JP2005281690A - 導電性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電性に優れ、熱水抽出によるイオン性不純物が少なく、曲げ特性に優れた導電性樹脂組成物およびその成形体を提供する。
【解決手段】 (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む導電性樹脂組成物およびその成形体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性、および強靭性に優れたモールド成形性が良好な導電性樹脂組成物と、その成形体に関する。本発明の導電性樹脂組成物ないし成形体は、燃料電池用セパレータとしての用途に、特に好適に使用可能である。
従来、高い導電性が求められる用途に対しては、金属や炭素材料等の材料が用いられてきた。中でも、炭素材料は導電性に優れ、金属のような腐食がなく、耐熱性、潤滑性、熱伝導性、耐久性等にも優れた材料であることから、エレクトロニクス、電気化学、エネルギー、輸送機器等の分野で重要な役割を果たしてきた。そして、炭素材料と高分子材料の組み合わせによる複合材料においても目覚ましい発展を遂げ、その結果、このような複合材料も高性能化、高機能性化の一翼を担って来た。特に、高分子材料との複合化により成形加工性の自由度が向上したことが、導電性が要求される各分野で炭素材料が発展してきた一つの理由である。
導電性が要求される炭素材料の用途としては、回路基板、抵抗器、積層体、電極等の電子材料や、ヒーター、発熱装置部材、集塵フィルタエレメント等の部材等が挙げられる。これらの用途においては、導電性と共に高い耐熱性が要求されている。
他方、近年、環境問題、エネルギー問題の観点から、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素と酸素を利用して電気分解の逆反応で発電し、水以外の排出物がないクリーンな発電装置である。燃料電池は、その電解質の種類に応じて数種類に分類されるが、これらの中でも、固体高分子型燃料電池は低温で作動するため、自動車や民生用として最も有望である。該燃料電池は、例えば、高分子固体電解質、ガス拡散電極、触媒、セパレータから構成された単セルを積層することによって、高出力の発電が可能になる。
上記構成を有する燃料電池において、単セルを仕切るためのセパレータには、通常、燃料ガス(水素等)と酸化剤ガス(酸素等)を供給し、発生した水分(水蒸気)を排出するための流路(溝)が形成されている。それゆえ、セパレータにはこれらのガスを完全に分離できる気体不透過性と、内部抵抗を小さくするための高導電性が要求される。更には、熱伝導性、耐久性、強度等に優れていることも要求される。
これらの要求を達成するセパレータを得る方法としては、例えば、炭素質粉末に結合材を加えて加熱混合後CIP成形(Cold Isostatic Pressing;冷間等方圧加工法)し、次いで焼成、黒鉛化して得られた等方性黒鉛材に熱硬化性樹脂を含浸、硬化処理し、溝を切削加工によって彫るという燃料電池用黒鉛部剤の製造方法(特許文献1)、炭素粉末または炭素繊維を含む紙に熱硬化性樹脂を含浸後、積層圧着し、焼成する炭素薄板の製造方法(特許文献2)およびフェノール樹脂をセパレータ形状の金型に射出成形し、焼成する燃料電池用セパレーター(特許文献3)等が開示されている。
これらの焼成処理された材料は高導電性および耐熱性には優れるが、曲げ強度が劣るという問題がある上、更に焼成に要する時間が長く生産性が乏しいという問題もある。また、切削加工が必要な場合は、更に高コストになる。
一方、量産性が高く低コストが期待できる手法としてモールド成形法が検討されているが、それに適用可能な材料としては導電性樹脂組成物が一般的である。例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛、カーボンからなるセパレータが開示されている。
また、特許文献7、特許文献8では、ホウ素を含有した黒鉛と樹脂の組合せによる高導電性樹脂組成物が開示されている。
特開平8−222241号公報。 特開昭60−161144号公報。 特開2001−68128号公報。 特開2000−182630号公報。 特開2000−331690号公報。 特開2001−067932号公報。 特開2002−060639号公報。 特開2003−020418号公報。
上述したように燃料電池用セパレータは高導電性と、腐食に強く、強靭性があって割れにくく、コストが低いことが特に要求されている。更に、セパレータから溶出するようなイオン性の不純物が多いと電解質膜の性能低下やショートの原因になるため問題となる。
一方、最も低コストが期待できる、カーボンと樹脂の複合材料によるモールド成形タイプのセパレータの検討も多くなされているが、高い導電性を発現するために導電性付与材を高充填するため、流動性が悪く成形加工に問題があった。
そこで、導電性が高く、腐食しない導電性付与材としてホウ素をドープした炭素材料と樹脂の組合せによるカーボン樹脂複合材料が検討された。
しかし、熱処理の際ホウ素は窒素など他の元素と化合物をつくり、また、種々の不純物を引付けやすい。そのため、炭素材料中の不純物が多くなり、熱水抽出などによる溶出イオンが多く、バインダー樹脂との界面強度も低いため、耐久性として充分でなかった。
本発明の目的は、上記した従来技術における問題を解消することが可能な導電性樹脂組成物ないしその成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、導電性に優れ、熱水抽出によるイオン性不純物が少なく、且つ曲げ特性に優れた導電性樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のホウ素含有炭素質材料と樹脂バインダーとを組み合わせることが、上記課題の解決に極めて効果的なことを見出し、かかる知見に基き本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば以下の[1]〜[12]の態様を含む。
〔1〕 (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、窒素分および硫黄分を含むホウ素含有炭素質材料の質量を基準とする)。
〔2〕 (A)ホウ素含有炭素質材料中のホウ素が0.01〜5質量%である請求項〔1〕の導電性脂組成物。
〔3〕 (A)ホウ素含有炭素質材料中の窒化ホウ素(BN)が0.5質量%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、BNを含むホウ素含有炭素質材料の質量を基準とする)。
〔4〕 (A)ホウ素含有炭素質材料20〜99質量%および(B)樹脂バインダー80〜1質量%を含む〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、(A)成分および(B)成分の合計質量(100質量%)を基準とする)。
〔5〕 (A)ホウ素含有炭素質材料1に対し純水5の質量比で、温度150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率が150μS/cm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔6〕 (A)ホウ素含有炭素質材料は、1MPaに加圧した状態での加圧方向の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下である特性を有することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔7〕 (A)ホウ素含有炭素質材料の原料が、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンおよびフラーレンからなる群から選ばれた1種ないし2種以上の組み合わせである〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔8〕 (B)樹脂バインダーがエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、エラストマー成分を含む樹脂バインダーの質量を基準とする)。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を成形してなる導電性成形体。
〔10〕 体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする〔9〕記載の導電性成形体。
〔11〕 〔9〕または〔10〕に記載の導電性成形体を使用してなる燃料電池用セパレータ。
〔12〕 両面に幅0.1〜2mm、深さ0.1〜1.5mmの溝が形成され、最薄部の厚さが1mm以下、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする〔11〕に記載の燃料電池用セパレータ。
本発明の樹脂組成物は、導電性および曲げ特性に優れ、且つ熱水抽出水伝導率が低いという特性を有する。このため、本発明の樹脂組成物は、例えば、燃料電池用セパレータ用途として特に有用である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、(A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む。
(ホウ素含有炭素質材料)
本発明における(A)ホウ素含有炭素質材料(以下「(A)成分」ともいうこともある。)は、窒素含有量が0.2質量%以下および硫黄含有量が0.05質量%以下であることが必要である。本発明においては、窒素含有量は0.1質量%以下0.0001質量%以上および硫黄含有量0.02質量%以下0.0001質量%以上であることが好ましく、更に窒素含有量0.05質量%以下0.0001質量%以上および硫黄含有量0.01質量%以下0.0001質量%以上であることが特に好ましい。窒素成分が0.2質量%を超え、および/又は硫黄成分が0.05質量%を超えると、本願発明の導電性樹脂組成物の成形体(特に燃料電池用セパレータ)のイオン性不純物の溶出が多くなり耐久性が問題となるため好ましくない。
(ホウ素)
本発明の(A)成分中のホウ素量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜4質量%がより好ましく、0.02〜4質量%が更に好ましい。ホウ素量が0.01質量%未満では、目的とする高導電性の炭素質材料が得られないことがある。一方、ホウ素量が5質量%を超えても更なる導電性の向上は望めない。
炭素質材料にホウ素を含有させる方法としては、例えば、炭素質材料にホウ素源として、B単体、B4C、BN、B23、H3B03等を添加し、よく混合して約2000〜3200℃のヘリウム、アルゴン等、0族元素の不活性ガス雰囲気中で熱処理する方法が挙げられる。不活性ガスとして窒素を用いるとホウ素と結合して、炭素質材料量に窒素分が残留するので好ましくない。一般の炭素質材料ではホウ素を含まず、BNが形成されないので、不活性ガスとしてN2を使用することも可能である。
ホウ素化合物の混合が不均一な場合には、炭素質材料が不均一になるだけでなく、熱処理によって部分的に焼結する可能性が高くなる。ホウ素化合物を均一に混合させるために、これらのホウ素源は50μm以下、好ましくは20μm以下程度の粒径を有する粉末にして混合することが好ましい。
また、炭素質材料中にホウ素および/またはホウ素化合物が混合されている限り、ホウ素の含有の形態は特に制限されないが、黒鉛結晶の層間に存在するもの、黒鉛結晶を形成する炭素原子の一部がホウ素原子に置換されたものが、より好適なものとして挙げられる。また、炭素原子の一部がホウ素原子に置換された場合のホウ素原子と炭素原子の結合は、共有結合、イオン結合等どのような結合様式であってもよい。
(BN)
本発明の(A)成分中にはBNが0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.08質量%以下である。BNの含有量が0.5質量%を超えると、BNが高温の熱水により加水分解しイオン性の不純物となるため好ましくない。
(熱水抽出)
更に、本発明の(A)成分は、純水(導電率2μS/cm以下):(A)成分の質量比が5:1で、150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率(23℃にて測定)が150μS/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、100μS/cm以下、更に好ましくは80μS/cm以下である。熱水抽出水の導電率が150μS/cmを超えると成形体としたときの耐久性が落ちるため好ましくない。
(粉末圧密比抵抗)
更に、本発明の(A)成分は、1MPa加圧下において、加圧方向のA成分の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.04Ωcm以下であり、更に好ましくは0.02Ωcm以下である。粉末圧密比抵抗が0.05Ωcmを超えると成形体にしたときの導電性が悪くなるため好ましくない。
((A)成分の原料)
本発明の(A)成分の原料としては、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、カーボンブラック、炭素繊維、アモルファスカーボン、膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレンの中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが挙げられる。中でも、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる組み合わせが好ましく。より好ましくは、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる組み合わせが好ましい。ホウ素をより包括させるために、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる原料が更に好ましい。
(人造黒鉛)
上記した人造黒鉛を得る方法としては、通常は先ず石油系ピッチ、石炭系のピッチ等の原料を炭化してコークスとする。コークスから黒鉛化粉末にするには一般的にコークスを粉砕後黒鉛化処理する方法、コークス自体を黒鉛化した後粉砕する方法、あるいはコークスにバインダーを加え成形、焼成した焼成品(コークスおよびこの焼成品を合わせてコークス等という)を黒鉛化処理後粉砕して粉末とする方法等がある。原料のコークス等はできるだけ、結晶が発達していない方が良いので、2000℃以下、好ましくは1200℃以下で加熱処理したものが適する。また、窒素分、硫黄分の含有量を所定値以下とする為には黒鉛化処理等の熱処理をヘリウム、アルゴン等の0族の不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。ホウ素を含有しない炭素質材料の場合には、不活性ガスとして窒素を使用しても特に問題はないが、ホウ素を含有すると窒素と結合しBNを生成する為、好ましくない。
(カーボンブラック)
上記したA成分の原料一例であるカーボンブラックとしては、天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるファーネスカーボン、天然ガスの熱分解により得られるサーマルカーボン等が挙げられる。
(炭素繊維)
上記した炭素繊維としては、重質油、副生油、コールタール等から作られるピッチ系と、ポリアクリロニトリルから作られるPAN系が挙げられる。
(アモルファスカーボン)
上記したアモルファスカーボンを得る方法としては、フェノール樹脂を硬化させて焼成処理し粉砕して粉末とする方法、または、フェノール樹脂を球状、不定形状の粉末の状態で硬化させて焼成処理する方法などがある。導電性の高いアモルファスカーボンを得るためには2000℃以上に加熱処理することが好ましい。
(膨張黒鉛粉末)
上記した膨張黒鉛粉末としては、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛等高度に結晶構造が発達した黒鉛を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末等が挙げられる。
(気相法炭素繊維)
上記した気相法炭素繊維は、例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を原料に、フェロセン等の遷移金属触媒の存在下で、水素ガスとともに800〜1300℃で熱分解反応させることによって得られるものである、繊維径が約0.5〜10μmであって、更に、約2300〜3200℃で黒鉛化処理したものが好ましい。熱分解反応時に不活性ガスを使用する場合には、N2ではなくアルゴン等の0族元素ガスを使用することが望ましい。
(カーボンナノチューブ)
上記したカーボンナノチューブは、近年その機械的強度のみならず、電界放出機能や、水素吸蔵機能が産業上注目され、更に磁気機能にも目が向けられ始めているもので、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバー等とも呼ばれており、繊維径が約0.5〜100nmのものである。カーボンナノチューブにはチューブを形成するグラファイト膜が一層である単層カーボンナノチューブと、多層である多層カーボンナノチューブがある。本発明では、単層および多層カーボンナノチューブのいずれも使用可能であるが、単層カーボンナノチューブがより高い導電性や機械的強度が得られる傾向があるため好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば、斉藤・板東「カーボンナノチューブの基礎」(23〜57頁、コロナ社出版、1998年発行)に記載のアーク放電法、レーザ蒸発法および熱分解法等により作製し、更に純度を高めるために水熱法、遠心分離法、限外ろ過法、および酸化法等により精製することによって得られる。本発明では、更に、不純物を取り除くために約2300〜3200℃の0族元素の不活性ガス雰囲気中で高温処理することが好ましい。
(粒度)
本発明の(A)成分の粒度としては、上記原料を必要とされる粒度に予め粉砕や分級等で調整しておいても、熱処理後粉砕や分級等で調整してもよいが、予め必要とされる粒度に粉砕等で調整しておくことが好ましい。熱処理後に粉砕すると改質された表面が損傷を受けるため好ましくない。
(粉砕・分級)
材料の粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。また、微粉砕機であるスクリーンミル、ターボミル、スーパーミクロンミル、ジェットミルでも条件を選定することによって使用可能である。これらの粉砕機を用いて粉砕し、その際の粉砕条件の選定、および必要により粉末を分級し、平均粒径や粒度分布をコントロールする。
材料を分級する方法としては、分離が可能であれば何れでも良いが、例えば、篩分法や強制渦流型遠心分級機(ミクロンセパレーター、ターボプレックス、ターボクラシファイアー、スーパーセパレーター)、慣性分級機(改良型バーチュウアルインパクター、エルボジェット)等の気流分級機が使用できる。また湿式の沈降分離法や遠心分級法等も使用できる。
(熱処理)
熱処理としては、上記の原料とホウ素源をよく混合して均一にし、その粉末を黒鉛ルツボに入れ通電するアチソン炉を用いる方法、高周波誘導加熱炉を用い黒鉛発熱体により粉末を加熱する方法等が挙げられる。処理温度は約2000〜3200℃で、0族元素の不活性ガス雰囲気中で熱処理する。
(樹脂バインダー)
上述した(A)ホウ素含有炭素質材料とともに、本発明の組成物を構成すべき(B)樹脂バインダー(以下「(B)成分ということもある。」としては、一般的にバインダーと称されている樹脂である限り特に制限されない。このバインダーとしては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
(熱可塑性樹脂)
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンを主体とする共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン等)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PES)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PES)が耐水性と耐熱性の点から好ましい。
(熱硬化性樹脂)
また、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アリルエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アリルエステル樹脂、1,2−ポリブタジエンが好ましく、1種または2種以上を混合したものでもよい。
(好適な樹脂)
また、気密性が要求される分野では、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、アリルエステル樹脂、1,2−ポリブタジエンなどが硬化体中に空隙がなく気密性の高い成形体を得ることができるため好ましい。
更に、耐熱性、耐酸性などが要求される分野では、ビスフェノールA型、ノボラック型、クレゾールノボラック型などの分子骨格をもつ樹脂や、オレフィン系の分子骨格をもつ樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、また、1,2−ポリブタジエン等が好ましい。
(組成比率)
本発明の導電性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の組成比率は、A成分:B成分が(20〜99質量%):(80〜1質量%)であることが好ましく、より好ましくは、(30〜95質量%):(70〜5質量%)、更に好ましくは(50〜92質量%):(50〜8質量%)である。(A)成分が20質量%未満では、高い導電性が発現できない。一方、99質量%を超えると加工が困難となるため好ましくない。
(エラストマー成分)
本発明の(B)成分にはエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことが好ましく、より好ましくは1〜80質量%、更に好ましくは2〜75質量%である。エラストマー成分が0.5質量%未満では脆い材料となる。一方、80質量%を超えると剛性が不足し成形体にしたときリブが潰れてしまうため好ましくない。
上記エラストマー成分は、常温付近でゴム状弾性を有する高分子であり、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、エチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、四フッ化エチレン・プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴム、ブチルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上を組み合わせで用いてもよい。
これらの中でも、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、エチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂が耐水性の点で好ましい。
(添加剤)
更に、本発明の導電性樹脂組成物には、硬度、強度、導電性、成形性、耐久性、耐候性、耐水性等を改良する目的で、ガラスファイバー、ウィスカー、金属酸化物、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、親水性付与剤等の添加剤を添加してもよい。
(樹脂組成物の製法)
本発明の導電性樹脂組成物は、例えば、上記各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般に用いられている混合機、混練機を使用し、均一に混合させて得ることができる。
本発明の導電性樹脂組成物は、成形機や金型への材料供給を容易にする目的で、粉砕あるいは造粒してもよい。粉砕には、ホモジナイザー、ウィレー粉砕機、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル、ブレンダー)等が使用でき、材料同士の凝集を防ぐため冷却しながら粉砕することが好ましい。造粒には、押出機、ルーダー、コニーダー等を用いてペレット化する方法、あるいはパン型造粒機等を使用すればよい。
(成形体)
本発明の導電性樹脂組成物を成形体にする方法は特に制限されるものはない。成形方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。これらの成形加工時には金型内あるいは金型全体を真空状態にすることが好ましい。また、金型温度を上下に調節できる装置を具備することは、高精度の成形体が得られるため更に好ましい。
厚み精度の良い成形体を得るためには、一度押出機、ロール、カレンダー等を用いて所定の厚み、幅のシートに成形した後、再度ロールやカレンダーで圧延することが好ましい。また、シート中のボイドやエアーをなくすためには、真空状態で押出成形することが好ましい。
得られたシートは目的の大きさにカットまたは打ち抜いた後、金型内に1枚または2枚以上並列に並べるか、重ねて挿入し、圧縮成形機で成形することによって成形体を得る。欠陥のない良品を得るためには、キャビティ内を真空にすることが好ましい。
(成形体の物性)
本発明の導電性樹脂組成物の成形体は、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm以下である。体積固有抵抗が0.1Ωcmを超えると、高導電性が要求される分野では制限を受けることがあるため好ましくない。
本発明の導電性樹脂組成物の成形体は、カーボンペーパーとの接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm2以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm2以下である。接触抵抗が0.1Ωcm2を超えると、高導電性が要求される分野では制限を受ける可能性がある。
(燃料電池用セパレータ)
本発明の導電性樹脂組成物を燃料電池用セパレータ(以下「セパレータ」ということもある。)に成形する方法としては特に制限されるものはなく、例えば圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられる。また、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にする方法がより好ましい。
圧縮成形においては、多数個取り金型を用いることが生産性の点で好ましい。更に好ましくは、多段プレス(積層プレス)を用いると小さな出力で多数の製品を成形できる。平面状の製品で面精度を向上させるためには、前記したように一度シートを成形してから圧縮成形することが好ましい。
射出成形においては、更に成形性を向上させる目的で、炭酸ガスを成形機シリンダーの途中から注入し、材料中に溶かし込んで超臨界状態で成形する方法を採用してもよい。製品の面精度を上げるには、射出圧縮方法を用いることが好ましい。射出圧縮法としては、金型を開いた状態で射出して閉じる方法、金型を閉じながら射出する方法、閉じた金型の型締め力をゼロにして射出してから型締め力をかける方法等が挙げられる。
使用する金型については、制限されるものはないが、例えば、材料の固化が速く、流動性が悪い場合は、キャビティ内に断熱層を仕込んだ断熱金型を用いることが好ましい。また、金型温度を成形時に上下できる温度プロファイルシステムを導入した金型がより好ましい。温度プロファイルの方法としは、誘導加熱と冷媒(空気、水、オイルなど)の切換えによるシステム、熱媒(熱水、加熱オイルなど)と冷媒の切換えによるシステムなどが挙げられる。
金型温度は、組成物の種類に応じて最適温度を選定、探索することができる。例えば、90〜200℃の温度範囲で、10〜1200秒という範囲で適宜決定することができる。成形品を高温で取出した場合、冷却する場合があるが、その方法は制限されるものでない。例えば、反りを抑制する目的で、成形品を冷却板で挟んで冷却する方法、または、金型ごと冷却する方法などが挙げられる。
(セパレータの形状等)
燃料電池用セパレータは、両面または片面にガスを流すための流路を形成する必要があるが、上記成形法により形成することができる。ガスを流すための流路は導電性樹脂組成物の成形体を機械加工により、当該流路(溝等)を形成してもよい。また、ガス流路の反転形状を有する金型を使用し圧縮成形、スタンプ成形等によってガス流路形成を行ってもよい。
本発明のセパレータの流路断面形状や流路形状は特に制限されるものはない。例えば、流路断面形状は長方形、台形、三角形、半円形などが挙げられる。流路形状は、ストレート型、蛇行型などが挙げられる。流路の幅は0.1〜2mm、深さ0.1〜1.5mmが好ましい。
本発明のセパレータの最薄部は1mm以下が好ましい。より好ましくは0.8mmである。1mmを超えるとセルの電圧降下が大きくなるため好ましくない。
(セパレータの物性)
本発明のセパレータは、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm以下である。体積固有抵抗が0.1Ωcmを超えると、高導電性が要求される分野では、制限を受けることがあるため好ましくない。
本発明のセパレータは、カーボンペーパーとの接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm2以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm2以下である。接触抵抗が0.1Ωcm2を超えると、高導電性が要求される用途では、制限を受ける恐れがある。
(用途)
また、本発明の導電性樹脂組成物は、モールド成形が容易なため燃料電池用セパレータ用途以外の分野の複合材料としても好適である。更に、その成形体は、黒鉛の導電性や熱伝導性を限りなく再現でき、成形精度等に優れる点で極めて高性能なものが得られる。従って、エレクトロニクス分野、電機、機械、車輌などの各種部品等の各用途に有用であり、特に、コンデンサー用または各種電池用集電体、電磁波遮蔽材、電極、放熱板、放熱部品、エレクトロニクス部品、半導体部品、軸受、PTC素子およびブラシ用として有望である。
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。
実施例、比較例で用いた炭素質材料の製法を以下に示す。
(A)成分:炭素質材料
<A1>:ホウ素含有黒鉛微紛(不純物BN含有0wt%)
非針状コークスであるエム・シー・カーボン(株)製MCコークスをパルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により約20μmの粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用い、気流分級を行った。得られた微粉砕コークス14.85kgに炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は20μmであり、窒素分は検出されなかった。
<A2>:気相法炭素繊維(以下、「VGCF」と略す。昭和電工登録商標。)とA1(黒鉛微粉)との混合物
上記A1の微粉砕コークス14.1kgにVGCF 0.75kgと炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は15μmであり、窒素分は検出されなかった。
<A3>:カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略す。)とA1(黒鉛微粉)との混合物
上記A1の微粉砕コークス14.1kgに、下記の方法で得たCNT0.75kg(製法は下記に記載)と炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は12μmであり、窒素分は検出されなかった。
<CNTの製法>
直径6mm、長さ50mmのグラファイト棒に、先端から中心軸に沿って直径3mm、深さ30mmの穴をあけ、この穴にロジウム(Rh):白金(Pt):グラファイト(C)を質量比率1:1:1の混合粉末として詰め込み、陽極を作製した。一方、純度99.98質量%のグラファイトからなる、直径13mm、長さ30mmの陰極を作製した。これらの電極を反応容器に対向配置し、直流電源に接続した。そして、反応容器内を純度99.9体積%のヘリウムガスで置換し、直流アーク放電を行った。その後、反応容器内壁に付着した煤(チャンバー煤)と陰極に堆積した煤(陰極煤)を回収した。反応容器中の圧力と電流は、600Torrと70Aで行った。反応中は、陽極と陰極間のギャップが常に1〜2mmになるように操作した。
回収した煤は、水とエタノールが質量比で1:1の混合溶媒中に入れ超音波分散させ、その分散液を回収して、ロータリエバポレーターで溶媒を除去した。そして、その試料を陽イオン界面活性剤である塩化ベンザルコニウムの0.1%水溶液中に超音波分散させた後、5000rpmで30分間遠心分離して、その分散液を回収した。更に、その分散液を350℃の空気中で5時間熱処理することによって精製し、繊維径が1〜10nm、繊維長が0.05〜5μmのカーボンナノチューブを得た。
<A4>:ホウ素含有黒鉛微紛(BN含有量0.7質量%)
上記A1の微粉砕コークス14kgに炭化ホウ素(B4C)1kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気に置換し放冷後、粉末を取り出し、0.92kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒子径18μmであり、窒素分を分析した結果、0.39質量%検出され、BNに換算すると約0.7質量%含有していた。
<A5>:ホウ素非含有黒鉛微紛
上記A1の微粉砕コークス15kgをヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.96kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒子径21μmであり、窒素分を分析した結果、検出されなかった。
<A6>:気相法炭素繊維(以下、「VGCF」と略す。昭和電工登録商標。)とA1(黒鉛微粉)との混合物(BN含有量0.6wt%)
上記A1の微粉砕コークス14.1kgにVGCF0.75kgと炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は14μmであり、窒素分を分析した結果、0.32質量%検出され、BNに換算すると約0.58質量%含有していた。
上記の炭素質材料の諸特性を表1に示す。
Figure 2005281690
炭素質材料の諸特性の測定方法を下記に示す。
<平均粒子径>
試料(炭素質材料)50mgを秤量し、50mlの蒸留水に添加し、更に2%Triton(界面活性剤)水溶液0.2mlを加えて3分間超音波分散させた後、日機装社製のマイクロトラックHRA装置で測定した。
<窒素分含有量>
JIS M8813(セミミクロガス化法)に準拠し、試料(炭素質材料)0.1gをスズカプセルに秤量し、水蒸気気流中で加熱・分解ガス化して、生成するアンモニアをホウ酸飽和溶液に捕集した後、これを硫酸標準溶液で滴定し、無水試料に対する質量百分率を求めて窒素の定量を行った。
<硫黄分含有量>
JIS M8813(高温燃焼法)に準拠し、試料(炭素質材料)0.1gを石英ボートに秤量し、酸素気流中で約1350℃に加熱し、硫黄を酸化してガス化し、これを過酸化水素水に捕集した後、陰イオンクロマトグラフィーで硫酸イオンの測定を行い試料中硫黄濃度に換算した。
<ホウ素含有量>
試料50mgをダイジェスター容器に秤量し、硫酸および硝酸を加え、マイクロ波加熱(230℃)して分解(ダイジェスター法)し、更に過塩素酸(HClO4)を加えて分解したものを水で希釈し、これをICP発光分析装置にかけて、ホウ素量を測定した。
<BN含有量>
前記セミミクロガス化法により測定した窒素の総量と、上記ICP発光分析装置により測定したホウ素の総量とのモル比からBN相当量を算出した。
<熱水抽出水導電率>
加圧分解容器(AD−70、ヤナコ製)を使用して、純水45g(2μS/cm以下)、試料(炭素質材料)9gを±0.05gまで量り採り、密閉して150±0.5℃に校正されたオーブンに入れ、120時間抽出する。その後、室温(23℃)まで冷却し、濾過し、その抽出水をHORIBA製の導電率計(ES−12)により測定した。
<粉末圧密比抵抗>
加圧方向の粉末圧密比抵抗は、図1に示した装置を用いて測定する。1、1’は電圧測定端子であり、図1(b)のように側壁の中央部に設置されている。2は試料である。3は側枠で、4は圧縮ロッドであり、すべて絶縁性の樹脂からなる。5、5’は銅製の電極で、6は電圧計、7は定電流発生電源である。この図1に示す四端子法を用いて、以下のように試料の比抵抗を測定する。
試料を圧縮ロッド4により圧縮し、1MPaまで加圧する。電極5より電極5’へ(加圧方向)、定電流(I)1Aを流す。端子1、1’により端子間の電圧(V)を測定する。試料の電気抵抗(端子間)をR2(Ω)とするとR2=V2/I2となる。これからρ2=R2×S2/L2により比抵抗を求めることができる(ρ2:比抵抗、S2=試料の通電方向、即ち加圧方向に対し、垂直方向の断面積(cm2)、L2は端子1、1’間の距離(cm)である)。実際の測定では、試料は底面が3cm×3cmの正方形、高さは1MPaの加圧状態で3〜4cmになるように試料を充填して測定した。
実施例1〜3、比較例1〜3
下記の表2に示す各成分および組成割合で原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度80℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度180℃、圧力15MPaで10分間硬化し、その後、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて成形体を得た。得られた成形体の特性を表3に示す。
Figure 2005281690
Figure 2005281690
表3から、ホウ素を含有し窒素、硫黄分が少なく、BNがほとんどない炭素質材料では、導電性が高く、曲げ特性に優れ、熱水によるイオン性不純物の抽出がほとんどない成形体が得られる。一方、比較例1、3のようにホウ素を含むが、不純物の多い炭素質材料を用いると熱水抽出水の導電率が高く、曲げ特性も悪くなる。また、比較例2のようにホウ素を含まないと導電性が悪くなる。
実施例4、比較例4
表4に示す各成分および配合割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度90℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度180℃、圧力15MPaで10分間硬化した。その後、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却した。更に、硬化促進させるために、300℃、窒素雰囲気のオーブン中で3時間アフターキュアーして成形体を得た。得られた成形体の特性を表5に示す。
Figure 2005281690
Figure 2005281690
表5から、ホウ素を含有し窒素、硫黄分が少なく、BNがほとんどない炭素質材料では、導電性が高く、曲げ特性に優れ、熱水によるイオン性不純物の抽出がほとんどない成形体が得られる。一方、ホウ素を含むが、不純物の多い炭素質材料を用いると熱水抽出水の導電率が高く、曲げ特性が悪い。
実施例5〜8、比較例5〜9
表6に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度200℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度230℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度135℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度60℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表7に示す。
Figure 2005281690
Figure 2005281690
表7から、ホウ素を含有し窒素、硫黄分が少なく、BNがほとんどない炭素質材料では、導電性が高く、曲げ特性に優れ、熱水によるイオン性不純物の抽出がほとんどない成形体が得られる。一方、比較例5、比較例7〜9のようにホウ素を含むが、不純物の多い炭素質材料を用いると熱水抽出水の導電率が高く、曲げ特性が悪い。また、比較例6のようにホウ素を含まないと導電性が悪くなる。
実施例9〜10、比較例10〜11
表8に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度200℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度220℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度140℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表9示す。
Figure 2005281690
Figure 2005281690
表9から、ホウ素を含有し窒素、硫黄分が少なく、BNがほとんどない炭素質材料では、導電性が高く、曲げ特性に優れ、熱水によるイオン性不純物の抽出がほとんどない成形体が得られる。一方、ホウ素を含むが、不純物の多い炭素質材料を用いると熱水抽出水の導電率が高く、曲げ特性が悪い。
実施例11、比較例12
表10に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度300℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度320℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度265℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表11に示す。
Figure 2005281690
Figure 2005281690
表11から、ホウ素を含有し窒素、硫黄分が少なく、BNがほとんどない炭素質材では、導電性が高く、曲げ特性に優れ、熱水によるイオン性不純物の抽出がほとんどない成形体が得られる。一方、ホウ素を含むが、不純物の多い炭素質材料を用いると熱水抽出水の導電率が高く、曲げ特性が悪い。
成形体の特性の測定方法を以下に示す。
<体積固有抵抗>
JIS K7194に準拠し、四探針法により測定した。
<接触抵抗>
カーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)との接触抵抗値(Rc)を図4に示す四端子法によって、3つの抵抗値を測定し、下記式により算出した。
具体的には、試験片(20mm×20mm×1mm)、カーボンペーパー(20mm×20mm×0.19mm)、金メッキ真鍮板(20mm×20mm×0.5mm)を使用し、試験片を該カーボンペーパーで挟み、更にそれを2つの金メッキ真鍮板で挟んで2MPaで均一に加圧し、金メッキ真鍮板間に1Aの定電流を貫通方向に流して、電圧を測定することで抵抗(R1)を算出する。同様にカーボンペーパー3枚を二つの金メッキ真鍮板で挟んで、同様な測定を行うことで抵抗(R2)を算出する。更に、カーボンペーパー2枚を二つの金メッキ真鍮板で挟んで、同様な測定を行うことで抵抗(R3)を算出した。以上の3つの抵抗値から下記式によって、カーボンペーパーと試験片との接触抵抗値を算出する。
Rc=(R1+R2−2R3)×S/2
Rc:接触抵抗(Ωcm2)、 S:接触面積(cm2
1:測定1により算出した抵抗(Ω)
2:測定2により算出した抵抗(Ω)
3:測定3により算出した抵抗(Ω)
<曲げ強度、曲げ弾性率および曲げ歪み>
島津製作所(株)製のオートグラフ(AG−10kNI)を用いて、JIS K6911法で、試験片(80mm×10mm×1.5mm)をスパン間隔64mm、曲げ速度1mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
実施例12
実施例1の組成物を、200mm×120mm×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面にできる平板を成形できる金型に投入し、380t圧縮成形機を用いて、金型温度180℃、50MPaの加圧下で10分間加圧加熱し、燃料電池用セパレータ形状の平板を得た。得られた平板は、両面溝付きで体積固有抵抗が5.6mΩcm、接触抵抗が3.1mΩcm2、熱伝導率が19W/m・K、通気率が2.3×10-9cm2/secであった。
実施例13
実施例5の組成物を、200mm×120mm×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面にできる平板を成形できる金型に投入し、380t圧縮成形機を用いて、金型温度230℃、50MPaの加圧下で3分間加圧加熱し、その後135℃まで温度を下げ5分間保持し、次ぎに60℃まで温度を下げて燃料電池用セパレータ形状の成形体を得た。得られた成形体は両面溝付きで体積固有抵抗が4.2mΩcm、接触抵抗が2.8mΩcm2、熱伝導率が21W/m・K、通気率が4.6×10-9cm2/secであった。
平板の特性の測定方法を以下に示す。
<熱伝導率>
レーザーフラッシュ法(t1/2法、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置 LF/TCM FA8510B 理学電気社製)により、試験片(直径 φ10mm、厚さ 1.7mm)を温度80℃、真空中、照射光ルビーレーザー光(励起電圧2.5kV)の条件で測定した。
<通気率>
JIS K7126 A法に準拠し、23℃でヘリウムガスを用いて測定した。
粉末圧密比抵抗(加圧方向)の測定方法を示す模式断面図である。 接触抵抗の測定方法を示す模式断面図である。
符号の説明
1、1’ 電圧測定端子
2 試料
3 側枠
4 圧縮ロッド
5、5’ 銅製の電極
6 電圧計
7 定電流発生電源
8 カーボンペーパー
9 試験片
10 金メッキ真鍮
11 定電流発生装置
12 電圧計

Claims (12)

  1. (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含むことを特徴とする導電性樹脂組成物。
  2. (A)ホウ素含有炭素質材料中のホウ素が0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性脂組成物。
  3. (A)ホウ素含有炭素質材料中の窒化ホウ素(BN)が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
  4. (A)ホウ素含有炭素質材料20〜99質量%および(B)樹脂バインダー80〜1質量%を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
  5. (A)ホウ素含有炭素質材料1に対し純水5の質量比で、温度150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率が150μS/cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
  6. (A)ホウ素含有炭素質材料は、1MPaに加圧した状態での加圧方向の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下である特性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
  7. (A)ホウ素含有炭素質材料の原料が、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンおよびフラーレンからなる群から選ばれた1種ないし2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
  8. (B)樹脂バインダーがエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする導電性成形体。
  10. 体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする請求項9記載の導電性成形体。
  11. 請求項9または請求項10に記載の導電性成形体を使用してなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  12. 両面に幅0.1〜2mm、深さ0.1〜1.5mmの溝が形成され、最薄部の厚さが1mm以下、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池用セパレータ。
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