JP2005281376A - インクジエット印刷用マゼンタ色インク - Google Patents
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Abstract
【課題】 キナクリドン色素は鮮明なマゼンタ色調と共に高い耐光性、耐ガス性を有して、インクジエット印刷用マゼンタ色材として優れている。 しかし、インク色材が用紙内部へ浸透してインクジエット印刷で高い発色が得られなかった。
【解決手段】 下記式(1)の水溶性キナクリドン色素は色素分子中に複数のアミド基とスルホン酸基を有しており、溶解性が著しく改善されていると同時に色材の被吸着力が高められている。 そのため、インクジエット印刷で色素が紙表面に吸着されて高発色が得られる。 同時に、水溶性色素の耐水性及び耐湿潤堅牢度が著しく向上した。
【解決手段】 下記式(1)の水溶性キナクリドン色素は色素分子中に複数のアミド基とスルホン酸基を有しており、溶解性が著しく改善されていると同時に色材の被吸着力が高められている。 そのため、インクジエット印刷で色素が紙表面に吸着されて高発色が得られる。 同時に、水溶性色素の耐水性及び耐湿潤堅牢度が著しく向上した。
Description
本発明はインクジエット印刷用水性インクに関する。 更に詳しくは、インクジエット印刷用水性インクの着色剤として用いられる水溶性色素に関する。
インクジエット印刷法はインクの微小液滴をノズルから吐出させ紙面に付着させた多数のインクドットにより文字や画像の印刷をおこなう無版印刷法であり、公知である。 インクジエット印刷法では微細インク滴が高速かつ高頻度で吐出されるため、インクの表面張力は出来るだけ大きく、インク粘度は出来るだけ低いことが好ましい。 それ故、インクジエット印刷用インクには主たる溶媒が水から成る水性インクが使用されている。 この水性インクは基本的に水溶性染料で着色されている。 インク粘度を出来るだけ低く維持する必要があるため、インク粘度を高くする性質がある高分子化合物などは全く含まれていない。 この点が従来の版印刷用インクとは著しく異なる。 インクジエット印刷用インクは万年筆のインクに物性が似ており、低粘度を示す水溶液のインクである。 そのため、インクジエット印刷用インクでは印刷された画像や字体が滲み易いという欠点がある。 インクジエット印刷用インクは粘度が低いため、インク滲みの問題は解決困難なインクジエット印刷法の欠点であった。
また、水性インクの着色には水溶性染料が使用されるため、インクジエット印刷ではインク色材の耐水性及び耐光性が悪いという問題がある。 これらの欠点は印刷技術としては致命的な欠陥であるため、特開平10−305570、特開2000−86958及び特開2001−342383では、可溶性建て染め染料を含有する水性インクにUVエネルギーを与えて色材を不溶化させるインク定着法により、上記の三大欠点(インク滲み、耐水性及び耐光性)を全て解決することが提案されている。 しかしながら、この方法はインクシステムに未開発の部分が残されており、まだ実用化されるには至っていない。
一方、インク滲みの問題は用紙の側からも改良が進められており、実際に製品化されている。 即ち、現在のインクジエットプリンタには、インクが滲まない専用紙を用いることによって滲み防止が図られている。 このインクジエット専用紙は紙にインク吸収材が塗布されており、インク吸収材として液体吸収能力の大きなシリカ微粉末やアルミナゾル等の鉱物質の微粉末が変性ポリビニルアルコール樹脂や変性アクリレート樹脂と共に塗布されている。 このようなインク滲み防止の目的でセラミック微粒子が塗布された紙をインクジエット専用紙と呼んでおり、他にもインクジエット用光沢紙とかインクジエット用コート紙と呼ばれることもある。 これらの専用紙はカラーBPペーパー(キヤノン)、スーパーフアイン専用光沢紙(セイコーエプソン)等の商品名で市販されている。 しかしながら、これらの専用紙に印刷されたインクの耐光性は非常に貧弱であり長期間保存することが出来ない。
インクジエット専用紙を使用すれば、通常の水溶性染料でも滲まないため、インク色材には主として酸性染料が使用されている。 また、シリカ微粉末やアルミナゾル等のセラミック微粒子に吸着された染料は水に溶け出さないので、インク色材の耐水性も向上する効果が得られた。 それ故、インクジエット印刷における三大欠点(インク滲み、耐水性、耐光性)のうち、インク滲みと耐水性の問題は用紙を改良することで解決できたのである。 しかしながら、耐光性に関しては、シリカ微粉末やアルミナゾル等のセラミック微粒子に吸着された染料には何ら向上効果が認められない。 それどころか、シリカ微粉末やアルミナゾルに吸着された染料は、通常の普通紙の上に印刷された場合に較べて、その耐光性が著しく低下することが知られている。 この問題は次のように説明されている。
シリカ微粉末やアルミナゾルは粒子径が1〜2ミクロン程度の微粒子であり、表面積が非常に大きな粉末であるため特異な表面活性を示す。 液体吸収能力及びガス吸着能力が大きく、極性ガスや水溶液中に溶解している物質を吸着する能力に優れる。 インク吸収に優れる能力もこの性質に由来する。 SOX及びNOXのような大気中の微量ガスもシリカ微粉末やアルミナゾルに吸着されてセラミック微粒子表面に濃縮される。 セラミック微粒子の中には、例えば酸化チタンに見られるように、光触媒的作用を有するものがあり、光エネルギーを受けて有機化合物を分解する性質を示すことがある。 一方、合成染料の中にはSOXやNOXのような酸化性ガスによって分解されるものがあり、特にアゾ染料は色素分子中のアゾ基(−N=N−)がSOXやNOXの攻撃を受けて切断され、染料分子が分解して消色することがある。 そのため、染色技術者の間ではアゾ染料のガス退色性として問題になることがある。 インクジエット印刷ではシアン、マゼンタ、イエローのCMY三原色インクでカラー印刷が行われる。 人間がカラー画像を認識するのは紙面からの反射光がCMY三原色の光で構成された減法混色により色が表示されるためである。
特開2002−241661に記述されているように可視光線の波長400〜700nmの中で、シアンインクは波長600〜700nmの光を吸収し、マゼンタインクは波長500〜600nmの光を吸収し、イエローインクは波長400〜500nmの光を吸収することで減法混色によりカラー画像が表示される。 これらのCMY三原色インクにはそれぞれ波長640nm付近に吸収ピーク(λmax)を有するシアン色染料、波長540nm付近に吸収ピークを有するマゼンタ色染料、波長430nm付近に吸収ピークを有するイエロー色染料が使用される。 そしてシアン色染料としては耐光性の良い鮮明色のフタロシアニン染料が使用されており、イエロー色染料にも比較的耐光性の良い染料が使用されている。 しかしながら、マゼンタ色染料としてはアゾ系染料が使用されているのであるが、アゾ染料には耐光性の良いものが無いので、現在のインクジエットプリンタによるカラー印刷物は壁に貼っておくと3〜4週間後には色調が変わり始め、青っぽいカラー画像に変色してしまう問題があった。 インクジエット専用紙に塗布されたシリカ微粉末やアルミナゾルの微粒子に吸着されたアゾ染料はセラミック微粒子の光触媒的作用とSOXやNOXガスの酸化作用の複合的な酸化分解反応を受けて耐光性が著しく弱くなっていると考えられている。 アゾ染料には鮮明な赤色系の色素が多く在り、マゼンタ色インクの色材として使いやすいのであるが、耐光性が弱いためにインクジエット用インクの色材としては断念せざるを得ない。 より耐光性の優れたマゼンタ色染料が探索されるようになった。
下記の特許文献1〜9に見られるように、耐光性の良いマゼンタ色染料として数年前からアントラピリドン染料が提案されるようになった。 アントラピリドン染料の最初のものは酸性染料として90年ほど前にドイツで作られたが、その後種々の誘導体が作られており、いずれも赤紫色の鮮明な酸性染料として作られた水溶性色素である。 しかしながら、その耐光性はフタロシアニン染料ほどには強くない。 フタロシアニンはもともと最高級の耐光性を有する顔料(不溶性色素)であり、それにスルホン酸基(−SO3H、可溶性基)を導入して水溶性に変性した染料であるため、フタロシアニン染料は耐光性が非常に優れている。 その考え方を取り入れて、特許文献10では最高級の耐光性を有するキナクリドン顔料にスルホン酸基(−SO3H、可溶性基)を導入して水溶性にしたマゼンタ色染料を提案している。 このキナクリドン系の水溶性色素はアントラピリドン染料より耐光性が優れている。 キナクリドン顔料は塗料(ペイント)の着色材として自動車の外装塗料にも使用されるほど耐光性に優れているので、それから誘導された水溶性マゼンタ色染料の耐光性が優れていることは当然のことと言える。
特開2000−169776号公報
特開2000−191660号公報
特開2000−256587号公報
特開2001−72884号公報
特開2001−139836号公報
特開2002−332418号公報
特開2002−332419号公報
特開2003−55589号公報
特開2003−192930号公報
特開2003−238871号公報
現在では下記の4種類のキナクリドン顔料が市販されている。 キナクリドンは鮮明な赤〜紫色を呈する高耐光性のピグメントであり、いずれもカラーインデックス番号が付与されており化審法において既存化学物質として登録されている。 C.I.ピグメント バイオレット 19は鮮明な紫色を呈し、C.I.ピグメント レッド 122、202及び209は鮮明な赤紫色を呈してマゼンタ色材として優れている。
上記の特許文献10(特開2003−238871)では、キナクリドン顔料のC.I.ピグメント レッド 209にスルホン酸基(−SO3H)が導入されて得られる下記の水溶性マゼンタ色素がインクジエット印刷用インク着色材として提案されている。 この水溶性キナクリドン染料は鮮明な色調、高耐光性及び溶解度が大きい等の特長を有して、インクジエット印刷用インクの水溶性マゼンタ色素として優れている。
しかしながら、このキナクリドン染料は分子構造から明らかなように色素分子が非常にコンパクトであり、色素の光学濃度自体は非常に高いのであるが、インクジエット用インクの着色材として用いるとインク滴が用紙に着弾した際に用紙の内部方向(垂直方向)に向けてインク溶媒と共に染料分子も紙内部へ浸透するので、画像濃度が薄くなる問題があった。 インクジエット専用紙では塗布されているセラミック微粒子のインク吸収材は非常に薄く塗工されている。 現在のインクジエット用紙の外観や使用感は普通紙と較べて違和感が無いように作られている。 そのため、インクジエット用紙ではあるが同時に普通紙や電子写真方式コピー用紙としても使用できるようになっている。 このように薄く塗工されたインク吸収材はインクの水平方向へ拡散する滲みの問題を解決できているのであるが、インクが垂直方向(内部方向)へ浸透することは防止できない。 そのため、色素分子が小さくて溶解性の良いキナクリドン染料はインク溶媒と共に用紙の内部へ浸透してしまい、紙表面に色材が残らないために画像の色濃度が薄くなると考えられている。 インクジエット印刷法では従来の版印刷法に較べて特異なインクを用いるため、従来では経験しなかったような問題に出くわすことがある。 その例のひとつがインク色材の紙内部への浸透である。 版印刷法では高粘度のインクを用いるため、このような問題は起こらなかった。 印刷では紙表面に色材を載せることが重要であり、紙内部へ浸透した色材は反射光に関係しないので色材の無駄になるだけである。 それ故、インクジエット印刷用インクではインク溶媒が紙内部へ浸透しても色材は紙表面に残るように、染料分子の被吸着力を強くする必要があった。 染料の被吸着力を大きくするには、例えば引用文献9(特開2003−192930)に開示されている下記のアントラピリドン染料のように、大きな染料分子を作ることによって、物理的なファンデルワールス力のような分子間引力を大きくして被吸着力を高める方法がある。
上記のアントラピリドン染料の分子量は約1,600であり、このように大きな分子構造を有する染料では染料の溶解性を確保するために、それに見合った多数の可溶性基(スルホン基)も導入しなければならない。 そうすると、大きな染料分子では疎水性の芳香族有機化合物部分と親水性の可溶性基(スルホン酸基)のバランスが微妙に釣り合って一種の界面活性剤のような形になり、そのような染料を含有するインクでは気泡が生じ易くなる。 インクの表面張力を低下させるようなインク成分はインクジエット用インクにとって忌避物質であり、インクに気泡が生じるとキャビテーションを起こしてインク吐出不良などのトラブルの原因となりやすい。 そのため、染料の被吸着力を高める手段として他の方法を探索する必要があった。
染料分子を大きくして分子間引力を利用するのではなく、極性基を有する有機化合物の化学的親和力を利用して染料分子の被吸着力を高める手段もある。 排水処理場で廃水中の浮遊汚濁物質を凝集除去するために、凝集剤としてポリアクリルアミドが使用される。 例えば、製紙工場から出る排水中には微細なセルロースパルプのクズが浮遊しており、排水をそのまま河や海に放出すると河口付近の海底にヘドロが堆積して公害問題になる。 排水中のセルロースパルプのクズは淡水中では懸濁して浮遊しているが、海水中では無機塩類によって凝集されて海底に沈降するので新聞に報道されたこともある有名な公害問題になった。 この排水にポリアクリルアミドを少量添加するとセルロースパルプの浮遊物質を凝集させることが出来るので、濾過して排水から除去することができる。 この例から明らかなように、アミド基のような極性基を持つ有機化合物は凝集力が強く、即ち親和力が強いため、吸着され易いことが知られている。 インクジエット専用紙はセルロースパルプの上に酸化物系のセラミック微粒子が塗布されているから、染料分子にアミド基を導入すると染料の被吸着力が強くなることが推測される。 このたび、本発明者らはキナクリドン顔料の色調を変えることなく、キナクリドン色素分子に複数個のアミド基(−CONH−)とスルホン酸基(−SO3H)を同時に導入することに成功した。 これによって、水溶性キナクリドン染料の被吸着力が著しく改善され、染料の紙内部への浸透を抑えることが出来るようになった。 また同時に印刷物上の色材の耐水性も著しく向上した。 下記の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のオリゴマーをキナクリドン色素のイミノ基に付加することによりアミド基とスルホン酸基を導入する。
キナクリドン色素分子が有する2個のイミノ基(−NH−)は隣接する共役二重結合系の電子密度の影響を受けてH(水素原子)が置換され易いことは従来から公知である。 このたび、本発明者らはキナクリドン色素のイミノ基にビニル化合物などを付加させることが出来ることを見出した。 このイミノ基はキナクリドン発色団の共役二重結合系の外に在るため、イミノ基に置換基が導入されてもキナクリドン色素の色調はほとんど変化しないことが明らかになっている。 下記の化学反応式で示されるように、キナクリドン色素分子に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を付加させて色素分子中に複数のアミド基(−CONH−)とスルホン酸基(−SO3H)を導入することが出来るようになった。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は重合性のビニル基と水溶性のスルホン基を持ったモノマーであり、低毒性の水溶性化合物であるが、その水溶液は強い酸性を示す。 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は既存化学物質番号2−2821及びCAS No.15214−89−8に登録されていて通常に市販されている薬品であり、別名ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸とも呼ばれるため、TBASと略称されることもある。 それ故、本文でもTBASの略称を用いる。 TBASのビニル基は重合しやすく、アクリルアミドやアクリル酸のような水溶性モノマーとは勿論のことスチレン、塩化ビニル、メチルメタクリレートのような非水溶性モノマーとも容易に共重合させることができる。 TBASの主な用途として現在のところ繊維の染色性改善剤や樹脂の静電防止改質剤などに利用され、また水処理凝集剤や紙パルプ用助剤として使用されることもある。 重合法としてはラヂカル重合反応が主で、エマルジョン重合法が用いられる。 TBASは重合しやすいため、熱反応ではキナクリドン色素にTBASを付加させようとしてもTBASの重合反応が先に生じてしまうので反応溶液の粘度が上昇するだけであり、キナクリドン色素とTBASの付加反応は進行しない。 このたび、本発明者らはキナクリドン色素とTBASの付加反応を優先的に起こさせるため、UV照射による光反応を利用すると良い結果が得られることを発見した。 こうして、本発明者らは水を反応溶媒としてキナクリドン顔料のイミノ基(−NH−)にTBASを付加反応させることができた。 キナクリドンは非水溶性であるが、TBASの水溶液中に分散させておくとTBASが付加したキナクリドン色素は水溶性に変わり水に溶出するため、キナクリドン粉末の表面には新たなキナクリドン分子が次々と現れてTBASと付加反応する。 そのため、付加反応が進行すると考えられる。 キナクリドン色素はUVを吸収して分子励起されるがTBASは脂肪族化合物でありUVを吸収しないので、TBASの重合反応を抑えながら色素との付加反応を優先して生じさせることが出来るようになった。 UV光源としては水銀ランプ、紫外用蛍光灯又はメタルハライドランプ等を利用できる。 キナクリドン色素は異節環芳香族化合物であり、有色化合物であるが紫外波長域にも吸収を有しておりUV照射により色素分子が励起されて光反応が生ずると考えられる。 反応にはキナクリドン色素1モルに対してTBASは10〜30モルが必要である。 これはキナクリドン色素とTBASの付加反応が生じると同時にTBASの重合反応も一部起きており、オリゴマーが生じているためであると考えられる。 このようにして、化5に示したようなキナクリドン色素のイミノ基にそれぞれTBASのオリゴマー(n=1〜14)が結合した水溶性色素が得られた。 オリゴマーの重合度nがおよそ15以上になるとインク粘度が上昇してインクジエット印刷用インクとして適しなくなる。 この水溶性色素は色素分子中に多数個のアミド基とスルホン酸基をそれぞれ有しており、非常に溶解度が大きいにもかかわらず被吸着力に優れた水溶性色素となることが明らかになった。 TBASはフリー酸として入手できるので、水酸化ナトリウム水溶液に溶解し中和して使用する。 水溶液は正確に中和しておくのが好ましく、水溶液をpH7.0に調節する。 この水溶液の中にキナクリドン顔料の粉末(100%色素)を懸濁させて撹拌しながらUV照射すると水溶性キナクリドン染料ナトリウム塩の水溶液を得る。 水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用すれば、それぞれ水溶性キナクリドン染料のカリウム塩又はリチウム塩を得る。 こうして得られた水溶性キナクリドン染料の水溶液は不純物をほとんど含まないので、水で薄めて所定の染料濃度に調製すればそのままインクジエット印刷用インクとして使用できる。
キナクリドン顔料に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を付加反応させて複数個のアミド基とスルホン酸基が導入された水溶性マゼンタ色染料は優れた溶解性と強い被吸着力を有しており、紙表面に吸着されて内部へ浸透しないのでインクジエット印刷用インクのマゼンタ色材として用いると、高濃色の印刷物が得られ、同時に印刷物上の色材の耐水性及び耐湿潤堅牢度も優れている。 この水溶性キナクリドン色素は原料のキナクリドン顔料が有する高い耐光性、耐ガス性、マゼンタ色彩の鮮明性をそのまま受け継いでおり、インクジエット印刷用インク色材に要求されるすべての性能を満足させるマゼンタ色材となる。
原料のキナクリドン顔料は市販されているピグメント製品を購入してもよいが、顔料メーカーから粗キナクリドンの原体(100%純色素)を提供してもらうのが良い方法である。 キナクリドンメーカーとしては大日精化、東ソー、三菱化学、大日本インキ化学、東洋インク製造などがある。 市販のピグメントは分散剤が配合された調製品であるため、分散剤を分離除去して色素100%のものを使用する。 もうひとつの原料であるTBASのメーカーとしては東亜合成化学、日東化学などがある。 TBASを水酸化ナトリウムの水溶液に溶解して2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液を作る。 氷を投入して中和熱による温度上昇を防ぎ水溶液の温度を10〜20℃に維持するのも良い方法である。 キナクリドン色素粉末の懸濁溶液を撹拌しつつUVを照射しながらTBASの水溶液を滴下して1〜5時間かけて反応させる。 TBASの重合反応を抑制するため重合開始剤等は添加しない。 TBASに添加されているメタキノン(重合禁止剤)はUVを吸収するのでUV照射初期において分解消失すると考えられる。 ほぼ室温の温度条件下で反応させると、キナクリドン色素にTBASが付加すると同時に重合反応も一部進んでオリゴマーを生じる。 溶液が完全に透明になった時点が反応の終点である。 そのため、反応の終点が見やすいように紫外用蛍光灯をUV光源として使用する。 紫外用蛍光灯は近紫外部に連続スペクトルの紫外光を発光してキナクリドン色素の光エネルギー吸収効率が良い利点がある。 更に、ランプのガラス管内壁に蛍光物質が塗られておりランプのガラス管が乳白色であるため、UVランプを反応溶液の中に沈めておくとキナクリドン色素の粉末が可溶性に変わって反応液がだんだんと透明になってゆく様子を観察できる利点がある。 青白く光ったUVランプの上に微細な黒色の粉末が浮遊分散している状態が見えている間は反応が未だ終わっていない証拠であり、反応液が完全に透明になりランプ光源が透けて見える時点が反応の終点である。 それゆえ、この時点でTBAS−Na水溶液の滴下を止め、反応を終了する。 キナクリドン色素にどれくらいの量のTBAS−Naが付加したかはTBAS−Na水溶液の添加量から計算で求めることができ、色素濃度が2.5〜3.0%(重量)になるよう純水で希釈すると、インクジエットプリンタ用のマゼンタ色インクとして使用できる。 反応溶液の粘度が上昇しないようTBAS−Naオリゴマーの平均重合度が最適範囲(n=3〜10)になるように反応条件(温度、pH値及び/又は光エネルギー等)を調節する。 インクジエット用インクの色材では、より溶解性の優れた染料とするために、リチウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等がナトリウムの代わりに用いられる場合もあると言われる。 しかしながら、本発明の水溶性キナクリドン色素はナトリウム塩で十分に大きな溶解度が得られるので、その必要性は無いと思われる。 次に実施例について説明する。 実施例中の%又は部で示される比率はすべて重量基準である。
蛍光灯ランプの照明カバー(乳白色のプラスチック製)を利用して図1に示した光合成反応の容器を作った。 この容器を用いて作った光合成反応の装置を図2に示した。 化2に挙げた4種類のキナクリドン顔料を出発原料として、下記の方法で水溶性キナクリドン色素を作った。 即ち、C.I.ピグメント バイオレット19から化6の水溶性色素を、C.I.ピグメント レッド122から化7の水溶性マゼンタ色素を、C.I.ピグメント レッド202から化8の水溶性マゼンタ色素を、そしてC.I.ピグメント レッド209から化9の水溶性マゼンタ色素を作った。
500mlのビーカーに60グラムの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(TBAS)の粉末を秤量した後、水酸化ナトリウムの10%水溶液を加えて溶解し、氷を加えて液温を10〜25℃に抑えて、同時に水溶液を中和してpH7.0に調節した。 こうしてTBASナトリウム塩の水溶液(300ml)を作成した。 図2の反応容器に純水(イオン交換水)を入れ、20グラムのC.I.ピグメント バイオレット19の粉末(粗キナクリドン、色素100%)を加えて撹拌し、懸濁液(反応溶液)を作った。 スタラーの上で反応溶液を撹拌しながら上方からUV照射した。 UV光源には紫外用蛍光灯/UV蛍光灯(東芝株式会社製、ケミカルランプ出力20W)を使用した。 TBAS−Na水溶液を上から滴下しながら室温で3時間反応させた。 反応溶液は透明な黒紫色になり、反応を終了した。 こうして化6に挙げた水溶性色素の水溶液が得られた。 上記と同様の方法で、C.I.ピグメント レッド122、C.I.ピグメント レッド202、及びC.I.ピグメント レッド209を出発原料として、それぞれ化7、化8及び化9に挙げた水溶性キナクリドン色素の水溶液を得た。
C.I.ピグメント レッド209を原料として、実施例1で作成した水溶性キナクリドン色素(色素分子内にアミド基及びスルホン酸基が導入されたマゼンタ染料)の濃厚水溶液を純水で薄めて、2.5%色素濃度の水溶液を調製してインクAとした。 他方、化3に挙げた水溶性キナクリドン染料(色素分子内にスルホン酸基のみが導入されたマゼンタ染料)の2.5%濃度の水溶液を調製してインクBとした。 インクA及びインクBをそれぞれ空のインクカートリッジに充填して、ピエゾ型インクジエットプリンタを用いて、インクジエット専用紙の上にマゼンタ色の水玉模様のモノクロ印刷をおこない、両者のマゼンタ色の印刷濃度を比較した。 目視判定ではあるが、インクBはインクAの約半分程度の濃度のマゼンタ色の印刷物しか得られなかった。 次いで用紙の裏側を見ると、インクBの印刷物は裏側にピンク色が滲み出しているのに対して、インクAの印刷物の裏側は全く白地のままであった。 これによって、インクAの染料、即ち、染料分子内にアミド基が導入された水溶性キナクリドン色素の被吸着力が著しく改善されていることが実証された。
1 蛍光灯ランプの照明カバー(乳白色のプラスチック製)
2a及び2b シリコンゴム板(15mm厚)
3 紫外用蛍光灯(UV蛍光灯)を通す穴
4 紫外用蛍光灯(UV蛍光灯)
5a及び5b マグネットスタラー(撹拌機)
6 TBAS−Na水溶液滴下用ビューレット
7 キナクリドン顔料を懸濁させた水(反応溶液)
2a及び2b シリコンゴム板(15mm厚)
3 紫外用蛍光灯(UV蛍光灯)を通す穴
4 紫外用蛍光灯(UV蛍光灯)
5a及び5b マグネットスタラー(撹拌機)
6 TBAS−Na水溶液滴下用ビューレット
7 キナクリドン顔料を懸濁させた水(反応溶液)
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Cited By (1)
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2004
- 2004-03-29 JP JP2004094383A patent/JP2005281376A/ja active Pending
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