JP2005281690A - 導電性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む導電性樹脂組成物およびその成形体である。
【選択図】 なし
Description
しかし、熱処理の際ホウ素は窒素など他の元素と化合物をつくり、また、種々の不純物を引付けやすい。そのため、炭素材料中の不純物が多くなり、熱水抽出などによる溶出イオンが多く、バインダー樹脂との界面強度も低いため、耐久性として充分でなかった。
本発明の目的は、上記した従来技術における問題を解消することが可能な導電性樹脂組成物ないしその成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、導電性に優れ、熱水抽出によるイオン性不純物が少なく、且つ曲げ特性に優れた導電性樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
〔1〕 (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、窒素分および硫黄分を含むホウ素含有炭素質材料の質量を基準とする)。
〔2〕 (A)ホウ素含有炭素質材料中のホウ素が0.01〜5質量%である請求項〔1〕の導電性脂組成物。
〔3〕 (A)ホウ素含有炭素質材料中の窒化ホウ素(BN)が0.5質量%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、BNを含むホウ素含有炭素質材料の質量を基準とする)。
〔4〕 (A)ホウ素含有炭素質材料20〜99質量%および(B)樹脂バインダー80〜1質量%を含む〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、(A)成分および(B)成分の合計質量(100質量%)を基準とする)。
〔5〕 (A)ホウ素含有炭素質材料1に対し純水5の質量比で、温度150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率が150μS/cm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔6〕 (A)ホウ素含有炭素質材料は、1MPaに加圧した状態での加圧方向の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下である特性を有することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔7〕 (A)ホウ素含有炭素質材料の原料が、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンおよびフラーレンからなる群から選ばれた1種ないし2種以上の組み合わせである〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
〔8〕 (B)樹脂バインダーがエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物(ここに、上記した「質量%」は、エラストマー成分を含む樹脂バインダーの質量を基準とする)。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を成形してなる導電性成形体。
〔10〕 体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする〔9〕記載の導電性成形体。
〔11〕 〔9〕または〔10〕に記載の導電性成形体を使用してなる燃料電池用セパレータ。
〔12〕 両面に幅0.1〜2mm、深さ0.1〜1.5mmの溝が形成され、最薄部の厚さが1mm以下、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする〔11〕に記載の燃料電池用セパレータ。
本発明の樹脂組成物は、(A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含む。
(ホウ素含有炭素質材料)
本発明における(A)ホウ素含有炭素質材料(以下「(A)成分」ともいうこともある。)は、窒素含有量が0.2質量%以下および硫黄含有量が0.05質量%以下であることが必要である。本発明においては、窒素含有量は0.1質量%以下0.0001質量%以上および硫黄含有量0.02質量%以下0.0001質量%以上であることが好ましく、更に窒素含有量0.05質量%以下0.0001質量%以上および硫黄含有量0.01質量%以下0.0001質量%以上であることが特に好ましい。窒素成分が0.2質量%を超え、および/又は硫黄成分が0.05質量%を超えると、本願発明の導電性樹脂組成物の成形体(特に燃料電池用セパレータ)のイオン性不純物の溶出が多くなり耐久性が問題となるため好ましくない。
本発明の(A)成分中のホウ素量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜4質量%がより好ましく、0.02〜4質量%が更に好ましい。ホウ素量が0.01質量%未満では、目的とする高導電性の炭素質材料が得られないことがある。一方、ホウ素量が5質量%を超えても更なる導電性の向上は望めない。
ホウ素化合物の混合が不均一な場合には、炭素質材料が不均一になるだけでなく、熱処理によって部分的に焼結する可能性が高くなる。ホウ素化合物を均一に混合させるために、これらのホウ素源は50μm以下、好ましくは20μm以下程度の粒径を有する粉末にして混合することが好ましい。
本発明の(A)成分中にはBNが0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.08質量%以下である。BNの含有量が0.5質量%を超えると、BNが高温の熱水により加水分解しイオン性の不純物となるため好ましくない。
更に、本発明の(A)成分は、純水(導電率2μS/cm以下):(A)成分の質量比が5:1で、150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率(23℃にて測定)が150μS/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、100μS/cm以下、更に好ましくは80μS/cm以下である。熱水抽出水の導電率が150μS/cmを超えると成形体としたときの耐久性が落ちるため好ましくない。
更に、本発明の(A)成分は、1MPa加圧下において、加圧方向のA成分の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.04Ωcm以下であり、更に好ましくは0.02Ωcm以下である。粉末圧密比抵抗が0.05Ωcmを超えると成形体にしたときの導電性が悪くなるため好ましくない。
本発明の(A)成分の原料としては、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、カーボンブラック、炭素繊維、アモルファスカーボン、膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレンの中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが挙げられる。中でも、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる組み合わせが好ましく。より好ましくは、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる組み合わせが好ましい。ホウ素をより包括させるために、コークス、メソフェーズカーボン、カーボンブラック、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブから選ばれる原料が更に好ましい。
上記した人造黒鉛を得る方法としては、通常は先ず石油系ピッチ、石炭系のピッチ等の原料を炭化してコークスとする。コークスから黒鉛化粉末にするには一般的にコークスを粉砕後黒鉛化処理する方法、コークス自体を黒鉛化した後粉砕する方法、あるいはコークスにバインダーを加え成形、焼成した焼成品(コークスおよびこの焼成品を合わせてコークス等という)を黒鉛化処理後粉砕して粉末とする方法等がある。原料のコークス等はできるだけ、結晶が発達していない方が良いので、2000℃以下、好ましくは1200℃以下で加熱処理したものが適する。また、窒素分、硫黄分の含有量を所定値以下とする為には黒鉛化処理等の熱処理をヘリウム、アルゴン等の0族の不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。ホウ素を含有しない炭素質材料の場合には、不活性ガスとして窒素を使用しても特に問題はないが、ホウ素を含有すると窒素と結合しBNを生成する為、好ましくない。
上記したA成分の原料一例であるカーボンブラックとしては、天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるファーネスカーボン、天然ガスの熱分解により得られるサーマルカーボン等が挙げられる。
上記した炭素繊維としては、重質油、副生油、コールタール等から作られるピッチ系と、ポリアクリロニトリルから作られるPAN系が挙げられる。
上記したアモルファスカーボンを得る方法としては、フェノール樹脂を硬化させて焼成処理し粉砕して粉末とする方法、または、フェノール樹脂を球状、不定形状の粉末の状態で硬化させて焼成処理する方法などがある。導電性の高いアモルファスカーボンを得るためには2000℃以上に加熱処理することが好ましい。
上記した膨張黒鉛粉末としては、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛等高度に結晶構造が発達した黒鉛を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末等が挙げられる。
上記した気相法炭素繊維は、例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を原料に、フェロセン等の遷移金属触媒の存在下で、水素ガスとともに800〜1300℃で熱分解反応させることによって得られるものである、繊維径が約0.5〜10μmであって、更に、約2300〜3200℃で黒鉛化処理したものが好ましい。熱分解反応時に不活性ガスを使用する場合には、N2ではなくアルゴン等の0族元素ガスを使用することが望ましい。
上記したカーボンナノチューブは、近年その機械的強度のみならず、電界放出機能や、水素吸蔵機能が産業上注目され、更に磁気機能にも目が向けられ始めているもので、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバー等とも呼ばれており、繊維径が約0.5〜100nmのものである。カーボンナノチューブにはチューブを形成するグラファイト膜が一層である単層カーボンナノチューブと、多層である多層カーボンナノチューブがある。本発明では、単層および多層カーボンナノチューブのいずれも使用可能であるが、単層カーボンナノチューブがより高い導電性や機械的強度が得られる傾向があるため好ましい。
本発明の(A)成分の粒度としては、上記原料を必要とされる粒度に予め粉砕や分級等で調整しておいても、熱処理後粉砕や分級等で調整してもよいが、予め必要とされる粒度に粉砕等で調整しておくことが好ましい。熱処理後に粉砕すると改質された表面が損傷を受けるため好ましくない。
材料の粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。また、微粉砕機であるスクリーンミル、ターボミル、スーパーミクロンミル、ジェットミルでも条件を選定することによって使用可能である。これらの粉砕機を用いて粉砕し、その際の粉砕条件の選定、および必要により粉末を分級し、平均粒径や粒度分布をコントロールする。
熱処理としては、上記の原料とホウ素源をよく混合して均一にし、その粉末を黒鉛ルツボに入れ通電するアチソン炉を用いる方法、高周波誘導加熱炉を用い黒鉛発熱体により粉末を加熱する方法等が挙げられる。処理温度は約2000〜3200℃で、0族元素の不活性ガス雰囲気中で熱処理する。
上述した(A)ホウ素含有炭素質材料とともに、本発明の組成物を構成すべき(B)樹脂バインダー(以下「(B)成分ということもある。」としては、一般的にバインダーと称されている樹脂である限り特に制限されない。このバインダーとしては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
(熱可塑性樹脂)
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンを主体とする共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン等)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PES)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PES)が耐水性と耐熱性の点から好ましい。
また、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アリルエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アリルエステル樹脂、1,2−ポリブタジエンが好ましく、1種または2種以上を混合したものでもよい。
また、気密性が要求される分野では、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、アリルエステル樹脂、1,2−ポリブタジエンなどが硬化体中に空隙がなく気密性の高い成形体を得ることができるため好ましい。
本発明の導電性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の組成比率は、A成分:B成分が(20〜99質量%):(80〜1質量%)であることが好ましく、より好ましくは、(30〜95質量%):(70〜5質量%)、更に好ましくは(50〜92質量%):(50〜8質量%)である。(A)成分が20質量%未満では、高い導電性が発現できない。一方、99質量%を超えると加工が困難となるため好ましくない。
本発明の(B)成分にはエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことが好ましく、より好ましくは1〜80質量%、更に好ましくは2〜75質量%である。エラストマー成分が0.5質量%未満では脆い材料となる。一方、80質量%を超えると剛性が不足し成形体にしたときリブが潰れてしまうため好ましくない。
更に、本発明の導電性樹脂組成物には、硬度、強度、導電性、成形性、耐久性、耐候性、耐水性等を改良する目的で、ガラスファイバー、ウィスカー、金属酸化物、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、親水性付与剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明の導電性樹脂組成物は、例えば、上記各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般に用いられている混合機、混練機を使用し、均一に混合させて得ることができる。
本発明の導電性樹脂組成物を成形体にする方法は特に制限されるものはない。成形方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。これらの成形加工時には金型内あるいは金型全体を真空状態にすることが好ましい。また、金型温度を上下に調節できる装置を具備することは、高精度の成形体が得られるため更に好ましい。
本発明の導電性樹脂組成物の成形体は、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm以下である。体積固有抵抗が0.1Ωcmを超えると、高導電性が要求される分野では制限を受けることがあるため好ましくない。
本発明の導電性樹脂組成物を燃料電池用セパレータ(以下「セパレータ」ということもある。)に成形する方法としては特に制限されるものはなく、例えば圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられる。また、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にする方法がより好ましい。
燃料電池用セパレータは、両面または片面にガスを流すための流路を形成する必要があるが、上記成形法により形成することができる。ガスを流すための流路は導電性樹脂組成物の成形体を機械加工により、当該流路(溝等)を形成してもよい。また、ガス流路の反転形状を有する金型を使用し圧縮成形、スタンプ成形等によってガス流路形成を行ってもよい。
本発明のセパレータは、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Ωcm以下であり、更に好ましくは0.01Ωcm以下である。体積固有抵抗が0.1Ωcmを超えると、高導電性が要求される分野では、制限を受けることがあるため好ましくない。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、モールド成形が容易なため燃料電池用セパレータ用途以外の分野の複合材料としても好適である。更に、その成形体は、黒鉛の導電性や熱伝導性を限りなく再現でき、成形精度等に優れる点で極めて高性能なものが得られる。従って、エレクトロニクス分野、電機、機械、車輌などの各種部品等の各用途に有用であり、特に、コンデンサー用または各種電池用集電体、電磁波遮蔽材、電極、放熱板、放熱部品、エレクトロニクス部品、半導体部品、軸受、PTC素子およびブラシ用として有望である。
実施例、比較例で用いた炭素質材料の製法を以下に示す。
(A)成分:炭素質材料
<A1>:ホウ素含有黒鉛微紛(不純物BN含有0wt%)
非針状コークスであるエム・シー・カーボン(株)製MCコークスをパルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により約20μmの粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用い、気流分級を行った。得られた微粉砕コークス14.85kgに炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は20μmであり、窒素分は検出されなかった。
上記A1の微粉砕コークス14.1kgにVGCF 0.75kgと炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は15μmであり、窒素分は検出されなかった。
上記A1の微粉砕コークス14.1kgに、下記の方法で得たCNT0.75kg(製法は下記に記載)と炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、炉内を一端真空にしてアルゴンガス置換し、内圧0.12MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これをアルゴンガス雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は12μmであり、窒素分は検出されなかった。
直径6mm、長さ50mmのグラファイト棒に、先端から中心軸に沿って直径3mm、深さ30mmの穴をあけ、この穴にロジウム(Rh):白金(Pt):グラファイト(C)を質量比率1:1:1の混合粉末として詰め込み、陽極を作製した。一方、純度99.98質量%のグラファイトからなる、直径13mm、長さ30mmの陰極を作製した。これらの電極を反応容器に対向配置し、直流電源に接続した。そして、反応容器内を純度99.9体積%のヘリウムガスで置換し、直流アーク放電を行った。その後、反応容器内壁に付着した煤(チャンバー煤)と陰極に堆積した煤(陰極煤)を回収した。反応容器中の圧力と電流は、600Torrと70Aで行った。反応中は、陽極と陰極間のギャップが常に1〜2mmになるように操作した。
上記A1の微粉砕コークス14kgに炭化ホウ素(B4C)1kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気に置換し放冷後、粉末を取り出し、0.92kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒子径18μmであり、窒素分を分析した結果、0.39質量%検出され、BNに換算すると約0.7質量%含有していた。
上記A1の微粉砕コークス15kgをヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.96kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は平均粒子径21μmであり、窒素分を分析した結果、検出されなかった。
上記A1の微粉砕コークス14.1kgにVGCF0.75kgと炭化ホウ素(B4C)0.15kgを加え、ヘンシェルミキサーにて800rpmで5分間混合した。この1kgを、容積1.5リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れて、内圧0.103MPa、アルゴンガス雰囲気の気流下で2800℃の温度で黒鉛化した。これを窒素雰囲気で放冷後、粉末を取り出し、0.94kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉の平均粒径は14μmであり、窒素分を分析した結果、0.32質量%検出され、BNに換算すると約0.58質量%含有していた。
上記の炭素質材料の諸特性を表1に示す。
<平均粒子径>
試料(炭素質材料)50mgを秤量し、50mlの蒸留水に添加し、更に2%Triton(界面活性剤)水溶液0.2mlを加えて3分間超音波分散させた後、日機装社製のマイクロトラックHRA装置で測定した。
JIS M8813(セミミクロガス化法)に準拠し、試料(炭素質材料)0.1gをスズカプセルに秤量し、水蒸気気流中で加熱・分解ガス化して、生成するアンモニアをホウ酸飽和溶液に捕集した後、これを硫酸標準溶液で滴定し、無水試料に対する質量百分率を求めて窒素の定量を行った。
JIS M8813(高温燃焼法)に準拠し、試料(炭素質材料)0.1gを石英ボートに秤量し、酸素気流中で約1350℃に加熱し、硫黄を酸化してガス化し、これを過酸化水素水に捕集した後、陰イオンクロマトグラフィーで硫酸イオンの測定を行い試料中硫黄濃度に換算した。
試料50mgをダイジェスター容器に秤量し、硫酸および硝酸を加え、マイクロ波加熱(230℃)して分解(ダイジェスター法)し、更に過塩素酸(HClO4)を加えて分解したものを水で希釈し、これをICP発光分析装置にかけて、ホウ素量を測定した。
前記セミミクロガス化法により測定した窒素の総量と、上記ICP発光分析装置により測定したホウ素の総量とのモル比からBN相当量を算出した。
加圧分解容器(AD−70、ヤナコ製)を使用して、純水45g(2μS/cm以下)、試料(炭素質材料)9gを±0.05gまで量り採り、密閉して150±0.5℃に校正されたオーブンに入れ、120時間抽出する。その後、室温(23℃)まで冷却し、濾過し、その抽出水をHORIBA製の導電率計(ES−12)により測定した。
加圧方向の粉末圧密比抵抗は、図1に示した装置を用いて測定する。1、1’は電圧測定端子であり、図1(b)のように側壁の中央部に設置されている。2は試料である。3は側枠で、4は圧縮ロッドであり、すべて絶縁性の樹脂からなる。5、5’は銅製の電極で、6は電圧計、7は定電流発生電源である。この図1に示す四端子法を用いて、以下のように試料の比抵抗を測定する。
試料を圧縮ロッド4により圧縮し、1MPaまで加圧する。電極5より電極5’へ(加圧方向)、定電流(I)1Aを流す。端子1、1’により端子間の電圧(V)を測定する。試料の電気抵抗(端子間)をR2(Ω)とするとR2=V2/I2となる。これからρ2=R2×S2/L2により比抵抗を求めることができる(ρ2:比抵抗、S2=試料の通電方向、即ち加圧方向に対し、垂直方向の断面積(cm2)、L2は端子1、1’間の距離(cm)である)。実際の測定では、試料は底面が3cm×3cmの正方形、高さは1MPaの加圧状態で3〜4cmになるように試料を充填して測定した。
下記の表2に示す各成分および組成割合で原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度80℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度180℃、圧力15MPaで10分間硬化し、その後、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて成形体を得た。得られた成形体の特性を表3に示す。
表4に示す各成分および配合割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度90℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度180℃、圧力15MPaで10分間硬化した。その後、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却した。更に、硬化促進させるために、300℃、窒素雰囲気のオーブン中で3時間アフターキュアーして成形体を得た。得られた成形体の特性を表5に示す。
表6に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度200℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度230℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度135℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度60℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表7に示す。
表8に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度200℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度220℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度140℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表9示す。
表10に示す各成分および組成割合の原材料をラボプラストミル(東洋精機製作所社製、モデル50C150)を用いて温度300℃、35rpmで5分間混練した。その混練物を100mm×100mm×2mmの平板ができる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度320℃で予熱3分、その後圧力15MPaで2分間加熱加圧して保持した。次ぎに、圧力15MPa下、温度265℃の温度で5分間保持し、冷却プレスを用いて温度40℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却して成形体を得た。得られた成形体の特性を表11に示す。
<体積固有抵抗>
JIS K7194に準拠し、四探針法により測定した。
<接触抵抗>
カーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)との接触抵抗値(Rc)を図4に示す四端子法によって、3つの抵抗値を測定し、下記式により算出した。
具体的には、試験片(20mm×20mm×1mm)、カーボンペーパー(20mm×20mm×0.19mm)、金メッキ真鍮板(20mm×20mm×0.5mm)を使用し、試験片を該カーボンペーパーで挟み、更にそれを2つの金メッキ真鍮板で挟んで2MPaで均一に加圧し、金メッキ真鍮板間に1Aの定電流を貫通方向に流して、電圧を測定することで抵抗(R1)を算出する。同様にカーボンペーパー3枚を二つの金メッキ真鍮板で挟んで、同様な測定を行うことで抵抗(R2)を算出する。更に、カーボンペーパー2枚を二つの金メッキ真鍮板で挟んで、同様な測定を行うことで抵抗(R3)を算出した。以上の3つの抵抗値から下記式によって、カーボンペーパーと試験片との接触抵抗値を算出する。
Rc=(R1+R2−2R3)×S/2
Rc:接触抵抗(Ωcm2)、 S:接触面積(cm2)
R1:測定1により算出した抵抗(Ω)
R2:測定2により算出した抵抗(Ω)
R3:測定3により算出した抵抗(Ω)
島津製作所(株)製のオートグラフ(AG−10kNI)を用いて、JIS K6911法で、試験片(80mm×10mm×1.5mm)をスパン間隔64mm、曲げ速度1mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
実施例1の組成物を、200mm×120mm×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面にできる平板を成形できる金型に投入し、380t圧縮成形機を用いて、金型温度180℃、50MPaの加圧下で10分間加圧加熱し、燃料電池用セパレータ形状の平板を得た。得られた平板は、両面溝付きで体積固有抵抗が5.6mΩcm、接触抵抗が3.1mΩcm2、熱伝導率が19W/m・K、通気率が2.3×10-9cm2/secであった。
実施例5の組成物を、200mm×120mm×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面にできる平板を成形できる金型に投入し、380t圧縮成形機を用いて、金型温度230℃、50MPaの加圧下で3分間加圧加熱し、その後135℃まで温度を下げ5分間保持し、次ぎに60℃まで温度を下げて燃料電池用セパレータ形状の成形体を得た。得られた成形体は両面溝付きで体積固有抵抗が4.2mΩcm、接触抵抗が2.8mΩcm2、熱伝導率が21W/m・K、通気率が4.6×10-9cm2/secであった。
<熱伝導率>
レーザーフラッシュ法(t1/2法、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置 LF/TCM FA8510B 理学電気社製)により、試験片(直径 φ10mm、厚さ 1.7mm)を温度80℃、真空中、照射光ルビーレーザー光(励起電圧2.5kV)の条件で測定した。
<通気率>
JIS K7126 A法に準拠し、23℃でヘリウムガスを用いて測定した。
2 試料
3 側枠
4 圧縮ロッド
5、5’ 銅製の電極
6 電圧計
7 定電流発生電源
8 カーボンペーパー
9 試験片
10 金メッキ真鍮
11 定電流発生装置
12 電圧計
Claims (12)
- (A)窒素分が0.2質量%以下、且つ硫黄分が0.05質量%以下であるホウ素含有炭素質材料および(B)樹脂バインダーを含むことを特徴とする導電性樹脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料中のホウ素が0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料中の窒化ホウ素(BN)が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料20〜99質量%および(B)樹脂バインダー80〜1質量%を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料1に対し純水5の質量比で、温度150℃、120時間の条件で熱水抽出した水の導電率が150μS/cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料は、1MPaに加圧した状態での加圧方向の粉末圧密比抵抗が0.05Ωcm以下である特性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (A)ホウ素含有炭素質材料の原料が、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンおよびフラーレンからなる群から選ばれた1種ないし2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (B)樹脂バインダーがエラストマー成分を0.5〜80質量%含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする導電性成形体。
- 体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする請求項9記載の導電性成形体。
- 請求項9または請求項10に記載の導電性成形体を使用してなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 両面に幅0.1〜2mm、深さ0.1〜1.5mmの溝が形成され、最薄部の厚さが1mm以下、体積固有抵抗が0.1Ωcm以下および接触抵抗が0.1Ωcm2以下であることを特徴とする請求項11に記載の燃料電池用セパレータ。
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