JP6519282B2 - リングギヤの製造方法及びリングギヤ - Google Patents

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Description

本発明は、リングギヤの製造方法及びリングギヤに関する。
従来、鋼部材であるリングギヤを製造する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の製造方法は、浸炭雰囲気下においてリングギヤをオーステナイト化温度以上に加熱して表面に浸炭層を形成する浸炭工程と、その浸炭後にリングギヤをマルテンサイト変態する速度よりも遅い速度で冷却する徐冷工程と、高密度エネルギによってリングギヤの所望部分(具体的には、外歯部)をオーステナイト領域まで加熱した後にマルテンサイト変態する速度以上の速度により冷却する焼入工程と、を備えている。上記の製造方法によれば、リングギヤの靱性を確保しつつ、リングギヤの外歯部の表面硬度を高めることができる。
特開2014−77198号公報
ところで、リングギヤには、歯部が設けられる環状部の周面から径方向に向けて延びるフランジ部が設けられるものがある。このフランジ部には、複数のボルト穴と、そのボルト穴に対応した数の座面部と、が設けられている。座面部は、ボルト穴の周囲においてそのボルト穴に挿入されるボルトの座面が接触する部位である。かかるリングギヤでは、その使用時に振動が加わるため、ボルト座面とリングギヤが当接する座面部との締結力が使用環境において低下しないようにする必要がある。このボルト座面とリングギヤの座面部との締結力低下を抑えるうえでは、ボルト座面とリングギヤ座面部との硬度差をできるだけ小さくすることが有効である。しかしながら、上記した特許文献1記載の製造方法では、リングギヤの座面部に対して焼入れが行われず、また、浸炭用鋼材はボルトのように一般に流通する鉄部品よりも硬度が低いことが一般的であるため、ボルト座面とリングギヤ座面部との硬度差が大きく、使用環境下においてボルトとリングギヤ座面部との締結力が低下するおそれがある。
そこで、リングギヤ座面部を、歯部と同様に、高密度エネルギによって焼入れすることが考えられる。しかしながら、歯部とリングギヤ座面部とは、それぞれの部位に要求される硬度等の性能や機能が異なるため、それぞれの部位に適した焼入れを行う必要がある。高周波加熱はレーザ加熱に比べて比較的広い範囲に亘って加熱が行われることとなるため、例えば、座面部の焼入れを高周波加熱によって行う場合は、座面部以外の比較的広い領域(例えば環状部など)にも焼入れされてしまい、焼入れの必要がない箇所への焼入れによって熱処理歪みが生じたり、引張応力が発生し、引張応力に起因して歯部に亀裂が生じる可能性が高くなる。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、リングギヤの歯部及び座面部それぞれに適した焼入れを行うことが可能なリングギヤの製造方法、及び、熱処理歪みが少なく形状精度の高い最適なリングギヤを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、径方向一方に向けて延びる歯部が設けられた円筒状の環状部と、前記環状部の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部に空けられたボルト穴の周囲に、ボルトの座面が接触する座面部が設けられたリングギヤの製造方法であって、前記リングギヤを、大気の酸素濃度よりも低い酸素濃度の浸炭雰囲気中でオーステナイト化温度以上の温度に加熱することにより、表面に浸炭層を形成する浸炭工程と、前記浸炭工程において表面に浸炭層が形成された前記リングギヤを、マルテンサイト変態する冷却速度よりも遅い冷却速度により、冷却による組織変態が完了する温度以下の温度まで冷却する徐冷工程と、前記徐冷工程における冷却後、前記歯部を高周波加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に該歯部をマルテンサイト変態する冷却速度以上の冷却速度で冷却することにより、該歯部にマルテンサイト組織を含む硬化層を形成する第1焼入れ工程と、前記徐冷工程における冷却後、前記座面部をレーザ照射により加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に前記レーザ照射の停止によって該座面部を自己冷却させることにより、該座面部にマルテンサイト組織を含む硬化層を形成する第2焼入れ工程と、を備えるリングギヤの製造方法である。
また、本発明の一態様は、径方向一方に向けて延びる歯部が設けられた円筒状の環状部と、前記環状部の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部に空けられたボルト穴の周囲に、ボルトの座面が接触する座面部が設けられたリングギヤであって、前記歯部の表面が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層であり、前記歯部の芯部が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層であり、前記環状部の、前記歯部以外の部位が、マルテンサイト組織を含まない非硬化層であり、前記座面部が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む硬化層であり、前記フランジ部の、前記座面部以外の部位が、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、及びトルースタイト組織を含まない非硬化層であるリングギヤである。
本発明によれば、リングギヤの歯部及び座面部それぞれに適した焼入れを行うことができる。また、熱処理歪みが少なく形状精度の高い最適なリングギヤを構成することができる。
本発明の一実施例である製造方法を用いて製造されるリングギヤの斜視図である。 本実施例のリングギヤを含む連結部位の断面図である。 本実施例のリングギヤ10に熱処理を施す装置の要部構成図である。 本実施例のリングギヤを製造する手順を表した図である。 本実施例のリングギヤのOBD(オーバボール径)寸法を製造工程ごとに測定した結果を表した図である。
以下、図面を用いて、本発明に係るリングギヤの製造方法及びリングギヤの具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である製造方法を用いて製造されるリングギヤ10の斜視図を示す。また、図2は、本実施例のリングギヤ10を含む連結部位の断面図を示す。
本実施例のリングギヤ10は、例えば車両に搭載される動力伝達装置に用いられるデフリングギヤである。以下、リングギヤ10をデフリングギヤ10とする。デフリングギヤ10は、素材鋼の金属により形成された鋼部材である。この素材鋼は、後述する浸炭工程を前提としているため、例えば熱間圧延鋼材であって、炭素含有量が0.35質量%以下の低炭素鋼又は低炭素合金鋼を用いることが、プレス加工や切削加工の成形性や曲げ性等の加工面やコスト面などの観点から好ましい。デフリングギヤ10は、上記の鋼部材から熱間鍛造による粗成形を行い、焼鈍処理を施し、更に切削加工を施すことにより、外形形状が形成されるものである。
デフリングギヤ10は、環状に形成される環状部12と、フランジ部14と、を有している。環状部12は、円筒状に形成された部位である。環状部12には、外歯部16が設けられている。外歯部16は、環状の外周面に複数の歯がそれぞれ径方向外側に向けて延びた部位である。また、フランジ部14は、環状部12の軸が延びる方向に法線が向くフランジ面18を有する部位であって、環状部12の内周面から径方向内側(すなわち、軸中心側)に向けて延びている。デフリングギヤ10の軸中心側には、貫通穴20が設けられている。
フランジ部14には、そのフランジ面18を軸方向に貫通するボルト穴22が形成されている。ボルト穴22は、フランジ面18に複数(例えば12個)設けられている。各ボルト穴22は、フランジ面18において軸中心回りに等角度間隔(例えば30°)でかつ軸中心から等距離の位置に設けられている。ボルト穴22は、ボルト24が挿入される穴である。ボルト24は、ボルト穴22に挿入された状態でデフケース26に締結されることによりデフリングギヤ10とデフケース26とを連結させる。
フランジ面18のボルト穴22の周囲には、ボルト24がボルト穴22に挿入された際にそのボルト24の座面(以下、ボルト座面と称す)32が接触する部位である座面部30が存在する。座面部30は、フランジ面18において、ボルト穴22に対応して軸中心回りに等角度間隔でかつ軸中心から等距離の位置に設けられている。
次に、図3〜図5を参照して、本実施例のデフリングギヤ10の製造手法について説明する。
図3は、本実施例のデフリングギヤ10に熱処理を施す装置40の要部構成図を示す。尚、図3(A)には装置40が備えるレーザ装置と熱処理対象のデフリングギヤ10との相対位置関係を、また、図3(B)にはレーザ装置によりレーザ加熱が施されるデフリングギヤ10の箇所を表した断面図を、それぞれ示す。また、図4は、本実施例のデフリングギヤ10を装置40により製造する手順を表した図を示す。尚、図4(A)にはデフリングギヤ10に対して施す熱処理の項目を、図4(B)には図4(A)に示す熱処理が行われる際の温度の時間変化を、また、図4(C)には図4(A)に示す熱処理が施されるデフリングギヤ10の箇所を表した断面図を、それぞれ示す。
本実施例においては、上記構造を有するデフリングギヤ10が形成されると、次に、そのデフリングギヤ10の熱処理が行われる。具体的には、デフリングギヤ10に対して、浸炭処理と徐冷処理と焼入れ処理とが行われる。かかる熱処理によれば、デフリングギヤ10における靱性を確保しつつ表面硬度を高めることができる。
本実施例において、デフリングギヤ10に熱処理を施す装置40は、浸炭室42と、徐冷室44と、第1焼入れ室46と、第2焼入れ室48と、を備える。浸炭室42は、加熱されたデフリングギヤ10を浸炭させる浸炭処理が実施される処理室である。徐冷室44は、浸炭室42で浸炭されたデフリングギヤ10を徐冷させる徐冷処理が実施される処理室である。尚、徐冷室44は、浸炭室42と兼用されてよい。第1焼入れ室46は、徐冷室44で徐冷されたデフリングギヤ10を高周波加熱を用いて焼入れする高周波焼入れ処理が実施される処理室である。また、第2焼入れ室48は、徐冷室44で徐冷されかつ第1焼入れ室46で高周波焼入れ処理が施されたデフリングギヤ10をレーザを用いて焼入れするレーザ焼入れ処理が実施される処理室である。
[浸炭工程]
浸炭室42には、素材鋼のオーステナイト化温度以上の温度(例えば930℃)に加熱されたデフリングギヤ10が搬入される。浸炭室42における浸炭処理は、浸炭室42内の雰囲気を大気圧よりも低い圧力に減圧した状況でその浸炭室42内に浸炭ガスを供給してデフリングギヤ10に対して浸炭(すなわち、真空浸炭)を行うものである。尚、浸炭室42には、加熱されたデフリングギヤ10が複数纏めて搬入されて、浸炭室42では、複数のデフリングギヤ10が纏めて浸炭されることとすればよい。
上記の浸炭処理では、浸炭ガスとして炭化水素系のガス(例えば、メタンやプロパン,エチレン,アセチレンなど)が用いられる。かかる浸炭処理が行われると、浸炭ガスの分子が浸炭処理対象(具体的には、デフリングギヤ10)の表面に接触した際に分解して発生する活性な炭素が浸炭処理対象の表面において炭化物となってその浸炭処理対象に蓄えられると共に、表面の炭化物が分解して、蓄えられていた炭素がマトリックスに溶解して内部に向けて拡散される。
上記の浸炭によれば、デフリングギヤ10のほぼ全表面に炭素を浸入させて浸炭層52を形成することができる。この浸炭層52の炭素濃度は、素材鋼(すなわち、浸炭前のデフリングギヤ10)や浸炭されない非浸炭層の炭素濃度に比べて高くなる。尚、浸炭層52の炭素濃度は0.75質量%以下であることが、浸炭処理対象の90°エッジ部に炭化物を析出させないうえで望ましい。
また、上記の浸炭処理は、浸炭室42内の雰囲気を大気圧よりも低い圧力に減圧した状況でデフリングギヤ10に対して浸炭を行う真空浸炭である。このため、浸炭室42内の雰囲気中の酸素濃度を低く抑えることができるので、浸炭層52の粒界酸化を防ぐことができる。
また、上記の真空浸炭によれば、比較的少量の浸炭ガスを利用してデフリングギヤ10に対する浸炭処理を行うことができるので、効率よく浸炭処理を行うことができる。更に、上記の真空浸炭によれば、デフリングギヤ10の加熱処理を長時間に亘って行うことが不要であるので、処理時間の短縮化及び消費エネルギの低減を図ることができ、浸炭設備の低コスト化及び小型化を図ることができる。
[徐冷工程]
徐冷室44には、浸炭室42において表面に浸炭層52が形成されたデフリングギヤ10が搬入される。徐冷室44における徐冷処理は、浸炭されたデフリングギヤ10を、その素材鋼がマルテンサイト変態する速度よりも遅い速度(すなわち、マルテンサイト変態しない速度)で冷却(徐冷)するものである。尚、徐冷室44には、浸炭されたデフリングギヤ10が複数纏めて搬入されて、徐冷室44では、複数のデフリングギヤ10が纏めて徐冷されることとすればよい。
上記の徐冷処理は、その冷却による組織変態が完了する温度以下の温度まで行われる。かかる徐冷によれば、浸炭後のデフリングギヤ10がマルテンサイト変態するのを防止することができる。このため、浸炭後のデフリングギヤ10におけるマルテンサイト変態に伴う歪の発生を低減することができるので、デフリングギヤ10の浸炭を形状精度を維持したまま完了させることができる。
また、上記の徐冷処理は、大気圧よりも減圧した冷却雰囲気中で行われることが、デフリングギヤ10での熱歪みの発生を低減するうえで好ましい。鋼部材と雰囲気との間の熱交換のため、雰囲気中の風上と風下とで温度差があり、風下での雰囲気温度が風上の雰囲気温度よりも高い。この温度差は、雰囲気の圧力が大気圧に近いほど、熱交換速度が速いので、顕著である。このため、雰囲気の圧力が大気圧に近いほど、鋼部材の部位による温度差が大きくなり、熱歪みが生じ易くなる。
これに対して、上記の徐冷処理が大気圧よりも低い減圧下で行われる場合は、大気圧下で行われる場合に比べて、デフリングギヤ10と冷却雰囲気との間の熱交換速度が遅くなる。このため、雰囲気中の風上と風下とでの温度差が小さく、比較的均一に冷却が進行するので、デフリングギヤ10での熱歪みの発生を低減することができる。尚、雰囲気中が無風状態にある場合にも、大気圧下での冷却よりも減圧下での冷却の方が熱歪みの発生を低減することが可能である。この理由は、減圧下での冷却では、大気圧下での冷却に比べて、温度の異なる冷却雰囲気がそれぞれ滞留することによる冷却速度の差が小さくなり、熱歪みが生じ難くなるからである。従って、減圧下での徐冷処理によれば、更に形状精度を維持したままデフリングギヤ10の浸炭を完了させることが可能である。
尚、徐冷処理での雰囲気圧力は、100hPa〜650hPaの範囲内であることが好ましい。この理由は、雰囲気圧力が650hPaよりも高い場合は減圧による効果が不十分になると共に、雰囲気圧力が100hPaよりも低い場合はその雰囲気圧力を100hPa未満とするうえで設備構成上に難点があるからである。更に好ましくは、徐冷処理での雰囲気圧力は、100hPa〜300hPaの範囲である。
[第1焼入れ工程]
第1焼入れ室46には、徐冷室44において徐冷されたデフリングギヤ10が搬入される。第1焼入れ室46における焼入れ処理は、徐冷後のデフリングギヤ10の外歯部16を、素材鋼のオーステナイト化温度以上の温度まで高周波加熱により昇温させ、その後、少なくとも浸炭層52を含めてマルテンサイト変態する速度で冷却(急冷)する高周波焼入れ処理である。尚、第1焼入れ室46には、徐冷後のデフリングギヤ10が一つずつ搬入されて、第1焼入れ室46では、徐冷後のデフリングギヤ10が一つずつ高周波焼入れされることとすればよい。
第1焼入れ室46には、誘導コイルを含む高周波焼入れ機が配設されている。第1焼入れ室46において、高周波焼入れ機の誘導コイルは、搬入されたデフリングギヤ10の環状部12の外歯部16に対して径方向外側において非接触で対向するように配置される。高周波焼入れ機は、誘導コイルに電流を流すことにより高周波の電磁波を発生させて、デフリングギヤ10の外歯部16に電磁誘導を起こし、そのデフリングギヤ10の外歯部16の表層部を加熱させる。かかる誘導コイルによる高周波加熱(誘導加熱)によれば、デフリングギヤ10の外歯部16を局部的に精度良く加熱することができる。尚、この高周波加熱は、治具上のデフリングギヤ10を回転させながら行われることとしてもよい。
また、高周波焼入れ機は、上記の如くデフリングギヤ10の外歯部16の高周波加熱が完了した後、そのデフリングギヤ10の外歯部16を、冷却手段として水を用いて急冷させる。尚、この水冷は、治具上のデフリングギヤ10を回転させながらそのデフリングギヤ10の周囲から外歯部16に向けて冷却水を噴射させることとすればよい。かかる水冷によれば、外歯部16を均一に急冷することができ、急冷に伴う歪の発生を低減することができる。
かかる高周波焼入れによれば、デフリングギヤ10の外歯部16(具体的には、表面及び比較的深い芯部を含む箇所)を局部的に焼入れすることができ、その外歯部16の組織をマルテンサイト組織を含むように変態させることができるので、外歯部16の硬度(疲労強度)を高めることができる。この硬度が高められた外歯部16の表面は、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有する。また、この硬度が高められた外歯部16の上記深部は、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有する。
従って、デフリングギヤ10の環状部12の外歯部16の表面及び比較的深い深部にマルテンサイト組織を含む硬化層54を形成することができると共に、環状部12の、外歯部16以外の部位にマルテンサイト組織を含む硬化層ではない非硬化層(すなわち、マルテンサイト組織を含まない硬化層)55を形成することができる。このため、デフリングギヤ10の内部の靱性を確保しつつ、その外歯部16の硬度を高めることができる。
高周波加熱では、上記の如く、デフリングギヤ10の局部的な加熱を精度良く行うことができるので、その高周波加熱後に冷却速度が比較的速い水冷が行われても、焼入れ歪みを低減することができる。また、水冷による優れた急冷によって、焼入れ箇所すなわち外歯部16の高硬度化すなわち高強度化を実現することができ、高い焼入れ効果を得ることができる。このため、浸炭処理の簡素化或いは浸炭時間の短縮を図ることができると共に、浸炭層を薄層化しても必要な強度を確保できるデフリングギヤ10を増やすことができ、これによって、熱処理工程全体の簡素化及びデフリングギヤ10の製造時間の短縮を図ることができる。
尚、上記の高周波加熱は、デフリングギヤ10の外歯部16を溶融させることなくかつ表面から比較的深い芯部(例えば、2mm〜5mmなど)までオーステナイト化させるように行われる。例えば、誘導コイルによる加熱の投入エネルギが小さめに抑えられつつその加熱時間が少し長めにされた条件で行われる。かかる高周波加熱によれば、表面からの熱伝導により比較的深い芯部を加熱することができ、浸炭層の領域だけでなくその浸炭層よりも深い領域をも加熱することができる。このため、焼入れ効果を浸炭層よりも深い領域でも得ることができ、外歯部16の硬化層54を浸炭層52だけでなくその浸炭層52よりも深い領域まで行き渡らせることができる。また、高周波加熱を比較的低い温度で行うことができるので、その後の水冷時の歪み発生を低減することができ、これにより、外歯部16の形状精度を高く維持することができる。
[第2焼入れ工程]
第2焼入れ室48には、徐冷室44において徐冷されたデフリングギヤ10が搬入される。尚、第2焼入れ室48に搬入されるデフリングギヤ10は、徐冷室44における徐冷後かつ第1焼入れ室46における高周波焼入れ後のものである。第2焼入れ室48における焼入れ処理は、徐冷後かつ高周波焼入れ後のデフリングギヤ10の座面部30を、レーザ照射により素材鋼のオーステナイト化温度以上の温度までレーザ加熱により昇温させ、その後、レーザ照射停止によって自己冷却(急冷)させるレーザ焼入れ処理である。尚、第2焼入れ室48には、徐冷後のデフリングギヤ10が一つずつ搬入されて、第2焼入れ室48では、徐冷後のデフリングギヤ10が一つずつレーザ焼入れされることとすればよい。
第2焼入れ室48には、レーザ装置50が配設されている。第2焼入れ室48において、レーザ装置50は、任意の位置及び方向へのレーザ照射をオン/オフすることが可能な装置であって、搬入されたデフリングギヤ10のフランジ部14の、ボルト24のボルト座面32が接触する座面部30及びその近傍に向けてレーザ照射を行うことが可能である。レーザ装置50は、例えば、治具に取り付けられたデフリングギヤ10に対してフランジ部14の座面部30が存在する側の軸方向に配置される。レーザ装置50は、デフリングギヤ10の有する各座面部30にレーザを照射して、そのデフリングギヤ10の各座面部30の表面を加熱させる。かかるレーザ加熱によれば、デフリングギヤ10の座面部30を局部的に精度よく加熱することができる。
上記のレーザ加熱は、治具にデフリングギヤ10を固定させつつ照射対象の座面部30ごとにレーザ照射位置を可変させながら、各座面部30に対して一つずつ行われることとしてよい。また逆に、レーザ照射位置を固定させつつ照射対象の座面部30ごとに治具上のデフリングギヤ10を回転させながら、各座面部30に対して一つずつ行われることとしてよい。尚、一回当たりのレーザ照射の領域範囲は、ボルト穴22の周囲にある座面部30の大きさに合わせたものであればよい。また、一回当たりのレーザ照射の照射時間又は投入エネルギは、デフリングギヤ10のフランジ部14の座面部30の所定深さ(例えば、0.5mmなど)までを素材鋼のオーステナイト化温度以上の温度に加熱するものであればよい。
また、レーザ装置50は、上記の如くデフリングギヤ10の座面部30のレーザ加熱が完了した後、そのレーザ照射を停止させることによりその座面部30を急冷させる。レーザ照射(レーザ加熱)が行われていない部位の温度は、レーザ照射の停止前後でほとんど変わらない(例えば、常温である)。このため、レーザ照射がなされた座面部30の熱がレーザ照射が行われていない部位に急速に伝達されて、その座面部30がマルテンサイト変態が行われる速度以上の速度で冷却される。
かかるレーザ焼入れによれば、デフリングギヤ10の座面部30(特に、座面部30が存在するフランジ部14の表面)を局部的に焼入れすることができ、その座面部30の組織をマルテンサイト組織を含むように変態させることができるので、座面部30の硬度(疲労強度)を高めることができる。具体的には、浸炭処理と徐冷処理とレーザ焼入れ処理とのすべてを含む熱処理が行われた座面部30やその座面部30近くの箇所(具体的には、表面からの距離が0.5mm以内である領域)を、その熱処理が行われる前のものやレーザ焼入れが行われない浸炭処理と徐冷処理とが行われただけのものに比して、高硬度とすることができる。この硬度が高められた座面部30は、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有する。また、フランジ部14の、その外歯部16以外の部位は、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有する。
従って、デフリングギヤ10のフランジ部14の表面にある座面部30にマルテンサイト組織を含む硬化層56を形成することができると共に、そのフランジ部14の、座面部30以外の部位にマルテンサイト組織を含む硬化層ではない非硬化層(すなわち、マルテンサイト組織を含まない硬化層)58を形成することができる。このため、デフリングギヤ10の内部の靱性を確保しつつ、その座面部30の硬度を高めることができる。
また、レーザ焼入れによれば、座面部30以外の焼入れ不要な箇所への焼入れが行われるのを回避できるので、その焼入れ不要箇所での焼入れに伴う熱処理歪みの発生を低減することができ、デフリングギヤ10の寸法精度を高めることができる。
特に、レーザ焼入れは、上記の高周波焼入れに比べて、狭い範囲に限定して加熱することが可能である。すなわち、高周波焼入れ処理では、一度に焼入れされる領域がある程度広範囲に亘る一方、レーザ焼入れ処理では、一度に焼入れされる領域がピンポイントの狭い範囲に限定可能である。また、レーザ焼入れは、上記の高周波焼入れに比べて、短時間で局所的に行うことが可能であるので、変形が少なく、焼きムラの少ない最適な硬さを得ることが可能である。
このため、座面部30に対するレーザ焼入れによれば、座面部30に対して高周波焼入れが行われる構成に比べて、焼きムラが生じ難く、座面部30周囲の焼入れ不要な箇所(特に、高周波焼入れが行われる外歯部16)に対して焼入れが行われるのを回避することができる。従って、本実施例によれば、焼入れ不要箇所での焼入れに伴う熱処理歪みの発生を更に低減することができ、特に外歯部16での引張応力の発生に起因した亀裂の発生を低減することができ、デフリングギヤ10の寸法精度を更に高めることができる。
また、レーザ焼入れにより形成される硬化層は、高周波焼入れにより形成される硬化層に比べて浅い。このため、座面部30に対するレーザ焼入れによれば、その座面部30が高周波焼入れされる構成に比べて、座面部30の焼入れに起因する熱処理歪みが小さくフランジ部14や外歯部16の変形や割れを低減することができ、これにより、熱処理完了後の仕上げ加工等の手間を省くこと或いはその時間を短縮することができる。
また、レーザ焼入れによれば、座面部30の加熱を容易に行うことが可能であるので、加熱時間の短縮化を図ることができる。また、レーザ照射は、ミラーによる屈折などを利用して実施することができるので、レーザ焼入れは、フランジ面18に複数のボルト穴22に対応して座面部30が複数設けられたデフリングギヤ10の焼入れに適した方式である。また、上記の如く、座面部30の硬度(疲労強度)を高めることができるので、母材である素材鋼の炭素濃度を低く抑えることとしてもその硬度向上を図ることが可能である。このため、素材鋼の高炭素濃度に起因して加工性が損われるのを防止することができる。
また、デフリングギヤ10の座面部30は、フランジ部14において軸中心回りの周方向に等角度間隔で設けられている。このため、各座面部30に対して一つずつレーザ照射を行うことができるので、すべての座面部30に対してレーザ焼入れを行ううえで、レーザ焼入れ(レーザ加熱)が開始される始点と終了される終点とが重複するのを回避することができ、これにより、焼き鈍しを防止することができる。
このように、本実施例によれば、デフリングギヤ10の外歯部16に対して高周波焼入れを行い、かつ、デフリングギヤ10の座面部30に対してレーザ焼入れを行うことで、デフリングギヤ10の内部の靱性を確保しつつ、その外歯部16及び座面部30双方の硬度を高めることができる。
デフリングギヤ10の外歯部16に対して焼入れすべき領域は、座面部30に対して焼入れすべき領域に比べて極めて広い範囲に亘る。レーザ焼入れでは、高周波焼入れに比べて、単位時間当たりに焼入れできる領域範囲が狭い。このため、外歯部16に対して上記のレーザ焼入れが行われる構成では、その外歯部16の全域に対する焼入れが長時間に亘り或いはその焼入れに多くの時間がかかる。これに対して、本実施例においては、デフリングギヤ10の外歯部16に対して高周波焼入れが行われるので、その外歯部16に対してレーザ焼入れが行われる構成に比べて、外歯部16の全域を長時間に亘ることなく短時間のうちに焼入れすることができる。
従って、本実施例によれば、デフリングギヤ10の外歯部16及び座面部30の双方の焼入れを長時間に亘ることなくかつ必要な箇所にのみ行うことで、形状精度の高い最適なデフリングギヤ10を短時間で製造することができる。また、デフリングギヤ10の製造後は、フランジ部14のフランジ面18の座面部30への焼入れによって、ボルト24のボルト座面32とその座面部30との硬度差を小さく抑えることができるので、使用環境における振動等に起因するボルト24の摩耗や座面部30の摩耗の双方を低減することができ、両者の締結力が高い状態を維持することができる。すなわち、デフリングギヤ10の外歯部16及び座面部30それぞれに適した焼入れを行うことで、形状精度の高いデフリングギヤ10を実現することができる。
また、本実施例においては、デフリングギヤ10の外歯部16に対して高周波焼入れが行われた後に、デフリングギヤ10の座面部30に対してレーザ焼入れが行われる。レーザ焼入れは、高周波焼入れに比べて、表面近傍(例えば、表面から0.5mm程度まで)の領域に限られる。このため、上記の焼入れ順序によれば、レーザ焼入れより比較的広範囲(物質的な容量が多い範囲)に焼入れが及ぶ高周波焼入れにより先に硬化層の体積が大きい外歯部16に硬化層を形成し、その後にレーザ焼入れを行うことになるため、レーザ焼入れに起因する熱処理歪みが少ないことに加えて、外歯部16に対してレーザ焼入れに起因する熱処理歪みの影響が及ぶことを大きく低減し、ほぼ影響無しとすることができる。従って、本実施例によれば、外歯部16で熱処理歪みが生ずるのを低減することができ、外歯部16での引張応力の発生及びその引張応力の発生に起因した亀裂の発生を低減することができると共に、デフリングギヤ10の寸法精度を更に高めることができる。
図5は、本実施例のデフリングギヤ10のOBD(オーバボール径)寸法を製造工程ごとに測定した結果を表した図を示す。尚、図5(A)にはOBD寸法を測定するデフリングギヤ10の箇所を、また、図5(B)には製造工程ごとの各箇所のOBD寸法を、それぞれ示す。
本実施例のデフリングギヤ10の外歯部16でのOBD寸法(外歯OBD寸法)は、製造工程ごとに図5(B)に示す如きものとなる。尚、このOBD寸法の測定箇所は、デフリングギヤ10の外歯部16での、フランジ部14において座面部30が設けられる側の軸方向一端部Rrと、フランジ部14において座面部30が設けられない側の軸方向他端部Frと、それらの中間部Midと、の3箇所である。
デフリングギヤ10の真空浸炭・徐冷処理後は、熱処理前と比べて、上記の3箇所とも外歯OBD寸法はあまり変化しない。この場合には、中間部Midと軸方向一端部Rrとの径方向における幅(テーパ幅)及び中間部Midと軸方向他端部Frとの径方向におけるテーパ幅が共にあまり変化しない。また、真空浸炭・徐冷処理後における外歯部16の焼入れ後(すなわち、高周波焼入れ後=第1焼入れ後)では、上記の3箇所とも外歯OBD寸法が変化するが、各変化量がほぼ同量となる。この場合も、中間部Midと軸方向一端部Rrとの径方向におけるテーパ幅及び中間部Midと軸方向他端部Frとの径方向におけるテーパ幅が共にあまり変化しない。
また、第1焼入れ後における座面部30の焼入れ後(すなわち、レーザ焼入れ後=第2焼入れ後)では、上記の3箇所とも外歯OBD寸法はあまり変化しない。この場合も、中間部Midと軸方向一端部Rrとの径方向におけるテーパ幅及び中間部Midと軸方向他端部Frとの径方向におけるテーパ幅が共にあまり変化しない。一方、仮に座面部30の焼入れが高周波焼入れであると、その焼入れ後、その座面部30が設けられた側の軸方向一端部Rrの外歯OBD寸法が、他の部位のものに比べて、大きく変化する。この場合には、中間部Midと軸方向他端部Frとの径方向におけるテーパ幅が変化すると共に、中間部Midと軸方向一端部Rrとの径方向におけるテーパ幅が大きく変化する。この点、本実施例の如く座面部30の焼入れをレーザ焼入れとすれば、高周波焼入れと比較して、デフリングギヤ10の寸法精度を高めることができることがわかった。
ところで、上記の実施例においては、第2焼入れ工程においてデフリングギヤ10の座面部30に対してレーザ焼入れを行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、そのレーザ焼入れ後に、更に座面部30に対して焼戻しを行う焼戻し工程を含めることとしてもよい。かかる変形例においては、レーザ焼入れにより座面部30に形成されたマルテンサイト組織を含む硬化層を、焼戻し(例えば、400℃以上のレーザ加熱)によりソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む層へ変態させることができる。従って、デフリングギヤ10の靱性を高めることができるので、デフリングギヤ10の靱性と硬度とのバランスを調整することができる。
尚、上記の焼戻し工程による変態が行われた後は、デフリングギヤ10において、座面部30が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む硬化層であり、かつ、フランジ部14の、座面部30以外の部位が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、及びトルースタイト組織を含まない非硬化層であるフランジ部14が構成される。
また、上記の実施例においては、デフリングギヤ10の外歯部16に対して高周波焼入れを行った後に、その座面部30に対してレーザ焼入れを行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、デフリングギヤ10の座面部30に対してレーザ焼入れを行った後に、その外歯部16に対して高周波焼入れを行うこととしてもよい。尚、かかる変形例においては、外歯部16の高周波焼入れ時にその高周波焼入れが座面部30に及ばないように措置を講ずること(例えば、高周波加熱時の投入エネルギや加熱時間或いは急冷時の冷却速度や冷却温度などを調整すること)が必要である。
また、上記の実施例においては、デフリングギヤ10が、径方向外側に向けて延びる外歯部16が設けられた環状部12と、環状部12の内面から径方向内側に向けて延びるフランジ部14と、を有するものとし、そのフランジ部14にボルト24のボルト座面32が接触する座面部30を設けるものとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、デフリングギヤが、径方向内側に向けて延びる内歯部が設けられた環状部と、その環状部の外面から径方向外側に向けて延びるフランジ部と、を有するものとし、そのフランジ部にボルトのボルト座面が接触する座面部を設けるものとしてもよい。
上記の実施例において、第2焼入れ工程では、レーザ焼入れをボルト穴付近の座面部30及びその近傍の限定した範囲にレーザ照射を行うこととしたが、フランジ部14の座面部30が存在する側に対して照射位置が連続的に円周を描くようにレーザ照射を行うようにしてもよい。
尚、この場合には、レーザ照射の開始点(開始照射範囲)と終了点(終了照射範囲)とがラップしないようにするようにしてもよい。また、その開始点とその終了点とがラップするのであれば、2つのボルト穴22の間でラップするようにし、二度目の照射に起因する意図しない焼き戻しが発生することを防止するようにしてもよい。
尚、以上の実施例に関し、更に以下を開示する。
[1]径方向一方に向けて延びる歯部16が設けられた円筒状の環状部12と、前記環状部12の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部14と、を有し、前記フランジ部14に空けられたボルト穴22の周囲に、ボルト24の座面32が接触する座面部30が設けられたリングギヤ10の製造方法であって、前記リングギヤ10を、大気の酸素濃度よりも低い酸素濃度の浸炭雰囲気中でオーステナイト化温度以上の温度に加熱することにより、表面に浸炭層52を形成する浸炭工程と、前記浸炭工程において表面に浸炭層52が形成された前記リングギヤ10を、マルテンサイト変態する冷却速度よりも遅い冷却速度により、冷却による組織変態が完了する温度以下の温度まで冷却する徐冷工程と、前記徐冷工程における冷却後、前記歯部16を高周波加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に該歯部16をマルテンサイト変態する冷却速度以上の冷却速度で冷却することにより、該歯部16にマルテンサイト組織を含む硬化層54を形成する第1焼入れ工程と、前記徐冷工程における冷却後、前記座面部30をレーザ照射により加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に前記レーザ照射の停止によって該座面部30を自己冷却させることにより、該座面部30にマルテンサイト組織を含む硬化層56を形成する第2焼入れ工程と、を備えるリングギヤ10の製造方法。
上記[1]記載の構成によれば、リングギヤ10の歯部16を高周波加熱により焼入れすることができると共に、リングギヤ10の座面部30をレーザ加熱により焼入れすることができる。このため、リングギヤ10の歯部16及び座面部30それぞれに適した焼入れを実現することができる。
[2]前記第2焼入れ工程は、前記第1焼入れ工程の後に実施される請求項1記載のリングギヤ10の製造方法。
上記[2]記載の構成によれば、高周波焼入れが行われた歯部16にレーザ焼入れが及ぶこと、すなわち、高周波焼入れが行われた歯部16に対して更にレーザ焼入れが行われることを確実に回避することができるので、歯部16での亀裂の発生や熱処理歪みの発生を低減することができると共に、リングギヤ10の寸法精度を高めることができる。
[3]前記座面部30のマルテンサイト組織を含む硬化層56をソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む層へ変態させる焼戻し工程を備える請求項1又は2記載のリングギヤ10の製造方法。
上記[3]記載の構成によれば、リングギヤ10の靱性を高めることができるので、リングギヤ10の靱性と硬度とのバランスを調整することができる。
[4]径方向一方に向けて延びる歯部16が設けられた円筒状の環状部12と、前記環状部12の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部14と、を有し、前記フランジ部14に空けられたボルト穴22の周囲に、ボルト24の座面32が接触する座面部30が設けられたリングギヤ10であって、前記歯部16の表面が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層54であり、前記歯部の芯部が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層54であり、前記環状部12の、前記歯部16以外の部位が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含まない非硬化層55であり、前記座面部30が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む硬化層56であり、前記フランジ部14の、前記座面部30以外の部位が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、及びトルースタイト組織を含まない非硬化層58であるリングギヤ10。
上記[4]記載の構成によれば、熱処理歪みが少なく形状精度の高い最適なリングギヤ10を実現することができる。
10 リングギヤ(デフリングギヤ)
12 環状部
14 フランジ部
16 外歯部
18 フランジ面
22 ボルト穴
24 ボルト
30 座面部
32 ボルト座面
40 装置
42 浸炭室
44 徐冷室
46 第1焼入れ室
48 第2焼入れ室
50 レーザ装置
52 浸炭層
54,56 硬化層
55,58 非硬化層

Claims (4)

  1. 径方向一方に向けて延びる歯部が設けられた円筒状の環状部と、前記環状部の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部に空けられたボルト穴の周囲に、ボルトの座面が接触する座面部が設けられたリングギヤの製造方法であって、
    前記リングギヤを、大気の酸素濃度よりも低い酸素濃度の浸炭雰囲気中でオーステナイト化温度以上の温度に加熱することにより、表面に浸炭層を形成する浸炭工程と、
    前記浸炭工程において表面に浸炭層が形成された前記リングギヤを、マルテンサイト変態する冷却速度よりも遅い冷却速度により、冷却による組織変態が完了する温度以下の温度まで冷却する徐冷工程と、
    前記徐冷工程における冷却後、前記歯部を高周波加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に該歯部をマルテンサイト変態する冷却速度以上の冷却速度で冷却することにより、該歯部にマルテンサイト組織を含む硬化層を形成する第1焼入れ工程と、
    前記徐冷工程における冷却後、前記座面部をレーザ照射により加熱することによってオーステナイト化温度以上の温度まで昇温させ、その後に前記レーザ照射の停止によって該座面部を自己冷却させることにより、該座面部にマルテンサイト組織を含む硬化層を形成する第2焼入れ工程と、
    を備えるリングギヤの製造方法。
  2. 前記第2焼入れ工程は、前記第1焼入れ工程の後に実施される請求項1記載のリングギヤの製造方法。
  3. 前記座面部のマルテンサイト組織を含む硬化層をソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む層へ変態させる焼戻し工程を備える請求項1又は2記載のリングギヤの製造方法。
  4. 径方向一方に向けて延びる歯部が設けられた円筒状の環状部と、前記環状部の径方向他方の周面から径方向他方に向けて延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部に空けられたボルト穴の周囲に、ボルトの座面が接触する座面部が設けられたリングギヤであって、
    前記歯部の表面が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層であり、
    前記歯部の芯部が、素材鋼の炭素濃度と同等の炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織を含む硬化層であり、
    前記環状部の、前記歯部以外の部位が、マルテンサイト組織を含まない非硬化層であり、
    前記座面部が、浸炭処理により素材鋼の炭素濃度よりも高い炭素濃度を有すると共に、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、又はトルースタイト組織を含む
    硬化層であり、
    前記フランジ部の、前記座面部以外の部位が、マルテンサイト組織、ソルバイト組織、ベイナイト組織、及びトルースタイト組織を含まない非硬化層であるリングギヤ。
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