JP2005276704A - 有機el素子の製造方法 - Google Patents

有機el素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005276704A
JP2005276704A JP2004090291A JP2004090291A JP2005276704A JP 2005276704 A JP2005276704 A JP 2005276704A JP 2004090291 A JP2004090291 A JP 2004090291A JP 2004090291 A JP2004090291 A JP 2004090291A JP 2005276704 A JP2005276704 A JP 2005276704A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
electron injection
injection layer
layer
manufacturing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004090291A
Other languages
English (en)
Inventor
Masami Mori
匡見 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2004090291A priority Critical patent/JP2005276704A/ja
Publication of JP2005276704A publication Critical patent/JP2005276704A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

【課題】 十分に長い寿命を有する有機EL素子を製造することが可能な有機EL素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】 対向するホール注入電極及び電子注入電極と、ホール注入電極と電子注入電極との間に配置される有機発光層と、電子注入電極と有機発光層との間に配置される無機電子注入層と、を備える有機EL素子の製造方法であって、無機電子注入層を、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下、の減圧環境下で形成する電子注入層形成工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス、電界発光)素子の製造方法に関するものである。
有機ELディスプレイ等に用いられる有機EL素子は、例えば、蛍光性有機化合物や燐光性有機化合物等の発光性有機化合物を含む発光層を、ホール注入電極(陽極)及び電子注入電極(陰極)で挟んだ構成を有するものであり、この発光性有機化合物に上記電極から電界を印加することにより励起・発光させる素子である。このような有機EL素子は、無機EL素子と比較して、駆動方法が簡便で低駆動電圧であることに加え、輝度や発光効率(量子収率)等の素子特性において優れており、現在実用化の段階を迎えつつある。
この有機EL素子においては、発光効率を向上させる目的で、電極から発光層へホール(正孔)又は電子を効率よく注入輸送するための注入層や輸送層といった機能層が、電極と発光層との間に設けられている。そして、このような機能層に関して様々な研究がなされており、例えば特許文献1では、発光効率をより一層向上させるために、有機発光層と電子注入電極との間に、導電性金属酸化物と仕事関数3eV以下の金属又は金属酸化物を含有する無機電子注入層を形成することが提案されている。
特開2002−367784号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明のように有機発光層と電子注入電極との間に無機電子注入層を形成する場合、その形成条件については十分な研究がなされておらず、形成条件と素子特性との関係については明らかにされていなかった。そのため、無機電子注入層の形成条件によっては、得られる有機EL素子の寿命(駆動寿命)が不十分になってしまう場合があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に長い寿命を有する有機EL素子を製造することが可能な有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、無機電子注入層を形成する際の水素ガスの存在が無機電子注入層の機能に大きな影響を与えることを見出した。そして、電子注入層を特定の減圧環境下で形成することにより、上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、対向するホール注入電極及び電子注入電極と、ホール注入電極と電子注入電極との間に配置される有機発光層と、電子注入電極と有機発光層との間に配置される無機電子注入層と、を備える有機EL素子の製造方法であって、無機電子注入層を、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下の減圧環境下で形成する電子注入層形成工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法を提供する。
ここで、上記「残留ガス」とは、無機電子注入層を形成する際に、その層の周囲雰囲気に存在するガスを意味する。例えば、無機電子注入層を真空装置内で形成する場合には、その装置内に存在しているガスを意味する。
かかる製造方法において、無機電子注入層を上述の減圧環境下で形成することにより、電子注入性やホール(正孔)障壁性の劣化が十分に抑制された状態の無機電子注入層を形成することが可能となる。そして、このような無機電子注入層を形成することができることから、有機EL素子における発光効率等の素子特性の劣化を長期間にわたって十分に抑制することが可能となり、十分に長い寿命を有する有機EL素子を得ることができる。
ここで、残留ガス中の水素ガスの割合が60%を超える環境下で無機電子注入層の形成を行った場合、その形成過程において、無機電子注入層の構成材料が水素ガスによって還元されて性質が変化し、無機電子注入層として要求される機能(電子注入性及びホール障壁性)が十分に得られなくなると考えられる。これにより、有機EL素子の寿命が短くなると本発明者らは推察している。
また、上記電子注入層形成工程において、水素ガスの分圧が1.0×10−4Pa以下の減圧環境下で、無機電子注入層を形成することが好ましい。
このような減圧環境下で無機電子注入層を形成することにより、その形成過程において無機電子注入層の構成材料が水素ガスによって還元されることをより十分に防止することができる。したがって、電子注入性やホール障壁性の劣化がより十分に抑制された状態の無機電子注入層を形成することが可能となる。そして、このような無機電子注入層を形成することができることから、有機EL素子における発光効率等の素子特性の劣化を長期間にわたってより十分に抑制することが可能となり、十分に長い寿命を有する有機EL素子をより確実に得ることができる。
また、上記電子注入層形成工程において、残留ガス中の水素ガスの分圧が、残留ガス中の窒素ガスの分圧以下であることが好ましい。
窒素ガスは不活性なガスであり、無機電子注入層の機能を劣化させにくい。そのため、この窒素ガスの残留ガス中の割合を水素ガスよりも多くし、残留ガス中の水素ガスの相対的な割合を減少させることにより、無機電子注入層の形成過程において、水素ガスが無機電子注入層の構成材料と衝突してその構成材料を還元する確率を減少させることができると考えられる。これにより、機能の劣化が十分に抑制された状態の無機電子注入層を形成することができ、十分に長い寿命を有する有機EL素子をより確実に得ることができる。
また、上記電子注入層形成工程において形成する無機電子注入層が、遷移金属酸化物を含有する層であることが好ましい。
遷移金属酸化物は、その比抵抗の高さから、ホール障壁の役割を果たすと考えられる。例えば、遷移金属酸化物を含有する無機電子注入層と有機発光層とが接している場合には、それらの界面付近にホールをより有効に蓄積することができ、しかもそこへ電子を効率良く注入することができる。これにより、電子とホールとの再結合性を高めて有機EL素子の発光効率を向上させることができる。
更に、遷移金属酸化物は、遷移金属の価数が容易に変化することから、有機発光層との界面でより安定して電子注入が行われ得る状態となるように金属−酸素間の結合状態が変化するものと推察される。そして、これにより遷移金属酸化物を含有する電子注入層と有機発光層との界面における双極子モーメントが、電子注入効率が向上する方向に変化し、この双極子モーメントの変化に起因して遷移金属酸化物を含有する電子注入層と有機発光層との界面での仕事関数の平滑化が起こるものと考えられる。その結果、電子注入障壁(電子を有機発光層に注入するのに必要なエネルギー障壁)が小さくなって電子注入効率が向上し、有機EL素子の発光効率を向上させることができると考えられる。
しかし、遷移金属酸化物において遷移金属の価数が容易に変化するということは、遷移金属酸化物は水素ガスによって還元されて酸素欠損状態又は価数の異なる酸化物に変化しやすいということになる。そのため、無機電子注入層の形成過程において還元性の高い水素ガスが所定量以上存在していると、無機電子注入層中の遷移金属酸化物が容易に還元されて性質が変化し、例えば、無機電子注入層の導電性が必要以上に高くなって有機EL素子の電極間のリーク電流が増大し、発光効率や寿命が低下する傾向にある。
これに対して、無機電子注入層を上述の減圧環境下で形成する本発明の製造方法によれば、無機電子注入層の形成過程における遷移金属酸化物の還元を十分に抑制することができる。したがって、有機EL素子の長寿命化を図りつつ、上述した遷移金属酸化物の効果によって、十分に優れた発光効率を有する有機EL素子を得ることができる。
また、上記のように有機EL素子の長寿命化を図りつつ、より優れた発光効率を得るために、上記遷移金属酸化物が、Mo、Nb、W、Ta、Y、Cr、Re、Co、V及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の金属の酸化物であることが好ましい。
更に、上記電子注入層形成工程において形成する無機電子注入層が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する層であることが好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、仕事関数が十分に低い金属であるため、電子注入障壁を十分に小さくすることができると考えられ、電子注入電極から有機発光層への電子注入効率を効果的に向上させることができる。
そして、このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する無機電子注入層を、上述の減圧環境下で形成することにより、無機電子注入層の形成過程におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の還元を十分に抑制することができる。その結果、有機EL素子の長寿命化を図りつつ、上述したアルカリ金属及びアルカリ土類金属の効果によって、十分に優れた発光効率を有する有機EL素子を得ることができる。
更に、無機電子注入層が、このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属と、上述した遷移金属酸化物との両方を含有すると、遷移金属酸化物の存在によりアルカリ金属又はアルカリ土類金属がより一層安定化され、より優れた発光効率を有する有機EL素子を得ることができる。
本発明によれば、十分に長い寿命を有する有機EL素子を製造することが可能な有機EL素子の製造方法を提供することができる。
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の一例(単層型有機EL)を示す模式断面図である。図1に示す有機EL素子100は、ボトム・エミッション型の有機EL素子であり、互いに対向して配置されているホール注入電極(陽極)1及び電子注入電極(陰極)2により、有機発光層10が挟持された構造を有している。また、ホール注入電極1は基板4上に形成されており、有機発光層10上には無機電子注入層12が形成されている。
以下、有機EL素子100を構成する各層について詳細に説明する。
(基板)
基板4の構成材料は、従来の有機EL素子の基板として用いられているものであれば、特に限定されない。したがって、そのような基板4としては、ガラス、石英等の非晶質基板、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InP等の結晶基板、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pd、SUS等の金属基板等を挙げることができる。また、結晶質又は非晶質のセラミック、金属、有機物等の薄膜を所定基板上に形成したものを用いてもよい。
また、この基板4に色フィルター膜若しくは蛍光性物質を含む色変換膜(蛍光変換フィルター膜)、或いは誘電体反射膜を用いて発光色を調整してもよい。
色フィルター膜としては、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いることができ、有機EL素子100の発光色に合わせてカラーフィルターの特性を調整することにより、取り出し効率若しくは色純度を最適化できる傾向にある。
また、有機EL素子に用いられる構成材料が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いることにより、素子の耐光性・表示のコントラストを向上できる傾向にある。更に、誘電体多層膜のような光学薄膜をカラーフィルターの代わりに用いてもよい。
蛍光変換フィルター膜は、有機EL素子からの発光を吸収し、そのフィルター膜中の蛍光体から光を放出させることにより、発光色の色変換を行うものである。その組成としては、バインダー及び蛍光材料、更には必要に応じて光吸収材料の三つから形成される。
上記蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いればよいが、有機EL素子100の発光波長域に吸収が強いと好ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、例えば、ローダミン系化合物、ペリレン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)、ナフタロイミド系化合物、縮合環炭化水素系化合物、縮合複素環系化合物、スチリル系化合物若しくはクマリン系化合物等を用いることができる。
上記バインダーとしては、基本的に蛍光を消光しないような材料であれば特に限定されることなく用いることができ、それらのなかでも、フォトリソグラフィー若しくは印刷等で微細なパターニングができるようなものであると好ましい。また、ITO、IZOの成膜時に損傷を受けないような材料であるとより好ましい。
上記光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いると好ましい。また、この光吸収材料としては、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料であれば特に限定されることなく用いることができる。
(ホール注入電極)
ホール注入電極(陽極)1の構成材料は、従来の有機EL素子に用いられているものであれば特に限定されない。その中でも、有機発光層10にホールを効率よく注入できる材料が好ましく、かかる観点からは仕事関数が4.5〜5.5eVである材料が好ましい。
また、有機EL素子100においては、基板4の側を光取り出し側とするので、有機EL素子の発光波長領域である波長400〜700nmにおける透過率、特にRGB各色の波長におけるホール注入電極1の透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。ホール注入電極1の透過率が50%未満であると、有機発光層10からの発光が減衰されて画像表示に必要な輝度が得られにくくなる傾向がある。
光透過率の高いホール注入電極1は、各種酸化物で構成される透明導電膜を用いて構成することができる。かかる材料としては、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)等が好ましく、中でも、ITOは、面内の比抵抗が均一な薄膜が容易に得られる点で特に好ましい。ITO中のInに対するSnOの比は、1〜20重量%が好ましく、5〜12重量%がより好ましい。また、IZO中のInに対するZnOの比は12〜32重量%が好ましい。上記材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの材料は結晶であってもよく非結晶であってもよい。
なお、ホール注入電極1を構成する酸化物の組成は化学量論組成から多少偏倚していてもよく、この偏倚等により、ホール係数測定装置等を用いた電気的評価について、キャリア密度が1.0×1018〜1.0×1021/cm、移動度が1〜200cm/Vs程度となると好ましい。
また、ITO電極等の透明電極を形成する工程における成膜条件若しくは成膜後の熱処理履歴等に依存して、透明電極自体が駆動履歴若しくは熱履歴に対して不安定になる場合がある。この不安定性を評価する方法の一つとして、100℃程度の熱処理前後で上記キャリア密度及び移動度を測定し、その変化割合を調べる方法がある。その結果、熱処理前後での変化割合が大きなものは不安定な膜質を有すると推定することができる。このような方法により、熱的に不安定な膜質であると評価された透明電極材料をホール注入電極1の主成分材料として用いる場合、本発明の効果を一層発揮することが可能となる。
また、ホール注入電極1に酸化シリコン(SiO)等の透明な誘電体を添加することにより、ホール注入電極1の仕事関数を調整することができる。例えば、ITOに対して0.5〜10mol%程度のSiOを添加することによりITOの仕事関数を増大させ、ホール注入電極1の仕事関数を上述の好ましい範囲内とすることができる。
ホール注入電極1の膜厚は、上述の光透過率を考慮して決定することが好ましい。例えば酸化物透明導電膜を用いる場合、その膜厚は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは50〜300nmである。ホール注入電極1の膜厚が500nmを超えると、光透過率が不充分となると共に、基板4からのホール注入電極1の剥離が発生する場合がある。また、膜厚の減少に伴い光透過性は向上するが、膜厚が50nm未満の場合、抵抗値が高くなり、有機発光層10等へのホール注入効率が低下すると共に膜の強度が低下してしまう。
(有機発光層)
有機発光層10の構成材料としては、電子とホールとの再結合により励起子が生成し、その励起子がエネルギーを放出して基底状態に戻る際に発光するような有機化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。
具体的には、例えば、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体若しくは希土類金属錯体等の有機金属錯体化合物、アントラセン、ナフタセン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン、スチリルアミン若しくはテトラアリールジアミン又はこれらの誘導体、ペリレン、キナクリドン、クマリン、DCM若しくはDCJTBなどの低分子有機化合物、或いは、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体若しくはポリチオフェン誘導体等のπ共役系ポリマー、又は、ポリビニル化合物、ポリスチレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアクリレート誘導体若しくはポリメタクリレート誘導体等の非π共役系の側鎖型ポリマー若しくは主鎖型ポリマー等に色素を含有させたものなどの高分子有機化合物などを挙げることができる。
これらのなかで、高発光効率及び長寿命の有機EL素子を得る観点から、アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体若しくは希土類金属錯体等の有機金属錯体化合物、アントラセン、ナフタセン、ベンゾフルオランテン、ナフトフルオランテン、スチリルアミン若しくはテトラアリールジアミン又はこれらの誘導体、ペリレン、キナクリドン、クマリン、DCM若しくはDCJTBなどの低分子有機化合物を用いると好ましい。
更には、赤色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、ジインデノペリレン若しくはその誘導体を用いると好ましい。また、青色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、上述した赤色の発光を得るための好ましい化合物を除いたジフェニルベンゾフルオランテン若しくはその誘導体を用いると好ましい。更に、黄色若しくは橙色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、ルブレン若しくはその誘導体を用いると好ましい。そして、緑色の色純度が比較的高く、発光効率も比較的高い発光を得るためには、上記各色を得るための好ましい化合物を除いたジフェニルナフタセン若しくはその誘導体を用いると好ましい。
また、有機発光層10は、上記構成材料のうち、成膜の容易さ、ホール及び電子の注入され易さ並びに励起子の後述するドーパント材料への励起エネルギーの移動性等の観点から選択されるホール材料を母材とし、ホール材料からのエネルギーの受け取りやすさ及び発光能力の高さ等の観点から選択されるドーパント材料を、上記ホール材料中に分散させるようにすると、一層優れた発光効率を得ることができる傾向にあるので、より好ましい。
更に、有機発光層10に含有されるドーパント材料の濃度が、有機発光層10の膜厚方向の全体に亘って略一定であると好ましい。このような有機発光層10は、ムラのない発光を実現することができ、それにより発光効率及び耐久性を向上させることができる傾向にあるので好ましい。
有機発光層10の膜厚は発光の均一性及び長寿命を得る観点から、10〜200nmであると好ましく、50〜150nmであるとより好ましい。
(無機電子注入層)
無機電子注入層12は、本発明の製造方法の電子注入層形成工程により、有機発光層10上に形成される層である。
無機電子注入層12の構成材料としては、例えば、リチウム等のアルカリ金属やCa等のアルカリ土類金属、酸化モリブデン等の遷移金属酸化物、フッ化リチウム、酸化リチウム等を使用することができる。また、これら以外にも、従来の有機EL素子の無機電子注入層に使用されているものを特に制限なく使用することができる。
また、長寿命化が図られているとともに、発光効率の優れた有機EL素子が得られることから、これらの構成材料の中でも、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、或いは、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と、遷移金属酸化物との両方を用いることがより好ましい。
上記遷移金属酸化物としては、より優れた発光効率が得られることから、Mo、Nb、W、Ta、Y、Cr、Re、Co、V及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の金属の酸化物を用いることが好ましく、酸化モリブデン(MoO)、酸化バナジウム(V)、酸化スズ(SnO)、酸化第二銅(CuO)、及び第一酸化チタン(TiO)を用いることがより好ましく、酸化モリブデン(MoO)を用いることが特に好ましい。また、酸化モリブデン(MoO)は、蒸着が容易であり、取り扱いが容易である点からも好ましい。
なお、これらの遷移金属酸化物の組成は、化学量論組成から多少偏倚していてもよい。また、これらの遷移金属酸化物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、より優れた発光効率が得られることから、仕事関数が3eV以下の金属を用いることが好ましい。かかる金属として具体的には、K、Cs、Rb、Na、Sr、Li、Ba、及びCaが挙げられる。これらの中でも、より優れた効果が得られることから、アルカリ金属であるLi、Na、K、Rb、及びCsを用いることがより好ましく、更に、蒸着が容易であることから、Liを用いることが特に好ましい。
このような無機電子注入層12の膜厚は、より十分な電子注入効率を得るとともに、有機EL素子の長寿命化を図る観点から、0.1〜20nmであることが好ましく、0.3〜10nmであることがより好ましい。
(電子注入電極)
電子注入電極(陰極)2の構成材料は、従来の有機EL素子において電子注入電極に用いられているものであれば特に限定されない。したがって、その構成材料として、金属材料、有機金属錯体若しくは金属塩等が挙げられ、有機発光層10へ効率的に且つ確実に電子を注入できるように、仕事関数が比較的低い材料を用いると好ましい。
電子注入電極2を構成する金属材料の具体例としては、Li、Na、K若しくはCs等のアルカリ金属、或いは、Mg、Ca、Sr若しくはBa等のアルカリ土類金属が挙げられる。また、La、Ce、Eu、Sm、Yb、Y若しくはZr等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属と特性が近い金属を用いることもできる。更には、上記金属材料のほか、LiF若しくはCsI等のアルカリ金属ハロゲン化物等を挙げることもできる。
電子注入電極2の膜厚は有機発光層10等への電子注入能力の点から、できるだけ薄い方が好ましく、具体的には、10nm以下が好ましく、1nm以下がより好ましい。
なお、電子注入電極2上には補助電極を設けてもよい。これにより、有機発光層10への電子注入効率を向上させることができる傾向にあり、また、有機発光層10への水分又は有機溶媒の侵入を防止することができる傾向にある。補助電極の材料としては、仕事関数及び電荷注入能力に関する制限がないため、一般的な金属を用いることができるが、導電率が高く取り扱いが容易な金属を用いることが好ましい。また、特に電子注入電極2が有機材料を含む場合には、有機材料の種類や密着性等に応じて適宜選択することが好ましい。
補助電極に用いられる材料としては、Al、Ag、In、Ti、Cu、Au、Mo、W、Pt、Pd若しくはNi等が挙げられる。それらのなかでもAl若しくはAg等の低抵抗の金属を用いると電子注入効率を更に高めることができる傾向にあるので、より好ましい。また、TiN等の金属化合物を用いることにより一層高い封止性を得ることができる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。また、2種類以上の金属を用いる場合は合金として用いてもよい。このような補助電極は、例えば、真空蒸着法等によって形成可能である。
次に、上記有機EL素子100を製造するための、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子の製造方法は、上述した構成を有する有機EL素子、すなわち、対向するホール注入電極1及び電子注入電極2と、ホール注入電極1と電子注入電極2との間に配置される有機発光層10と、電子注入電極2と有機発光層10との間に配置される無機電子注入層12と、を備える有機EL素子の製造方法であって、無機電子注入層12を、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下の減圧環境下で形成する電子注入層形成工程を含むことを特徴とする方法である。
本発明の製造方法により上記有機EL素子100を形成する場合、無機電子注入層12は、上記電子注入層形成工程により有機発光層10の電子注入電極2側の面上に形成されることとなる。
有機発光層10上に無機電子注入層12を形成する方法としては、上述の減圧環境下で無機電子注入層12を形成可能な方法であれば特に制限されないが、例えば、蒸着法(真空蒸着法)、塗布法等を採用することができる。また、これらの形成方法の中でも、有機発光層10を損傷しにくいことから、蒸着法を採用することが好ましい。
蒸着法としては、例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法や、CVD等の化学蒸着法を用いることができる。なお、これらの中でも、抵抗加熱蒸着は、比較的容易に行うことができるとともに有機発光層10を損傷しにくいため特に好ましい。
電子注入層形成工程において、抵抗加熱蒸着により有機発光層10上に無機電子注入層12を形成する場合、例えば、以下の手順で行うことができる。
まず、基板4上にホール注入層1及び有機発光層10を順に積層した積層体を、抵抗加熱蒸着を行うための真空装置内に配置する。また、この真空装置内に、無機電子注入層12の構成材料を載せたボートを配置する。
そして、真空装置内に当初から存在するガスや、上述の積層体を形成した際に発生したガスを、例えば、クライオポンプ等の真空ポンプ等を用いて真空装置内から排出する。これにより、真空装置内を、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下となるように減圧する。このとき、残留ガス及び水素ガスが上記の圧力条件を満たすように減圧条件を調節するために、真空装置内の残留ガスの全圧及び水素ガス等の各成分の分圧を四重極質量分析計(QMS)等でモニターしながら減圧を行うことが好ましい。なお、残留ガス中の水素ガスの割合は、残留ガスの全圧に対する水素ガスの分圧の比から算出することができる。
ここで、蒸着により無機電子注入層12の形成を行うための前段階として原料の加熱を開始すると、真空装置内の残留ガスの圧力、水素ガスの分圧及び残留ガス中の水素ガスの割合が上昇する傾向がある。これは、真空装置内の水分が熱分解されて水素ガスが発生したり、真空装置内壁等に吸着された水素ガスが脱離したりすることが原因となっている。また、例えば、特開平7−26255号公報に記載されているように、金属の中には加熱により脱ガスするものがあり、これによってCO、CO、HO、H等の吸着ガスが発生する場合がある。また、このような真空装置内における残留ガスの圧力、水素ガスの分圧及び残留ガス中の水素ガスの割合の上昇は、有機発光層10等、有機EL素子における無機電子注入層12以外の層の形成を行う際にも生じる傾向がある。そのため、真空装置内を所定の減圧状態(初期減圧状態)にし、有機発光層10等を形成した後、続けて無機電子注入層12の形成を行う場合、この無機電子注入層12の形成時における真空装置内の減圧状態は、初期減圧状態よりも残留ガスの圧力、水素ガスの分圧及び残留ガス中の水素ガスの割合が上昇した状態となっている場合がある。したがって、本発明の有機EL素子の製造方法においては、無機電子注入層12の形成前に更に減圧を行うなどして、無機電子注入層12の形成時(成膜時)の真空装置内が、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下の減圧状態となるように十分に管理する必要がある。
なお、無機電子注入層12の形成中においては、残留ガスの圧力、水素ガス等の分圧及び残留ガス中の水素ガスの割合等は安定したものとなる。すなわち、本発明において規定する無機電子注入層12の形成時における残留ガスの圧力、水素ガス等の分圧及び残留ガス中の水素ガスの割合とは、上記の安定した状態での値を意味する。
また、水素ガスは分子量が小さく、沸点も低いため、真空ポンプ等で排出されにくく、真空装置内に長時間残留しやすい傾向がある。そのため、通常の方法で減圧しただけでは、真空装置内における残留ガス中の水素ガスの割合を60%以下にすることが困難な場合がある。したがって、残留ガス中の水素ガスの割合をより短時間でより確実に60%以下にするために、例えば、真空装置内で火花やプラズマ放電等を発生させ、水素ガスを水分に変化させて排出しやすくする等の方法を行うことが好ましい。
そして、上記真空装置内で、無機電子注入層12の構成材料を有機発光層10上に抵抗加熱法により蒸着することにより、無機電子注入層12を形成する。
このような減圧環境下で無機電子注入層12を形成する電子注入層形成工程を経て有機EL素子を製造することにより、長寿命化が図られた有機EL素子を得ることができる。
ここで、本発明の効果をより十分に得る観点から、無機電子注入層12は、残留ガスの圧力が5.0×10−4Pa以下の減圧環境下で形成することがより好ましく、2.0×10−4Pa以下の減圧環境下で形成することが特に好ましい。また、上記と同様の観点から、無機電子注入層12は、残留ガス中の水素ガスの割合が30%以下の減圧環境下で形成することがより好ましく、20%以下の減圧環境下で形成することが特に好ましい。
更に、本発明においては、無機電子注入層12は、水素ガスの分圧が1.0×10−4Pa以下の減圧環境下で形成することが好ましく、8.0×10−5Pa以下の減圧環境下で形成することがより好ましく、5.0×10−5Pa以下の減圧環境下で形成することが特に好ましい。これにより、無機電子注入層12の形成過程において無機電子注入層12の構成材料が水素ガスによって還元されることをより十分に防止することができ、本発明の効果をより十分に得ることが可能となる。
また、より寿命の長い有機EL素子をより確実に製造する観点から、無機電子注入層12は、残留ガス中の水素ガスの割合が残留ガス中の窒素ガスの割合以下である減圧環境下で形成することが好ましい。
更に、ダークスポットの発生や素子特性のバラツキの発生がより一層抑制された有機EL素子を得る観点から、無機電子注入層12は、残留ガス中の水分の分圧が、1.0×10−4Pa以下の減圧環境下で形成することが好ましく、5.0×10−5Pa以下の減圧環境下で形成することがより好ましい。
電子注入層形成工程において、無機電子注入層12の成膜レートについては特に制限されないが、0.005〜1nm/秒とすることが好ましく、0.01〜0.5nm/秒とすることがより好ましい。成膜レートが上記下限値未満であると、成膜レートが上記範囲内である場合と比較して、成膜中の無機電子注入層12が水素ガスの影響を受けやすくなり、機能の劣化が生じて、得られる有機EL素子の寿命が短くなる傾向がある。また、成膜レートが上記上限値を超えると、成膜レートが上記範囲内である場合と比較して、無機電子注入層12の膜厚を制御することが困難となり、機能の劣化やバラツキ等が生じやすくなる傾向がある。
本発明の有機EL素子の製造方法は、無機電子注入層12を上述の電子注入層形成工程により形成することを特徴とする方法であり、無機電子注入層12以外の層については、従来の方法により形成することができる。
有機EL素子100を製造する場合には、例えば、まず、用意した基板4上に、スパッタリング法や蒸着法等の方法によりホール注入電極1を形成し、次いで、ホール注入電極1上に有機発光層10を形成する。有機発光層10の形成方法は、有機発光層10の構成材料に応じて、従来の方法を適宜選択して採用することができ、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法若しくは塗布法等を採用することができる。
そして、有機発光層10上に、上述した電子注入層形成工程により無機電子注入層12を形成した後、この無機電子注入層12上に電子注入電極2を、例えば、真空蒸着法等により形成することにより、有機EL素子100が完成する。
こうして得られた有機EL素子100は、無機電子注入層12が上述した電子注入層形成工程により形成されているため、十分に長い寿命を得ることができる。
以上、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態、及び、それにより製造される有機EL素子について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の製造方法により製造される有機EL素子は、図2に示す有機EL素子200のように、上述した有機EL素子100の基板4上に積層された各層の順番が逆になっていてもよい。すなわち、基板4上に電子注入電極2、無機電子注入層12、有機発光層10及びホール注入電極1が順次積層された、トップ・エミッション型の有機EL素子であってもよい。有機EL素子200のように各層を積層することにより、基板4とは反対側からの光取り出しが容易になる。この場合には、電子注入電極2が、第1実施形態において説明したホール注入電極1の光学的条件及び膜厚条件を満たすことが好ましい。そして、本発明の製造方法により有機EL素子200を製造する場合には、上述したような電子注入層形成工程により無機電子注入層12を電子注入電極2上に形成することとなる。
図3は、本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。図3に示す有機EL素子300は、図1における有機EL素子100のホール注入電極1と有機発光層10との間にホール注入層16を設けた構造を有している。
ホール注入層16の構成材料は、従来の有機EL素子においてホール注入層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、アリールアミン、フタロシアニン、ポリアニリン/有機酸、ポリチオフェン/ポリマー酸などの有機化合物材料、又は、ゲルマニウム若しくはシリコン等の金属若しくは半金属の酸化物などを用いることができる。これらのホール注入性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、本発明の製造方法により有機EL素子300を製造する場合には、ホール注入電極1上に、例えば、真空蒸着法等によりホール注入層16を形成することとなる。
このホール注入層16を備えることにより、有機EL素子300は、ホール注入電極1からのホールの注入を容易にし、ホールを安定に輸送し、更には有機発光層10からの電子を妨げることができる。それにより、有機EL素子300の発光効率が向上するとともに駆動電圧が全体的に低下する傾向にある。
図4は、本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。図4に示す有機EL素子400は、図3における有機EL素子300のホール注入層16と有機発光層10との間にホール輸送層18を設けた構造を有している。
ホール輸送層18の構成材料は、従来の有機EL素子においてホール輸送層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、低分子材料、高分子材料のいずれのホール輸送性材料も使用可能である。ホール輸送性低分子材料としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが挙げられる。また、ホール輸送性高分子材料としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸共重合体(Pani/PSS)などが挙げられる。これらのホール輸送性材料は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、本発明の製造方法により有機EL素子400を製造する場合には、ホール注入層16上に、例えば、真空蒸着法等によりホール輸送層18を形成することとなる。
このような構造を有することにより、有機EL素子300におけるホールの移動度が向上し、キャリアの再結合確率が向上し、有機発光層10からホール輸送層18への電子の移動を抑制することができるので、発光効率が向上する傾向にある。
図5は、本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。図5に示す有機EL素子500は、図4における有機EL素子400の無機電子注入層12と有機発光層10との間に電子輸送層14を設けた構造を有している。
電子輸送層14の構成材料は、従来の有機EL素子において電子輸送層に用いられているものであれば特に限定されることはなく、低分子材料、高分子材料のいずれの電子輸送材料も使用可能である。電子輸送性低分子材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、フェナントロリン及びその誘導体、並びにこれらの化合物を配位子とする金属錯体などが挙げられる。また、電子輸送性高分子材料としては、ポリキノキサリン、ポリキノリンなどが挙げられる。これらの電子輸送性材料は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。更に、電子輸送層14は無機材料からなる層であってもよく、無機材料としては、例えば、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化タンタル(Ta)、酸化マンガン(MnO)、酸化ニオブ(NbO)等の遷移金属酸化物等が挙げられる。
そして、本発明の製造方法により有機EL素子500を製造する場合には、有機発光層10上に、例えば、真空蒸着法等により電子輸送層14を形成した後、この電子輸送層14上に、上述した電子注入層形成工程により無機電子注入層12を形成することとなる。
このような構造を有することにより、有機EL素子500の各材料の選択肢を広げることができるので、用途に応じた有機EL素子500を得ることができる傾向にある。
ホール注入層16、ホール輸送層18及び電子輸送層14の好適な厚さは、いずれも1〜100nmである。
更に、図示していないが、異なる構成材料(材料の種類、材料の含有割合)を含有する発光層を複数積層して設けてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、用意したガラス基板上に、ホール注入電極としてのITOを、スパッタ法により100nmの膜厚に成膜し、パターニングした。
次に、ITOが形成されたガラス基板を、抵抗加熱蒸着を行うための真空装置内に配置し、クライオポンプを用いて装置内を圧力(残留ガスの全圧)が1×10−4Pa以下になるまで減圧した後、ITO上にTPDを抵抗加熱蒸着することで、20nmの膜厚を有するホール注入層を形成した。
更に、上記真空装置内で、ホール注入層上に、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを、体積比97:3の割合で抵抗加熱蒸着により共蒸着し、100nmの膜厚を有する有機発光層を形成した。
Figure 2005276704

Figure 2005276704
次に、上記真空装置内に、酸化モリブデン(MoO)を載せたTaボートと、リチウム(Li)を載せた抵抗加熱用アルミナコート付きTaボートとを配置した。そして、抵抗加熱を行い、酸化モリブデン及びリチウムの蒸発を確認し、蒸発のレートを安定させた。更に、真空装置内で10分間火花を発生させて装置内の水素ガスを水分に変化させながら、クライオポンプにより装置内を減圧した。このとき、装置内の残留ガスの全圧及び水素ガスの分圧が所定の圧力となるように四重極質量分析計(QMS)でモニターしながら減圧を行った。その後、酸化モリブデンとリチウムとを、体積比1:2の割合で抵抗加熱蒸着により共蒸着した(電子注入層形成工程)。このとき、成膜レートは0.03nm/秒とした。これにより、酸化モリブデン及びリチウムからなる膜厚3nmの無機電子注入層を形成した。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
そして、上記真空装置内で、無機電子注入層上にアルミニウムを抵抗加熱蒸着し、100nmの膜厚を有する電子注入電極を形成した。これにより、実施例1の有機EL素子を得た。
(実施例2)
電子注入層形成工程において、5分間火花を発生させて装置内を減圧した以外は実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を得た。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
(実施例3)
電子注入層形成工程において、3分間火花を発生させて装置内を減圧した以外は実施例1と同様にして、実施例3の有機EL素子を得た。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
(実施例4)
電子注入層形成工程において、1分間火花を発生させて装置内を減圧した以外は実施例1と同様にして、実施例4の有機EL素子を得た。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
電子注入層形成工程において、30秒間火花を発生させて装置内を減圧した以外は実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を得た。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
(比較例2)
電子注入層形成工程において、火花を発生させずに装置内を減圧した以外は実施例1と同様にして、比較例2の有機EL素子を得た。電子注入層形成工程における電子注入層形成中の真空装置内の残留ガスの全圧、水素ガスの分圧、窒素ガスの分圧、及び水分の分圧を四重極質量分析計(QMS)で測定した結果を表1に示す。
Figure 2005276704
<素子特性評価試験>
実施例1〜4及び比較例1〜2の有機EL素子に、100mA/cmの一定電流を流して連続発光させ、このときの輝度半減寿命を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2005276704
表2に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造された有機EL素子(実施例1〜4)は、比較例1〜2の製造方法により製造された有機EL素子に比べて輝度半減寿命が長く、長寿命化が図られていることが確認された。
本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の一例を示す模式断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の他の一例を示す模式断面図である。
符号の説明
1…ホール注入電極(陽極)、2…電子注入電極(陰極)、4…基板、10…有機発光層、12…無機電子注入層、14…電子輸送層、16…ホール注入層、18…ホール輸送層、100,200,300,400,500…本発明の製造方法により製造される有機EL素子、P…電源。

Claims (6)

  1. 対向するホール注入電極及び電子注入電極と、
    前記ホール注入電極と前記電子注入電極との間に配置される有機発光層と、
    前記電子注入電極と前記有機発光層との間に配置される無機電子注入層と、
    を備える有機EL素子の製造方法であって、
    前記無機電子注入層を、残留ガスの全圧が1.0×10−3Pa以下、且つ、前記残留ガス中の水素ガスの割合が60%以下の減圧環境下で形成する電子注入層形成工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 前記電子注入層形成工程において、前記水素ガスの分圧が1.0×10−4Pa以下の減圧環境下で、前記無機電子注入層を形成することを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記残留ガス中の前記水素ガスの分圧が、前記残留ガス中の窒素ガスの分圧以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記無機電子注入層が、遷移金属酸化物を含有する層であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記遷移金属酸化物が、Mo、Nb、W、Ta、Y、Cr、Re、Co、V及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の金属の酸化物であることを特徴とする請求項4記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記無機電子注入層が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する層であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
JP2004090291A 2004-03-25 2004-03-25 有機el素子の製造方法 Withdrawn JP2005276704A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004090291A JP2005276704A (ja) 2004-03-25 2004-03-25 有機el素子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004090291A JP2005276704A (ja) 2004-03-25 2004-03-25 有機el素子の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005276704A true JP2005276704A (ja) 2005-10-06

Family

ID=35176125

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004090291A Withdrawn JP2005276704A (ja) 2004-03-25 2004-03-25 有機el素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005276704A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1982562A1 (en) * 2006-02-06 2008-10-22 LG Chem, Ltd. Organic light emitting device using inorganic insulating layer as an electron injecting layer and method for preparing the same
JP2014199789A (ja) * 2012-05-04 2014-10-23 株式会社半導体エネルギー研究所 発光素子の作製方法、及び成膜装置
JP2017022369A (ja) * 2015-07-09 2017-01-26 株式会社Joled 有機el素子

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1982562A1 (en) * 2006-02-06 2008-10-22 LG Chem, Ltd. Organic light emitting device using inorganic insulating layer as an electron injecting layer and method for preparing the same
EP1982562A4 (en) * 2006-02-06 2011-10-26 Lg Chemical Ltd ORGANIC ELECTROLUMINESCENCE DEVICE USING INORGANIC INSULATING LAYER AS ELECTRON INJECTION LAYER AND METHOD OF MANUFACTURING
JP2014199789A (ja) * 2012-05-04 2014-10-23 株式会社半導体エネルギー研究所 発光素子の作製方法、及び成膜装置
US9578718B2 (en) 2012-05-04 2017-02-21 Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. Method for manufacturing light-emitting element and deposition apparatus
JP2017022369A (ja) * 2015-07-09 2017-01-26 株式会社Joled 有機el素子

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4751022B2 (ja) 有機金属混合層を有する表示装置
JP5380275B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
US8253325B2 (en) Organic light-emitting device with microcavity structure and differing semi-transparent layer materials
JP2005251587A (ja) 有機el素子
JP4611578B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセント素子
Wu et al. Poly (p‐phenylene vinylene)/tris (8‐hydroxy) quinoline aluminum heterostructure light emitting diode
US20100227422A1 (en) Method for manufacturing organic electroluminescence device
US6287712B1 (en) Color-tunable organic light emitting devices
WO2007091548A1 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2009037813A (ja) 有機el装置の製造方法
JP5017820B2 (ja) エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法
JPWO2009142030A1 (ja) 有機エレクトロルミネセンス素子、表示装置及び照明装置
JP6662049B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP4770699B2 (ja) 表示素子
JP2008300270A (ja) 発光素子
Vu et al. Ultrathin PVK charge control layer for advanced manipulation of efficient giant CdSe@ ZnS/ZnS quantum dot light-emitting diodes
JP2006114844A (ja) 有機el素子材料の選択方法、有機el素子の製造方法及び有機el素子
JP2005108730A (ja) 有機el素子及びその製造方法
JP5791129B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス照明装置
JP2010205427A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2010205434A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
KR100796588B1 (ko) 유기전계발광소자의 제조방법
JP2005108692A (ja) 有機el素子及びその製造方法
JP2005276704A (ja) 有機el素子の製造方法
KR100595928B1 (ko) 혼합 호스트 재료를 채용한 점선 도핑 구조의 발광층을갖는 유기발광소자

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20070605