JP2005291184A - 圧縮機用翼揺動制御装置、ファン用翼揺動制御装置、圧縮機、及びファン - Google Patents

圧縮機用翼揺動制御装置、ファン用翼揺動制御装置、圧縮機、及びファン Download PDF

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Abstract

【課題】 飛行高度20000m付近まで高亜音速機が上昇するに際に、ジェットエンジンがストール現象につながるような不安定な作動にならないようにする。
【解決手段】 目標揺動角度と圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数との基準特性曲線BCを表す基準データを記憶すると共に、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数以上の部分についてのみ、基準特性曲線BCに対して閉方向へ変形させた変形特性曲線DC1,DC2,DC3を表す変形データを記憶する記憶手段15と;基準特性曲線4a,4bに基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数から全ての可変静翼7a,7bの目標揺動角度を取得すると共に、基準特性曲線BC又は変形特性曲線DC1,DC2,DC3に基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度から全ての可変案内翼11の目標揺動角度を取得する目標揺動角度取得手段16と;を具備したこと。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ジェットエンジンの要素である圧縮機及びファンに関するものであって、特に、可変静翼及び可変案内翼の揺動動作を制御する圧縮機用翼揺動制御装置及びファン用翼揺動制御装置に関する。
高亜音速機に搭載されるジェットエンジンは、圧縮機を要素の1つとしており、この圧縮機は、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース内に形成されたエンジン流路内へ取入れた空気を圧縮するものであって、一般的な構成は次のようになる。
即ち、前記エンジンケース内には、複数段の圧縮機ロータがエンジン軸方向に沿って設けられており、各圧縮機ロータは、それぞれ、エンジン軸心を中心として回転可能に構成されてあって、複数の動翼を周方向に備えている。また、前記エンジンケース内には、複数段の圧縮機ステータがエンジン軸方向に沿って複数段の前記圧縮機ロータと交互に設けられており、各圧縮機ステータは、それぞれ、前記エンジン流路を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ揺動可能な複数の可変静翼を周方向に備えている。更に、前記エンジンケース内における最前段の前記圧縮機ロータの前方側(入口側)には、案内ステータが設けられており、この案内ステータは、前記開閉方向へ揺動可能な複数の可変案内翼を周方向に備えている。
前記エンジンケースには、全ての前記可変静翼及び全ての前記可変案内翼を前記開閉方向へ同期して揺動させる複数のアクチュエータが設けられている。ここで、複数の前記アクチュエータは、前記圧縮機ロータの修正回転数に応じて制御されるようになっている。
従って、複数段の前記圧縮機ロータを回転させることにより、前記エンジン流路内へ取入れた空気を、前記案内ステータ及び複数段の圧縮機ステータによって整流しつつ、複数段の前記圧縮機ロータと複数段の前記圧縮機ステータ(前記案内ステータ)の協働によって圧縮することができる。一方、前記圧縮機ロータの修正回転数に応じて複数の前記アクチュエータを制御することにより、前記可変静翼及び前記可変案内翼に後方動翼の衝撃波との干渉による層流剥離が生じることを抑制しつつ、十分な流量の空気を後方へ送り込むことできる。
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
特開2002−310100号公報 特開2000−46688号公報
ところで、巡航時における前記高亜音速機の飛行高度は、通常、10000m程度にまで達するが、前記高亜音速機の飛行高度が更に高くなると、前記動翼の空力負荷が急激に増大して、前記ジェットエンジンがストール現象につながるような不安定な作動になることがある。
なお、従来において、前記高亜音速機の飛行高度と前記動翼の空力負荷との関係については、十分な知見はなかった。また、前述の問題は、前記圧縮機だけではなく、ファン案内ステータ付きのファンにおいても生じるものである。
そこで、本発明は、前記高亜音速機の飛行高度と前記動翼の空力負荷との関係において得た新規な知見に基づく、新規な構成の圧縮機用翼揺動制御装置、新規な構成のファン用翼揺動制御装置、新規な構成の圧縮機、及び新規な構成のファンを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明にあっては、ジェットエンジンの要素の1つである圧縮機に用いられ、複数段の圧縮機ステータにおける全ての可変静翼、及び最前段の圧縮機ロータの前方側に配置した案内ステータにおける全ての可変案内翼の揺動動作を制御する圧縮機用翼揺動制御装置において、
全ての前記可変静翼を前記ジェットエンジンのエンジン流路を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ同期して揺動させる第1揺動手段と;
全ての前記可変案内翼を前記開閉方向へ同期して揺動させる第2揺動手段と;
前記開閉方向における前記可変静翼又は前記可変案内翼の目標揺動角度と前記圧縮機ロータの修正回転数との基準特性曲線を表す基準データを記憶すると共に、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する前記圧縮機ロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させた変形特性曲線を表す変形データを記憶する記憶手段と;
前記基準特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得すると共に、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得する目標揺動角度取得手段と;
全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御すると共に、全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する制御手段と;
を具備してなることを特徴とする。
ここで、前記翼揺動制御装置は、入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、可変案内翼の入口側のレイノルズ数(入口レイノルズ数)が小さくなると、換言すれば、前記圧縮機ロータの修正回転数が入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する修正回転数以上であって、飛行高度が高くなると、1段動翼のみの空力負荷が急激に増大するという、新規な知見に基づいて発明されたものである。
請求項1に記載の発明特定事項によると、前記記憶手段によって前記基準特性曲線を表す前記基準データ及び前記変形特性曲線を表す前記変形データを予め記憶しておく。そして、前記目標揺動角度取得手段によって前記基準特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得しつつ、前記制御手段によって全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御する。また、前記目標揺動角取得手段によって前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得しつつ、前記制御手段によって全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する。これにより、全ての前記可変静翼及び全ての可変案内翼の揺動動作を制御することができる。
ここで、前記変形特性曲線は、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する前記圧縮機ロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させたものであって、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得しているため、空気の入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超えても、前記可変案内翼に層流剥離が生じることを抑制することができる。
請求項2に記載の発明にあっては、ジェットエンジンの要素の1つであるファンに用いられ、複数段のファンステータにおける全ての可変静翼、及び最前段のファンロータの前方側に配置したファン案内ステータにおける全ての可変案内翼の揺動動作を制御するファン用翼揺動制御装置において、
全ての前記可変静翼を前記ジェットエンジンのエンジン流路を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ同期して揺動させる第1揺動手段と;
全ての前記可変案内翼を前記開閉方向へ同期して揺動させる第2揺動手段と;
前記開閉方向における前記可変静翼又は前記可変案内翼の目標揺動角度と前記ファンロータの修正回転数との基準特性曲線を表す基準データを記憶すると共に、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、マッハ数1.2に対応する前記ファンロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させた変形特性曲線を表す変形データを記憶する記憶手段と;
前記基準特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得すると共に、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得する目標揺動角度取得手段と;
全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御すると共に、全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する制御手段と;
を具備してなることを特徴とする。
ここで、前記翼揺動制御装置は、入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、可変案内翼の入口側のレイノルズ数(入口レイノルズ数)が小さくなると、換言すれば、前記ファンロータの修正回転数が入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する修正回転数以上であって、飛行高度が高くなると、1段動翼のみの空力負荷が急激に増大するという、新規な知見に基づいて発明されたものである。
請求項2に記載の発明特定事項によると、前記記憶手段によって前記基準特性曲線を表す前記基準データ及び前記変形特性曲線を表す前記変形データを予め記憶しておく。そして、前記目標揺動角度取得手段によって前記基準特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得しつつ、前記制御手段によって全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御する。また、前記目標揺動角取得手段によって前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得しつつ、前記制御手段によって全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する。これにより、全ての前記可変静翼及び全ての可変案内翼の揺動動作を制御することができる。
ここで、前記変形特性曲線は、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する前記ファンロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させたものであって、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得しているため、空気の入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超えても、前記可変案内翼に層流剥離が生じることを抑制することができる。
請求項3に記載の発明にあっては、ジェットエンジンの要素の1つであって、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース内に形成されたエンジン流路内へ取入れた空気を圧縮する圧縮機において、
前記エンジンケース内にエンジン軸方向に沿って設けられ、それぞれエンジン軸心を中心として回転可能に構成され、それぞれ複数の動翼を周方向に備えた複数段の圧縮機ロータと;
前記エンジンケース内にエンジン軸方向に沿って複数段の前記圧縮機ロータと交互に設けられ、それぞれ複数の可変静翼を周方向に備えた複数段の圧縮機ステータと;
前記エンジンケース内における最前段の前記圧縮機ロータの前方側に設けられ、複数の可変案内翼を周方向に備えた案内ステータと;
請求項1に記載の発明特定事項からなる圧縮機用翼揺動制御装置と;
を具備してなることを特徴とする。
請求項3に記載の発明特定事項によると、請求項1に記載の発明特定事項による作用の他に、複数段の前記圧縮機ロータを回転させることにより、前記エンジン流路内へ取入れた空気を、前記案内ステータ及び複数段の圧縮機ステータによって整流しつつ、複数段の前記圧縮機ロータと複数段の前記圧縮機ステータ(前記案内ステータ)の協働によって圧縮することができる。
請求項4に記載の発明にあっては、ジェットエンジンの要素の1つであって、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース内に形成されたエンジン流路内へ空気を取入れるジエットエンジン用ファンにおいて、
前記エンジンケース内に設けられ、エンジン軸心を中心として回転可能に構成され、周方向に複数の動翼を備えたファンロータと;
前記エンジンケース内における前記ファンロータの後方側に設けられ、複数の静翼を周方向に備えたファンステータと;
前記エンジンケース内における前記ファンロータの前方側に設けられ、複数の可変案内翼を備えたファン案内ステータと;
請求項2に記載の発明特定事項からなるファン用翼揺動制御装置と;
を具備してなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明特定事項によると、複数段の前記ファンロータを回転させることにより、前記案内ステータ及び複数段の圧縮機ステータによって空気を整流しつつ、前記エンジン流路内に取入れることができる。
請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、空気の入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超えて高高度になっても、前記可変案内翼に層流剥離が生じることを抑制することができるため、前記高高度まで前記高亜音速機が上昇するに際に、動翼の空力負荷が急激に増大することがなく、前記ジェットエンジンがストール現象につながるような不安定な作動になることを回避できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の最良の形態に係わる圧縮機の一般的な構成、高亜音速機の飛行高度と動翼の空力負荷との関係について得た新規な知見、及びこの新規な知見に基づく圧縮機用翼揺動制御装置の新規な構成を順次説明する。なお、「前後」とは、特許公報掲載時の向きを基準として図1において左右のことをいう。
図1に示すように、本発明に最良の形態に係わる圧縮機(高圧圧縮機)1は、高亜音速機に搭載されるジェットエンジンの要素の1つであって、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース2内に形成されたエンジン流路3内へ送り込まれた空気を圧縮するものである。そして、圧縮機1の一般的な構成は、次のようになる。
即ち、エンジンケース2内には、複数段(本発明の最良の形態にあっては2段)の圧縮機ロータ4a,4bがエンジン軸方向(図1において左右方向)に沿って設けられており、各圧縮機ロータ4a,4bは、それぞれ、エンジン軸心を中心として回転可能に構成されてあって、複数(図1には1つのみ図示)の動翼5a,5bを周方向に備えている。ここで、複数段の圧縮機ロータ4a,4bは、ジェットエンジン用タービンにおける複数段のタービンロータ(図示省略)に一体的に連結されている。
また、エンジンケース2内には、複数段(本発明の最良の形態にあっては2段)の圧縮機ステータ6a,6bがエンジン軸方向に沿って複数段の圧縮機ロータ4a,4bと交互に設けられており、各圧縮機ステータ6a,6bは、それぞれ、複数(図1には1つのみ図示)の可変静翼7a,7bを周方向に備えている。ここで、各可変静翼7a,7bは、それぞれ、エンジン流路3を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ揺動軸8を介して揺動可能に構成されてあって(図3参照)、エンジンケース2には、全ての可変静翼7a,7bを前記開閉方向へ同期して揺動させる複数(図1には1つのみ図示)の第1アクチュエータ9が設けられている。
更に、エンジンケース2内における最前段の圧縮機ロータ4aの前方側(入口側)には、案内ステータ10が設けられており、この案内ステータ10は、複数の可変案内翼11を周方向に備えている。ここで、各可変案内翼11は、それぞれ、前記開閉方向へ揺動軸12を介して揺動可能に構成されてあって(図3参照)、エンジンケース2には、全ての可変案内翼11を前記開閉方向へ同期して揺動させる複数(図1には1つのみ図示)の第2アクチュエータ13が設けられている。
なお、最前段の圧縮機ロータ4aの動翼5aを1段動翼といい、2段の圧縮機ロータ4bの動翼5bを2段動翼という。同様に、最前段の圧縮機ステータ6aの可変静翼7aを1段可変静翼といい、2段の圧縮機ステータ6bの可変静翼7bを2段可変静翼という。
従って、前記ジェットエンジン用タービンの駆動により複数段の圧縮機ロータ4a,4bを複数段の前記タービンロータと一体的に回転させることにより、エンジン流路3内へ取入れた空気を、案内ステータ10及び複数段の圧縮機ステータ6a,6bによって整流しつつ、複数段の圧縮機ロータ4a,4bと複数段の前記圧縮機ステータ6a,6b(案内ステータ10)の協働によって圧縮することができ
次に、前記高亜音速機の飛行高度と動翼5a,5bの空力負荷との関係のついて得た新規な知見を説明する。
この新規な知見を得るにあたって、圧縮機1を模擬した模擬圧縮機要素(図示省略)を用いて、レイノルズ数変更試験を行った。このレイノルズ数変更試験は、1段動翼5a(2段動翼5b)の入口からみた空気の入口チップ側相対マッハ数(M=0.8、M=1.2、M=1.35)毎に、可変案内翼11の入口側のレイノルズ数(入口レイノルズ数)Reの変更に伴う1段動翼5a(2段動翼5b)の空力負荷の変動を調べる試験である。
前記レイノルズ数変更試験の試験結果をとして、可変案内翼11の入口レイノルズ数Reと1段動翼5aの空力負荷との関係をまとめると、図4に示すようになり、可変案内翼11の入口レイノルズ数Reと2段動翼5bの空力負荷との関係をまとめると、図5に示すようになる。なお、図4及び図5における空力負荷は、1段動翼5a(2段動翼5b)の入口と出口の静圧差を無次元化した値である。
そして、図4に示す試験結果から、入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、可変案内翼11の入口レイノルズ数が小さくなると、1段動翼5aの空力負荷が急激に増大することが判明した。一方、図5に示す試験結果から、入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、可変案内翼11の入口レイノルズ数が小さくなっても、2段動翼5bの空力負荷は変化することがなく、1段動翼5aの空力負荷の変動現象は後続の2段動翼5bの空力負荷に反映されないことが判明した。
よって、入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、入口レイノルズ数が小さくなると、換言すれば、圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数が入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する修正回転数以上であって、飛行高度が高くなると、1段動翼5aからの衝撃波との干渉によって可変案内翼11に層流剥離が生じて、1段動翼5aのみの空力負荷が急激に増大する傾向にある(前記高亜音速機の飛行高度と動翼5a,5bの空力負荷との関係についての新規な知見)。
次に、新規な知見に基づく新規な構成の圧縮機用翼揺動制御装置14について説明する。
圧縮機用翼揺動制御装置14は、全ての可変静翼7a,7b及び全ての可変案内翼11の揺動動作を制御するものであって、前述の複数の第1アクチュエータ9及び複数の第2アクチュエータ13の他に、記憶部15(データベース)と、目標揺動角度取得部16と、制御部17とを具備している。そして、記憶部15、目標揺動角度取得部16、制御部17の具体的な内容は、次のようになる。
即ち、図2に示すように、記憶部15は、前記開閉方向における可変静翼7a,7b又は可変案内翼11の目標揺動角度と圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数との基準特性曲線BCを示す基準データを記憶するものである。なお、圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数は、圧縮機1の入口の全温を考慮した圧縮機ロータ4a,4bの回転数ことであって、図2中における圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数は、便宜上、定格回転数に対する%回転で表している。
記憶部15は、飛行高度が10000mを超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数以上の部分についてのみ、飛行高度に応じて基準特性曲線BCに対して前記閉方向へ変形させた変形特性曲線DC1,DC2,DC3を示す変形データを記憶するものである。なお、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数以上の部分とは、本発明の最良の形態にあっては、90%回転以上の部分のことをいう。
ここで、変形特性曲線DC1は、飛行高度が10000mよりも高くかつ15000m以下の場合における変形特性曲線であって、90%回転まで基準特性曲線BCと同じ軌跡を描くようになっている。また、変形特性曲線DC2は、飛行高度が15000mよりも高くかつ20000m以下の場合における変形特性曲線であって、90%回転まで基準特性曲線BCと同じ軌跡を描くようになっており、90%回転以上の部分は、変形特性曲線DC1よりも前記閉方向へ変形している。更に、変形特性曲線DC2は、飛行高度が20000mよりも高くかつ24000m以下の場合における変形特性曲線であって、90%回転まで基準特性曲線BCと同じ軌跡を描くようになっており、90%回転以上の部分は、変形特性曲線DC2よりも前記閉方向へ変形している。
目標揺動角度取得部16は、基準特性曲線BCに基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数から全ての可変静翼7a,7bの目標揺動角度を取得するものである。また、目標揺動角度取得部16は、基準特性曲線BC又は変形特性曲線DC1,DC2,DC3に基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度から全ての可変案内翼11の目標揺動角度を取得するものである。なお、圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度は、適宜のセンサ(図示省略)によって検出されるものであるが、圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度の具体的な検出態様についての説明は省略する。
制御部17は、全ての可変静翼7a,7bの揺動角度が目標揺動角度になるように複数の第1アクチュエータ9を制御するものである。また、制御部17は、全ての可変案内翼11の揺動角度が目標揺動角度になるよう第2アクチュエータ13を制御するものである。
次に、本発明の最良の形態の作用及び効果について説明する。
記憶部15によって基準特性曲線BCを示す基準データ及び変形特性曲線DC1,DC2,DC3を示す変形データを予め記憶しておく。そして、目標揺動角度取得部16によって基準特性曲線BCに基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数から全ての可変静翼7a,7bの目標揺動角度を取得しつつ、制御部17によって全ての可変静翼7a,7bの揺動角度が目標揺動角度になるように第1アクチュエータ9を制御する。また、目標揺動角度取得部16によって基準特性曲線BC又は変形特性曲線DC1,DC2,DC3に基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度から全ての可変案内翼11の目標揺動角度を取得しつつ、制御部17によって全ての可変案内翼11の揺動角度が目標揺動角度になるように第2アクチュエータ13を制御する。これにより、全ての可変静翼7a,7b及び全ての可変案内翼11の揺動動作を制御することができる。
ここで、変形特性曲線DC1,DC2,DC3は、飛行高度が所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数以上の部分についてのみ、基準特性曲線BCに対して前記閉方向へ変形させたものであって、基準特性曲線BC又は変形特性曲線DC1,DC2,DC3に基づいて圧縮機ロータ4a,4bの修正回転数及び飛行高度から全ての可変案内翼11の目標揺動角度を取得しているため、空気の入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、飛行高度が10000mを超えて20000m付近(18000mから22000m)になっても、可変案内翼11に層流剥離が生じることを抑制することができる。
以上の如き、本発明の最良の形態によれば、空気の入口チップ側相対マッハ数が1.2以上であって、飛行高度が10000mを超えて20000m付近になっても、可変案内翼11に層流剥離が生じることを抑制することができるため、飛行高度20000m付近まで前記高亜音速機が上昇するに際に、動翼5a,5bの空力負荷が急激に増大することがなく、前記ジェットエンジンがストール現象につながるような不安定な作動になることを回避できる。
更に、本発明は、前述の発明の最良の形態の説明に限るものではなく、前記高亜音速機の飛行高度と動翼5a,5bの空力負荷との関係についての新規な知見に基づく圧縮機用翼揺動制御装置14の新規な構成を、前記ジェットエンジンの要素の1つであるファンに用いられるファン用翼揺動制御装置(図示省略)にそのまま適用することも可能であって、その場合には前述の作用及び効果と同様の作用効果を奏する。
ここで、前記ファンは、図示は省略するが、圧縮機ロータ4a,4bと同様の構成のファンロータと、圧縮機ステータ6a,6bと同様の構成のファンステータと、案内ステータ10と同様のファン案内ステータとを具備している。また、前記ファン用翼揺動制御装置は、前記ファンステータにおける全ての可変静翼、及び前記ファン案内ステータにおける全ての可変案内翼の揺動動作を制御するものである。
本発明の最良の形態に係わる圧縮機の模式的な部分断面図である。 目標揺動角度とファンロータの修正回転数との基準特性曲線及び変形特性曲線を示す図である。 エンジン流路の長手方向に対する可変静翼、可変案内翼、又は動翼の関係を説明する図である。 案内翼の入口レイノルズ数と1段動翼の空力負荷との関係を示す図である。 案内翼の入口レイノルズ数と2段動翼の空力負荷との関係を示す図である。
符号の説明
1 圧縮機
2 エンジンケース
3 エンジン流路
4a,4b 圧縮機ロータ
5a,5b 動翼
6a,6b 圧縮機ステータ
7a,7b 可変静翼
9 第1アクチュエータ
10 案内ステータ
11 可変案内翼
13 第2アクチュエータ
14 圧縮機用翼揺動制御装置
15 記憶部
16 目標揺動角度取得部
17 制御部

Claims (4)

  1. ジェットエンジンの要素の1つである圧縮機に用いられ、複数段の圧縮機ステータにおける全ての可変静翼、及び最前段の圧縮機ロータの前方側に配置した案内ステータにおける全ての可変案内翼の揺動動作を制御する圧縮機用翼揺動制御装置において、
    全ての前記可変静翼を前記ジェットエンジンのエンジン流路を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ同期して揺動させる第1揺動手段と;
    全ての前記可変案内翼を前記開閉方向へ同期して揺動させる第2揺動手段と;
    前記開閉方向における前記可変静翼又は前記可変案内翼の目標揺動角度と前記圧縮機ロータの修正回転数との基準特性曲線を表す基準データを記憶すると共に、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、空気の入口チップ側相対マッハ数1.2に対応する前記圧縮機ロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させた変形特性曲線を表す変形データを記憶する記憶手段と;
    前記基準特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得すると共に、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記圧縮機ロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得する目標揺動角度取得手段と;
    全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御すると共に、全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する制御手段と;
    を具備してなることを特徴とすることを特徴とする圧縮機用翼揺動制御装置。
  2. ジェットエンジンの要素の1つであるファンに用いられ、複数段のファンステータにおける全ての可変静翼、及び最前段のファンロータの前方側に配置したファン案内ステータにおける全ての可変案内翼の揺動動作を制御するファン用翼揺動制御装置において、
    全ての前記可変静翼を前記ジェットエンジンのエンジン流路を開閉する開閉方向(開方向・閉方向)へ同期して揺動させる第1揺動手段と;
    全ての前記可変案内翼を前記開閉方向へ同期して揺動させる第2揺動手段と;
    前記開閉方向における前記可変静翼又は前記可変案内翼の目標揺動角度と前記ファンロータの修正回転数との基準特性曲線を表す基準データを記憶すると共に、飛行高度が10000m以上の所定の飛行高度を超える場合に、マッハ数1.2に対応する前記ファンロータの修正回転数以上の部分についてのみ、前記基準特性曲線に対して前記閉方向へ変形させた変形特性曲線を表す変形データを記憶する記憶手段と;
    前記基準特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数から全ての前記可変静翼の目標揺動角度を取得すると共に、前記基準特性曲線又は前記変形特性曲線に基づいて前記ファンロータの修正回転数及び飛行高度から全ての前記可変案内翼の目標揺動角度を取得する目標揺動角度取得手段と;
    全ての前記可変静翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第1揺動手段を制御すると共に、全ての前記可変案内翼の揺動角度が目標揺動角度になるように前記第2揺動手段を制御する制御手段と;
    を具備してなることを特徴とするファン用翼揺動制御装置。
  3. ジェットエンジンの要素の1つであって、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース内に形成されたエンジン流路内へ取入れた空気を圧縮する圧縮機において、
    前記エンジンケース内にエンジン軸方向に沿って設けられ、それぞれエンジン軸心を中心として回転可能に構成され、それぞれ複数の動翼を周方向に備えた複数段の圧縮機ロータと;
    前記エンジンケース内にエンジン軸方向に沿って複数段の前記圧縮機ロータと交互に設けられ、それぞれ複数の可変静翼を周方向に備えた複数段の圧縮機ステータと;
    前記エンジンケース内における最前段の前記圧縮機ロータの前方側に設けられ、複数の可変案内翼を周方向に備えた案内ステータと;
    請求項1に記載の発明特定事項からなる圧縮機用翼揺動制御装置と;
    を具備してなることを特徴とする圧縮機。
  4. ジェットエンジンの要素の1つであって、前記ジェットエンジンにおけるエンジンケース内に形成されたエンジン流路内へ空気を取入れるジエットエンジン用ファンにおいて、
    前記エンジンケース内に設けられ、エンジン軸心を中心として回転可能に構成され、周方向に複数の動翼を備えたファンロータと;
    前記エンジンケース内における前記ファンロータの後方側に設けられ、複数の静翼を周方向に備えたファンステータと;
    前記エンジンケース内における前記ファンロータの前方側に設けられ、複数の可変案内翼を備えたファン案内ステータと;
    請求項2に記載の発明特定事項からなるファン用翼揺動制御装置と;
    を具備してなることを特徴とするファン。
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