JP2005281679A - 表面改質プラスチックフィルム及び防曇性フィルム - Google Patents

表面改質プラスチックフィルム及び防曇性フィルム Download PDF

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博孝 荒井
Atsushi Obayashi
厚 大林
Takeshi Tashiro
健 田代
Satoru Momohira
覚 桃平
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Abstract

【課題】 防曇性などの任意の機能性を付与した樹脂組成物がナノオーダーに近い微小な範囲の構造体を形成した状態で部分的に表面に付着した任意の防曇性、耐汚染性、撥水性などの機能性を付与したプラスチックフィルムを提供する。
【解決手段】 絶縁性プラスチックフィルムの少なくとも片面に、機能性付与のための樹脂を含有する樹脂組成物が微小な線状体及び/又は粒子状体として付着した表面層を有する、表面改質プラスチックフィルム。好ましくは該樹脂組成物が、更に無機微粒子を含み、該微小な線状体の直径が100μm〜1nmであることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、防曇性や、耐汚染性、撥水性、特定光線反射性などのいわゆる機能性付与のための樹脂や微粒子を有する表面層を、絶縁性のプラスチックフィルム上に形成した表面改質プラスチックフィルムに関するものであり、特にこれらの機能性を付与した表面層が、樹脂や無機微粒子が微小な線状体及び/又は粒子状体として表面上に部分的に形成された表面改質プラスチックフィルム、好ましくは防曇性フィルム、更にその用途として農業用フィルムに関するものである。
従来より、塩化ビニル系樹脂フィルムやオレフィン系樹脂フィルムなどの軟質のプラスチックフィルムに、防曇性や、耐汚染性、撥水性などの機能性を付与するための塗布表面層を形成したフィルムが、機能性付与フィルムとして、農業用フィルム用途、化粧フィルム等の建材フィルム用途、反射防止フィルムなどの光学機器用途などで知られている。
たとえば温室などに被覆し作物の促進栽培に用いる農業用フィルムにおいては、暖かい温室内部の空気中水蒸気が農業用フィルム内面に付着して水滴を形成し、その結果フィルムの透明性を低下する現象が大きな課題であり、その現象を防止するための防曇性付与が必要である。
防曇性付与技術としては、従来、界面活性剤などの親水性物質を樹脂中に練り込み配合する方法や、樹脂フィルムの表面に、樹脂と無機コロイド粒子を含有した塗布膜を形成する方法などが行われている。後者の具体的な製法としては、樹脂と無機コロイド粒子に溶媒を加えた溶液または分散液を、ロールコーターとの接触により表面に塗布する方法や、溶液槽に浸漬し塗布する方法などが用いられている(特許文献1)。
しかし、界面活性剤を練り込み配合する方法は、防曇性を発現するまでの時間は短いものの、経時的にその剤が流出して効果が低減する問題があり、一方、樹脂と無機コロイド粒子を含有した塗布膜を形成する方法も、十分な防曇性を発揮するにはまだ不十分であった。
特公平1−2158号公報
すなわち、本発明の目的は、十分な防曇性などの機能性を付与した表面改質プラスチックフィルムを提供することにある。
本発明者等は、これら防曇性をはじめとする機能性付与のための表面改質プラスチックフィルムにおいては、疎水性や親水性の樹脂塗膜が全面に均一に付着している必要性はなく、むしろ微小な範囲で疎水性又は親水性の樹脂が分散している場合の方が、水滴の流出効果を高める効果があるのではないかとの推測、また、微小な凹凸を表面に形成した方が更にその効果向上に役立つとの推測を有していたが、現実的には、ナノオーダーに近い微小な範囲でこれらの分散や凹凸を制御する方法は今までなく、このような表面改質フィルムは得られていなかった。
しかして今般種々検討した結果、蛋白質などの高分子体を導電体上に堆積しマイクロチップを作成する方法などに用いられていた静電噴霧堆積法(エレクトロスプレーデポジション法)を適用したところ、絶縁性のプラスチックフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)の周囲を導電体で囲むことにより、樹脂からなる溶液又は分散液、更には樹脂に無機微粒子を添加した溶液または分散液の液滴を噴き付け適用することができ、好ましくはその表面に樹脂組成物が、線状などの任意の形状パターンに付着した表面層が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明の要旨は、(1)絶縁性プラスチックフィルムの少なくとも片面に、機能性付与のための樹脂を含有する樹脂組成物が微小な線状体、及び/又は粒子状体として付着した表面層を有する、表面改質プラスチックフィルム、(2)該絶縁性プラスチックフィルムが穴あけ処理されたフィルムであることを特徴とする(1)記載の表面改質プラスチックフィルム、(3)該樹脂組成物が、更に無機微粒子を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の表面改質プラスチックフィルム、(4)該微小な線状体及び/又は粒子状体の直径が100μm〜1nmであることを特徴とする請求項(1)〜(3)に記載の表面改質プラスチックフィルム、(5)該微小な線状体が絶縁フィルム上の少なくとも一つの方向に規則正しく配列されたことを特徴とする(1)〜(4)に記載の表面改質プラスチックフィルム、(6)表面層が静電噴霧堆積法により形成されたことを特徴とする(1)〜(5)に記載の表面改質プラスチックフィルム、(7)該機能性付与のための樹脂が、疎水性又は親水性の樹脂であり、防曇性が付与されたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム、(8)該機能性付与のための樹脂が、疎水性又は親水性の樹脂であり、撥水性が付与されたことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム、(9)該機能性付与のための樹脂を含有する樹脂組成物が、絶縁性プラスチックフィルムと異なる屈折率を有する樹脂組成物であり、特定波長の光を反射することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム、にある。
本発明によれば、防曇性などの任意の機能性を付与した樹脂組成物がナノオーダーに近い微小な範囲の構造体を形成した状態で部分的に表面に付着した表面改質プラスチックフィルムが得られるため、任意の防曇性、耐汚染性、撥水性、特定光線反射性などの機能性を付与したプラスチックフィルムを得ることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明するが、これに限定されるわけではない。
<絶縁性プラスチックフィルム>
本発明の絶縁性プラスチックフィルムとしては、一般的な樹脂製のフィルム、特に好ましくは熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、農業用フィルムや、建材用フィルム、光学機能フィルム、包装用フィルム等に用いられる、通常の熱可塑性樹脂を主成分として作成されたフィルムを言う。通常のプラスチックフィルム、特に熱可塑性樹脂フィルムは特殊な導電塗料の塗布や練り込みを行わなければたいてい絶縁性であり、本発明では、表面電気抵抗値が108Ω・cmより大であることを意味する。軟質フィルムであっても硬質フィルムであってもよいが、特に好ましくは軟質フィルムがよい。
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、メチレンメタクリレート樹脂、PPO,PPE樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、その他熱可塑性エラストマ−系樹脂などが挙げられるが、好ましくは、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
本発明のフィルムとは、一般にフィルム又はシートと呼ばれる範囲の厚さのものを含む意味であり、具体的にはその用途に応じて、0.005mm〜10mmの厚さのものから任意に選択することができる。但し、本発明の静電噴霧堆積法によりフィルム表面に、帯電した樹脂の付着を効果的に行うためには、なるべく薄いフィルムが好ましく、好ましくは0.01mm〜5mm、更に好ましくは0.03mm〜0.5mmの厚さのフィルムを用いることが好ましい。
フィルムは単層のフィルムに限らず、その用途に応じて、二種以上の配合や樹脂種の異なった二層以上の多層フィルムであってもよい。
また、絶縁性プラスチックフィルムは、穴あけ処理されていても良い。フィルムが穴あけ処理されている場合には、静電噴霧堆積法により樹脂を付着させる際に、フィルムの背面に電極を設置することで、フィルム表面に形成する微小な線状体及び/又は粒子状体を均一に分布できる場合が多い。また、粒子状体の形成比率が高くなる傾向にある。穴あきフィルムに形成される微小な穴の大きさや形状は特に限定されないが、塗布の均一化効果とフィルムの強度面、あるいは農業用フィルムとした場合の保温効果という点から、大きさとしては8×10−5mm以上4mm以下が好ましく、フィルム単位面積当たりの穴の数としては、100cm当たり1個以上の穴があることが好ましい。穴あけ処理の方法としても特に限定は無く、一般的な打ち抜き型や針などで打ち抜く方法やニードルプリッカー法、あるいはレーザー光線により穴をあける方法など種々の穴あけ方法が適用できる。
更に、フィルムには静電噴霧堆積法により付着させる樹脂の付着力を向上させたり、付着効率を向上させたりする目的で、予め、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理などの前処理を施してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、主成分となる熱可塑性樹脂のほかに、任意の添加剤を添加することが出来る。例えば可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、保温剤、滑剤、着色剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤などがあげられる。また、前記の絶縁性の範囲を超えない程度で導電剤を塗布又は練り込み配合したものも挙げられる。
<樹脂組成物>
本発明のフィルム表面に付着するための樹脂組成物としては、プラスチックフィルムの表面に機能性を付与するための樹脂を含有していればよく、好ましくは樹脂と無機微粒子を含有している樹脂組成物が挙げられる。付与する機能性としては防曇性、耐汚染性、撥水性、特定光線反射性などが挙げられる。
このような樹脂としては、上記機能性付与樹脂として従来塗布用に知られていた種々の樹脂を使用することができ、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂フィルムの種類、及び付与させる機能により、その種類を適宜選択すればよい。たとえば防曇性又は撥水性を発揮するためには疎水性又は親水性の樹脂を選択する。
例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムに防曇性を付与する場合は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂としては、水酸基含有ビニルモノマーを好ましくは60重量%以上含有した親水性アクリル系樹脂や、他方水酸機含有ビニルモノマーを60重量%未満含有する疎水性アクリル系樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンなどが挙げられる。
特に本発明の静電噴霧堆積法に適用するためには、樹脂の分子量がある程度大きいことが好ましく、重量平均分子量が2万以上、好ましくは4万以上、更に好ましくは10万以上のものが好ましい。
なお疎水性又は親水性の基準は、被対象物であるプラスチックフィルムに対するものであればよく、通常、表面の濡れ性の指標となる水滴接触角などにより親水性疎水性の程度が測定される。通常は例えば80°以上の水滴接触角を疎水性(又は撥水性)と言い、50°以下の水滴接触角を親水性と言うが、本発明においては、被対象物であるプラスチックフィルムに対して、水滴接触角を小さくする樹脂であれば親水性樹脂に入ると考えてよい。
特に本発明の線状体は、その径や密度を調整することにより、プラスチックフィルム表面に部分的に疎水性または親水性の部分を任意のパターン状に形成して、表面の濡れ性を調整することができるため、種々の防曇性付与効果や、逆に撥水性付与効果が期待できる。
また、樹脂組成物に含有するための無機微粒子としては、任意の機能性付与のための無機微粒子を採用しうるが、例えば、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質コロイドゾルが挙げられ、好ましくはシリカゾルまたはアルミナゾルが挙げられる。
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜200nmの範囲で選ぶのが好ましく、また平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いてもよい。
本発明において、特に防曇性を付与する樹脂組成物として好ましい組み合わせは、アクリル系樹脂とシリカ又はアルミナのコロイド状微粒子の分散系が挙げられる。
本発明において耐汚染性を付与する場合には、従来より耐汚染性材料として知られているフッ素系樹脂やアクリル系樹脂などを用いることができ、当該樹脂は、本発明の方法により線状体、もしくは粒子状体になることでその性能が更に向上する。
さらに、樹脂組成物として、絶縁性プラスチックフィルムと異なる屈折率を有する樹脂組成物を用いて、本発明の線状体とし、その径を調整し、一方向、あるいは複数の方向に規則的に配列させたり、更には、規則性の有する層を多層状に形成させることにより、光の回折、干渉作用を利用して特定波長の光線を反射させることもできるようになる。
これらの樹脂組成物は、任意の溶媒に溶解した溶液、または分散した分散液として、後述する静電噴霧堆積装置の噴射ノズルに供給する。
静電噴霧堆積法に適用する樹脂含有液の物性としては、樹脂含有液の電導度として、20mS/m以下、特に好ましくは、8mS/m以下、粘度としては、10cP〜1900cP、好ましくは20cP〜300cP、表面張力としては、20.0mN/m〜72.0mN/mの範囲のものを使用すると好ましい。
電導度が高すぎると、静電噴霧現象が起こらなくなる点で問題がある。粘度が高すぎると後述する噴射ノズルへの樹脂含有液の供給が難しくなり、低すぎると線状体や粒子径の制御が難しくなる。表面張力が高すぎると静電噴霧が起こりにくくなり、低すぎると後述する噴射ノズル部分に溶液を保持することが難しくなる。
これらの物性値は、装置における印加電圧や流量、その他得ようとする線状体や粒子状体の径や密度によってもその適正範囲が異なるので、使用する樹脂種や無機微粒子の選定や、その組成比の変化、使用する溶媒種類とその濃度などにより適宜調整することが可能である。
<静電噴霧堆積法>
本発明でいう静電噴霧堆積法とは、溶液又は分散液などの液体を静電的に帯電させ、帯電した微小な液滴状物質を生成し、被対象物に付着させる方法をいう。例えば特表2002−511792号公報には、蛋白質などの生体高分子から微小なフィルムやスポットを静電噴霧堆積法により形成した例が示されているが、この方法をプラスチックフィルムなどのような大規模な対象物に適用しようとした例は殆どない。
本発明における静電噴霧堆積法の具体的な方法としては、フィルム表面に付着形成しようとする樹脂、または樹脂と無機微粒子を、溶媒に溶解した溶液または分散した分散液を、先端に毛細管を有する噴射ノズルに導入する。この噴射ノズルに、一定の流量となる圧力をかけつつ高電圧を印加すると、該液は、直径が0.数ミクロンから数十ミクロンの帯電された液滴又は線状体としてノズル先端の毛細管から噴出され、静電反発力によりノズル先端から急速に離れる。
一方、本発明における表面処理方法では、該樹脂組成物を付着するための表面を有する絶縁性プラスチックフィルム(以下、被対象物ともいう)を、その周りに導電体が位置するように、例えばフィルム面積より大の導電板上に戴置しておき、その導電体と前述の噴射ノズルの間に、一定の電位差を設ける。その結果、ノズル先端から離れた帯電された線状体が、フィルム表面に対し付着する。なお、そのノズルとフィルムの離間距離にもよるが、この過程において、液に含まれていた揮発性溶媒はほとんど揮発して、樹脂又は樹脂と無機微粒子が被対象物に付着するため、その後の乾燥工程も通常は不要であり、従来の溶媒を多量に用いるロールコーター塗布法や浸浸塗布法に比べて汚染や環境問題も少ない。
なお本発明の静電噴霧堆積法は、従来行われていた静電塗装などの静電噴霧を利用した技術とは、大枠の原理は類似するものの実際には異なるものである。例えば従来の静電塗装技術は、大量の流量にてノズルから帯電した塗料粉体を噴出し、大粒かつ大量の塗料を、帯電させた被対象物に被覆させる技術であって、数十μmから数百μmといった厚い塗料被膜を形成する技術である。一方、本発明の静電噴霧堆積法による表面処理技術は、その電圧や流量を任意に制御し、0.数μm〜10μm程度のナノオーダーに近い範囲で表面付着物を制御する方法であり、本発明では特に、微小な線状体を特異なパターンで絶縁性被対象物の表面に部分的に付着する方法である。
また、従来の静電塗装技術などでは、被塗装物がプラスチックなどの絶縁性の場合には、プラスチックに例えばカーボンブラックなどの導電性付与物質を混合して導電性を向上しなければ塗装出来ないのが通常常識であった。しかし、本発明では、通常の絶縁性のプラスチックフィルムであっても、任意の表面付着物を形成することができる点で新しい技術である。
静電噴霧堆積法に用いる具体的装置としては、図1に概略図を示すように、ノズル先端(1a)に毛細管を有し、圧力下一定流速の液を流出する噴射ノズル(1)と、そのノズル対面に設置した、被対象物であるプラスチックフィルム(3)をノズル側の面上に戴置し、被対象物より面が大である導電板(2)と、ノズル先端(1a)と導電板(2)の間に電圧を印加可能な装置(4)が挙げられる。なお、概略図では横方向に記載されているが、実際には噴射ノズルを上方に、プラスチックフィルム(3)と導電板(2)を下方に設置し、重力も利用して液が噴霧される装置にすることも可能である。
装置に印加する電圧や、液の流出速度は、使用する樹脂含有液の粘度や濃度によって、適宜調整することが可能であるが、印加電圧は2〜30kVの範囲、好ましくは10〜20kVの範囲から適用し、ノズル側の電圧は正であっても負であっても良い。印加電圧が高すぎるとノズル先端からコロナ放電が生じる点で好ましくなく、一方、低すぎると静電反発力が小さくなりノズル先端において噴射が起こらない点で好ましくない。
流速は、0〜5.0ml/minの範囲、好ましくは0.01〜0.5ml/minの範囲がよい。また、ノズル先端の直径は、0.05〜5mm、好ましくは0.4〜1mmの範囲が採用される。
<表面に形成される線状体、粒子状体>
本発明において、プラスチックフィルム表面に形成される微小な線状体(5)とは、具体的には、図1の左図に示すように、プラスチックフィルム(3)表面に比較的ランダムに近いパターンで付着される線状体5をいい、図2〜図6には、本願発明の実施例でPOフィルム上に生成した線状体の拡大写真を示す。また、図−7には、本願発明の実施例でPOフィルム(穴あけ処理品)上に生成した線状体の拡大写真を、図−8にはPOフィルム上(穴あけ処理品)に生成した粒子状体の拡大写真を示す。
図2は樹脂(A)と無機微粒子(E)の比率が3:1の場合、図3は2:1、図4は1:1、図5は1:2、図6は1:3の場合の実施例であり、図2〜図6は全て同倍の拡大図である。従って、無機微粒子の比率が高くなると線状体の径は小さくなることが判る。
得られる線状体や粒子状体の直径は、使用する装置の条件(印加電圧、流量、ノズル径)や使用する樹脂液の物性によっても異なるため、限定されるものではないが、本発明において得られる微小な線状体としては、繊維径としての直径が100μm〜1nm、特に好ましくは10μm〜10nm、のものが得られる。径が小さいほど線状体は透明になるため、透明性を必要とするプラスチックフィルム用途には好ましい。また、本発明において得られる微小な粒子状体としても、粒子径としての直径が100μm〜1nm、特に好ましくは10μm〜10nm、のものが得られる。
<プラスチックフィルムの作成>
以下のとおり、3種類の異なる熱可塑性樹脂フィルムである絶縁性プラスチックフィルムを準備した。
(1)ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)
フィルム厚さ:150μm 表面電気抵抗値:5.0×1015 Ω
(2)ポリオレフィンフィルム(POフィルム)
フィルム厚さ:150μm 表面電気抵抗値:3.0×1014 Ω
ポリエチレン樹脂にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を0.1重量%、ヒンダードアミン系光安定剤を0.5重量%添加して得られた樹脂組成物より得られたフィルム。
(3)穴あけ処理ポリオレフィンフィルム(穴あけPOフィルム)
フィルム厚さ: 100μm 表面電気抵抗値:3.0×1014 Ω
ポリエチレン樹脂に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を0.1重量%、ヒンダードアミン系光安定剤を0.5重量%添加して得られた樹脂組成物より得られたフィルムに平均直径が100μmの穴あけ処理を施したフィルム。
<樹脂溶液、樹脂分散液、又は樹脂と無機微粒子分散溶液の作成>
(1)アクリル系樹脂(以下Aという)とシリカゾル(E)のブレンド系
アクリル系樹脂(A):ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)をモノマー成分中70重量%含有する親水性のアクリル系樹脂(メタノール溶液、固形分濃度30重量%)
シリカゾル(E):粒径30〜50nmのコロイド状シリカ粒子がメタノール液に分散した分散液(固形分濃度30重量%)
アクリル系樹脂(A)とシリカゾル(E)を表―1に示す重量比(Eはシリカ重量として計算)になるよう混合した後、メタノールで希釈して、液中固形濃度5.0重量%の分散液とし実験に用いた。
(2)アクリル系樹脂(B)
溶液重合により得られた以下のモノマー組成のアクリル樹脂(イソプロピルアルコール溶液、固形分濃度15重量%)を実験に用いた。
メチルメタクリレ−ト/ブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸 = 50/25/24/1
(3)アクリル系樹脂(C)
乳化重合により得られた以下のモノマー組成のアクリル樹脂(水分散、固形分濃度35重量%)を実験に用いた。
メチルメタクリレ−ト/ブチルメタクリレート/スチレン/メタクリル酸
= 30/25/44/1
(4)シリカゾル(E)単独液
上記シリカゾル(E)をメタノールで希釈し、液中固形濃度10重量%の分散液とし実験に用いた。
<装置概要>
図1に概略図を示すように、ノズル先端1aを有し、一定流速の液を流出可能な噴射ノズル1の対面に、15cm×15cmの導電性アルミ板からなる導電板2上に、10cm×10cmのプラスチックフィルムを戴置し、ノズル1aと導電板2の間に電圧を印加可能な装置を用いた。
印加電圧:15kV(ノズル側: 正電圧) 流速:0.02ml/min、
ノズルと導電板間距離:10cm ノズル先端の直径:1mm
<表面処理>
下記表−1に示すように樹脂(A)と無機微粒子(E)の組成比(重量)を変化させた溶液1〜5、及び樹脂(B)、樹脂(C)を使用して、上記の装置と条件を用いて、3種類のプラスチックフィルムの表面上に、樹脂組成物を含む液を噴霧し実験を行った。
その結果、液1〜6(PETフィルムを用いた実施例1〜5、POフィルムを用いた実施例6〜11)を用いた場合には、プラスチックフィルム上に、樹脂組成物からなる線状体の付着物が見られ、液7を用いた場合には、プラスチックフィルム上に、樹脂組成物からなる粒子状体の付着物が見られた(実施例12)。表―2に、それぞれの実施例1〜12で得られた線状体の繊維径(粒子状体のものは粒子径)を示す。この結果から無機微粒子の含有比が高い方が得られる線状体の繊維径が小さくなることがわかる。
また、確認のため実施例1〜10で得られたフィルム上の線状体付着物について、エネルギー分散型X線分析(EDX)法により、Si原子の検出を行ったところ、該線状体付着物に、無機微粒子に由来するSi原子が存在することが確認された。
更にPOフィルムにおいて、表面処理前と表面処理後の接触角の測定を行った。接触角の測定は、液滴法(温度:24℃、湿度:26%、液体:蒸留水2μL、測定:5点平均)により行った。その結果、未処理のPOフィルム(2)の接触角が91.8°であるのに対し、液2(A/E=2:1)により表面処理を行ったフィルム表面の接触角は57.6°に変化(親水化)していることが確認された。また、液7(C液)により表面処理を行ったフィルム表面の接触角は、未処理の穴あけPOフィルム(3)が70.1°であるのに対し、表面処理後84.3°に変化(疎水化)していることが確認された。
一方、液中に樹脂を含有せず、無機微粒子のみ含有する液−8を用いた例(比較例1、比較例2)では、プラスチックフィルム上に樹脂組成物の付着物は得られなかった。(プラスチックフィルムの周りに存在する導電板に粒状の付着物が見られるのみであった。)
<使用した液組成および実験結果>
表−1 使用した液組成
表−2 実施例および比較例
×印・・・プラスチックフィルム上への付着物が形成できなかった。
本発明に用いる装置及び静電噴霧堆積法の概要を示す概念図 本発明の実施例6(A/E=3:1)で得られた線状体の拡大図 本発明の実施例7(A/E=2:1)で得られた線状体の拡大図 本発明の実施例8(A/E=1:1)で得られた線状体の拡大図 本発明の実施例9(A/E=1:2)で得られた線状体の拡大図 本発明の実施例10(A/E=1:3)で得られた線状体の拡大図 本発明の実施例11(B)で得られた線状体の拡大図 本発明に実施例12(C)で得られた粒子状体の拡大図 本願比較例1における結果の概要を示す概念図
符号の説明
1・・噴射ノズル、1a・・ノズル先端、2・・導電板、3・・プラスチックフィルム、4・・電圧印加装置、5・・線状体

Claims (9)

  1. 絶縁性プラスチックフィルムの少なくとも片面に、機能性付与のための樹脂を含有する樹脂組成物が微小な線状体及び/又は粒子状体として付着した表面層を有する、表面改質プラスチックフィルム。
  2. 該絶縁性プラスチックフィルムが穴あけ処理されたフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の表面改質プラスチックフィルム。
  3. 該樹脂組成物が、更に無機微粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表面改質プラスチックフィルム。
  4. 該微小な線状体及び/又は粒子状体の直径が100μm〜1nmであることを特徴とする請求項1〜3に記載の表面改質プラスチックフィルム。
  5. 該微小な線状体が絶縁フィルム上の少なくとも一つの方向に規則正しく配列されたことを特徴とする請求項1〜4に記載の表面改質プラスチックフィルム。
  6. 表面層が静電噴霧堆積法により形成されたことを特徴とする請求項1〜5に記載の表面改質プラスチックフィルム。
  7. 該機能性付与のための樹脂が、疎水性又は親水性の樹脂であり、防曇性が付与されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム。
  8. 該機能性付与のための樹脂が、疎水性又は親水性の樹脂であり、撥水性が付与されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム
  9. 該機能性付与のための樹脂を含有する樹脂組成物が、絶縁性プラスチックフィルムと異なる屈折率を有する樹脂組成物であり、特定波長の光を反射することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質プラスチックフィルム。
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