JP2005285383A - ナトリウム−硫黄電池及びその製造方法 - Google Patents

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正 白方
Sakae Washida
栄 鷲田
Hirosuke Ohata
博資 大畑
Koichi Kanie
孝一 蟹江
Yasushi Mori
康 森
Kyoji Hiramatsu
恭二 平松
Toshiro Nishi
敏郎 西
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Abstract

【課題】 金型製作のための費用や工数を削減することができ、製造工程の自動化が容易であると共に周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができ、製造工数を低減させることができ、導電材内を脱気して硫黄を投入することにより正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができるナトリウム−硫黄電池の製造方法、及び高品質で低原価で量産性に優れたナトリウム−硫黄電池を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のナトリウム−硫黄電池の製造方法は、正極室の周壁を形成する正極容器2aに平板状の正極導電材22を正極容器2aの内壁に沿って円筒状に配設する導電材配設工程と、溶融硫黄注入工程又は硫黄投入溶融工程と、圧縮用治具を挿入し正極導電材22を厚さ方向に圧縮すると共に溶融した硫黄を正極導電材22に含浸させる導電材圧縮含浸工程と、正極容器2aを冷却する冷却工程と、を備えた構成を有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電力貯蔵用、電気自動車の駆動電源用等に用いられる2次電池であるナトリウム−硫黄電池及びその製造方法に関するものである。
従来、電力貯蔵用、電気動力の駆動電源用等に用いられる2次電池として、ナトリウム−硫黄電池が用いられている。ナトリウム−硫黄電池は、有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し、正極室に正極活物質として硫黄を収容したものである。290℃から350℃の作動温度に加熱された状態で負極室のナトリウムがナトリウムイオンとなって固体電解質管を透過して正極室の硫黄と反応し、多硫化ナトリウムを生成し放電が行われると共に、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウムイオンと硫黄が生成され、ナトリウムイオンは固体電解質管を透過して負極室に戻る。
このようなナトリウム−硫黄電池においては、正極室内に正極成形体が収容されている。正極成形体は、炭素繊維やグラファイト繊維等からなる正極導電材に正極活物質としての硫黄を含浸して形成したものであり、正極容器の内壁と固体電解質管の外壁とに囲まれた正極室を縦に分割した断面円弧形状に形成されている。複数の断面円弧状の正極成形体は組み合わされて円筒状に正極室内に収容されている。
このようなナトリウム−硫黄電池の正極成形体の製造方法として、特許文献1には「断面がドーナツ形状の空洞部からなるナトリウム−硫黄電池の正極室に充填する円周方向に分割された正極導電材を、一対の金型によって所定形状にプレス成形する正極成形体の製造方法において、前記金型のプレス面に厚み方向にプレスする面と円周方向にプレスする面とを設けて厚み方向と円周方向に圧縮力を加えると共に、金型内に溶融硫黄を注入して正極導電材に溶融硫黄を含浸させつつプレス成形することを特徴とする正極成形体の製造方法」が開示されている。
また、特許文献2には「固定型と可動型の間に形成されるキャビティ内で、電子伝導性の良好な炭素繊維よりなる平板状の芯材を、所定の曲率半径に湾曲形成するナトリウム−硫黄電池用の正極成形体の製造方法において、キャビティ内での芯材を固定型上の凹部の近傍に配置した状態で、幅方向の両側から狭圧しながら湾曲させることを特徴とするナトリウム−硫黄電池用の正極成形体の製造方法」が開示されている。
さらに、特許文献3には「下部凸型固定型の内側にアルミナの繊維からなるシート状の加工品を敷き、その上から炭素繊維を平板状に加工したフェルトを挿入し、次いで上部凹型の圧縮用可動型により、フェルトが所定の厚さになるまで圧縮すると共に溶融した硫黄を含浸させる正極成形体の成形方法」が開示されている。また、この特許文献3には「正極成形体は円筒軸方向に平行な面で均等にn(n=2,3,4)等分した形状となるように作成する」ことが記載されている。
さらに、特許文献4には「金型内に形成された凹所に基質材料を配置する工程と、該基質材料を脱気する工程と、前記凹所に反応材料を導入する工程と、前記金型を加熱し、前記反応材料を前記基質材料に含浸させる工程と、前記金型を冷却して、前記反応材料が含浸された前記導電助材を固化させる工程と、前記金型を分離して、前記反応材料が含浸された基質材料である電極構造体を取り出す電極構造体の製造方法」が開示されている。
特許2662081号公報 特許2928697号公報 特開2000−331708号公報 特開2001−126759号公報
しかしながら上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
(1)導電材を狭圧する専用の凹型金型と凸型金型が必要であるため、金型の製作に時間と費用を要し、例えば多品種少量の正極成形体を製造する場合は、金型の製作費用が製造原価に反映され製造原価が高くなってしまうという課題を有していた。
(2)導電材を狭圧する専用の凹型金型と凸型金型を用いているため、金型から正極成形体を取り出す工程や、移動させる工程、及び正極容器内に挿入し配置する工程等が必要であり多大の作業工数を必要とすると共に、正極成形体を金型から取り出してから正極容器に配置するまでの間に周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防止するための設備や工程が必要になり生産性に欠けるという課題を有していた。
(3)導電材を狭圧する専用の凹型金型と凸型金型を用いているため、金型の構造上、円筒状の正極成形体を一体形成することはできず、断面円弧状の正極成形体を複数作製し組み合わせて接合して円筒状に形成しているので、製造工数が増加すると共に作業が煩雑になり作業に多大な時間を要していた。また、隣り合う断面円弧状の正極成形体が接合部分で互いにずれたり隙間が生じたりして電池の性能低下を引き起こすという課題を有していた。
(4)導電材を狭圧する専用の金型を用いているため、金型からの導電材の取り出しや移送等の工程が必要になり作業工数が多く煩雑であり、作業を自動化する場合は設備や装置が複雑になり自動化が困難であるという課題を有していた。
(5)金型内に硫黄を投入して正極導電材を120℃〜140℃で10時間程度加熱したまま放置することにより自然に硫黄と正極導電材内の空気との置換を行うので、正極導電材に溶融硫黄を含浸させ内部の気泡を取り除くのに多大な時間を要し、生産性に欠けるという課題を有していた。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、正極成形体を形成するのに金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができ、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、製造工程の自動化が容易であると共に周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができ、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができるので、製造工数を低減させることができ、導電材内を脱気して硫黄を投入することにより正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、製造時間を極めて短縮し省エネルギ性に優れ、生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できるナトリウム−硫黄電池の製造方法、及び高品質で低原価で量産性に優れたナトリウム−硫黄電池を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法は、有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、正極室の周壁を形成する正極容器に柔軟性を有し所定の厚さを有する平板状の正極導電材を正極容器の内壁に沿って円筒状に配設する導電材配設工程と、次いで、正極容器に溶融した硫黄を注入する溶融硫黄注入工程、又は、正極容器に固体の硫黄を投入した後加熱して溶融する硫黄投入溶融工程と、次いで、正極容器内に円筒状に配設された正極導電材の中空部に円柱状の圧縮用治具を挿入し正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に溶融硫黄を正極導電材に含浸させる導電材圧縮含浸工程と、正極導電材に溶融硫黄を含浸させた後に正極容器を冷却する冷却工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、溶融硫黄注入工程又は硫黄投入溶融工程において正極容器内に正極活物質である硫黄を投入し、導電材圧縮含浸工程において圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易である。
(3)導電材圧縮含浸工程において、圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し正極導電材を圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後、正極容器を冷却して正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができる。
(4)圧縮用治具の外径や正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率(圧縮前の正極導電材の厚さと圧縮後の正極導電材の厚さの差の、圧縮前の正極導電材の厚さに対する百分率)を任意に設定することができる。
ここで、正極容器は有底円筒状に形成され、その材質としては、SUSやSS、アルミニウム等が用いられる。なお、正極容器の底部の形状としては、隅部を湾曲状に形成した形状や砲弾状であってもよい。
正極導電材としては、炭素繊維やグラファイト繊維等の不織布又はフェルト状にしたもの等が用いられる。
硫黄投入溶融工程においては、正極容器に粉末状の固体硫黄を投入した後炉に入れ、120℃〜140℃に加熱して正極容器内の固体硫黄を溶融させる。溶融硫黄注入工程においては、正極容器を予め炉に入れ120℃〜140℃に加熱しておき、加熱した正極容器に溶融した液体の溶融硫黄を注入する。
圧縮用治具は、円柱状等に形成されSUS等の耐食性を有する材質により形成されることが好ましい。なお、圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入し易いように圧縮用治具の先端をテーパ状や砲弾状に形成したり、先端を面取りしてもよい。また、圧縮用治具は、正極導電材の中空部に正極導電材を圧縮しながら挿入されるため、円滑に挿入できるようにその表面に四フッ化エチレン樹脂(テフロン(登録商標))等のシートを貼着したり、テフロン(登録商標)加工等の潤滑加工を施し、挿入時の摩擦を低減させるようにしてもよい。
また、充電時に正極導電材の内周側に硫黄が偏って生成することを防ぐために、固体電解質管と正極導電材の間に高抵抗層を形成することもできる。高抵抗層としては、シート状のアルミナ繊維等が用いられ、硫黄を含浸、固化させた正極導電材の内周面に貼着して配設するか、または固体電解質管の表面に巻着して正極導電材に挿入することにより固体電解質管と正極導電材の間に配設する。
圧縮用治具の外径としては、固体電解質管の外径と同一か或いはやや大きめの外径を有し、且つ、側部正極導電材を所定の圧縮率(圧縮前の厚さと圧縮後の厚さの差の、圧縮前の厚さに対する百分率)で圧縮できるように形成される。
冷却工程における冷却方法としては、正極容器を空冷してもよく、あるいは冷却用のファン等を用いて急冷してもよい。
本発明の請求項2に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法は、有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、正極室の周壁を形成する正極容器に柔軟性を有し所定の厚さを有する平板状の正極導電材を正極容器の内壁に沿って円筒状に配設する導電材配設工程と、次いで、正極容器内に円筒状に配設された正極導電材の中空部に、有底円筒状に形成され底部に圧入孔が形成された硫黄圧入圧縮用治具を挿入し正極導電材を厚さ方向に圧縮する導電材圧縮工程と、次いで、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を注入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させる硫黄圧入含浸工程と、正極導電材に溶融硫黄を含浸させた後に正極容器を冷却する冷却工程と、を備えた構成を有している。
この構成によって、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、導電材圧縮工程において硫黄圧入圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に、硫黄圧入含浸工程において溶融硫黄を正極容器内に圧入して正極導電材に含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易である。
(3)硫黄圧入圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し正極導電材を圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後、正極容器を冷却して正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができる。
(4)硫黄圧入圧縮用治具の外径や正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率を任意に設定することができる。
(5)硫黄圧入含浸工程において、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を注入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させることができる。
ここで、硫黄圧入圧縮用治具は、内部が中空の有底円筒状等に形成されSUS等の耐食性を有する材質により形成される。また、底部には正極容器内に溶融硫黄を圧入するための圧入孔が形成される。
また、溶融硫黄を圧入する圧入手段としては、硫黄圧入圧縮用治具の上端開口部から挿入され、内部の溶融硫黄を押し込んで圧入孔から圧入する圧入棒が用いられる。或いは、溶融硫黄が封入され管継手等の接続部を介して硫黄圧入圧縮用治具の上端開口部に接続される硫黄タンクと、硫黄タンクに接続された加圧ポンプと、を用いて加圧により圧入する方法等を用いることもできる。
なお、圧入棒を用いる場合は、圧入棒の先端部に高い耐熱性を有するシリコンゴム等の合成ゴムを取り付け、その外周部を硫黄圧入圧縮用治具の内壁に密着させることが好ましい。これにより、治具内の溶融硫黄を高い圧入力で圧入することができると共に治具内の溶融硫黄の残留を防止できる。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後に圧縮含浸工程の後に正極容器の内部を脱気する脱気工程を備えた構成を有している。
この構成によって、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)溶融硫黄を正極導電材に含浸させた後、脱気工程において導電材内の気泡を速やかに取り除くことができるので、正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、製造時間の著しい短縮化が図られ生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できる。従来は脱気を行わず硫黄を投入して正極導電材を120℃〜140℃で加熱したまま放置することにより自然に置換を行っていたので、その作業に例えば10時間程度かかっていたが、脱気工程を行うことにより、その時間を例えば10分程度に短縮し1/60に短縮することができる。
ここで、脱気工程においては、正極容器の開口部にカップ状の脱気用接続治具をOリング等により気密接続し、真空ポンプにより正極容器内を脱気してもよく、或いは正極容器を加熱炉内で真空引き専用のチャンバに収容し、脱気を行ってもよい。
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、導電材配設工程において、正極容器の側部内壁に沿って一枚の平板状の正極導電材を円筒状に配設する構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において、一枚の平板状に形成されたフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成することにより、固体電解質管の側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができる。
(2)正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することにより、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる。
ここで、正極容器の側部内壁に沿って円筒状に配設される正極導電材の下部側を、正極容器の底部に沿って縒れさせて固体電解質管の底部に回り込んで接触するように配設することもできる。或いは、正極容器の底部に固体電解質管の底部に接触する円柱状の底部正極導電材を敷設し、その底部正極導電材の上面に正極導電材を円筒状に配設することもできる。正極導電材の下部側を縒れさせて固体電解質管の底部に接触するように配設した場合は、底部正極導電材を設ける必要がないので、部品点数が減少しコストを削減することができ、工数を削減して作業性を向上させることができる。
正極導電材は、正極容器内に円筒状に配設した際に外周となる外周辺の長さを内周となる内周辺の長さより長く形成することが好ましい。これにより、正極導電材の両側部を突合せて円筒状にした際に、内周側と外周側の嵩密度の差を減少させ均一にすることができると共に、互いに突合わされる両側部同士の接合部分に隙間が形成されたりずれが生じたりすることを防止できる。
また、正極導電材の横断面形状を略平行四辺形状に形成してもよい。これにより、正極導電材の両側部に傾斜部が形成され、その2つの傾斜部の内、内周側に向いた傾斜部と外周側に向いた傾斜部とを重ね合わせることにより、傾斜部同士の接合部分に隙間が形成されたりずれが生じたりし難く、特に圧縮用治具を挿入する際にも隙間やずれが生じ難く、電流密度を均一にすることができる。
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、導電材配設工程において、正極容器の底部に円柱状の底部正極導電材を敷設し、底部正極導電材の上面に正極導電材を配設する構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)正極に負極と取り付ける際に正極導電材に挿入される固体電解質管の底部及び側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができる。
ここで、底部正極導電材の上面の中央部に固体電解質管の底部が嵌入する凹部を形成してもよい。これにより、固体電解質管の下端部側に隙間が形成されるのを防止でき、固体電解質管の前面に渡って均一に正極導電材を接触させることができ、電池の性能の低下を抑制できる。
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、冷却工程の後に、正極導電材の内周壁に高抵抗層を配設する高抵抗層配設工程を備えた構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)硫黄を含浸、固化させた正極導電材の内周面に高抵抗層を配設することにより、充電時に正極導電材の内周側に硫黄が偏って生成することを防ぎ、電流密度を均一にして電池性能を向上させることができる。
ここで、高抵抗層としては、シート状のアルミナ繊維等が用いられる。
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、圧縮用治具の外壁の形状が固体電解質管の外壁の形状と同一形状に形成されている構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同一形状に形成し圧縮用治具の外径を固体電解質管の外径に合わせることにより、圧縮用治具を挿入するだけで正極導電材の圧縮後の中空部の径を固体電解質管の外径と同一にすることができ、作業工数を大幅に削減できる。
(2)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同形状に形成することにより、正極成形体を圧縮した場合にその中空部の径を固体電解質管の外径と同一の大きさに形成することができ、正極容器に負極構造体を取り付ける際に固体電解質管を正極導電材に円滑に挿入することができる。
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、正極導電材の中空部に圧縮用治具を挿入する前に、正極導電材の内周面又は圧縮用治具の外周面にシート状の固体潤滑材を貼着する工程を備えた構成を有している。
(1)圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができる。
ここで、シート状の固体潤滑材としては四フッ化エチレン樹脂(テフロン(登録商標))等をシート状に形成したものが用いられる。
本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、圧縮用治具が固体潤滑材により形成されている、或いは、圧縮用治具の外周面が潤滑加工されている構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至7の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができる。
ここで、固体潤滑材としてはテフロン(登録商標)等が用いられ、潤滑加工としてはテフロン(登録商標)加工等が用いられる。
本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、圧縮用治具に内設された加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入する構成を有している。
この構成によって、請求項1乃至9の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入することにより、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができる。
ここで、加熱手段としては圧縮用治具内部に内設したヒータ等が用いられる。
本発明の請求項11に記載のナトリウム−硫黄電池は、請求項1乃至10の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法により製造された構成を有している。
この構成によって、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、溶融硫黄注入工程又は硫黄投入溶融工程において正極容器内に正極活物質である硫黄を投入し、導電材圧縮含浸工程において圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易である。
(3)圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し正極導電材を圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後、正極容器を冷却して正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができる。
(4)圧縮用治具の外径や正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率(圧縮前の正極導電材の厚さと圧縮後の正極導電材の厚さの差の、圧縮前の正極導電材の厚さに対する百分率)を任意に設定することができる。
(5)溶融硫黄を正極導電材に含浸させた後、脱気工程において導電材内の気泡を速やかに取り除くことができるので、正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できる。従来は脱気を行わず硫黄を投入して正極導電材を120℃〜140℃で加熱したまま放置することにより自然に置換を行っていたので、その作業に例えば10時間程度かかっていたが、脱気工程を行うことにより、その時間を例えば10分程度に短縮することができる。
(6)導電材配設工程において、一枚の平板状に形成されたフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成することにより、固体電解質管の側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができる。
(7)正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することにより、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる。
(8)硫黄を含浸、固化させた正極導電材の内周面に高抵抗層を配設した場合は、充電時に正極導電材の内周側に硫黄が偏って生成することを防ぎ、電流密度を均一にして電池性能を向上させることができる。
(9)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同一形状に形成し圧縮用治具の外径を固体電解質管の外径に合わせることにより、圧縮用治具を挿入するだけで正極導電材の圧縮後の中空部の径を固体電解質管の外径と同一にすることができ、作業工数を大幅に削減できる。
(10)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同形状に形成することにより、導電材圧縮含浸工程において正極成形体を圧縮した場合にその中空部の径を固体電解質管の外径と同一の大きさに形成することができ、正極容器に負極構造体を取り付ける際に固体電解質管を正極導電材に円滑に挿入することができる。
(11)正極導電材の内周面又は圧縮用治具の外周面にシート状の固体潤滑材を貼着した場合、或いは、圧縮用治具の外周面を潤滑加工した場合は、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができる。
(12)圧縮用治具内部に内設したヒータ等の加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入することにより、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができる。
(13)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、導電材圧縮工程において硫黄圧入圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に、硫黄圧入含浸工程において溶融硫黄を正極容器内に圧入して正極導電材に含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができる。
(14)導電材圧縮工程において硫黄圧入圧縮用治具を円筒状の正極導電材の中空部に挿入した後、硫黄圧入含浸工程において、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を注入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させることができる。
本発明の請求項12に記載のナトリウム−硫黄電池は、有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池であって、正極室に配設される正極成形体が、両側部を突合せて円筒状に形成した一枚の平板状の正極導電材に硫黄を含浸し固化して形成された構成を有している。
この構成によって、以下のような作用を有する。
(1)平板状に形成された一枚のフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成しているので、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができる。また、正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる。
以上のように、本発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、正極容器内に正極活物質である硫黄を投入し、圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させ、冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができる生産性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる品質の優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(3)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易であるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(4)正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができる生産性及び省コスト性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(5)所定の正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等に対し圧縮用治具の外径を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率を任意に設定することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、
(1)正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(3)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易である生産性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(4)硫黄圧入圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し正極導電材を圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後、正極容器を冷却して正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(5)硫黄圧入圧縮用治具の外径や正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率を任意に設定することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(6)硫黄圧入含浸工程において、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を圧入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させることができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)溶融硫黄を正極導電材に含浸させた後、脱気工程において導電材内の気泡を速やかに取り除くことができるので、正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、製造時間の著しい短縮化が図られ、生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できる生産性及び作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、
(1)導電材配設工程において、一枚の平板状に形成されたフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成することにより、固体電解質管の側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(2)正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる省力性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、
(1)正極に負極と取り付ける際に正極導電材に挿入される固体電解質管の底部及び側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果に加え、
(1)硫黄を含浸、固化させた正極導電材の内周面に高抵抗層を配設することにより、充電時に正極導電材の内周側に硫黄が偏って生成することを防ぎ、電流密度を均一にして電池性能を向上させることができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、
(1)圧縮用治具を挿入するだけで正極導電材の圧縮後の中空部の径を固体電解質管の外径と同一にすることができ、作業工数を大幅に削減できる生産性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(2)正極成形体を圧縮した場合にその中空部の径を固体電解質管の外径と同一の大きさに形成することができ、正極容器に負極構造体を取り付ける際に固体電解質管を正極導電材に円滑に挿入することができる作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項の効果に加え、
(1)圧縮用治具を挿入する前にシート状の固体潤滑材を貼着する工程を備えているので、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができる作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項の効果に加え、
(1)圧縮用治具の外周面が低摩擦なので、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができる作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1乃至9の内いずれか1項の効果に加え、
(1)圧縮用治具内部に内設したヒータ等の加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入することにより、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができる作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
請求項11に記載の発明によれば、
(1)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、溶融硫黄注入工程又は硫黄投入溶融工程において正極容器内に正極活物質である硫黄を投入し、導電材圧縮含浸工程において圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(2)正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように金型を用いて正極成形体した場合の金型からの取り出しや移送等の工程が不要であり、製造工程の自動化が容易であるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(3)圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し正極導電材を圧縮すると共に正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後、正極容器を冷却して正極成形体を形成しているので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(4)圧縮用治具の外径や正極容器の内径、圧縮前の正極導電材の厚さ等を適宜設定することにより、正極導電材の圧縮率(圧縮前の正極導電材の厚さと圧縮後の正極導電材の厚さの差の、圧縮前の正極導電材の厚さに対する百分率)を任意に設定することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(5)溶融硫黄を正極導電材に含浸させた後、脱気工程において導電材内の気泡を速やかに取り除くことができるので、正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できる生産性及び作業性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(6)導電材配設工程において、一枚の平板状に形成されたフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成することにより、固体電解質管の側部の全面に渡って均一に正極導電材を接触させることができると共に、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(7)正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる省力性に優れたナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(8)硫黄を含浸、固化させた正極導電材の内周面に高抵抗層を配設した場合は、充電時に正極導電材の内周側に硫黄が偏って生成することを防ぎ、電流密度を均一にして電池性能を向上させることができるナトリウム−硫黄電池の製造方法を提供することができる。
(9)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同一形状に形成し圧縮用治具の外径を固体電解質管の外径に合わせることにより、圧縮用治具を挿入するだけで正極導電材の圧縮後の中空部の径を固体電解質管の外径と同一にすることができ、作業工数を大幅に削減できるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(10)圧縮用治具の外壁の形状を固体電解質管と同形状に形成することにより、導電材圧縮含浸工程において正極成形体を圧縮した場合にその中空部の径を固体電解質管の外径と同一の大きさに形成することができ、正極容器に負極構造体を取り付ける際に固体電解質管を正極導電材に円滑に挿入することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(11)正極導電材の内周面又は圧縮用治具の外周面にシート状の固体潤滑材を貼着した場合、或いは、圧縮用治具の外周面を潤滑加工した場合は、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができ、円滑に抜き出すことができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(12)導電材圧縮含浸工程において、例えば圧縮用治具内部に内設したヒータ等の加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入することにより、圧縮用治具を正極導電材の中空部に円滑に挿入することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(13)導電材配設工程において正極容器内に内壁に沿って正極導電材を直接配設し、導電材圧縮工程において硫黄圧入圧縮用治具を正極容器内の正極導電材の中空部に挿入し、正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に、硫黄圧入含浸工程において溶融硫黄を正極容器内に圧入して正極導電材に含浸させ、冷却工程において冷却して硫黄を固化させて、正極容器内に正極成形体を形成することができるので、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができ、製造工数を低減することができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(14)導電材圧縮工程において硫黄圧入圧縮用治具を円筒状の正極導電材の中空部に挿入した後、硫黄圧入含浸工程において、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を圧入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させることができるナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
請求項12に記載の発明によれば、
(1)平板状に形成された一枚のフェルト状の炭素繊維等からなる正極導電材を曲げて円筒状に形成しているので、正極導電材の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材の嵩密度のばらつきを低減し電池の性能の低下を抑制することができ品質の優れたナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
(2)正極導電材を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる正極導電材に比べ取り扱う部品点数が少なく製造工程を省力化できる省力性に優れたナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1のナトリウム−硫黄電池の製造方法により製造されたナトリウム−硫黄電池の構成図である。
図1において、1はナトリウム−硫黄電池、2は有底円筒状の固体電解質管、2aは固体電解質管2が中央部に挿入された有底円筒状の正極容器、3は固体電解質管2の内側に形成された負極室、4は固体電解質管2の外側の正極容器2aの内部に形成された正極室、5は負極室3の内部に挿入された安全管、5aは安全管5の底部に形成された孔部、6は負極室3に挿入された安全管5の内部及び孔部5aを通って固体電解質管2と安全管5との間の空間に充填された負極活物質としてのナトリウム、7は正極室4の内部に正極容器2aの内側壁面に沿って配設された側部正極成形体、8は正極室4の内部に正極容器2aの内側底面に配設された底部正極成形体である。側部正極成形体7及び底部正極成形体8は、炭素繊維等をフェルト状に形成した後述の正極導電材に正極活物質として硫黄を含浸して形成したものである。
10は下端部に内側に突出した支持部10aを有する円筒状に形成され正極容器2aの内側壁面の上部に挿設され固定された負極固定部、11は固体電解質管2の上端部にガラス接合等により接合され負極固定部10の支持部10a上に固定されたα−アルミナ等からなるリング状絶縁体、11aはリング状絶縁体11のガラス接合部、12は安全管5の上端部の周壁に環装固定されリング状絶縁体11上に固定された安全管固定部、13は安全管5の上端部の開口部を封止して安全管固定部12に溶接等により固定された負極蓋部、14は負極蓋部13に接続された負極端子、15は正極容器2aに接続された正極端子である。
以上のように構成されたナトリウム−硫黄電池1について、以下その製造方法を図2乃至図4を用いて説明する。
図2(a)乃至図2(d)は本実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図であり、図3(a)及び図3(b)は本実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の硫黄投入溶融工程を説明する説明図であり、図4(a)は本実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮含浸工程を説明する説明図であり、図4(b)は本実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の脱気工程を説明する説明図であり、図4(c)は本実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図である。図2乃至図4において、図1において説明したものと同様のものは同一の符号を付けて説明を省略する。
図2において、21は底部正極導電材、21aは底部正極導電材21の上面の中央部に形成された凹部、22は正極容器2aの内壁に沿って同芯状に配設された側部正極導電材、22a,22dは側部正極導電材22の両側部に形成された傾斜部である。底部正極導電材21は所定の高さを有する円柱状に形成され、上面の中央部に後述の圧縮用治具の先端が挿入する凹部21aが形成されている。側部正極導電材22は所定の厚さを有する平板状に形成され、その長手方向の両側部の対向面に傾斜部22a,22dが形成されている。また、底部正極導電材21及び側部正極導電材22としては、炭素繊維やグラファイト繊維等の不織布又はフェルト状にしたもの等が用いられる。図3において、23は正極活物質としての粉末の固体硫黄、24は固体硫黄23を溶融した溶融硫黄である。図4において、25は円柱状に形成された圧縮用治具、26は脱気用接続治具、26aは脱気用接続治具26を正極容器2aの開口部に気密に取り付けるためのOリング、27は脱気用接続治具26に接続された真空ポンプである。
まず、図2(a)に示すように、内面を耐食処理された有底円筒状の正極容器2aを準備する。正極容器2aの材質としては、SUSやSS、アルミニウム等が用いられる。次に、図2(b)に示すように、正極容器2aの上端の開口部から底部正極導電材21を挿入し、正極容器2aの底面に敷設する。次に、図2(c)に示すように、平板状の側部正極導電材22を曲げて両側部に形成された傾斜部22a同士を突合せ、円筒状に形成し、正極容器2aの開口部から挿入し、下面を底部正極導電材21の上面と突合せ、正極容器2aの内壁に沿って配設する(導電材配設工程)。図2(c)に示すように、側部正極導電材22は、円筒状に形成した際に外周となる外周辺22bの長さが、内周となる内周辺22cの長さより長く形成され、その横断面形状が略台形状に形成されている。これにより、側部正極導電材22の内周側と外周側の嵩密度の差を減少させ均一にすることができると共に、互いに突合わされる傾斜部22a,22a同士の接合部分に隙間が形成されたりずれが生じることを防止することができる。
また、図2(d)に示すように、側部正極導電材22をその横断面形状が略平行四辺形状となるように形成することもできる。さらに、正極導電材の外周辺の長さが内周辺の長さより長くなるように、傾斜部22d,22dの傾斜角度を各々異なるように設定してもよい。これにより、側部正極導電材22を曲げて円筒状にした場合に、傾斜部22d,22dが重ね合わされるため、隙間が生じたり接合面がずれたりし難く、電流密度を均一にすることができる。
また、本実施の形態1においては、側部正極導電材22の下部に固体電解質管2の底部に接触する底部正極導電材21を敷設しているが、これに限られるものではなく、底部正極導電材21を敷設しなくてもよい。この場合、正極容器2aの側部内壁に沿って円筒状に配設される側部正極導電材22の下部側を、正極容器2aの底部に沿って縒れさせて固体電解質管2の底部に回り込んで接触するように配設することができる。これにより、底部正極導電材21を設けていないので、部品点数が減少しコストを削減することができ、工数を削減して作業性を向上させることができる。
次に、図3(a)に示すように、底部正極導電材21及び側部正極導電材22を配設した正極容器2aに予め計量した粉末状の固体硫黄23を投入する。次に、図3(b)に示すように、固体硫黄23を投入した正極容器2aを加熱炉に入れ、固体硫黄23の溶融温度120℃〜140℃に加熱し、固体硫黄23を溶融させる(硫黄投入溶融工程)。なお、この硫黄投入溶融工程の代わりに、正極容器2aを予め加熱炉に入れ、120℃〜140℃に加熱しておき、加熱した正極容器2aに溶融した溶融硫黄を注入する溶融硫黄注入工程を行ってもよい。
次に、図4(a)に示すように、先端部が半球状に形成された円柱状の圧縮用治具25を正極容器2aに挿入し、底部正極導電材21及び側部正極導電材22を正極容器2aの内壁及び底面に狭圧し圧縮すると共に、溶融硫黄24を底部正極導電材21及び側部正極導電材22に含浸させる。側部正極導電材22の圧縮率(圧縮前の厚さと圧縮後の厚さの差の、圧縮前の厚さに対する百分率)は、5%〜40%、好ましくは8%〜30%に設定されることが好ましい。圧縮率が8%より小さくなるにつれ側部正極導電材22の電気抵抗が大きくなり、また側部正極導電材22と正極容器2aの接触部分における電気抵抗が大きくなり、圧縮率が5%より小さくなるにつれこの傾向がさらに顕著になるため好ましくない。圧縮率が30%より大きくなるにつれ正極容器2a内の側部正極導電材22に圧縮用治具25を挿入することが困難になり、無理に挿入して側部正極導電材22が縒れたり切れたり、内面に設けたテフロン(登録商標)シートが縒れたりする傾向があり、圧縮率が40%より大きくなるにつれこの傾向がさらに顕著になるため好ましくない。
圧縮用治具25は、図1に示す固体電解質管2の外径と同一か或いはやや大きめの外径を有する円柱状に形成されている。さらに、圧縮用治具25の外径や正極容器2aの内径、圧縮前の側部正極導電材22の厚さは、側部正極導電材22が設定された圧縮率で圧縮されるように各々設定されている。なお、後述の冷却工程の後に、シート状のアルミナ繊維等を側部正極導電材22の内周壁に配設したり、固体電解質管2の表面に巻着しておいて側部正極導電材22の中空部に挿入したりして、固体電解質管2と側部正極導電材22との間に高抵抗層(図示せず)を形成することもできる。高抵抗層を形成する場合は、圧縮用治具25の形状や外径としては、固体電解質管2に側部正極導電材22の内周壁に配設した高抵抗層を併せた形状、及び固体電解質管2の外径に高抵抗層の厚さ分を加えた外径を用いることが好ましい。
圧縮用治具25は、SUS等の耐食性を有する材質により形成されている。圧縮用治具25は側部正極導電材22を圧縮しながら挿入されるため、円滑に挿入できるようにその表面をテフロン(登録商標)加工し、又は、圧縮用治具25をテフロン(登録商標)などの固体潤滑材により形成し、或いは、側部正極導電材22の内周面又は圧縮用治具25の外周面にテフロン(登録商標)シート等のシート状の固体潤滑材を配設し、挿入時の摩擦を低減させるようにしてもよい。なお、側部正極導電材22の内周面にシート状の固体潤滑材を配設する場合は、硫黄投入溶融工程において硫黄を投入する前に行うことが好ましい。
また、挿入し易いように圧縮用治具25の先端をテーパ状や半球状、砲弾状等の丸みを帯びた形状に形成したり、先端を面取りして形成してもよいが、圧縮用治具25の先端部は底部正極導電材21の上面の凹部21aの形状に合わせて形成されることが好ましい。これにより、圧縮用治具25の先端部が底部正極導電材21の凹部21aに隙間なく密着されるため溶融硫黄24が底部正極導電材21に含浸されずに凹部21aに溜まって固化することを防ぐことができる。
また、圧縮用治具25が正極容器2aと軸心を合わせて挿入されるように、圧縮用治具25の正極容器2aに対する挿入位置を設定する挿入用治具を用いるのが好ましい。
また、圧縮用治具25を正極容器2a内で円筒状に形成された側部正極導電材22の中空部に挿入する際及び後の工程で抜き出す際に、圧縮用治具25の移動速度を例えば挿入長さが長くなるにつれ小さくする等して段階的に変化させたり、圧縮用治具25をその軸を中心として回転させながら挿入及び抜き出してもよい。或いは、例えば圧縮用治具25内部に内設したヒータ等の加熱手段(図示せず)により圧縮用治具25を加熱しながら圧縮用治具を挿入及び抜き出してもよい。これにより、圧縮用治具25を側部正極導電材22内に円滑に挿入及び抜き出すことができる。
次に、図4(b)に示すように、加熱炉内部において正極容器2aの開口部に脱気用接続治具26をOリング26aにより気密接続し、真空ポンプ27を駆動して正極容器2a内を減圧にし、底部正極導電材21や側部正極導電材22及び溶融硫黄24内を脱気する(脱気工程)。ここで、本実施の形態1においては、正極容器2a内の脱気時の真空度は絶対圧で0.01mmHg(1.33Pa)に設定し、脱気時間は5分に設定した。なお、脱気工程においては、正極容器2aを加熱炉内で真空ポンプに接続されたSUSやSS等で作製された真空引き専用のチャンバに収容し、密封して脱気を行ってもよい。
脱気工程の後、正極容器2aの開口部に接続した脱気用接続治具26を取り外し、圧縮用治具25を挿入した状態で正極容器2aを冷却する(冷却工程)。冷却方法としては、正極容器2aを空冷してもよく、あるいは冷却用のファン等を用いて急冷してもよい。
正極容器2aが十分冷却されると、圧縮用治具25を正極容器2aから抜き出し、テフロン(登録商標)シートを貼着した場合はテフロン(登録商標)シートを取り出す。さらに、高抵抗層を設ける場合は、シート状のアルミナ繊維等からなる高抵抗層(図示せず)を側部正極導電材22の内周壁に配設する(高抵抗層配設工程)。
このようにして、図4(c)に示すように、正極容器2a内に、側部正極導電材22及び底部正極導電材21に硫黄を含浸させ固化させた側部正極成形体7及び底部正極成形体8、固体硫黄部24′で正極が形成される。次いで、正極の側部正極成形体7の中空部に別工程で製造された図1に示すような負極部と一体化させた固体電解質管2を挿入し、正極容器2aの内側壁面の上部に負極固定部10を挿設し、溶接等により固定して正極容器2aに負極構造体を取り付け、ナトリウム−硫黄電池1が製造される。なお、正極容器2aへの負極構造体の取り付けは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で、且つ絶対圧で0.1atm(10kPa)程度の負圧雰囲気中で行われることが好ましい。これにより、正極部を作動時に負圧にすることができるため安全性に優れる。また、この場合用いられる不活性ガスとしては、アルゴン等にヘリウムリークディテクターにより検出可能なヘリウムガスを体積比で5%混合させた不活性ガスを用いることが好ましい。これにより、封止工程の後、開口部の封止部分の漏れ試験を容易に行うことができる。なお、漏れ試験は、正極容器2aに負極構造体を取り付けたナトリウム−硫黄電池1を試験用チャンバ内に装填してチャンバ内を真空引きし、ヘリウムリークディテクターでヘリウムを検出することにより行うことができる。
以上のように実施の形態1のナトリウム−硫黄電池の製造方法及びナトリウム−硫黄電池は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において、正極容器2aの底部に円柱状の底部正極導電材21を敷設し、円柱状の底部正極導電材21の上面に平板状に形成されたフェルト状の炭素繊維等からなる側部正極導電材22を曲げて円筒状に配設しているので、側部正極導電材22の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、側部正極導電材22の嵩密度のばらつきを低減し電気抵抗の増大を防ぎ電池の性能の低下を抑制することができる。また、側部正極導電材22を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる場合に比べ製造工程を省力化できる。
(2)硫黄投入溶融工程において、正極容器2a内に正極活物質である固体硫黄23を投入し、加熱炉に入れて溶融し、導電材圧縮含浸工程において圧縮用治具25を正極容器2a内の側部正極導電材22の中空部に挿入し、側部正極導電材22を厚さ方向に圧縮すると共に底部正極導電材21及び側部正極導電材22に溶融硫黄24を含浸させることができる。
(3)導電材圧縮含浸工程において、圧縮用治具25を正極容器2a内の側部正極導電材22の中空部に挿入し、底部正極導電材21及び側部正極導電材22を圧縮すると共に溶融硫黄24を含浸させることができる。
(4)圧縮用治具25の外径は固体電解質管2の外径よりやや大きめに形成することにより、圧縮用治具25を挿入するだけで側部正極導電材22の圧縮後の中空部の径を固体電解質管2の外径よりやや大きくすることができ、固体電解質管2の挿着作業の作業性を向上させることができる。
(5)圧縮用治具25の外径や正極容器2aの内径、側部正極導電材22の厚さを適宜設定することにより、側部正極導電材22の圧縮率を任意に設定することができる。側部正極導電材22の圧縮率を5%〜40%、好ましくは8%〜30%に設定することにより、側部正極導電材22の電気抵抗を低減でき、側部正極導電材22と正極容器2aの接触部の抵抗を低減できると共に、圧縮用治具25を円滑に挿入することができる。
(6)溶融硫黄24を底部正極導電材21及び側部正極導電材22に含浸させた後、脱気工程において正極導電材21,22内の気泡を速やかに取り除くことができるので、正極導電材21,22内の空気と溶融硫黄24との置換を速やかに行うことができる。従来は脱気を行わず正極導電材21,22を120℃〜140℃で10時間程度加熱したまま放置することにより自然に置換を行っていたので、正極導電材21,22に溶融硫黄24を含浸させ内部の気泡を取り除くのに多大な時間を要していたが、脱気工程を行うことにより、その時間を短時間、例えば10分程度に短縮することができ作業時間を著しく短縮でき生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できる。
(7)脱気工程の後、冷却工程において、側部正極導電材22及び底部正極導電材21に溶融硫黄24を含浸させ固化させた側部正極成形体7及び底部正極成形体8を正極容器2a内に形成することができるので、側部正極成形体7及び底部正極成形体8を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、生産工数を著しく少なくすることができる。
(8)正極容器2a内に直接側部正極成形体7及び底部正極成形体8を形成しているので、従来のように正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、製造工数を低減することができると共に、製造工程の自動化を行うことができる。
(実施の形態2)
図5(a)は本実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図であり、図5(b)は本実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮工程を説明する説明図であり、図5(c)は本実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の硫黄圧入含浸工程及び冷却工程を説明する説明図であり、図5(d)は本実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に硫黄圧入圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図である。
図5において、31は正極容器、32はフェルト状の炭素繊維等により形成され正極容器31の内壁に沿って円筒状に配設された正極導電材、33は円筒状の正極導電材32の中空部に挿入される有底円筒状の硫黄圧入圧縮用治具、33aは硫黄圧入圧縮用治具33の底部に形成された溶融硫黄の圧入孔、33bは硫黄圧入圧縮用治具33の上部側壁に接続された接続管、34は硫黄圧入圧縮用治具33の上端開口部から挿入される圧入棒、34aは圧入棒34の下端部に固定された圧入部、35は接続管33bを介して硫黄圧入圧縮用治具33に接続された硫黄タンク、36は溶融硫黄、36′は冷却により固化された硫黄、37は接続管33bに配設された開閉弁である。
硫黄圧入圧縮用治具33の形状は、固体電解質管の外径と略同一の外径を有する形状に形成されると共に、内部が中空状に形成されている。圧入棒34の下端部に固定された圧入部34aは250℃〜300℃の耐熱性を有するシリコンゴム等の弾性体により形成され、硫黄圧入圧縮用治具33の内壁に密着する半球状に形成されている。
なお、後述の冷却工程の後に、シート状のアルミナ繊維等を正極導電材32の内周壁に配設したり、固体電解質管の表面に巻着しておいて正極導電材32の中空部に挿入したりして、固体電解質管と正極導電材32との間に高抵抗層(図示せず)を配設することもできる(高抵抗層配設工程)。高抵抗層を形成する場合は、硫黄圧入圧縮用治具33の形状や外径としては、固体電解質管に正極導電材32の内周壁に配設した高抵抗層を併せた形状、及び固体電解質管の外径に高抵抗層の厚さ分を加えた外径に形成される。
以下、本実施の形態2のナトリウム−硫黄電池の製造方法を図5を用いて説明する。
まず、図5(a)に示すように、内面を耐食処理された有底円筒状の正極容器31を準備し、一枚の平板状の正極導電材32を曲げて円筒状に形成し、正極容器31の内壁に沿って配設する(導電材配設工程)。なお、本実施の形態2においては、実施の形態1と異なり、正極導電材32の下部に底部正極導電材を敷設していないが、これに限られるものではなく、底部正極導電材を敷設してもよい。また、円筒状の正極導電材32の中空部に硫黄圧入圧縮用治具33を円滑に挿入するために、硫黄圧入圧縮用治具33の外周面にテフロン(登録商標)加工することもできる。
次に、正極容器31を絶対圧で0.1mmHg(13.3Pa)の減圧雰囲気で130℃に保たれた室内へ移し、図5(b)に示すように、硫黄圧入圧縮用治具33を正極容器31に挿入し、正極導電材32を正極容器31の内壁に狭圧し圧縮する(導電材圧縮工程)。続いて、開閉弁37を開いて硫黄タンク34内の溶融硫黄36を硫黄圧入圧縮用治具33の内部に所定量流下させ注入する。続いて、図5(c)に示すように、圧入棒34を硫黄圧入圧縮用治具33の上端開口部から挿入し下方へ押し込んで、硫黄圧入圧縮用治具33の内部の溶融硫黄36を圧入孔33aから正極容器31内に圧入し、正極導電材32に含浸させる(硫黄圧入含浸工程)。
溶融硫黄36を所定量圧入した後、正極容器31に硫黄圧入圧縮用治具33が挿入された状態、すなわち正極導電材32を圧縮した状態で所定時間保持して、正極導電材32の内部を減圧雰囲気により脱気し(脱気工程)、その後急冷する(冷却工程)。急冷することにより、冷却工程の後、硫黄圧入圧縮用治具33を容易に抜き出すことができる。
図5(d)に示すように、正極導電材32が冷却され溶融硫黄36が固化すると、硫黄注入圧縮用治具33を取り出す。このようにして、正極容器31内に、正極導電材32に硫黄36′を含浸させ固化させた正極成形体が形成され、正極が形成される。
以上のように実施の形態2のナトリウム−硫黄電池の製造方法は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)導電材配設工程において、正極容器31の内部に平板状に形成された正極導電材32を曲げて円筒状に配設しているので、正極導電材32の突合せ接合部分は一箇所のみであり、従来のように縦分割された断面円弧状に形成されていないので、多数の突合せ接合部分を形成することがなく、正極導電材32の嵩密度のばらつきを低減し電気抵抗の増大を防ぎ電池の性能の低下を抑制することができる。また、正極導電材32を一枚の平板状の炭素繊維等から形成することができるので、複数の分割部分からなる場合に比べ製造工程を省力化できる。
(2)導電材圧縮工程において、硫黄圧入圧縮用治具33を正極容器31内の正極導電材32の中空部に挿入し、正極導電材32を厚さ方向に圧縮することができるので、硫黄圧入圧縮用治具33の外径や正極容器31の内径、正極導電材32の厚さを適宜設定することにより、正極導電材32の圧縮率を任意に設定することができる。また、硫黄圧入圧縮用治具33の外径は固体電解質管の外径に合わせて設定するので、硫黄圧入圧縮用治具33を挿入するだけで正極導電材32の圧縮後の中空部の径を固体電解質管の外径と略同一にすることができ、固体電解質管の挿着作業の作業工数を大幅に削減できる。
(3)硫黄圧入含浸工程において、圧入棒34を押し込んで硫黄圧入圧縮用治具33の内部の溶融硫黄36を圧入孔33aから正極容器31内に圧入することにより、溶融硫黄36を正極導電材32に確実に含浸させることができる。
(4)冷却工程において冷却するだけで、正極導電材32に硫黄36′を含浸させ固化させた正極成形体を正極容器31内に形成することができるので、正極成形体を形成するのに従来のように金型を用いる必要がなく、生産工数を著しく少なくすることができる。
(5)正極容器31内に直接正極成形体を形成しているので、従来のように正極成形体を形成したのち金型等から取り出す必要がなく、取り出した場合の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができる。また、製造工数を低減することができると共に、製造工程の自動化が容易である。
(実施の形態3)
図6(a)は本実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮工程及び硫黄圧入含浸工程を説明する説明図であり、図6(b)は本実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程を説明する説明図であり、図6(c)は本実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に硫黄圧入圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図である。
図6において、41は正極容器、42はフェルト状の炭素繊維等により形成され正極容器41の内壁に沿って円筒状に配設された正極導電材、43は円筒状の正極導電材42の中空部に挿入される有底円筒状の硫黄圧入圧縮用治具、43aは硫黄圧入圧縮用治具43の底部に形成された圧入孔、44は硫黄圧入圧縮用治具43と一体化された硫黄タンク、45は溶融硫黄、45′は冷却により固化した硫黄、46は硫黄タンク44の出口に配設された硫黄タンク用開閉弁、47は硫黄タンク44に接続された加圧ポンプ、48は加圧ポンプ47と硫黄タンク44とを接続するラインに配設されたポンプ用開閉弁、49は圧力計である。
以下、本実施の形態3のナトリウム−硫黄電池の製造方法を図6を用いて説明する。なお、導電材配設工程は実施の形態2で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
導電材配設工程の後に、図6(a)に示すように、正極導電材42が配設された正極容器41に硫黄圧入圧縮用治具43を挿入し、正極導電材42を正極容器41の内壁に狭圧し圧縮する(導電材圧縮工程)。硫黄圧入圧縮用治具43と一体化された硫黄タンク44は内部に液状の溶融硫黄45が封入されて密封されると共に、上部側に加圧ポンプ47が接続されている。次に、図6(b)に示すように、硫黄タンク開閉弁46を開き、加圧ポンプ47を駆動すると、硫黄タンク44の内部の溶融硫黄45が硫黄圧入圧縮用治具43の内部に注入される。硫黄圧入圧縮用治具43が溶融硫黄45で満たされると、さらに加圧ポンプ47の加圧により圧入孔43aから正極容器41内に溶融硫黄45が圧入される。圧入孔43aから圧入された溶融硫黄45は圧縮された正極導電材42に含浸される(硫黄圧入含浸工程)。
溶融硫黄45を所定量圧入した後、正極容器41を硫黄圧入圧縮用治具43を挿入した状態で、真空ポンプが接続された減圧チャンバ等に収容し、正極容器41内を脱気する(脱気工程)。このとき、正極容器41内の溶融硫黄45の液面をレーザ等を用いた液面センサ(図示せず)で計測し、該液面が予め設定された所定高さになるように、加圧ポンプ47で常時加圧しておくことが好ましい。脱気が完了すると、圧縮用硫黄タンク用開閉弁46を閉止し、冷却し溶融硫黄45を固化させる(冷却工程)。
図6(c)に示すように、正極導電材42が冷却され溶融硫黄45が固化すると、硫黄圧入圧縮用治具43を取り出す。このようにして、正極容器41内に、正極導電材42に硫黄45′を含浸させ固化させた正極成形体が形成され、正極が形成される。
以上のように実施の形態3のナトリウム−硫黄電池の製造方法は構成されているので、実施の形態2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)硫黄圧入含浸工程において、加圧ポンプ47により硫黄タンク44内の溶融硫黄45を硫黄圧入圧縮用治具43の内部に注入し、さらに圧入孔43aをから正極容器41内に圧入することにより、溶融硫黄45を正極導電材42に確実に含浸させることができる。
以下に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
まず、内面を耐食処理されたSUS製の有底円筒状の正極容器を準備し、その正極容器の底面に底部カーボンフェルト(底部正極導電材)を敷設し、さらに平板状の側部カーボンフェルト(側部正極導電材)を曲げて両側部の傾斜部を突合せて円筒状に形成し、正極容器の内壁に沿って配設した。
次に、底部カーボンフェルト及び側部カーボンフェルトを配設した正極容器に粉末状の固体硫黄を48.8g投入し、140℃の加熱炉に入れ固体硫黄を溶融させた。
次に、先端部が半球状に形成され、表面をテフロン(登録商標)加工した円柱状の圧縮用治具を正極容器に挿入し、底部カーボンフェルト及び側部カーボンフェルトを正極容器の内壁及び底面に狭圧し圧縮すると共に、溶融硫黄を含浸させた。
次に、加熱炉内部において正極容器の開口部に脱気用接続治具をOリングにより気密接続し、真空ポンプを駆動して正極容器内を10分間脱気し、溶融硫黄内の気泡を除去し、圧縮用治具を挿入した状態で正極容器を空冷した後、圧縮用治具を正極容器から抜き出した。
次に、正極の側部正極成形体の中空部に別工程で製造された負極部と一体化させたベータアルミナ管を挿入し、正極容器の内側壁面の上部に負極固定部をメカニカルに固定して正極容器に負極構造体を取り付け、ナトリウム−硫黄電池を作製した。なお、ベータアルミナ管内のナトリウムの量は34.3gとした。
このようにして作製した本実施例1のナトリウム−硫黄電池について、充電及び放電を行ってその充放電効率を測定した。その測定結果を(表1)に示す。なお、ナトリウム−硫黄電池の利用率(ナトリウムと硫黄単体から、それぞれのモル比が2:3となる多硫化ナトリウムを生成するのに必要な電気量に対して、実際に放電若しくは充電する場合の電気量の比)は70%とした。
Figure 2005285383
(比較例1)
半円形状の凸部を有する凸型と半円形状の凹部を有する凹型とからなる表面をテフロン(登録商標)コーティングしたSUS製金型を準備し、この凸型と凹型の間にカーボンフェルトを配設し、凸型と凹型とを組み合わせて一体化した。
次に、金型の開口部に真空ポンプを接続し、140℃に加熱しながら金型内部を脱気した後、冷却した。
次に、グローブボックス内において、金型の開口部から内部に粉末状の固体硫黄を48.8g充填した。
次に、硫黄を充填した金型を140℃で加熱し、硫黄を溶融して導電材に含浸させた後、10時間保持し、硫黄とアルゴンの置換を行った。その後、冷却して硫黄を固化した。
次に、凸型と凹型を分離して硫黄含浸カーボンフェルトを取り出した。この断面半円状の硫黄含カーボンフェルトを2つ組み合わせて円筒状とし正極容器内に配設した。底部にもカーボンフェルトのみを配設した。
次に、円筒状の硫黄含浸炭素不織布の中空部に別工程で製造された負極部と一体化させたベータアルミナ管を挿入し、正極容器の内側壁面の上部に負極固定部をメカニカルに固定して正極容器に負極構造体を取り付け、ナトリウム−硫黄電池を作製した。ベータアルミナ管内のナトリウムの量は34.0gとした。なお、正極容器及び負極構造体は実施例1と同一のものを用いた。
このようにして作製した比較例1のナトリウム−硫黄電池について、実施例1と同様に充電及び放電を行ってその充放電効率を測定した。その測定結果を(表1)に示す。
(比較例2)
ベータアルミナ管内のナトリウムの量を31.0gとした点以外は比較例1と同様にしてナトリウム−硫黄電池を作製した。
このようにして作製した比較例2のナトリウム−硫黄電池について、実施例1と同様に充電及び放電を行ってその充放電効率を測定した。その測定結果を(表1)に示す。
実施例1及び比較例1乃至2の(表1)に示す測定結果から、本発明のナトリウム−硫黄電池の製造方法で作製したナトリウム−硫黄電池は、極めて短時間で製造できる上に、従来の金型を用いた製造方法と比較しても同様の充放電効率を達成でき、同様の性能を有することがわかった。
以上のように、本発明は、電力貯蔵用、電気自動車の駆動電源用等に用いられる2次電池であるナトリウム−硫黄電池及びその製造方法に関し、特に本発明によれば、正極成形体を形成するのに金型を用いる必要がなく、金型製作のための費用や工数を削減することができ、正極容器内に直接正極成形体を形成しているので、製造工程の自動化が容易であると共に周囲の雰囲気中の不純物の付着や混入を防ぐことができ、正極成形体の形成と正極容器への配置を同時に行うことができるので、製造工数を低減させることができ、導電材内を脱気して硫黄を投入することにより正極導電材内の空気と溶融硫黄との置換を速やかに行うことができ、生産性を向上させ製造コストを大幅に削減できるナトリウム−硫黄電池の製造方法、及び高品質で低原価で量産性に優れたナトリウム−硫黄電池を提供することができる。
実施の形態1のナトリウム−硫黄電池の製造方法により製造されたナトリウム−硫黄電池の構成図 (a)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図(b)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図(c)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図(d)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図 (a)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の硫黄投入溶融工程を説明する説明図(b)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の硫黄投入溶融工程を説明する説明図 (a)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮含浸工程を説明する説明図(b)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の脱気工程を説明する説明図(c)実施の形態1におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図 (a)実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材配設工程を説明する説明図(b)実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮工程を説明する説明図(c)実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の硫黄圧入含浸工程及び冷却工程を説明する説明図(d)実施の形態2におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に硫黄圧入圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図 (a)実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の導電材圧縮工程及び硫黄圧入含浸工程を説明する説明図(b)実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程を説明する説明図(c)実施の形態3におけるナトリウム−硫黄電池の製造方法の冷却工程後に硫黄圧入圧縮用治具を抜き出した状態を示す説明図
符号の説明
1 ナトリウム−硫黄電池
2 固体電解質管
2a 正極容器
3 負極室
4 正極室
5 安全管
5a 孔部
6 ナトリウム(負極活物質)
7 側部正極成形体
8 底部正極成形体
10 負極固定部
10a 支持部
11 リング状絶縁体
11a ガラス接合部
12 安全管固定部
13 負極蓋部
14 負極端子
15 正極端子
21 底部正極導電材
21a 凹部
22 側部正極導電材
22a,22d,22d′ 傾斜部
22b 外周辺
22c 内周辺
23 固体硫黄
24 溶融硫黄
24′ 固体硫黄部
25 圧縮用治具
26 脱気用接続治具
27 真空ポンプ
31 正極容器
32 正極導電材
33 硫黄圧入圧縮用治具
33a 圧入孔
33b 接続管
34 圧入棒
34a 圧入部
35 硫黄タンク
36 溶融硫黄
36′ 硫黄
37 開閉弁
41 正極容器
42 正極導電材
43 硫黄圧入圧縮用治具
43a 圧入孔
44 硫黄タンク
45 溶融硫黄
45′ 硫黄
46 硫黄タンク用開閉弁
47 加圧ポンプ
48 ポンプ用開閉弁
49 圧力計

Claims (12)

  1. 有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、
    正極室の周壁を形成する正極容器に柔軟性を有し所定の厚さを有する平板状の正極導電材を正極容器の内壁に沿って円筒状に配設する導電材配設工程と、
    次いで、正極容器に溶融した硫黄を注入する溶融硫黄注入工程、又は、正極容器に固体の硫黄を投入した後加熱して溶融する硫黄投入溶融工程と、
    次いで、正極容器内に円筒状に配設された正極導電材の中空部に円柱状の圧縮用治具を挿入し正極導電材を厚さ方向に圧縮すると共に溶融硫黄を正極導電材に含浸させる導電材圧縮含浸工程と、
    正極導電材に溶融硫黄を含浸させた後に正極容器を冷却する冷却工程と、
    を備えていることを特徴とするナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  2. 有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池の製造方法であって、
    正極室の周壁を形成する正極容器に柔軟性を有し所定の厚さを有する平板状の正極導電材を正極容器の内壁に沿って円筒状に配設する導電材配設工程と、
    次いで、正極容器内に円筒状に配設された正極導電材の中空部に、有底円筒状に形成され底部に圧入孔が形成された硫黄圧入圧縮用治具を挿入し正極導電材を厚さ方向に圧縮する導電材圧縮工程と、
    次いで、硫黄圧入圧縮用治具の内部に溶融硫黄を注入し、溶融硫黄を圧入孔から正極容器内に圧入し正極導電材に含浸させる硫黄圧入含浸工程と、
    正極導電材に溶融硫黄を含浸させた後に正極容器を冷却する冷却工程と、
    を備えていることを特徴とするナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  3. 正極導電材に溶融した硫黄を含浸させた後に正極容器の内部を脱気する脱気工程を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  4. 導電材配設工程において、正極容器の側部内壁に沿って一枚の平板状の正極導電材を円筒状に配設することを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  5. 導電材配設工程において、正極容器の底部に円柱状の底部正極導電材を敷設し、底部正極導電材の上面に正極導電材を配設することを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  6. 冷却工程の後に、正極導電材の内周壁に高抵抗層を配設する高抵抗層配設工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  7. 圧縮用治具の外壁の形状が固体電解質管の外壁の形状と同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  8. 正極導電材の中空部に圧縮用治具を挿入する前に、正極導電材の内周面又は圧縮用治具の外周面にシート状の固体潤滑材を貼着する工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  9. 圧縮用治具が固体潤滑材により形成されている、或いは、圧縮用治具の外周面が潤滑加工されていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  10. 圧縮用治具に内設された加熱手段により圧縮用治具を加熱しながら圧縮用治具を正極導電材の中空部に挿入することを特徴とする請求項1乃至9の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法。
  11. 請求項1乃至10の内いずれか1項に記載のナトリウム−硫黄電池の製造方法により製造されたことを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
  12. 有底円筒状の固体電解質管の内側に負極室を形成し外側に正極室を形成し、負極室に負極活物質としてナトリウムを収容し正極室に正極活物質として硫黄を収容したナトリウム−硫黄電池であって、正極室に配設される正極成形体が、両側部を突合せて円筒状に形成した一枚の平板状の正極導電材に硫黄を含浸し固化して形成されていることを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
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KR20140085758A (ko) * 2012-12-27 2014-07-08 재단법인 포항산업과학연구원 나트륨 유황 전지의 양극재 펠트 성형 장치

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