JP2005285337A - 有機el素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のものと比較して、比較的高温で所定時間保存した後の駆動電圧の上昇を十分に抑制できる有機EL素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決する本発明の有機EL素子の製造方法は、基板及びその一側に形成されたホール注入電極を備える無機積層体を加熱して、その無機積層体にバイアス電圧の印加処理を行う第1工程と、第1工程の後にホール注入電極の基板と反対側に有機発光層及び電子注入電極を備える積層体を形成する第2工程とを有するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機EL素子の製造方法に関するものである。
有機ELディスプレイ等に用いられる有機EL素子は、例えば、蛍光性有機化合物や燐光性有機化合物等の発光性有機化合物を含む発光層を、ホール注入電極(陽極)及び電子注入電極(陰極)で挟んだ構成を有するものであり、この発光性有機化合物に上記電極から電界を印加することにより励起・発光させる素子である。このような有機EL素子は、無機EL素子と比較して、駆動電圧若しくは駆動方法の簡便さに加え、輝度や発光効率(量子収率)等の素子特性において優れており、現在実用化の段階を迎えつつある。
この有機EL素子からの発光を効率よく取り出すために、通常、上記ホール注入電極には、可視光を透過することができる透明電極を採用している。このような透明電極の構成材料としては、約3.3eV以上のバンドギャップを有する導電性酸化物が多く用いられ、その具体例として、例えばITO電極などが挙げられる。
有機EL素子に用いられる透明電極は、特にその隣接する層との界面の状態に依存して、初期発光特性若しくは発光寿命に影響を与えることが一般的に知られている。したがって、実用に一層適した透明電極を得るために、透明電極の表面の平坦性若しくは表面の仕事関数などを改善すべく、様々な提案がなされている。
そのような提案のうち、例えば特許文献1においては、高性能、かつ耐久性のある有機EL表示素子を提供することを意図して、陽極と陰極の間に、有機発光体を含有する有機発光層が設けられている有機EL表示素子において、前記陽極の表面部中に、窒素、イオウ、セレン、テルル、リン及びハロゲン元素より選ばれた少なくとも1種の元素が含まれている有機EL表示素子が提案されている。
また、特許文献2においては、仕事関数を向上させ、長時間高い仕事関数を有する透明電極を提供することを意図して、透明基板と、透明基板上に設けられた透明導電膜からなり、透明導電膜にプラズマ化された酸素イオンが注入された透明電極が提案されている。
特開2000−150172号公報 特開2001−284060号公報
しかしながら、本発明者は、上記特許文献1、2に記載のものを始めとする従来の有機EL素子について詳細に検討を行ったところ、このような従来の有機EL素子は、例えば105℃程度の比較的高温で所定時間保存した後に駆動電圧を印加した際の、高温保存前と比較した駆動電圧の上昇を十分に抑制することが困難であることを見出した。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、従来のものと比較して、比較的高温で所定時間保存した後の上述したような駆動電圧の上昇を十分に抑制できる有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、当初、有機EL素子の長期保存後における駆動寿命の向上を目的として鋭意研究を行う中で、通常の耐久試験を行うと過剰に時間を費やすため、その耐久試験の短縮化を図る方法を模索していた。そして、半導体分野で安定度の加速試験に用いられ、素子特性を迅速に劣化させる処理として知られているBT(Bias Temperature)処理に関する知見を偶然にも得た。そこで、これを有機EL素子の耐久試験に応用してみることとした。すると、比較的高温で所定時間保存した後に、有機EL素子の駆動電圧を測定してみたところ、その保存時間と駆動電圧との相関が、これまで知られていたものと全く異なるものであることを発見した。
しかし、完成した有機EL素子にBT処理を施したのみでは、比較的高温で所定時間保存した後の駆動電圧の上昇を、所望の程度にまで抑制できないことも明らかになった。そこで、有機EL素子の製造過程、バイアス電圧の印加方法及び加熱方法と、駆動電圧の上昇程度との相関について、更に検討を進めた。その結果、有機EL素子を構成する各層を積層する途中の段階で、加熱処理とバイアス電圧の印加処理を同時に行うことにより、駆動電圧の上昇を十分に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的を達成する本発明の有機EL素子の製造方法は、基板及びその一側に形成されたホール注入電極を備える無機積層体を加熱して、その無機積層体にバイアス電圧の印加処理を行う第1工程と、前記印加処理の後に、ホール注入電極の基板と反対側に有機発光層及び電子注入電極を備える積層体を形成する第2工程とを有することを特徴とする。
ここで、「無機積層体」とは、無機化合物を主成分とする固体層を積層してなるものをいう。
このような本発明の有機EL素子の製造方法により、印加時間の経過に伴う駆動電圧の上昇を十分に抑制できる有機EL素子が得られる要因は、現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者は以下のように考えている。ただし、要因はこれに限らない。
ホール注入電極に用いられる金属や導電性酸化物は、Si又はGe系のn型半導体などと比較すると、その電子密度が非常に高い材料である。このような電子密度が非常に高い材料を比較的高温で保存すると、金属材料である場合は、その金属結晶の安定化に伴い自由電子が増加し、電子密度が更に高くなると考えられる。また、導電性酸化物である場合は、酸素イオンの欠損により自由電子の数が更に多くなり、電子密度が一層高くなると考えられる。しかしながら、ホール注入電極は隣接する層にホールを注入する機能を必要とするところ、電子密度が非常に高い電極から隣接する層にホールを注入すること、換言すると、電子密度が非常に高い電極が隣接する層から電子を引き抜くことは、効率の面から優れているとはいえない。このことにより、有機EL素子を比較的高温で保存すると、その際の保存時間が長くなるにつれて、駆動電圧が上昇すると推定される。
また、例えば特許文献1、2に記載されたような有機EL素子においては、ホール注入電極の表面に対してプラズマ化された酸素イオンのような陰イオン又は窒素若しくは硫黄等の陰性元素が注入されている。そのため、その表面付近は、キャリアバランスからすると電子が過剰に存在した状態になると考えられる。かかる状態のホール注入電極の表面上に更に有機発光層等を積層すると、ホール注入電極の有機発光層等との界面付近の過剰に存在する電子が、その位置に保持されたままの状態となると推定される。
このようにして形成された有機EL素子に電界を印加すると、印加当初、ホール注入電極においては、隣接する層との界面付近に過剰に蓄積する電子の寄与により駆動電圧は比較的低く抑えられると考えられる。しかしながら、上述の電子は、電界の印加により電子注入電極側から注入された電子とは別のものである。したがって、ホール注入電極の界面付近に蓄積していた電子が再結合に用いられ減少するに伴い、ホール注入電極側からのホール注入量と同等の電子注入量を確保するために、結局、駆動電圧は保存時間の経過と共に上昇することになると推定される。
以上のように、有機発光層側の表面付近に陰イオン又は陰性元素を注入されたホール注入電極を備える有機EL素子は、陰イオン又は陰性元素の存在により、駆動初期において不安定な挙動を示すこととなる。
一方、本発明の有機EL素子の製造方法は、室温よりも高い温度に加熱した状態で、ホール注入電極にバイアス電圧を印加するものである。これにより、ホール注入電極が有している自由電子を、その電極中であらかじめ効率的かつ確実に移動させ、ホール注入電極中に共存する陽性元素等によりトラップしたり、電気的に中和できたりするものと考えられる。その結果、かかるホール注入電極を備える有機EL素子を比較的高温で保存した場合であっても、その保存中にホール注入電極のキャリア状態は変化し難く、保存前後におけるキャリア注入性の差異の発生を防止できるので、駆動電圧の上昇を十分抑制できると考えられる。
さらには、かかる方法により得られるホール注入電極は、駆動初期から安定したキャリア状態を維持することができると推定される。よって、そのようなホール注入電極を備える有機EL素子を連続的に駆動した場合であっても、少なくともホール注入電極内における局部的なキャリアバランスが大きく変化することはなく、安定したキャリア注入を継続することができるので、駆動電圧の上昇を十分抑制できると推定される。
また、本発明の有機EL素子の製造方法により得られる有機EL素子は、従来のものと比較して、一層優れた発光効率を示す傾向にある。従来の特許文献1、2に記載されているような有機EL素子では、ホール注入電極において、隣接する層との界面付近に過剰に蓄積する電子の影響により、素子内のキャリアバランスが崩れ、有機発光層におけるキャリアの再結合確率が低下すると考えられる。一方、本発明に係る有機EL素子は、その作製過程において、ホール注入電極を加熱した状態で、そこにバイアス電圧を印加することにより、あらかじめ上述の電子をホール注入電極内で拡散させ、ホール注入電極中に共存する陽性元素等によりトラップ等することにより、過剰な電子の蓄積を低減できる傾向にあると推測される。このことに起因して、本発明の有機EL素子の製造方法により得られる有機EL素子は、一層優れた発光効率を示すと考えられる。
本発明の有機EL素子の製造方法において、バイアス電圧が直流バイアス電圧を含むと好ましい。ホール注入電極に直流バイアス電圧を印加する際に、ホール注入電極内のキャリアの移動方向を容易に設定することができるので、ホール注入電極内のキャリアの分散状態を、より所望のとおりに調整することができる。よって、得られる有機EL素子の駆動電圧を始めとする発光特性を、一層効率的かつ確実に調整することができる。
また、第1工程において、バイアス電圧の印加処理は、交流バイアス電圧を無機積層体に印加した後に、直流バイアス電圧を無機積層体に印加して行われると好ましい。これにより、得られる有機EL素子の初期駆動電圧をより低くすることができ、駆動電圧の上昇を更に抑制することができる。そのメカニズムは、まず交流バイアス電圧を印加することにより、ホール注入電極内の可動イオンを、そのイオンが安定に存在し得るサイト(トラップサイト)に移動させると考えられる。そして、その次に行われる直流バイアス電圧の印加により、ホール注入電極において、局部的にキャリアバランスを電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態に安定化させることができると推測される。こうなると、ホール注入電極は、キャリアの分散状態が安定し、しかも、上述のような局部を介して電子を一層取り込みやすくなる。そのため、有機EL素子の初期駆動電圧をより低くすることができ、しかも高温保存後の駆動電圧の上昇を一層抑制できると考えられる。
さらに、直流バイアス電圧の印加処理が、無機積層体のうちのホール注入電極側を陰極として行われると、比較的高温で保存した後であっても、その保存前と比較した駆動電圧の上昇を一層抑制できるので好ましい。ホール注入電極の有機発光層側の表面付近に、電子が過剰に存在すると、隣接する層へのホール注入性及び有機EL素子全体のキャリアバランスの崩れに起因して、高温保存後に駆動電圧が上昇する傾向にあると考えられる。しかしながら、ホール注入電極側を陰極として直流バイアス電圧の印加処理を行うと、上記表面付近のキャリアバランスを電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態で安定化することができると推測される。これにより、上述のような駆動電圧の上昇を更に抑制することができる。
また、本発明の有機EL素子の製造方法において、ホール注入電極が透明電極であると好ましい。有機EL素子からの発光を取り出すため、ホール注入電極に透明電極を用いなければならない場合がある。その際、ITOなどの透明電極の構成材料に用いられる導電性酸化物は、縮退したn型半導体であるため、それ以外のn型半導体と比較すると、電子が十分に過剰に存在する状態となっている(例えば、キャリア密度はSi又はGe系のn型半導体に比較して3桁ほど大きい)。このような電子が過剰に存在する透明電極から隣接する層にホールを注入すること、言い換えると電子が過剰に存在する透明電極が隣接する層から電子を引き抜くことは、効率の面から優れているとはいえない。これに起因して、比較的高温で保存する前後で、その駆動電圧が顕著に上昇すると推定される。しかしながら、本発明の有機EL素子の製造方法によると、ホール注入電極に透明電極を用いても、上述のようなキャリアバランスの安定化等により、比較的高温で保存する前後での駆動電圧の上昇を、十分に抑制可能となる。
本発明の有機EL素子の製造方法は、第1工程において、無機積層体を加熱する際の温度が50〜250℃であると好ましい。50℃より低いと、バイアス電圧を印加しても、ホール注入電極内での電子の移動が円滑に進行しない傾向にある。また、250℃を超えると、ホール注入電極が、その性能を発揮できなくなる傾向にある。
更に、第1工程において、一対の電極により無機積層体をその積層方向に挟んだ状態で、バイアス電圧の印加処理が行われると好ましい。これにより、有機EL素子のキャリアの進行方向と同様の方向にバイアス電圧を印加することとなるので、有機EL素子全体としての発光特性に影響を与えやすい、ホール注入電極内の膜厚方向におけるキャリア分布を、一層容易に調整することができる。よって、有機EL素子の発光特性を所望のとおりに調整することが更に容易となる。
本発明によれば、従来のものと比較して、比較的高温で所定時間保存した後の駆動電圧の上昇を十分に抑制できる有機EL素子の製造方法を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明の製造方法により製造される有機EL素子の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機EL素子100は、互いに対向して配置されているホール注入電極(陽極)1及び電子注入電極(陰極)2により、有機発光層10が挟持された構造を有している。またホール注入電極1は基板4上に形成されている。
(基板)
基板4の構成材料は、従来の有機EL素子の基板として用いられているものであれば、特に限定されない。したがって、そのような基板4としては、ガラス、石英等の非晶質基板、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InP等の結晶基板、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pd、SUS等の金属基板等を挙げることができる。また、結晶質又は非晶質のセラミック、金属、有機物等の薄膜を所定基板上に形成したものを用いてもよい。
この基板4に色フィルター膜若しくは蛍光性物質を含む色変換膜(蛍光変換フィルター膜)、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色を調整してもよい。
色フィルター膜としては、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いることができ、有機EL素子100の発光色に合わせてカラーフィルターの特性を調整することにより、取り出し効率若しくは色純度を最適化できる傾向にある。
また、EL素子に用いられる構成材料が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いることにより、素子の耐光性・表示のコントラストを向上できる傾向にある。さらに、誘電体多層膜のような光学薄膜をカラーフィルターの代わりに用いてもよい。
蛍光変換フィルター膜は、有機EL素子からの発光を吸収し、そのフィルター膜中の蛍光体から光を放出させることにより、発光色の色変換を行うものである。その組成としては、バインダー及び蛍光材料、さらには必要に応じて光吸収材料の三つから形成される。
上記蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いればよいが、有機EL素子100の発光波長域に吸収が強いと好ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、例えば、ローダミン系化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)、ナフタロイミド系化合物、縮合環炭化水素系化合物、縮合複素環系化合物、スチリル系化合物若しくはクマリン系化合物等を用いることができる。
バインダーとしては、基本的に蛍光を消光しないような材料であれば特に限定されることなく用いることができ、それらのなかでも、フォトリソグラフィー若しくは印刷等で微細なパターニングができるようなものであると好ましい。また、ITO、IZOの成膜時に損傷を受けないような材料であるとより好ましい。
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いると好ましい。また、この光吸収材料としては、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料であれば特に限定されることなく用いることができる。
(ホール注入電極)
ホール注入電極(陽極)1は透明電極であり、後述する本実施形態の有機EL素子の製造方法により形成されるものである。
透明電極を構成する材料(構成材料)としては、そのホール注入電極1に隣接する有機発光層10に、ホールを効率よく注入できる(有機発光層10からの電子を効率よく引き抜くことができる)材料が好ましい。かかる観点から、その構成材料は、本実施形態の製造方法により得られるホール注入電極1としての仕事関数が4.5〜5.5eVとなるように、調製若しくは選択されるとより好ましい。
また、本実施形態においては基板4の側を光取り出し側としているので、透明電極を構成する主成分材料は、有機EL素子100の発光波長領域である波長400〜700nmにおける透過率、特にRGB各色の波長における透明電極の透過率が、50%以上となるようなものであると好ましく、80%以上となるようなものであるとより好ましく、90%以上となるようなものであると更に好ましい。この透過率が50%未満であると、発光層4からの発光が減衰されて画像表示に必要な輝度が得られ難くなる傾向にある。
材料自体の抵抗値をより低くし、光透過率をより高くするという観点から、透明電極を構成する材料は、透明導電性酸化物であると好ましい。かかる材料としては、SnO、ZnSb、CdO、CdIn、MgIn、ZnGa、CdGa、ZnSnO、In、ZnO、Ga、GaInO、CdSnO、CdSnO、InGaMgO、InGaZnO、ZnIn、AgSbO、CdSb、CdGeO、ZnSnO、AgInO、SrCu又はCdO−GeOなどが挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、あるいは、例えばある材料に別の材料を固溶若しくは混合させる、というように2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの材料は結晶であってもよく非結晶であってもよい。
これらのなかで、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)又は亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)等のIn、Sn又はZnを有する酸化物が好ましい。このような酸化物を用いると、有機EL素子100の駆動電圧をより抑制することができる傾向にある。さらにそれらのなかでも、ITOは、面内の比抵抗が均一な薄膜を容易に得ることができる傾向にあるので、特に好ましい。
ITO電極中のSnOの含有割合は、高透過率且つ低抵抗を実現する観点から、1〜20質量%であると好ましく、5〜12質量%であるとより好ましい。また、IZO電極中のZnOの含有割合は、上述と同様の観点から、12〜32質量%が好ましい。
なお、透明電極を構成する材料の組成は化学量論組成から多少偏倚していてもよく、この偏倚等により、ホール係数測定装置等を用いた電気的評価について、キャリア密度が1.0×1018〜1.0×1021/cm、移動度が1〜200cm/Vs程度となると好ましい。
また、ITO電極等の透明電極を形成する工程における成膜条件若しくは成膜後の熱処理履歴等に依存して、透明電極自体が駆動履歴若しくは熱履歴に対して不安定になる場合がある。この不安定性を評価する方法の一つとして、100℃程度の熱処理前後で上記キャリア密度及び移動度を測定し、その変化割合を調べる方法がある。その結果、熱処理前後での変化割合が大きなものは不安定な膜質を有すると推定することができる。このような方法により、熱的に不安定な膜質であると評価された透明電極材料をホール注入電極1の構成材料として用いる場合、本発明の効果を一層発揮することが可能となる。
また、ホール注入電極1に酸化シリコン(SiO)等の透明な誘電体を更に添加することにより、ホール注入電極1の仕事関数を調整することができる。例えば、ITOに対して0.5〜10mol%程度のSiOを添加することによりホール注入電極1の仕事関数を増大させ、ホールを効率よく注入できる傾向にある。
ホール注入電極1の膜厚は、上述の光透過率を考慮して決定することが好ましい。例えば、透明電極を構成する主成分材料にITOを用いる場合、その膜厚は、50〜500nmであると好ましく、50〜300nmであるとより好ましい。ホール注入電極1の膜厚が500nmを超えると、光透過率が不充分となると共に、基板4からのホール注入電極1の剥離が発生する場合がある。また、膜厚の減少に伴い光透過性は向上するが、膜厚が50nm未満になると、抵抗値が高くなり有機発光層10等へのホール注入効率が低下すると共に膜の強度が低下する傾向にある。
(有機発光層)
有機発光層10の構成材料としては、電子とホールとの再結合により励起子が生成し、その励起子がエネルギーを放出して基底状態に戻る際に発光するような有機化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。
具体的には、例えば、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体若しくは希土類金属錯体等の有機金属錯体化合物、アントラセン、ナフタセン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン、スチリルアミン若しくはテトラアリールジアミン又はこれらの誘導体、ペリレン、キナクリドン、クマリン、DCM若しくはDCJTBなどの低分子有機化合物、あるいは、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体若しくはポリチオフェン誘導体等のπ共役系ポリマー、又は、ポリビニル化合物、ポリスチレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアクリレート誘導体若しくはポリメタクリレート誘導体等の非π共役系の側鎖型ポリマー若しくは主鎖型ポリマー等に色素を含有させたものなどの高分子有機化合物などを挙げることができる。
これらのなかで、より高い発光効率及びより長い寿命の有機EL素子100を得る観点から、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体若しくは希土類金属錯体等の有機金属錯体化合物、アントラセン、ナフタセン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン、スチリルアミン若しくはテトラアリールジアミン又はこれらの誘導体、ペリレン、キナクリドン、クマリン、DCM若しくはDCJTBなどの低分子有機化合物を用いると好ましい。
さらには、赤色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、ジインデノペリレン若しくはその誘導体を用いると好ましい。また、青色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、上述した赤色の発光を得るための好ましい化合物を除いたジフェニルベンゾフルオランテン若しくはその誘導体を用いると好ましい。さらに、黄色若しくは橙色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、ルブレン若しくはその誘導体を用いると好ましい。そして、緑色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、上記各色を得るための好ましい化合物を除いたジフェニルナフタセン若しくはその誘導体を用いると好ましい。
また、有機発光層10は、上記構成材料のうち、成膜の容易さ、ホール及び電子の注入されやすさ並びに励起子の後述するドーパント材料への励起エネルギーの移動性等の観点から選択されるホール材料を母材とし、ホール材料からのエネルギーの受け取りやすさ及び発光能力の高さ等の観点から選択されるドーパント材料を、上記ホール材料中に分散させるようにすると、一層優れた発光効率を得ることができる傾向にあるので、より好ましい。
さらに、有機発光層10に含有されるドーパント材料の濃度が、有機発光層10の膜厚方向の全体にわたってほぼ一定であると好ましい。このような有機発光層10は、ムラのない発光を実現することができ、それにより発光効率及び耐久性を向上させることができる傾向にあるので好ましい。
有機発光層10の膜厚はより均一な発光及び一層長い寿命を得るの観点から、10〜200nmであると好ましく、50〜150nmであるとより好ましい。
(電子注入電極)
電子注入電極(陰極)2の構成材料は、従来の有機EL素子において電子注入電極に用いられているものであれば特に限定されない。したがって、その構成材料として、金属材料、有機金属錯体若しくは金属塩等が挙げられ、有機発光層10へ効率的且つ確実に電子を注入できるように、仕事関数が比較的低い材料を用いると好ましい。
電子注入電極2を構成する金属材料の具体例としては、Li、Na、K若しくはCs等のアルカリ金属、あるいは、Mg、Ca、Sr若しくはBa等のアルカリ土類金属が挙げられる。また、La、Ce、Eu、Sm、Yb、Y、Zn若しくはZr等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属と特性が近い金属を用いることもできる。さらには、上記金属材料のほか、LiF若しくはCsI等のアルカリ金属ハロゲン化物等を挙げることもできる。
電子注入電極2の膜厚は有機発光層10等への電子注入能力の点から、できるだけ薄い方が好ましく、具体的には、10nm以下が好ましく、1nm以下がより好ましい。
なお、電子注入電極2上には補助電極を設けてもよい。これにより、有機発光層10への電子注入効率を向上させることができる傾向にあり、また、有機発光層10への水分又は有機溶媒の侵入を防止することができる傾向にある。補助電極の材料としては、仕事関数及び電荷注入能力に関する制限がないため、一般的な金属を用いることができるが、導電率が高く取り扱いが容易な金属を用いることが好ましい。また、特に電子注入電極2が有機材料を含む場合には、有機材料の種類や密着性等に応じて適宜選択することが好ましい。
補助電極に用いられる材料としては、Al、Ag、In、Ti、Cu、Au、Mo、W、Pt、Pd若しくはNi等が挙げられる。それらのなかでもAl若しくはAg等の低抵抗の金属を用いると電子注入効率を更に高めることができる傾向にあるので、より好ましい。また、TiN等の金属化合物を用いることにより一層高い封止性を得ることができる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。また、2種類以上の金属を用いる場合は合金として用いてもよい。このような補助電極は、例えば、真空蒸着法等によって形成可能である。
このような構成を有する有機EL素子100は、印加時間の経過に伴う駆動電圧の上昇を十分に抑制することができるので、その発光寿命は一層向上することとなる。
次に上述の有機EL素子100のを作製する方法について以下に説明する。図2は、本発明の製造方法により有機EL素子100を製造する手順の一例を示すフロー図である。この図2によると、本実施形態の有機EL素子100の製造方法は、基板準備工程S1と、ホール注入電極形成工程S2と、第1工程であるバイアス電圧印加工程S3と、第2工程である積層体形成工程S10とを有する。更に積層体形成工程S10は、有機発光層形成工程S4及び電子注入電極層形成工程S5を有する。以下、上述の各工程について説明する。
まず、透明ガラス等の基板4を準備した(基板準備工程S1)後、その基板4上にスパッタリング法若しくは蒸着法などの方法により、透明電極であるホール注入電極1を形成する(ホール注入電極形成工程S2)。
次いで、基板4及びホール注入電極1からなる無機積層体20(図1参照)を、室温よりも高い温度に加熱した後、その無機積層体20に対して、バイアス電圧の印加処理を行う(バイアス電圧印加工程S3)。バイアス電圧印加工程に用いられる装置としては、無機積層体20にバイアス電圧を印加できるものであれば、特に限定されない。具体的には、公知のBT(Bias Temperature)処理装置などを用いることができる。ここでは、図3に概略断面図を示すような電圧印加装置50を用いて行うバイアス電圧の印加処理について説明する。
図3に示される電圧印加装置50は、ベース51とベース51上に載置されたカバー52とで構成される筺体の中に収容されている。ベース51の上には第1導電板54が設置されている。第1導電板54上には、無機積層体20が載置される。ベース51には、リニアガイド64が垂直方向に立設されている。リニアガイド64には、第2導電板66が垂直方向に移動可能に連結されている。第2導電板66は、パルスモータ68によって駆動され、リニアガイド64に沿って垂直方向に移動する。第1導電板54及び第2導電板66にはそれぞれヒータ57、67が内蔵されており、それら導電板54、66を加熱できるようになっている。また、第1導電板54及び第2導電板66は、配線70を介して交流電源71又は直流電源72の両極に、それぞれ電気的に接続される。
無機積層体20を電圧印加装置50に載置する際には、カバー12を取り外し、パルスモータ68を駆動して第2導電板66を上方に移動させる。続いて、無機積層体20を第1導電板54上に配置する。この際、図3に示すように、基板を第1導電板側にして無機積層体20を配置すると好ましい。
次いで、パルスモータ68を駆動して、第2導電板66を下降させ、無機積層体20を第1導電板54及び第2導電板66により、上下方向に挟み込む。この際、第1導電板54及び/又は第2導電板66は、無機積層体20に接していてもよく、接していなくてもよい。すなわち、交流電源71及び直流電源72の電圧と、バイアス電圧を印加する時間とに応じて、無機積層体20に印加する電界強度が所望の値になるように、第2導電板66の上下方向の位置を決定すればよい。
そして、カバー52をベース51上に設置して電圧印加装置50を収容し、バイアス電圧印加工程S3を開始する。まず、第1導電板54及び第2導電板66を、それぞれヒータ57、67により加熱することにより、無機積層体20をも加熱する。この際の無機積層体20の加熱温度は、室温よりも高い温度であって、しかも無機積層体20に含まれる化合物の融点又は分解温度を超えない程度の低い温度である必要がある。したがって、その加熱温度の上限は、基板4又はホール注入電極1の構成材料によって異なる。
例えば、ホール注入電極1としてITO電極を採用した場合、無機積層体20を250℃よりも高い温度に加熱すると、ITO中の酸素が過剰に欠損する傾向にあるため、ITO電極がそのホール注入電極としての性能を発揮できなくなる傾向にある。また、この加熱温度が50℃より低いと、バイアス電圧を印加しても、ホール注入電極1内での電子の移動が円滑に進行しない傾向にあるため、バイアス電圧印加工程S3に費やす時間やコストが過剰に増加する傾向にある。そこで、無機積層体20の加熱温度は50〜250℃であると好ましい。
次いで、無機積層体20を所望の温度に加熱した状態のまま、始めに交流電源71によって、無機積層体20に交流バイアス電圧を印加する。なお、バイアス電圧印加工程S3において、カバー52の左右に設けられている開口部53、55を通して、窒素ガス、希ガス等の不活性ガスを導入し、電圧印加装置50周りに不活性ガスを充填させてもよい。これにより、バイアス電圧印加工程S3における無機積層体20の汚染が一層防止されるので、そのような観点から好ましい。あるいは、ホール注入電極にITOなどの金属酸化物材料を用いた場合、乾燥空気や酸素ガスなどの酸化性ガスを充填させてもよい。これにより、電圧印加工程S3において、ホール注入電極から酸素が過剰に欠損することを抑制することができ、電子過剰の状態を低下させることができるので、結果的に、ホール注入電極1のキャリアバランスを電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態に一層安定化させることができる。
交流バイアス電圧の電界強度は特に制限されないが、実用的な安定化交流電源を使用する観点から、3×10〜3×10V/mであると好ましい。また、交流バイアス電圧の印加時間は、本発明の上記効果を有効に奏する観点及び絶縁破壊を防止する観点から、1〜1800秒の範囲で決定すると好ましい。
交流バイアス電圧の印加処理が終了したら、続けて、無機積層体20を所望の温度に加熱した状態のまま、直流電源72によって、無機積層体20に直流バイアス電圧を印加する。この際、図3に示すように、ホール注入電極1側を陰極として直流バイアス電圧の印加処理が行われると、ホール注入電極1の基板側とは反対側の表面付近のキャリアバランスを電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態に安定化させることができる。その結果、このバイアス電圧印加工程S3を経て得られる有機EL素子100は、105℃程度の比較的高温で所定時間保存した後であっても、駆動電圧の上昇を一層抑制できる。
直流バイアス電圧の電界強度は特に制限されないが、実用的な安定化直流電源を使用する観点から、5×10〜5×10V/mであると好ましい。また、直流バイアス電圧の印加時間は、本発明の上記効果を有効に奏する観点及び絶縁破壊を防止する観点から、1〜1800秒の範囲で決定すると好ましいとなるように決定すればよい。
バイアス電圧印加工程S3において、交流バイアス電圧を印加した後に直流バイアス電圧を印加すると、得られる有機EL素子100の駆動電圧の上昇を更に抑制することが可能となる。これは、まず、交流バイアス電圧を印加してホール注入電極内の可動イオンを、そのイオンが安定に存在し得るサイト(トラップサイト)に移動させることにより、その次に行われる直流バイアス電圧の印加による上述のような安定化を、一層促進させることができるためと、本発明者は考えている。
続いて、ホール注入電極1上に有機発光層10が形成される(有機発光層形成工程S4)。この有機発光層10の形成方法は、有機発光層10の構成材料等によって、従来の方法を適宜選択して採用することができ、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法若しくは塗布法等を採用することができる。
そして、有機発光層10上に、電子注入電極2を、例えば真空蒸着法などにより形成する(電子注入電極形成工程S5)。これによって、基板4及びホール注入電極1を積層してなる無機積層体20上に、有機発光層10及び電子注入電極2を積層してなる積層体30を形成した有機EL素子100が完成する。
かかる有機EL素子100の製造方法を用いると、ホール注入電極1が有している自由電子を、その電極中であらかじめ効率的かつ確実に移動させることができる。よって、ホール注入電極1中に共存する陽性元素等によりトラップしたり、電気的に中和できたりするものと考えられる。その結果、かかるホール注入電極1を備える有機EL素子100を比較的高温で保存しても、その保存の際にホール注入電極1のキャリア分布はさほど変化せず、保存前後におけるキャリア注入性の差異が生じ難いので、高温保存前後の駆動電圧の上昇を十分抑制できると考えられる。
さらに、上述の有機EL素子100の製造方法によると、有機EL素子100の駆動初期において、すでにホール注入電極1のキャリア分布が安定した状態となっている。したがって、有機EL素子100の駆動中における駆動電圧の上昇も抑制できる傾向にある。さらには、ホール注入電極1のキャリア分布を、所望のとおりに調整しやすい。よって、有機EL素子100の駆動初期の駆動電圧を一層低くすることも可能となる。
また、得られる有機EL素子100は、その発光効率を一層優れたものとすることができる。これは、ホール注入電極1内のキャリア分布を調整することにより、有機発光層10におけるキャリアの再結合確率が向上することに起因すると考えられる。
以上、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図4に示す2層型有機EL素子を作製する際にも、本発明の有機EL素子の製造方法を用いることができる。図4に示す有機EL素子300は、図1における有機EL素子100のホール注入電極1と有機発光層10との間にホール輸送層11を設けた構造を有している。
この有機EL素子300を作製する場合、上述したようなバイアス電圧の印加処理を、基板4上にホール注入電極1を形成して得られる無機積層体20に対して施すこととなる。そして、バイアス電圧印加工程の後、ホール輸送層11、有機発光層10及び電子注入電極層2を順に積層することによって、無機積層体20上に積層体32を形成して、有機EL素子300を得る。
得られた有機EL素子300は、バイアス電圧の印加処理を施したホール注入電極1に接するようにしてホール輸送層11が形成されている。
ホール輸送層11の構成材料は、従来の有機EL素子においてホール輸送層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、低分子材料、高分子材料のいずれのホール輸送性材料も使用可能である。ホール輸送性低分子材料としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが挙げられる。また、ホール輸送性高分子材料としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(Pani/PSS)などが挙げられる。これらのホール輸送性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この有機EL素子300は、ホール輸送層11に従来と同様の構成材料を用いても、従来よりも駆動電圧の上昇を一層抑制することができるものとなる。これは、ホール注入電極1を、上述の方法で形成することにより、隣接するホール輸送層11へのホール注入性が更に向上するためと考えられる。
また、有機EL素子300は、このような構造を有することによりホールの移動度が向上し、有機発光層10からホール輸送層11への電子の移動を抑制することができるので、発光効率が向上する傾向にある。
さらに、図5に示す3層型有機EL素子400を作製する際にも、本発明の有機EL素子の製造方法を用いることができる。図5に示す有機EL素子400は、図4における有機EL素子300の電子注入電極2と有機発光層10との間に電子輸送層12を設けた構造を有している。
電子輸送層12の構成材料は、従来の有機EL素子において電子輸送層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、低分子材料、高分子材料のいずれの電子輸送材料も使用可能である。電子輸送性低分子材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、フェナントロリン及びその誘導体、並びにこれらの化合物を配位子とする金属錯体などが挙げられる。また、電子輸送性高分子材料としては、ポリキノキサリン、ポリキノリンなどが挙げられる。これらの電子輸送性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような構造を有することにより、有機EL素子400における電子の移動度が向上し、有機発光層10から電子輸送層12へのホールの移動を抑制することができるので、発光効率が向上する傾向にある。
この有機EL素子400を作製する場合、上述したようなバイアス電圧の印加処理を、基板4上にホール注入電極1を形成して得られる無機積層体に対して施すこととなる。そして、バイアス電圧印加工程の後、ホール輸送層11、有機発光層10、電子輸送層12及び電子注入電極層2を順に積層することによって、無機積層体上に、それとは別の積層体を形成して、有機EL素子400を得る。
この有機EL素子400は、上述の有機EL素子300と同様の観点から、ホール輸送層11に従来と同様の構成材料を用いても、従来よりも駆動電圧の上昇を一層抑制することができるものとなる。
図6に示す4層型有機EL素子500を作製する際にも、本発明の有機EL素子の製造方法を用いることができる。図6に示す有機EL素子500は、ホール注入電極1及び電子注入電極2により、ホール注入層14、ホール輸送層11、有機発光層10及び電子注入層13が挟持された構造を有している。ホール注入層14、ホール輸送層11、有機発光層10及び電子注入層13はいずれも有機層であり、ホール注入電極1側からこの順に積層されている。なお、電子注入層13は無機層(金属層、金属化合物層等)とすることもできる(以下同様)。
ホール注入層14の構成材料は、従来の有機EL素子においてホール注入層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、アリールアミン、フタロシアニン、ポリアニリン/有機酸、ポリチオフェン/ポリマー酸などの有機化合物材料、又は、ゲルマニウム若しくはシリコン等の金属若しくは半金属の酸化物などを用いることができる。これらのホール注入性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このホール注入層14を備えることにより、有機EL素子500は、ホール注入電極1からのホールの注入を容易にし、ホールを安定に輸送し、さらにはホール輸送層11からの電子を妨げる機能を有するものである。それにより、有機EL素子500の発光効率が向上するとともに駆動電圧が全体的に低下する傾向にある。
電子注入層13の構成材料は、従来の有機EL素子において電子注入層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、リチウム等のアルカリ金属、フッ化リチウム、酸化リチウム等を用いることができる。この電子注入層13を備えることにより、有機EL素子500は、電子注入電極2からの電子の注入を容易にし、電子を安定に輸送し、さらには有機発光層10からのホールを妨げる機能を有するものである。それにより、有機EL素子500の発光効率が向上するとともに駆動電圧が全体的に低下する傾向にある。
この有機EL素子500を作製する場合、上述したようなバイアス電圧の印加処理を、基板4上にホール注入電極1を形成して得られる無機積層体に対して施すこととなる。そして、バイアス電圧印加工程の後、ホール注入層14、ホール輸送層11、有機発光層10、電子注入層13及び電子注入電極層2を順に積層することによって、無機積層体上に、それとは別の積層体を形成して、有機EL素子500を得る。
得られた有機EL素子500は、バイアス電圧の印加処理を施したホール注入電極1に接するようにしてホール注入層14が形成されており、従来の4層型有機EL素子と比較して、駆動電圧の上昇を十分に抑制することができる。これは、ホール注入電極1に上述のようにしてバイアス電圧を印加することにより、ホール注入電極1のホール注入層14側の表面付近におけるキャリアバランスを、電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態に安定化できることに起因すると考えられる。
また、有機EL素子500のホール注入層14の構成材料にシリコン又は半金属の酸化物などの無機化合物材料を用いる場合、上述したようなバイアス電圧の印加処理を、基板1上にホール注入電極1及びホール注入層14を順に形成して得られる無機積層体に対して施すことも可能である。このようにして有機EL素子500を作製すると、従来の4層型有機EL素子と比較して、駆動電圧の上層を一層抑制することができる。これは、ホール注入電極1だけでなく、ホール注入層14についても、そのホール輸送層11側の表面付近におけるキャリアバランスを電気的中性又はホール過剰(電子不足)の状態に安定化できることに起因すると考えられる。
図7に示す5層型有機EL素子600を作製する際にも、本発明の有機EL素子の製造方法を用いることができる。図7に示す有機EL素子600は、図6における有機EL素子500の電子注入層13と有機発光層10との間に電子輸送層12を設けた構造を有している。このような構造を有することにより、有機EL素子600の各材料の選択肢を広げることができるので、用途に応じた有機EL素子600を得ることができる傾向にある。
この有機EL素子600を作製する場合、上述したようなバイアス電圧の印加処理を、基板4上にホール注入電極1を形成して得られる無機積層体、又は基板4上にホール注入電極1及びホール注入層14を順に形成して得られる無機積層体に対して施すこととなる。そして、バイアス電圧印加工程の後、後者の無機積層体上にはホール注入層14を形成して、更に、ホール輸送層11、有機発光層10、電子輸送層12及び電子注入電極層2を順に積層することによって、無機積層体上に、それとは別の積層体を形成して、有機EL素子600を得る。得られた有機EL素子600は、上述の有機EL素子500と同様の観点から好ましいものとなる。
ホール輸送層11、電子輸送層12、ホール注入層14及び電子注入層13の好適な厚さは、いずれも1〜100nmである。
さらに、図示していないが、異なる構成材料(材料の種類、材料の含有割合)を含有する発光層を複数積層して設けてもよい。
本発明の更に別の実施形態に係る有機EL素子のホール注入電極として、透明電極以外の、通常の有機EL素子に用いられるホール注入電極を用いてもよい。この場合、有機発光層からの発光を、基板とは反対側から取り出すこととなるので、電子注入電極を透明電極とすると好ましい。そのような透明電極としては、図1の有機EL素子について説明したホール注入電極1の光学的条件を満たすものであることが好ましい。
また、本発明の別の実施形態の有機EL素子の製造方法において、バイアス電圧の印加処理の際に、直流バイアス電圧のみを印加してもよく、交流バイアス電圧のみを印加してもよい。このような場合でも、得られる有機EL素子は、従来のものと比較すると、十分に駆動電圧の上昇を抑制できるものとなる。
本発明の更に別の実施形態の有機EL素子の製造方法において、バイアス電圧の印加処理の際に、電圧の印加方向を、無機積層体の積層方向に対する垂直方向にしてもよい。このようにしても、ホール注入電極にバイアス電圧を印加することができ、それにより、可動イオンをあらかじめ安定化しておくことができるので、得られる有機EL素子について、駆動電圧の上昇は十分に抑制されることとなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、準備したガラス基板(厚さ:0.7mm)上に、ITOを通常のスパッタ法により100nmの膜厚に成膜し、所定のパターンにパターニングしてホール注入電極を得た(ホール注入電極形成工程)。
次いで、それら基板及びホール注入電極からなる無機積層体を、上述したものと同様の電圧印加装置に、図3と同様の方向に(ホール注入電極側が陰極となるように)設置した。この際、無機積層体は第1導電板及び第2導電板に接するように設置した。
更に、装置内の無機積層体周囲に乾燥空気を充填し、その無機積層体を200℃に加熱した。次いで、次いで、加熱状態を維持したまま、直流電源を用いて、無機積層体に100Vの直流バイアス電圧を印加し、バイアス電圧印加工程を開始した。そして、この加熱条件及び電圧条件を20分間維持してバイアス電圧印加工程を終了した。
続いて、無機積層体の温度を25℃まで冷却した後、市販の真空蒸着装置(ULVAC製高真空蒸着装置EXシリーズ)を用いて、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを、体積比で97:3の割合で、ホール注入電極上に真空共蒸着(系内圧力:1×10−4Pa)させ、100nmの膜厚を有する有機発光層を形成した(有機発光層形成工程)。
Figure 2005285337
Figure 2005285337
次いで、系内を減圧状態に維持したまま、電子注入層としてフッ化リチウムを真空蒸着法により発光層上に形成した。この電子注入層の膜厚は1nmであった。そして、電子注入電極としてアルミニウムを電子注入層上に、100nmの膜厚に成膜し(電子注入電極形成工程)、実施例1の有機EL素子を得た。
(実施例2)
バイアス電圧印加工程を以下のように代えた以外は実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を得た。
バイアス電圧印加工程において、実施例1と同様の基板及びホール注入電極からなる無機積層体を、実施例1と同様の電圧印加装置に、実施例1と同様にして設置した。
更に、装置内の無機積層体周囲に乾燥空気を充填し、その無機積層体を200℃に加熱した。次いで、加熱状態を維持したまま、まず交流電源を用いて、無機積層体に100Vの交流バイアス電圧を印加し、バイアス電圧印加工程を開始した。この加熱条件及び電圧条件を10分間維持した。交流バイアス電圧の印加終了後、加熱状態を維持したまま、直流電源を用いて、無機積層体に100Vの直流バイアス電圧を印加した。そして、この加熱条件及び電圧条件を20分間維持してバイアス電圧印加工程を終了した。
(比較例1)
バイアス電圧印加工程に代えて、以下の工程を経た以外は実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を得た。
実施例1と同様の基板及びホール注入電極からなる無機積層体を、実施例1と同様の電圧印加装置に、実施例1と同様にして設置した。更に、装置内の無機積層体周囲に乾燥空気を充填し、その無機積層体を200℃に加熱した。次いで、無機積層体にバイアス電圧を印加することなく加熱状態を20分間維持して、この工程を終了した。
(比較例2)
バイアス電圧印加工程を以下のように代えた以外は実施例1と同様にして、比較例2の有機EL素子を得た。
バイアス電圧印加工程において、実施例1と同様の基板及びホール注入電極からなる無機積層体を、実施例1と同様の電圧印加装置に、実施例1と同様にして設置した。
更に、装置内の無機積層体周囲に乾燥空気を充填し、その無機積層体を25℃に加熱した。次いで、加熱状態を維持したまま、直流電源を用いて、無機積層体に100Vの直流バイアス電圧を印加し、バイアス電圧印加工程を開始した。そして、この加熱条件及び電圧条件を20分間維持してバイアス電圧印加工程を終了した。
<素子特性評価試験>
上記のようにして得られた実施例1、2及び比較例1、2の有機EL素子について、Arガス雰囲気中、105℃にて、所定時間保存した。そして、保存後の有機EL素子について100mA/cmの定電流駆動をした時の駆動電圧を測定した。上記保存前に駆動した際の駆動電圧に対する所定時間保存後の駆動電圧の上昇分の結果を表1に示す。
Figure 2005285337
本発明の好適な実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法における手順の一例を示すフロー図である。 本発明の有機EL素子の製造方法に用いる電圧印加装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の別の好適な実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。 本発明の更に別の好適な実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。 本発明のなおも別の好適な実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。 本発明のなおも更に別の好適な実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図である。
符号の説明
1…ホール注入電極(陽極)、2…電子注入電極(陰極)、4…基板、10…有機発光層、11…ホール輸送層、13…電子注入層、14…ホール注入層、16…無機機能層、20…無機積層体、50…電圧印加装置、51…ベース、52…カバー、54…第1導電板、57、67…ヒータ、66…第2導電板、71…交流電源、72…直流電源、100、300、400、500、600…有機EL素子、S1…基板準備工程、S2…ホール注入電極形成工程、S3…バイアス電圧印加工程(第1工程)、S4…有機発光層形成工程、S5…電子注入電極形成工程、S10…積層体形成工程(第2工程)、P…電源。

Claims (7)

  1. 基板及びその一側に形成されたホール注入電極を備える無機積層体を加熱して、その無機積層体にバイアス電圧の印加処理を行う第1工程と、
    前記印加処理の後に前記ホール注入電極の前記基板と反対側に有機発光層及び電子注入電極を備える積層体を形成する第2工程と、
    を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 前記バイアス電圧が直流バイアス電圧を含むことを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記第1工程において、前記バイアス電圧の前記印加処理は、交流バイアス電圧を前記無機積層体に印加した後に、直流バイアス電圧を前記無機積層体に印加して行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記直流バイアス電圧の前記印加処理が、前記無機積層体のうちのホール注入電極側を陰極として行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記ホール注入電極が透明電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記第1工程において、前記無機積層体を加熱する際の温度が50〜250℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記第1工程において、一対の電極により前記無機積層体をその積層方向に挟んだ状態で、前記バイアス電圧の前記印加処理が行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。

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