形成されたカーボン繊維と前記微細孔及び凹部に充填された撥水性分散剤とを有する複合体から形成されるガス拡散層と、
    前記ガス拡散層の両面側に形成されたセパレータと、
    を備えることを特徴とする燃料電池。
  8. 前記凹部又は微細孔は、前記反応触媒層側に形成されており、又は、前記セパレータ側よりも前記反応触媒層側に多数形成されていることを特徴とする請求項7記載の燃料電池。
  9. 前記電解質膜の一方の面側に水素含有ガスを流通させてアノードとし、他方の面側に酸素含有ガスを流通させてカソードとし、
    前記凹部又は微細孔は前記カソード側に形成されるか、又は、前記カソード側に多数形成されることを特徴とする請求項7又は8記載の燃料電池。
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