JP2005264173A - 機械部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生産コスト低減とバリ取り後の形状安定性との両立を図ることができる機械部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の機械部品の製造方法は、鉄鋼材料からなる機械部品ワークWを切削・研削加工により成形する成形工程と、成形工程で機械部品ワークWに生じたバリ部5を除去するバリ取り工程とを備える。バリ取り工程においては、バリ部5を表面焼入れにより選択的に硬化させて除去する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、鉄鋼材料からなる機械部品の製造方法、特に、製造過程で生じたバリ部を除去するためのバリ取り工程を含むものに関する。
従来から、切削・研削加工工程など、機械部品を製造する過程でワークに生じたバリ部は、ブラシによるバリ取り方法(下記特許文献1)、電解バリ取り方法(下記特許文献2)によって除去することが行なわれている。また、あまり採用されていないが、熱バリ取り方法という方法もある(下記特許文献3、4)。
特開2001−321225号公報 特開2002−129400号公報 特開平5−154651号公報 特開2002−326237号公報
しかしながら、ブラシによるバリ取り方法は処理スピードを高めることが容易でなく、機械部品の形状が複雑になってくると生産性の面で不利になってくる。また、ブラシが消耗品であり、その分のコストが生産費に確実に上乗せされる問題もある。同様の問題は、電解バリ取り方法にもある。また、熱バリ取り方法は、ワークを配置したチャンバに燃焼性ガスを充填して点火するという方法であることから分かるように、安全管理に相当の配慮が必要である。そのため、コスト高になりがちである。また、上記各方法に共通するのが、バリ取り後のワークの形状にバラつきが生じやすいという問題である。
そこで本発明は、生産コスト低減とバリ取り後の形状安定性との両立を図ることができる機械部品の製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
一般に、鉄鋼材料を用いた機械部品の製造に際しては、切削・研削加工をワークに施して製品の形状を得た後、該ワークに対し、機械的性質の改善を目的とする調質処理(焼入れ焼戻し)を行なう。一方、得るべき機械部品の種類や、使用する素材によっては、切削・研削加工工程の終了後、上記の調質処理を行なわずに、研磨等の仕上げ工程のみを行なう場合もある。ただし、製品としては調質処理が必要ない場合でも、バリ部だけを選択的に硬化・脆化させることは可能である。この点に着目した本発明者は、鋭意検討の結果、以下に記す本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、鉄鋼材料からなる機械部品ワークを切削・研削加工により成形する成形工程と、成形工程で機械部品ワークに生じたバリ部を除去するバリ取り工程とを備えた機械部品の製造方法において、バリ取り工程においては、バリ部を熱処理により選択的に硬化させて除去することを主要な特徴とする。
上記のごとく、バリ部をターゲットとした熱処理を行なうことにより、切削および/または研削加工時に発生するバリ部の脱落性が向上する。バリ部は、機械部品ワークの本体部に比して熱容量は圧倒的に小さい。理想的にはバリ部のみが局所的に硬化すればよいため、上記熱処理は高速かつ安価に行なえる。また、熱処理によって硬化したバリ部は簡単に除去できるので、バリ取りを行なった後の機械部品ワークの形状にバラつきが生じにくい。
具体的に、上記熱処理としては、火炎焼入れまたは高周波焼入れといった表面焼入れを採用することができる。こうした焼入れ方法によれば、バリ部を選択的に硬化させることができるので、バリ部の除去容易性の向上が見込める。火炎焼入れによれば、バリ部のみを選択的に熱処理することが容易である。また、高周波焼入れに関していえば、自動化が容易という利点がある。
また、得るべき機械部品は成形工程時の機械部品ワークの機械的性質が保持されるものであり、成形工程終了時から最終製品たる機械部品を得るまでの期間に、機械部品ワークを構成する鉄鋼材料の機械的性質の改善を目的とする調質処理を行なわないようにすることができる。具体的には、バリ部が硬化するのに十分な焼入れ深さ等の条件設定を行なうようにすればよい。そうした場合に、バリ部の除去容易性の向上、生産コスト低減もいっそう望める。
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
まず、図1に示すのは、本発明にかかる機械部品の製造方法の工程流れ図である。製造対象たる機械部品として、自動車のABS(Antilock Brake System)アクチュエータ用のポンプ部品を例示している。図1に示すごとく、本発明の製造方法は、素材準備工程(S1)、成形工程(S2)、バリ取り工程(S3)および仕上げ工程(S4)を備える。
素材準備工程は、製鉄所で素材を製造する段階と、熱間鍛造、冷間鍛造または鋳造等の方法で素材を加工し、適切な大きさのワークを得る段階とを含む。鉄鋼材料の具体例には、SUJ2などの高炭素クロム軸受鋼(JIS G4805−1990)、S48Cなどの機械構造用炭素鋼(JIS G4051−1979)を示せる。高炭素クロム軸受鋼の場合、圧延や鋳造のままでは加工性が良くないので、切削・研削といった加工の前に、球状化焼きなましによって加工性を向上させるのが普通である。
次に、成形工程(S3)は、旋盤等の工作機械を用いて上記ワークに切削加工および/または研削加工を施すことによって、ワークの形状を整える工程である。ワークは、焼きなましで加工性を向上させてあるが、ポンプ部品のように油路や部品を相互に組付けるための嵌合部(凹凸部)を設ける際に、バリ部が必然的に発生する。
バリ取り工程(S3)は、成形工程(S3)でワークに生じたバリ部を除去する工程である。従来、このバリ取り工程は、ブラシを用いた方法や電解バリ取り方法が採用されていたが、本発明においては、以下に説明する表面焼入れによってバリ部の除去容易性を向上させてから除去するようにしている。
表面焼入れの具体例には、図2の火炎焼入れと、図3の高周波焼入れとを示すことができる。図2の火炎焼入れは、バーナ9でバリ部5を急速加熱し、素早く急冷して焼入れする方法である。具体的には、バリ部5をバーナ9の火炎でA変態点以上に加熱したのち、水等の冷却液を用いて300℃くらいまで急冷する。このとき、バリ部5が選択的に焼入れされることが望ましい。バリ取り工程(S3)での焼入れは、バリ部5の除去容易性を向上させるためにのみ行なうものだからである。したがって、バリ部5と、それ以外の部分との境界で最も剥離が生じやすくなるように、硬化深度の調整を行なうとよい。なお、バーナ9には、通常、酸素−アセチレンガスが用いられる。
図3の高周波焼入れは、高周波誘導電流の持つ性質を利用して、鋼に表面硬化を行なう操作をいう。本発明では、バリ部5の除去容易性の向上を目的とする点で、表面硬化を主たる目的とする通常の高周波焼入れとは区別される。具体的には、高周波焼入装置7の設定周波数や出力を、表面硬化を主たる目的とする場合とは異ならせる。
高周波焼入装置7は、高周波電流の発生方法によっていくつかの種類に大別できるが、たとえば本実施形態ではサイリスタインバータ式の発振器を備えた高周波焼入装置を用いている。高周波誘導加熱によって鋼を焼入れする場合、コイル(図示省略)とワークWに流れる電流は、周波数が高くなるにしたがい、それぞれの表面に集中してくる性質がある。つまり、簡単にいえば電流の周波数が高くなるほど、加熱深さが浅くなる。こうした理由から、バリ部5の除去容易性の向上に十分となるよう、設定周波数および加熱時間を調整する。
なお、本実施形態では、バリ部5の除去容易性向上の目的で焼入れを行なうので、基本的に焼戻しは行なわなくてもよい。そのため、焼戻しに掛かるコストが発生しない。この利点は、上記した火炎焼入れ、高周波焼入れの共通事項である。ただし、このことはバリ部5を除去したあとで焼戻しを行なうことを完全に排除するものではない。
また、上記の火炎焼入れや高周波焼入れによってバリ部5を選択的に硬化させたのち、最終的にはブラシでバリ部5をワークWから取り除くことができる。そして、ワークWの表面に研磨加工を施す仕上げ工程(S3)を行なう。あるいは、ブラシでバリ部5をさらう操作を省略し、仕上げ工程(S3)の研磨加工でバリ部5を最終的に除去するようにしてもよい。以上のように、S1〜S4の各工程を行なうことにより、機械部品を製造することができる。
このように、本発明の製造方法においては、成形工程終了時から最終製品たるポンプ部品を得るまでの期間(過程)に、ワークWを構成する鉄鋼材料の機械的性質の改善を目的とする調質処理を行なわない。バリ部5とともに硬化する部分は一部生じるものの、得られるポンプ部品は、心部を含めて全体として切削・研削加工による成形工程時におけるワークWの機械的性質が保持される。その点で、摺接面の耐摩耗性を向上させたりするときの表面焼入れとは本質的に異なる。したがって、本実施形態で示すABSアクチュエータ用のポンプ部品のように、浸炭や調質(焼入れ焼戻し)を行なう必要がない部品については、全て本発明の製造方法を好適に採用できるといえよう。
本発明にかかる機械部品の製造方法の工程流れ図。 火炎焼入れによるバリ取り工程の説明図。 高周波焼入れによるバリ取り工程の説明図。
符号の説明
5 バリ部
7 高周波焼入装置
9 バーナ
W ワーク

Claims (4)

  1. 鉄鋼材料からなる機械部品ワークを切削・研削加工により成形する成形工程と、前記成形工程で前記機械部品ワークに生じたバリ部を除去するバリ取り工程とを備えた機械部品の製造方法において、前記バリ取り工程においては、前記バリ部を熱処理により選択的に硬化させて除去することを特徴とする機械部品の製造方法。
  2. 前記熱処理が火炎焼入れまたは高周波焼入れである請求項1記載の機械部品の製造方法。
  3. 得るべき前記機械部品は前記成形工程時の前記機械部品ワークの機械的性質が保持されるものであり、前記成形工程終了時から最終製品たる前記機械部品を得るまでの期間に、前記機械部品ワークを構成する鉄鋼材料の機械的性質の改善を目的とする調質処理を行なわない請求項1または2記載の機械部品の製造方法。
  4. 前記鉄鋼材料が、高炭素クロム軸受鋼(JIS G4805)または機械構造用炭素鋼(JIS G4051)であり、前記機械部品が、自動車のアンチロックブレーキシステム用アクチュエータを構成するポンプ部品である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の機械部品の製造方法。
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