JP5855338B2 - 高周波焼き入れ方法及び鉄鋼を素材とする製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高周波焼き入れの方法に関するものであり、高周波焼き入れによって表面の硬度が高く、且つ内部の靱性も向上させることができる方法に関するものである。また本発明は、鉄鋼を素材とする製品の製造方法に関するものであり、高周波焼き入れを工程の一つとして含むものである。
鉄鋼製部品の表面硬化法の一つとして高周波焼き入れがある。ここで高周波焼き入れは、鉄鋼製部品材料で成形されたワークに誘導コイルを近接させ、当該誘導コイルに高周波電流を通電してワークを加熱することを特徴とする焼き入れ方法である。
即ち高周波焼き入れは、誘導コイルに高周波電流を通電することにより、誘導コイルに交番磁界を発生させ、この交番磁界中にワークを置くことによってワーク自身に二次電流を発生させ、当該二次電流によってワーク自身を昇温させて焼き入れする方法である。
特開2003−213327号公報
高周波焼き入れは、例えば浸炭焼き入れと比較して加熱に要する時間が短いという利点がある。
一方、高周波焼き入れによる焼き入れを施したワークは、浸炭焼き入れによって焼き入れを施したワークと比較して靱性が劣ると言われている。
即ち高周波の交番磁界によってワーク中に生じる二次電流は、ワークの表面に重点的に流れる。そのためワークは表面部だけが局部的に昇温する。例えば歯車を高周波焼き入れする場合を想定すると、焼き入れ後のワークは、図7の様な断面焼き入れパターンとなる。即ち機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)を素材として歯車を成形し、この歯部を高周波焼き入れし、この断面をエッチング処理して観察すると、図7の様な焼き入れパターンとなる。なおこの傾向は、モジュールが小さい(モジュール8以下)歯車の場合に顕著である。
従って歯車の歯部が内部まで全面的に加熱される様な小さい歯の歯車を高周波加熱し、その状態から急冷すると、図7の様に、歯の部分Aの全体が略完全にマルテンサイト化し、ハブ部Bは、全くマルテンサイト化されない状態となる。
そのため歯の表面は硬く、耐磨耗性に優れるが、歯元部分の靱性が低く、歯の全体の耐衝撃性が低い。その結果、衝撃的な荷重を受けた際に歯が歯元から折れてしまう場合があった。
一方、歯車の表面側だけを適正な周波数によって短時間だけ高周波加熱し、薄く焼き入れし、さらに焼戻しすると、図8の様な焼き入れパターンとなる。
この場合は、歯の部分Aの表面は、ビッカース硬さでHV720程度の高硬度が得られても、歯の内部は、焼き入れ前の素材の硬さそのものであり、ビッカース硬さでHV230程度しかなく、剛性が低い。そのためこの場合も、歯元強度が弱い歯車となる。さらに歯の中心部(内部)と表面部の間に、硬度が低い領域が生じてしまう。
また調質材を使用して歯車の表面側だけを適正な周波数によって短時間だけ高周波加熱し、薄く焼き入れしても、遷移層の硬度の落ち込みにより、歯車全体として低強度となる。
また図7の様に歯の全体を高周波焼き入れした場合であっても、図8の様に歯の表面だけを高周波焼き入れした場合であっても、焼き入れされた部位(表面)とその他の部位(内部)との硬度差が甚だしく、両者の境界部分の強度遷移が急峻で、衝撃を受けた場合に両者の境界部分が破壊される場合があった。
即ち前記した様に、焼き入れされた部位は、ビッカース硬さでHV720程度であるのに対し、これに隣接する部分は、焼き入れ前の素材の硬さそのものであり、ビッカース硬さでHV230程度しかなく、両者の硬度差が甚だしい。そのため衝撃を受けた場合に両者の境界部分が破壊され、歯の表面が欠けてしまう場合があった。
また高周波焼き入れを活用して鉄鋼製品を製造する場合は、浸炭焼き入れを施す場合と比較して、素材の炭素含有量が多く、切削性や可鍛性が悪いという問題もあった。
即ち鉄鋼製部品材料を素材として鉄鋼製品を製造する場合は、途中で機械加工を経る場合が大半である。例えば鉄鋼製部品材料に対して旋盤加工やフライス加工、及びホブ加工等の切削加工が施され、その後に焼き入れ処理がなされて製品が完成する。あるいは、鉄鋼製部品材料を塑性変形(鍛造加工)させて所定の形状に成形し、その後に焼き入れ処理がなされて製品が完成する。
一方、焼き入れの方策として高周波焼き入れを採用する場合には、使用する鉄鋼製部品材料が限定され、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)または機械構造用合金鋼を使用するが、炭素を中程度以上含む鉄鋼製部品材料を素材とする必要がある。より具体的には、高周波焼き入れを採用する場合には、中炭素鋼又は高炭素鋼を使用して成形を行う必要がある。
これに対して、浸炭焼き入れは、炭素含有量の低い鉄鋼製部品材料(低炭素鋼)を使用することができる。
そして一般に、機械構造用炭素鋼鋼材(SC材)の様な炭素を多く含む鉄鋼製部品は、炭素含有量の低い鉄鋼製部品材料に比べて硬い。即ち高周波焼き入れ適応材の方が、浸炭適応材よりも硬い。そのため切削や塑性変形が困難であり、成形し難いという不満があった。
また鉄鋼材料を球状化処理(球状化焼なまし処理)すると、組織中に球状化した炭化物が現れ、切削性が向上する。即ち球状化処理された素材は、焼きならし材や調質材と比べて軟らかい。しかしその反面、球状化処理された素材は、短時間の加熱では炭化物の拡散が進まない。そのため短時間加熱を特徴とする高周波焼き入れでは、炭化物の拡散が困難であり、通常の高周波焼き入れでは十分な硬度を発現することができない。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、表面の硬度が高く、かつ内部の靱性に優れた高周波焼き入れ方法の開発を課題とするものである。同時に本発明は、切削成形や鍛造成形が容易であり、且つ表面の硬度が高く、さらに内部にも靱性の優れた焼き入れを施すことができる焼き入れされた製品の製造方法の開発を課題とするものである。
本発明者は、上記した課題を解決するために、鋭意研究し、球状炭化物を含む組織を備えた鉄鋼製部品を二回に渡って高周波焼き入れし、最初の第一高周波加熱工程においては、高周波発振機の発振周波数を高く設定し、二回目の第二高周波加熱工程においては、高周波発振機の発振周波数を低く設定すると、鉄鋼製部品材料の内部が理想的な状態で焼き入れされることを発見した。
この知見に基づいて完成された請求項1に記載の発明は、球状化した炭化物を含む組織を備えた鉄鋼製部品を高周波加熱する第一高周波加熱工程と、第一高周波加熱工程を経た前記鉄鋼製部品を前記第一高周波加熱工程の際の周波数よりも低い周波数で高周波誘導加熱する第二高周波加熱工程と、前記鉄鋼製部品を急冷する急冷工程を順次行う高周波焼き入れ方法であって、前記第一高周波加熱工程によって、鉄鋼製部品の表面をAc3点よりも摂氏200度以上高い温度に昇温した後に徐冷または放冷して表面部を焼ならし組織か微細なパーライト組織とし、その後に第二高周波加熱工程によって鉄鋼製部品の表面を先の第一高周波加熱工程における加熱深さよりも深く且つAc3点直上近傍の温度に先の第一高周波加熱工程よりも長い時間をかけて昇温し、その後に急冷工程を行うことを特徴とする高周波焼き入れ方法である。
本発明は、球状化した炭化物を含む組織を備えた鉄鋼製部品を高周波加熱する第一高周波加熱工程と、第一高周波加熱工程を経た前記鉄鋼製部品を前記第一高周波加熱工程の際の周波数よりも低い周波数で高周波誘導加熱する第二高周波加熱工程と、前記鉄鋼製部品を急冷する急冷工程を順次行う高周波焼き入れ方法であって、前記第一高周波加熱工程によって、鉄鋼製部品の表面をAc3点よりもはるかに高い温度に昇温した後に徐冷または放冷して表面部を焼ならし組織か微細なパーライト組織とし、その後に第二高周波加熱工程によって鉄鋼製部品の表面を先の第一高周波加熱工程における加熱深さよりも深く且つAc3点近傍の温度に先の第一高周波加熱工程よりも長い時間をかけて昇温し、その後に急冷工程を行うことを特徴とする高周波焼き入れ方法に関連する。
発明は、第一高周波加熱工程によって、鉄鋼製部品の表面をAc3点よりもはるかに高い温度に昇温した後に徐冷または放冷し、その後に第二高周波加熱工程によって鉄鋼製部品の表面を先の第一高周波加熱工程における加熱深さよりも深く且つAc3点近傍の低い温度に先の第一高周波加熱工程よりも長い時間をかけて昇温し、その後に急冷工程を行うことに関連する
請求項2に記載の発明は、鉄鋼材料に球状化焼なまし処理を実施して組織中に球状炭化物を析出させ、その後に請求項1に記載の高周波焼き入れ方法を実施し、前記第一高周波加熱工程における周波数は50kHz以上であり、前記第二高周波加熱工程における周波数は30kHz以下であり、前記徐冷または放冷した段階で、表面部が焼ならし組織か微細なパーライト組織であってその中に未溶解の球状炭化物が一部残留する組織となり、それよりも深部は、多くの球状炭化物を含有する組織を維持していることを特徴とする高周波焼き入れ方法である。
本発明は、第一高周波加熱工程における周波数は50kHz以上であり、第二高周波加熱工程における周波数は30kHz以下であり、前記徐冷または放冷した段階で、表面部が焼ならし組織か微細なパーライト組織であってその中に未溶解の球状炭化物が一部残留する組織となり、それよりも深部は、多くの球状炭化物を含有する組織を維持していることに関連する
また第一高周波加熱工程における周波数は80kHz以上であることが望ましい。
請求項3に記載の発明は、鉄鋼材料に球状化焼なまし処理を施す球状化工程を実施して組織中に球状炭化物を析出させ、その鉄鋼材料を所定のワーク形状に切削及び/又は鍛造成形、その後に請求項1又は2に記載の高周波焼き入れ方法によって焼き入れすることを特徴とする鉄鋼を素材とする製品の製造方法である。
本発明は、鉄鋼材料に球状化焼なまし処理を施す球状化工程と、その鉄鋼材料を所定のワーク形状に切削及び/又は鍛造成形する成形工程を備え、その後に請求項1又は2のいずれかの高周波焼き入れ方法によって焼き入れすることに関連する。
本発明によると、鉄鋼製部品は、表面の硬度が高く、かつ内部には中程度の硬さであって深い強靱性域を持つ優れたものとなる。また焼き入れ前の素材は、炭化物が球状化された組織であるから、焼き入れ前における硬度が低く、焼き入れ前に行われる成形が容易である。
本発明の実施形態の鉄鋼を素材とする製品の製造方法の工程を示すフローチャートである。 本発明の実施形態で使用する高周波焼き入れ装置の概念図である。 高周波焼き入れを施す前の鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。 第一高周波加熱工程の際における鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。 第二高周波加熱工程の際における鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。 本発明の実施形態の高周波焼き入れを施した鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。 従来技術の高周波焼き入れ法によって歯の全体を焼き入れした鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。 従来技術の高周波焼き入れ法によって歯の表面部分だけを焼き入れした鉄鋼製部品(歯車)の一部断面図である。
以下さらに本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、歯車を焼き入れする場合を例に説明する。
本実施形態で採用するワークは、歯車(鉄鋼製部品)1である。歯車1は、S45C、S50C等の炭素鋼や、クロムモリブデン鋼(SCM)等の合金鋼を素材とするものである。本実施形態では、AISI4150又はSCM440を使用した。
ワークたる歯車(鉄鋼製部品)1は、歯切り加工に公知のホブを使用し、素材を切削加工して成形されるが、本実施形態では、切削による成形に先立って、素材たる鉄鋼製部品を球状化処理(球状化焼なまし)する。即ち組織中に炭化物を球状に析出させる。球状化処理の方法は、公知の通りであり、代表的な方法としては次の4種類がある。
即ち第1の方法は、鉄鋼製部品をA1温度とA3温度またはAcm温度との間の温度に加熱し、徐冷する。
第2の方法は、鉄鋼製部品をA1温度とA3温度またはAcm温度との間の温度に加熱し、その後にA1温度以下の温度に保持してから冷却する。
第3の方法は、鉄鋼製部品をA1温度とA3温度またはAcm温度との間の温度に加熱し、その後にA1温度以下の温度に保持し、さらに再度昇温し、これを繰り返した後に冷却する。
第4の方法は、鉄鋼製部品をA1温度に昇温し、A1温度で保持する。
球状化処理された素材は、球状化した炭化物を含む。球状化処理された素材は、焼きならし材や調質材と比べて軟らかい。しかし前記した様に、球状化処理された素材は、短時間の加熱では炭化物の拡散が進まないので、短時間加熱を特徴とする高周波焼き入れでは、炭化物の拡散が困難であり、通常の高周波焼き入れでは十分な硬度を発現することができない。
そして本実施形態では、球状化処理を施した鉄鋼製部品材料を使用して歯車1を成形する。
この様な球状化した炭化物を有する組織を持つ鉄鋼材料は、切削性が高く、公知のホブを使用して容易に歯形を成形することができる。
成形された歯車1は、図3に示すように、いずれの部位も、炭化物が球状化した組織である。
続いて成形された歯車1を高周波焼き入れする。
図2は、高周波焼き入れ装置2の概念図である。高周波焼き入れ装置2は、高周波電源5と、カレントトランス6及び誘導加熱コイル7によって構成されている。
高周波電源5は、高周波発振機10を備え、所望の周波数の高周波交流を出力することができる。
誘導加熱コイル7は、例えば公知のサークル型コイルであり、歯車1の円周を覆う大きさを持っている。なお誘導加熱コイル7の形状や構造は任意であり、単なる円形のものや、歯形に応じた凹凸形状を有するものであってもよい。また半開放型のコイルであってもよい。さらに歯を一個ずつ昇温させる構造のコイルであってもよい。
本実施形態では、最初に歯車1を第一高周波加熱工程にかける。即ち高周波発振機10の発振周波数を高く設定し、誘導加熱コイル7に高い周波数の高周波交流を通電する。
その結果、歯車1に二次電流が流れるが、誘導加熱コイル7に通電される電流が高い周波数であるから、二次電流は、歯車1の表面だけに流れる。そのため図4に示すように、歯車1の表面だけが発熱し、内部は発熱しない。ただし発熱領域から熱伝導を受けるので、内部についても温度は上がるが、内部の温度上昇は小さいので組織中の炭化物が溶け込み拡散することはない。
第一高周波加熱工程においては、歯車1の表面温度をAc3点をはるかに上回る温度とし、難拡散組織たる炭化物をある程度予備拡散させる。
歯車1の表面温度は、Ac3点を摂氏200度以上上回る温度とし、加熱時間が極短い場合、具体的には摂氏1000度以上とすることが望ましい。
またAISI4150の様な合金鋼を使用する場合には、炭素鋼以上に炭化物の拡散が悪いから、より高温にすることが望ましい。瞬間的には摂氏1200度程度に昇温することが推奨される。
また発熱拡散領域の厚さは、1mmから2mm程度であることが推奨される。
発熱領域が高温を維持している時間は、ごく僅かで足り、具体的には、0.1秒から0.5秒程度である。発熱領域が高温を維持している時間は、過加熱による炭化物の内部拡散を抑制できる範囲の時間である。
その結果、表面近傍は、オーステナイト組織となり、さらに組織中の球状化していた炭化物が溶け込み、拡散する。これに対して内部の非加熱領域は、実質的に組織が変わらず、球状炭化物が析出した状態を維持している。
第一高周波加熱工程の後に、歯車1を放冷することにより、続く第二高周波加熱工程時に球状炭化物が完全拡散可能な組織状態となる。
本実施形態では、一定時間だけ誘導加熱コイル7に通電し、その後に通電を停止して放置する。その結果、歯車1の温度が内部への奪熱質量効果により低下してゆく。また歯車1の温度が低下することによって表面部は、焼ならし組織か、自冷により微細なパーライト組織となり、その中に未溶解の球状炭化物が一部残留する組織となる。一方、それよりも深部は、多くの球状炭化物を含有する組織を維持している。
次に歯車1を第二高周波加熱工程にかける。即ち高周波発振機10の発振周波数を下げるか、別のステーションに歯車1を移し、別の誘導加熱コイル7に前回よりも低い周波数の高周波交流を通電し、当該別のコイルに歯車1を近接させる。
その結果、歯車1に二次電流が流れるが、誘導加熱コイル7に通電される電流が、低い周波数であるから、二次電流は、歯車1の表面だけでなく、深部にも流れる。そのため図5に示すように、歯車1の歯元からさらに深い領域までが発熱する。
また第二高周波加熱工程においては、前記した第一高周波加熱工程よりも低い温度に加熱する。より具体的には加熱領域の温度を表面温度が、Ac3点直上程度となる様に加熱する。より望ましくは、摂氏800度前後に加熱する。
第二高周波加熱工程の際に、発熱領域が高温を維持している時間は、前記した第一高周波加熱工程の際よりもはるかに長い。目安の加熱時間としては、歯車1のモジュールの2倍から3倍程度とする。
また発熱領域の厚さ(深さ)は、歯元から数mm以上であることが推奨される。
その結果、先に第一高周波加熱工程によって高温に昇温され、予備拡散された表面領域は、第二高周波加熱工程の際に再加熱され、残っていた球状炭化物が拡散消失し、固有の炭素量に応じた均一なオーステナイト組織となる。即ち図5の再加熱領域は、球状化した炭化物が略完全に消失した組織となる。
一方、それよりも深い領域は、第二高周波加熱工程ではじめて加熱された領域であり、未溶解の球状炭化物を含むオーステナイト組織となる。
そして歯車1を急冷すると、表面の再加熱領域は、マルテンサイト組織のみに変態する。また第二高周波加熱工程によって初めて加熱された領域は、未溶解の球状炭化物と、低炭素マルテンサイトとの混合組織に変態する。
急冷した後は、必要に応じて再加熱し、焼き戻しを行う。
各部の硬度分布は、図6の様であり、表面層は、ビッカース硬さでHV740程度の極めて硬い組織となり、中間層は、ビッカース硬さでHV450程度のやや硬い組織となり、最深層は、ビッカース硬さでHV200以下程度の柔らかい組織となる。
そのため、歯の表面は、耐磨耗性に優れ、歯の内部や歯元部分は、高い強度と靱性を示す。
さらに各層の界面における硬度差が小さいので、層間の剥離も起こらない。そのため高周波焼き入れ後の歯車1は、理想的な硬度分布を持ち、丈夫である。
以上説明した実施形態では、歯車を例にあげて本発明を説明したが、鉄鋼製部品は歯車に成形されたものに限定されるものではない。本発明を採用する製品は、限定されるものではないが、衝撃と摩擦の双方を常時受ける製品に本発明を採用することが推奨される。 また本発明を歯車に応用する場合、モジュールが10以下の歯車に適用するとより顕著な効果が発揮される。
本発明は、表面が高硬度で耐磨耗性に優れ、内部に素材以上の強靱性を備え、中間遷移層も緩やかな強度(硬度)勾配にすることができ、高強度部材に最適な高周波焼き入れ法を提供するものである。
1 歯車(鉄鋼製部品)
2 高周波焼き入れ装
5 高周波電源
10 高周波発振機

Claims (3)

  1. 球状化した炭化物を含む組織を備えた鉄鋼製部品を高周波加熱する第一高周波加熱工程と、第一高周波加熱工程を経た前記鉄鋼製部品を前記第一高周波加熱工程の際の周波数よりも低い周波数で高周波誘導加熱する第二高周波加熱工程と、前記鉄鋼製部品を急冷する急冷工程を順次行う高周波焼き入れ方法であって、
    前記第一高周波加熱工程によって、鉄鋼製部品の表面をAc3点よりも摂氏200度以上高い温度に昇温した後に徐冷または放冷して表面部を焼ならし組織か微細なパーライト組織とし、その後に第二高周波加熱工程によって鉄鋼製部品の表面を先の第一高周波加熱工程における加熱深さよりも深く且つAc3点直上近傍の温度に先の第一高周波加熱工程よりも長い時間をかけて昇温し、その後に急冷工程を行うことを特徴とする高周波焼き入れ方法。
  2. 鉄鋼材料に球状化焼なまし処理を実施して組織中に球状炭化物を析出させ、その後に請求項1に記載の高周波焼き入れ方法を実施し、
    前記第一高周波加熱工程における周波数は50kHz以上であり、前記第二高周波加熱工程における周波数は30kHz以下であり、前記徐冷または放冷した段階で、表面部が焼ならし組織か微細なパーライト組織であってその中に未溶解の球状炭化物が一部残留する組織となり、それよりも深部は、多くの球状炭化物を含有する組織を維持していることを特徴とする高周波焼き入れ方法。
  3. 鉄鋼材料に球状化焼なまし処理を施す球状化工程を実施して組織中に球状炭化物を析出させ、その鉄鋼材料を所定のワーク形状に切削及び/又は鍛造成形、その後に請求項1又は2に記載の高周波焼き入れ方法によって焼き入れすることを特徴とする鉄鋼を素材とする製品の製造方法。
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