JP4007591B2 - 一体成形複合部材、その製造方法及び電磁駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯材とこの芯材に一体成形された粉末成形体とからなる一体成形複合部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
機能や特性の異なる複数の部品等を接合または結合させて、一つの部材とした複合部材が各種装置に用いられている。ここで複合部材中の各部品の結合は、ボルト締結、溶接、圧入、かしめ等によってなされるのが通常である。
ここで複合部材中の一つの部品等が形状的または機能的な理由等によって粉末成形体(さらにはその焼結体)とされる場合がある。その際、粉末成形体とそれによって囲まれたインナー部材(以下、「芯材」という。)との結合を、上記結合方法に替えて、粉末一体成形にすることが当然に考えられる。これができれば、ボルト等の締結具およびその締結工程または圧入等の結合工程を省略できるからである。
【0003】
しかし、現実にはこれまで、芯材と粉末成形体とが粉末成形中に一体的に結合されることはなかった。つまり、芯材と粉末成形体との粉末一体成形は実現されていなかった。この理由は、成形工程後の粉末成形体はスプリングバックによって内径が拡径することが当該技術分野の技術常識であり、粉末一体成形をしようとしても、芯材と粉末成形体とはすき間嵌め状態となって実質的に結合されることがなかったからである。
また、別途成形しておいた粉末成形体を芯材の外側に圧入等して、両者を一体的に結合させることも困難であった。従来の粉末成形体は強度が低いため、圧入等する際に粉末成形体に割れ等が生じるからである。
【0004】
そこで、特許2615781号公報は、特殊な樹脂結合剤を使用して、粉末一体成形によって、指示部材(芯材)に粉末成形体を直接結合する方法を提案している。
また、粉末成形体を芯材と一体成形したものではないが、芯材に軽く圧入した粉末成形体を焼結させることで、両者を強固に結合させる方法が特開平6−330108号公報、特開2000−87116号公報および特開2000−87117号公報に開示されている。特開平6−330108号公報は炭素の拡散を利用した焼結拡散接合方法を提案しており、特開2000−87116号公報および特開2000−87117号公報は焼結工程前後における芯材と焼結体との寸法変化量(膨張変化量)の差を利用した接合方法を提案している。
【0005】
【特許文献1】
特許2615781号公報
【特許文献2】
特開平6−330108号公報
【特許文献3】
特開2000−87116号公報
【特許文献4】
特開2000−87117号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許2615781号公報の場合、特殊な樹脂結合剤や成形工程後の熱重合処理等を必要とするため、結局は製造コストの低減を図れない。また、樹脂結合剤を含むため成形体密度を高められない。従って、その実施例にもあるように、環状支持部材の外周に磁性粉末からなる薄肉環状の樹脂磁石を形成するような場合に用途が限定されてしまう。
特開平6−330108号公報等の場合、焼結を必須としなければならず、しかも、インナー材とアウター材とに使用する材質も制限的であるため汎用性のある方法ではない。さらにその製造方法の場合、焼結による寸法変化を利用しているため、複合部材の寸法精度を確保できず、所望の寸法精度を得るには別途、切削加工等を要し、製造コストの低減も図り難い。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、生産コストの低減や寸法精度の確保等を図りつつ、強固に結合した一体成形複合部材が得られる製造方法を提供することを目的とする。また、その一体成形複合部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、原料粉末中に含有させる内部潤滑剤量と粉末成形体のスプリングバック量との間に相関があることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
(一体成形複合部材の製造方法)
すなわち、本発明の一体成形複合部材の製造方法は、全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした金属粉末を主とする原料粉末を芯材の周囲に充填された状態とする充填工程と、該充填工程後の原料粉末を780MPa以上の成形圧力で加圧して該芯材に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の製造方法によると、従来の技術常識に反して、原料粉末を加圧成形することにより、割れ等を生じることなく芯材と一体的に結合した粉末成形体が得られるようになった。これは、これまでの粉末成形分野においては考えられないような画期的なことである。
【0009】
これが可能となった理由は、全容が解明された訳ではないが、現状、次のように考えられる。
先ず、従来の粉末成形体の寸法挙動について述べる。従来は、前述したように、金型から粉末成形体を取出すと、スプリングバックによってその寸法が拡大していた。特に、環状の粉末成形体の場合、外径は勿論のこと、内径までもが拡大(拡径)していた。そして、粉末成形体のこのような寸法変化は当該分野において技術常識とされていた。
このため、芯材をインナーとし、粉末成形体をアウターとする、両者が強固に結合された複合部材を、粉末成形工程のみで製造することは当然に不可能と考えられていた。上記寸法変化によって、インナーとアウターとがいわゆるすきま嵌め状態となるからである。
【0010】
さらに、粉末成形体を芯材と共に一体的に成形した場合、粉末成形体を金型から取出す際に粉末成形体に割れが発生することもあった。これは、粉末成形体を取出したときのスプリングバックが大きいにも拘らず、粉末成形体自体の強度が低かったためであると考えられる。
本発明者は、このような技術常識に囚われず鋭意研究した結果、従来、粉末一体成形が困難であった主な原因の一つが原料粉末中の内部潤滑剤にあることを突止めた。内部潤滑剤は、金型と原料粉末とのカジリ防止や粉末成形体の抜出力低下等のために、原料粉末中に添加、配合させることが従来当然と考えられていたものである。
【0011】
ところが、本発明者は、これに反して、内部潤滑剤を実質的に含有させない原料粉末を加圧成形し環状の粉末成形体を製作した。そしてその内径を測定したところ、スプリングバック量が成形圧力と共に減少傾向を示すことを見出した。さらには、所定の成形圧力以上で成形したとき、その内径が小さくなる(つまり、マイナスのスプリングバックを示す)ことも発見した(後述の図1参照)。これらの発見は正に、従来の技術常識を覆すものであった。
また、内部潤滑剤が粉末成形体の強度に及す影響を調査したところ、原料粉末が僅かな内部潤滑剤を含有しているのみでも、粉末成形体の強度が急激に低下することが明らかとなった。種々の成形圧力について調査したが、この傾向は成形圧力によって変化することはなかった。つまり、成形圧力が高くても低くても、内部潤滑剤を含む原料粉末を成形して得られた粉末成形体は、その強度が極端に低下することが明らかとなった(後述の図2参照)。
【0012】
本発明者は、これらの特異な現象の発見に基づき完成されたものである。そして、そのような特異な現象を発現するが故に、本発明は、上記のような優れた効果を発揮するに至ったと考えられる。すなわち、0.05質量%以下という内部潤滑剤をほとんど含有しない原料粉末を芯材と共に加圧成形したとき、上述の縮径効果によって、芯材と粉末成形体とは締り嵌め状態で強固に結合した状態となる。また、粉末成形体中に内部潤滑剤がほとんど含有されていないために、強度の高い粉末成形体が得られ、金型から粉末成形体(一体成形複合部材)を抜出したときにもそこに割れ等は生じない。よって、芯材との結合強度に優れた一体成形複合部材が、従来のような接合工程を行わずに低コストで得られるようになった。しかも、この一体成形複合部材の場合、焼結等するまでもなく粉末成形体自体が十分な強度を有するため、粉末成形体の優れた特性を減殺することなく、高機能、多機能な一体成形複合部材が得られる。勿論、それを焼鈍程度に加熱したり焼結すれば、より一層大きな結合強度が得られる。
【0013】
(一体成形複合部材)
前述したように、従来、芯材の周囲に充填した状態にある原料粉末を加圧成形して、その成形工程によってその芯材と一体的に結合されるようになった粉末成形体は存在しなかった。従って、本発明は次のようにも把握できる。
すなわち、本発明は、芯材と、全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした金属粉末を主とする原料粉末を該芯材の周囲に充填された状態にした後に780MPa以上の成形圧力で加圧して成形され該芯材に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体と、からなることを特徴とする一体成形複合部材としても良い。
【0014】
ところで、本発明でいう内部潤滑剤は、その種類を問わない。従来使用されているものとして、例えば、ステアリン酸亜鉛(ZnSt.)等の高級脂肪酸系潤滑剤やワックス等がある。この内部潤滑剤は0.05質量%以下であれば良いが、より望ましくは0.03質量%以下、さらには0.01質量%以下となるほど好ましく、内部潤滑剤が原料粉末中に全く含まれていないとより一層好ましい。従来の内部潤滑剤の含有量は、原料粉末全体100質量%に対して0.5〜1質量%程度であったから、本発明の内部潤滑剤量が如何に少ないかが解る。なお、本発明の場合、成形完了前の原料粉末中に含まれる内部潤滑剤量を問題としているのであって、成形完了後の粉末成形体やその焼結体等の中に含まれる内部潤滑剤量は問題としていない。
【0015】
また、本発明では、芯材の周囲に充填した原料粉末を加圧成形して、その芯材と粉末成形体とを締り嵌め状態で一体的に結合しているが、粉末成形体と芯材とのいずれが内側でも外側でも良い。粉末成形体の内径が小さくなることを利用する場合は、芯材の外周囲に原料粉末を充填し、その原料粉末を加圧成形することで、芯材を内側、粉末成形体を外側とする一体成形複合部材が得られる。逆に、粉末成形体の外径が大きくなることを利用する場合は、芯材の内周囲に原料粉末を充填し、その原料粉末を加圧成形することで、芯材を外側、粉末成形体を内側とする一体成形複合部材が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施形態を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、以下に説明する内容は、本発明に係る一体成形複合部材のみならず、その製造方法のいずれにも適宜該当するものである。
(原料粉末)
原料粉末は、主として金属粉末からなるが、本発明の趣旨に沿った範囲内で内部潤滑剤を含有しても良い。
金属粉末は、純金属からなる素粉末でも、合金からなる合金粉末でも、それらの混合粉末でも良い。
【0017】
また、原料粉末は、前記素粉末や合金粉末等と合金を形成する合金化粉末、それらの金属粉末からなるマトリックス中に強化粒子を分散形成する強化粒子粉末等を含有していても良い。粉末成形体に焼結等の加熱工程を施す場合、強化粒子を直接含有した粉末でなくても、その加熱工程中に強化粒子を形成する強化元素を含む強化元素粉末が原料粉末中に含有されていても良い。
金属粉末の主成分となる元素は、鉄系、非鉄系を問わない。従って、金属粉末は、純FeやFe合金等の鉄系粉末であっても良いし、純AlやAl合金または純TiやTi合金等の活性金属元素を主成分とする粉末であっても良い。
【0018】
またいずれの場合でも、例えば、C、B、N、O、P、Co、Cu、Si、Ni、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sc、Cr、Mo、Sn、W、Mn等の合金元素を含んでいても良い。
Fe系粉末の一例を具体的に挙げるなら、Fe−C系粉末、Fe−Cu−C系粉末およびFe−Cu−P−C系粉末等の構造材料用粉末、Fe−Mo系粉末、Fe−Ni−Mo系粉末およびFe−Cr系粉末等の低合金鋼用粉末、Fe−P系粉末、Fe−Si系粉末およびFe−Co系粉末等の軟磁性粉末、R−Fe−B(R:希土類元素)、Sm−Fe−N、Sm−Co等の硬磁性粉末がある。これらの粉末は、素粉末でも、合金粉末でも、それらの混合粉末でも良い。
【0019】
ここで、軟磁性粉末から圧粉磁心が成形される場合、その粉末粒子は表面にリン酸塩被膜等の絶縁皮膜が施されていると好ましい。これにより圧粉磁心の比抵抗が大きくなり、高周波域中で圧粉磁心を使用したときでも渦電流損、ひいては鉄損を小さくできる。高周波域中で使用されない場合には、軟磁性粉末からなる粉末成形体を焼結させた焼結磁心を使用しても良い。
【0020】
また、前述した強化粒子として、ホウ化物であるホウ化チタン(TiB、TiB2)、炭化物である炭化チタン(TiC)、窒化物である窒化チタン(TiN)、酸化物である酸化チタン(TiO2)等のセラミックス粒子を挙げることができる。この他、Al2O3 、SiC、Si2N4 、B4C、CrN、Cr2N、MoB、CrB、Y2O3、ThO2等がある。これらが粉末成形体やその焼結体中に存在することにより、強度、剛性、耐熱性、耐摩耗性等の機械的特性などに優れた複合部材が得られる。
【0021】
各粉末には、機械粉砕粉、水素化脱水素粉、アトマイズ粉等があり、その製造方法は問わない。また、原料粉末は造粒粉でも良い。原料粉末の粒径は特に拘らないが、例えば、平均粒径が1〜100μmであると良い。
【0022】
(製造工程)
本発明の一体成形複合部材の製造方法では、上述したように、充填工程と成形工程とからなるが、それらの工程内容の詳細は問わない。内部潤滑剤をほとんど含有しない原料粉末を使用して、芯材に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体が成形されて一体成形複合部材が得られれば十分である。従って、従来の粉末成形方法に本発明の製造方法を適用することも可能である。但し、詳細は後述するが、芯材と粉末成形体とが締り嵌め状態で結合されるには比較的高い圧力で成形することが必要となる。さもないと、実用的な一体成形された複合部材が得られないからである。なお、その成形圧力の下限値を具体的に特定することは困難である。原料粉末の種類や複合部材の形態等に応じて変化するからである。
【0023】
ところで、上記の成形圧力を高めることは、従来の粉末成形方法のままでは容易ではない。仮に、高圧成形した場合、カジリや焼付き等による金型の損傷を生じて金型寿命が低下したり、粉末成形体等の取出が困難となったり、多くの問題の生じ得ることが予想される。特に、本発明のように、内部潤滑剤をほとんど含まない原料粉末を、例えば700MPa超の高圧力で加圧成形することは、試験レベルならいざ知らず、工業的なレベルで観ればほぼ不可能に近いものと考えられる。
【0024】
そこで、本発明者は、このような問題点を解消できる画期的な粉末成形方法をも既に開発している。この方法によれば、内部潤滑剤を含まない原料粉末を非常な高圧力で成形しても、金型の損傷や寿命低下等を招かず、しかも粉末成形体の取出圧力の小さくて、効率的で低コストな優れた生産性が得られる。しかもこの粉末成形方法によると、Fe系粉末は勿論、Ti系粉末やAl系粉末等の従来成形が困難とされていた原料粉末の高圧成形でさえ、容易に行うことができることが解っている。以下では、この優れた粉末成形方法の詳細について主に説明する。
【0025】
この粉末成形方法は、前記充填工程前に、前記金型のキャビティ内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布する塗布工程を備え、前記成形工程が前記原料粉末を温間状態で加圧成形する温間加圧成形工程となるものである。以下、適宜、この成形方法を、「金型潤滑温間成形法」と呼ぶ。
(1)塗布工程
塗布工程は、金型のキャビティ内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布する工程である。この塗布工程に、芯材への高級脂肪酸系潤滑剤の塗布を含めて考えても良い。
【0026】
▲1▼高級脂肪酸系潤滑剤は、高級脂肪酸からなる潤滑剤と高級脂肪酸の金属塩からなる潤滑剤の双方を含む。高級脂肪酸には、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等ある。高級脂肪酸の金属塩には、例えば、リチウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩がある。具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、オレイン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等である。本発明でいう高級脂肪酸系潤滑剤は、それらの1種以上を主成分とするものであれば足る。
高級脂肪酸系潤滑剤は、室温域〜温間域で、固体であることが好ましい。液状であると潤滑剤が下方向に流れ落ち、金型内面等に潤滑剤を均一に塗布することが難しくなるからである。
【0027】
▲2▼この高級脂肪酸系潤滑剤を金型内面等に効率よく均一に塗布するには、高級脂肪酸系潤滑剤を分散液に分散させると良い。この分散液は、水でも、アルコール系溶媒でも、水とアルコール系溶媒との混合液でも良い。このような分散液に分散させた高級脂肪酸系潤滑剤を、加熱した金型に噴霧等すると、分散液中の水やアルコール系溶媒が瞬時に蒸発して、均一な潤滑剤の被膜が容易に形成され得る。
特に、アルコール系溶媒を混合すると、水分等の蒸発が速くなり、均一でむらのない潤滑剤被膜が一層形成され易い。この高級脂肪酸系潤滑剤による均一な潤滑剤被膜の形成は、金型と非常に焼付き易い活性金属粉末を原料粉末とする場合に非常に有効である。
【0028】
金型を加熱する場合、好適な金型温度は分散液によって異なる。例えば、分散液が水からなる場合、金型温度を100℃以上とするのが好ましい。アルコール系溶媒を混合した場合、その濃度に応じて、100℃よりも低い温度でも良い。もっとも、成形工程を温間状態で行える程度の金型温度であることが好ましい。いずれにしても、金型温度は、分散液の沸点以上で高級脂肪酸系潤滑剤の融点未満とするのが良い。高級脂肪酸系潤滑剤の融点未満としたのは、高級脂肪酸系潤滑剤が垂れ落ちるのを防止するためである。
【0029】
水とアルコール系溶媒との混合液を分散液として使用する場合、アルコール系溶媒は1〜50体積%、さらには5〜25体積%であると好ましい。アルコール系溶媒が1体積%未満では、アルコール系溶媒を混合する意味があまりなく、50体積%を超えると、アルコール系溶媒臭による作業環境の悪化およびコスト高を招く。このようなアルコール系溶媒には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を使用できる。もっとも、水よりも沸点が低く、揮発したときに有害でなければ、その種類は問わない。
【0030】
分散液に分散させる高級脂肪酸系潤滑剤は、最大粒径が30μm以下の粒子からなる粉末状であることが好ましい。30μmを超える粒子があると、金型内面に形成される潤滑剤被膜が不均一になる。また、分散液中で高級脂肪酸系潤滑剤の粒子が容易に沈殿してしまい、金型内面への均一な塗布が困難になるからである。
【0031】
▲3▼高級脂肪酸系潤滑剤を水等の分散液に均一分散させるには、分散液に予め界面活性剤を添加しておくと良い。
この界面活性剤は、例えばアルキルフェノール系の界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)10、アニオン性非イオン型界面活性剤、ホウ酸エステル系エマルボンT−80等である。
使用する高級脂肪酸系潤滑剤等に応じて、1種または2種以上の界面活性剤を適宜選択すれば良い。例えば、高級脂肪酸系潤滑剤としてステアリン酸リチウム(LiSt)を用いる場合、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80の3種類の界面活性剤を同時に添加することが好ましい。
【0032】
ホウ酸エステルエマルボンT−80のみであると、LiStは水等に分散し難いからである。これに対して、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10の場合、それらのみでも、LiStは水等に分散する。しかし、その分散液を希釈しようとした際に、高級脂肪酸系潤滑剤が均一に分散し難い。従って、高級脂肪酸系潤滑剤としてLiStを使用する場合、上記3種類の界面活性剤を適切に複合添加するのが好ましい。界面活性剤の添加量は、界面活性剤を含む分散液全体を100体積%としたときに、1.5〜15体積%とするのが好ましい。なお、このとき、上記3種の界面活性剤をそれぞれ1:1:1の体積割合で混合すると良い。
【0033】
界面活性剤の添加量が多い程、LiSt等を多量に分散させることができる。但し、その界面活性剤の添加量が多くなると、分散液の粘度も高くなり、後述の粉砕処理で、LiSt等の粒子を微細にすることが困難となる。
適宜、少量の消泡剤(シリコン系の消泡剤等)を添加すると、均一な潤滑剤被膜を形成し易い。この消泡剤の添加量は、概ね分散液の体積を100体積%としたときに、0.1〜1体積%であれば良い。
ところで、界面活性剤を含む分散液に高級脂肪酸系潤滑剤の粉末を分散させる場合、例えば、分散液100cm3に対してLiStを10〜30gを添加して、テフロンコートした鋼球(直径:5〜10mm程度)を用いたボールミル式粉砕処理を行うと良い。この処理を概ね50〜100時間行うと、最大粒径が30μm以下に粉砕されたLiStが、分散液中に浮遊分散した状態となる。
【0034】
▲4▼高級脂肪酸系潤滑剤を金型内面に塗布する場合、高級脂肪酸系潤滑剤を分散させた分散液を適当に希釈して用いると良い。具体的には、希釈された分散液全体を100質量%としたときに、高級脂肪酸系潤滑剤(例えば、LiSt)が0.1〜5質量%、さらには、0.5〜2質量%となる程度に希釈すると良い。このような稀釈により、薄くて均一な潤滑剤被膜の形成が可能となる。
【0035】
この希釈された分散液を、例えば塗装用のスプレーガン等で吹き付けることにより、高級脂肪酸系潤滑剤の金型内面への均一な塗布を容易に行える。この塗布は、静電ガン等の静電塗布装置を用いて行うこともできる。その他、金型内面へ高級脂肪酸系潤滑剤を均一に塗布する具体的な方法については、国際公開公報WO01/43900の図1または図2に開示された方法等を適宜参考にすれば良い。
なお、本発明者が高級脂肪酸系潤滑剤の塗布量と鉄系の粉末成形体の抜出圧力との関係を実験により調べた結果、潤滑剤の膜厚が0.5〜1.5μm程度となるように、高級脂肪酸系潤滑剤を金型の内面に付着させると一層好ましいことが解っている。
【0036】
▲5▼高級脂肪酸系潤滑剤の塗布は、金型の内面に限ったことではない。キャビティ内に充填された原料粉末を加圧していく際、芯材の形態によっては、その原料粉末が芯材の外周面にも接触し得る。そこで、粉末成形体と結合しない芯材の非結合部に前記高級脂肪酸系潤滑剤を塗布しておくと好ましい。これにより、その非結合部において原料粉末と芯材との間でカジリ等が生じて芯材が損傷等するのが防止される。この芯材への高級脂肪酸系潤滑剤の塗布も前述の金型内面への塗布と同様に行えば良い。もっとも、通常、芯材は金型よりも小型であるため、高級脂肪酸系潤滑剤を含む分散液を芯材にスプレー等しなくても、直接、その分散液中に浸漬(ディップ)等して塗布することも十分可能である。また、芯材への高級脂肪酸系潤滑剤の塗布は、金型内面への塗布と別途行っても良いし、同時に行っても良い。
【0037】
ところで、粉末成形体と結合する芯材の結合部には高級脂肪酸系潤滑剤が塗布されないようにするのが良い。結合部に高級脂肪酸系潤滑剤が塗布されると、芯材と粉末成形体との間に金属石鹸等の潤滑皮膜が生成等されて、結合力が弱まる可能性が高いからである。
芯材の形状にも依るが、結合部と非結合部とで高級脂肪酸系潤滑剤を塗分けるには、例えば、非結合部に高級脂肪酸系潤滑剤が付着しないようなマスキング等をして、高級脂肪酸系潤滑剤の芯材への塗布を行えば良い。また、原料粉末に接触する非結合部が芯材の端部である場合には、その端部のみを前述の分散液中に単純に浸漬等するだけで、芯材への塗布を完了させることもできる。さらには、芯材の非結合部のみキャビティ内に突出させて、キャビティ内面に分散液をスプレー等して、芯材の非結合部と金型内面への高級脂肪酸系潤滑剤の塗布を併せて行っても良い。いずれにしても、芯材への高級脂肪酸系潤滑剤の塗布(芯材用塗布工程)の方法は問わない。
【0038】
(2)充填工程
充填工程は、高級脂肪酸系潤滑剤の塗布された金型内に原料粉末を充填して、原料粉末が芯材の周囲に充填された状態とする工程である。金型に芯材を予めセットした状態のキャビティへ原料粉末を充填しても良いし、キャビティへ原料粉末を一旦充填した後にそこへ芯材をセットするようにしても良い。
このとき原料粉末および金型(芯材を含めても良い)が加熱されていると好ましい。それらが加熱されていると、後続の成形工程において、原料粉末(金属粉末)と高級脂肪酸系潤滑剤とが安定して反応し、両者間に均一な潤滑皮膜(金属石鹸皮膜)が形成され易いからである。例えば、両者を100℃以上に加熱しておくと好ましい。
【0039】
(3)成形工程(温間加圧成形工程)
本発明の温間加圧成形工程は、高級脂肪酸系潤滑剤が塗布された金型へ充填された原料粉末を温間状態で加圧成形する工程である。
ここでいう温間状態とは、使用する原料粉末や高級脂肪酸系潤滑剤等によって異なり、特定の温度を一律には規定することは難しい。敢ていうなら、高圧成形したときに、原料粉末と金型内面との間で、後述する新たな金属石鹸皮膜等が形成されて、抜出圧力の低減や金型の損傷防止等を図れる温度範囲となる。
【0040】
もっとも、発明者の経験上、少なくとも前記金型内面と前記原料粉末とが接触する部分の温度(接触部分温度)が100〜225℃、より望ましくは100〜180℃の温間状態にあれば良い。このような温間状態は、金型と原料粉末の少なくとも一方を加熱することにより達成できる。もっとも、前述したように、その両者をほぼ同温度に加熱することで、より安定な温間状態が得られる。
【0041】
成形工程中の成形圧力に上限はない。敢ていうなら、金型や成形装置が損傷または破損しない範囲となる。従って、通常の粉末成形では考えられないような高い成形圧力(2500MPa程度)であっても、金型潤滑温間成形法によれば何ら問題なく粉末成形ができる。もっとも、芯材と粉末成形体との間に十分な結合強度を付与し、粉末成形体自体にも十分な強度や十分な高密度を与える観点から、その下限を700MPa、さらには780MPaとするのが好ましい。また、生産性や経済性の向上を図るため、成形圧力の上限を2000MPa、さらには1570MPaとすると好ましい。なお、この成形圧力の下限は硬質なFe系粉末を成形することも考慮した値であるが、TiやAl等を主成分とする軟質な活性金属粉末を成形する場合なら、その下限値を400MPa、500MPaまたは600MPa等にしても十分に有効であると思われる。
【0042】
なお、成形圧力と抜出圧力との関係について補足しておく。通常の粉末成形なら、成形圧力が高くなる程、粉末成形体を金型から抜き出すときの抜出圧力も大きくなる。しかし、温間加圧成形工程の場合、成形圧力を大きくしても、抜出圧力はほとんど変化しないか、僅かに大きくなる程度である。しかも、その場合の抜出圧力は、従来の粉末成形方法を用いた場合に比べて、遙かに小さいものとなっている。
【0043】
ところで、温間加圧成形工程が上述のような優れた成形性を示す原因やメカニズムは、必ずしもその全てが解明されている訳ではないが、現状、次のように考えられる。
温間加圧成形工程により、金型の内面(または芯材の表面)に塗布された高級脂肪酸系潤滑剤と、そこに接する金属粉末(特に、鉄系粉末の場合)との間でいわゆるメカノケミカル反応を生じると考えられる。
【0044】
この反応によって、金属粉末と高級脂肪酸系潤滑剤とが化学的に結合し、元の高級脂肪酸系潤滑剤とは異なる新たな金属石鹸の被膜(例えば、高級脂肪酸の鉄塩被膜)が粉末成形体の表面に形成される。しかもその金属石鹸の被膜は、粉末成形体の表面に強固に結合し、金型の内表面に付着していた高級脂肪酸系潤滑剤よりも遙かに優れた潤滑性能を発揮する。その結果、金型の内面等と粉末成形体の表面との接触面間で、摩擦力が著しく低減されると考えられる。
【0045】
このような現象は、金属粉末の種類に依らないと考えられる。また、圧粉磁心を形成する磁性粉末のように、粒子表面に絶縁皮膜等がコーティングされていても状況は変らない。但し、絶縁皮膜自体が上記した新たな金属石鹸被膜の形成を促進する元素(例えば、Fe等の金属元素)を含有していることが好ましい。
【0046】
いずれにしてもこのようにして、従来困難と考えられていた高圧成形が工業的なレベルで可能となったと考えられる。そして、原料粉末中に内部潤滑剤が添加されていなくとも、かじり等を生じて金型を損傷させたりその寿命を低減させたりすることもなく、粉末成形体が金型から容易に取出される。そして、得られた粉末成形体は、高圧成形されることに加えて内部潤滑剤をほとんど含んでいないため、非常に高密度でもある。
こうして、高強度の粉末成形体やその焼結体と芯材と強固に結合した複合部材が上記温間加圧成形工程だけで得られ、その著しい低コスト化を図れるようになった。
【0047】
(4)その他
上記温間加圧成形工程で使用する金型は、ハイス鋼(高速度工具鋼)製であっても、超硬合金製であっても良い。金型内面には、TiNコート処理等を施しておいても良い。なお、金型内面の表面粗さは小さい程、金型内面と粉末成形体との間の摩擦力低減に有効であると共に得られた粉末成形体の表面粗さや寸法精度も良い。
【0048】
本発明の製造方法は、前記成形工程(温間加圧成形工程に限らない)後に、さらに、前記芯材に結合した状態にある前記粉末成形体を加熱する加熱工程を備えていると、より強固に結合した複合部材が得られる。この加熱工程は、低温焼鈍、高温焼鈍、焼結等のいずれの工程でも良い。加熱温度が高い程、結合強度が向上する。特に、成形工程後に焼結工程を行ったときは、芯材の周囲にある粉末成形体が焼結体となって高強度化することは勿論、芯材との間の結合も拡散接合等によって強化され得る。
【0049】
(一体成形複合部材)
本発明の一体成形複合部材は、上述したように、芯材と粉末成形体からなる。勿論、そこには、その粉末成形体を焼結させて焼結体とした場合等も含まれる。従って、本明細書中では単に「粉末成形体」と呼んでいる場合であっても、そこには、その粉末成形体を加熱、焼結等させた場合も適宜含まれることを断っておく。
(1)芯材
芯材は、少なくともその一部(結合部)がキャビティに充填された原料粉末中に埋込まれ、その原料粉末を加圧成形することで、その結合部で粉末成形体と結合する。本発明では、芯材に粉末成形体が締り嵌め状態で結合することを前提としているため、芯材は複合部材のインナーともなる。
【0050】
このような芯材は、溶製材、焼結材、セラミックス、炭素複合材、樹脂材等いずれでも良い。また、溶製材や焼結材の場合は、鉄系でも非鉄系でも良く、さらには、粉末成形体と必ずしも異なる材質である必要はなく、同じ材質であっても良い。例えば、芯材と粉末成形体とを同材質とする場合として、軸等の単純形状の部材を芯材にし、歯車やカム等の複雑形状の部材を粉末成形体(または焼結体)とする場合がある。これにより、複雑な形状をした部材の生産コストの低減等を図れる。勿論、芯材と粉末成形体とで使用する材質を使い分けて、複合部材の用途に応じた強度分布や多機能性を付与しても良い。
【0051】
芯材は、粉末成形体と結合する結合部の少なくとも一部分に粉末成形体との結合を強化する結合強化部を有すると好ましい。
この結合強化部とは、例えば、結合部に設けた凹部や凸部等の係止部である。この結合強化部により、芯材と粉末成形体との接触面積が増えたり、アンカーのような引っかかりが形成されて、両者の結合が強化される。この結合強化部は、例えば、溝加工、平目ロール加工、ローレット加工等を施すことで得られる。なお、結合強化部の形態(形状、大きさ、向き等)を調整することで、芯材と粉末成形体との間の強化される結合力に方向性をもたせることができる。
【0052】
(2)粉末成形体
粉末成形体は、原料粉末を加圧成形することで、芯材の結合部と締り嵌め状態で結合し、芯材に対してアウターとなる。この「締り嵌め状態」とは、一体成形された複合部材から芯材と粉末成形体とを仮に分離したときに、粉末成形体の内側寸法(例えば、内径)がそれに対応する芯材の外側寸法(例えば、外径)よりも小さくなっている(例えば、縮径している)ことを意味する。このようなことは、前述したように、粉末成形体の内側寸法が負のスプリングバックを示す場合に生じる。
【0053】
もっとも両者の結合面(境界面)は、鋼材同士を焼嵌めをしたときのように必ずしも単純な締り嵌め状態であるとは限らない。原料粉末を高圧成形した場合、両者が部分的に焼付きに似たような結合をしていることもあり得る。特に、粉末成形体を芯材に結合させた状態で加熱、焼結等させたような場合、拡散等によって両者の境界面は不明瞭となり得る。本発明では、両者の結合が強固である限り、その結合性状は問わない。
【0054】
ところで、粉末成形体やその焼結体は、溶製された鋼材に比べれば、強度、剛性、耐摩耗性等の点で劣ることも多い。また、粉末成形体等と芯材または他部材とを一層強固に結合させるために溶接、圧入等の接合をするにしても、粉末成形体等のままではそのような接合方法を採用し難い。例えば、粉末成形体等に直接溶接すると気泡の発生等により健全な溶接ができない。また、粉末成形体等に締め代を大きくして他部材を圧入すれば粉末成形体等に割れを生じ得る。
そこで、粉末成形体やその焼結体のもつ長所を活かしつつ、その短所を補う補強材を粉末成形体等に設けると、本発明の複合部材の用途や有効性が一層広がり非常に好適である。この補強材は、例えば、粉末成形体の内部または表面の少なくとも一部に設けられ、粉末成形体の特性を補強するものである。なお、この粉末成形体を加熱、焼結等すると、補強材と粉末成形体との接合も強化される。
【0055】
補強材は、例えば、金型のキャビティ内に充填された原料粉末の内部に埋設させたりその表面に載置等して、その状態で原料粉末を加圧成形することにより、粉末成形体と容易に一体形成される。
また、補強材は、粉末成形体またはその焼結体の補強したい部分や補強したい特性に応じて、適宜、その材質、形状、数量、配設位置等を決定すれば良い。例えば、芯材や他部材と粉末成形体等との結合をより強固にするために、両者間で溶接を行う場合を考えると、溶接性に優れた組成の溶製材からなる補強材を使用する。芯材と補強材とを溶接するとき、その補強材を粉末成形体の内周側に配設すれば良いし、粉末成形体等の外周側で他部材と補強材とを溶接するときは、当然、その補強材を粉末成形体の外周側に配設すれば良い。こうして、粉末成形体等からなる複合部材であっても、他部材等との溶接が可能となる。
【0056】
粉末成形により複雑な外形を担保しつつ、その強度や剛性も向上させたいときに、強度や剛性に優れた溶製材や異種材からなる補強材を粉末成形体中に埋設等させても良い。また、粉末成形体等の耐摩耗性等を向上させたい部分に、耐摩耗性や摺動特性に優れた補強材を設けても良い。
また、芯材と粉末成形体との間で、磁性または非磁性等の特性の異なる材質を使用する他、粉末成形体と補強材との間で特性の異なる材質を使用して、部分的に磁気特性を変化させたりしても良い。さらに、この補強材の形状を工夫すれば、粉末成形体等の補強のみならず、芯材の補強も併せて可能となる。
補強材の形状は、板状、環状、柱状、筒状、鍔状等、その目的に応じて決定されれば良い。ここで、粉末成形体の内周側に環状の補強材が配置されると、その補強材は芯材と同様、締り嵌め状態で粉末成形体と結合される。
【0057】
なお、複数の補強材を組合わせて粉末成形体等に設けても良い。補強材と粉末成形体とは成形工程中で一体成形されるのが好ましいが、芯材と粉末成形体(またはその焼結体)とからなる複合部材を一旦製造した後、別途、補強材をその複合部材に圧入等しても良い。
また、本願明細書では、便宜上、芯材と補強材とを区別したが、一体成形複合部材の形態によっては、本発明の芯材を上記補強材とみなすこともできるし、逆に、上記補強材を本発明の芯材とみなすこともできる。
【0058】
(3)用途
本発明の一体成形複合部材は、種々の装置や製品に使用される。例えば、軸(芯材)と一体となったプーリやカム(粉末成形体やその焼結体)、電動機または発電機(電磁駆動装置)等のロータシャフト(芯材:駆動軸)とその周囲に配設された磁極(粉末成形体等)、電磁弁(電磁駆動装置)等のアーマチャシャフト(芯材:駆動軸)とそれに一体となった可動コア(粉末成形体等)等である。そこで、本発明は、例えば、駆動軸と、全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした磁性粉末を主とする原料粉末を駆動軸の周囲に充填された状態にした後に加圧して成形され駆動軸に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体とを備える電磁駆動装置と考えることもできる。
【0059】
なお、電動機や発電機には、直流機または交流機があり、その交流機には誘導機や同期機等があり、タイプに応じてロータの構成も異なる。従って、上記ロータ用磁極も、鉄心の場合もあれば界磁磁石となっている場合もある。いすれも磁性粉末を使用する点は共通するが、その種類や製造工程が異なる。例えば、通常の鉄心なら、粉末粒子の表面に絶縁被膜が施された純鉄粉等を加圧成形した圧粉磁心とする。界磁磁石なら、例えば、フェライト磁石粉末やR−Fe−BやSm−Co等の希土類磁石粉末等を使用して、それを加圧成形した圧粉磁石とする。なお、界磁磁石は、成形工程を強磁界中で行うことにより着磁される。
【0060】
さらには、既に成形されたボンド磁石等を前述の補強材と考え、これを非磁性の金属粉末中に埋込み、一体成形することにより、表面磁石型のロータシャフトや内部磁石型のロータシャフト等を形成しても良い。
なお、ロータシャフトやアーマチャシャフトで、軸(芯材)にステンレス等の非磁性材料を使用し、磁極やコアに鉄粉等の磁性材料を使用して、一部材中に磁性部分と非磁性部分とを設けても良い。これにより、漏れ磁束を低減したり、組付性や軸の耐蝕性等の改善を図れる。
【0061】
(その他)
本発明の場合、原料粉末中に内部潤滑剤をほとんど含まないため、粉末成形体を焼結する場合、焼結工程中または焼結工程後の脱ろう工程が実質的に不要となる。従って、焼結工程が簡素化され、その分生産コストも削減される。なお、焼結工程の条件は、原料粉末の種類によって異なり一概に特定できないが、例えば、鉄系粉末を原料粉末とする場合なら、焼結温度800℃以上とし、焼結時間を1/4時間以上とすると良い。
【0062】
粉末成形体を圧粉磁心とする場合、成形工程後に適宜焼鈍工程を行うと良い。焼鈍工程を行うことにより、粉末成形体中の残留応力または歪みが除去されて、磁気的特性の向上を図れる。特に、数kHz程度以下の高周波域で使用される場合には、ヒステリシス損失の低減を図れる。この焼鈍工程は、絶縁被膜を破壊しない程度で行えば良く、例えば、加熱温度を300〜600℃、加熱時間を1〜300分とすると良い。
【0063】
【実施例】
実施例を以下に挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(高級脂肪酸系潤滑剤の分散液の調製)
金型内面および芯材に塗布する高級脂肪酸系潤滑剤の分散液を以下のようにして調製した。
水に界面活性剤と消泡剤とを添加した水溶液を調製した。界面活性剤には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用い、それぞれを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%づつ添加した。また、消泡剤には、FSアンチフォーム80を用い、水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。この水溶液100ccに対してステアリン酸リチウム(LiSt)粉末を25g分散させた。このLiStは、融点が約225℃で、平均粒径が20μmのものである。これをさらにボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)し、得られた原液を20倍に希釈して最終濃度1%の水溶液(分散液)を得た。
【0064】
(基礎試験)
粉末成形体単体について以下のような基礎試験を行い、粉末成形体の寸法挙動および強度を評価した。
(1)試験片の製造
▲1▼原料粉末
金属粉末として、純鉄粉であるヘガネス社製の水噴霧粉ABC100.30(純度99.8%Fe)を用意し、入手した状態のままで使用した。ちなみに、その粒径は約20〜180μmであった。
【0065】
内部潤滑剤として、アデカ社製のステアリン酸リチウム粉末エフコムLIS(平均粒径:15μm)を用意した。
これらを用いて、上記金属粉末のみの粉末、その金属粉末に内部潤滑剤を0.05質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.6質量%および0.8質量%添加した粉末からなる複数種の原料粉末を用意した。
【0066】
▲2▼金型
金型として、キャビティの形状が外径φ23mmx内径φ10mmのリング状をしたリング成形型と、キャビティの形状が55x10mmの方形状をした抗折試験片型とを用意した。いずれの金型も超硬製で内面を0.4Zに仕上げた。
【0067】
▲3▼充填工程および成形工程
上記両金型に各種の原料粉末をそれぞれ以下のように充填し、その後加圧成形して粉末成形体を製造した。
(a)内部潤滑剤が0.6質量%以下の原料粉末の場合
金型および各原料粉末を150℃に加熱した。金型はバンドヒータにより加熱し、原料粉末はオーブン(電気炉)により大気中で加熱した。
150℃に保持した金型の内面に、上記分散液(金型潤滑剤)をスプレーガンにて1cm3/秒程度の割合で均一に塗布した。これにより、膜厚約1μmのLiSt.からなる潤滑剤皮膜を金型内面に形成した(塗布工程)。
この金型内へ上記の加熱した各種原料粉末を充填した(充填工程)。そして、392MPa、588MPa、784MPa、980MPa、1176MPa、1372MPaおよび1568MPaの7種の成形圧力で、金型潤滑温間成形を行った(成形工程)。そして、得られた粉末成形体を金型から抜出した(抜出工程)。
【0068】
(b)内部潤滑剤が0.8質量%の原料粉末の場合
上記のような金型潤滑を施さずに粉末成形した。但し、成形工程中の温度は、室温と150℃との2種類で行った。150℃の温間加圧成形を行う場合、前述の場合と同様に、原料粉末をオーブンで150℃に加熱してから金型へ充填した。
成形圧力は前述の場合と同様に392〜1568MPaの範囲としたが、室温成形の場合には、カジリ等の発生により高圧成形が困難なため980MPaまでとした。
【0069】
(2)試験片の評価
▲1▼寸法変化(スプリングバック)の挙動
上記のリング成形型から得られた各種リング試験片について、それぞれの内径を測定し、その測定値から求めた各試験片のスプリングバック量と、成形圧力との関係を図1に示した。なお、このスプリングバック量(ε)は、金型の基準径(D)と測定内径(d)とを用いて、ε=(d−D)/D x100(%)により求めたものである。
【0070】
図1から明らかなように、内部潤滑剤が0.05質量%を超える粉末成形体は、スプリングバック量が成形圧力に対して増加またはほぼ一定の傾向を示している。特に、内部潤滑剤を0.8質量%と多く含み金型潤滑せず室温成形した粉末成形体(Fe+0.8%LiSt(RT))の場合は、この傾向が強く、成形圧力の増加と共にスプリングバック量も相当大きく増加している。
【0071】
これに対し、内部潤滑剤が0.05質量%以下の粉末成形体は、スプリングバック量が成形圧力に対して減少傾向を示した。特に、内部潤滑剤を含まない粉末成形体(Fe粉のみ(150℃))の場合は、成形圧力が784MPa以上でスプリングバック量が負(マイナス)となった。これは、このリング試験片の内径が金型の基準径よりも縮小していることを示す。このようなスプリングバック量が負となる現象は、従来の粉末成形分野の技術常識では考えられないことである。
【0072】
▲2▼粉末成形体の強度
上記の抗折試験片型から得られた各種抗折試験片について、3点曲げによる抗折力を測定し、その抗折力と内部潤滑剤量との関係を図2に示した。なお、用意した抗折試験片は、いずれも前述の金型潤滑温間成形法により成形したものであり、成形圧力が784MPa、1176MPaおよび1568MPaの場合について図2にプロットした。
【0073】
図2から明らかなように、成形圧力に依らず、内部潤滑剤を少しでも含むと抗折力が急減した。それ以降、内部潤滑剤量が増加すると抗折力も減少するが、その変化は緩やかである。そして、内部潤滑剤が0.3質量%以上になると、成形圧力をいくら高くしても抗折力はほとんど変らなくなり、30MPa以下となった。
【0074】
(一体成形複合部材)
(1)一体成形複合部材の製造
芯材として、図3(a)に示すφ10x50mmの形状をもつ、S45CまたはSUS304からなる2種類の軸材を用意した。各軸材の軸方向中央には、幅6mmで深さ0.5mmの溝部を設けた。つまり、中央部をφ9x6mmとした。表面粗さは、いずれも6.5Zに仕上げた。
【0075】
次に、図3(b)に示すように、その溝部を中心にして幅9mmの部分(結合部)をマスキングし、150℃に加熱した軸材の両端部(非結合部)のみに前述の分散液を塗布した。そして、その両端部に膜厚約1μmの潤滑剤皮膜を形成した。塗布方法等は前述した金型潤滑の場合と同様である。この他、加熱した軸材の両端部のみを分散液中にディップして、その滑剤皮膜を形成しても良い。
金型として、キャビティの形状が内径φ23mmの円筒状をしているものを用意した。この金型も超硬製で内面を0.4Zに仕上げてある。そして、基礎試験の場合と同様に、この金型の内面にも膜厚約1μmの潤滑剤皮膜を形成した。
【0076】
図4に示すように、この金型に上記軸材をセットし、リング状に形成されたキャビティに前述の鉄粉のみからなる原料粉末を充填した。なお、先に原料粉末を充填してから軸材をセットしても良い。
この充填された原料粉末をパンチで上方から加圧して、150℃、1176MPaの温間高圧成形を行った。この粉末成形体を金型から取出すと、図5にしめすような、軸材にリング状の粉末成形体が軸材の結合部と強固に結合した一体成形複合部材が得られた。
【0077】
ところで、図6に示すようなリング材(補強材)を粉末成形体の内周側、外周側またはその両方に埋設して、粉末成形体と軸材または他部材との溶接性、強度、耐摩耗性等を向上させることもできる。溶接性を確保する場合なら、リング材として低炭素鋼等の溶接阻害素の含有量が少ない溶製材を使用し、溶接面となる部分を粉末成形体から露出させると良い。なお、このリング材は、粉末成形体の上下面のいずれ側にも配設可能である。
【0078】
軸材は、図7(a)に示すようなパイプ軸材であっても良い。但し、高圧成形した際に潰れないように、コア(中子)をパイプ軸材の内部に嵌め込んでおく。また、軸材は、図7(b)に示すように、粉末成形体の端面に鍔を備えるものであっても良い。これにより、粉末成形体の端面の強度や耐摩耗性等が向上し、またはその端面が保護され、他部材との衝突等によってその端面部分に欠け、割れ等が生じないようにもできる。なお、言うまでもないがこれらのパイプ軸材と粉末成形体とも締り嵌め状態で結合されている。また、軸材は、図7(c)に示すように、短い環状の内リブであっても良い。なお、図7(c)には、粉末成形体の端面を保護する前記鍔および粉末成形体の外周面を保護する有底円筒状の外ケースが、その内リブと一体化したものを示した。粉末成形体は外径側へもスプリングバックによって拡径するため、図7(c)の場合、粉末成形体はその内周側のみならず外周側でも締り嵌め状態となって結合されている。
【0079】
勿論、その粉末成形体の外径側へのスプリングバックのみを利用して、図7(d)に示すように前記外ケース(前記鍔を含む)と粉末成形体との一体成形も当然に可能である。
なお、これらの成形工程時に粉末成形体の中心部に配設されるコアは、成形後に容易に抜取られるように、前述の分散液を塗布等して、予め高級脂肪酸系潤滑剤からなる潤滑皮膜を表面に形成しておくと良い。
【0080】
さらに、本発明の補強材を芯材とした場合、または、本発明の芯材を補強材とした場合の一例を図8(a)〜(c)に挙げる。図8(a)は、リング材の外周側で粉末成形体と締り嵌め状態となった一体成形複合部材を示す。図8(b)は、リング材の内外周側で粉末成形体と締り嵌め状態となった一体成形複合部材を示す。図8(c)は、リング材の内周側で粉末成形体と締り嵌め状態となった一体成形複合部材を示す。
【0081】
(2)一体成形複合部材の結合強度(軸方向)
一体成形した複合部材の軸材と粉末成形体との軸方向の結合強度を次のようにして調べた。
▲1▼試験片の製造
原料粉末として、ヘガネス社製の絶縁被覆鉄粉Somaloy500を用意した。これは純鉄粉にリン酸塩被膜を施したものである。
軸材としては、図9に示すような、結合部の形状が異なる4種類のものを用意した。図9(a)はストレート形状の軸材、図9(b)は図3(a)に示したものと同じ深さ0.5mmの溝加工を施した軸材、図9(c)は平目ロール(呼び20)を施した軸材、図9(d)はローレット(呼び24)を施した軸材である。
【0082】
なお、図9(b)〜(d)の加工部分(結合強化部)の幅はいずれも6mmである。他の形状は前述したものと同様である。また、各軸材に使用した材質はS45Cであるが、図9(b)の溝加工を施した軸材に限り、SUS304からなる軸材も用意した。さらに、φ16xφ10xt0.5mmのSK5製のリング材を用意して、粉末成形体の上下面にくるように配設した。
これらを用いて図4に示した場合と同様にして、金型潤滑温間成形による粉末一体成形を行い、種々の複合部材を製作した。なお、成形圧力は1176MPaで統一した。そして、各複合部材について、粉末成形したままのものと、それを大気中で400℃x30分間加熱処理したものの2種類を製造した。
【0083】
▲2▼試験片の評価
こうして得た複数種の試験片について、図10に示すようにして、軸材と粉末成形体との結合強度を測定した。すなわち、各試験片の複合部材を粉末成形体部分で固定支持した状態のまま、軸材の上方から荷重を印加し、軸材が粉末成形体から押し抜かれるときの荷重、つまり、軸材が下方に移動して軸材と粉末成形体との結合が破壊されたときの破壊荷重を測定した。そして、その破壊荷重を、ストレート形状の軸材(図9(a))における結合部の面積(φ10x9mm)で除して、軸方向の剪断応力、つまり破壊応力を求めた。この破壊応力を各軸材毎に棒グラフとして図11に示した。図11中のa〜dは、図9中のa〜dに対応している。
【0084】
結合部が平滑な軸材(図9(a))のとき、粉末成形のままの複合部材の破壊応力は25MPa(抜荷重:740kgf)であった。通常の粉末成形法の場合(金型潤滑温間成形法でない場合)における金型から粉末成形体を抜出すときの抜出力が約15MPa程度であることを考えると、上記破壊応力は相当高い値であるといえる。そして、その複合部材を400℃で加熱処理したものの破壊応力は40MPa(抜荷重:1200kgf)と大幅に向上していた。
【0085】
さらに、結合部に溝や凹凸をつけた図9(b)〜(d)に示す軸材を用いた複合部材では、粉末成形のままでも破壊応力が54MPa以上と高く、400℃で加熱処理したものの破壊応力は、78MPa以上にも達していた。従って、これらの破壊応力は、結合部が平滑な軸材を使用した場合の破壊応力に対して、2〜3倍にも向上していることになる。
【0086】
なお、図11には示していないが、SUS304からなる軸材を使用した複合部材でも、400℃で加熱処理することにより、その破壊応力が83MPaにも達していた。このような高い破壊応力は、本実施例に係る複合部材を、例えば、モータのロータ等に適用した場合、十分過ぎるほどの強度といえる。
【0087】
(3)一体成形複合部材の結合強度(周方向)
一体成形した複合部材の軸材と粉末成形体との周方向の結合強度を次のようにして調べた。
▲1▼試験片の製造
S45Cからなり結合部が溝付き形状の軸材(図9(b))を芯材とし、表1に示す3種類の原料粉末を使用して、上述の場合と同様に複合部材の試験片No.1〜4を製造した。なお、表1中のAstaloyMoは、上記ヘガネス社製の低合金鋼粉末であり、組成はFe−1.5%Mo(質量%)である。ここでは、このAstaloyMoに黒鉛0.2質量%を添加したものを原料粉末とした。
【0088】
ここで前述のSomaloy500を原料粉末とする複合部材の試験片は、粉末成形体のままのもの(試験片No.1)およびそれを大気中で400℃x30分加熱処理したもの(試験片No.2)の両方を用意した。
また、前述のABC100.30を原料粉末とする試験片No.3およびAstaloyMoに黒鉛0.2質量%を加えた粉末を原料粉末とする試験片No.4は、いずれも、粉末成形後の複合部材を窒素ガス雰囲気中で1150℃x30分間加熱し、焼結させたものである。
【0089】
▲2▼試験片の評価
こうして得た4種の試験片についてねじり試験を行った。各試験片の軸材と粉末成形体(または焼結体)との結合が破壊されて両者が分離または回転したときのトルクを測定した。そして、そのトルクを、ストレート形状の軸材(図9(a))における結合部の面積(φ10x9mm)で除して、周方向の剪断応力、つまり破壊応力を求めた。各試験片毎の破壊応力を表1に併せて示した。なお、このねじり試験の実施に際して、試験片を試験装置に取付けるために、軸の端部および粉末成形体等の端面に適宜加工を施した。
【0090】
表1から明らかなように、粉末成形体のままの試験片No.1→400℃x30分の焼鈍工程を施した試験片No.2→1150℃x30分の焼結工程の試験片No.3、4の順でねじり強度が向上している。特に、焼結工程を施すことにより、ねじり強度は格段に向上した。もっとも、試験片No.1のねじり強度でも、モータのロータ等としては十分過ぎるほどの強度である。
【0091】
なお、試験片No.3が試験片No.4よりも、ねじり強度が若干大きいのは、軸材と各試験片の粉末成形体(または焼結体)との間で、Cによる拡散接合の影響が出現したためと思われる。すなわち、試験片No.3の粉末成形体等はCを含有していないのに対して試験片No.4の粉末成形体等はCを含有している。このため、軸材(C:0.45質量%)との間で生じるC濃度の格差は、試験片No.3の方が大きくなり、その分、Cによる拡散接合が進行したためと思われる。
【0092】
(4)一体成形複合部材の磁気特性
一体成形した複合部材をモータのロータに使用することを想定して、軸材に結合させる粉末成形体(圧粉磁心)の磁気特性を測定した。
▲1▼試験片の製造
原料粉末は前述のSomaloy500を使用した。金型は、外径:φ39mm×内径φ30mmのものを使用した。そして、これらを用いて前述した金型潤滑温間成形法により、厚さ5mmのリング状をした磁気特性測定用の試験片No.5〜8を製造した。
【0093】
ここで、試験片No.5〜7は、それぞれ、充填した粉末上の、内径側、中央、外径側の各位置にリング材(補強材)を配置し、成形圧力1568MPaで一体成形したものである。これらのリング材は、厚さ1mmの電磁鋼板(Fe−1%Si:質量%)から、幅2mmのリング片を放電加工によって切出したのものである。これらのリング材の内径x外径を具体的にいうなら、φ30xφ34、φ32.5xφ36.5およびφ35xφ39となる。
【0094】
▲2▼試験片の評価
こうして得た各試験片について各種磁気特性、比抵抗および密度を測定し、その結果を表2に示した。
表2中、静磁場特性は直流自記磁束計(メーカ:東英工業、型番:MODEL−TRF)により測定した。交流磁場特性は交流B−Hカーブトレーサ(メーカ:理研電子、型番:ACBH−100K)により測定した。
静磁場中の磁束密度は、その磁界の強さを順次0.5、1、2、5、8、10kA/mと順次変更したときにできる磁束密度を示したものであり、表2中にそれぞれB0.5k、B1k、B2k、B5k、B8k、B10kとして示した。
【0095】
表2中の交流磁場特性は、圧粉磁心を、400Hzまたは800Hzの1.0Tの磁場中に置いたときの高周波損失を測定したものである。
比抵抗は、マイクロオームメータ(メーカ:ヒューレットパカード(HP)社、型番:34420A)を用いて4端子法により測定した。
密度は、各試験片全体の平均密度をアルキメデス法により測定したものである。
【0096】
試験片No.5〜8を比較すると、上記リング材を一体成形しなかった試験片No.8は比抵抗がもっとも大きかった。しかし、その他の磁束密度や鉄損等の磁気特性はいずれも、リング材を設けた試験片No.5〜7の方が優れていた。また、試験片No.5〜7を比較すると、リング材を試験片の内径側に配設した試験片No.5の方が比抵抗は大きくなっているが、その他の磁束密度や鉄損等はそれらの間で大差がなかった。
【0097】
従って、粉末成形体を圧粉磁心とする複合部材を、例えば、10kHzを超えるような高周波域内で使用する場合なら、比抵抗が大きくて渦電流損の低減を図れる試験片No.8のような上記リング材を配設しないものが好ましい。逆に、1kHz未満の高周波域内で使用する場合なら、磁束密度の向上等を図れる試験片No.5〜7のような上記リング材を配設したものが好ましい。さらに、それらの中間にある周波域内で使用する場合なら、磁束密度の向上や鉄損の低減等を図れる試験片No.5のような上記リング材を内径側に配設したものが好ましい。
【0098】
なお、上記実施例では、芯材が軸材からなる場合について主に説明したが、芯材は軸材に限らず、粉末一体成形により締り嵌め状態で強固に結合されるものであれば、何でもよい。従って、試験片No.5のように内径側に埋設されたリング材を、本発明の芯材として考えて良い。また、芯材は軸材に限らないことから、本発明でいう複合部材は必ずしも可動部材である必要はない。例えば、インバータ装置に使用されるリアクトル等を構成する部材であっても良い。
【0099】
以上、本発明の一体成形複合部材の製造方法によると、芯材と粉末成形体等が強固に結合した複合部材を容易に得られる。また、得られた複合部材は、例えば、芯材と粉末成形体等との間で異なった特性を付与することも容易である。具体的には、原料粉末に磁性粉末を使用して粉末成形体を圧粉磁心または圧粉磁石とすれば、低コストで高性能なモータのロータシャフト等が得られる。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】粉末成形体の成形圧力とスプリングバック量との関係を示すグラフである。
【図2】粉末成形体への内部潤滑剤の添加量と抗折力との関係を示すグラフである。
【図3】複合部材の軸材の形態を示す図であり、同図(a)は潤滑剤塗布前のものであり、同図(b)は潤滑剤塗布後のものである。
【図4】軸材をセットした金型に原料粉末を充填した様子を示す粉末成形装置の模式図である。
【図5】粉末一体成形により、軸材にリング状の粉末成形体が結合されてなる複合部材を示す部分断面図である。
【図6】その複合部材に補強材であるリング材を埋設した状態を示す部分断面図であり、同図(a)は下面外周側にリング材を埋設した状態を示し、同図(b)は下面内周側にリング材を埋設した状態を示し、同図(c)は上面外周側と下面内周側にリング材を埋設した状態を示す。
【図7】中央部を空洞とした複合部材を示す部分断面図であり、同図(a)はパイプ状軸材を芯材としたものを示し、同図(b)は鍔付きパイプ状軸材を芯材としたものを示し、同図(c)は有底円筒状の外ケースおよび鍔の付いた内リブを芯材としたものを示し、同図(d)は鍔付き外ケースを芯材としたものを示す。
【図8】芯材を兼用する補強材(リング材)を埋設した一体成形複合部材を示す断面図であり、同図(a)は上面内周側にリング材を埋設した状態を示し、同図(b)は上面中央にリング材を埋設した状態を示し、同図(c)は上面外周側にリング材を埋設した状態を示す。
【図9】軸材の結合部の形態を示す図であり、同図(a)はストレート状の軸材を示し、同図(b)は溝付き軸材を示し、同図(c)は平目ロール加工をした軸材を示し、同図(d)は斜め方向のローレット加工をした軸材を示す。
【図10】上記複合部材の軸方向の結合強度を測定する様子を示す図である。
【図11】図9に示した軸材を用いた各種複合部材の軸方向の結合強度を示す棒グラフである。
Claims (12)
- 全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした金属粉末を主とする原料粉末を芯材の周囲に充填された状態とする充填工程と、
該充填工程後の原料粉末を780MPa以上の成形圧力で加圧して該芯材に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体を成形する成形工程と、
を備えることを特徴とする一体成形複合部材の製造方法。 - さらに、前記充填工程前に前記金型のキャビティ内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布する塗布工程を備え、
前記成形工程は、前記原料粉末を温間状態で加圧成形する温間加圧成形工程である請求項1に記載の一体成形複合部材の製造方法。 - 前記芯材は、前記粉末成形体と結合しない非結合部に前記高級脂肪酸系潤滑剤が塗布されている請求項2に記載の一体成形複合部材の製造方法。
- 前記粉末成形体と結合する結合部には前記高級脂肪酸系潤滑剤が塗布されていない請求項2に記載の一体成形複合部材の製造方法。
- 前記金属粉末は、磁性粉末である請求項1〜4のいずれかに記載の一体成形複合部材の製造方法。
- さらに、前記成形工程後に前記芯材に結合した状態にある前記粉末成形体を焼結させる焼結工程を備える請求項1に記載の一体成形複合部材の製造方法。
- 芯材と、
全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした金属粉末を主とする原料粉末を該芯材の周囲に充填された状態にした後に780MPa以上の成形圧力で加圧して成形され該芯材に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体と、
からなることを特徴とする一体成形複合部材。 - 前記芯材は、前記粉末成形体と結合する結合部の少なくとも一部分に該粉末成形体との結合を強化する結合強化部を有する請求項7に記載の一体成形複合部材。
- さらに、前記粉末成形体の内部または表面の少なくとも一部に設けられ該粉末成形体を補強する補強材を備える請求項7に記載の一体成形複合部材。
- 前記芯材に前記粉末成形体を結合させた状態で加熱し、少なくとも該粉末成形体を焼結体とした請求項7〜9のいずれかに記載の一体成形複合部材。
- 前記金属粉末は磁性粉末であり、
前記粉末成形体は磁極を構成し、
前記芯材は電磁駆動装置の駆動軸である請求項7に記載の一体成形複合部材。 - 駆動軸と、
全体100質量%に対して内部潤滑剤を0.05質量%以下にした磁性粉末を主とする原料粉末を該駆動軸の周囲に充填された状態にした後に780MPa以上の成形圧力で加圧して成形され該駆動軸に締り嵌め状態で一体的に結合された粉末成形体と、を備えることを特徴とする電磁駆動装置。
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