JP2006079938A - ガス拡散層、およびこれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡単に調製でき、かつ、排水性と保水性の双方を兼ね備えたガス拡散層を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、ガス拡散基材と撥水層とを有するガス拡散層において、前記ガス拡散基材と前記撥水層との間に保水層を有することを特徴とするガス拡散層により上記課題を解決する。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明は、ガス拡散基材と撥水層とを有するガス拡散層において、前記ガス拡散基材と前記撥水層との間に保水層を有することを特徴とするガス拡散層により上記課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ガス拡散層、およびこれを用いた燃料電池に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動し高出力密度が得られる固体高分子型燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。固体高分子型燃料電池は、フィルム状の固体高分子電解質膜を用いるのが特徴である。
固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、膜−電極接合体(以下、「MEA」とも記載する。)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、固体高分子電解質膜の両側に二つの電極が配設され、さらにこれをガス拡散層で挟持した構造となっている。電極は、電極触媒と固体高分子電解質との混合物により形成された多孔性のものであり、電極触媒層とも呼ばれる。
固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応などを通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。まず、燃料極(アノード)側に供給された燃料ガスに含まれる水素が、触媒粒子により酸化され、プロトンおよび電子となる。次に、生成したプロトンは、燃料極側電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、酸素極(カソード)側電極触媒層に達する。また、燃料極側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通して酸素極側電極触媒層に達する。そして、酸素極側電極触媒層に達したプロトンおよび電子は酸素極側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する。かような電気化学的反応は、主に、触媒粒子と、固体高分子電解質と、燃料ガスまたは酸化剤ガスなどの反応ガスと、が接触する三相界面において進行するのである。従って、ガス拡散層は、供給された反応ガスを電極へと均一に供給することが必要とされる。
また、燃料電池における固体高分子電解質膜は、湿潤していないと高いプロトン導電性を示さない。そのため、固体高分子型燃料電池に供給する反応ガスは、ガス加湿装置などを用いて加湿することにより、固体高分子電解質膜の湿度分布を均一にする必要がある。
高加湿、高電流密度などの運転条件下では、アノードからカソードに向けて固体高分子電解質膜を移動するプロトンに伴って移動する水の量、および酸素極側電極触媒層内に生成して凝集する生成水の量が増加する。この時、これらの生成水は、特に酸素極側電極触媒層内に滞留し、反応ガス供給路となっていた細孔を閉塞するフラッディング現象を招く。これにより、反応ガスの拡散などが阻害され、電気化学的反応が妨げられ、結果として電池性能の低下を招く。
そこで、従来では、ガス拡散基材表面に導電性粒子および撥水剤などからなる撥水層を有するガス拡散層がMEAに用いられている(例えば、特許文献1参照。)。前記撥水層は、撥水剤にコーティングされたカーボンなどの導電性粒子が集合体となり多孔質構造を形成する。従って、加湿して供給された反応ガスを拡散させて電極触媒層により均一に供給するだけでなく、過剰な水を速やかに排出することが可能となる。
特開平2003−89968号公報
燃料電池には、従来から、広範な運転条件において高い性能を維持する特性を有することが所望されている。
しかしながら、特許文献1によるガス拡散基材上に撥水層が形成されてなるガス拡散層によれば、ある程度の排水性は向上するが、低加湿および低電流密度などの運転条件下では、生成水も少なく固体高分子電解質膜が乾き易くなり、電池出力が低下する問題があった。
そこで、本発明が目的とするところは、簡単に調製でき、かつ、排水性と保水性の双方を兼ね備えたガス拡散層を提供することである。
本発明は、ガス拡散基材と撥水層とを有するガス拡散層において、前記ガス拡散基材と前記撥水層との間に保水層を有することを特徴とするガス拡散層により、上記課題を解決する。
上記構成を有する本発明によれば、撥水性を向上させつつ部分的に保水性が付与されたガス拡散層を提供することが可能となる。さらに、前記ガス拡散層は、撥水層と保水層とが別々の層として存在することにより、ガス拡散層における撥水性および保水性を容易に調整することができる。従って、本発明のガス拡散層によれば、高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池を提供することが可能となる。
本発明の第一は、ガス拡散基材と撥水層とを有するガス拡散層において、前記ガス拡散基材と前記撥水層との間に保水層を有することを特徴とするガス拡散層である。
本発明のガス拡散層は、撥水層を有することにより、電極触媒層内の水分を毛細管力により吸い取り、水分をガス拡散基材へ排出することが可能となり、ガス拡散層の排水性を向上させることが可能となる。撥水層からの水分は、ガス拡散基材を容易に透過し、外部へ排出される。
さらに、本発明のガス拡散層は、ガス拡散基材と撥水層との間に保水層を有する。本発明において、保水層は、適度な保水力を有する層であり、ガス拡散基材の排水性をある程度抑制して水分を溜めることが可能となる。これによりガス拡散層に保水性を付与することができ、固体高分子電解質膜の乾燥を防止することが可能となる。また、撥水層およびガス拡散基材において水分は細かく分散されるため、撥水層とガス拡散基材との間に保水層を有する構成とすることにより、保水層における水分の凝縮を抑制することが可能となる。
従って、本発明によれば、撥水性を向上させつつ部分的に保水性が付与されることにより、性能が向上されたガス拡散層を提供することが可能となる。さらに、保水層と撥水層がそれぞれ別々の層として存在することで、ガス拡散層における撥水性と保水性の調整が容易に行え、所望の性能を有するガス拡散層が得られるのである。
以下、本発明のガス拡散層について、順を追って説明する。
前記保水層の好ましい形態としては、ガス拡散基材表面に親水剤を含ませることにより親水化させた層などがある。前記保水層を有するガス拡散層の模式断面図を図1に示す。図1に示すガス拡散層110は、ガス拡散基材101の表面を親水化することにより保水層102が形成され、さらに前記保水層102上に撥水層103が形成された構成を有する。
前記親水剤としては、ナトリウムおよびリンを含む酸化物、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の酸化物、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の金属酸化物など、酸化処理することにより親水性を示す金属の酸化物が好ましく挙げられる。これらの他にも、前記親水剤としては、チタニア、シリカ、アルミナの金属酸化物なども挙げられる。また、前記親水剤は、保水層において、一種のみを用いてもよく、他の金属酸化物の特性を損なわない範囲で二種以上を併用してもよい。これらの親水剤によれば、保水層を形成する炭素繊維などを覆うようにして水分が広がり、保水層において適度に水分を保水することが可能となる。従って、保水層における水分の凝集を抑制しつつ、ガス拡散層に保水性を付与することが可能となる。
なかでも、前記親水剤として、ナトリウムおよびリンを含む酸化物が好ましく挙げられる。本発明では、ガス拡散基材に親水性を付与することにつき検討した結果、前記炭素繊維からなるガス拡散基材を酸化処理のみすることにより、リン酸ナトリウム(NaPO3)などのナトリウムおよびリンを含む親水性を示す酸化物が形成され、これによりガス拡散基材の所望する部位を親水化できることが判明した。かような効果が得られる理由は明らかではないが、炭素繊維を製造する際に、PAN系繊維などの炭素化工程で行う焼成において炉の不純物等が混入することやロール工程などによりナトリウムやリンなどの不純物が混入するため、ガス拡散基材として用いる炭素繊維にはナトリウムやリンなどの元素が含まれ、これらが酸化されることで親水性を示す酸化物が形成されると考えられる。
図4にガス拡散基材として用いた厚さ400μmのカーボンクロス表面を、空気雰囲気下、1000℃で、水素ガスバーナまたはアセチレンガスバーナにより酸化処理して厚さ50μmの保水層を形成した際の、カーボンクロス表面のリン元素のX線光電子分光分析法(XPS)による状態分析結果を示す。また、これと同様にして、図5に、カーボンクロス表面のナトリウム元素のリン元素のX線光電子分光分析法(XPS)による状態分析結果を示す。
図4および5より、酸化処理前のカーボンクロスからはリン元素またはナトリウム元素に起因する結合エネルギーのピークは検出されないが、酸化処理後のカーボンクロスからはリン元素またはナトリウム元素に起因する結合エネルギーのピークが検出されることがわかる。また、図4および5において、酸化処理後の結合エネルギーのピークはほぼ同様のピークが得られることから、酸化処理によりリン元素とナトリウム元素とが結合してリン酸ナトリウムなどの酸化物が形成されることがわかる。
また、酸化処理前のカーボンクロスからはリン元素またはナトリウム元素に起因する結合エネルギーのピークが検出されないのは明らかではないが、次のようなことが考えられる。リン元素およびナトリウム元素はカーボンクロスを構成する炭素繊維表面には存在せずに炭素繊維の内部に存在し、かようなカーボンクロスを酸化処理することにより、炭素繊維表面が削られるとともに、炭素繊維内部に存在していたリン元素およびナトリウム元素が酸化物の形態となって露出したと考えられる。XPSの進入深さは数nm程度と浅いため、酸化処理前の炭素繊維ではリン元素およびナトリウム元素が存在し得る内部まで検出できないが、酸化処理後は元素が表面に露出するためXPSで検出可能であったと考えられる。
このように、炭素繊維を含むガス拡散基材を用いてこれを酸化処理すれば、親水剤を添加するための溶液を別途調製したり、ガス拡散基材に前記溶液を塗布・含浸させるなどの工程を省略し、低コストでガス拡散基材表面に保水層を形成することが可能となる。
保水層における前記親水剤の含有量は、炭素繊維の質量に対して、5〜40wt%、好ましくは10〜20wt%、より好ましくは13〜15wt%とするのがよい。前記親水剤の含有量が、5wt%未満であると十分な保水性が得られない恐れがあり、40wt%を超えると保水層が有する空隙を水分が閉塞する恐れがある。
上述した保水層は、ガス拡散基材の表面に親水剤を含ませることにより親水化させた層とすることで、ガス拡散基材と保水層とが一体型に形成された形態であったが、かような形態に限定されない。
例えば、本発明のガス拡散層の製造方法において後述するように、ガス拡散基材とは別途用意した基材に上記と同様にして親水剤を含ませることにより親水化させた保水層を形成し、得られた保水層とガス拡散基材とを積層させた形態であってもよい。
しかしながら、保水層からガス拡散基材への電子伝導経路が連通した同一部材で構成され、層間の電気抵抗および接触抵抗などを低減できることから、ガス拡散基材表面を親水化することによりガス拡散基材と保水層とが一体型に形成された形態であるのが好ましい。
さらに、本発明において保水層は、ガス拡散基材の撥水層側全面に形成されるのが好ましい。これにより、撥水層内で水分が過多の部分から水分が不足している部分へ容易に水分が移動でき、固体高分子電解質膜の面全体をより均一な湿潤状態に保つことが可能となる。しかしながら、保水層は、これに限定されず、ガス拡散基材の少なくとも一部に保水層が形成されていてもよい。かような本発明のガス拡散層の断面模式図を図2に示す。
図2のガス拡散層210は、ガス拡散基材201の撥水層側表面の一部に保水層202が形成され、さらに、ガス拡散基材201および保水層202上に撥水層203が形成された構成である。かようなガス拡散層によれば、保水層に溜まった余分な水分を容易に排水することができ、排水性がより向上されたガス拡散層とすることが可能となる。
保水層の厚さは、ガス拡散基材の厚さに対して、5〜50%、好ましくは10〜30%とするのがよい。保水層の厚さが、5%未満では十分な保水性をガス拡散層に付与することができない恐れがあり、50%を超えると保水性が高すぎてフラッディング現象が生じ易くなる。
次に、本発明のガス拡散層に用いられるガス拡散基材としては、炭素繊維を少なくとも含むものが好ましく用いられる。前記炭素繊維としては、アクリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油、ピッチまたはナフタレン系ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、フェノール樹脂を原料とするフェノール系炭素繊維、およびレーヨン系炭素繊維などのカーボン繊維などが挙げられる。ガス拡散基材に炭素繊維を用いることにより、導電性および多孔質性を有するガス拡散基材とすることができ、さらに、上述した通り酸化処理するのみで簡単かつ低コストでガス拡散基材表面に保水層を形成できる。
ガス拡散基材として、具体的には、前記炭素繊維の、織物、紙状抄紙体、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。より具体機には、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボン不織布などが好ましく挙げられる。なかでも、空隙率が高く、ガス透過性、排水性に優れることから、カーボンクロス、カーボン不織布などが好ましく用いられる。
また、前記ガス拡散基材は、炭素繊維の他に、ステンレス、アルミニウム、マグネシウムなどの金属繊維が含まれていてもよく、前記金属繊維のみからなっていてもよい。
前記ガス拡散基材は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐために、撥水剤が含まれているのが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料などが挙げられる。この他にも、特許第3397394号、特許第3410542号、特許第3413286号など、従来公知の方法を適宜用いてガス拡散基材に撥水剤を含有させることもできる。
前記ガス拡散基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
また、ガス拡散基材は、撥水層からの水分を容易に系外へ排出するために十分な空隙を有しているのが好ましい。従って、前記ガス拡散基材の空隙率は、好ましくは50〜90体積%、より好ましくは70〜80体積%の範囲内とするのがよい。
次に、本発明のガス拡散層における撥水層は、好ましくは導電性粒子および撥水剤を少なくとも含む。
前記導電性粒子としては、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛、金属、セラミックスからなるものなどが挙げられる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。
前記導電性粒子は、市販品を用いることができ、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などのオイルファーネスブラック;電気化学工業社製デンカブラックなどのアセチレンブラック等が挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などがある。
前記導電性粒子の粒径は、100〜1000nm、好ましくは500〜700nmとするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、電極触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
撥水層に用いられる撥水剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記撥水層における、導電性粒子と撥水剤との混合比は、導電性粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られないおそれがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、撥水層における導電性粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
前記撥水層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよいが、20〜100μm、好ましくは40〜60μm程度とするのがよい。
本発明のガス拡散層は、ガス拡散基材と、保水層と、撥水層とがこの順で積層された3層構造とすることにより、上述した通り、撥水層における毛細管力により電極触媒層中の水分を吸い取りガス拡散基材へ排出させることができ、また、ガス拡散基材と撥水層との間に保水層を有することによりフラッディング現象を抑制しつつ適度に水分を保水することができ、撥水性を向上させつつ部分的に保水性を付与することが可能となる。
これにより、高加湿および高電流密度などの多量の生成水が発生し得る運転条件下であっても水分が系外へ排出され、また、運転停止時、低加湿および低電流密度、などの固体高分子電解質膜が乾燥し易い運転条件下では保水層にある程度溜められた水分により固体高分子電解質膜の湿潤状態を一定に保つことが可能となる。
従って、本発明のガス拡散層によれば、広範な運転条件においても高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池用MEAを提供することができる。
本発明の第二は、上述したガス拡散層を用いた燃料電池用MEA(以下、単に「MEA」とも記載する)である。
MEAの構成は、本発明の第一のガス拡散層を用いる以外は、特に限定されることはなく従来公知の各種技術を適宜参照すればよい。例えば、固体高分子電解質膜の両側に一対の電極触媒層が対向して配置され、これをさらにガス拡散層で挟持した構成などが挙げられる。
図3にMEAのカソード側のみを表した模式断面図を示す。図3において、固体高分子電解質膜330と、カソード側電極触媒層320と、ガス拡散層310と、が順に層状に配置されている。また、ガス拡散層310は、ガス拡散基材301、保水層302、および、撥水層303が順に配置され、撥水層303がカソード側電極触媒層320と接するように配置される。
MEAにおいて、本発明の第一のガス拡散層は、アノード側ガス拡散層またはカソード側ガス拡散層の少なくともいずれか一方に用いられればよいが、生成水を排出および保持することが可能なため、好ましくはカソード側ガス拡散層に用いられ、より好ましくはアノード側ガス拡散層およびカソード側ガス拡散層の双方に用いられる。
MEAの製造方法としては、従来公知の方法に従って行えばよい。例えば、上述したガス拡散層上に電極触媒層を形成し、これを二枚用いて固体高分子電解質膜を挟持した後、ホットプレスする方法などが挙げられる。
本発明の第三は、上述したガス拡散層またはMEAを用いた燃料電池である。上述した本発明のガス拡散層またはこれを用いたMEAによれば、広範な運転条件下であっても高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池を提供することができる。
燃料電池の種類としては、所望する電池特性が得られるのであれば特に限定されないが、実用性・安全性などの観点から固体高分子型燃料電池(PEFC)として用いるのが好ましい。これにより、移動体用電源、定置用電源として信頼性の高い燃料電池が得られる。
燃料電池の構造は、特に限定されず、MEAをセパレータなどで挟持した構造などが挙げられる。
セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、従来一般的なものであれば特に制限なくもちいることができる。また、空気と燃料ガスの流路を確保するためにガス流通溝が形成されてもよく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータの形状は、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
本発明の第四は、本発明の第一のガス拡散層の製造方法である。具体的には、ガス拡散基材の少なくとも一部を酸化処理する段階を含むガス拡散層の製造方法である。ガス拡散基材を酸化処理するのみで親水剤が形成され、ガス拡散基材の所望する部位を容易に親水化させて保水層を形成することができる。
本発明の方法において、ガス拡散基材としては、少なくとも炭素繊維を含むものが好ましく挙げられる。具体的には、本発明の第一において列挙したものなどが挙げられる。上述したとおり、炭素繊維を含むガス拡散基材は、リンやナトリウムなどの元素が不純物として含まれている。従って、親水剤を構成する元素を別途添加する工程を省略して前記ガス拡散基材を直接酸化処理するのみでも、リン酸ナトリウムなどのリンとナトリウムを含む親水性の酸化物が形成されてガス拡散基材の所望する部位を親水化して保水層を作製できるのである。
また、得られるガス拡散層が所望する保水性を有するように、前記ガス拡散基材に、リン酸ナトリウムなどのナトリウムおよびリンを含む酸化物、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の酸化物、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、チタニア、シリカ、アルミナの金属酸化物などからなる群から選択される少なくとも一種の金属酸化物を構成する金属の元素などを、さらに添加した後に酸化処理してもよい。
また、ガス拡散基材として、ステンレス、アルミニウム、マグネシウムなどの金属繊維のみからなる基材を用いた場合には、親水剤として用いられる金属酸化物を構成する金属の元素を予め添加した後、酸化処理する必要がある。
前記金属の元素をガス拡散基材に添加する方法としては、従来公知の方法を適宜用いればよい。例えば、前記金属の元素を含む溶液をガス拡散基材の所望する部位に浸漬または塗布する方法の他、加熱蒸着法、エレクトロンビーム、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法などが用いられる。
ガス拡散基材の酸化処理は、所望する厚さ、形状などを有する保水層が得られるように、ガス拡散基材表面の少なくとも一部に行えばよい。保水層の厚さおよび形状などについては、本発明の第一において説明した通りである。
前記酸化処理としては、水素ガスバーナ、アセチレンガスバーナなどの不活性ガスを燃料とするガスバーナ等を用いて火炎処理するのが好ましい。火炎処理によれば、炭素繊維に含まれるリンやナトリウムなどの元素、および/または、予め添加されたアルカリ金属やアルカリ土類金属の元素を容易に酸化して親水性の酸化物が形成され、ガス拡散基材を親水化できる。また、ガス拡散基材を酸化処理する部位の調整が容易に行えることから保水層の形状を容易に制御することができ、さらに、ガス拡散基材とガスバーナとの距離を調整することで保水層の厚さも容易に制御でき、ガス拡散基材上の所望する箇所に正確に保水層を形成できる。
前記火炎処理として、具体的には、空気雰囲気中、ガス拡散基材表面を厚さ方向に向かって所定の深さまで火炎処理する方法などが挙げられる。
火炎処理温度としては、500〜1500℃、好ましくは700〜1000℃とするのがよい。火炎処理温度が、500℃未満であるとガス拡散基材に含まれるリンやナトリウムなどの金属の元素を十分に酸化できない恐れがあり、また、ガス拡散基材を予め撥水処理した場合にはPTFEなどの撥水剤が蒸発せずに保水層内に残存する恐れがある。火炎処理温度が1500℃を超えると、炭素繊維が全て熱分解する恐れがあるため望ましくない。
また、保水層における親水剤の含有量は、炭素繊維重量に対して、5〜40wt%、好ましくは10〜30wt%、より好ましくは15〜20wt%とするのがよい。従って、得られる保水層が所望する親水剤含有量となるように、酸化処理する際に、親水剤として用いられる金属酸化物を構成する金属元素の添加量などを調整するのが好ましい。
上述した保水層の作製方法は、ガス拡散基材の所望する部位を酸化処理することによりガス拡散基材の一部を親水化して保水層を形成する方法であった。しかしながら、かような方法に限定されず、親水剤として用いられる金属酸化物などを構成する金属の元素を含む金属アルコキシド溶液にガス拡散基材を浸漬または含浸させた後、乾燥、焼成などを行うゾルゲル法を用いて保水層を形成してもよい。具体的には、特許3344256号、特許3384284号、特許3400259号などに記載される従来公知の方法を適宜参照して用いることができる。ゾルゲル法によると、ガス拡散基材の所望する部位を、親水性の金属酸化物の薄膜を形成させて親水化でき、保水層を形成することが可能となる。この時、ガス拡散基材の所望する部位のみに保水層が形成されるようにするため、用いるゾル溶液の粘度を調製してガス拡散基材に浸漬または含浸させるのがよい。また、予め撥水処理したガス拡散基材を用いた場合には、焼成温度を撥水剤の蒸発温度以上とするのが望ましい。
しかしながら、所望する箇所に正確に保水層を形成することが可能なため、ガス拡散基材を酸化処理することにより保水層を作製するのが好ましい。
さらに、上述した保水層の作製方法では、ガス拡散基材の一部を親水化することにより保水層を形成する方法であったが、所定の厚さを有する基材の全体を上述した酸化処理などにより親水化させることでガス拡散基材とは別に保水層を形成した後、得られた保水層をガス拡散基材と積層する方法も用いられる。
この時、用いられる前記所定の厚さを有する基材とは、ガス拡散基材と同様のものが挙げられるが、所望の厚さを有する保水層が得られるように前記基材の厚さを調整して用いるのがよい。
また、ガス拡散基材は、保水層を形成する前に、予め撥水処理するのが好ましい。これにより、保水層を形成する際に行う酸化処理により親水剤が形成されるとともに撥水処理により添加された撥水剤を消失させることが可能となり、ガス拡散基材の保水層が形成されていない部位には撥水剤を残存させることができる。
撥水処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行えばよい。具体的には、ガス拡散基材をPTFEといった撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等を用いて乾燥させる方法などが挙げられる。乾燥方法としては、特に限定されないが、大気中または窒素雰囲気中などで、100℃以下に加熱して行えばよい。前記撥水剤として、具体的には、本発明の第一において列挙したものと同様である。
また、前記撥水処理において基材は、前記撥水剤の分散液に浸漬させる他、特許第3397394号に記載の撥水性薄膜用コーティング液、特許第3410542号の請求項4などに記載の混合溶液、または特許第3413286号に記載の撥水撥油液、もしくは混合酸化物溶液など、各溶液に基材を浸漬させてもよい。その後、所望するガス拡散層が得られるように乾燥および焼成などを適宜行うことにより、ガス拡散基材の撥水処理を行うことができる。
本発明の方法では、次に、保水層上に撥水層を形成する。具体的には、カーボンブラックなどの導電性粒子、ポリテトラフルオロエチレンなどの撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製する。前記スラリーを保水層上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを保水層上に塗布する。これにより、保水層上に撥水層が形成されたガス拡散層が得られる。
なお、撥水層に用いられる前記導電性粒子および撥水剤などは、本発明の第一のガス拡散層において記載した通りであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
前記スラリーをガス拡散層に塗布する方法としては、ドクターブレード法、スクリーンプリンター法、スプレー法など、任意の方法を用いて行えばよい。
また、形成された撥水層を、マッフル炉や焼成炉を用いて300〜400℃程度で熱処理を施してもよい。これにより撥水性材料が融点以上の温度となることにより溶着し、ガス拡散層の構造を長期に亘り安定に保つことが可能となる。
本発明のガス拡散層の製造方法として、上述した方法では、保水層上に直接、撥水層を形成する方法であったが、他に、PTFEなどのフィルム上に撥水層を形成した後、保水層基材上に転写する方法であってもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。本発明は、下記実施例のみに限定されることはない。
<実施例1>
1.ガス拡散層の作製
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−090、厚さ270μm)を10cm角に打ち抜いたガス拡散基材表面を、空気雰囲気中、水素ガスバーナを用いて1000℃で酸化処理することにより、厚さ50μmの保水層を形成した。次に、導電性粒子としてカーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、粒径0.7μm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、導電性粒子とPTFEとが質量比で80:20となるように、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを、先に作製した保水層上にドクターブレード法により均一に塗布し、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、30分間熱焼成を行った。これにより、保水層上に撥水層(厚さ50μm)が形成されたガス拡散層が得られた。保水層1cm2あたりに形成された撥水層の重量は約3mgであった。
1.ガス拡散層の作製
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−090、厚さ270μm)を10cm角に打ち抜いたガス拡散基材表面を、空気雰囲気中、水素ガスバーナを用いて1000℃で酸化処理することにより、厚さ50μmの保水層を形成した。次に、導電性粒子としてカーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、粒径0.7μm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、導電性粒子とPTFEとが質量比で80:20となるように、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを、先に作製した保水層上にドクターブレード法により均一に塗布し、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、30分間熱焼成を行った。これにより、保水層上に撥水層(厚さ50μm)が形成されたガス拡散層が得られた。保水層1cm2あたりに形成された撥水層の重量は約3mgであった。
2.MEA作製
(2−1)触媒層インク調製
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製 TEC10E50E、白金含量46.5wt%)10g、固体高分子電解質溶液(DuPont社製 NAFION溶液DE520、電解質含量5wt%)90g、純水25g、2−プロパノール(和光純薬工業社製 特級試薬)10gを、20℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、触媒層インクとした。
(2−1)触媒層インク調製
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製 TEC10E50E、白金含量46.5wt%)10g、固体高分子電解質溶液(DuPont社製 NAFION溶液DE520、電解質含量5wt%)90g、純水25g、2−プロパノール(和光純薬工業社製 特級試薬)10gを、20℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、触媒層インクとした。
(2−2)触媒層形成
厚さ200μmのPTFE製シート(ニチアス社製ナフロン(登録商標)シート)の片面上に、スクリーンプリンターを用いて先に調製した触媒層インクを塗布し、オーブン中で100℃、30分間乾燥させた後、一辺10cmの正方形に切り出した。
厚さ200μmのPTFE製シート(ニチアス社製ナフロン(登録商標)シート)の片面上に、スクリーンプリンターを用いて先に調製した触媒層インクを塗布し、オーブン中で100℃、30分間乾燥させた後、一辺10cmの正方形に切り出した。
(2−3)MEAおよび単セルの組立て
一辺15cmの正方形で厚さ30μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NR−112)を挟んで、先に作製した2枚の触媒層形成PTFE製シートの触媒層形成側が対向するように重ねて、片側PTFE製シートあたり3MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスし、冷却後PTFE製シートのみを剥がすことで、固体高分子電解質膜に触媒層を転写させ接合体を得た。このとき、PTFE製シートから固体高分子電解質への触媒層の転写率が100%で、電解質膜上の片面触媒層面積1cm2あたりの白金重量が0.40mgとなるようにした。また、触媒層の厚さは、それぞれ10μmであった。
一辺15cmの正方形で厚さ30μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NR−112)を挟んで、先に作製した2枚の触媒層形成PTFE製シートの触媒層形成側が対向するように重ねて、片側PTFE製シートあたり3MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスし、冷却後PTFE製シートのみを剥がすことで、固体高分子電解質膜に触媒層を転写させ接合体を得た。このとき、PTFE製シートから固体高分子電解質への触媒層の転写率が100%で、電解質膜上の片面触媒層面積1cm2あたりの白金重量が0.40mgとなるようにした。また、触媒層の厚さは、それぞれ10μmであった。
得られた接合体を、先に作製したガス拡散層を2枚用いて撥水層が対向するようにして挟んで重ねてMEAとし、これをグラファイト製セパレータで挟持し、さらに金メッキしたステンレス製集電板で挟持して、評価用単セルとした。
<実施例2>
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−090、厚さ270μm)を、10cm角に打ち抜いた後、PTFEのフッ素系水性ディスパージョン溶液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)を純水で所定の濃度に調整した溶液中に5分浸漬させた後、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させることにより、カーボンペーパ中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25wt%であった。
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−090、厚さ270μm)を、10cm角に打ち抜いた後、PTFEのフッ素系水性ディスパージョン溶液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)を純水で所定の濃度に調整した溶液中に5分浸漬させた後、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させることにより、カーボンペーパ中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25wt%であった。
上述の通りにして撥水処理されたガス拡散基材を用いた以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製し、これを用いてMEAおよび評価用単セルを組立てた。
<実施例3>
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−030、厚さ100μm)を10cm角に打ち抜いた基材の全体を、空気雰囲気中、水素ガスバーナを用いて1000℃で酸化処理することにより、保水層のみを作製した。次に、導電性粒子としてカーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、粒径0.7μm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、導電性粒子とPTFEとが質量比で80:20となるように、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを、先に作製した保水層上にドクターブレード法により均一に塗布し、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、30分間熱焼成を行った。これにより、保水層上に撥水層(厚さ50μm)を形成した。保水層1cm2あたりに形成された撥水層の重量は約3mgであった。その後、カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)を10cm角に打ち抜いたガス拡散基材を用意し、これに撥水層が形成された保水層を積層することによりガス拡散層を作製した。
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−030、厚さ100μm)を10cm角に打ち抜いた基材の全体を、空気雰囲気中、水素ガスバーナを用いて1000℃で酸化処理することにより、保水層のみを作製した。次に、導電性粒子としてカーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、粒径0.7μm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、導電性粒子とPTFEとが質量比で80:20となるように、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを、先に作製した保水層上にドクターブレード法により均一に塗布し、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、30分間熱焼成を行った。これにより、保水層上に撥水層(厚さ50μm)を形成した。保水層1cm2あたりに形成された撥水層の重量は約3mgであった。その後、カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)を10cm角に打ち抜いたガス拡散基材を用意し、これに撥水層が形成された保水層を積層することによりガス拡散層を作製した。
得られたガス拡散層を用いた以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製し、これを用いてMEAおよび評価用単セルを組立てた。
<実施例4>
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)を、10cm角に打ち抜いた後、PTFEのフッ素系水性ディスパージョン溶液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)を純水で所定の濃度に調整した溶液中に5分浸漬させた後、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させることにより、カーボンペーパ中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25wt%であった。
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)を、10cm角に打ち抜いた後、PTFEのフッ素系水性ディスパージョン溶液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)を純水で所定の濃度に調整した溶液中に5分浸漬させた後、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させることにより、カーボンペーパ中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25wt%であった。
上述の通りにして撥水処理されたガス拡散基材を用いた以外は、実施例3と同様にしてガス拡散層を作製し、これを用いてMEAおよび評価用単セルを組立てた。
<比較例1>
ガス拡散基材表面に保水層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製し、これを用いてMEAおよび評価用単セルを組立てた。
ガス拡散基材表面に保水層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製し、これを用いてMEAおよび評価用単セルを組立てた。
<単セル評価>
実施例1〜4、ならびに、比較例1で作製した各評価用単セルを用いて、アノードに水素、カソードに空気を供給し、セル温度70℃、アノードガス利用率67%、カソードガス利用率40%、アノードガス相対湿度60%、カソードガス相対湿度50%として比較的電解質膜が乾燥しやすい運転条件下で発電を行った。この時の単セルの電流密度に対する出力電圧および電気抵抗を測定した。
実施例1〜4、ならびに、比較例1で作製した各評価用単セルを用いて、アノードに水素、カソードに空気を供給し、セル温度70℃、アノードガス利用率67%、カソードガス利用率40%、アノードガス相対湿度60%、カソードガス相対湿度50%として比較的電解質膜が乾燥しやすい運転条件下で発電を行った。この時の単セルの電流密度に対する出力電圧および電気抵抗を測定した。
実施例1および2、ならびに、比較例1の結果を図6に示す。なお、図6において、単セルの電流密度に対する出力電圧の変動を黒塗りしたプロットで示し、単セルの電流密度に対する単位体積あたりの電気抵抗の変動を白抜きしたプロットで示す。
保水層を付与したガス拡散層を用いた実施例1と、保水層が付与されていないガス拡散層を用いた比較例1とを比較すると、図6から、実施例1の方が、電流密度1A/cm2における評価用単セルの電気抵抗が約20[mΩ・sm2]も低くなり、その分、評価用単セルの電圧が向上していることがわかる。これは、固体高分子電解質膜が比較的乾燥し易い条件下であっても、固体高分子電解質膜が保湿されてプロトン伝導性の低下が抑制されたため、電気抵抗が低くなったと考えられる。この結果より、カーボンクロスが酸化処理のみにより親水化され、保水性を有していることが分かる。
カーボンクロスに撥水処理を行い、さらに保水層を付与したガス拡散層を用いた実施例2と、比較例1とを比較しても、図6から、実施例2の方が、電気抵抗が低減し、電圧が向上しており、優れた性能を発揮していることがわかる。
101、201、301…ガス拡散基材、
102、202、302…保水層、
103、203、303…撥水層、
110、210、310…ガス拡散層、
320…電極触媒層、
330…固体高分子電解質膜、
340…MEA。
102、202、302…保水層、
103、203、303…撥水層、
110、210、310…ガス拡散層、
320…電極触媒層、
330…固体高分子電解質膜、
340…MEA。
Claims (10)
- ガス拡散基材と撥水層とを有するガス拡散層において、
前記ガス拡散基材と前記撥水層との間に保水層を有することを特徴とするガス拡散層。 - 前記保水層は、ナトリウムおよびリンを含む酸化物を少なくとも含有することを特徴とする請求項1記載のガス拡散層。
- 前記ガス拡散基材は、炭素繊維を少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2記載のガス拡散層。
- 前記保水層は、ガス拡散基材の少なくとも一部を酸化処理されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散層。
- 前記ガス拡散基材は、撥水剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス拡散層。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のガス拡散層を用いたことを特徴とする燃料電池用MEA。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のガス拡散層、または、請求項6記載の燃料電池用MEAを用いたことを特徴とする燃料電池。
- 炭素繊維を少なくとも含むガス拡散基材の少なくとも一部を酸化処理する段階を含むことを特徴とするガス拡散層の製造方法。
- 前記酸化処理が、火炎処理であることを特徴とする請求項8記載のガス拡散層の製造方法。
- 前記ガス拡散基材を、予め撥水処理する段階を含むことを特徴とする請求項8または9記載のガス拡散層の製造方法。
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CN112941903A (zh) * | 2020-05-29 | 2021-06-11 | 中国科学院青海盐湖研究所 | 一种超双亲材料及其制备方法 |
-
2004
- 2004-09-09 JP JP2004262738A patent/JP2006079938A/ja active Pending
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