JP2005284260A - 異方性有機膜およびその製造方法並びに偏光膜および偏光素子 - Google Patents

異方性有機膜およびその製造方法並びに偏光膜および偏光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】湿式成膜法により、容易に分子配向度の高い異方性有機膜を得る。
【解決手段】湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜の結晶構造を変化させる。成膜された膜を酸または塩基のガスと接触させる、或いは、エージング処理することにより膜の結晶構造を変化させる。膜の結晶構造を変化させることにより、容易に分子配向度の高い異方性有機膜を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光板等に有用な湿式成膜法による異方性有機膜およびその製法と、この異方性有機膜を使用した偏光膜および偏光素子に関するものである。
LCD(液晶表示ディスプレイ)では、表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられている。OLED(有機EL素子)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
従来、これらの偏光板(偏光素子)の製造には、ヨウ素や二色性を有する有機色素を、ポリビニルアルコール等の高分子材料に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して、二色性色素を配向させる方法(例えば、非特許文献1参照)が広く使用されてきた。
しかしながら、用いる色素や高分子材料によっては耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、液晶装置を製造する際、偏光フィルムの貼り合わせの歩留りが悪い等の問題があった。
そのため、ガラスや透明フィルムなどの基板上に、二色性色素を含む溶液を塗布する湿式成膜法にて二色性色素を含む膜を形成し、分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させることにより、得られた異方性色素膜を用いる方法(例えば、特許文献1参照)が検討されている。
この手法においては、上記の手法と同様に色素に対して高い分子配向性や高い二色性が求められる他に、二色性色素を基板上に堆積、配向させる方法や二色性色素分子の配向を制御させるための基板表面の処理など、二色性色素を含む異方性色素膜形成のためのプロセス選択と、そのプロセスに適した二色性色素、および該色素を含む膜形成用組成物が要求される。
しかし、従来の方法では、分子の配向は、主に色素溶液の調製、色素の塗布および色素液の乾燥過程の成膜前に行われる操作で規定されている。特に、乾燥過程は、分子の配向を規定するために重要な因子であり、用いる膜形成用組成物ごとに乾燥過程の温度、湿度等の最適条件が異なるうえに、特殊な条件が必要なため(例えば特許文献2)、より簡便な方法で容易に異方性色素膜の分子配向度を高められる方法が求められていた。また、湿式成膜法による異方性色素膜の製法の利点として、例えば、光配向法により、あらかじめ基板にパターンニングすることにより、一枚の基板上に異方性の異なる部位を容易に作製できることが挙げられる。しかしながら、有機膜について成膜後に分子配向のパターンニングを行う方法は知られていなかった。
特表平8−511109号公報 特表2002−528758号公報 入江正浩監修 「機能性色素の応用」 株式会社シーエムシー出版、1996年4月15日発行、96ページから106ページ
本発明は、湿式成膜法により、容易に分子配向度の高い異方性有機膜を得る方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、この方法により製造された異方性有機膜と、この異方性有機膜からなる偏光膜と、この偏光膜を用いた偏光素子を提供するものである。
本発明の第1の態様にかかる異方性有機膜の製造方法は、湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜の結晶構造を変化させることを特徴とする。
即ち、本発明者らは、鋭意検討した結果、湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜後に、膜の結晶構造を変化させることにより、容易に分子配向度の高い異方性有機膜を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
膜の結晶構造を変化させることにより得られた異方性有機膜は、高い異方性を示し、カラー表示用偏光膜として必要とされるニュートラルブラックな偏光膜や、高二色比の偏光膜を形成することができる。
また、本発明の第2の態様にかかる異方性有機膜の製造方法は、湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜を酸または塩基のガスと接触させることを特徴とする。
異方性有機膜を酸または塩基ガスに接触させることにより、異方性有機膜の結晶構造を変化させることができ、分子配向度の高い異方性有機膜を得ることができる。
また、本発明の第3の態様にかかる異方性有機膜の製造方法は、湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜をエージング処理することを特徴とする。
異方性有機膜をエージング処理することにより、異方性有機膜の結晶構造を変化させることができ、分子配向度の高い異方性有機膜を提供できる。
本発明において、異方性有機膜に含有される有機化合物は、水溶性であることが好ましく、特に、酸性基、好ましくはスルホ基、カルボキシル基、およびリン酸基よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を有する有機化合物が好ましい。
この有機化合物としては、アゾ化合物や縮合多環系化合物が挙げられる。
本発明の異方性有機膜は、このような本発明の異方性有機膜の製造方法により製造されたものである。
本発明の偏光膜は、このような本発明の異方性有機膜からなるものである。
本発明の偏光素子は、このような本発明の偏光膜を使用したものである。
本発明の異方性有機膜の製造方法によれば、湿式成膜法により分子配向度の高い異方性有機膜を容易に得ることができる。該方法により、異方性が向上し、例えば有機膜の二色比向上や色変化といった、有機膜の光学的性質が変化する。特に、本発明の異方性有機膜の製造方法によれば、成膜後の膜の結晶構造を変化させるため、成膜前のプロセスに依存することなく、分子配向度の高い異方性有機膜を容易に得ることができる。しかも、膜の一部分のみについて結晶構造を変化させることによりパターンニング等を施すことも可能となる。
このような本発明の異方性有機膜の製造方法により得られた本発明の異方性有機膜は、高い異方性を示し、カラー表示用偏光膜として必要とされるニュートラルブラックな偏光膜や、低彩度で、高コントラスト比、高二色比の偏光膜を形成することができる。また、このような本発明の異方性有機膜よりなる偏光膜を使用して製造された本発明の偏光素子は、液晶表示装置等に使用され、高いコントラストを生み出すことができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の記載により限定されるものではない。
本発明に係る湿式成膜法とは、色素等の有機化合物と、必要に応じて界面活性剤などの各種添加剤を、水および/または有機溶剤に溶解することにより調製される異方性有機膜形成用組成物(成膜用組成物)を、ガラスや樹脂等にて形成されたフィルム状、シート状、或いは板状の基材上に塗布、乾燥させることにより有機膜を作製する方法をいう。湿式成膜法による異方性有機膜の成膜方法については後述する。
また、本発明における異方性有機膜とは、膜面内の任意の2方向、および膜の厚み方向の、合わせて3方向のうち、2方向における電磁気学性質に異方性を有する膜を意味する。電磁気学的性質としては、吸収、屈折率などの光学的性質、抵抗、容量等の電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折などの光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差板、導電異方性膜などがある。この異方性有機膜は、実質的に色素等の有機化合物のみからなる膜であっても良く、また本発明の目的とする異方性有機膜の性能を損なわない範囲で、それ以外の成分(例えば各種添加剤など)を含有していても良い。
本発明では、湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、湿式成膜後に、得られた膜の結晶構造を変化させる。
なお、ここで湿式成膜により得られた膜とは、異方性有機膜形成用組成物(成膜用組成物)を基材上に塗布した後の膜をさし、通常は乾燥後の膜をさす。
また、結晶構造を変化させるとは、分子の配向や分子間の距離等を変化させることをさし、膜の結晶構造の変化は、処理前および処理後のX線回折スペクトルの比較から実験的に観測することができる。即ち、異方性有機膜は、薄膜評価用X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000PC」インプレーン光学系)或いはこれと同等の装置を用いることで当該膜由来のX線回折スペクトルが得られる。かかる異方性有機膜の結晶構造の変化は、上記装置で測定されるCuKαに対するX線回折ピークのブラッグ角(2θ)の変化で定義される。色調変化、二色比向上などの結晶構造変化による本発明の効果を得るには、結晶構造の変化により、上記X線回折ピークの少なくとも一つが、ブラッグ角(2θ)で通常0.25度以上5度以下、好ましくは0.4度以上3度以下、特に0.5度以上2.5度以下変化することが好ましい。
<結晶構造を変化させる方法>
膜の結晶構造を変化させる方法としては、特に限定されるものではないが、成膜後の膜(以下「被処理膜」と称す場合がある。)を酸性または塩基性ガスに接触させる方法、或いは、被処理膜をエージング処理する方法等が挙げられる。
以下に、各処理方法について説明する。
[酸性または塩基性ガスに接触させる方法]
結晶構造を変化させる第一の方法として、湿式成膜後の膜を酸性または塩基性ガスに接触させる方法がある。酸性または塩基性ガスに接触させることにより、短時間で結晶構造を変化させることができる。
本発明における酸性ガスまたは塩基性ガスとは、常温常圧下、すなわち25℃、1気圧で、揮発性のある酸性または塩基性物質のガスを指す。ここで、酸性物質とは該物質の水溶液がpH7未満のものであり、塩基性物質とは該物質の水溶液がpH7以上のものである。
このようなガスとしては、例えば、ハロゲン化水素、アンモニア、沸点が200℃以下の有機酸、有機塩基等が挙げられる。具体的には、塩化水素、臭化水素、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン等の沸点が80℃以下のものが好ましい。中でも、沸点が−30℃以下のものが好ましく、塩化水素、臭化水素、アンモニアが特に好ましい。
被処理膜を酸性または塩基性ガスと接触させる方法としては、被処理膜に酸性または塩基性ガスを噴射する方法;被処理膜と酸性または塩基性ガス、液体または固体の酸性又は塩基性化合物を共存させる方法;被処理膜と酸性又は塩基性化合物の溶液を共存させる方法等がある。
用いる酸性および塩基性ガスの濃度は、時間に依存するため、任意に選択するが、濃度を高くすると、結晶状態の変化に要する時間は短くなる。
被処理膜を酸性または塩基性ガスと接触させる時間は、被処理膜の種類、酸性または塩基性ガスの種類、濃度に依存するが、過剰のガスによる被処理膜の分解や、ガスの吸湿性による被処理膜の溶解を避けるためには、96時間以内が好ましく、更に好ましくは24時間以内、特に好ましくは1時間以内、最も好ましくは30分以内である。接触時間の下限についても被処理膜の種類、酸性または塩基性ガスの種類、濃度、所望とする結晶構造の変化度合いにより異なるが、通常は10分以上である。
また、被処理膜と酸性または塩基性ガスとを接触させる際の温度は、−20℃以上100℃以下が好ましく、更に好ましくは0℃以上50℃以下である。
一般に、酸性または塩基性ガスは吸湿性があるため、被処理膜を溶解させないためは、被処理膜と酸性または塩基性ガスとを接触させる際の湿度は低い方が好ましく、具体的には80%以下が好ましいが、ガスの濃度、ガスと接触させる時間等にもよるため、必ずしもこの限りではない。
被処理膜と酸性または塩基性ガスとを接触させる際、その系内に、接触させるガスおよび被処理膜と化学反応を起こさない気体が共存することは特に問題はなく、一般的には空気の共存下で行うが、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いた方が好ましい。
被処理膜を酸性または塩基性ガスと接触させた後は、通常被処理膜に不活性ガスを吹き付けたり、被処理膜を減圧下に置くことにより、被処理膜からガスを取り除くことが好ましい。これは、残存ガスによって、形成された異方性有機膜が吸湿して溶解するのを防ぐためであり、特に得られた異方性有機膜を偏光素子として使用する際には、重ね合わせる基材の腐食を防止する効果もある。
[エージング処理する方法]
結晶構造を変化させる第二の方法として、湿式成膜後の膜をエージング処理する方法がある。
エージング処理は、通常、空気中、常圧下で行うが、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、あるいは減圧下で行っても良い。温度は通常0℃以上、好ましくは15℃以上で、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。湿度は、80%以下が好ましい。
特に、結晶構造の変化に結晶中の結晶水の放出を伴う場合には、温度は、50℃以上100℃以下、湿度は40%以下であることが好ましい。また、エージングの期間としては、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、30日以内が好ましい。
なお、酸性または塩基性ガスによる処理とエージング処理とでは、用いる化合物、諸条件により、必要とされる時間は異なるが、前者の方が短時間で結晶構造を変化させることができる。
<湿式成膜法>
以下に、本発明の湿式成膜法による異方性有機膜の成膜方法について説明する。
前述の如く、本発明に係る湿式成膜法による異方性有機膜は、色素等の有機化合物と、必要に応じて界面活性剤などの各種添加剤を、水および/または有機溶剤に溶解することにより調製される異方性有機膜形成用組成物(成膜用組成物)を、ガラスや樹脂等にて形成されたフィルム状、シート状、或いは板状の基材上に塗布、乾燥させることにより作製される。
<異方性有機膜形成用組成物(成膜用組成物)>
成膜用組成物に含まれる有機化合物は、水や有機溶剤等の単独または2種以上の混合物からなる溶剤に溶解または微結晶となって分散することができるものが適している。
後述するように、異方性有機膜を作製する場合、溶剤としては、水または水と水混和性のある有機溶剤の混合物を使用するのが好ましい。従って、該有機化合物は、水溶性化合物であることが好ましい。その溶解度は、常温常圧下、具体的には25℃、1気圧において水への溶解度が0.1重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、35重量%以下であることがさらに好ましい。
これは、有機化合物の水等の溶剤への溶解度が高すぎると、高配向の異方性膜を得るのに好ましい、良好な有機化合物分子の会合状態が形成しにくくなるおそれがあり、逆に溶剤への溶解性が低すぎると、湿式成膜法による成膜に供することが難しくなるためである。
また、該有機化合物は、酸性基を有することが好ましく、酸性基の数は、1以上10以下であることが好ましく、6以下であることがさらに好ましい。これは、酸性基の数が多すぎると有機化合物の水等の溶剤への溶解度が非常に高くなるためである。さらに、酸性基としては、溶解性および導入の容易さの観点から、スルホ基、カルボキシル基或いはリン酸基のいずれか、またはそれらの2種以上を含むことが好ましい。
該有機化合物は、分子量が、遊離酸の形で通常200以上、好ましくは300以上であり、また通常2000以下、好ましくは1500以下である。分子量が上記上限値を超えると、発色性の低下や吸収スペクトルピークが短波長化するという問題が生じるおそれがある。
また、該有機化合物は、酸基の一部が塩型をとっているものであっても良く、塩型の有機化合物と遊離酸型の有機化合物が混在していても良い。ここで、酸性基が遊離酸型をとるか、塩型をとるかは、有機化合物のpKaと成膜用組成物のpHに依存する。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、炭素数1〜16程度のアルキル基、炭素数1〜12程度のヒドロキシアルキル基で置換されていても良いアンモニウムの塩または有機アミンの塩、などが挙げられる。
有機アミンの例として、炭素数1〜6程度の低級アルキルアミン、ヒドロキシ基で置換された炭素数1〜6程度の低級アルキルアミン、カルボキシル基で置換された炭素数1〜6程度の低級アルキルアミン等が挙げられる。有機化合物がこれらの塩型である場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していても良い。
有機化合物としては、下記に挙げる化合物群の中から上記本発明の製造方法により、結晶構造の変化を伴うものであれば、特に限定されるものではない。
本発明の製造方法は、その効果として、有機膜の色変化が挙げられる。一般的に、色変化としては、例えば、メチルオレンジなど、水素イオン濃度の指示薬の酸および塩基環境における色変化が知られている。しかしながら、この現象は、分子の構造の可逆的変化を伴うものであり、本発明とは異なる。ここでいう、分子の構造の可逆的変化とは、例えば、酸や塩基により、分子のπ共役系が変化することなどを意味する。
すなわち、本発明の製造方法により得られる異方性有機膜は、上記可逆的変化を伴うものではなく、結晶構造を変化させた後、再度、酸・塩基処理或いはエージング処理したとしても、その結晶構造および物性が処理前のものに戻るものではない。
有機化合物としては、通常色素、例えば、アゾ系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、縮合多環系色素(ペリレン系、オキサジン系等)等が用いられる。
その具体例としては、米国特許2,400,877号公報、特開平1−161202号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−248105号公報、特開平2−309302号公報、特開平3−78703号公報、特開平9−230142号公報、特表2003−534563号公報、前記特許文献1、特表2001−504238号公報、特表2002−515075号公報等に記載の有機化合物、或いは、以下の文献A〜Cに示される有機化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
A:Dreyer, J. F., Phys. And Colloid Chem., 1948, 52,808.,“The Fixing of Molecular Orientation”
B:Dreyer, J. F., Journal de Physique, 1969, 4,114., “Light Polarization From Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals”
C:J. Lydon, “Chromonics” in “Handbook of Liquid Crystals Vol.2B: Low Molecular Weight Liquid Crystals II”, D. Demus, J. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiessm, V. Vill ed., Willey-VCH, 981-1007.pp, (1998)
中でも、有機化合物としてはアゾ化合物、縮合多環系化合物が好ましい。
アゾ化合物とは、アゾ基を少なくとも1つ以上持つ有機化合物をいい、そのアゾ基の数は好ましくは1以上、更に好ましくは2以上で、好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。アゾ化合物の分子量は200以上、特に350以上が好ましく、5000以下、特に3500以下が好ましい。本発明においては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、水酸基等の可溶性基を有するアゾ化合物が好ましい。
アゾ化合物の具体例を以下の(I−1)〜(I−30)に挙げるが、本発明に係るアゾ化合物は何らこれらの例示化合物に限定されるものではない。
Figure 2005284260
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縮合多環系化合物とは、ペリレン骨格、ペリノン骨格、キナクリドン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、アントラキノン骨格、キノフタロン色素、インジゴ骨格、チオインジゴ骨格、金属錯体色素およびそれらの誘導体をいい、その炭素数としては好ましくは8以上更に好ましくは12以上で、好ましくは60以下、更に好ましくは40以下であり、分子量としては好ましくは300以上更に好ましくは400以上で、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下である。本発明においては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、水酸基等の可溶性基を有する縮合多環系化合物が好ましい。
中でも、ペリレン骨格を有するものが好ましく、その具体例を以下の(II−1)〜(II−34)に挙げるが、本発明に係る縮合多環系化合物は何らこれらの例示化合物に限定されるものではない。
Figure 2005284260
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上記色素等の有機化合物は単独で良好な異方性有機膜を形成できるが、異方性有機膜の分子配向の制御や、得られた異方性有機膜の調色改良等の目的によっては、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜、これらの2種以上を併用、または他の有機化合物と混合しても良い。
なお、基材への濡れ性、塗布性を向上させるため、成膜用組成物に必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えることができる。この界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれも使用可能であり、その添加濃度は、通常成膜用組成物中の濃度として0.05〜8重量%程度である。
更に上記以外の添加剤として、“Additives for Coating”, Edited by J. Bieleman, Willey-VCH, (2000)記載の公知の添加剤を用いることができる。
本発明で用いる色素等の有機化合物を溶解する溶剤としては、水および有機溶剤のいずれか、またはそれらの2種以上の混合物を用いても良いが、製造の安全性の観点から、水または、水と水混和性のある有機溶剤の混合物を用いるのが好ましい。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等の単独または2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤に有機化合物を溶解ないし微分散させる濃度としては、溶液塗布の操作性の観点からは、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。
これらの溶剤に色素等の有機化合物を溶解ないし微分散させてなる成膜用組成物のpHは通常5〜9程度である。
なお、湿式成膜法により高い分子配向の異方性有機膜を得るには、成膜用組成物中において色素等の有機化合物がリオトロピック液晶状態に代表されるような良好な分子間相互作用による会合体を形成していることが好ましい。このために、前述のように、成膜用組成物に用いる有機化合物の分子量や成膜用組成物中の濃度を適宜設定することが好ましい。
<基材>
湿式成膜法に使用される基材としては、ガラスやトリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロースまたはウレタン系の、フィルム、シート、板等が挙げられる。なお、この基材表面には、塗布される成膜用組成物中の有機化合物分子の配向方向を制御するために、「液晶便覧」(丸善株式会社、平成12年10月30日発行)第226頁〜第239頁などに記載の公知の方法により、配向処理層を形成していても良い。
<湿式成膜法による膜の形成>
本発明における湿式成膜法による成膜用組成物の塗布法としては、原崎勇次著「コーティング工学」(株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行)第253頁〜第277頁、または市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」(株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行)第118頁〜第149頁などに記載の公知の方法や、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法などで、上記基材に成膜用組成物を塗布して乾燥する方法を採用することができる。
この際、基材には上述の如く塗布に先立ち予め配向処理を施しておいても良い。
塗布時の温度は通常0〜80℃、湿度は通常10〜80%RH程度である。また、乾燥時の温度は通常0〜120℃、湿度は通常10〜80%RH程度である。
このようにして形成される本発明の異方性有機膜の膜厚は、通常乾燥後の膜厚で、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは50μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
このようにして得られた異方性有機膜を偏光膜として使用する際には、中庸な色調(ニュートラルブラック)の膜が好ましく、具体的にはJIS Z 8722に定められた方法により測定した色素膜の(透過物体)色が、L***表色系において、√{(a*+(b*}で表されるC*が、C*≦30であることが好ましく、C*≦10がより好ましく、C*≦5がさらに好ましい。ここでC*とは彩度を示し、C*=0のとき無彩色である。
また、可視光波長領域における該異方性有機膜の透過率が好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは44%以上を満たすものが、表示素子、特にカラー表示素子用偏光子として好ましい。
湿式成膜後に結晶構造を変化させることにより分子配向性を高めた本発明の異方性有機膜は高い二色比を示すが、その二色比は5以上のものが好ましく、より好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。
なお、湿式成膜法にて形成された異方性有機膜は、通常、機械的強度が低いので、必要に応じ、この上に保護層を設けて使用しても良い。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロースまたはウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、実用に供する。また、本発明の異方性有機膜をLCDやOLEDなどの各種の表示素子に偏光フィルター等として用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板などに直接、成膜用組成物を塗布、乾燥して異方性有機膜を形成したり、異方性有機膜を形成した基材をこれら表示素子の構成部材に用いることができる。
<異方性色素膜の応用>
本発明により製造された異方性有機膜は、光吸収の異方性を利用し、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能するほか、膜形成プロセスと基材や色素を含有する組成物の選択により、屈折率異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に適用可能な偏光素子とすることができる。
本発明の異方性有機膜を基材上に形成し偏光素子として使用する場合、形成された異方性有機膜そのものを使用しても良く、また該異方性有機膜上に上記のような保護層のほか、粘着層、反射防止層など、様々な機能をもつ層を積層形成し、積層体として使用しても良い。
特に、本発明の異方性有機膜は、従来の偏光板のように耐熱性の弱いポリマーを含まず、ガラスなどの高耐熱性基材上に直接形成することが可能であり、高耐熱性の偏光素子を得ることができる点から、液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途に使用できる点が好ましい。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、X線回折スペクトルは薄膜評価用X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000PC」インプレーン光学系)を用いて、CuKαに対しアウトオブプレーン測定とインプレーン測定によって得た。アウトオブプレーン測定は、X線入射を異方性有機膜の吸収軸方向および偏光軸方向の2方向から実施した。インプレーン測定は、X線入射方向を吸収軸に垂直な回折面および偏光軸に垂直な回折面をそれぞれ観察する2方向から実施した。
また、L*、a*、およびb*の値はJIS Z 8722に定められた方法に従い分光光度計により異方性有機膜の透過率を測定した後、JIS Z 8701およびZ 8729に従って算出した。なお、C*は彩度を示し、次式により計算した。
*=√{(a*+(b*
処理前と処理後の基板の色差(ΔE*ab)は、JIS Z8730に従って、次式により算出した。
ΔE*ab=√{(ΔL*)+(Δa*+(Δb*
ΔL*=(処理前のL*)−(処理後のL*
Δa*=(処理前のa*)−(処理後のa*
Δb*=(処理前のb*)−(処理後のb*
コントラスト比(CR)はヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で異方性有機膜の透過率を測定した後、JIS Z8701に従い、XYZ表色系におけるY値を算出し、次式により計算した。
コントラスト比(CR)=Yz/Yy
Yy:有機膜の吸収軸方向の偏光に対する透過色のY値
Yz:有機膜の偏光軸方向の偏光に対する透過色のY値
また、二色比(D)はヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で異方性有機膜の透過率を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az=−log(Tz)
Ay=−log(Ty)
Tz:有機膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty:有機膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
<実施例1>
前記化合物(II−1)を含む異方性有機膜を、以下に示す方法で作製した。
水75重量部に、化合物(II−1)のナトリウム塩を25重量部加え、攪拌溶解し、次いで濾過して化合物(II−1)の水溶液(異方性有機膜形成用組成物)を得た。この水溶液をスライドガラス上に滴下し、偏光顕微鏡下において観察したところリオトロピック液晶状態であることが確認された。
スライドガラス(松浪硝子工業製「スライドグラス白縁磨フロストNo.1」)に前記水溶液をバーコーター(コーティングテスター工業(株)製「No.2」)で塗布した後、室温下で乾燥することにより赤色の異方性有機膜を得た。
上記方法にて作製した化合物(II−1)の異方性有機膜を有する基板と、12mol/L塩酸5mLを入れた容器を500mLの容量の容器に入れて密閉し、20℃で静置した。12時間後、基板を取り出し、圧縮空気を用いて基板表面を洗浄し、青色の異方性有機膜を得た。
偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定からの塩化水素曝露前の異方性有機膜と曝露後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図1に示す。図1に示されるように、曝露前のX線回折ピークのブラッグ角(2θ)は26.0度であるが、曝露後には23.9度となり、ブラッグ角は2.1度変化している。この結果から、塩化水素曝露により異方性有機膜の結晶構造が変化したことが分かる。
***表色系で表記した塩化水素曝露前後の異方性有機膜の単体透過色、彩度C*、単体透過色の色差ΔE*ab(塩化水素曝露前後の差)、およびコントラスト比(CR)を表1に示す。
Figure 2005284260
表1より、塩化水素曝露前後でC*の値が減少し、異方性有機膜は低彩度化し、またコントラスト比が向上したことが分かる。
さらに、塩化水素曝露を施したこの異方性有機膜は、常温常圧下で安定で、3ヶ月後においても、有機膜の色に変化はなかった。また、この有機膜にアンモニア曝露しても色の変化はなかった。すなわち、この有機膜の塩化水素曝露処理による変化は、酸、塩基による可逆的な変化によるものではなく、結晶構造が変化したものであることがわかった。従って、この有機膜は、周囲の環境変化に対しても安定な膜であると言える。
<実施例2>
実施例1と同様の条件で作製した化合物(II−1)の赤色の異方性有機膜を有する基板と、28重量%アンモニア水溶液5mLを入れた容器を500mLの容量の容器に入れて密閉し、20℃で静置した。12時間後、基板を取り出し、圧縮空気を用いて基板表面を洗浄し、青色の異方性有機膜を得た。
偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定からのアンモニア曝露前の異方性有機膜と曝露後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図2に示す。図2に示されるように、曝露前のX線回折ピークのブラッグ角(2θ)は26.0度であるが、曝露後には23.9度となり、ブラッグ角は2.1度変化している。この結果から、アンモニア曝露により異方性有機膜の結晶構造が変化したことが分かる。
***表色系で表記したアンモニア曝露前後の異方性有機膜の単体透過色、彩度C*、単体透過色の色差ΔE*ab(アンモニア曝露前後の差)、およびコントラスト比(CR)を表2に示す。
Figure 2005284260
表2より、アンモニア曝露前後でC*の値が減少し、異方性有機膜は低彩度化し、またコントラスト比が向上したことが分かる。
さらに、アンモニア曝露を施したこの異方性有機膜は、常温常圧下で安定で、3ヶ月後においても、有機膜の色に変化はなかった。また、この有機膜に塩化水素を曝露しても色の変化はなかった。すなわち、この有機膜のアンモニア曝露処理による変化は、酸、塩基による可逆的な変化によるものではなく、結晶構造が変化したものであることがわかった。従って、この有機膜は、周囲の環境変化に対しても安定な膜であると言える。
<実施例3>
実施例1と同様の条件で作製した化合物(II−1)の赤色の異方性有機膜を有する基板を、20℃で3週間静置し、青色の異方性有機膜を得た。
偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定からのエージング処理前の異方性有機膜と処理後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図3に示す。図3に示されるように、エージング処理前のX線回折ピークのブラッグ角(2θ)は26.0度であるが、曝露後には23.9度となり、ブラッグ角は2.1度変化している。この結果から、エージング処理により異方性有機膜の結晶構造が変化したことが分かる。
***表色系で表記したエージング処理前後の異方性有機膜の単体透過色、彩度C*、単体透過色の色差ΔE*ab(エージング処理前後)、およびコントラスト比(CR)を表3に示す。
Figure 2005284260
表3より、エージング処理前後でC*の値が減少し、異方性有機膜は低彩度化し、またコントラスト比が向上したことが分かる。
<実施例4>
前記化合物(I−1)を含む異方性有機膜を以下に示す方法で作製した。
水85.32重量部およびイソプロピルアルコール9.48重量部に、化合物(I−1)のリチウム塩を5重量部およびノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王社製)を0.2重量部加え、攪拌溶解し、次いで濾過して異方性有機膜形成用組成物を得た。
表面にスピンコート法によるポリイミドの配向膜が形成されたガラス製基板(75mm×25mm、厚さ1.1mm、ポリイミド膜:膜厚約800nmのポリイミド配向膜を予め布でラビング処理を施したもの)に前記異方性有機膜形成用組成物をスピンコーター(押鐘社製「SC−200」)で塗布(1500rpm、15秒)した後、自然乾燥することにより異方性有機膜を得た。
上記方法にて作製した化合物(I−1)の異方性有機膜を有する基板と、12mol/L塩酸5mLを入れた容器を500mLの容量の容器に入れ、室温で1時間静置後に基板を取り出すことで、塩化水素曝露処理を行った。
偏光軸方向よりX線入射した時のアウトオブプレーン測定からの塩化水素曝露前後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図4に示す。図4に示されるように曝露前のX線回折ピークのブラッグ角(2θ)は8.12度であるが、曝露後には7.61度となり、ブラッグ角は0.51度変化している。この結果から、塩化水素曝露処理により異方性有機膜の結晶構造が変化したことが分かる。
***表色系で表記した塩化水素曝露前後の有機膜の単体透過色、彩度C*、二色比の最大値を表4に示す。
Figure 2005284260
表4より、塩化水素曝露前後でC*の値が減少し、有機膜は低彩度化し、また二色比が向上したことが分かる。
<比較例1>
ベンゾプルプリン4Bを含む異方性有機膜を以下に示す方法で作製した。
水97重量部に、脱塩精製を行なったベンゾプルプリン4B(シグマアルドリッチ社製)を3重量部加え、攪拌溶解後、濾過して異方性有機膜形成用組成物を得た。
実施例4で用いたものと同様のポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に前記異方性有機膜形成用組成物をギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性有機膜を得た。
上記方法にて作製したベンゾプルプリン4Bの異方性有機膜について実施例4と同様の塩化水素曝露処理を行った。
偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定からの塩化水素曝露処理前後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図5に示す。図5に示されるように、曝露前のX線回折ピークのブラッグ角は25.7度であり、曝露後は25.9度となり、ブラッグ角の変化は0.2度にとどまる。この結果から、塩化水素曝露処理によっても異方性有機膜の結晶構造は変化していないことが分かる。
***表色系で表記した塩化水素曝露前後の異方性有機膜の単体透過色、彩度C*、二色比の最大値を表5に示す。
Figure 2005284260
表5より、塩化水素曝露前後でC*の値が減少し、有機膜は低彩度化したが、二色比は低下した。
さらに、塩化水素暴露処理を施したこの異方性有機膜を用いて実施例2に記載のアンモニア暴露処理と同様な方法で処理を行なったところ、この有機膜は瞬時に青色から赤色に変化した。
以上の結果より、基板上のベンゾプルプリン4Bの色が変化したのは、酸および塩基によって分子構造の変化を起こしたものであると考えられ、その変化は可逆的であり、結晶構造の変化を伴わないため不安定であることが推定された。
<比較例2>
クリソフェニンを含む異方性有機膜を以下に示す方法で作製した。
水40重量部に、脱塩精製を行なったクリソフェニン(シグマアルドリッチ社製)を1重量部加え、80℃に加熱し、攪拌溶解した。続いて、該溶液が20重量部になるまで水を蒸発させた後、室温まで急速に冷却した。得られた組成物の溶液部分を異方性有機膜形成用組成物として用いた。
実施例1で用いたものと同様のガラス製基板に前記異方性有機膜形成用組成物をギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性有機膜を得た。
上記方法にて作製したクリソフェニンの異方性有機膜について実施例4と同様の塩化水素曝露処理を行った。
偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定からの塩化水素曝露処理前後の異方性有機膜のX線回折スペクトルを図6に示す。図6に示されるように曝露前に観察されたX線回折ピーク(ブラッグ角(2θ)=3.2度)は曝露後に観測されない。これは、塩化水素曝露処理により、異方性有機膜がその膜内の分子配向を乱されて、異方性を失ったことを意味する。
***表色系で表記した塩化水素曝露前後の異方性有機膜の単体透過色、彩度C*、二色比の最大値を表6に示す。
Figure 2005284260
表6より、塩化水素曝露前後でC*の値が減少し、有機膜は低彩度化したが、二色比は低下した。
さらに、塩化水素暴露処理を施したこの異方性有機膜を用いて実施例2に記載のアンモニア暴露処理と同様な方法で処理を行なったところ、この有機膜は瞬時に暗褐色から黄色に変化した。
以上の結果より、基板上のクリソフェニンの色が変化したのは、酸および塩基によって分子構造の変化を起こしたものであると考えられ、構造変化により膜内の分子配向が乱されることで、その異方性を失って二色性等の性質が発現されなくなったこと、そして、その変化は可逆的であり、実施例に比べて結晶構造の変化を伴わないため不安定であることが推定された。
本発明の異方性有機膜は、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光板等、各種の偏光素子に有用である。
実施例1記載の異方性有機膜の偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射したときのインプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線は曝露前、実線は曝露後を表す。 実施例2記載の異方性有機膜の偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射したときのインプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線は曝露前、実線は曝露後を表す。 実施例3記載の異方性有機膜の偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射したときのインプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線はエージング処理前、実線はエージング処理後を表す。 実施例4記載の異方性有機膜の偏光軸方向よりX線入射したときのアウトオブプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線はエージング処理前、実線はエージング処理後を表す。 比較例1記載の異方性有機膜の偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射したときのインプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線は曝露前、実線は曝露後を表す。 比較例2記載の異方性有機膜の偏光軸に垂直な回折面を観察する方向よりX線入射した時のインプレーン測定によるX線回折スペクトルである。点線は曝露前、実線は曝露後を表す。

Claims (11)

  1. 湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜の結晶構造を変化させることを特徴とする異方性有機膜の製造方法。
  2. 湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜を酸または塩基のガスと接触させることを特徴とする異方性有機膜の製造方法。
  3. 湿式成膜法により異方性有機膜を製造する方法において、成膜された膜をエージング処理することを特徴とする異方性有機膜の製造方法。
  4. 前記異方性有機膜に含有される有機化合物が水溶性であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の異方性有機膜の製造方法。
  5. 前記有機化合物が酸性基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項4に記載の異方性有機膜の製造方法。
  6. 前記酸性基がスルホ基、カルボキシル基およびリン酸基よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の異方性有機膜の製造方法。
  7. 前記有機化合物がアゾ化合物であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の異方性有機膜の製造方法。
  8. 前記有機化合物が縮合多環系化合物であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の異方性有機膜の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の異方性有機膜の製造方法により製造された異方性有機膜。
  10. 請求項9に記載の異方性有機膜からなる偏光膜。
  11. 請求項10に記載の偏光膜を使用した偏光素子。
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