図1は、本発明者が先に発明した光偏向装置の構成である。図1(a)は、光偏向装置の上面図(但し、支点部材103、電極105a,105b,105c,105dは透過して図示)であり、図1(b)は、その断面図(B−B’線上)である。なお、図1の光偏向装置は、2次元に配置したアレー中の1個の光偏向装置に注目して図示してある。
上記した従来の光偏向装置は、光反射領域を有する部材が静電引力で変位することにより、光反射領域に入射する光束が反射方向を変えて偏向される光偏向装置であって、基板101と、複数の規制部材102と、支点部材103と、板状部材104と、複数の電極105を有し、前記複数の規制部材102はそれぞれ上部にストッパを有し、前記基板101の複数の端部にそれぞれ設けられ、前記支点部材103は頂部を有して前記基板101の上面に設けられ、前記板状部材104は固定端を持たず、上面に前記光反射領域を有し、少なくとも一部に導電性を有する部材からなる導電体層を有し、前記基板101と前記支点部材103と前記ストッパの間の空間内で可動的に配置され、前記複数の電極105は前記基板上にそれぞれ設けられ、前記板状部材104の導電体層とほぼ対向している構成を採る。
上記した光偏向装置は、以下の利点を有している。すなわち、
・支点部材と基板と板状部材の接触で傾斜角が決定されるので、ミラーの偏向角の制御が容易かつ安定である。
・支点部材を中心として対向する電極に異なる電位を印加することにより高速に薄膜の板状部材を反転するので、応答速度が速くできる。
・板状部材が固定端を有していないので捻り変形などの変形を伴わず長期的な劣化が少なく低電圧で駆動できる。
・半導体プロセスにより微細で軽量な板状部材を形成できるので、ストッパとの衝突による衝撃が少なく、長期的な劣化が少ない。
・規制部材や板状部材や光反射領域の構成を任意に決めることにより、反射光のオン/オフ比(画像機器におけるS/N比、映像機器におけるコントラスト比)を向上できる。
・半導体プロセス及び装置を使用できるので、低コストで微細化と集積化が可能である。
・支点部材を中心として複数の電極を配置することにより、1軸2次元の光偏向及び2軸3次元の光偏向が可能である。
次に、上記した従来の光偏向装置の駆動方法の一例を、図2、図3を用いて説明する。図2、図3の駆動方法は、先願「特願2002−282858号」に開示されている駆動方法であり、板状部材104が電気的に浮いている場合の駆動方法である。
図2は、図1の光偏向装置を例として、駆動により板状部材が傾斜した様子を示し、図2(a)は、OFF動作時のA−A’断面図とC−C’断面図を示し、図2(b)は、ON動作時のA−A’断面図とC−C’断面図を示す。図2において、電極105a,105b,105c,105dに印加する電位を切り替えることにより光偏向動作が行われる。図2(a)、(b)には、電極105a〜105dに印加された電位により発生する静電引力(黒矢印)が図示されている。
図3は、図2の各電極に印加する電位のタイミングチャートを示す。図2、図3を用いて従来の光偏向装置の駆動方法と、板状部材104の傾斜変位動作(すなわち光偏向動作)を説明する。 まず、図3のOFF動作において、電極105aに高電位aを印加し、電極105bに低電位cを印加し、電極105c及び電極105dに中間の電位bを印加する。そうすると、導電体層を有しかつ電極群105と対向し、電気的に浮いている板状部材104は簡易的なクローズ回路の計算から容易に類推されるように、中間の電位bと等しくなる。その結果、ON側の電極105c、105dに対して静電引力が生じず、OFF側の電極105a、105bに対して図2(a)に示すように静電引力が発生し、板状部材104がOFF側に傾斜変位する。この動作は、一連の光偏向動作のOFF動作だけでなく、光偏向動作の初期に行うリセット動作であっても良い。
次いで、図3のON動作において、電極105cに高電位aを印加し、電極105dに低電位cを印加し、電極105a及び電極105bに中間の電位bを印加する。そうすると、導電体層を有しかつ電極群105と対向し、電気的に浮いている板状部材104はやはり簡易的なクローズ回路の計算から容易に類推されるように、中間の電位bと等しくなる。その結果、OFF側の電極105a、105bに対して静電引力が生じず、ON側の電極105c,105dに対して図2(b)に示すように静電引力が発生し、板状部材104がON側に傾斜変位する。
なお、上記した光偏向装置の板状部材104は、図1では単層であるが、必ずしも単層に限るものではなく、2層構造でもよい。また、図2、図3の駆動では、電極105a,105b側をOFF方向、電極105c,105d側をON方向とする、1軸2次元の光偏向動作を説明したが、支点部材103が光偏向装置の中央に円錐形状で配置されていることから容易に類推できるように、電極105a〜105dに印加する電圧を任意に変えることにより、電極105a,105c側及び電極105b,105d側にも傾斜することが出来る。すなわち2軸3次元の光偏向が可能である。
図4は、本発明者らが先に発明した(前掲した先願)別の光偏向装置の構成を示す。図4は、板状部材を支点部材に接触させ、板状部材に電気的に電位を付与させた場合の光偏向装置の構成を示す。
図4(a)は、光偏向装置の上面図(但し、支点部材103及び電極105a〜105dは透過して図示)であり、図4(b)はその断面図(B−B’線上)である。なお、図4の光偏向装置は、2次元に配置したアレー中の1個の光偏向装置に注目して図示している。
図4の光偏向装置は、図1の光偏向装置と同様に、光反射領域を有する部材が静電引力で変位することにより、光反射領域に入射する光束が反射方向を変えて偏向される光偏向装置であって、基板101と、複数の規制部材102と、支点部材103と、板状部材104と、複数の電極105を有し、前記複数の規制部材102はそれぞれ上部にストッパを有し、前記基板101の複数の端部にそれぞれ設けられ、前記支点部材103は頂部を有して前記基板101の上面に設けられ、前記板状部材104は固定端を持たず、上面に前記光反射領域を有し、少なくとも一部に導電性を有する部材からなる導電体層を有し、前記基板101と前記支点部材103と前記ストッパの間の空間内で可動的に配置され、前記複数の電極105は前記基板上にそれぞれ設けられ、前記板状部材104の導電体層とほぼ対向している構成を有している。
図1の光偏向装置と異なる点は、板状部材104の裏面の少なくとも支点部材103の頂部と接する接触点が導電性を有する部材からなり、かつ板状部材104の電位を支点部材103との接触により付与することにある。
上記した従来の光偏向装置の駆動方法の一例を、図5、図6を用いて説明する。図5、図6の駆動方法は、前掲した先願に開示されている駆動方法であり、板状部材104の電位を支点部材103との接触により付与する場合の駆動方法である。
図5は、図4の光偏向装置を例とし、板状部材が傾斜した様子を示し、図5(a)は、OFF動作時のA−A’断面図及びC−C’断面図を示し、図5(b)は、ON動作時のA−A’断面図及びC−C’断面図を示す。
図5において、電極105a〜105d及び支点部材103に印加する電位を切り替えることにより、光偏向動作が行われる。また、図5(a)、(b)には、電極105a〜105d及び支点部材103に印加された電位により発生する静電引力(黒矢印)が図示されている。
図6は、図5の各電極に印加する電位のタイミングチャートを示す。図5、図6を用いて従来の光偏向装置の駆動方法と、板状部材104の傾斜変位動作(すなわち光偏向動作)を説明する。
まず、図6のOFF動作において、電極105a及び105bに高電位Xを印加し、電極105c及び105dに接地電位すなわち0Vを印加し、支点部材103に接地電位を印加する。この時、支点部材103は導電性部材又は導電性部材との積層により構成され、電位を付与できる構造であることが必要である。上記電位の印加により、支点部材103と接触している板状部材104は接地電位と等しくなる。それにより、ON側の電極105c,105dに対して静電引力が生じず、OFF側の電極105a,105bに対して、図5(a)のように静電引力が発生する。そのため、板状部材104がOFF側に傾斜変位する。
次に、図6のON動作において、電極105c及び105dに高電位Xを印加し、電極105c及び105dに接地電位を印加し、支点部材103を接地電位のままとする。そうすると、支点部材103と接触している板状部材104は接地電位と等しいままなので、OFF側の電極105a,105bに対して静電引力が生じず、ON側の電極105c,105dに対して図5(b)のように静電引力が発生する。そのため、板状部材104がON側に傾斜変位する。
なお、上記した光偏向装置の板状部材104は、図4では単層であるが、必ずしも単層に限るものではなく、2層構造を有する場合もある。また、図5、図6に示す駆動においては、電極105a,105b側をOFF方向、電極105c,105d側をON方向とする、1軸2次元の光偏向動作を説明したが、支点部材103が光偏向装置の中央に円錐形状で配置されていることから容易に類推できるように、電極105a〜105dに印加する電圧を任意に変えることにより、電極105a,105c側及び電極105b,105d側にも傾斜することが出来る。すなわち2軸3次元の光偏向が可能である。
なお、図4、図5、図6において、導電性を有する支点部材103を経由して板状部材104に電位を付与する構造であるため、支点部材103上には、図1の装置のように絶縁膜106を設けない。従って、電極105a〜105d上にも絶縁膜106が配置されていないので、板状部材104が傾斜変位に際し、電極105a〜105dと接触しないように、電極を配置しなければならない。
図7は、図1に示す光偏向装置の製造過程を示す。図7(a)〜(i)は、図1のB−B’線上の断面概略図である。
図7(a):シリコン基板101上に、支点部材103を構成するシリコン酸化膜がプラズマCVD法により堆積され、その後、濃度階調性を有するフォトマスクを用いた写真製版法やレジストパターン形成後、熱変形させる写真製版法により、支点部材の形状とほぼ同形状の任意の膜厚を有するレジストパターンを形成し、その後、ドライエッチング法により目的形状の支点部材103が形成される。なお、シリコン基板101上にシリコン酸化膜を形成し、その上層の一部を同様の加工を行っても良い。
図7(b):電極105a〜105dを窒化チタン(TiN)膜の薄膜で形成する。TiN薄膜は、TiをターゲットとしたDCマグネトロンスパッタ法により成膜し、写真製版法及びドライエッチング法により複数の電極105a〜105dとしてパターン化した。
図7(c):電極105a〜105dの保護膜106として、プラズマCVD法によるシリコン酸化膜を形成した。
図7(d):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、CMP技術を用いて処理時間制御で平坦化した。この時、支点部材103の頂部上に残る非晶質シリコン膜の膜厚を制御することが重要である。残存する非晶質シリコン膜が第1の犠牲層401である。なお、犠牲層としては、上記膜以外にもポリイミド膜や感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や多結晶シリコン膜などを用いることもでき、平坦化の手法としては、熱処理によるリフロー法やドライエッチングによるエッチバック法を用いることも出来る。
図7(e):光偏向装置の特徴である板状部材を堆積、パターン化する。板状部材は高い光反射性を有し、かつ導電体層104としての役割を果たすために、アルミニウム膜をスパッタリング技術により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法によりパターン化した。
図7(f):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、第2の犠牲層402とした。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜や感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や多結晶シリコン膜などを用いることも出来る。
図7(g):光偏向装置を個別に分離し、板状部材104の周囲にストッパを有する規制部材102を配置するために、写真製版法及びドライエッチング法により、第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を同時に板状部材104に比べ少なくとも広くパターン化した。
図7(h):ストッパを有する規制部材102を構成するシリコン酸化膜をプラズマCVD法により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法により任意の個所にパターン化した。なお、ストッパを有する規制部材102は、図1に示す配置に留まらず、板状部材を制限空間に留める位置であれば良い。
図7(i):残存する第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を、ウェットエッチング法により開口部を通してエッチング除去し、板状部材104を可動範囲が制限された空間に配置して、光偏向装置が完成する。犠牲層エッチングは犠牲層の種類に応じて、ウェットエッチングに限らずドライエッチングにより実施できる。なお、犠牲層エッチングは基板平面方向にエッチングを進行させるため、板状部材104の材質をエッチングされにくい材料で最適化することが重要である。
上記した光偏向装置の利点は、光偏向に寄与する板状部材104が固定端を有しておらず、光偏向動作に板状部材の変形変位すなわち伸び変形や捩り変形が伴わない点にある。しかし、このような構造を採ることにより、固定端を持たない板状部材は、ストッパを有する規制部材で制限された空間内でわずかであるが移動し、その結果、以下のような問題が発生する。
図8、図9は、図1の光偏向装置のD点に示す規制部材102と板状部材104の詳細を示す。図8は、板状部材104がストッパを有する規制部材102と接触していない良好な場合を示し、図9は、固定端を持たない板状部材104が移動し、規制部材102をその角部が完全に接触した悪い場合を示す。図8(a)、図9(a)は上面図を示し、図8(b)、図9(b)は斜視図を示し、図8(c)、図9(c)はE−E’線上の断面図を示す。
図8、図9において、102aは規制部材102の上部に構成されたストッパであり、102bは規制部材102を自立させる支柱部位である。図8の理想的な場合では、板状部材104の支点部材103を支点とした傾斜変位(図中の黒矢印)において動作を妨げる反力は作用しない。
一方、図9に示す板状部材104が、規制部材102と角部で完全に接触している場合では、板状部材104の支点部材103を支点とした傾斜変位(図中の黒矢)において、規制部材102の支柱部位102bと線で接触するために(図中に黒太線で示す)、変位に反する方向に線状に分布する摩擦力(図中に白抜き線で示す)が作用する。規制部材102が光偏向装置に占める割合は比較的小さいので、数10Vと駆動電圧が比較的大きい場合は、摩擦による反力は大きく影響しない。しかし、駆動電圧を数V〜10数Vと低くした場合、摩擦による反力により、正常な板状部材104の傾斜変位が起こらず、誤動作する可能性がある。逆に言うと、摩擦力の影響を受けない程度に駆動電圧を増加させなければならない。
図10を用いて、固定端を持たない板状部材104に生じる別の問題点を説明する。図10は、図1のD点に示す規制部材102と板状部材104の詳細を示し、電極105a〜105dに電圧を印加していない状態、すなわち初期状態において、板状部材104が規制部材102上部に配置されたストッパ102aに平行に接触している様子を示す。
板状部材104は、固定されていないので自由にその位置をとることができ、電極105a〜105dから最も離れた場合は図10に示す位置となる。図10(a)は斜視図であり、図10(b)は、図8、図9と同様にE−E’線上の断面図である。図10において、板状部材104がストッパ102aと面で接しているため、接する膜の表面エネルギーに依存した固着力が作用することとなる。そのため、図2(a)に示す初期のリセット動作時に、電極105a〜105dに印加する電圧は、固着力を打ち消すための静電引力を加算して作用させるため増加する。
このように、先願の光偏向装置は、板状部材が規制部材と接触することにより、駆動電圧を増加させる問題がある。
図11は、前掲した先願の光偏向装置の別の構成である。この光偏向装置の問題点について以下説明する。図11(a)は、光偏向装置の上面図(但し、支点部材103及び電極105a〜105dは透過して図示)であり、図11(b)は、その断面図(B−B’線上)である。なお、図11の光偏向装置も、2次元に配置したアレー中の1個の光偏向装置に注目して図示している。図11の光偏向装置は、図1の光偏向装置とほぼ同様の構成であり、唯一異なる点は、図11の光偏向装置が1軸2次元の光偏向装置であり、そのために支点部材103が光偏向軸方向に板状部材とほぼ同じ長さで尾根形状で構成されている点である。
支点部材103を尾根形状で長く構成することにより、目的方向以外への光偏向の誤動作を抑制できる。しかし、支点部材103を尾根形状で長く構成することにより、次のような問題がある。
図12は、図11の光偏向装置の支点部材103と板状部材104の詳細を示す。図12(a)は、上面図であり、図12(b)は、G−G’線上の断面図であり、図12(c)は、H−H’線上の断面図である。図12において、板状部材104が支点部材103と線で接触しているために、接触部(図中に黒太線で示す)で接触する膜の表面エネルギーに応じた固着力(図中に白抜き線で示す)が作用する。固着力は板状部材104の傾斜変位の妨げとなり、固着力を打ち消すための静電引力を加算して作用させるために、駆動電圧を増加させる必要がある。このように、先願にの光偏向装置は、支点部材と接触することにより、駆動電圧を増加させる欠点がある。
図11の光偏向装置を用いて別の問題点を説明する。図13は、図11の光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105と絶縁膜106の詳細を示す。図13(a)は、上面図であり、図13(b)は、F部におけるG−G’線上の断面図であり、図13(c)は、F部におけるI−I’線上の断面図である。
図13において、板状部材104が傾斜変位時に絶縁膜106と線で接触しているために、接触部(図中に黒太線で示す)で接触する膜の表面エネルギーに応じた固着力(図中に白抜き線で示す)が作用する。固着力は板状部材104の傾斜変位の妨げとなり、固着力を打ち消すための静電引力を加算して作用させるために、駆動電圧を増加させる必要がある。このように、先願の光偏向装置は、基板又は基板上の絶縁膜と線で接触することにより、駆動電圧を増加させる欠点がある。
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、板状部材と他の部材との接触を低減することにより駆動電圧の増加を抑制し、光偏向装置の低電圧駆動を実現した光偏向装置、光偏向アレー、画像形成装置および画像投影表示装置を提供することにある。
本発明の光偏向装置は、板状部材と任意の周辺に配置されている規制部材との接触による摩擦力及び固着力を低減することにより、駆動電圧の増加を抑制し、また、支点部材と板状部材の接触による固着力を低減することにより、駆動電圧の増加を抑制し、また、基板(または基板上の絶縁膜)と板状部材の接触による固着力を低減することにより、駆動電圧の増加を抑制し、光偏向装置の低電圧駆動を実現する。
本発明は、基板と、複数の規制部材と、支点部材と、板状部材と、複数の電極を有し、前記複数の規制部材はそれぞれ上部にストッパを有し、前記基板の複数の端部にそれぞれ設けられ、前記支点部材は頂部を有して基板の上面に設けられ、前記板状部材は光反射領域を有し、かつ固定端を持たず、かつ少なくとも一部に導電性を有する部材からなる導電体層を有し、かつ前記基板と支点部材とストッパの間の空間内で可動的に配置され、前記複数の電極は基板上にそれぞれ設けられ、前記板状部材の導電体層とほぼ対向している構成を有し、前記板状部材が前記支点部材を中心として静電引力により傾斜変位することにより、光反射領域に入射する光束が反射方向を変えて光偏向を行う光偏向装置において、前記板状部材の接触を低減させる構造を備えたことを最も主要な特徴とする。
本発明は、規制部材と板状部材の接触面積を低減する構造とすることにより、板状部材と任意の周辺に配置されている規制部材との接触に起因する摩擦力及び固着力を低減し、駆動電圧の増加を抑制することが出来る。さらに、支点部材と板状部材の接触面積を低減する構造とすることにより、支点部材と板状部材の接触に起因する固着力を低減し、駆動電圧の増加を抑制することが出来る。さらに、基板(または基板上の絶縁膜)と板状部材の接触面積を低減する構造とすることにより、基板(または基板上の絶縁膜)と板状部材の接触に起因する固着力を低減し、駆動電圧の増加を抑制することができる。これにより、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項1、2、3)は、板状部材の接触を低減させる構造を備え、複数の規制部材の各々の支柱部位が分割された構造であり、また分割された支柱部位が四角柱形状であるので、板状部材との接触面積を低減でき、それにより板状部材との接触に起因する摩擦力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項4、5)は、分割された支柱部位と板状部材の側面がほぼ点で接する構造であり、また分割された支柱部位が円柱形状であるので、板状部材との接触面積を極限まで低減でき、それにより板状部材との接触に起因する摩擦力が大幅に低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項6)は、複数の規制部材の各々のストッパが、分割された支柱部位に対応して分割された構造であるので、ストッパと板状部材との接触面積を低減でき、それにより板状部材との接触に起因する固着力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項7)は、複数の規制部材の各々のストッパが、分割された支柱部位の任意の支柱部位間でブリッジ構造であるので、ストッパと板状部材との接触面積を低減できるだけでなく、ブリッジにより隣接支柱部位が支えられるので、規制部材の自立を向上させることができる。すなわち、光偏向装置の低電圧駆動と高信頼性を達成できる。
本発明(請求項1、8、9、10)は、板状部材の接触を低減させる構造を備え、光偏向が1軸2次元の光偏向であり、かつ支点部材が光偏向の軸方向に分割されて複数個配置された構造であり、また分割された支点部材の各々が頂部において尾根形状であり、また分割された支点部材の各々が角柱形状であるので、従来の光偏向装置に比べ、支点部材と板状部材の接触面積を低減でき、それにより板状部材との接触に起因する固着力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。また、支点部材が光偏向軸方向に複数個配置されているので、目的方向以外への光偏向の誤動作を抑制できる。
本発明(請求項11)は、分割された支点部材の各々が略円錐形状であるので、支点部材と板状部材の接触面積を極限まで低減でき、それにより板状部材との接触に起因する固着力が大幅に低減され、光偏向装置を、より低電圧で駆動することができる。
本発明(請求項12)は、分割された支点部材の各々が略円柱形状であるので、従来の光偏向装置に比べ、支点部材と板状部材の接触面積を低減でき、それにより板状部材との接触に起因する固着力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項1、13)は、板状部材の接触を低減させる構造を備え、板状部材が傾斜変位により接触する基板の接触部位を凸形状としているので、従来の光偏向装置に比べ、基板と板状部材の接触面積を低減でき、それにより板状部材との接触に起因する固着力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項14)は、板状部材が傾斜変位により接触する基板の凸形状の接触部位を複数個分割して配置しているので、傾斜変位した板状部材が基板上の凸部に接触した際に、基板と非平行に傾斜することにより一部基板と接触し、接触面積を増加させることを抑制できる。また、非平行な板状部材の傾斜による光偏向方向のばらつきが抑制される。
本発明(請求項15)は、基板上に設置された複数の電極と同一部材を任意の箇所に点在させることにより、凸形状の接触部位を構成しているので、工程を増やすことなく、凸形状の接触部位を構成することが出来、製造コストを低減できる。
本発明(請求項16)は、凸形状の接触部位と対向する板状部材の導電体層との間に絶縁性膜が構成されておらず、かつ凸形状の接触部位が基板上に構成された複数の電極と電気的に分離されているので、絶縁膜が介在しないことにより接触膜の付着力すなわち固着力を低減でき、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。また、複数の電極と電気的に分離されているので、板状部材を介した複数の電極間の電気的短絡を抑制できる。
本発明(請求項17)は、凸形状の接触部位に、板状部材に作用する電位と略同電位を付与しているので、固定部を持たない板状部材が電気的に接続されていない構成、あるいは支点部材を介して電位を供給する構成の何れの構成においても、凸形状の接触部位との接触時に一時的であるが板状部材の電位を安定にできるので、光偏向動作の誤動作を防止できる。
本発明(請求項18)は、凸形状の接触部位と対向する板状部材の導電体層との間に絶縁性膜が構成され、かつ凸形状の接触部位が基板上に構成された複数の電極のうち任意の電極と電気的に接続されているので、板状部材を介した複数の電極間の電気的短絡を抑制しつつ、凸形状の接触部位においても板状部材との間に静電引力を作用させることができ、光偏向装置の低電圧駆動を達成できる。
本発明(請求項19)は、請求項1〜18に記載の光偏向装置を複数1次元又は2次元に配置したので、低電圧駆動が可能な光偏向アレーが提供できる。
本発明(請求項20)は、請求項19に記載の光偏向アレーを光書込みユニットとして用いているので、低電圧駆動が可能な光書き込みユニットを提供できる。
本発明(請求項21)は、請求項19に記載の光偏向アレーを表示ユニットとして用いているので、低電圧駆動が可能な表示ユニットを提供できる。
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。本発明の光偏向装置は、前述した従来の光偏向装置に対し、ストッパを有する規制部材102と支点部材103と基板上に構成された凸形状の接触部位に特徴があり、その他の構成は、図1、図11で説明した光偏向装置と同様である。
また、ストッパを有する規制部材102と支点部材103に関しても、その構成材及び製造方法及び製造工程は前述した従来の光偏向装置と同様であり、さらに、その光偏向方式及び駆動電圧の印加方法(駆動方法)も前述した従来の光偏向装置と同様である。
以下、本発明の光偏向装置の特徴であるストッパを有する規制部材102と支点部材103と基板上に構成された凸形状の接触部位について、従来の構造と比較して説明する。
図14は、従来の規制部材を示し、図15は、本発明の実施例1の規制部材を示す。規制部材102は基板の複数の端部(すなわち板状部材の周辺部)に設けられており、以下の本発明の説明では板状部材104の4箇所の角部に対応して設けられた構造で説明するが、本発明は、必ずしも板状部材104の角部に規制部材102を設けた場合に限定されない。例えば、板状部材104を構成する各辺の任意の箇所に規制部材102を配置する場合なども含まれる。すなわち、ストッパを有する規制部材102により板状部材104を目的の制限空間に可動的に配置できる箇所であれば構わない(以下の実施例も同様である)。
図14(a)、図15(a)は、任意の1個の規制部材102の上面図であり、図14(b)、図15(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図14(c)、図15(c)は、そのB−B’線上の断面図であり、図14(d)、図15(d)は、そのC−C’線上の断面図である。
図14に示す従来の規制部材(以下、従来例)102では、そのストッパ部位102aが、ほぼ規制部材全面に構成され、また、支柱部位102bが、規制部材全域に渡り構成されている。そのため、前述のように板状部材104との接触により、比較的大きな摩擦力及び固着力が作用し、駆動電圧が増加した。
図15に示す、本発明の実施例1の複数の規制部材102の各々の支柱部位102bは、図15(b)に示すように、分割された構造であることを特徴とする。また、分割された支柱部位102bは、図15(a)に示すように、四角柱形状である。このような構造とすることにより、板状部材104との接触面積が低減されるので、上記摩擦力が低下し、駆動電圧を低減することが出来る。
次に、図16、図17、図18、図19は、それぞれ本発明の実施例2、実施例3、実施例4、実施例5の規制部材を示す。図16(a)、17(a)、18(a)、19(a)は、任意の1個の規制部材102の上面図であり、図16(b)、17(b)、18(b)、19(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図16(c)、17(c)、18(c)、19(c)は、そのB−B’線上の断面図であり、図16(d)、17(d)、18(d)、19(d)は、そのC−C’線上の断面図である。
本発明の実施例2、実施例3、実施例4、実施例5は、分割された支柱部位と板状部材の側面がほぼ点で接する構造であることを特徴としている。
分割された支柱部位102bは、図16(a)〜図19(a)に示すように円柱形状である。このような構造とすることにより、板状部材104との接触は円に対して線が点で接するように、接触面積が大幅に低減されるので、上記摩擦力が大幅に低下し、駆動電圧を低減することが出来る。図16〜図19は、支柱部位102bの分割本数及びストッパ102aの形状が異なっている例であり、板状部材の形状や規制部材の大きさ等により必要に応じて選択して良い。
図20、図21は、それぞれ本発明の実施例6、実施例7の規制部材を示す。図20(a)、図21(a)は、任意の1個の規制部材102の上面図であり、図20(b)、図21(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図20(c)、図21(c)は、そのC−C’線上の断面図である。
本発明の実施例6、実施例7は、複数の規制部材の各々のストッパ102aが、図20(a)、図21(a)に示すように、分割された支柱部位102bに対応して分割された構造であることを特徴としている。このような構造とすることにより、板状部材104がストッパ102aを超えて飛び出さない大きさまでストッパ102aの面積を低減できるので、ストッパ102aと板状部材104との接触面積が低減でき、それにより板状部材104との接触に起因する固着力を低減し、駆動電圧を低減することが出来る。図20及び図21は、ストッパ102aの形状が異なっている例であり、板状部材の形状や規制部材の大きさ等により必要に応じて選択して良い。
図22、図23、図24は、それぞれ本発明の実施例8、実施例9、実施例10の規制部材を示す。図22(a)、図23(a)、図24(a)は、任意の1個の規制部材102の上面図であり、図22(b)、図23(b)、図24(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図22(c)は、そのC−C’線上の断面図であり、図23(c)、及び図24(c)は、そのE−E’線上の断面図であり、図22(d)はそのD−D’線上の断面図である。
本発明の実施例8、実施例9、実施例10は、複数の規制部材の各々のストッパが、図22(d)に示すように、分割された支柱部位の任意の支柱部位間でブリッジ構造であることを特徴としている。このような構造とすることにより、板状部材104がストッパ102aを超えて飛び出さない大きさまでストッパ102aの面積を低減でき、かつブリッジ構造により隣接した支柱部位が支えられるので、規制部材の自立を向上させることが出来る。すなわち駆動電圧を低減でき、かつ規制部材が破壊されにくい強固な構造とすることができる。図22〜図24は、ストッパ102aの形状が異なっている例であり、板状部材の形状や規制部材の大きさ等により必要に応じて選択して良い。
実施例10の規制部材を用いて、本発明の効果を以下説明する。図25は、実施例10の規制部材と板状部材が接触する様子を示す。図25(a)は、任意の1個の規制部材102の上面図であり、図25(b)は、斜視図である。本発明の規制部材102の形状とすることにより、図9、図10に示した従来例に比べ、板状部材104との接触面積が大幅に低減されていることが分かる。つまり、板状部材104と規制部材102bとの接触が点接触となる。それにより、板状部材104が傾斜変位する動作時や初期におけるリセット動作時に動作を妨げる摩擦力及び固着力が低減し、より低電圧な駆動を可能とすることが出来る。
次に、本発明の実施例に係る支点部材について説明する。
図26は、従来の支点部材103(図11の従来例)を示し、図27は、本発明の実施例11の支点部材103を示す。支点部材103は基板上に設けられており、支点部材103を中心として板状部材104が傾斜変位する。
図26(a)、図27(a)は、支点部材103と板状部材104を示す上面図であり、板状部材104は点線で図示した。図26(b)、図27(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図26(c)、図27(c)は、そのB−B’線上の断面図である。
図26に示す従来の支点部材103において、支点部材103は板状部材104のほぼ全長に渡り構成されている。そのため、前述のように板状部材104との接触により、比較的大きな固着力が作用し、その結果、駆動電圧が増加した。
本発明の光偏向は、1軸2次元の光偏向であり、かつ支点部材が図27(a)に示すように、光偏向の軸方向に分割されて複数個配置された構造である。また、分割された支点部材103の各々は、図27(b),(c)に示すように、頂部が尾根形状である。このような構造とすることにより、板状部材104との接触面積が低減されるので、上記固着力が低下し、駆動電圧を低減することが出来る。また、支点部材103の頂部が尾根形状であるので、板状部材104と線で接触する利点がある。
実施例11では、支点部材103の分割数が3分割であるが、図28に示す実施例12のように、支点部材103の分割数を2分割としても良い。支点部材103の位置、分割数、各尾根の長さは、板状部材104の光偏向動作の方向がずれない配置で決定することが重要であり、かつ板状部材の大きさ、厚さ、硬さに応じて、板状部材の平面性を確保できる配置とすることが重要である。
図29、図30、図31は、本発明の実施例13、実施例14、実施例15の支点部材103の実施例を示す。図29(a)、図30(a)、図31(a)は、支点部材103と板状部材104の上面図であり、板状部材104は点線で図示した。図29(b)、図30(b)、図31(b)は、そのA−A’線上の断面図であり、図29(c)、図30(c)、図31(c)は、そのB−B’線上の断面図である。
図29に示す本発明の実施例13では、分割された支点部材103の各々が角柱形状であり、図30に示す本発明の実施例14では、分割された支点部材103の各々が略円錐形状であり、図31に示す本発明の実施例15では、分割された支点部材103の各々が略円柱形状である。
分割された支点部材103を上記した構造とすることにより、板状部材104との接触面積が低減されるので、上記固着力が低下し、駆動電圧を低減できる。
また、分割された支点部材が角柱形状であるので、光偏向方向がずれ難く、支点部材のパターン化が容易(図7(a)に示す変形レジスト形状が不要)である利点がある。また、分割された支点部材が略円錐形状であるので、板状部材との接触面積を最も低減できる利点がある。また、分割された支点部材が略円柱形状であるので、板状部材との接触面積を比較的低減でき、また支点部材のパターン化が容易(図7(a)に示す変形レジスト形状が不要)である利点がある。実施例13〜15では、支点部材の分割数が3であるが、実施例12のように分割数を2としても良い。
次に、実施例14(図30)の支点部材を用いて、本発明の効果を説明する。図32は、実施例14の支点部材と板状部材が接触する様子を示し、図32(a)は上面図であり、図32(b)はA−A’線上の断面図であり、図32(c)はB−B’線上の断面図である。本発明の支点部材の形状を略円錐形状とすることにより、図11に示す従来例に比べ、板状部材との接触面積が大幅に低減されていることが分かる。それにより、板状部材が傾斜変位する動作を妨げる固着力(図中に白抜き線で示す)が低減し、より低電圧での駆動が可能となる。
次に、本発明の基板上に構成した凸形状の接触部位について説明する。
従来の板状部材104と、基板101または基板上の絶縁膜106との接触部位については、図13で説明した通りである。
図33は、本発明の実施例16に係る、基板上に構成した凸形状の接触部位107を説明する図である。図33は、本発明の光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105と基板上の絶縁膜106を示す図であり、図33(a)は上面図、図33(b)はF部におけるG−G’線上の断面図、図33(c)はF部におけるI−I’線上の断面図である。
実施例16では、板状部材104が傾斜変位により接触する基板の接触部位107を凸形状とし、板状部材104が傾斜変位により接触する基板の凸形状の接触部位107を複数個分割して配置し、さらに、基板上に設置された複数の電極と同一部材を任意の箇所に点在させることにより、凸形状の接触部位107を構成する。
図13に示す従来例では、板状部材と基板との接触部位が、板状部材のほぼ全長に渡って構成されている。そのため、前述のように板状部材104との接触により、比較的大きな固着力が作用し、その結果、駆動電圧が増加した。
それに対し、図33に示す実施例16では、板状部材104が傾斜変位により基板と接触する部位107を凸形状としているので、板状部材104と基板(実際には基板上の絶縁膜106)との接触面積を図13の従来例に比べ大幅に減少させることができ、接触部(図中に黒太線で示す)において接触する膜の表面エネルギーに応じた固着力(図中に白抜き線で示す)の総和が大幅に低下する。固着力が低減されることは傾斜変位に反する力が低減されることを意味するので、駆動電圧を低減できる。
本発明の凸形状接触部位107を分割することによる利点を、分割されずに1個で構成された凸形状の接触部位と比較して説明する。図34は、分割されずに1個で構成された凸形状の接触部位を用いた場合の不具合を説明する図である。図34は、図33と同様に、光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105と基板上の絶縁膜106を示す図であり、図34(a)は上面図、図34(b)はF部におけるG−G’線上の断面図、図34(c)はF部におけるI−I’線上の断面図である。
図34において、分割されずに凸形状接触部位107を設けた場合に、凸形状接触部位107を板状部材104の辺に沿って長く形成することは、板状部材104と基板との接触面積が低減しないので効果的でない。そのため、図34(c)に示すように、板状部材104の辺長に対して相対的に短い長さで凸形状接触部位107が構成される。
しかし、凸形状接触部位107を任意の箇所(図34では中央部)に構成すると、板状部材104との接触面積が低減されるが、傾斜変位時に板状部材104が基板に対して平行に接触せず、図34(c)に示すように斜めに接触してしまう。これにより、板状部材104の一部が基板に接触し、固着力が増加し、また、板状部材104の光偏向方向がばらつく。
それに対し、図33に示すように、分割して凸形状接触部位107を配置した場合には、基板に対し平行に板状部材104が接触するので、光偏向方向のばらつきを抑制できる。
図35は、凸形状接触部位107を分割して配置する場合の注意点を説明する図である。図35は、図33と同様に、光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105と基板上の絶縁膜106を示す図であり、図35(a)は上面図、図35(b)はF部におけるG−G’線上の断面図、図35(c)はF部におけるI−I’線上の断面図である。
図35において、分割して本発明の凸形状接触部位107を配置する場合、図35(c)に示すように、凸形状接触部位の間隔を広く配置すると、傾斜変位のための静電引力(図中に黒矢印で示す)により、凸形状接触部位107を支点として、板状部材104が座屈し、基板と接触することになる。これは前述した図34と同様に、光偏向方向がばらつき、また固着力が増加する不具合となる。従って、板状部材104が変形すなわち座屈しない間隔(距離)で、隣接する凸形状接触部位107を配置する必要がある。なお、上記した間隔(距離)は、傾斜変位のために作用する静電引力、凸部の高さ、板状部材の弾性率及び厚みなどにより、2点支持の平行平板型静電引力変形モデルを基に設計することが出来る。
本発明に係る凸形状接触部107は、基板上に設置された複数の電極と同一工程において、凸形状の接触部位をパターン化して段差を構成する。具体的には、前述の図7(b)の工程において、任意の箇所にパターン化する。それにより、工程を増やすことなく凸形状の接触部位107を構成することができ、製造コストを低減できる。
図36は、本発明の実施例17に係る、基板上に構成した凸形状の接触部位107を説明する図である。図36は、本発明の光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105を示す図であり、図36(a)は上面図、図36(b)はF部におけるG−G’線上の断面図、図36(c)はF部におけるI−I’線上の断面図である。本実施例17では、凸形状の接触部位と対向する板状部材の導電体層との間に絶縁性膜が構成されておらず、かつ凸形状の接触部位が基板上に構成された複数の電極と電気的に分離され、加えて凸形状の接触部位に板状部材に作用する電位と略同電位を付与する。
図36に示す実施例17は、板状部材104と基板との接触部位107に絶縁膜を介在させない構造とする。具体的には、図13の従来例で配置された絶縁膜106(シリコン酸化膜)を堆積させない。一般的に、酸化膜の付着力は金属膜に比べると大きいため、固着力が大きくなる。
実施例17では、板状部材104と基板との接触部位が、電極を構成する金属膜、例えばTiN膜と板状部材を構成するアルミニウム系金属膜であるので、固着力が低減され、光偏向装置の低電圧駆動が達成できる。また、複数の電極と電気的に分離されていることから、板状部材を介した複数の電極間の電気的短絡を抑制できる。
実施例17では、凸形状の接触部位107には、板状部材104に作用する電位と略同電位を付与する。具体的には、板状部材104の電位が電気的に浮いている場合(つまり、光偏向装置の駆動方法が図3の場合)では、電位aと電位cの中間の電位bと同電位とする。また、板状部材の電位を支点部材を介して付与する場合(つまり、光偏向装置の駆動方法が図6の場合)では、接地電位とする。
このように、実施例17では、固定部を持たない板状部材104が電気的に接続されていない構成、支点部材103を介して電位を供給する構成の何れの構成でも、凸形状接触部位107に対して、板状部材104に作用する電位と略同電位を付与することにより、凸形状の接触部位107との接触時に、板状部材104の電位を安定にすることができる。これにより、傾斜変位状態における電位のふらつきが抑制され、光偏向動作の誤動作を防止できる。
図37は、本発明の実施例18に係る、基板上に構成した凸形状の接触部位107を説明する図である。図37は、本発明の光偏向装置の支点部材103と板状部材104と電極105を示す図であり、図37(a)は上面図、図37(b)はF部におけるG−G’線上の断面図、図37(c)はF部におけるI−I’線上の断面図である。本実施例18では、凸形状の接触部位107と対向する板状部材104の導電体層との間に絶縁性膜106が構成され、かつ凸形状の接触部位107が基板上に構成された複数の電極105のうち、任意の電極と電気的に接続されていることを特徴としている。
図37(b)に示すように、本発明の特徴である凸形状の接触部位107と電極105が電気的に接続されている。それにより、電極105に印加した電位により発生する板状部材104との間の静電引力が、凸形状接触部位107にまで作用し、光偏向装置の低電圧駆動が達成される。また、板状部材104が傾斜して凸形状接触部位107と接触した際にも、板状部材104と凸形状接触部位107との間に絶縁膜106を配置しているので、板状部材104と電極105との絶縁性が確保され、さらには板状部材104を介した複数の電極105間の電気的短絡を防止できる。
なお、本発明の基板上に構成された凸形状の接触部位107は、電極105と同一部材で構成することが望ましいが、必ずしも同一部材である必要はない。基板に凸形状を加工しても良いし、別の部材で構成しても良い。また、実施例で説明したような平面を持つ凸形状だけでなく、円柱形状や円錐形状でも良い。さらに、凸形状接触部位107の分割数も板状部材の一辺あたり2〜3個に限定されない。
次に、本発明の実施例1(図15)の規制部材を用いた光偏向装置の構成と、その製造プロセスを説明する。図38〜図40は、実施例1の光偏向装置の製造工程を示す。図38〜図40の(a1)〜(i1)は、J−J’線上の断面概略図であり、図38〜図40の(a2)〜(i2)は上面図である。
図38(a1)、(a2):シリコン基板101上に、支点部材103を構成するシリコン酸化膜がプラズマCVD法により堆積され、その後、濃度階調性を有するフォトマスクを用いた写真製版法やレジストパターン形成後熱変形させる写真製版法により、支点部材103の形状とほぼ同形状の任意の膜厚を有するレジストパターンを形成し、その後、ドライエッチング法により目的形状の支点部材103が形成される。なお、シリコン基板101上にシリコン酸化膜を形成し、その上層の一部を同様の加工を行っても良い。
図38(b1)、(b2):電極105a〜105dを窒化チタン(TiN)膜の薄膜で形成する。TiN薄膜は、TiをターゲットとしたDCマグネトロンスパッタ法により成膜し、写真製版法及びドライエッチング法により複数の電極105a〜105dとしてパターン化した。なお、電極は必ずしもTiNに限るものではない。例えばAl系金属膜であっても良い。
図38(c1)、(c2):電極105a〜105dの保護膜106として、プラズマCVD法によるシリコン酸化膜を形成した。
図39(d1)、(d2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、CMP技術を用いて処理時間制御により平坦化した。この時、支点部材103の頂部上に残る非晶質シリコン膜の膜厚を制御することが重要である。残存する非晶質シリコン膜が第1の犠牲層401である。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜に代表される耐熱性を有する有機膜や、感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や、多結晶シリコン膜などを用いることも出来、平坦化の手法としては、熱処理によるリフロー法やドライエッチングによるエッチバック法を用いることも出来る。
図39(e1)、(e2):光偏向装置の光反射領域を構成する板状部材を堆積、パターン化する。板状部材は高い光反射性を有しかつ導電体層104としての役割を果たすために、アルミニウム膜をスパッタリング技術により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法によりパターン化した。なお、板状部材は必ずしも一層であるとは限らず、2〜3層であっても良い。2〜3層化することにより、高反射と高弾性率を併せ持つ板状部材が得られる。
図39(f1)、(f2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、第2の犠牲層402とした。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜や感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や多結晶シリコン膜などを用いることも出来る。
図40(g1)、(g2):光偏向装置を個別に分離し、板状部材104の周囲にストッパを有する規制部材102を配置するために、写真製版法及びドライエッチング法により、第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を同時にパターン化した。該工程において、本発明の特徴である規制部材の支柱部位に対応する分割された開口部411が形成される。
図40(h1)、(h2):シリコン酸化膜をプラズマCVD法により堆積させ、本発明の特徴である規制部材の支柱部位が構成される。また、写真製版法及びドライエッチング法により任意の個所にパターン化して、規制部材102のストッパ部位が構成される。なお、ストッパを有する規制部材102は、図40に示す配置に留まらず、板状部材を制限空間に留める位置であれば良い。
図40(i1)、(i2):残存する第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を、ウェットエッチング法により開口部を通してエッチング除去し、板状部材104を可動範囲が制限された空間に配置して、本発明の光偏向装置が完成する。犠牲層エッチングは犠牲層の種類に応じて、ウェットエッチングに限らずドライエッチングにより実施することも出来る。なお、犠牲層エッチングは基板平面方向にエッチングを進行させるため、板状部材104の材質をエッチングされにくい材料で最適化することが重要である。
上記したように製造された、本発明の分割された支柱部位の実験結果を以下に説明する。実験では、光偏向装置の板状部材104としてAl系金属膜を用い、その寸法を13μm×13μm×厚さ0.15μmとし、傾斜変位が±10°で行なわれる構造とした場合に、電極105〜105dに印加される駆動電圧により板状部材104が傾斜変位する時間(以下、応答時間)が5μsecとなる駆動電圧を、本発明と従来例とで比較した。
従来例(図14)では、傾斜変位に際し、規制部材における接触反力に起因して変位が妨げられ、それに抗する静電引力を作用させるため、駆動電圧が15Vとなる。
それに対し、実施例1(図15)では、支柱部材が分割されているため、板状部材との接触面積が低減し、それにより接触反力が低減して駆動電圧が低くなる。実際には12Vが得られた。また、実施例2〜5(図16〜19)では、板状部材と支柱部材の接触面積がさらに低減され、より低電圧駆動が可能となり、実際には10Vで駆動できた。
また、従来例(図14)では、ストッパ部位と板状部材の接触固着力により傾斜変位が可能な最も低い駆動電圧(但し、応答時間を考慮しない)が10Vであるのに対し、実施例6〜10(図20〜24)では、ストッパ部位との接触面積が低減され、傾斜変位が可能な最も低い駆動電圧が5Vであった。
さらに、実施例6、7に比較して、実施例8〜10の光偏向装置では、分割された支柱部材がストッパ部位でブリッジされているので、規制部材の自立の信頼性が向上され、光偏向装置の歩留が向上する。実際には、実施例6、7の製造歩留が80%であるのに対し、実施例8〜10では88%の歩留が得られた。
次に、本発明の実施例11(図27)の支点部材を用いた光偏向装置の構成と、その製造プロセスを説明する。図41〜図43は、実施例11の光偏向装置の製造工程を示す。図41〜図43の(a1)〜(i1)は、B−B’線上の断面概略図であり、図41〜図43の(a2)〜(i2)は上面図である。
図41(a1)、(a2):シリコン基板101上に、支点部材103を構成するシリコン酸化膜がプラズマCVD法により堆積され、その後、濃度階調性を有するフォトマスクを用いた写真製版法やレジストパターン形成後熱変形させる写真製版法により、支点部材の形状とほぼ同形状の任意の膜厚を有するレジストパターンを形成し、その後、ドライエッチング法により本発明の特徴である1軸方向に分割され配置された目的形状の支点部材103が形成される。なお、シリコン基板101上にシリコン酸化膜を形成し、その上層の一部を同様の加工を行っても良い。
図41(b1)、(b2):電極105a〜105dを窒化チタン(TiN)膜の薄膜で形成する。TiN薄膜は、TiをターゲットとしたDCマグネトロンスパッタ法により成膜し、写真製版法及びドライエッチング法により複数の電極105a〜105dとしてパターン化した。なお、電極は必ずしもTiNに限るものではない。例えばAl系金属膜であっても良い。
図41(c1)、(c2):電極105a〜105dの保護膜106として、プラズマCVD法によるシリコン酸化膜を形成した。
図42(d1)、(d2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、CMP技術を用いて処理時間制御により平坦化した。この時、支点部材103の頂部上に残る非晶質シリコン膜の膜厚を制御することが重要である。残存する非晶質シリコン膜が第1の犠牲層401である。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜に代表される耐熱性を有する有機膜や、感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や、多結晶シリコン膜などを用いることも出来、平坦化の手法としては、熱処理によるリフロー法やドライエッチングによるエッチバック法を用いることも出来る。
図42(e1)、(e2):光偏向装置の光反射領域を構成する板状部材を堆積、パターン化する。板状部材は高い光反射性を有し、かつ導電体層104としての役割を果たすために、アルミニウム膜をスパッタリング技術により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法によりパターン化した。なお、板状部材は必ずしも一層であるとは限らず、2〜3層であっても良い。2〜3層化することにより、高反射と高弾性率を併せ持つ板状部材が得られる。
図42(f1)、(f2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、第2の犠牲層402とした。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜や感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や多結晶シリコン膜などを用いることも出来る。
図43(g1)、(g2):光偏向装置を個別に分離し、板状部材104の周囲にストッパを有する規制部材102を配置するために、写真製版法及びドライエッチング法により、第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を同時にパターン化した。該工程において、規制部材に対応する開口部411が形成される。
図43(h1)、(h2):シリコン酸化膜をプラズマCVD法により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法により任意の個所にパターン化して、規制部材102が構成される。なお、ストッパを有する規制部材102は、図43に示す配置に留まらず、板状部材を制限空間に留める位置であれば良い。
図43(i1)、(i2):残存する第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を、ウェットエッチング法により開口部を通してエッチング除去し、板状部材104を可動範囲が制限された空間に配置して、本発明の光偏向装置が完成する。該犠牲層エッチングは犠牲層の種類に応じて、ウェットエッチングに限らずドライエッチングにより実施することも出来る。なお、犠牲層エッチングは基板平面方向にエッチングを進行させるため、板状部材104の材質をエッチングされにくい材料で最適化することが重要である。
上記したように製造された、本発明の分割された支点部位の実験結果を以下に説明する。実験では、光偏向装置の板状部材104としてAl系金属膜を用い、その寸法を13μm×13μm×厚さ0.15μmとし、傾斜変位が±10°で行なわれる構造とした場合に、電極105〜105dに印加される駆動電圧により板状部材104が傾斜変位する時間(以下、応答時間)が5μsecとなる駆動電圧を、本発明と従来例とで比較した。本発明の光偏向装置と従来例の光偏向装置は、共に1軸2次元に光偏向する構成である。
従来例(図26)では、傾斜変位に際し、支点部材における接触反力に起因して変位が妨げられ、それに抗する静電引力を作用させるため、駆動電圧が24Vとなった。
それに対し、実施例11(図27)では、支点部材が分割されているため、板状部材との接触面積が低減し、それにより接触反力が低減して駆動電圧が低くなる。実際には19Vが得られた。 また、実施例12(図28)では、板状部材と支点部材の接触面積がさらに低減され、より低電圧駆動が可能となり、実際に16Vで駆動できた。同様に、実施例13(図29)では20V、実施例14(図30)では15V、実施例15(図31)でも15Vの低電圧駆動が可能であった。
次に、本発明の実施例16(図33)の凸形状接触部位を有する光偏向装置の構成と、その製造プロセスを説明する。図44〜図46は、実施例16の光偏向装置の製造工程を示す。図44〜図46の(a1)〜(i1)は、K−K’線上の断面概略図であり、図44〜図46の(a2)〜(i2)は上面図である。
図44(a1)、(a2):シリコン基板101上に、支点部材103を構成するシリコン酸化膜がプラズマCVD法により堆積され、その後、濃度階調性を有するフォトマスクを用いた写真製版法やレジストパターン形成後熱変形させる写真製版法により、支点部材の形状とほぼ同形状の任意の膜厚を有するレジストパターンを形成し、その後、ドライエッチング法により目的形状の支点部材103が形成される。なお、シリコン基板101上にシリコン酸化膜を形成し、その上層の一部を同様の加工を行っても良い。
図44(b1)、(b2):電極105a〜105dを窒化チタン(TiN)膜の薄膜で形成する。TiN薄膜は、TiをターゲットとしたDCマグネトロンスパッタ法により成膜し、写真製版法及びドライエッチング法により複数の電極105a〜105dとしてパターン化した。この時、本発明の特徴である凸形状接触部位107が同時にパターン化される。なお、電極構成材は必ずしもTiNに限るものではない。例えばAl系金属膜であっても良い。
図44(c1)、(c2):電極105a〜105dの保護膜106として、プラズマCVD法によるシリコン酸化膜を形成した。
図45(d1)、(d2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、CMP技術を用いて処理時間制御により平坦化した。この時、支点部材103の頂部上に残る非晶質シリコン膜の膜厚を制御することが重要である。残存する非晶質シリコン膜が第1の犠牲層401である。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜に代表される耐熱性を有する有機膜や、感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や、多結晶シリコン膜などを用いることも出来、平坦化の手法としては、熱処理によるリフロー法やドライエッチングによるエッチバック法を用いることも出来る。
図45(e1)、(e2):光偏向装置の光反射領域を構成する板状部材を堆積、パターン化する。板状部材は高い光反射性を有し、かつ導電体層104としての役割を果たすために、アルミニウム膜をスパッタリング技術により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法によりパターン化した。なお、板状部材は必ずしも一層であるとは限らず、2〜3層であっても良い。2〜3層化することにより、高反射と高弾性率を併せ持つ板状部材が得られる。
図45(f1)、(f2):非晶質なシリコン膜をスパッタ法により堆積させ、第2の犠牲層402とした。なお、犠牲層としては上記膜以外にもポリイミド膜や感光性有機膜(一般的に半導体プロセスで用いられるレジスト膜)や多結晶シリコン膜などを用いることも出来る。
図46(g1)、(g2):光偏向装置を個別に分離し、板状部材104の周囲にストッパを有する規制部材102を配置するために、写真製版法及びドライエッチング法により、第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を同時にパターン化した。該工程において、規制部材に対応する開口部411が形成される。
図46(h1)、(h2):シリコン酸化膜をプラズマCVD法により堆積させ、写真製版法及びドライエッチング法により任意の個所にパターン化して、規制部材102が構成される。なお、ストッパを有する規制部材102は、図46に示す配置に留まらず、板状部材を制限空間に留める位置であれば良い。
図46(i1)、(i2):残存する第1の犠牲層401及び第2の犠牲層402を、ウェットエッチング法により開口部を通してエッチング除去し、板状部材104を可動範囲が制限された空間に配置して、本発明の光偏向装置が完成する。該犠牲層エッチングは犠牲層の種類に応じて、ウェットエッチングに限らずドライエッチングにより実施することも出来る。なお、犠牲層エッチングは基板平面方向にエッチングを進行させるため、板状部材104の材質をエッチングされにくい材料で最適化することが重要である。
上記したように製造された、本発明の凸形状の接触部位の実験結果を以下に説明する。実験では、光偏向装置の板状部材104としてAl系金属膜を用い、その寸法を13μm×13μm×厚さ0.15μmとし、傾斜変位が±10°で行なわれる構造とした場合に、傾斜変位が可能な最も低い駆動電圧(但し、板状部材が傾斜変位に要する時間、すなわち応答時間を考慮しない)を、本発明と従来例とで比較した。
従来例(図13)では、板状部材の一辺の全長において基板と板状部材が接触する。そのため、全長に渡り接触による固着力が作用し、静電引力に対する反力となる。その結果、最小の駆動電圧が10Vとなった。これは、10V未満では固着力が静電引力に比べ優り、傾斜変位が開始しないことを意味する。
一方、実施例16(図33)では、板状部材と基板との接触面積が低減され、傾斜変位が可能な最も低い駆動電圧が5Vとなった。なお、実施例16における、凸形状の接触部位が板状部材と接触する長さは1箇所あたり1.5μmとなるように設計されている。実施例18(図37)についても同様の結果が得られた。
また、実施例17(図36)では、凸形状の接触部位の効果に加え、接触部位にシリコン酸化膜等の絶縁膜が構成されていないので、板状部材との接触固着力がさらに低減され、傾斜変位が可能な最も低い駆動電圧が3Vとなり、低電圧駆動が可能となった。
図47は、本発明の実施例19、20に係る光偏向アレーを示す。本発明の光偏向アレーは、前述した光偏向装置を複数1次元または2次元に配置している。
図47(a)は、図23の規制部材102を用いた光偏向装置を、光偏向方向に対して垂直方向に複数個一列に整列して配置した1軸2次元光偏向アレーの上面図であり、実施例19の1次元アレー(配列の1次元アレー)である。
図47(b)は、図23の規制部材102と図30の支点部材103を用いた光偏向装置を2軸の光偏向方向に複数個整列して配置した2軸3次元光偏向アレーの上面図であり、実施例20の2次元アレー(配列の2次元アレー)である。
図48は、本発明の実施例21、22に係る光偏向アレーを示す。本発明の光偏向アレーは、前述した光偏向装置を複数1次元または2次元に配置している。
図48(a)は、図30の支点部材103を用いた光偏向装置を、光偏向方向に対して垂直方向に複数個一列に整列して配置した1軸2次元光偏向アレーの上面図であり、実施例21の1次元アレー(配列の1次元アレー)である。
図48(b)は、図30の支点部材103を用いた光偏向装置を2軸の光偏向方向に複数個整列して配置した2軸3次元光偏向アレーの上面図であり、実施例22の2次元アレー(配列の2次元アレー)である。
図49は、本発明の実施例23、24に係る光偏向アレーを示す。本発明の光偏向アレーは、前述した光偏向装置を複数1次元または2次元に配置している。
図49(a)は、図33の凸形状接触部位107を用いた光偏向装置を、光偏向方向に対して垂直方向に複数個一列に整列して配置した1軸2次元光偏向アレーの上面図であり、実施例23の1次元アレー(配列の1次元アレー)である。
図49(b)は、図33の凸形状接触部位107と図30の支点部材103を用いた光偏向装置を2軸の光偏向方向に複数個整列して配置した2軸3次元光偏向アレーの上面図であり、実施例24の2次元アレー(配列の2次元アレー)である。
上記したように、本発明の光偏向装置を複数1次元又は2次元に配置しアレーとすることにより、本発明の光偏向装置は、低電圧駆動の光偏向アレーを提供できる。
図50は、実施例25に係る画像形成装置を示す。図50において、実施例25の画像形成装置は、図47、48、49に示す光偏向アレー1を、潜像形成手段である光書込みユニット3002として用いる。
電子写真プロセスにより光書き込みを行なって画像を形成する画像形成装置3000は、矢印D方向に回転可能に保持されて形成画像を担持する画像担持体3001のドラム形状の感光体を有し、帯電手段3005で均一に帯電された画像担持体3001の感光体上を光偏向アレー1からなる光書込みユニット3002で光書き込みを行なって潜像を形成し、潜像を現像手段3003により感光体上にトナー画像として形成し、その後、トナー画像を転写手段3004で被転写体(P)に転写して、被転写体(P)に転写されたトナー画像を定着手段3006で定着した後に、被転写体(P)を排紙トレイ3007に排紙して収納される。他方、トナー画像を転写手段3004で被転写体(P)に転写した後の画像担持体3001の感光体は、クリーニング手段3008でクリーニングされて次工程の画像形成に備える。
光書込みユニット3002は、光源3002aからの入射光束(R)を、第1のレンズシステム3002bを介して光偏向アレー1に照射し、各光偏向装置は画像情報に応じて傾斜変位し反射光方向を変え、入射光束(R)を第2のレンズシステム3002cを通じて画像担持体3001の感光体上の表面に結像させる。
本発明の光偏向アレーを画像形成装置の光書込みユニットとして用いることにより、低電圧駆動が可能な光書き込みユニットを提供できる。
図51は、本発明の実施例26に係る画像投影表示装置を示す。実施例26の画像投影表示装置3100は、光源3101からの光束(R)を画像情報に応じて目的の方向へ反射させる表示ユニット3103として、図47、48、49の光偏向アレーを用いる。
図51において、3101は白色光源などのレーザー光源に比べ安価な光源手段(光源)である。3102は光源からの光束を本発明の光偏向アレーに導く照明光学系である。3103は本発明の光偏向アレーである。3104、3105は、表示画面の垂直方向の画素列及び水平方向の画素列に対応して2次元に配置された光偏向アレーにより目的方向に偏向された光束を、拡大投影する投影光学系である。3106は光偏向アレー3103の動作を制御する制御システムであり、電子回路により構成される。図中に点線で光束(R)の1部を示したが、光源3101から発せられた光は照明光学系3102により光偏向アレー3103上に導かれ、3103で偏向された光束は投影光学系3104、3105により、2次元画像として投影される。なお、図51において、3107は、回転カラーホィールであり、光偏向アレーに導かれる入射光束の波長を選択するために用いられる。実施例26の画像投影表示装置は、本発明の光偏向アレーを表示ユニットとして用いているので、低電圧駆動が可能な表示ユニットを提供できる。