JP2005290327A - 絶縁接着フィルムおよびこれを含む積層体、並びにプリント配線板 - Google Patents

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寛司 下大迫
Shigeru Tanaka
田中  滋
Taku Ito
卓 伊藤
Mutsuaki Murakami
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Abstract

【課題】 絶縁層の表面凹凸の十分に小さくするとともに、微細配線と絶縁層との良好な接着力を、煩雑な手法をとらなくても容易に実現することが可能な絶縁接着フィルムと、その利用の一例とを提供する。
【解決手段】 本発明にかかる絶縁接着フィルムは、特定構造を有する(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分、および(C)酸無水物成分を必須成分として含有しており、(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基のモル数MB に対する、上記(C)酸無水物成分に含まれる酸無水物基のモル数MC で表されるモル混合比MC /MB が0.4以上1.5以下の範囲内となっている。これにより、表面凹凸が小さくても微細配線を十分に接着することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、絶縁接着フィルムおよびその利用に関するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板等のプリント配線板の製造に好適に用いられる絶縁接着フィルムと、当該絶縁接着フィルムを含む積層体と、当該絶縁接着フィルムを用いて製造されるプリント配線板とに関するものである。
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化、軽量化が急速に進んでおり、それに伴いこれらの電子機器に用いられる電子部品に対しても、小型化、軽量化、軽薄化が求められている。このような電子部品や半導体素子等を実測するためには、一般に、プリント配線板(プリント基板)が広く用いられる。このプリント配線板は、表面に配線を形成した構造を有しているが、上記電子機器の小型化や高機能化に伴って、配線の高密度化や薄型化等が強く望まれている。特に、ライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下となるような微細配線を形成する手法の確立は、プリント配線板の技術分野では重要な課題となっている。
プリント配線板において、微細な配線を形成するためには、絶縁層に対して、(1)微細配線との接着性が高い、(2)表面粗度が微細配線の形成に悪影響を与えない程度に小さい等の物性が要求される。
上記物性のうち、微細配線との接着性の高さについて説明すると、プリント配線板は、様々な加工プロセスを経るため、このような加工プロセスに耐え得る程度に絶縁層と微細配線との接着性が求められる。具体的には、例えば、プリント配線板では、配線板の両面を導通させるビアホールの形成が不可欠である。それゆえ、プリント配線板では、レーザーによるビアホール形成工程、デスミア工程、触媒付与工程、無電解めっき銅を施す工程等を経て配線形成が行われる。
さらに、上記微細配線の形成は、セミアディティブ法により製造される。セミアディティブ法は、アディティブ法の一種で、通常、レジスト膜を形成する工程、無電解めっき膜が露出している部分へ電解銅めっきを行う工程、レジスト被膜を除去する工程、余分な無電解銅めっき皮膜をエッチングにより除去する工程を経る。したがって、微細配線と絶縁層との間の接着性には、上記ビアホール形成、セミアディティブ法等に伴う各工程に耐えるだけの接着性を有する必要がある。
また、上記物性のうち、表面粗度の小ささについて説明すると、絶縁層表面の凹凸が大きければ、配線形状や配線幅、配線厚み等にずれや不均一さが生じる。したがって、絶縁層表面の凹凸を極力小さくすることは、配線形状や配線幅、配線厚みなどを設計通りに良好に形成するために重要な物性となる。
このようにプリント配線板に微細配線を形成するためには、表面の凹凸が十分に小さく、かつ、微細配線との接着性が十分に高い絶縁層が好ましく用いられることになる。
ところで、微細配線と絶縁層との接着性を向上させる技術としては、(1)絶縁層の表面を粗くする技術が知られている。具体的には、例えば、特許文献1には、粗化成分を含むエポキシ樹脂組成物を用いてプリント配線板用層間接着フィルムを製造する技術が開示されている。この技術で用いられる粗化成分は、酸化剤の水溶液に可溶または分解されるものであり、樹脂層の表面に酸化剤の水溶液による粗化剤処理により凹凸状の粗化面を形成することができる。この粗化面の上に乾式および/または湿式メッキにより導体層を形成することで、導体層の接着強度を向上させることが可能となる。
また、微細配線と絶縁層との接着性を向上させる他の技術としては、(2)絶縁層の表面に、導体層として用いられる材質との親和性を有する物質を被覆する技術が知られている。具体的には、例えば、特許文献2には、プリント配線板のベースフィルムとして用いるポリイミドフィルムの表面に、エックス線光電子分光法で測定した原子数濃度が0.01%以上10%以下の濃度となるようにチタン原子を存在させる技術が開示されている。この技術では、ポリイミドフィルムや前駆体であるポリアミド酸フィルムに有機チタン化合物の溶液を塗布する等することにより上記の条件を実現している。
あるいは、特許文献3には、絶縁性重合体と硬化剤とからなる硬化性組成物膜を形成し、その表面に、金属に配位可能な構造を有する化合物を接触させてから、当該硬化性組成物膜を硬化させて電気絶縁層を形成する技術が開示されている。この技術では、上記電気絶縁層の表面に親水化処理を行い、その表面に導電体回路層となる金属薄膜層を形成することで、導電体回路層と電気絶縁層との密着性を向上させている。
さらに、微細配線と絶縁層との接着性を向上させる他の技術としては、(3)絶縁層に用いる樹脂組成物に接着性を向上させる成分を加える技術が知られている。具体的には、例えば、特許文献4には、揮発性溶媒を1〜20%含む熱可塑性樹脂、好ましくはエーテル結合あるいはエステル結合を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を用いて接着シートを形成する技術が知られている。この技術では、熱可塑性樹脂に揮発性溶媒をある程度含ませることにより、接着シートの接着性等の向上を図っている。
また、プリント配線板に関する技術ではなく、プレプリグ用の技術ではあるが、特許文献5には、エポキシ樹脂、ジカルボン酸無水物またはそのハーフエステル、芳香族テトラカルボン酸またはその無水物、および、芳香族ジアミンを含むエポキシ樹脂組成物を開示している。この技術では、ジカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、芳香族ジアミンの縮合により微粒子状のポリイミドが合成され、これが分散した状態となっている。それゆえ、当該樹脂組成物の未硬化時のチクソ性を優れたものとし、接着性を向上させることが可能となっている。
特開2000−198907(平成12(2000)年7月18日公開) 特開平11−71474(平成11(1999)年3月16日公開) 特開2003−332738(平成15(2003)年11月21日公開) 特開2003−306649(平成15(2003)年10月31日公開) 特開2002−20459(平成14(2002)年1月23日公開)
しかしながら、上記従来の技術では、表面の凹凸が十分に小さく、かつ、微細配線との接着性が十分に高い絶縁層を得ることが困難となっている。これは、通常、プリント配線板における絶縁層と配線との接着状態は、主としてアンカー効果に起因しているためである。
具体的には、例えば、上記特許文献1に開示しているように、絶縁層の表面に凹凸を形成する、すなわち表面を粗化することで、配線となる金属箔に絶縁層表面をくい込ませる。これによって、アンカー効果が生じ、配線と絶縁層との接着性を向上させることができる。ところが、絶縁層の表面の凹凸を大きくすると、上述したように、配線形状や配線幅、配線厚み等にずれや不均一さが生じる。近年の配線の微細化要求は、これらのずれや不均一さをより拡大させることになる。
これに対して、絶縁層の表面の凹凸(表面粗度)を小さくしたり、表面の粗化を行わなかったりすると、微細配線と絶縁層との間に十分な接着力を確保することが困難になる。そこで、上記特許文献2や3に開示しているように、導体層として用いられる材質との親和性を有する物質を被覆することが提案される。ところが、このような技術では、上記親和性を有する物質の被覆により工程数が増加したり、コストの上昇を回避できなかったりする等の問題が生じる。
さらに、樹脂組成物の成分を検討して接着性を向上させる技術についても、絶縁層の表面の凹凸が小さいと、微細配線の接着性を十分に向上させるまでには至っていない。例えば、特許文献4の技術では、揮発性溶媒を含ませることで接着性を向上させており、用途によっては十分な接着力を確保することが可能である。しかしながら、近年の配線の微細化要求はより厳しくなっているため、このような技術でも接着力が不十分になる場合も生じつつある。なお、特許文献5の技術は、プリント配線板用の技術ではないため、樹脂組成物にポリイミドが含まれるものの、ポリイミドの含有量が低いため(同文献の段落番号〔0027〕参照)十分な絶縁性を確保することは困難である。
また、特許文献2には、絶縁層の表面に導体層を無電解めっき等の湿式の方法で形成するだけでなく、蒸着やスパッタリング等の物理的方法(乾式の方法)で形成する技術も開示されている。この技術では、優れた接着強度を実現できる反面、真空プロセスを用いるため、高コストや生産性の低下等という課題が生じている。
このように、近年の配線の微細化要求に十分耐え得るように、絶縁層の表面凹凸を小さくし、かつ、微細配線との十分な接着力を容易に確保できる技術は知られていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、絶縁層の表面凹凸の十分に小さくするとともに、微細配線と絶縁層との良好な接着力を、煩雑な手法をとらなくても容易に実現することが可能な絶縁接着フィルムと、その利用の一例とを提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、熱可塑性ポリイミドに、エポキシ樹脂を添加して接着性や加工性を向上させる場合に、酸無水物をエポキシ樹脂の硬化剤として採用するとともに、エポキシ樹脂と酸無水物との当量比を規定すれば、得られる絶縁層において、表面凹凸が小さくても容易に配線との間に十分な接着力を確保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分、および(C)酸無水物成分を必須成分として含有している絶縁接着フィルムであって、上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分として、次に示す一般式(1)で表される酸二無水物(a)
Figure 2005290327
(ただし、式中、Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、または−COO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
を含む酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させて得られる熱可塑性ポリイミド樹脂を用いるとともに、上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基のモル数MB に対する、上記(C)酸無水物成分に含まれる酸無水物基のモル数MC で表されるモル混合比MC /MB が0.4以上1.5以下の範囲内であることを特徴としている。
さらに、上記ジアミン成分には、次に示す一般式(2)
Figure 2005290327
(ただし、式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)m−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−C(=O)O−、からなる群より選択される2価の基、または、直接結合を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上5以下の整数である。)
で表されるジアミン(b)が含まれることが好ましい。
本発明にかかる絶縁接着フィルムにおいては、上記(C)酸無水物成分として、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)から選ばれる少なくとも1種の酸無水物が用いられることが好ましい。さらに、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、支持体上に成形されてなることが好ましい。
本発明の利用方法は特に限定されるものではないが、上記構成の絶縁接着フィルムからなる層を含む積層体が含まれる。この積層体は、支持体層および保護層の少なくとも何れかの層を含む構成を挙げることができる。
また、本発明には、上記構成の絶縁接着フィルムを用いて製造されるプリント配線板も含まれる。当該プリント配線板としては、具体的には、例えば、フレキシブルプリント配線板またはビルドアップ配線板の何れかを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
本発明にかかる絶縁接着フィルムは、以上のように、特定構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂成分、エポキシ樹脂成分、および酸無水物成分を必須成分とし、かつエポキシ樹脂成分と酸無水物成分とを特定の比率で配合した樹脂組成物を用いて形成している。そのため、絶縁接着フィルムを用いて形成された絶縁層の表面に無電解めっきにより金属皮膜を形成した場合、当該絶縁層の表面粗度が小さくても金属皮膜との間に十分な接着強度を発揮することができる。
その結果、特に煩雑な工程を経ることなく、絶縁層上に微細なパターンの配線を良好に形成することができるとともに、微細配線と絶縁層との接着力を維持することができるため、得られるプリント配線板の品質を向上させることができる。したがって、本発明にかかる絶縁接着フィルムおよびこれを含む積層体、並びにプリント配線板は工業的に極めて利用価値が高いという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。本実施の形態では、本発明にかかる絶縁接着フィルムの成分、本発明にかかる絶縁接着フィルムの概要と製造方法の代表例、並びに、当該絶縁接着フィルムの利用の順で、本発明を詳細に説明する。
(I)本発明にかかる絶縁接着フィルムの成分
本発明にかかる絶縁接着フィルムは、特定構造を有する熱可塑性ポリイミド樹脂を含む(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分、および(C)酸無水物成分の3成分を必須成分とし、かつ(B)エポキシ樹脂成分と(C)酸無水物成分とを特定の比率で配合した樹脂組成物から製造されるものである。すなわち、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、上記(A)〜(C)の成分を必須成分として含有している構成となっている。以下の説明では、上記(A)〜(C)の各成分について説明する。
(I−1)(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分
本発明で用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂成分は、後に詳述する(B)・(C)成分と混合することにより優れた接着性を発揮するため、特定構造を有している。
ここで、本発明で用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂は、絶縁接着フィルムを得るために、有機溶媒に可溶性を示す可溶性ポリイミド樹脂であることが必須である。可溶性ポリイミド樹脂における「可溶性」とは、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等から選択される少なくとも1種の有機溶媒に、室温〜100℃の温度範囲において1重量%以上溶解することを指すものとする。
ポリイミド樹脂は、一般に、原料モノマーとして酸二無水物成分とジアミン成分とを用い、これらを縮合させて前駆体のポリアミド酸を合成し、これをイミド化することによって製造することができる。本発明では、原料モノマーを規定することで、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分の特定構造を規定する。なお、(C)成分との違いをより明確とするために、原料モノマーとして用いられる酸二無水物成分およびジアミン成分は、説明の便宜上、原料酸二無水物成分および原料ジアミン成分と称する。
<原料酸二無水物成分>
具体的には、上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分としては、原料酸二無水物成分および原料ジアミン成分のうち、少なくとも原料酸二無水物成分として、次に示す一般式(1)で表される酸二無水物(a)
Figure 2005290327
(ただし、式中、Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、または−COO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
が少なくとも用いられる。
上記原料酸二無水物成分としては、一般式(1)に示す酸二無水物(a)の中でも、式中Tで示される有機基が、次に示す群(3)
Figure 2005290327
および、次に示す一般式(4)
Figure 2005290327
(式中、Zは、−CQ2Q−、−C(=O)−、−SO2−、−O−、および−S−からなる群より選択される2価の基を示し、Qは1〜5の整数である。)
で表される群から選択される2価の有機基となっている酸二無水物を少なくとも1種用いることが好ましい。このような酸二無水物を用いれば、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂において、溶媒に対する溶解性、耐熱性、無電解めっき層との接着性等の物性をより優れたものとすることができる。
上記一般式(1)に示す酸二無水物(a)の中でも、次に示す式(5)
Figure 2005290327
で表される4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物を用いることが特に好ましい。当該酸二無水物は入手しやすい上に、これを原料酸二無水物成分として用いることで、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂において、溶媒に対する溶解性、耐熱性、無電解めっき層との接着性をより優れたものにできるだけでなく、(B)成分(熱硬化性成分)との相溶性にも優れる等、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分の諸特性のバランスを良いものとすることができる。
本発明において、原料酸二無水物成分として用いられる化合物は、上述した一般式(1)で表される酸二無水物(a)に限定されるものではなく、それ以外の酸二無水物を用いることができる。ただし、原料酸二無水物成分の全量のうち、50モル%以上は、上記酸二無水物(a)を用いることが好ましい。これによって、本発明で用いられる(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分の諸物性を確実に優れたものとすることができる。
上記酸二無水物(a)以外の酸二無水物としては、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビス(1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−イル)フェニルフォスフィンオキシド、3−[4−(2,5−ジオキソ−4−フェニル−2,5−ジヒドロフラン−3−イル)フェニル]−4−フェニルフラン−2,5−ジオン、5,5’−(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)、4,4’−(ドデカフルオロトリメチレン)ビス(フタル酸無水物)、5,5’−(2,7−ジメチルオクタン−2,7−ジイル)ビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)、5,5’−スルホニルビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)などが挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。これら酸二無水物は、上記酸二無水物(a)と組み合わせる際に、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
<原料ジアミン成分>
本発明で用いられる(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分は、少なくとも、上記一般式(1)で表される酸二無水物(a)を含む原料酸二無水物成分を用いればよいが、さらに、原料ジアミン成分についても規定することが好ましい。
具体的には、原料ジアミン成分としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、次に示す一般式(2)
Figure 2005290327
(ただし、式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)m−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−C(=O)O−からなる群より選択される2価の基、または、直接結合を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上5以下の整数である。)
で表されるジアミン(b)が用いられることが好ましい。
上記一般式(2)で表されるジアミン(b)としては、具体的には、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベン ジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス [4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。これらジアミンは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記一般式(2)で表されるジアミン(b)の中でも、メタ位にアミノ基を有するジアミン、すなわち、次に示す一般式(6)
Figure 2005290327
(ただし、式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)m−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−C(=O)O−からなる群より選択される2価の基、または、直接結合を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上5以下の整数である。)
で表される化合物(説明の便宜上、メタ位ジアミンと称する)がより好ましく用いられる。このようなメタ位ジアミンは、パラ位にアミノ基を有するジアミンよりも、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂の有機溶媒に対する溶解性をより優れたものとすることができる。
上記一般式(6)で表されるメタ位ジアミンとしては、具体的には、例えば、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。これらジアミンは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明における原料ジアミン成分としては、上記したジアミンの中でも、特に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることが好ましい。このジアミンを用いることによって、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂において、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性をより優れたものとすることができる。
本発明において、原料ジアミン成分としては、上記一般式(2)で表されるジアミン(b)または上記一般式(6)で表されるメタ位ジアミンに限定されるものではない。具体的には、例えば、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンが好ましく用いられる。水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを原料ジアミン成分として併用した場合、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂には水酸基および/またはカルボキシル基が導入されているので、無電解めっき層と絶縁接着フィルムとの間の接着性をより一層優れたものとすることが可能となる。
上記水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンは、構造中に水酸基および/またはカルボキシル基を有していれば特に限定されることはないが、具体的には、例えば、2,4−ジアミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5‘−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4‘−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルホン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等を挙げることができるが、これら化合物に限定されるものではない。これらジアミンは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上述したように、本発明において、熱可塑性ポリイミド樹脂を合成する際には、原料ジアミン成分として、一般式(6)で表されるメタ位ジアミンと水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとを併用することが好ましいが、特に、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとして、上述した化合物の中でも、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを併用することが好ましい、この水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを用いれば、最終的に得られる絶縁接着フィルムにおいて、無電解めっき層との接着性をより優れたものとすることができる。
このとき、原料ジアミン成分におけるメタ位ジアミンと水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミン(特に、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル)との混合比は特に限定されるものではないが、メタ位ジアミンを60〜99モル%の範囲内としたときに、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを40〜1モル%の範囲内で混合させることが好ましい。水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミン(特に、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル)が40モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂の溶解性が低下するおそれがある。
本発明において、原料ジアミン成分として用いられる化合物は、上述した一般式(2)で表されるジアミン(b)に限定されるものではなく、それ以外のジアミンを用いることができる。具体的には、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド等を挙げることができるが、これら化合物に限定されるものではない。これらのジアミンは、上記ジアミン(b)と組み合わせる際に、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。ただし、原料ジアミン成分の全量のうち、10モル%未満であることが好ましい。10モル%を超えると、上記ジアミン(b)を用いることで得られる効果が不十分となる場合があり得る。
<熱可塑性ポリイミド樹脂の製造>
本発明で(A)成分として用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂は、公知の方法で製造することができる。すなわち、上記原料酸二無水物成分および原料ジアミン成分を縮合して得られるポリアミド酸(ポリイミドの前駆体物質)を、化学的または熱的にイミド化することで製造することができる。
上記ポリアミド酸の合成方法は、通常、少なくとも一種の酸二無水物からなる原料酸二無水物成分と、少なくとも一種のジアミンからなる原料ジアミン成分とを出発物質(原料モノマー)とし、有機溶媒中に両者を実質的に等モル量となるように溶解させた後、温度等の反応条件を制御しながら重合が完了するまで攪拌することによって製造することができる。反応の代表的な手順として、原料ジアミン成分を有機極性溶媒に溶解または分散させ、その後、原料酸二無水物成分を添加し攪拌することで、ポリアミド酸の有機極性溶媒の溶液(ポリアミド酸溶液)を得る方法が挙げられる。
各原料モノマーの添加順序は特に限定されるものではなく、原料酸二無水物成分を有機極性溶媒に先に加えておき、その後、原料ジアミン成分を添加して、ポリアミド酸溶液を得てもよいし、原料ジアミン成分を有機極性溶媒中に先に適量加えて、次に過剰の原料酸二無水物成分を加え、過剰量に相当する原料ジアミン成分を加えてもよい。この他にも、当業者に公知の様々な添加方法がある。なお、ここでいう「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解する場合の他に、溶質が溶媒中に均一に分散されて実質的に溶解しているのと同様の状態になる場合を含む。
上記ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド;γ−ブチロラクトン;等を挙げることができる。さらに必要に応じて、上記有機極性溶媒に加えて、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素を組み合わせて用いてもよい。
このようにして合成されたポリアミド酸は、熱的または化学的方法により脱水閉環することにより、熱可塑性ポリイミド樹脂を得ることができる。このときの脱水閉環方法(イミド化方法)は特に限定されるものではなく、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法の何れであってもよい。さらには、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。以下に各方法について説明する。
まず、熱的方法では、上記ポリアミド酸溶液を加熱処理によりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させる等の方法を挙げることが。この方法により、固形の熱可塑性ポリイミド樹脂を得ることができる。加熱の条件は特に限定されないが、500℃以下の温度で加熱時間を約5分〜200分の範囲内とする条件で行うことが好ましい。
次に、化学的方法では、上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤を加えることで脱水反応と有機溶媒を蒸発させる等の方法を挙げることができる。これにより、固形の熱可塑性ポリイミド樹脂を得ることができる。化学的方法による脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物;無水安息香酸等の芳香族酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;等を挙げることができる。上記化学的方法においては、脱水剤に加えて触媒を併用してもよい。触媒としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類;等を挙げることができる。化学的に脱水閉環する際の条件としては、100℃以下の温度が好ましい。また、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で加熱時間を約5分〜120分の範囲内として行うことが好ましい。
また、他のイミド化方法として、上記の熱的方法または化学的方法において溶媒を蒸発させない方法も挙げられる。具体的には、熱的方法または化学的方法により得られる熱可塑性ポリイミド樹脂溶液を貧溶媒中に投入して、熱可塑性ポリイミド樹脂を析出させ、未反応モノマーを取り除いて精製、乾燥させることにより、固形の熱可塑性ポリイミド樹脂を得ることができる。このとき用いられる貧溶媒としては、有機極性溶媒とは良好に混合するが熱可塑性ポリイミド樹脂は溶解しにくい性質のものを選択すればよい。具体的には、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン等を挙げることができるが、もちろんこれら溶媒に限定されるものではない。
さらに、減圧下で加熱してイミド化する方法も挙げられる。このイミド化の方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に排出・除去することができる。そのため、前駆体であるポリアミド酸の加水分解を抑制することが可能となり、得られる熱可塑性ポリイミド樹脂をより高分子量のものとすることができる。
このイミド化法における加熱条件は80〜400℃の範囲内であることが好ましいが、イミド化をより効率よく行うとともに、水を効率よく除去するには、100℃以上とすることがより好ましく、120℃以上とすることがさらに好ましい。また、減圧条件は、圧力を小さくすることが好ましいのは言うまでもないが、具体的には、例えば、9×104〜1×102Paの範囲内が好ましく、9×104〜1×102Paの範囲内がより好ましく、7×104〜1×102Paの範囲内がさらに好ましい。
なお、本発明で(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分として用いられるポリイミド樹脂は、上述した特定構造のポリイミド樹脂に限定されるものではなく、他の熱可塑性ポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
(I−2)(B)エポキシ樹脂成分
本発明にかかる絶縁接着フィルムは、上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分、および(C)酸無水物成分を少なくとも含んでいる樹脂組成物から製造される。本発明で用いられる(B)エポキシ樹脂成分としては特に限定されるものではなく、公知のエポキシ樹脂を公的に用いることができるが、その中でも、次に示す群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられることが好ましい。
すなわち、本発明で(B)エポキシ樹脂成分として好適に用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック系エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン、およびこれらのハロゲン化エポキシ樹脂を挙げることができる。これらエポキシ樹脂は、(B)エポキシ樹脂成分として少なくとも1種用いられればよいが、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらエポキシ樹脂を用いれば、最終的に得られる絶縁接着フィルムにおいて、耐熱性や無電解めっき層との接着性をより向上することができる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂においては、エポキシ当量が700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。エポキシ当量が700を超えると、得られる絶縁接着フィルムにおいて、硬化反応で生成する官能基が少なくなるため、無電解めっき層との接着性が損なわれるおそれがある。
ここで、エポキシ当量とは、エポキシ基1モルを含むエポキシ樹脂の重量(g数)を意味し、一般にg/eqなる単位で表現することができる。エポキシ樹脂を配合する際は、配合したエポキシ樹脂量をWe(g)とし、当該エポキシ樹脂のエポキシ当量をWf(g/eq)とすると、配合したエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基のモル数MB(モル)は、次に示す式(7)により求められる。
B =We/Wf ・・・(7)
なお、本発明では、(B)エポキシ樹脂成分と(C)酸無水物成分とを特定の比率で配合するが、この点については後に詳述する。
(I−3)(C)酸無水物成分
本発明にかかる絶縁接着フィルムには、上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分および(B)エポキシ樹脂成分に加えて、さらに(C)酸無水物成分が含まれている。この(C)酸無水物成分は(B)エポキシ樹脂成分の硬化剤として用いられる。ここで、エポキシ樹脂の硬化剤として酸無水物を用いることは公知技術であるが、ポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、酸無水物を用いた場合に、当該樹脂組成物を用いた絶縁層の表面凹凸と接着性とについて着目した技術は知られていない。
本発明者は、絶縁層の表面凹凸の十分に小さくするとともに、微細配線と絶縁層との良好な接着力を容易に実現するためには、ポリイミド樹脂およびエポキシ樹脂を含む樹脂組成物において、硬化剤として酸無水物を採用するとともに、エポキシ樹脂と酸無水物との配合比を特定することが重要であることを独自に初めて見出した。
本発明で用いられる(C)酸無水物成分は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂の硬化剤として使用可能な酸無水物を用いることができるが、具体的には、上記(C)酸無水物成分として、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)から選ばれる少なくとも1種の酸無水物が用いられることが好ましい。これら化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら化合物を(C)酸無水物成分として用いることで、得られる絶縁接着フィルムにおいて、無電解めっき層との接着性をより向上させることができる。
上記例示の化合物の中でも、得られる絶縁接着フィルムにおいて、無電解めっき層との接着性をより向上させる点や、入手しやすい点等から、無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の中から選ばれる酸無水物を少なくとも1種用いることが特に好ましい。
本発明の(C)酸無水物成分として用いられる化合物においては、その酸無水物当量は特に限定されるものではないが、(B)エポキシ樹脂成分と(C)酸無水物成分とを特定の比率で配合する場合には、エポキシ樹脂のエポキシ当量と酸無水物の酸無水物当量とが比率の算出の基準となる。酸無水物当量とは、酸無水物基1モルを含む酸無水物の重量(g数)を意味し、エポキシ当量と同じく、一般にg/eqなる単位で表現することができる。酸無水物を配合する際は、配合した酸無水物量をWh(g)とし、該酸無水物の酸無水物当量をWi(g/eq)とすると、配合した酸無水物に含まれる酸無水物基のモル数MC(モル)は、下式(8)により求められる。
C =Wh/Wi ・・・(8)
(I−4)その他の成分
本発明にかかる絶縁接着フィルムにおいては、上記(A)〜(C)の各成分を必須成分として含んでいればよい。換言すれば、(A)〜(C)以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては特に限定されるものではなく、得られる絶縁接着フィルムの用途等に応じて、本発明で要求される物性(表面凹凸を小さくすること、および、微細配線との接着性を向上させること)を損なわない範囲で、公知の添加剤や他の樹脂等を用いることができる。
具体的には、例えば、無電解めっき層との接着性や耐熱性、加工性等の諸特性を改善させる目的で、他の樹脂を用いることができる。このような他の樹脂としては、具体的には、例えば、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子等を挙げることができるが特に限定されるものではない。これら他の樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら樹脂の添加量も特に限定されるものではなく、得られる絶縁接着フィルムの耐熱性や低吸湿性等の諸特性を損なわない範囲内であればよい。
また、他の成分としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤を挙げることができる。硬化促進剤としては、具体的には、イミダゾール化合物類、ジヒドラジン化合物類、ジシアンジアミド、ユリア樹脂類、メラミン樹脂類、ポリメルカプタン化合物類、イソシアネート化合物類等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記硬化促進剤の添加量は、(B)エポキシ樹脂成分の硬化を促進できる量であり、かつ、他の諸特性を損なわない範囲内であれば特に限定されるものではないが、(B)エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下の範囲内で用いることが好ましい。この範囲内であれば、良好な硬化促進作用を実現するとともに、他の諸特性を損なうことを回避することができる。
(II)本発明にかかる絶縁接着フィルムの製造
本発明にかかる絶縁接着フィルムは、上記(A)〜(C)の各成分および必要に応じて他の成分を混合して調製される樹脂組成物を成形することにより製造することができる。ここで、前述したように、上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基のモル数に対する、上記(C)酸無水物成分に含まれる酸無水物基のモル数で表されるモル混合比MC /MB が0.4以上1.5以下の範囲内となっている。
<樹脂組成物>
本発明で用いられる樹脂組成物においては、まず、上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分と(B)エポキシ樹脂成分との配合比率に特に限定されるものではないが、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分100重量部に対して、(B)エポキシ樹脂成分は10重量部以上300重量部以下の範囲内で混合されることが好ましい。上記(B)エポキシ樹脂成分が10重量部未満の場合は、硬化反応により生成する官能基の数が十分に生成しない場合があるため、絶縁接着フィルムと無電解銅めっき層との接着性が低下する場合がある。一方、(B)エポキシ樹脂成分が300重量部を超える場合は、得られる絶縁接着フィルムの耐熱性や誘電特性が低下する場合がある。(B)エポキシ樹脂成分を上記配合比率で配合したとき、(C)酸二無水物成分の配合比率は、上記モル混合比MC /MB に従い決定される。また、硬化促進剤を用いる場合も、(B)エポキシ樹脂成分の配合比率から決定することができる。
上述したように、(B)エポキシ樹脂成分と(C)酸無水物成分との混合比は、上記モル混合比MC /MB が0.4以上1.5以下の範囲内にあればよく、0.5以上1.4以下の範囲内であることがより好ましい。モル混合比MC /MB が0.4未満または1.5を超える場合、何れも未反応化合物が残存し、また、官能基の生成も十分でなくなる。それゆえ、得られる絶縁接着フィルムにおいて、耐熱性や無電解めっき層との接着性が低下するため好ましくない。
本発明で用いられる樹脂組成物は、公知の方法で調製することができ、公知の状態で使用することができる。一般的には、(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分および(C)酸無水物成分(必要に応じてその他の成分)等を適当な有機溶媒に添加して攪拌することにより、樹脂組成物を調製し、樹脂組成物溶液として用いることが好ましい。樹脂組成物溶液の調製方法は特に限定されるものではなく、有機溶媒に対して、上記各成分を適量添加しながら攪拌することで調製してもよいし、上記各成分をそれぞれ有機溶媒に混合した成分溶液を調製し、これらを混合して調製してもよい。
上記樹脂組成物溶液(または成分溶液)に用いる溶媒としては、上記樹脂組成物または上記各成分を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、トリグライム、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等の鎖状エーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族化合物類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;環状シロキサン、鎖状シロキサン等のシロキサン類;等を挙げることができる。これら有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。これら有機溶媒を用いることで、絶縁接着フィルムを成形する際の発泡の発生を有効に抑制または回避することができる。
<絶縁接着フィルム>
本発明にかかる絶縁接着フィルムは、上記樹脂組成物を用いて成形することにより製造することができる。成形方法は特に限定されるものではなく、フィルム成形において公知の技術を好適に用いることができる。
具体的には、例えば、上記樹脂組成物溶液を支持体上に流延または塗布し、これを乾燥させることにより製造することができる。すなわち、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、支持体上に成形されてなることが好ましい。このとき得られる絶縁接着フィルムは半硬化状態にある。したがって、この半硬化状態のフィルムを支持体から剥離すれば、単層の絶縁接着フィルムを得ることができる。ここで、半硬化状態とは、表面は乾燥しているが、硬化反応が100%進行していないため、熱流動性および金属や高分子フィルム等に対する接着性を維持している状態を言う。
上記樹脂組成物溶液を流延または塗布するための支持体としては特に限定されるものではなく、流延または塗布した樹脂組成物溶液を乾燥させることで、半硬化状態のフィルムを成形できるものであればよい。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルムや銅箔等の金属箔を挙げることができる。なお、本発明では、後述するように、支持体を剥離しないで、絶縁接着フィルム/支持体からなる積層体として用いることができる。
本発明にかかる絶縁接着フィルムにおいては、微細配線の形成を可能とするため、その表面凹凸が小さいものとなっている。具体的には、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、算術平均粗さのカットオフ値0.002mmで測定したRaが、0.05μm未満であることが好ましく、0.03μm未満であることがより好ましい。なお、上記算術平均粗さRaとは、JIS B 0601(平成6年2月1日改正版)に定義されている。
特に、本発明におけるRaの数値は、光干渉式の表面構造解析装置で表面を観察することにより求められた数値を示す。本発明におけるカットオフ値とは、上記JIS B 0601に記載されているが、断面曲線(実測データ)から粗さ曲線を得る際に設定する波長を示す。すなわち、上記カットオフ値が0.002mmで測定した値Raとは、実測データから0.002mmよりも長い波長を有する凹凸を除去した粗さ曲線から算出された算術平均粗さである。したがって、0.002mmよりも短い波長を有する凹凸が存在しない場合は、カットオフ値が0.002mmで測定した値Raは、0μmとなる。それゆえ、上記Raが、0.05μm未満とは表面粗度が極めて小さいことを表しており、特に粗化処理を施していない通常のフィルム等はこの範疇にある。
本発明にかかる絶縁接着フィルムにおいては、上記算術平均粗さRaが0.05μm未満であるため、表面粗度が極めて小さい状態にある。それゆえ、微細配線を良好に形成することができる。しかも、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、上記(A)〜(C)の各成分を必須成分としているため、微細配線として用いられる無電解めっき層との接着強度を十分に高いものとすることができる。これは、特定の熱可塑性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、酸無水物を必須成分とし、エポキシ樹脂と酸無水物とを一定の比率で混合することで、樹脂組成物を強靭なものとすることが可能となるとともに、エポキシ樹脂と酸二無水物との硬化反応により生成する水酸基やエステル基等の官能基が、無電解めっきにより形成した金属層と化学的に相互作用することで接着強度が向上するものと考えられる。
なお、本発明では、支持体付き絶縁接着フィルムを積層体として用いることができるが、このような2層構造の積層体を内層配線板に積層する場合には、支持体と接する絶縁接着フィルム表面上に微細配線を形成することになる。そのため、上記支持体としても、上記Raが0.05μm未満となる表面を有するものを用いることが好ましい。
(III)本発明にかかる絶縁接着フィルムの利用
本発明にかかる絶縁接着フィルムの用途(利用方法)は限定されるものではないが、特に、プリント配線板を製造する用途に好適に用いることができる。すなわち、本発明には、上記絶縁接着フィルムを用いて製造されるプリント配線板や、このようなプリント配線板を製造する用途に用いられる、上記絶縁接着フィルムからなる層を含む積層体を挙げることができる。
<積層体>
本発明にかかる積層体は、上記絶縁接着フィルムを含む多層構造を有しているものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、上述したように、上記支持体からなる支持体層を含む構成、すなわち、支持体/絶縁接着フィルムからなる構成を挙げることができる。また、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、製造直後は半硬化状態にあり接着性を有しているので、絶縁接着フィルムの表面(接着面)を保護するために、保護層が設けられていてもよい。すなわち、本発明にかかる積層体としては、絶縁接着フィルム/保護層からなる2層構造の積層体や、支持体/絶縁接着フィルム/保護層からなる3層構造の積層体も含まれる。
上記支持体層としては、上述した樹脂フィルムや金属箔を挙げることができる。また、上記保護層としては、公知の樹脂製の保護フィルム等を挙げることができる。保護層の積層方法等については特に限定されるものではなく、公知の方法を好適に用いることができる。また、本発明にかかる積層体には、上記以外の他の層が含まれていてもよいことは言うまでもない。
<プリント配線板>
本発明にかかるプリント配線板は、上記絶縁接着フィルム(または上記積層体)を用いて製造されるものである。本発明にかかるプリント配線板は、具体的には特に限定されるものではないが、例えば、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板を挙げることができる。
本発明にかかるプリント配線板は、上記絶縁接着フィルムを絶縁層として用いるため、絶縁層の表面粗度が小さい場合でも、無電解めっき層との間に十分な接着強度を確保することができる。それゆえ、本発明にかかるプリント配線板では、微細配線を形成することが可能となる。以下の説明では、本発明にかかるプリント配線板の一例について、無電解めっきを施す工程を含むセミアディティブ法を例に挙げて説明する。
セミアディティブ法によるプリント配線板の製造方法においては、その詳細な工程は特に限定されるものではないが、例えば、(i) 絶縁層の形成、(ii) ビアホール形成、(iii) 無電解めっき、(iv) めっきレジストの形成、(v) 電解めっきによるパターンめっき、(vi) レジスト剥離、(vii) クイックエッチングによる配線形成の7工程を挙げることができる。以下、各工程について説明する。
(i) 絶縁層の形成
絶縁層の形成工程は、本発明にかかる絶縁接着フィルムを接着対象となる基板等に貼り合わせることで形成することができる。具体的には、プリント配線板の内層配線板に対して、その配線面に上記絶縁接着フィルムを対向させて貼り合わせる。貼り合わせ方法は特に限定されるものではないが、例えば、加熱および/または加圧を伴った油圧プレス、真空プレス、真空ラミネート等の方法を挙げることができる。中でも、内層配線を絶縁接着フィルム(絶縁層)に良好に埋め込ませる点から、真空プレス、真空ラミネート等の方法が好適に用いられる。
積層条件は特に限定されるものではないが、積層時の最高温度(最高積層温度)は300℃以下であればよく、250℃以下であることが好ましくは、200℃以下であることがさらに好ましい。また、積層時間も特に限定されるものではないが、10秒〜3時間程度の範囲内であればよく、30秒〜2時間の範囲内であることが好ましい。真空プレス、真空ラミネートの場合、チャンバー内圧力は10kPa以下であればよく、1kPa以下であることが好ましい。積層する際の圧力は0.5MPa以上であることが好ましく、0.7MPa以上であることがより好ましい。
ここで、絶縁層を形成する場合、支持体付き絶縁接着フィルム(支持体/絶縁接着フィルムからなる積層体)を用いるのではなく、絶縁接着フィルム単層のものを用いる場合には、絶縁接着フィルム上には合紙を積層する。合紙の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、フッ素樹脂等の樹脂フィルムや銅箔等の金属皮膜を挙げることができる。中でも、前記支持体と同様に、微細配線の形成を可能とするため、算術平均粗さのカットオフ値0.002mmで測定した絶縁層表面のRaが、0.05μm未満となるような合紙を用いることが好ましい。
絶縁層の積層工程では、絶縁接着フィルムを積層した後、熱風オーブン等の硬化炉に投入してもよい。特に、上記積層時間を短くした場合、好ましくは20分以下にした場合には、硬化炉に投入すると生産性を向上することができるため好ましい。
(ii) ビアホール形成
上記絶縁層に対して、公知の手法によりビアホールを形成する。ビアホール形成方法(穴あけ加工方法)については特に限定されるものではなく、形成する穴の大きさに合わせて公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、公知のドリルマシン、ドライプラズマ装置、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等を用いることができる。これらの中でもレーザーを用いる方法がより好ましく、特に、小径を形成する場合には、具体的には、50μm以下、好ましくは30μm以下の小径のビアホールを形成する場合には、UV−YAGレーザー、エキシマレーザーがより好ましく用いられる。これらレーザーを用いると、小径のビアホールを形成できるだけでなく、形成されるビアホールの形状を良好なものとするため好ましい。
また、言うまでもないが、レーザーを用いずにドリルマシン等による貫通スルーホールを形成した後に、無電解めっきによるパネルめっきを行ってもよい。また、穴あけ加工の後、公知の方法を用いてデスミアをすることも可能である。このとき用いられるデスミア法としては、例えば、過マンガン酸塩を用いるウェットプロセスやプラズマ等を用いたドライデスミア等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
(iii) 無電解めっき
ビアホール形成の後に施される無電解めっきは、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、パラジウム触媒を用いる化学めっき、パラジウム、カーボン等を用いるダイレクトプレーティング等を挙げることができる。無電解めっきの具体的な種類も特に限定されるものではないが、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき等を挙げることができる。これら無電解めっき法の中でも、工業的な観点や、耐マイグレーション性等の電気特性の観点から、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが好ましく用いられ、無電解銅めっきが特に好ましく用いられる。
この工程で形成される無電解めっき層の厚みは特に限定されるものではないが、上記ビアホール形成工程で形成されたビアの内面、および/または、貫通スルーホールの内面に無電解めっき層が形成され、当該無電解めっき層が給電電極となる。そこで、無電解めっき層の厚みは100〜1000nmの範囲内であることが好ましく、200〜800nmの範囲内であることが好ましい。厚みが100nm未満であると給電電極とした際に、面内の電気めっきの厚みにばらつきが生じる。逆に、1000nmを超えると、後段のエッチング工程で余分にエッチングを行う必要があるため、配線設計値よりも配線厚みが薄くなったり、配線幅が狭くなったりする。さらに、アンダーカット等が発生し、配線形状が劣化するという問題も生じる。
(iv) めっきレジストの形成
上記無電解めっき層を形成した後、めっきレジストを形成する。めっきレジストとしては、感光性めっきレジストを用いることができる。感光性めっきレジストの具体的な種類は特に限定されるものではなく、広く市販されている公知の材料を用いることができる。本発明では、微細配線を形成することから狭ピッチ化に対応するために、50μmピッチ以下の解像度を有する感光性めっきレジストを用いることが好ましい。もちろん、本発明で形成される配線はこれに限定されるものではなく、形成される配線に、50μm以下のピッチを有する配線とそれ以上のピッチを有する配線とが混在している場合もあり得る。
(v) 電解めっきによるパターンめっき
めっきレジストが形成された後に、電解めっきによりパターンをめっきする。電解めっきの具体的な方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を好適に用いることができる。具体的には、電解銅めっき、電解はんだめっき、電解錫めっき、電解ニッケルめっき、電解金めっき等を挙げることができる。これらの中でも、工業的な観点や、耐マイグレーション性等の電気特性の観点から、電解銅めっき、電解ニッケルめっきが好ましく用いられ、電解銅めっきが特に好ましく用いられる。
(vi) レジスト剥離
電解めっき処理の後に、めっきレジストを剥離する。このレジスト剥離工程では、用いためっきレジストの材質に応じて、剥離に適した方法を選択して用いればよい。レジスト剥離方法は具体的には特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いた方法を好適に用いることができる。
(vii) クイックエッチングによる配線形成
レジスト剥離工程の後に、電解めっき工程で給電層として機能した化学めっき層をクイックエッチングすることにより、配線を形成する。クイックエッチングによるエッチングでは、公知のクイックエッチャントを用いることができる。具体的には、例えば、硫酸・過酸化水素系エッチャント、過硫酸アンモニウム系エッチャント、過硫酸ナトリウム系エッチャントや希釈した塩化第二鉄系エッチャント、希釈した塩化第二銅系エッチャント等を好ましく用いることができるが特に限定されるものではない。
これら工程により、本発明にかかるプリント配線板を製造することができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の工程を含んでいてもよい。具体的には、例えば、絶縁層と無電解めっき層との接着性を向上させるため、必要に応じて加熱工程を取り入れることが可能である。上記の例では、配線形成時に金属層と絶縁層との剥離が発生しないように十分に接着させるという意図から、(iii) 無電解めっき処理を施した直後に加熱工程を行ってもよいし、最終的に配線と絶縁層とを強固に接着させるという意図から、(vii) 配線形成の後に加熱工程を行ってもよい。加熱により、金属層表面には酸化皮膜が形成される場合があるが、公知の方法で酸化皮膜を除去する工程を取り入れても構わないし、防錆処理を施す工程を取り入れても構わない。
上記加熱工程における加熱方法は特に限定されるものではなく、通常の熱風オーブン、加圧プレス等公知の装置を用いることが可能である。また、加熱条件も特に限定されるものではない。例えば、加熱環境については、必要に応じて、真空下、不活性雰囲気下等の何れの条件下でも実施することが可能である。また、加熱温度も特に限定されるものではないが、300℃以下であることが好ましい。加熱温度が300℃を超えると、金属層の劣化に伴い、絶縁層と金属層との接着力が低下するおそれがある。加熱時間も特に限定されるものではないが、製造効率の観点から、1分〜120分の範囲内であることが好ましい。
このようにして得られる本発明のプリント配線板は、絶縁層の表面粗度が極めて小さいため、その層上に微細な配線を形成することが可能となる。それゆえ、前述したように、微細配線を有するフレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等のプリント配線板に適用することが可能となる。
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例中における各種合成反応や物性等の測定・評価は次に示すようにして行った。
〔熱可塑性ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成例〕
原料ジアミン成分として、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルとを用い、これら化合物がそれぞれモル比95:5となるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。この溶液を攪拌しながら、原料酸二無水物成分として4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物を添加した。なお、添加量は原料ジアミン成分と原料酸二無水物成分とが等モルになるような量とした。その後、約1時間攪拌することにより、固形分濃度20%ポリアミド酸のDMF溶液(ポリアミド酸溶液)を得た。
〔熱可塑性ポリイミド樹脂の製造例〕
上記ポリアミド酸溶液をフッ素樹脂コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、180分、665Paの条件で減圧加熱することによりイミド化し、熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。
〔デスミア処理〕
絶縁接着フィルムを硬化させた硬化フィルムに対して、アトテック(株)製過マンガン酸デスミアシステムによりデスミア処理を行った。デスミア処理の詳細な条件を次の表1に示す。
Figure 2005290327
〔無電解銅めっき〕
デスミア処理を行った硬化フィルムに対して、アトテック(株)製無電解銅めっきプロセスを用いて無電解銅めっきを行い、表面に導電層としての銅層を形成した。無電解銅めっきの条件を次の表2に示す。
Figure 2005290327
〔電解銅めっき〕
デスミア処理を行った硬化フィルムを10%硫酸中で30秒間予備洗浄した後に、室温の条件下で電解銅めっきを行った。めっき時間は40分間とし、電流密度は2A/dm2とし、得られた電解銅膜の厚さを約18μmとした。
〔レジスト層の形成方法〕
無電解銅めっきおよび電解銅めっきにより銅層を形成した硬化フィルムに対して、液状感光性めっきレジスト(日本合成ゴム(株)社製、商品名:THB320P)をコーティングした。その後、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行い、所望のライン幅/スペース幅(L/S)を有するパターニングされたレジスト層を形成した。
〔表面形状の測定〕
光波干渉式表面粗さ計ZYGO社製NewView5030システムを用いて次の測定条件で硬化フィルム表面の算術平均粗さを測定した。
対物レンズ:50倍ミラウ、イメージズーム:2
FDA Res:Normal
解析条件
Remove:Cylinder,Filter:High Pass,Filter Low Waven:0.002mm
〔接着強度の測定〕
硬化フィルム表面の銅層の接着強度を、IPC−TM−650−method.2.4.9に従い、パターン幅3mm、剥離角度90°、剥離速度50mm/分の条件で測定した。なお、接着強度を測定するサンプル(測定サンプル)に対して、23℃、湿度50%の恒温室に24時間放置することにより前処理を行った。
〔実施例1〕
(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分として、上記製造例で得た熱可塑性ポリイミド樹脂を用いるとともに、(B)エポキシ樹脂成分として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:N660、エポキシ当量208g/eq、大日本インキ化学工業(株)社製)を用い、(C)酸無水物成分として無水フタル酸(酸無水物当量148g/eq)を用いた。これらを表3に示す配合量でジオキソランに加えて攪拌し溶解させ、樹脂組成物溶液を得た(固形分率(SC)=30%)。
得られた樹脂組成物溶液を、厚み125μmのPETフィルム(商品名:セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上にコンマコーターにて塗布した。その後、熱風オーブンにて、60℃/1分、80℃/1分、100℃/3分、120℃/1分、150℃/3分の条件でステップ乾燥させて、シート厚みが40μmの半硬化状態のPETフィルム付き絶縁接着フィルム(積層体)を得た。
次に、積層体からPETフィルムを剥離し、絶縁接着フィルムをピン枠に固定し、180℃/60分加熱し、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムに上述したようにしてデスミア処理を施した。このとき、デスミア前後での硬化フィルムの表面形状を観察し、表面粗度を評価した。その結果を表4に示す。
続いて、デスミア処理を施した硬化フィルムに無電解銅めっきおよび電解銅めっきを行い、厚さ約18μmの銅層を形成した。その後、上述したようにパターン幅3mmのパターニング処理を施した後、熱風オーブンで180℃、30分加熱した。これを測定サンプルとして、硬化フィルムと無電解めっき銅層との接着強度を上述したように測定した。その結果を表4に示す。
〔実施例2〜6〕
(A)〜(C)の各成分および硬化促進剤(実施例4)を表3に示す配合量で混合した以外は、実施例1と同様にして硬化フィルムを得た。なお、表3では、(B)エポキシ樹脂成分は商品名で示しており、商品名:1032H60(実施例6)は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製)でありエポキシ当量は169g/eqである。また、(C)酸無水物成分のうち、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(実施例5)は酸無水物当量が166g/eqである。さらに、硬化促進剤として用いている商品名:2E4MZ(四国化成工業(株)製)は、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルである。
得られた硬化フィルムについて、実施例1と同様にして、表面粗度および無電解めっき銅層との接着強度を評価した。その結果を表4に示す。
〔比較例1・2〕
(A)〜(C)の各成分を表3に示す配合量で混合した以外は、実施例1と同様にして硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムについて、実施例1と同様にして、表面粗度および無電解めっき銅層との接着強度を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2005290327
Figure 2005290327
〔実施例7〕
銅箔18μmのガラスエポキシ銅張積層板から内層配線板を作製した。実施例1で得た半硬化状態のPETフィルム付き絶縁接着フィルムのPETフィルムを剥離し、絶縁接着フィルムと上記内層配線板の内装配線とを対向させ、真空プレスにより積層し、積層体を得た。このときの真空プレスの条件は、温度180℃、熱板圧力3MPa、プレス時間60分、真空条件1KPaとした。また、真空プレス時に絶縁接着フィルムと接する箇所の合紙にはフッ素樹脂フィルム(旭硝子(株)製、商品名:アフレックス)を用いた。
上記積層体の絶縁接着フィルム面に対してUV−YAGレーザーを照射し、内層配線板の電極直上に当該電極に至る内径30μmのビアホールを開けた。続いて絶縁接着フィルムの全面に無電解銅めっきを施した後、180℃、30分の加熱処理を施した。その後、形成した無電解銅めっき層上にレジスト層を形成し、厚み10μmの電解銅めっきを施した後、レジスト層を剥離し、さらに露出しためっき銅を塩酸/塩化第二鉄系エッチャントで除去して、L/S=10μm/10μmの微細配線を有するプリント配線板を製造した。L/S=10μm/10μmの微細配線はほぼ設計値通りのライン/スペースを有し、配線形状は良好で、且つ配線剥がれは全くなかった。
〔比較例3〕
比較例1で得られたPETフィルム付き絶縁接着フィルムを用いた以外は、実施例7と同様にしてプリント配線板を製造した。L/S=10μm/10μmの微細配線は、剥がれ落ちている箇所が多数存在した。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明にかかる絶縁接着フィルムは、絶縁層の表面粗度が小さくても微細配線(導体層)との間に十分な接着強度を発揮することができるため、本発明は、プリント配線板の製造等に好適に用いることができる。それゆえ、本発明は、絶縁接着フィルム等の素材加工産業や各種化学産業だけでなく、フレキシブルプリント配線板やビルドアッププリント配線板等の各種電子部品の産業分野にも好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. (A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分、(B)エポキシ樹脂成分、および(C)酸無水物成分を必須成分として含有している絶縁接着フィルムであって、
    上記(A)熱可塑性ポリイミド樹脂成分として、次に示す一般式(1)で表される酸二無水物(a)
    Figure 2005290327
    (ただし、式中、Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、または−COO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
    を含む酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させて得られる熱可塑性ポリイミド樹脂を用いるとともに、
    上記(B)エポキシ樹脂成分に含まれるエポキシ基のモル数MB に対する、上記(C)酸無水物成分に含まれる酸無水物基のモル数MC で表されるモル混合比MC /MB が0.4以上1.5以下の範囲内であることを特徴とする絶縁接着フィルム。
  2. 上記ジアミン成分には、次に示す一般式(2)
    Figure 2005290327
    (ただし、式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)m−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−C(=O)O−、からなる群より選択される2価の基、または、直接結合を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1以上5以下の整数である。)
    で表されるジアミン(b)が含まれることを特徴とする請求項1に記載の絶縁接着フィルム。
  3. 上記(C)酸無水物成分として、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)から選ばれる少なくとも1種の酸無水物が用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁接着フィルム。
  4. 支持体上に成形されてなることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の絶縁接着フィルム。
  5. 請求項1ないし4の何れか1項に記載の絶縁接着フィルムからなる層を含む積層体。
  6. さらに、支持体層および保護層の少なくとも何れかの層を含むことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
  7. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の絶縁接着フィルムを用いて製造されるプリント配線板。
  8. フレキシブルプリント配線板またはビルドアップ配線板の何れかであることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板。
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