JP2005287375A - 細胞標識分離方法および細胞標識分離用剤 - Google Patents

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俊郎 立花
Katsuro Tachibana
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Abstract

【課題】容易に細胞を識別することができ、細胞分離の精度が極めて高い細胞標識分離方法および細胞標識分離用剤を提供する。
【解決手段】標的細胞3を含んだ溶液に気体2を含んだマイクロカプセル1を添加して撹拌し、標的細胞3をマイクロカプセル壁の外側に抗体4を介して結合させて浮上させ、標的細胞3のみを分離するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、標的細胞を浮上させて分離する細胞標識分離方法およびその方法に使用する微小気泡カプセルを使用した細胞標識分離用剤に関する。
従来、白血病癌細胞や免疫細胞などを分離する方法に、白血球および赤血球の比重を利用した遠心分離法がある。また、各種の細胞を分離するには、ある特定の比重の溶液をサンプルに混合し、遠心分離で出現した試験管内の液層の上か下に沈殿した細胞を分離する方法があり、この方法は細胞の重さと、比重が異なる細胞を分離するには簡易で正確な方法である。
しかし、細胞の大きさ、比重が類似する2つの種類の細胞を分離することはできない。蛍光抗体を用いて光レーザー装置でそれぞれの違う種類の細胞(リンパ球のサブセットなど)を認識し、レーザー光や磁気エネルギーで細胞を一個一個分離する、セルソーター、マクロアレースキャン、ファックスキャン、レーザートラップ法、フローサイトメトリー法などの色々ある。 FITC、PE、PerCP、PerCP−Cy5.5、APC、PE−Cy7、APC−Cy7などの標識抗体を組み合わせることにより細胞を識別させ方法や機能性ポリスチレン粒子、モリテックス、モノクローナル抗体(CD4, CD8, など)を使ったビーズ法、磁気ビーズ試薬、ELISA法、電気泳動法などもある(特許文献1、2参照)。
特開2002−181781号公報 特開平9−61436号公報 米国特許6,676,963号明細書 米国特許6,528,039号明細書
従来の細胞標識と細胞分離は大掛かりで高価な装置や複雑な処理工程が必要である。また、検査工程や分離方法が複雑で煩雑であり、また、識別および分離には時間がかかるという問題がある。
一方、AIDS、SARS、コレラ、マラリアなどの発展途上国に流行している疾患では上記の方法で診断することは、コスト面、検査技術面、装置面で困難である。また、正確に細胞標識や分離を行うには一度に多くのサンプル(血液採取量など)が必要となり、患者に負担がかかる。また、癌、免疫、遺伝子の研究でサンプルが少量しか必要なく、なおかつ簡単で、正確な細胞標識および分離方法は高価な装置を使わない限り存在しない。また、再生医療(ES細胞、幹細胞など)やクローン技術において、できるだけ細胞を傷つけずに識別、分離することが課題とされている。
そこで、本発明は、容易に細胞を識別することができ、細胞分離の精度が極めて高い細胞標識分離方法および細胞標識分離用剤を提供するものである。
本発明は、標的細胞を含んだ溶液に気体を含んだマイクロカプセルを添加して撹拌し、標的細胞をマイクロカプセル壁の外側に抗体を介して結合させて浮上させ、標的細胞のみを分離するものである。
本発明により細胞の大きさ、比重に関係なく、検体サンプルの上部に浮上してきたものを採取できる。また、マイクロカプセルの壁の外側、内側または壁中に蛍光標識物質を含ませることで、容易に細胞を識別することができる。気体マイクロカプセルの浮力を利用し標的細胞は液体の最上部まで達するため、従来の分離方法に比べ、細胞分離の精度は極めて高く、100万個の細胞から1個の細胞を分離することも可能となる。
図1(a)に示すように、本発明は気体2を含んだマイクロカプセル1を選択的に分離したい標的細胞3を抗体4に付着させ、その浮力でもって図1(b)に示すように、細胞3を他の細胞から分離する手段を用いる。
気体の種類はプロパン系ガス、窒素、ネオンなど液体に溶けにくいものを使う。またマイクロカプセルの壁は脂質、アルブミン、ポリマーで構成される。ポリエチレングリコール、リガント、モノクローナルなどの抗体4などを壁に結合させ、ある特定の細胞に付着させるようにあらかじめ作成することができる。
気体を含むマイクロカプセル(10ナノメートルから100ミクロン直径)をリポゾームと同様の方法で作成し、標的細胞の抗体をマイクロカプセル壁の外側に結合させる(10個/mlから10億個/ml)。細胞を含んだ溶液にマイクロカプセルを添加し、撹拌後に、1分から24時間サンプルを静止させる。この間に標的の細胞は浮上するため、上澄み液を採取することで標的細胞のみを分離することができる。静止時間を短縮するためには、サンプルを低速の遠心分離器(1000回転毎分以下)にかけることができる。上記工程を数回繰り返すことでさらに精度を上げることができる。
また、図1(a)に示すように、マイクロカプセル1に蛍光物質6を含ませることで、標的細胞に付着しているマイクロバブルが蛍光を発し標識される。従来は標的細胞表面に蛍光色素が直接結合するため細胞毒性を引き起こすことがあったが、本発明ではそのようなことは認められない。
また、微弱な超音波(20kHzから10MHz、10ワット毎平方センチ以下の音圧)を照射することで、マイクロカプセルは細胞表面から切り離される。
超音波造影剤として開発されたマイクロバブルや研究開発中のもの(特許文献3、4)も当発明の目的で流用できる。本発明の標識、分離方法を使えば、簡単に患者の免疫機能の状態や細菌感染の種類、癌の重症度などの情報が得られる。各種のモノクローナル抗体を細胞識別マーカーとして使えば上記は可能である。また、目的のES細胞や幹細胞の分離にも本発明は利用できる。
マラリア患者から採血し、マラリア原虫に対する抗体を有した本発明のマイクロカプセルを血液サンプルに添加する。その後、マイクロカプセルに付着して浮遊してきた赤血球を分離、採取し、異常赤血球数、顕微鏡病理所見で患者の診断と病状に関する情報が得られ、治療方針が決められる。
AIDSの患者より採血し、CD4またはCD8の細胞レセプター(図1の5)を有するマイクロカプセルを作成し、それぞれに異なる蛍光標識物質を持たせる。このマイクロカプセルを血液と混合し、時間を置いて、上澄み液を採取し、蛍光顕微鏡で観察することで、AIDSの活動期かどうかの病状の進行度が判定できる。
白血病や癌細胞の増殖機序の研究において、特定の種類の癌細胞を本発明方法で標識分離することで、その癌の遺伝子解析が可能となる。これは、癌培養細胞株のいくつかの細胞表面マーカーをマイクロカプセル表面に結合させることで、その数種類分離細胞の組み合わせで解明できる。このとき、採取できる細胞数が限られているため、当発明は有効に活用できる。
本発明による標的細胞の分離方法の説明図である。
符号の説明
1:マイクロカプセル
2:気体
3:細胞
4:抗体
5:レセプター
6:蛍光色素

Claims (3)

  1. 標的細胞を含んだ溶液に気体を含んだマイクロカプセルを添加して撹拌し、標的細胞をマイクロカプセル壁の外側に抗体を介して結合させて浮上させ、標的細胞のみを分離することを特徴とする細胞標識分離方法。
  2. 微小気泡を含んだマイクロカプセルからなることを特徴とする細胞標識分離用剤。
  3. マイクロカプセルに蛍光物質を含ませることを特徴とする請求項2記載の細胞標識分離用剤。
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