JP2005270855A - 炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤及び炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法 - Google Patents

炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤及び炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 炭化水素油、特にオレフィンを含むガソリンの基材となる炭化水素油中の硫黄分を穏和な条件で低減することができる吸着剤及び該吸着剤を用いた炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法を提供すること。
【解決手段】 アルミナ担体もしくはボリア・アルミナ複合酸化物担体上に、モリブデンを金属換算で吸着剤組成物の全質量の10から50質量%担持してなる炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤及び該吸着剤を用いた炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭化水素油中の硫黄化合物を吸着してその濃度を低減するために用いられる吸着剤、及びこれを用いた炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法に関する。
原油の蒸留や分解によって得られる各炭化水素油留分は、一般に、硫黄化合物を含み、これらの留分を燃料として使用する場合には、この硫黄化合物に起因する硫黄酸化物等の大気汚染物質が大気中に放出される。とりわけ、自動車からの排ガスによる大気汚染が深刻化しており、その燃料面からの対策として、ガソリンの硫黄分の低減が強く要望されている。
通常、ガソリンは、原油を蒸留して得られるブタンやナフサの他、アルキレーション装置、改質装置、流動接触分解装置(FCC)などの生成油を基材とし、これらを配合したものを製品としている。これらの基材のうち、一般に、FCC装置の生成油(FCCガソリン)やナフサは、硫黄分が高いため、ガソリンの硫黄分を低減するためには、FCCガソリンやナフサの硫黄分を低減することが最も重要である。
上記のガソリンの基材となる炭化水素油の硫黄分の低減化技術としては、通常、水素化脱硫が用いられている。しかし、この方法では、脱硫反応だけでなく、オレフィンの水素化反応も進行するため、オレフィンを多く含むFCCガソリンを水素化脱硫した場合、オクタン価が低下するといった問題点がある。しかも、水素化脱硫は一般に、高温、高圧の条件下、大量の水素を使用するため、精製コストが高いといった欠点を有している。
これに対し、吸着脱硫による炭化水素油中の硫黄濃度低減方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。それは、装置内で炭化水素油と脱硫剤を接触させ、吸着能の低下した使用済脱硫剤を再生し、連続的に炭化水素油中の硫黄分を低減する流動床のプロセスである。しかし、この技術では、上記の水素化脱硫法よりは低いレベルではあるものの、吸着時には水素存在下・高温・高圧の条件を必要とするため、場合によっては生成油のオクタン価が低下することがある。そのため、より常温、常圧に近い穏和な条件で吸着脱硫が可能なプロセスとできるよう、高い吸着能の吸着剤の開発が求められている。
そして、吸着技術を利用した炭化水素油の脱硫に関する研究は多くなされており、例えば、担体にニッケルなどの金属成分を担持した吸着剤が報告されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、これらの吸着剤は比較的高温での吸着を必要としており、より常温に近い穏和な条件で使用可能な吸着剤が求められている。
以上のような状況から、穏和な条件下でも、炭化水素油、特にFCCガソリンに含まれるチオフェン類やベンゾチオフェン類などの硫黄分を低減することが可能なより高い吸着能を有する脱硫剤の開発が求められている。
米国特許第5914292号明細書 特開2001−276605号公報 特開2001−279259号公報
本発明の目的は、炭化水素油中の硫黄分、特にオレフィンを含むガソリンの基材となる炭化水素油中に含まれるチオフェン類やベンゾチオフェン類などの硫黄分を穏和な条件で低減することが可能な吸着剤を提供することである。さらには、かかる吸着剤を用いた炭化水素油中の硫黄分の除去方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するため検討を重ねた結果、特定組成を持った吸着剤を炭化水素油と接触させることにより硫黄化合物を穏和な条件で吸着除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、上記目的は、下記の構成の吸着剤、およびそれを用いた硫黄化合物の除去方法より達成される。
(1)アルミナ担体もしくはボリア・アルミナ複合酸化物担体上に、モリブデンを金属換算で吸着剤組成物の全質量の10から50質量%担持してなることを特徴とする炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤。
(2)前記炭化水素油が沸点範囲20〜380℃の留分であることを特徴とする上記(1)に記載の吸着剤。
(3)前記炭化水素油が、流動接触分解装置から生成する沸点範囲20〜250℃の留分であることを特徴とする上記(1)に記載の吸着剤。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸着剤を、予め還元処理を行った後、温度150℃以下、圧力5MPa以下の条件で炭化水素油と接触させることを特徴とする炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法。
本発明の脱硫剤は、炭化水素油中の硫黄分、特にオレフィンを含むガソリンの基材となる炭化水素油中に含まれるチオフェン類やベンゾチオフェン類などの硫黄分を穏和な条件で低減することが可能である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明に係る炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤は、アルミナまたはボリア・アルミナ複合酸化物担体上にモリブデンを担持した吸着剤である。
本発明の吸着剤の担体としては、アルミナもしくはボリア・アルミナ複合酸化物を用いのことができるが、より多孔質で高比表面積であるボリア・アルミナ複合酸化物は、モリブデンをより高分散で多く担持できるため担体としてより好ましい。ボリア・アルミナ複合酸化物中のボリア含有量は特に限定はないが、担体中の含有量を5質量%以上とすることでより多孔質で高比表面積とすることができる。また、十分な強度を保つためにはボリア含有量は30質量%以下とすることが好ましい。なお、十分な効果を得るためにはチタニアやジルコニア等のボリア以外の金属酸化物は実質的に含まない方が好ましい。
担体に担持させるモリブデン化合物としては、一般にモリブデン酸アンモニウム塩が用いられるが、具体的には、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物、12モリブドリン酸水和物、モリブドリン酸アンモニウム等があるが、焼成後の不純物の残留を考慮した場合、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物がより適している。
また、モリブデン担持量は、金属換算で、吸着剤組成物の全質量の10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらには18〜30質量%含有することが好ましい。モリブデン担持量を10質量%以上とすることで、十分な吸着活性点の数を得ることができ、高い硫黄化合物吸着能を得ることができる。一方、担持量を50質量%以下とすることで、担持したモリブデン、即ち、吸着活性点が適度に分散した吸着剤を得ることができ、さらには比表面積、細孔容積、細孔直径の低下を防ぐことができる。
なお、従来の吸着剤には、モリブデンと共にコバルトを担持したものがあるが、本発明の吸着剤において、モリブデンと共にコバルトを担持した場合、吸着活性は著しく低下する。したがって、本発明の吸着剤は、実質的にコバルトを含まないものが好ましい。
上記担体にモリブデン化合物を担持する方法は、含浸法、混練法およびイオン交換法など公知の方法を用いることができる。この内、含浸法がより適しており、さらには、モリブデン酸アンモニウム塩を水に溶解した溶液を含浸させる方法が最も適している。また、この時、モリブデン酸アンモニウム塩の水溶液にアンモニア水を加えると、アンモニウム塩が溶解しやすくなり、モリブデンの分散性を向上でき、担持量を多くできるので、特に好ましい。
モリブデン化合物担持後は、乾燥、焼成等を行い水分を十分除くことで、本発明の吸着剤が得られる。ここで、乾燥工程は90〜150℃の範囲の温度で行うことが好ましく、焼成工程は250〜500℃の温度範囲で、3時間以上行うことが好ましい。
モリブデンを担持した後の吸着剤の比表面積は150m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上が良い。比表面積が150m2/g以上であれば、硫黄化合物を吸着する活性点の数が多くなり十分な吸着能力が得られ、好ましい。
また、吸着剤の平均細孔直径は、特に限定されないが、硫黄化合物の細孔内への拡散が阻害されて吸着能力が低下するのを防ぐ観点から、1nm以上が好ましい。吸着剤の細孔容積は、特に限定されないが、通常0.2〜1.0cm3/gの範囲である。
吸着剤の形状は、特に限定されず、通常、この種の吸着剤に用いられている種々の形状、例えば、球形、円柱状、四葉型等を採用することができる。
吸着剤の大きさは、通常、直径あるいは長さが0.1〜5mm程度のものが好ましい。
本発明の吸着剤を用いて炭化水素油の吸着脱硫を行うに際しては、予め還元処理を行う必要がある。
還元方法は、気相還元、液相還元などの公知の方法を用いることが可能であるが、気相による水素還元が好ましく、水素雰囲気で200〜700℃の温度で行うことが好ましい。還元温度が上記範囲であることにより、吸着剤の比表面積が適切な範囲に維持され、吸着能が好適に発現し、好ましい結果が得られる。
この還元操作により、吸着剤の担体上に担持されているモリブデンは実質的に6価より低い原子価の状態に還元される。
還元操作により吸着剤の吸着量は増加する。還元操作後のモリブデンのXRD測定において、三酸化モリブデン(MoO3)に帰属されるピーク(2θ=27.338°、23.338°および12.779°)は無く、二酸化モリブデン(MoO2)に帰属されるピーク(2θ=26.032°、37.023°および53.510°)さらに金属モリブデン(Mo)に帰属されるピーク(2θ=40.513°および73.678°)のみ観測される。上記のように、モリブデンが6価より低い原子価の状態に還元されることにより、硫黄化合物の吸着脱硫に好適な結果が得られる。
本発明の吸着剤を用いた炭化水素油の脱硫は、通常、吸着槽に吸着剤を充填し、吸着槽で炭化水素油を吸着剤と接触することにより行う。
本発明で用いる吸着槽の形状は特に問わないが、円筒型を有する塔状のものが好ましい。なお、以下の記載では説明の便宜上「吸着槽」に代え適宜「吸着塔」の語を用いることとする。
炭化水素油と吸着剤を接触させる方法としては、一般的には、固定床式吸着剤床を吸着塔内に形成し、原料油を吸着塔の下部に導入し、固定床の下から上に通過させ、吸着塔の上部から生成油を流出させることが好ましい。
吸着剤と炭化水素油を接触させる際は、以下の式により計算される線速度が50cm/min以下、より好ましくは0.5〜40cm/min、さらに好ましくは1〜30cm/minとなるように導入する。線速度が大きすぎると、脱硫剤床をすり抜けて除去されない硫黄化合物が増加し、吸着塔から流出する炭化水素油の硫黄化合物濃度を低く保つことができなくなる。また、線速度が小さいと吸着塔のサイズが大きくなるため、設備の建設コストが高くなるなど、不利となる。
式: 線速度(cm/min)=原料油の導入量(cm3/min)÷脱硫剤床の断面積(cm2
吸着剤と炭化水素油を接触させる際、吸着量の低下、炭化水素の分解などの不要な反応を引き起こすことを避ける観点から、150℃以下、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度範囲で接触させる。
吸着工程の圧力は、特に制限しないが、一般的には5MPa以下、好ましくは大気圧〜3MPaの範囲である。
なお、この吸着反応は、通常の水素化脱流反応とは異なり、特に水素は必要としない。
本発明において、脱硫の対象となる炭化水素油として適しているのは、ガソリンやナフサ、灯油、軽油など炭化水素油の沸点範囲20〜380℃の留分であり、特に適しているものは、流動接触分解装置から留出する生成油(FCCガソリン)で、沸点範囲が20〜250℃のものである。
これらの炭化水素油は、硫黄化合物としてチオフェン類、ベンゾチオフェン類を主に含んでおり、含まれる硫黄量は数十〜数百ppmの範囲である。 ここで、チオフェン類とは、チオフェンと、メチルチオフェン、ジメチルチオフェン、エチルチオフェンなどのようなチオフェンにアルキル基が置換したアルキルチオフェン類のことである。また、ベンゾチオフェン類とは、ベンゾチオフェンと、メチルベンゾチオフェン、ジメチルベンゾチオフェン、エチルベンゾチオフェンなどのようなベンゾチオフェンにアルキル基が置換したアルキルベンゾチオフェン類のことである。
本発明の吸着剤を用いることにより、炭化水素油の硫黄濃度を、30ppm以下、さらには10ppm以下に低減することができる。
尚、濃度の単位ppmは、炭化水素油中に含まれる硫黄原子の質量を表しており、1ppmとは炭化水素油1g中に硫黄原子が1×10-6g含まれていることを意味する。
以下に、本発明を実施例により、具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。得られた焼成物に、次いで、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを24.7gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。同様の操作を2回繰り返すことによりモリブデンを40質量%担持している吸着剤Aを得た。得られた吸着剤Aを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
実施例2
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。得られた焼成物に、次いで、七モリブデン酸アンモニウム22.8gを24.7gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを25質量%担持している吸着剤Bを得た。吸着剤Bはステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
実施例3
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。次いで、得られた焼成物に、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを24.9gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%担持している吸着剤Cを得た。吸着剤Cはステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
還元後の吸着剤に含まれるモリブデンの還元状態をXRDで確認したところ、4価のモリブデンのピークのみ検出された。
なお、この吸着剤を還元反応を行わずに、モリブデンの還元状態をXRDで確認したところ、6価のモリブデンのピークのみ検出された。この還元していない吸着剤Cをそのまま同じ条件で吸着反応に供しても、還元を行った吸着剤Cの25%程度の脱硫活性しか得られなかった。
実施例4
実施例3において得られた吸着剤Cを、ステンレス管に充填し、水素気流中600℃、3時間還元したものを吸着反応に用いた。
還元後の吸着剤のモリブデンの還元状態をXRDで確認したところ、0価及び4価のモリブデンのピークのみ検出された。
実施例5
ボリアを20質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。次いで、得られた焼成物に、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを24.9gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%担持している吸着剤Dを得た。この吸着剤Dをステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
実施例6
アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを24.9gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。次いで、得られた焼成物に、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを20.6gの水と3.3gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%担持している吸着剤Eを得た。この吸着剤Eをステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例1
実施例1に使用しているボリア・アルミナ担体を金属無担持の吸着剤Fとし、これをステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例2
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。次いで、得られた焼成物に、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを24.9gの水と4.0gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。同様の操作を4回繰り返すことによりモリブデンを60質量%担持している吸着剤Gを得た。得られた吸着剤Gを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例3
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム17.7gを33.5gの水と5.4gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを9質量%担持している吸着剤Hを得た。この吸着剤Hを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例4
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体90gに、硝酸銅3水和物38.0gを溶解した72.0gの水溶液を室温で含浸させ、真空乾燥により水分を除去した後、マッフル炉で450℃、3時間焼成し、銅を10質量%担持している吸着剤Iを得た。この吸着剤Iを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例5
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体90gに、硝酸亜鉛6水和物45.5gを溶解した72.0gの水溶液を室温で含浸させ、真空乾燥により水分を除去した後、マッフル炉で450℃、3時間焼成し、亜鉛を10質量%担持している吸着剤Jを得た。この吸着剤Jを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元し、吸着反応に用いた。
比較例6
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体90gに、硝酸コバルト6水和物49.4gを溶解した72.0gの水溶液を室温で含浸させ、真空乾燥により水分を除去した後、マッフル炉で450℃、3時間焼成し、コバルトを10質量%担持している脱硫剤Kを得た。この吸着剤Kを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元したものを吸着反応に用いた。
比較例7
ジルコニアを10質量%含有するジルコニア・アルミナ担体50gに、七モリブデン酸アンモニウム31.5gを溶解した64.0gの水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥させた後、マッフル炉で450℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%担持している吸着剤Lを得た。この吸着剤Lを、ステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元したものを吸着反応に用いた。
比較例8
七モリブデン酸アンモニウム22.8gを33.3gの温水に溶かした溶液に、4.2gの硝酸コバルト六水和物を12.9gの水と10gのアンモニア水に溶かした溶液を加える。溶解した水溶液を室温でボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体50gに含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%、コバルトを5質量%担持している吸着剤Mを得た。この吸着剤Mをステンレス管に充填し、水素気流中450℃、3時間還元したものを吸着反応に用いた。
〔脱硫剤性能評価方法〕
実施例1〜6、比較例1〜8で得られた還元処理を行った吸着剤2.0gを硫黄濃度42ppmのFCCガソリン10.0g中に入れ、35℃で3時間撹拌して硫黄化合物を吸着剤に平衡吸着させた。平衡吸着後のFCCガソリンの硫黄濃度を測定して下式により脱硫率を求めた。結果を表1に示す。
なお、本試験に用いたFCCガソリンは、初留36℃、10%留出温度59℃、30%留出温度83℃、50%留出温度112℃、70%留出温度142℃、90%留出温度179℃、終点209℃の蒸留性状であった。
式: 脱硫率(%)=(42ppm−平衡吸着後濃度)×100/42ppm
また、実施例1〜6において生成したガソリンの組成に変化は見られなかった。
実施例1〜6、比較例1〜8で調製した吸着剤の担持金属量は通常のICP重量分析法により正確な値を求めた。
Figure 2005270855
実施例7
ボリアを10質量%含有するボリア・アルミナ担体200gに、七モリブデン酸アンモニウム70.8gを134.1gの水と21.8gのアンモニア水に溶解した水溶液を室温で含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成した。次いで、得られた焼成物に、七モリブデン酸アンモニウム70.8gを99.7gの水と16.2gのアンモニア水に溶解した水溶液を含浸させ、110℃で3時間乾燥した後、マッフル炉で350℃、3時間焼成し、モリブデンを20質量%担持している吸着剤Nを得た。この吸着剤Nを内径18.5mm、高さ80cmの吸着管に166g充填し、水素気流中450℃、3時間還元した。これにFCCガソリンを室温(25℃)、常圧下、流量320ml/minで通油させ、硫黄分を吸着させた。吸着塔出口で採取した油について時間ごとに硫黄濃度を測定した。結果を表2に示す。
なお、本試験に用いたFCCガソリンは、初留36℃、10%留出温度56℃、30%留出温度75℃、50%留出温度101℃、70%留出温度134℃、90%留出温度168℃、終点198℃の蒸留性状であった。
比較例9
市販の吸着剤(Engelhard社製Ni5256E(ニッケル含有量57質量%))を内径18.5mm、高さ80cmの吸着管に180g充填し、水素気流中450℃、3時間還元した。これに実施例7で用いたものと同じFCCガソリンを室温(25℃)、常圧下、流量320ml/minで通油させ、硫黄分を吸着させた。吸着塔出口で採取した油について時間ごとに硫黄濃度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2005270855
表1、2に示した結果より、アルミナもしくはボリア・アルミナ複合酸化物を担体とする要件、これらにモリブデンを10〜50質量%坦持する要件が結合して構成された本発明に係る硫黄化合物の吸着剤は、穏和な条件の下で、オレフィンの水素化などの不要な反応を起こさずに、FCCガソリンに含まれる硫黄分を効率良く低減することができることが分かる。
なお、表1の比較例8に示した結果より、モリブデンと共にコバルトを担持した場合、吸着活性が著しく低下することが分かる。
また、表2の結果から、本発明の吸着剤は、従来のニッケル系吸着剤に比べて、室温での通油実験において性能が高いことが分かる。

Claims (4)

  1. アルミナ担体もしくはボリア・アルミナ複合酸化物担体上に、モリブデンを金属換算で吸着剤組成物の全質量の10から50質量%担持してなることを特徴とする炭化水素油中の硫黄化合物の吸着剤。
  2. 前記炭化水素油が沸点範囲20〜380℃の留分であることを特徴とする請求項1に記載の吸着剤。
  3. 前記炭化水素油が、流動接触分解装置から生成する沸点範囲20〜250℃の留分であることを特徴とする請求項1に記載の吸着剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の吸着剤を、予め還元処理を行った後、温度150℃以下、圧力5MPa以下の条件で炭化水素油と接触させることを特徴とする炭化水素油中の硫黄化合物の除去方法。
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