JP2005263685A - 木材保存剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 有効成分の木材中への浸透性と、防腐防カビ効果および防蟻防虫効果に優れ、しかも臭気が低減された木材保存剤を提供すること。
【解決手段】 一方のフェニルがフェニル基で、他方のフェニルが炭素数3または4のアルキル基が1つ置換されているアルキル置換フェニル基で、アルカンの炭素数が1または2であるジフェニルアルカンに、有機ヨード系、トリアゾール系などの木材防腐防カビ剤、および/または、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などの木材防蟻防虫剤と、必要に応じて界面活性剤と、を配合する。この木材保存剤は、ジフェニルアルカンに、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤を溶解してなる油剤、さらに界面活性剤と、水とを含む乳剤、または、ジフェニルアルカンと木材防蟻防虫剤とをマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル化剤、などに製剤化することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、木材の防腐、防カビ、防蟻および/または防虫のために使用する木材保存剤に関する。
従来より、一般工業用材料や土木工業用材料などに使用される木材は、木材保存剤で処理することによって、腐朽や食害などから保護されている。
このような処理に用いられる木材保存剤において、有効成分を溶解する溶剤として、木材に対する浸透性が良好な、揮発しにくく高沸点のもの、具体的には、蒸留範囲が290〜305℃のフェニルキシリルエタン(例えば、商品名「ハイゾール SAS−296」、新日本石油化学(株)製)などの高沸点芳香族系有機溶剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−7502号公報
しかし、フェニルキシリルエタンは、上記特許文献1で挙げられている高沸点芳香族系有機溶剤の中でも、木材に対する浸透性がとりわけ良好なものであるが、その一方で、処理時および処理後において、臭気を生じるという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、有効成分の木材中への浸透性と、防腐防カビ効果および防蟻防虫効果に優れ、しかも臭気が低減された木材保存剤を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、木材の防腐防カビ効果および防蟻防虫効果に優れる有効成分と、それら有効成分との相溶性に優れ、かつ低臭性で、木材への浸透性が良好な有機溶媒と、の組み合わせについて、鋭意検討したところ、特定構造のジフェニルアルカンを溶媒として用いれば、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 一方のフェニルがフェニル基で、他方のフェニルが炭素数3または4のアルキル基が1つ置換されているアルキル置換フェニル基で、アルカンの炭素数が1または2であるジフェニルアルカンと、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤と、を含むことを特徴とする、木材保存剤、
(2) 木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤を、前記ジフェニルアルカンに溶解してなることを特徴とする、前記(1)に記載の木材保存剤、
(3) さらに、界面活性剤を含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の木材保存剤、
(4) 前記ジフェニルアルカンと、木材防蟻防虫剤とを、マイクロカプセル化してなることを特徴とする、前記(1)に記載の木材保存剤、
(5) 木材防腐防カビ剤が、有機ヨード系防腐防カビ剤および/またはトリアゾール系防腐防カビ剤であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の木材保存剤、
(6) 木材防蟻防虫剤が、ピレスロイド系防蟻防虫剤および/またはネオニコチノイド系防蟻防虫剤であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の木材保存剤、
(7) 木材防蟻防虫剤が、クロチアニジンであることを特徴とする、前記(6)に記載の木材保存剤
を提供するものである。
本発明の木材保存剤によれば、有効成分である木材防腐防カビ剤や木材防蟻防虫剤の木材への浸透を十分に確保でき、長期にわたって優れた防腐防カビ効果および/または防蟻防虫効果を発現させることができる。しかも、この木材保存剤によれば、処理時および処理後において、十分な低臭性を確保することができる。
本発明の木材保存剤は、ジフェニルアルカンと、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤と、を含んでいる。
本発明において、ジフェニルアルカンは、一方のフェニルがフェニル基で、他方のフェニルが炭素数3または4のアルキル基が1つ置換されているアルキル置換フェニル基で、アルカンの炭素数が1または2である。
他方のフェニル基に置換する炭素数3または4のアルキル基としては、例えば、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。好ましくは、n−ブチルが挙げられる。
また、アルカンとしては、炭素数が1のメタン、炭素数が2のエタン(1,1−置換エタン、1,2−置換エタン)が挙げられる。好ましくは、エタンが挙げられる。
このようなジフェニルアルカンは、例えば、下記一般式(1)〜(3)で示される。なお、Rの置換位置については、特に限定されず、種々の置換位置から選択することができる。
Figure 2005263685
(式(1)〜(3)中、Rは、炭素数3または4のアルキル基を示す。)
本発明においては、ジフェニルアルカンの中でも、1,1−ブチルフェニル−フェニルエタン、1,2−ブチルフェニル−フェニルエタン、特に、1,1−(s−ブチルフェニル)フェニルエタン、1,2−(s−ブチルフェニル)フェニルエタンが好ましい。
上記例示のジフェニルアルカンの市販品としては、例えば、新日本石油化学(株)製の商品名「日石ハイゾール SAS−310」(1,1−(s−ブチルフェニル)フェニルエタンと、1,2−(s−ブチルフェニル)フェニルエタンと、s−ブチルフェニル−フェニルエタンとの混合物,融点320℃)、同社の商品名「日石ハイゾール SAS−305」,同「SAS−305’」(1,1−クミルフェニルエタン,融点310℃)などが挙げられる。
本発明において、木材防腐防カビ剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機ヨード系防腐防カビ剤、トリアゾール系防腐防カビ剤、スルファミド系防腐防カビ剤、ビス四級アンモニウム塩系防腐防カビ剤、四級アンモニウム塩系防腐防カビ剤、フタロニトリル系防腐防カビ剤などの、従来公知の有効成分が挙げられる。
有機ヨード系防腐防カビ剤としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、(株)三共製)などが挙げられる。
トリアゾール系防腐防カビ剤としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1、3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)、(1−〔{2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル}メチル〕−イル−2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)などが挙げられる。
スルファミド系防腐防カビ剤としては、例えば、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(商品名:プリベントールA4/S、バイエル製)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−4−トリルスルファミド(商品名:プリベントールA5、バイエル製)などが挙げられる。
ビス四級アンモニウム塩系防腐防カビ剤としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー38、イヌイ社製)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー38A、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー136、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー136A、イヌイ社製)などが挙げられる。
四級アンモニウム塩系防腐防カビ剤としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、コータミンD10EPR(花王製)などが挙げられる。
フタロニトリル系防腐防カビ剤としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:ノプコサイドN−96、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。
これらの木材防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記例示の木材防腐防カビ剤の中では、特に、有機ヨード系防腐防カビ剤、トリアゾール系防腐防カビ剤を用いることが好ましい。
本発明において、木材防蟻防虫剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ピレスロイド系防蟻防虫剤、ネオニコチノイド系防蟻防虫剤、有機塩素系防蟻防虫剤、有機リン系防蟻防虫剤、カーバメート系防蟻防虫剤、植物またはその処理物からなる防蟻防虫剤などの、従来公知の有効成分が挙げられる。
ピレスロイド系防蟻防虫剤としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、サイフルスリン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンバレレート、Hoe−498などが挙げられる。
ネオニコチノイド系防蟻防虫剤は、塩素原子置換含窒素複素環と、ニトロ置換イミノ基(C=N−NO)含有化合物とが、2価の炭化水素基を介して結合している化合物からなる防蟻防虫剤である。このネオニコチノイド系防蟻防虫剤としては、例えば、(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N’−シアノ−N−メチルアセタミジン(一般名:アセタミプリド)、(ES)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)などが挙げられる。上記例示のネオニコチノイド系化合物のなかでは、(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジンを用いることが好ましい。
有機塩素系防蟻防虫剤としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。有機リン系の防蟻防虫剤としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。カーバメート系の防蟻防虫剤としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
植物またはその処理物からなる防蟻防虫剤としては、例えば、ヒバ、サウスレア属、マグノリア属、アトラクティロデス属、レデボウリエア属、パエオニア属、プソラレア属、ミリスチカ属、クルクマ属、フムルス属、ソホラ属などの植物またはその処理物が挙げられる。
ヒバの処理物としては、例えば、ヒバの抽出物や滲出物などが挙げられる。より具体的には、例えば、ヒバチップ(ヒバおがくず)を水蒸気蒸留することにより、油相と水相に分離すれば、その油相をヒバ油として用いることができる。ヒバ油には、主成分としてのツヨプセンやセドロールなどのセスキテルペンやセスキテルペンアルコールなどの中性成分と、ヒノキチオール、β−ドラブリン、シトロネル酸、カルバクロールなどのトロポロン類、カルボン酸やフェノールなどの酸性成分とが含まれている。中性成分と酸性成分との含有比率は、通常、中性成分が90%、酸性成分が10%である。そして、ヒバ油にアルカリ水溶液を加えて抽出すれば、その抽出成分として酸性成分からなるヒバ酸性油を得ることができ、また、その残余成分として中性成分からなるヒバ中性油を得ることができる。
また、ヒバチップから水蒸気蒸留でヒバ油を抽出するときに、留出する水に含まれているヒバの酸性成分を吸着樹脂で吸着・脱着することにより、ヒバ樹脂油を得ることができる。また、これら、ヒバ油、ヒバ中性油、ヒバ酸性油、ヒバ樹脂油は、市販されているものを用いることもできる。
サウスレア(Saussurea)属としては、例えば、モッコウが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3370610号公報に記載されるサウスレア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、モッコウを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、モッコウ抽出エキスが用いられる。
マグノリア(Magnolia)属としては、例えば、コウボクが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるマグノリア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、コウボクを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、コウボク抽出エキスが用いられる。
アトラクティロデス(Atractylodes)属としては、例えば、ソウジュツが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるアトラクティロデス属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ソウジュツを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ソウジュツ抽出エキスが用いられる。
レデボウリエア(Ledebouriella)属としては、例えば、ボウフウが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるレデボウリエア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ボウフウを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ボウフウ抽出エキスが用いられる。
パエオニア(Paeonia)属としては、例えば、ボタンピが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したパエオニア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ボタンピを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ボタンピ抽出エキスが用いられる。
プソラレア(Psoralea)属としては、例えば、ハコシが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したプソラレア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ハコシを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ハコシ抽出エキスが用いられる。
ミリスチカ(Myristica)属としては、例えば、ニクズクが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したミリスチカ属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ニクズクを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ニクズク抽出エキスが用いられる。
クルクマ(Curcuma)属としては、例えば、ウコンが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3370610号公報に記載されるクルクマ属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ウコンを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ウコン抽出エキスが用いられる。
フムルス(Humulus)属としては、例えば、ホップが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるフムルス属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ホップを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ホップ抽出エキスが用いられる。
ソホラ(Sophora)属としては、例えば、クジンが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第2989729号公報に記載されるソホラ属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、クジンを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、クジン抽出エキスが用いられる。
これらの木材防蟻防虫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記例示の木材防蟻防虫剤の中では、特に、ピレスロイド系防蟻防虫剤、ネオニコチノイド系防蟻防虫剤を用いることが好ましい。
本発明の木材保存剤における各成分の比率は、ジフェニルアルカン10〜80重量部、好ましくは、20〜70重量部、木材防腐防カビ剤0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部、木材防蟻防虫剤0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部が用いられる。
本発明の木材保存剤は、特に限定されることなく、種々の形態に製剤化し得るが、例えば、ジフェニルアルカンに、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤を溶解してなる油剤、例えば、ジフェニルアルカンと、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤と、界面活性剤と、水とを含む乳剤、例えば、ジフェニルアルカンと、木材防蟻防虫剤とを、マイクロカプセル化してなるマイクロカプセル化剤などに製剤化することができる。
油剤は、例えば、製剤(油剤)100重量部に対して、ジフェニルアルカン、木材防腐防カビ剤、木材防蟻防虫剤を、上記の割合で配合し、攪拌、混合することによって調製することができる。
また、油剤には、その効力に制限が生じない範囲において、ジフェニルアルカンと併用して他の公知の溶媒を配合してもよい。そのような溶媒としては、後述するマイクロカプセル化剤の調製において使用する有機溶媒と同種のものが用いられる。このような有機溶媒とジフェニルアルカンとの配合割合は、例えば、ジフェニルアルカン100重量部に対して、有機溶媒が25〜900重量部、好ましくは、40〜500重量部である。
調製された油剤は、常法に従い、木材に塗布、浸透させることによって使用することができる。この油剤の使用量は、一般に、約50〜300g/mの範囲に設定される。
油剤として調製された木材保存剤は、木材への浸透性が高く、長期にわたって、防腐防カビ効果および/または防蟻防虫効果を発現させることができる。しかも、溶剤であるジフェニルアルカンの揮散が少なく、臭気が低減されることから、処理時および処理後において、十分な低臭性を確保することができる。
なお、油剤には、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、防錆剤、pH調整剤、軟化剤、その他の樹脂などの公知の添加剤を適宜添加してもよい。
乳剤は、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤、ジフェニルアルカン、界面活性剤および水を配合することにより、調製することができる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの、従来公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(例えば、商品名:ニューカルゲンBX−C、竹本油脂(株)製)などのアルキルナフタレンスルホン酸塩、2−スルホコハク酸ジアルキルナトリウム(例えば、商品名:ネオコールSW−C、第一工業製薬(株)製)などの2−スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤(例えば、商品名:トキサノンGR−30、三洋化成(株)製)、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩(例えば、商品名:ディクスゾール60A、第一工業製薬(株)製)、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、主として四級アンモニウム塩、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキル(C8〜C18)トリメチルアンモニウムハライド類など、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキル(C8〜C18)ジメチルアンモニウムハライド類などが挙げられる。また、油脂に由来する混合アルキル基を有する混合物、例えば、アルキル(C8〜C18)トリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキル(C8〜C18)ジメチルアンモニウムクロライド、アルキル(C8〜C18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライドなども挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、商品名:ナロアクティーN100、三洋化成(株))、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えば、商品名:ノイゲン・イーエー142(EA−142)、第一工業製薬(株)製)、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル(例えば、商品名:ニューカルゲンCP80(HLB12)、ニューカルゲンCP120(HLB13)、竹本油脂(株)製)、脂肪族多価アルコールエステル、脂肪族多価アルコールポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体(例えば、商品名:ニューポールPE−64、三洋化成(株)製)などが挙げられる。
上記例示の界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記例示の界面活性剤の中では、特に、ノニオン界面活性剤を用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。
乳剤は、例えば、製剤(乳剤)100重量部に対して、ジフェニルアルカンを10〜80重量部、好ましくは、20〜70重量部、木材防腐防カビ剤を0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部、木材防蟻防虫剤を0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部、界面活性剤を用いる場合には、2.5〜30重量部、好ましくは、3〜20重量部、さらに水を加えて100重量部になるように配合し、攪拌、混合することによって調製することができる。なお、上記各成分のうち、水は、あらかじめ配合しておいてもよいが、木材へ処理する直前に配合してもよく、さらには、予め一部を配合しておき、木材へ処理する直前に残部を配合してもよい。
また、乳剤には、その効力に制限が生じない範囲において、ジフェニルアルカンと併用して他の公知の溶媒を配合してもよい。そのような溶媒としては、後述するマイクロカプセル化剤の調製において使用する有機溶媒と同種のものが用いられる。このような有機溶媒とジフェニルアルカンとの配合割合は、例えば、ジフェニルアルカン100重量部に対して、有機溶媒が25〜900重量部、好ましくは、40〜500重量部である。
調製された乳剤は、常法に従い、木材に塗布、浸透させることによって使用することができる。この乳剤の使用量は、一般に、約50〜300g/mの範囲に設定される。
乳剤として調製された木材保存剤は、木材への浸透性が高く、長期にわたって、防腐防カビ効果および/または防蟻防虫効果を発現させることができる。しかも、溶剤であるジフェニルアルカンの揮散が少なく、臭気が低減されることから、処理時および処理後において、十分な低臭性を確保することができる。
なお、乳剤には、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、防錆剤、pH調整剤、軟化剤、その他の樹脂などの公知の添加剤を適宜配合してもよい。
マイクロカプセル化剤は、木材防蟻防虫剤と、ジフェニルアルカンとを、マイクロカプセルに内包することにより、調製することができる。
本発明において、マイクロカプセルの形成方法は、特に限定されるものではなく、化学的方法、物理化学的方法、物理的および機械的方法など、公知の方法を採用することができる。
化学的方法としては、例えば、界面重合法、in situ 重合法、液中硬化被膜法などが挙げられる。
界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させてポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させてポリウレアからなる膜を形成する方法などが用いられる。
in situ 重合法では、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法などが用いられる。
液中硬化法では、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アルギン酸ソーダなどを液中で硬化させる方法が用いられる。
物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法、複合コアセルベーション法、pHコントロール法、非溶媒添加法などの水溶液からの相分離法や、有機溶媒からの相分離法などのコアセルベーション法などが用いられる。この物理化学的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴムなどが挙げられる。また、ポリスチレンなどを用いる界面沈降法などを採用することもできる。
物理的および機械的方法としては、例えば、スプレードライング法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被膜法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法などが用いられる。この物理的および機械的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明において、上記したいずれの方法によってマイクロカプセルを調製するかは、有効成分の種類、使用目的、用途などによって、適宜選択することができる。例えば、上記した有効成分を、マイクロカプセルに高濃度で内包させるには、界面重合法を用いることが好ましい。
次に、界面重合法によるマイクロカプセル化剤の調製方法について、より詳細に説明する。
界面重合法によるマイクロカプセル化剤の調製では、まず、有効成分である木材防蟻防虫剤と、ジフェニルアルカンを含む溶媒と、油溶性膜形成成分と、を含む油相成分を調製する。
油溶性膜形成成分としては、例えば、ポリイソシアネート、ポリカルボン酸クロライド、ポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらポリイソシアネートの誘導体、例えば、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオンなどや、これらポリイソシアネートの変性体、例えば、トリメチロールプロパンなどの低分子量のポリオールやポリエーテルポリオールなどの高分子量のポリオールを予め反応させることにより得られるポリオール変性ポリイソシアネートなども挙げられる。
ポリカルボン酸クロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、トリメシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
ポリスルホン酸クロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
これら油溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族および脂環族のポリイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのトリマーやポリオール変性ポリイソシアネートが挙げられる。
溶媒は、ジフェニルアルカンのみを用いてもよく、また、このジフェニルアルカンとともに、木材防蟻防虫剤を溶解または分散し得る有機溶媒を併用してもよい。
かかる有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類、例えば、アルキルシクロパラフィン類などの石油系溶媒、なたね油などの油類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
ジフェニルアルカンと有機溶媒との配合割合は、例えば、ジフェニルアルカン100重量部に対して、有機溶媒を0.01〜70重量部、好ましくは0.1〜50重量部である。
油相成分における各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、木材防蟻防虫剤と、ジフェニルアルカンを含む溶媒との配合割合は、両者の総量100重量部に対して、木材防蟻防虫剤が5〜60重量部、好ましくは、10〜50重量部であり、溶媒が40〜95重量部、好ましくは、50〜90重量部である。
また、油溶性膜形成成分の配合割合は、油相成分100重量部に対して、0.1〜99.9重量部の範囲において配合可能であるが、1〜90重量部、さらには、10〜50重量部の範囲において配合することが好ましい。
油相成分は、有効成分および油溶性膜形成成分を溶媒に配合して、攪拌混合することにより調製することができる。
また、油相成分には、有効成分の分散性を向上させるべく、分散剤を配合してもよい。分散剤は特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、エステルゴム、フローレンDOPA・15B(変性アクリル共重合物、共栄社製)、フローレン700(分岐カルボン酸の部分エステル、共栄社製)などの、公知の分散剤が挙げられる。また、本発明においては、分散剤として、例えば、3級アミンを含む分子量1000以上のものが好ましく用いられる。
3級アミンを含む分子量1000以上の分散剤としては、3級アミンを含有するカチオン系の高分子重合体、例えば、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体などが挙げられる。より具体的には、市販の分散剤、例えば、Disperbyk−161(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量100000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−163(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量50000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)、EFKA46(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量8000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA47(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量13000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA48(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量18000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4050(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4055(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4009(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4010(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)などが挙げられる。
このような分散剤は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。また、上記した市販の分散剤は、通常、上記した溶媒などに、その濃度が50重量%以上となるような割合で希釈されている。
分散剤は、木材防蟻防虫剤と、ジフェニルアルカンを含む溶媒と、油溶性の膜形成成分と、分散剤との、総量100重量部に対して、0.01〜99.99重量部の範囲において配合可能であるが、特に、20重量部以下、さらには10重量部以下で配合することが好ましい。
油相成分の調製においては、木材防蟻防虫剤と、ジフェニルアルカンを含む溶媒と、分散剤とを含むスラリーを調製し、このスラリーを湿式粉砕した後、さらに、このスラリーに油溶性膜形成成分を配合してもよい。
湿式粉砕は、例えば、ビーズミル、ボールミル、またはロッドミルなどの公知の粉砕機を用いて、所定時間実施すればよい。湿式粉砕することにより、木材防蟻防虫剤を微細な粒子として分散させることができ、カプセル化率の向上、製剤安定性の向上、および効力増強を図ることができる。
また、このような湿式粉砕においては、木材防蟻防虫剤の平均粒子径を、例えば、5μm以下、さらには2.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径がこれより大きいと、マイクロカプセルに良好に内包できない場合がある。
そして、湿式粉砕されたスラリーに、油溶性膜形成成分を配合するには、油溶性膜形成成分をスラリーに加えて攪拌混合すればよい。
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、次いで、このようにして調製された油相成分を、水相成分に配合して、攪拌により界面重合させる。
水相成分は、例えば、水に、必要により、分散安定剤を配合することによって調製することができる。分散安定剤としては、例えば、アラビヤガムなどの天然多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの半合成多糖類、ポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これら分散安定剤は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
なお、分散安定剤の配合割合は、例えば、水相成分100重量部に対して、例えば、20重量部以下、好ましくは、5重量部以下である。
油相成分を水相成分に配合するには、油相成分を水相成分中に加えて、常温下、微小滴になるまでミキサーなどによって攪拌すればよい。
そして、攪拌により界面重合させるには、例えば、油相成分の分散後に、水溶性膜形成成分を水溶液として滴下すればよい。
水溶性膜形成成分としては、油溶性膜形成成分と反応して界面重合するものであれば、特に制限されず、例えば、ポリアミンやポリオールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジンなどが挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
これら水溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリアミンが用いられる。
また、水溶性膜形成成分を水溶液とするには、約50重量%以下の濃度とすることが好ましく、このような水溶液を、例えば、水溶性膜形成成分が、油溶性膜形成成分に対してほぼ等しい当量(例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとが用いられる場合では、イソシアネート基/アミノ基の当量比がほぼ1となる割合)となるまで滴下する。
このような水溶性膜形成成分の滴下により、水溶性膜形成成分と油溶性膜形成成分とが、油相成分(溶媒)と水相成分(水)との界面で反応することにより、有効成分が内包されるマイクロカプセルを、水分散液として得ることができる。
この反応を促進するために、例えば、約25〜85℃、好ましくは、約40〜80℃で、約30分〜24時間、好ましくは、約1〜3時間攪拌しつつ加熱することが好ましい。
そして、このようにして得られるマイクロカプセル(水分散液として調製されるものを含む。)に、必要により、増粘剤、凍結防止剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合することにより、マイクロカプセル化剤を得ることができる。
なお、マイクロカプセル化剤では、マイクロカプセルの体積基準での平均粒子径を6〜100μm、好ましくは10〜30μmに調整し、かつ、マイクロカプセル全体に対して、体積基準での粒子径が4μm以下であるマイクロカプセルの体積比率を20%以上、50%未満、好ましくは20%以上、40%未満、さらに好ましくは20%以上、30%未満となるように調製するのが好ましい。
平均粒子径が6μm未満になると、耐久性(耐アルカリ性、耐土壌分解性)が低下するおそれがあり、体積基準での粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が20%未満になると、土壌への浸透性が低下して防蟻防虫効果が減殺されるおそれがあるが、このように、平均粒子径が6〜100μm、かつ、粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が20%以上50%未満となるようにマイクロカプセルの粒子径分布を調整することによって、マイクロカプセルの耐久性(耐アルカリ性、耐土壌分解性)および土壌への浸透性の両方を満足させることができる。
マイクロカプセルの平均粒子径および粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
前述のような粒子径分布を有するマイクロカプセルは、まず、粒子径分布が正規分布となるマイクロカプセルを、異なる平均粒子径で複数(2種以上)調製し、次いで、それらを適宜の割合で混合することによって、得ることができる。
より具体的には、例えば、平均粒子径が、1μm以上6μm未満(粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が、40〜100%)のマイクロカプセル、好ましくは、平均粒子径が、3〜5.5μm(粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が、40〜80%)のマイクロカプセルと、平均粒子径が、6μm以上100μm以下(粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が、0〜40%)のマイクロカプセル、好ましくは、平均粒子径が、10〜70μm(粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が、0.1〜15%)のマイクロカプセルとを、1:0.2〜5、好ましくは、1:0.5〜2の割合で混合する。また、混合は、乾式または湿式において、物理混合すればよい。
なお、粒子径分布が正規分布となるマイクロカプセルを、目的とする平均粒子径に調整するには、各種の方法によって異なるが、例えば、界面重合法では、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を適宜選択することにより、平均粒子径を調整することができる。例えば、平均粒子径が1μm以上、6μm未満のマイクロカプセルを得るには、水相成分の粘度が例えば0.1〜1Pa・s、好ましくは0.3〜0.6Pa・sである場合において、その攪拌速度を、周速13m/s以上、好ましくは13〜40m/sに設定すればよい。また、平均粒子径が6μm以上、100μm以下のマイクロカプセルを得るには、水相成分の粘度が例えば、0.1〜1Pa・s、好ましくは0.3〜0.6Pa・sである場合において、その攪拌速度を、周速13m/s未満、好ましくは0.1〜12m/sに設定すればよい。
なお、このような異なる平均粒子径のマイクロカプセルの混合は、体積基準での平均粒子径が6〜100μmであり、かつ、体積基準での粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が20%以上、50%未満であるマイクロカプセルを調製できれば、混合に供するマイクロカプセルの平均粒子径、種類および数は、特に制限されるものではない。また、このようなマイクロカプセルの混合は、製剤化の前後を問わず処方することができる。
さらに、このような粒子径分布のマイクロカプセルは、例えば、上記した界面重合法において、油相成分を水相成分に複数回に分けて配合することによって、一度に調製することもできる。
すなわち、このような調製では、油相成分のうち、まず、1〜99重量%、好ましくは40〜60重量%を、水相成分中に配合し、周速1〜30m/s、好ましくは4〜20m/sで、0.1〜30分、好ましくは3〜10分攪拌し、次いで、その残量となる油相成分を水相成分中に配合して、初回配合時と異なる攪拌速度、例えば、周速0.1〜15m/s、好ましくは0.2〜10m/sで、0.1〜30分、好ましくは3〜10分攪拌する。
このように、油相成分を複数回に分けて水相成分に配合し、各攪拌時において水相成分を、初回配合時と異なる攪拌速度(例えば、初回配合時の攪拌速度に対して、次回配合時の攪拌速度が、例えば、0.01〜0.99倍、好ましくは、0.2〜0.99倍となる攪拌速度)で攪拌させれば、得られるマイクロカプセルの粒子径分布を、正規分布から、よりサイズの小さい粒子径が増加するような分布にずらすことができる。
また、このように、複数回に分けて油相成分を水相成分に配合する場合には、各配合において、例えば、水相成分に希釈液を配合するなどして、次回配合時の水相成分の粘度を、初回配合時の水相成分の粘度よりも下げることが好ましい。より具体的には、上記の例において、まず、油相成分を、上記した割合で水相成分中に配合して上記した条件で攪拌した後であって、次いで、その残量となる油相成分を水相成分中に配合して攪拌する前(残量となる油相成分を配合する前後、あるいは、油相成分と同時であってもよい。)に、水相成分100重量部に対して、1〜10000重量部、好ましくは、20〜500重量部の希釈液を配合すればよい。なお、希釈液としては、例えば、水が用いられ、また、水相成分と同様の組成の水溶液を用いてもよい。
このように、各配合において、次回配合時の水相成分の粘度を、初回配合時の水相成分の粘度よりも下げれば(例えば、初回配合時の粘度に対して、次回配合時の粘度を、例えば、0.01〜1倍、好ましくは、0.05〜0.5倍に下げれば)、得られるマイクロカプセルの粒子径分布を、正規分布から、よりサイズの小さい粒子径が増加するような分布に、簡易かつ確実にずらすことができる。
なお、この場合には、上記の例において、初回配合時の水相成分の粘度が、例えば、0.1〜1Pa・s、さらには、0.3〜0.6Pa・sであり、次回配合時の水相成分の粘度(希釈液で希釈された油相成分を除く水相成分の粘度)が、例えば、0.005〜1Pa・s、さらには、0.04〜0.3Pa・sとなるように調整することが好ましい。
また、このような油相成分の水相成分に対する複数回での配合は、体積基準での平均粒子径が6〜100μmであり、かつ、体積基準での粒子径が4μm以下のマイクロカプセルの体積比率が20%以上50%未満であるマイクロカプセルを調製できれば、その配合の回数、攪拌速度、希釈液の種類および配合量は、特に制限されない。
マイクロカプセル化剤は、そのままの状態(水懸濁剤)で用いてもよく、また、例えば、粉剤、粒剤など、適宜公知の剤型に、さらに製剤化して用いてもよい。
マイクロカプセル化剤の使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の散布方法によって土壌に散布すればよく、より具体的には、例えば、有効成分濃度が1500ppmとして調製される水懸濁剤を、動力噴霧器または手動噴霧器を用いて、土壌表面に対して3〜5L/mで散布すればよい。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例などに限定されるものではない。
木材保存剤(油剤)の調製
実施例1
ジフェニルアルカンとして、新日本石油化学(株)製の商品名「日石ハイゾール SAS−310」57.8重量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルジグリコール)20重量部と、アルキルシクロパラフィン(商品名「ナフテゾール240」、新日本石油化学(株)製)20重量部とに、テブコナゾール(木材防腐防カビ剤)1重量部と、プロピコナゾール(木材防腐防カビ剤)1重量部と、クロチアニジン(木材防蟻防虫剤)0.2重量部とを投入して、均一に溶解させて、油剤を得た。
比較例1
「SAS−310」に代えて、同社製のジフェニルアルカン類(商品名「日石ハイゾール SAS−296」)57.8重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、油剤を得た。この「SAS−296」は、1,1−フェニルキシリルエタンを主成分とする沸点296℃の高沸点芳香族溶剤である。
比較例2
「SAS−310」に代えて、アルキルベンゼン(商品名「ソルベッソ150」、エクソン化学(株)製)57.8重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、油剤を得た。この「ソルベッソ150」は、蒸留範囲188〜209℃のアルキルベンゼンである。
比較例3
「SAS−310」を配合せず、かつ、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの配合量を77.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして、油剤を得た。
比較例4
「SAS−310」を配合せず、かつ、「ナフテゾール240」の配合量を77.8重量部とした以外は、実施例1と同様に調製を試みた。しかしながら、木材防腐防カビ剤および木材防蟻防虫剤を溶解させることができず、均一な油剤を得ることができなかった。
油剤の特性評価
実施例1および比較例1〜3で得られた油剤を用いて、下記の試験を実施した。試験には、木材として、ベイツガ(柾目、年輪3〜6個/cm、比重0.40〜0.42g/cm、年輪角度約45°、含水率8〜10%)を使用した。
(1)臭気試験
油剤をそのままで使用し、上記木材に、約200g/mの割合で塗布した後、これをデシケータに収容して、40℃の環境下にて1日保管した。保管後、デシケータ内の空気をテトラバッグの中に捕集し、これを臭気試験サンプルとして、5人のパネラーによる臭気官能試験を実施し、臭気の有無を判定した。結果を表1に示す。
(2)浸透性試験
油剤をそのままで使用し、上記木材に、約200g/mの割合で塗布した後、これを25℃、65RH%の雰囲気下に放置して乾燥させた。1週間放置した後、ミクロトームを用いて、木材の表面から1mm毎の深さで薄片を順次切り出して、薄片から防腐防カビ剤や防蟻防虫剤を抽出して、定量分析した。分析の結果、防腐防カビ剤や防蟻防虫剤のそれぞれについて、上記薄片から0.2kg/m以上の割合で抽出された場合には、これらの有効成分が浸透していると判断した。また、有効成分が浸透していると判断された薄片のうち、最も深い位置から切り出された試料についての深さの値を比較することで、浸透性の優劣を評価した。結果を表1に示す。
(3)防腐効力試験
社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」の規定に準じて、上記木材保存剤の防腐効力試験を実施した。試験の実施にあたって、木材保存剤はそのままで使用し、耐候操作は溶脱と揮散とを繰り返す方法を採用した。防腐効力の評価は、質量減少率が3%未満の場合を◎、3%以上5%未満の場合を○、5%以上10%未満の場合を△、10%以上の場合を×とした。結果を表1に示す。
(4)防蟻効力試験
社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」の規定に準じて、上記木材保存剤の防蟻効力試験を実施した。耐候操作の方法、および防蟻効力の評価基準(質量減少率)は、上記(3)の防腐効力試験と同様とした。結果を表1に示す。
Figure 2005263685
表1より明らかなように、木材防腐防カビ剤や木材防蟻防虫剤を溶解させる溶媒として、「SAS−310」を用いることによって、臭気の発生を防止することができ、しかも、有効成分の木材中への含浸の程度を低下させることなく、優れた防腐防カビ効果および防蟻防虫効果を得ることができた。
木材保存剤(乳化用油剤)の調製
実施例2
ジフェニルアルカン「SAS−310」36.8重量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル35重量部と、なたね油10重量部とに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ノニオン界面活性剤、商品名「ナロアクティーN100」、三洋化成(株))16重量部と、テブコナゾール(木材防腐防カビ剤)1重量部と、IPBC(木材防腐防カビ剤)1重量部と、クロチアニジン(木材防蟻防虫剤)0.2重量部とを投入して、均一に溶解させることにより、乳化用油剤を得た。
比較例5
「SAS−310」に代えて、「SAS−296」36.8重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして乳化用油剤を得た。
比較例6
「SAS−310」に代えて、「ソルベッソ150」36.8重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして乳化用油剤を得た。
比較例7
「SAS−310」を配合せず、かつ、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの配合量を71.8重量部とした以外は、実施例2と同様にして乳化用油剤を得た。
比較例8
「SAS−310」を配合せず、かつ、なたね油の配合量を46.8重量部とした以外は、実施例2と同様に調製を試みた。しかしながら、木材防腐防カビ剤および木材防蟻防虫剤を溶解させることができず、均一な乳化用油剤を得ることができなかった。
乳剤の特性評価
実施例2および比較例5〜7で得られた乳化用油剤を、それぞれ水で3倍に希釈して、乳剤を調製し、上記した(1)臭気試験、(2)浸透性試験、(3)防腐効力試験、(4)防蟻効力試験の各試験を実施した。試験には、油剤の特性評価と同じ木材(ベイツガ)を使用した。結果を表2に示す。
Figure 2005263685
表2より明らかなように、木材防腐防カビ剤や木材防蟻防虫剤を溶解させる溶媒として、「SAS−310」を使用し、かつ、界面活性剤を配合することによって、乳剤として調製した場合であっても、臭気の発生を防止することができ、しかも、有効成分の木材中への含浸の程度を低下させることなく、優れた防腐防カビ効果および防蟻防虫効果を得ることができた。
木材保存剤(マイクロカプセル化剤)の調製
実施例3
ジフェニルアルカン「SAS−310」560重量部と、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体(分子量10000〜50000、商品名「Disperbyk−164」、ビックケミー(株)製)40重量部とを、均一になるまで撹拌混合した後、さらに、クロチアニジン(防蟻防虫剤)400重量部を加え、高速分散機(商品名「T.K.ホモディスパー」、特殊機化工業(株)製)で攪拌混合して、クロチアニジン40%含有スラリー液A(以下、「スラリー液A」という。)を得た。
得られたスラリー液Aをビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径0.75mm)に投入して、20分間湿式粉砕した。粉砕後のスラリー液A中のクロチアニジンの平均粒径は840nmであった。
粉砕後のスラリー液A187.5重量部に、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体(商品名「タケネートD−140N」、三井武田ケミカル(株)製)81.5重量部を加え、均一になるまで攪拌して、油相成分としてのスラリー液Bを得た。
次いで、10重量%ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバール217」、クラレ(株)製)167重量部と、水108重量部とを含む水溶液275重量部中に、上記スラリー液Bを269重量部加えて、常温下にて、上記スラリーBが微少滴になるまで、T.K.ホモディスパーで数分間攪拌した(回転数は5000min−1に設定した)。
攪拌後の混合液を、75℃の恒温槽中で、3時間緩やかに攪拌させながら、ジエチレントリアミン4.8重量部を含む水溶液51重量部を滴下した。さらに、プロピレングリコール30重量部と、キサンタンガムの1.0重量%分散液125重量部と、含水ケイ酸アルミニウムの4.0重量%分散液125重量部と、水125重量部とを添加した。なお、この添加によって、スラリーの全量は1000重量部となった。
これによって、有効成分(クロチアニジン)を7.5重量%の濃度で含有するマイクロカプセル化剤を得た。マイクロカプセルの平均粒径を、レーザ回折/散乱式粒度分布装置(品番「LA−920型」、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、体積基準での平均粒子径が10μmであった。
比較例9
「SAS−310」に代えて、「SAS−296」560重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして、有効成分(クロチアニジン)を含有するマイクロカプセル(有効成分の濃度7.5重量%、平均粒子径10μm)のスラリーからなるマイクロカプセル化剤を得た。
比較例10
「SAS−310」に代えて、「ソルベッソ150」560重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして、有効成分(クロチアニジン)を含有するマイクロカプセル(有効成分の濃度7.5重量%、平均粒子径10μm)のスラリーからなるマイクロカプセル化剤を得た。
比較例11
「SAS−310」に代えて、ジエチレングリコールモノメチルエーテル560重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして、有効成分(クロチアニジン)を含有するマイクロカプセル(有効成分の濃度7.5重量%、平均粒子径10μm)のスラリーからなるマイクロカプセル化剤を得た。
比較例12
上記「SAS−310」に代えて、「ナフテゾール240」560重量部を用いた以外は、実施例3と同様の調製を試みた。しかしながら、「ナフテゾール240」と「Disper BYK−164」とが均一に溶解しなかったために、マイクロカプセル化剤を調製することができなかった。
マイクロカプセル化剤の特性評価
実施例3および比較例9〜11で得られたマイクロカプセル化剤を用いて、下記の試験を実施した。試験には、油剤の特性評価に用いたのと同じ木材(ベイツガ)を使用した。
(1)臭気試験
マイクロカプセル化剤を水で50倍に希釈した。次いで、「油剤の特性評価」における「(1)臭気試験」と同様にして、臭気の有無を判定した。結果を表3に示す。
(4)防蟻効力試験
社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S)」の規定に準じて、上記木材保存剤の防蟻効力試験を実施した。試験の実施にあたって、マイクロカプセル化剤を水で50倍に希釈した。耐候操作は、溶脱と揮散とを繰り返す方法を採用した。防蟻効力は、穿孔度によって評価した。穿孔が全く生じなかったものを穿孔度0とした。結果を表3に示す。
(5)耐アルカリ性試験
マイクロカプセル化剤を、さらにpH13の緩衝液で希釈して、有効成分(クロチアニジン)の濃度が1000ppmとなるように調整した。次いで、希釈液を、遮光下にて、40℃で7日間保存した。保存後、希釈液を中和し、アセトニトリルによってクロチアニジンを抽出して、保存前の有効成分の含有率と比較することによって、クロチアニジンの残存率(%)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2005263685
表3より明らかなように、木材防蟻防虫剤を溶解させる溶媒として、「SAS−310」を使用し、マイクロカプセル化したときは、臭気の発生を防止しつつ、優れた防蟻防虫効果を発揮させることができた。しかも、マイクロカプセル化された木材保存剤をアルカリ下に保存した場合であっても、有効成分の分解を低減することもできた。

Claims (7)

  1. 一方のフェニルがフェニル基で、他方のフェニルが炭素数3または4のアルキル基が1つ置換されているアルキル置換フェニル基で、アルカンの炭素数が1または2であるジフェニルアルカンと、木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤と、を含むことを特徴とする、木材保存剤。
  2. 木材防腐防カビ剤および/または木材防蟻防虫剤を、前記ジフェニルアルカンに溶解してなることを特徴とする、請求項1に記載の木材保存剤。
  3. さらに、界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の木材保存剤。
  4. 前記ジフェニルアルカンと、木材防蟻防虫剤とを、マイクロカプセル化してなることを特徴とする、請求項1に記載の木材保存剤。
  5. 木材防腐防カビ剤が、有機ヨード系防腐防カビ剤および/またはトリアゾール系防腐防カビ剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の木材保存剤。
  6. 木材防蟻防虫剤が、ピレスロイド系防蟻防虫剤および/またはネオニコチノイド系防蟻防虫剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の木材保存剤。
  7. 木材防蟻防虫剤が、クロチアニジンであることを特徴とする、請求項6に記載の木材保存剤。
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