JP2005281732A - 表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金およびその製造方法 - Google Patents

表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さを有する軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはKおよび/またはNaが平均濃度で0.01〜1質量%含有していることを特徴とする。その製造は、成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としてリン酸カリウム塩および/またはリン酸ナトリウム塩の膜を形成し、該キャビティに軟磁性粉末を充填し、プレス後、焼結することにより行う。
【選択図】 なし

Description

この発明は、合金表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さ部分で構成する軟磁性焼結合金表層部(以下、軟磁性焼結合金表層部という)と、軟磁性焼結合金表層部よりも内側にある軟磁性焼結合金内部(以下、軟磁性焼結合金内部という)とで構成されている軟磁性焼結合金であって、軟磁性焼結合金表層部における燐(以下、Pと記す)濃度が軟磁性焼結合金内部におけるPの濃度よりも高くすることにより表面緻密性、寸法精度を向上させた軟磁性焼結合金に関するものであり、またその軟磁性焼結合金の製造方法に関するものである。
そして、この軟磁性焼結合金は、特に寸法精度良く表面を高密度化することにより腐食環境に曝される軟磁性焼結合金の面積を少なくし、それによって耐食性を向上させ、またメッキなどの表面処理を容易にさせたものであり、この軟磁性焼結合金を使用して作製した電磁機械部品、例えば、自動車用電動パワーステアリングのトルクセンサーにおけるヨーク、検出リング、ステーターコア、ローターコア、その他プランジャーなどは、従来の同一成分組成を有する軟磁性焼結合金を使用して作製した電磁機械部品と比較して一層優れた特性を有するものである。
一般に、各種機械部品は、原料合金粉末にステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムなどの高級脂肪酸の金属塩を潤滑剤として混合したのち、これを成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより圧粉体を作製し、得られた圧粉体を燒結することにより製造することはすでに知られている。
しかし、原料合金粉末に従来の高級脂肪酸の金属塩を潤滑剤として混合した混合粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形して得られた圧粉体は、内部に多量の潤滑剤が含まれているために高密度の圧粉体を作製することができず、この方法で得られた圧粉体を燒結して作製した焼結合金は、添加した潤滑剤が焼結合金内部に残留するので機械的強度を低下させる。
一方、圧粉体成形に使用する原料合金粉末に添加する潤滑剤を減らして潤滑剤の少ない圧粉体を作製し、この潤滑剤含有量の少ない圧粉体を燒結して機械的強度の優れた焼結合金を製造しようとすると、圧粉体に含まれる潤滑剤の量の不足により潤滑性が不足し、そのために成形された圧粉体の型抜きが困難になり、不良な圧粉体が発生して歩留まりが低下する。
そこで、この潤滑剤の減少に伴って発生する圧粉体型抜き不良を防止するために、100℃以上に加熱された金型のキャビティ内面に、高級脂肪酸の金属塩(例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛)を溶媒に懸濁させた高級脂肪酸系潤滑剤を塗布し、金型の加熱によって溶媒は蒸発させ、それによって成形金型のキャビティ内面に高級脂肪酸の金属塩膜を形成し、この高級脂肪酸の金属塩膜が形成されたキャビティに通常より潤滑剤の少ない原料合金粉末を充填し600MPa以上の圧力でプレス成形して圧粉体を作製すると、圧粉体の表面にステアリン酸鉄の単分子膜のような高級脂肪酸の鉄塩の被膜が圧粉体表面に生成し、その結果、圧粉体と金型の間の摩擦力が減少し、圧粉体を抜出する圧力が減少して圧粉体を金型から簡単に取り出すことができ、また600MPa以上の高圧力で加圧成形するので高密度の圧粉体を製造できるとされている(特許文献1参照)。
この方法によると、得られた圧粉体は内部に含まれる潤滑剤の量が少ない高密度の圧粉体を得ることができ、さらに型抜けを容易に行なうことができるので金型からの抜出し圧力を減少させることができ、さらに圧粉体の型抜け時における破損が少ないなどの優れた効果があり、効率よく優れた圧粉体を製造し、得られた圧粉体を焼結することにより優れた燒結合金を製造することができると考えられる。
軟磁性金属粉末は、鉄粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末などが従来から一般に知られている。一層具体的に示すと、軟磁性金属粉末としての鉄粉末は純鉄粉末が知られており、
Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末としてはCr:1〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末が知られており、
Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末としてはSi:0.1〜10%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末が知られている。
特許第3309970号明細書
しかし、従来の固体粉末であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムなど固体状態の高級脂肪酸の金属塩を水中に懸濁した高級脂肪酸系潤滑剤を成形金型のキャビティ内面に塗布して得られた潤滑剤膜は、キャビティ内面に固体粉末膜として形成されるために成形金型のキャビティ内面に緻密な被膜が形成されず、またキャビティ内面に対する密着性も不十分であるなどの欠点があり、安定した潤滑剤膜の形成が困難であるところから、金属粉末の安定した金型成形は困難であるという課題があった。
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、成形金型のキャビティ内面に一層緻密な潤滑剤膜を形成すべく研究を行っていたところ、
(a)溶媒に溶解可能なリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムを溶媒に溶解した溶液を作製し、この溶液を潤滑剤として、潤滑剤の溶媒が蒸発する温度以上に加熱された成形金型のキャビティ内面に塗布すると、成形金型は溶媒が蒸発する程度の高温に加熱されているので潤滑剤に含まれる溶媒は蒸発し、リン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムが成形金型のキャビティ内面に晶出して成形金型のキャビティ内面にリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムの晶出膜を形成し、この成形金型のキャビティ内面に形成したリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムの晶出膜は極めて緻密な潤滑剤膜を形成することができ、また密着性に優れているので作業中に剥離することが少ない、
(b)前記リン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムの晶出膜を形成した成形金型のキャビティに原料粉末である軟磁性粉末を充填し、プレス成形して得られた圧粉体は成形金型のキャビティ内面にリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムの晶出膜が形成されているために容易に型抜きすることができ、さらに得られた圧粉体の表面にはリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムが付着しており、この表面にリン酸カリウムおよび/またはリン酸ナトリウムが付着した圧粉体を燒結すると、燐(以下、Pと記す)濃度の高い圧粉体表面が一層液相焼結およびα相焼結され易くなり、さらに圧粉体表面にカリウム(以下、Kと記す)および/またはナトリウム(以下、Naと記す)を含むことにより酸化鉄被膜を還元して軟磁性粉末の表面を活性化させ、焼結体表面に開放気孔(焼結合金の表面から内部に連通している気孔)の極めて少ない表面緻密な軟磁性焼結合金が得られ、この表面緻密な軟磁性焼結合金は表面緻密性が高いところから大気を始めとする腐食環境に曝される表面積が少なくなって耐食性が通常の焼結合金に比べて向上し、さらに表面緻密性が高いところから通常の焼結合金に比べてメッキなどの表面処理を均一に欠陥無く行えまた寸法精度に優れるところから、各種の機械部品を製造するための部材として有効である、
(c)このようにして得られた表面緻密性、寸法精度に優れた焼結合金は、表面から1μm〜2mm(好ましくは、10μm〜0.5mm)の範囲内の深さ部分にPが焼結合金表層部よりも内側に存在する部分に含まれるP濃度よりも平均濃度で0.01〜1質量%(一層好ましくは0.02〜0.5質量%)高くなっており、さらに焼結合金表層部にはKおよび/またはNaが0.01〜1質量%含まれている、
(d)前記表面から1μm〜2mm(好ましくは、10μm〜0.5mm)の範囲内の深さ部分の軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度、K濃度およびNa濃度は、高精度分析を行うと、表面からの深さ位置および表面位置によって大きく検出されたり検出されなかったりして大きくばらつき、そのために焼結合金表層部におけるP濃度、K濃度およびNa濃度は平均値で求めることが好ましい、
(e)原料合金粉末として、軟磁性合金粉末を使用した場合、表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金が得られ、この軟磁性焼結合金は合金表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さ部分で構成する軟磁性焼結合金表層部(以下、軟磁性焼結合金表層部という)と前記軟磁性焼結合金表層部よりも内側にある軟磁性焼結合金内部(以下、軟磁性焼結合金内部という)とで構成されており、平均燐濃度(以下、燐をPと記す)が前記軟磁性焼結合金表層部よりも内側にある軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはカリウム(以下、Kと記す)およびナトリウム(以下、Naと記す)の内の1種または2種が平均濃度で0.01〜1質量%含有している含まれている、などの知見を得たのである。
この発明は、かかる知見にもとづいて成されたものであって、
(1)合金表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さ部分で構成する軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が前記軟磁性焼結合金表層部よりも内側にある軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはKが含まれている表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(2)軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはNaが含まれている表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(3)軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはKおよびNaが含まれている表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(4)軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはKが平均濃度で0.01〜1質量%含有している表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(5)軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはNaが平均濃度で0.01〜1質量%含有している表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(6)軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有している表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、に特徴を有するものである。
これら軟磁性焼結合金表層部と軟磁性焼結合金内部で構成されている軟磁性焼結合金は、具体的には、原料粉末として通常の、純鉄粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を使用して製造される。
原料粉末として純鉄粉末を使用する場合は、軟磁性焼結合金内部はP含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、軟磁性焼結合金表層部は前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの内の1種または2種の合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金が得られ、
原料粉末としてFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末を使用する場合は、軟磁性焼結合金内部はCr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、軟磁性焼結合金表層部はCr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの内の1種または2種の合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金が得られ、
原料粉末としてFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末を使用する場合は、軟磁性焼結合金内部はSi:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、軟磁性焼結合金表層部はSi:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの内の1種または2種の合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金が得られる。
したがって、この発明は、
(7)軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(8)軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(9)軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(10)軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(11)軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(12)軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(13)軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(14)軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
(15)軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなる表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、
に特徴を有するものである。
前記(1)〜(15)記載のこの発明の軟磁性焼結合金における軟磁性焼結合金表層部は、表面P濃度が高くかつKおよび/またはNaが含まれており、さらに表面における開放気孔(焼結合金の表面から内部に連通している気孔)が極めて少なく、開放気孔率が2%以下である。
したがって、この発明は、
(16)前記軟磁性焼結合金表層部の開放気孔率は2%以下である前記(1)〜(15)の内のいずれかに記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、に特徴を有するものである。
開放気孔率は小さいほど好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることがさらに一層好ましい。
この発明の前記(1)〜(15)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金は、各種の電磁機械部品の材料として使用することができ、特に耐食性または表面処理を必要とする自動車用電動パワーステアリングのトルクセンサーにおけるヨーク、検出リング、ステーターコア、ローターコア、その他プランジャーなどの電磁機械部品の部材として使用される。
したがって、この発明は、
(17)前記(1)〜(15)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなる機械部品部材、
(18)前記(1)〜(15)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなる機械部品、
(19)前記機械部品はヨークである前記(18)記載の機械部品、
(20)前記機械部品は検出リングである前記(18)記載の機械部品、
(21)前記機械部品はプランジャーである前記(18)記載の機械部品、
(22)前記機械部品はステーターコアまたはローターコアである前記(18)記載の機械部品、
に特徴を有するものである。
この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金における「軟磁性焼結合金表層部」とは、その厚さが軟磁性焼結合金の表面から1μm〜2mm範囲内にある部分である。軟磁性焼結合金表層部の厚さが1μm未満では表面緻密性および表面硬度の向上に格別な効果がなく、一方、これら軟磁性焼結合金表層部の厚さが2mmを越えるようになると、軟磁性焼結合金内部にまで液相焼結およびα相焼結が進行するところから寸法精度が低下し、好ましくないからである。
また、この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金における「軟磁性焼結合金内部」は、表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さを有する軟磁性焼結合金表層部よりも内部の部分である。
この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金において、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度の平均値を軟磁性焼結合金内部におけるP濃度よりも0.01質量%以上高くなるように定めたのは、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度の平均値と軟磁性焼結合金内部におけるP濃度の差が0.01質量%よりも少ないと、通常の軟磁性焼結合金内部に含まれるP含有量が極めて少ないところから軟磁性焼結合金表層部と内部とではP含有量にほとんど差がなくなり、軟磁性焼結合金表層部のP含有量が少ないために表層部の液相焼結およびα相焼結効果が表れず、したがって軟磁性焼結合金の表面は緻密でなくなり高い硬度が得られなくなるからである。
一方、軟磁性焼結合金表層部のP濃度と軟磁性焼結合金内部におけるP濃度の平均値の差を1質量%以下に定めたのは、P濃度の平均値の差が1質量%を越えるほど軟磁性焼結合金表層部のP濃度を高くすることは通常の焼結条件では不可能であるという理由によるものである。軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度の平均値が軟磁性焼結合金内部におけるP濃度よりも0.02〜0.5質量%高くすることが製造しやすく、製造効率の上で一層好ましい。
この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金において、軟磁性焼結合金表層部におけるKおよびNaの内の1種または2種を合計で平均濃度が0.01質量%以上となるように定めたのは、これら成分の平均濃度が0.01質量%よりも少ないと、軟磁性焼結合金原料粉末の表面酸化膜を還元して活性化する効果が不十分であるところから緻密な表層部が得られなくなり、一方、軟磁性焼結合金表層部におけるこれら成分の平均濃度が1質量%を越えるほど高くすることは通常の焼結条件では不可能であり、また、特に表面緻密性が高くなることはない。したがって、この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金における軟磁性焼結合金表層部に含まれるKおよびNaの内の1種または2種を合計の平均濃度は0.01〜1質量%に定めた。この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金における軟磁性焼結合金表層部に含まれるNaまたはK濃度の内の1種または2種の合計の平均値は0.02〜0.5質量%含まれるようにするのが製造しやすく、製造効率の上で一層好ましい。
前記(1)、(4)、(7)、(8)または(9)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金は、成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としてのリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウムまたはリン酸リボフラビンカリウムの内の1種または2種以上からなるリン酸カリウム塩の膜を形成したのち、軟磁性焼結合金原料粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を1000〜1400℃で燒結することにより製造することができる。
成形金型のキャビティ内面に前記リン酸カリウム塩の膜を形成するには、リン酸カリウムを溶媒(例えば水)に溶解した溶液を加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布して溶媒(例えば水)を蒸発させ、潤滑剤としてリン酸カリウムを晶出させることにより形成する。この時、成形金型を加熱する温度は溶媒(例えば水)が蒸発する温度に加熱すればよいから、成形金型の加熱温度は100℃以上であれば良い。
前記(2)、(5)、(10)、(11)または(12)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金は、成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としてのリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムまたはリン酸リボフラビンナトリウムの内の1種または2種以上からなるリン酸ナトリウム塩の膜を形成したのち、軟磁性焼結合金原料粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面に前記リン酸ナトリウム塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を1000〜1400℃で燒結することにより製造することができる。
成形金型のキャビティ内面に前記リン酸ナトリウム塩の膜を形成するには、リン酸ナトリウムを溶媒(例えば水)に溶解した溶液を加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布して溶媒(例えば水)を蒸発させ、潤滑剤としてリン酸ナトリウムを晶出させることにより形成する。この時、成形金型を加熱する温度は溶媒(例えば水)が蒸発する温度に加熱すればよいから、成形金型の加熱温度は100℃以上であれば良い。
前記(3)、(6)、(13)、(14)または(15)記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金は、成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としての前記リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩膜を形成したのち、軟磁性焼結合金原料粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を1000〜1400℃で燒結することにより製造することができる。
成形金型のキャビティ内面に前記リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩膜を形成するには、前記リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩を溶媒(例えば水)に溶解した溶液を加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布して溶媒(例えば水)を蒸発させ、潤滑剤としてリン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩を晶出させることにより形成する。この時、成形金型を加熱する温度は溶媒(例えば水)が蒸発する温度に加熱すればよいから、成形金型の加熱温度は100℃以上であれば良い。
前記(16)に記載されたこの発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金、前記(17)に記載されたこの発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなる機械部品部材、前記(18)に記載されたこの発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなる機械部品、前記(19)〜(21)に記載されたこの発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなる機械部品は、前記この発明の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金の製造方法と同じ製造方法により製造することができる。
上述のように、この発明の軟磁性燒結合金は、従来の同じ成分組成を有する軟磁性焼結合金に比べて開放気孔率が小さいところから耐食性に優れ、メッキなどの表面処理を施しやすく、寸法精度が良く、各種機械部品用電磁気部材とすることができ、機械産業の発展に大いに貢献し得るものである。
直径:11mm、高さ:40mmを有するキャビティを有し、キャビティ内面を所定の温度に加熱することができる成形金型を用意した。さらに原料粉末として、
平均粒径:70μmを有する純鉄粉末、
平均粒径:50μmを有し、Cr:13%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、
平均粒径:80μmを有し、Si:3%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、を用意した。
さらに、リン酸カリウム塩としてリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸リボフラビンカリウムを用意し、さらにリン酸ナトリウム塩としてリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウムを用意し、これらを溶媒である水に異なる濃度で溶解させることにより、表1に示される潤滑剤A〜Lおよびa〜fを作製した。
Figure 2005281732
実施例1−1
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持したのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤A〜Dおよびa〜bを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸カリウム塩であるリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸リボフラビンカリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末である純鉄粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部にPおよびKを含む本発明軟磁性焼結合金1〜4および比較軟磁性焼結合金1〜4を作製した。
従来例1
平均粒径5μmのステアリン酸リチウム粉末をアセトンに分散させた潤滑剤を実施例1で用意した150℃に加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布し、アセトンを蒸発させることにより成形金型のキャビティ内面にステアリン酸リチウム層を形成したのち実施例1で用意した成分組成が純鉄粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより圧粉体を作製した。これら圧粉体を取り出して真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結することにより従来軟磁性焼結合金1を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金1〜4、比較軟磁性焼結合金1〜4および従来軟磁性焼結合金1についてEPMAにより軟磁性焼結合金の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均K濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表2に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表2に示した。寸法のバラツキはサンプル20個中の最大寸法と最小寸法の差を寸法平均で除したものと定義した。
Figure 2005281732
表2に示される結果から、リン酸カリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金1〜4は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した従来軟磁性焼結合金1に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金1〜4はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから合金の表面が緻密であり、さらに、表面が腐食環境に曝されても腐食環境との接触面積が従来軟磁性焼結合金1よりも少ないので耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金1〜4は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例1−2
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤E〜Hおよびc〜dを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸ナトリウム塩であるリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末である純鉄粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸ナトリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金5〜8および比較軟磁性焼結合金5〜8を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金5〜8および比較軟磁性焼結合金5〜8の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均Na濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表3に示し、開放開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表3に示した。
Figure 2005281732
表3に示される結果から、リン酸ナトリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金5〜8は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表2の従来軟磁性焼結合金1に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金5〜8はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから、表面が緻密であり、さらに表面の腐食環境に接する表面積が少なくなるところから耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金5〜8は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例1−3
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤I〜Lおよびe〜fを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面に、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩からなる晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末である純鉄粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩層が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度、K濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金9〜12および比較軟磁性焼結合金9〜12を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金9〜12および比較軟磁性焼結合金9〜12の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差を測定し、さらに平均K濃度および平均Na濃度をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表4に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表4に示した。
Figure 2005281732
表4に示される結果から、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩を溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金9〜12は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表2の従来軟磁性焼結合金1に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金9〜12はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから、表面が緻密でありかつ表面の耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金9〜12は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例2−1
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤A〜Dおよびa〜bを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸カリウム塩であるリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸リボフラビンカリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Cr系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部にPおよびKを含む本発明軟磁性焼結合金13〜16および比較軟磁性焼結合金13〜16を作製した。
従来例2
平均粒径5μmのステアリン酸リチウム粉末をアセトンに分散させた潤滑剤を実施例1で用意した150℃に加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布し、アセトンを蒸発させることにより成形金型のキャビティ内面にステアリン酸リチウム層を形成したのち原料粉末として用意したFe−Cr系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより圧粉体を作製した。これら圧粉体を取り出して真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結することにより従来軟磁性焼結合金2を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金13〜16、比較軟磁性焼結合金13〜16および従来軟磁性焼結合金4についてEPMAにより軟磁性焼結合金の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均K濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表11に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表5に示した。
Figure 2005281732
表5に示される結果から、リン酸カリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金13〜16は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した従来軟磁性焼結合金4に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金13〜16はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから、表面が緻密であり、表面が腐食環境に曝されても腐食環境との接触面積が従来軟磁性焼結合金よりも少ないので耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金13〜16は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例2−2
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤E〜Hおよびc〜dを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸ナトリウム塩であるリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Cr系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸ナトリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金17〜20および比較軟磁性焼結合金17〜20を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金17〜20および比較軟磁性焼結合金17〜20の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均Na濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表6に示し、さらに開放開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表6に示した。
Figure 2005281732
表6に示される結果から、リン酸ナトリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金17〜20は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表5の従来軟磁性焼結合金2に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金17〜20はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから、表面が緻密であり、表面の腐食環境に接する表面積が少なくなるところから耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金17〜20は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例2−3
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤I〜Lおよびe〜fを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面に、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩からなる晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Cr系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩層が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度、K濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金21〜24および比較軟磁性焼結合金21〜24を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金21〜24および比較軟磁性焼結合金21〜24の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差を測定し、さらに平均K濃度および平均Na濃度をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表7に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表7に示した。
Figure 2005281732
表7に示される結果から、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩を溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金21〜24は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表5の従来軟磁性焼結合金2に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金21〜24はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから表面が緻密であり、さらに合金表面の耐食性が優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金21〜24は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例3−1
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤A〜Dおよびa〜bを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸カリウム塩であるリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸リボフラビンカリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Si系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部にPおよびKを含む本発明軟磁性焼結合金25〜28および比較軟磁性焼結合金25〜28を作製した。
従来例3
平均粒径5μmのステアリン酸リチウム粉末をアセトンに分散させた潤滑剤を実施例1で用意した150℃に加熱した成形金型のキャビティ内面に塗布し、アセトンを蒸発させることにより成形金型のキャビティ内面にステアリン酸リチウム層を形成したのち原料粉末として用意したFe−Si系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより圧粉体を作製した。これら圧粉体を取り出して真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結することにより従来軟磁性焼結合金3を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金25〜28、比較軟磁性焼結合金25〜28および従来軟磁性焼結合金3についてEPMAにより軟磁性焼結合金の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均K濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表8に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表8に示した。
Figure 2005281732
表8に示される結果から、リン酸カリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金25〜28は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した従来軟磁性焼結合金3に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金25〜28はいずれも表面の硬さが高く、さらに表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから、表面が緻密であり、表面が腐食環境に曝されても腐食環境との接触面積が従来軟磁性焼結合金よりも少ないので耐食性に優れていることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金25〜28は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例3−2
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤E〜Hおよびc〜dを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面にリン酸ナトリウム塩であるリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウムの異なる厚さを有する晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Si系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸ナトリウム塩が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金29〜32および比較軟磁性焼結合金29〜32を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金29〜32および比較軟磁性焼結合金29〜32の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度、平均Na濃度および平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表9に示し、さらに開放開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表9に示した。
Figure 2005281732
表9に示される結果から、リン酸ナトリウムを溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金29〜32は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表8の従来軟磁性焼結合金3に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金29〜32はいずれも表面の硬さが高く、さらに表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから表面が緻密であり、表面の腐食環境に接する表面積が少なくなるところから耐食性に優れることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金29〜32は一部好ましくない特性が現れることが分かる。
実施例3−3
予め成形金型のキャビティ内面の温度を150℃に保持ししたのち、キャビティ内面に表1に示される潤滑剤I〜Lおよびe〜fを異なる厚さで塗布し、水を蒸発させることによりキャビティ内面に、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩からなる晶出層を形成した。
一方、これら晶出層を形成した成形金型のキャビティ内に先に用意した原料粉末であるFe−Si系鉄基軟磁性粉末を充填し、800MPaでプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩層が付着した圧粉体を作製した。このようにして得られた圧粉体を真空雰囲気中、温度:1200℃で焼結し、軟磁性焼結合金表層部におけるP濃度、K濃度およびNa濃度が高い本発明軟磁性焼結合金33〜36および比較軟磁性焼結合金33〜36を作製した。
これら本発明軟磁性焼結合金33〜36および比較軟磁性焼結合金33〜36の軟磁性焼結合金表層部における平均P濃度から軟磁性焼結合金内部のP濃度を引いたP濃度差を測定し、さらに平均K濃度および平均Na濃度をEPMAにより測定し、それらの測定結果を表10に示し、さらに開放気孔率、合金の密度、磁束密度および寸法のバラツキを測定し、その結果を表10に示した。
Figure 2005281732
表10に示される結果から、リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩を溶媒に溶解した潤滑剤を使用して作製した本発明軟磁性焼結合金33〜36は、ステアリン酸リチウム粉末をアセトンに懸濁させた潤滑剤を使用して作製した表8の従来軟磁性焼結合金3に比べて、密度がほぼ同等であっても、本発明軟磁性焼結合金33〜36はいずれも表面の開放気孔率が格段に小さくなっているところから表面が緻密となって合金表面の耐食性が優れることが分かる。また、メッキなどの表面処理が均一に欠陥無く施すことができ、さらに寸法のバラツキが小さく、したがって、寸法精度に優れることがわかる。しかし、この発明の範囲から外れた値を有する比較軟磁性焼結合金33〜36は一部好ましくない特性が現れることが分かる。

Claims (25)

  1. 合金表面から1μm〜2mmの範囲内の厚さ部分で構成する軟磁性焼結合金表層部(以下、軟磁性焼結合金表層部という)の平均燐濃度(以下、燐をPと記す)が前記軟磁性焼結合金表層部よりも内側にある軟磁性焼結合金内部(以下、軟磁性焼結合金内部という)に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはカリウム(以下、Kと記す)が含まれていることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  2. 軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはナトリウム(以下、Naと記す)が含まれていることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  3. 軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも高く、かつ前記軟磁性焼結合金表層部にはKおよびNaが含まれていることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  4. 軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはKが平均濃度で0.01〜1質量%含有していることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  5. 軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはNaが平均濃度で0.01〜1質量%含有していることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  6. 軟磁性焼結合金表層部の平均P濃度が軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度より0.01〜1質量%高く、かつ軟磁性焼結合金表層部にはKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有していることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  7. 軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  8. 軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  9. 軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  10. 軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  11. 軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  12. 軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつNaを平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  13. 軟磁性焼結合金内部は、P含有量が0.05質量%以下(0も含む)の純鉄軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有する純鉄軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  14. 軟磁性焼結合金内部は、Cr:1〜20%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Cr:1〜20%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Cr系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  15. 軟磁性焼結合金内部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらにP:0.05質量%以下(0も含む)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなり、
    軟磁性焼結合金表層部は、Si:0.1〜10%を含有し、さらに前記軟磁性焼結合金内部に含まれるP濃度よりも0.01〜1質量%高い平均P濃度を有しかつKおよびNaの合計が平均濃度で0.01〜1質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有するFe−Si系鉄基軟磁性合金焼結体からなることを特徴とする表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  16. 前記軟磁性焼結合金表層部の開放気孔率は2%以下であることを特徴とする請求項1〜15の内のいずれかの請求項に記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金。
  17. 請求項1〜16の内のいずれかの請求項に記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金からなることを特徴とする機械部品用磁性部材。
  18. 請求項17記載の機械部品用磁性部材からなることを特徴とする機械部品。
  19. 前記機械部品はヨークであることを特徴とする請求項18記載の機械部品。
  20. 前記機械部品は検出リングであることを特徴とする請求項18記載の機械部品。
  21. 前記機械部品はプランジャーであることを特徴とする請求項18記載の機械部品。
  22. 前記機械部品はステーターコアまたはローターコアであることを特徴とする請求項18記載の機械部品。
  23. 成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としてのリン酸水素2カリウム、リン酸3カリウム、ポリリン酸カリウムおよびリン酸リボフラビンカリウムの内の1種または2種以上からなるリン酸カリウム塩の膜を形成したのち、軟磁性粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面にリン酸カリウム塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を燒結することを特徴とする請求項1、4、7、8または9記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金の製造方法。
  24. 成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としてのリン酸水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムおよびリン酸リボフラビンナトリウムの内の1種または2種以上からなるリン酸ナトリウム塩の膜を形成したのち、軟磁性焼結合金原料粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面にリン酸ナトリウム塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を燒結することを特徴とする請求項2、5、10、11または12記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金の製造方法。
  25. 成形金型のキャビティ内面に潤滑剤としての前記リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩膜を形成したのち、軟磁性焼結合金原料粉末を成形金型のキャビティに充填しプレス成形することにより表面に前記リン酸カリウム塩とリン酸ナトリウム塩の混合塩が付着した圧粉体を作製し、得られた圧粉体を燒結することを特徴とする請求項3、6、13、14または15記載の表面緻密性、寸法精度に優れた軟磁性焼結合金の製造方法。
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