JP2005262554A - 高放熱性光学用複合フィルム及びそれを用いた放熱方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度を損なうことなく、放熱性が向上した光学用フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 光学用フィルム基体1の少なくとも片面に、可視光線透過率が該フィルム基体のそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともにフィルム基体のそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量がフィルム基体のそれより小さい(好ましくはフィルム基体に対して10%以下の)被膜2を形成し、該被膜表面に空気、水等の冷却流体Aを接触させることにより、高温となったフィルム基体を放熱させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、新規な光学用複合フィルムに関する。詳しくは、本発明は、カラー液晶ディスプレイやカラー液晶投射型ディスプレイに用いられている偏光フィルム、位相差フィルム、液晶フィルムなどとして用いられる光学用フィルムであって、光源からの光や熱を吸収して温度が高くなったときであっても放熱性が良好で劣化しにくく、且つ透過する光線のユラギを防止して鮮明な画像を与えることのできる高放熱性の光学用複合フィルムに関する。
カラー液晶ディスプレイやカラー液晶投射型ディスプレイなどに用いられるカラー液晶用偏光フィルム、位相差フィルム、液晶フィルム等の光学用フィルム(以下、単に「光学用フィルム」という場合がある)は、該フィルム単独で用いられることは少なく、通常、支持体として青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスやサファイヤガラス、水晶ガラス、石英ガラスなどに粘着剤で貼付して用いられている。
しかしながら、かかる液晶ディスプレイはその液晶画像形成部に光を投射して画像を作るため、長時間使用すると、前記フィルムは光や熱を吸収して高温となり、均一な画像が得られなくなる場合がある。このような問題の解消方法として、熱伝導率の大きいサファイヤガラスや水晶ガラスに光学用放熱フィルムを貼付する方法が提案されている。例えば、本発明者は先に、ガラス基板の少なくとも片面に特定条件を満たす被膜を形成した光学用放熱ガラスを提案した(特願2003−282251)。しかし、これらの方法を用いても、いまだ効果は充分とはいえない。
特に、カラー液晶投射型ディスプレイすなわちカラー液晶プロジェクターの場合、光源からの輝度が強いため、光学用フィルムに熱が蓄積しやすく、該フィルムが容易に高温となる傾向にある。この問題を解決するため光源の輝度を低くすると、該光学用フィルムに光が大幅に吸収されるなどして画像が暗くなりやすい。また、そもそも1〜6インチの小面積の画像を数10〜数100インチ程度まで拡大するため、画像は必然的に暗くなる。そのため、光源の輝度を低くすることは困難であり、逆に、近年さらに画像自体のより一層の明るさや鮮明さを求める要望も強まっていることから、光源としてより高い輝度のものを使うことが求められる。
ところで、一般にカラー液晶の液晶画像形成部には、偏光フィルムとして、偏光性能の良好なニュートラルグレーの沃素系偏光板が使用されていた。しかし、沃素系偏光フィルムは、沃素が偏光子であるが故に耐光性、耐湿熱性が十分でないという問題がある。この問題を解決するため、染料系の二色性色素を偏光子とした偏光フィルムが使用されるようになってきた。しかしながら、このような二色性色素を偏光子とした偏光フィルムにおいても、耐光性、耐熱性は十分ではない。
このように、より明るく鮮明な画像への要望、およびそれに加えて最近のカラー液晶ディスプレイの小型化、軽量化の要請などにより、使用する光源強度は益々強くなり、光学用フィルムの高温化は避けられない状況となっているが、フィルム自体の耐光性、耐熱性を向上させることには限界がある。
よって、これらの事情から、光源からの熱を吸収して高温となった光学用フィルムの放熱性を高めることが検討されている。すなわち、支持体のガラス面からの放熱ばかりでなく、光学用フィルムからの放熱を向上させ、総体的に高い放熱性を有し且つ耐久性と映像の均一性を兼ね備えた光学用フィルムを液晶表示パネルやカラー液晶ディスプレイに用いることが多く望まれるようになってきた。
一般に、物体の放熱性を高める方法は、金属などの場合は、その放熱面積を大きくさせる方法としてアルマイト加工やブラスト加工及びフィンの数量を多くする方法(特開平11−238837)、そして、その放熱フィンの包絡面を湾曲させ放熱フィンを通り抜ける冷却風の速度と量を増加させる方法(特開平10−242357)、放熱フィンの熱容量を小さくさせる方法(特開平10−116942)、及び表面に水膜を形成させ蒸発熱を利用して冷却を促進する方法(特公平6−3335)などが行われている。
さらに、金属の放熱性を向上させたヒートシンクの放熱を向上させるために、ファンとフィンを組み合わせた空冷方式と水を用いた水冷方式及び放熱フィン側にペルチェ素子を用いた冷却方法(特開平10−318624)などがある。
しかし、偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルムなどの光学用フィルムの場合は、ブラスト加工やフィルムにフィンを設けて放熱性を向上させることは技術的に可能であるが、これらの方法を用いて放熱を行うと光学用として用いるフィルム本来の機能まで失ってしまう。また、フィルムの熱容量を小さくするためにフィルムの厚さを薄くすればよいが、機械的な強度が低下し、破損しやすくなる問題がある。
特願2003−282251 特開平11−238837 特開平10−242357 特開平10−116942 特公平06−003335 特開平10−318624
本発明は、上記従来技術の欠点を解消して、可視光線帯域の透明度が高く、しかも高い放熱性と冷却効果をもつ、安価な光学用フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、光源からの放射熱により加熱されて光学用フィルムの温度が高くなったときに、該フィルムの片面あるいは両面に、可視光線透過率が光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が光学用フィルムのそれより小さい被膜を、その被膜の熱容量が該光学用フィルムに対して小さくなるように形成して、その形成した被膜表面に空気、水等の冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムからの放熱を促進させることによって、該光学用フィルムの温度上昇を効果的に低減させることが可能なことを、実験により見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に示す高放熱性光学用複合フィルム、及び(6)〜(9)に示す放熱方法に関する。
(1) フィルム基体と該基体の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合フィルムであって、前記被膜の可視光線透過率が前記フィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記フィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量が前記フィルム基体のそれより小さいことを特徴とする、カラー液晶ディスプレイ用の高放熱性光学用複合フィルム。
(2) 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(1)記載の高放熱性光学用複合フィルム。
(3) 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.09%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.48%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(1)記載の高放熱性光学用複合フィルム。
(4) 前記フィルム基体の厚みが10〜50μmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の高放熱性光学用複合フィルム。
(5) 前記被膜の厚みが0.01〜70μmであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の高放熱性光学用複合フィルム。
(6) カラー液晶ディスプレイ用の光学用複合フィルムの放熱方法であって、フィルム基体と、該基体の少なくとも片面に形成された被膜であって可視光線透過率が前記フィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記フィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量が前記フィルム基体のそれより小さい被膜とからなる複合フィルムの、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする、光学用複合フィルムの放熱方法。
(7) 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(6)記載の放熱方法。
(8) 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.09%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.48%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(6)記載の放熱方法。
(9) 冷却流体が空気又は水であることを特徴とする、(6)〜(8)のいずれかに記載の放熱方法。
本発明によれば、光源からの光線の照射を受けて高温となった偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルム等の光学用フィルムからの放熱を促進させるために、該光学用フィルムとして、フィルム基体の片面又は両面に、可視光線透過率が該基体のそれより大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該基体のそれより小さい被膜を、その熱容量が該基体のそれより小さくなるように形成した光学用複合フィルムを用い、被膜面に冷却流体を接触させながら、対流熱伝達による放熱を促進させることによって、フィルムの温度上昇を抑制することができる。すなわち、本発明の光学用複合フィルムは、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずに該光学用フィルムからの放熱を有効に促進できる高放熱性光学用複合フィルムである。
各種の光源から投射される波長の範囲は、照明機器の種類により異なるが、通常、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、遠赤外線領域の波長が総合的あるいは選択的に照射される。通常、フィルムは、可視光線、近赤外線、遠赤外線を透過する。しかし、着色された光学用フィルムは、色の種類によっても異なるが、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、遠赤外線領域の波長を吸収して発熱する。
すなわち、このように光源から光学用フィルムに照射される放射熱は、光学用フィルムの種類により異なるが、一部は透過し、一部は反射して、残りは光学用フィルムに吸収されて該フィルムの温度を上昇させる。そして、光源の輝度が高いほど吸収は大きくなり、温度上昇は大きくなって高温となる。
光学用フィルムに吸収された熱は、フィルム表面から対流、放射により外気へ放熱される。すなわち、高温となった光学用フィルムから空気中に伝達される熱は、フィルム中を伝導で伝達し、フィルム表面から対流、放射により空気中へ伝達される。したがって、フィルムからの放熱性を向上させるには、対流熱伝達あるいは放射熱伝達を大きくすれば良い。
放射熱伝達を大きくするには放射率を大きくすれば良い。すなわち、放射熱吸収率を大きくすれば良い。通常、偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルム等の光学用フィルムは着色されているので、ほとんどの波長を吸収し放射率は大きい。しかし、光学用フィルムは、常に光源から投射されている光線を吸収するので、放射により放熱される熱より吸収される熱が多く、光学用フィルムの温度は上昇しつづける。よって、光学用フィルムの放射率を大きくして放熱性を向上させることは難しい。
次に、熱容量を考えると、同じ箱の中に配置された同じ材質かつ形状の物体は、その大きさ、すなわち熱容量が小さければ温度が早く下がり、また早く上がる。
また、冷却流体を用いて物体を冷却すると、物体に接する冷却流体の量すなわち冷却流体の熱容量は、小さな物体に対しては大きくなり、大きな物体に対しては相対的に小さくなる。つまり、物体の温度の上昇や下降は、物体の大きさや物体に接する流体の量にも関係するといえる。
したがって、フィルム本来の機能を損なわずに放熱性を向上させるには、つまり、放射率を大きくさせずに放熱性を向上させるには、物体の熱容量を冷却流体に対し相対的に小さくさせることで冷却効果を上げられると考えられる。つまり、可視光線帯域と赤外線帯域の吸収、反射が小さい物質、すなわち、可視光線帯域と赤外線帯域の透過が大きい物質を用いて光学用フィルムの片面あるいは両面に、該フィルムに対して熱容量が小さくなるように被膜を形成すれば、光学用フィルム本来の機能を低下させずに放熱性を向上させることができると考えられる。本発明は、このような知見に基づき、実験により被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射における波長域の吸収率および該被膜の光学用フィルムに対する熱容量の割合などの関連を見出した結果、完成するにいたったものである。
本発明によれば、光学機器や映像機器などの光学用フィルム面の両面または片面に、可視光線透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が小さい被膜を、その被膜の熱容量が該光学用フィルムに対して小さくなるように形成させて、その形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムから放熱を促進させることにより、光学用フィルム本来の可視光線の透明度を損なわずに該フィルムの放熱性を向上させて温度上昇を防止し、液晶ディスプレイやプロジェクター用の液晶パネルなど用いられている偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルムなどの劣化を防止したり、光線のユラギを防止して鮮明な画像を得たりすることができる。
1.高放熱性光学用複合フィルム
本発明の高放熱性光学用複合フィルムは、フィルム基体と該基体の少なくとも片面に形成された被膜とからなるものである。
(1)フィルム基体
本発明の光学用複合フィルムに用いられるフィルム基体は、カラー液晶ディスプレイ又はカラー液晶投影型ディスプレイなどに用いられる偏光フィルム(又は偏光板)、位相差フィルム、液晶フィルム等の光学用フィルムであれば、特に限定されない。
本発明で使用される偏光フィルムは、沃素系でも染料系でもよいが、より高い耐久性を考慮すると染料系が好ましい。このような偏光フィルムは、沃素や二色性染料で高分子フィルムを染色し、ついでその高分子フィルムを一軸延伸することにより、また必要に応じこの延伸フィルムを二枚の支持フィルムで狭持することにより、製造することができる。高分子フィルムを一軸延伸した後、沃素や二色性染料で染色することによっても、染色と一軸延伸を同時に行っても良い。高分子フィルムの一軸延伸としては、例えば湿式法、乾式法などがあげられる。延伸は4〜5倍程度が普通である。
偏光フィルムに用いられる高分子フィルムとしては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)系膜、このPVA系膜をエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸などで変性したもの、EVA(エチレン/ビニルアセテート)樹脂、ケン化EVA樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等の偏光膜基材が挙げられるが、PVA系膜が、染料の吸着性や配向性の点から、好ましい。PVA系膜としては、例えばPVA膜、ポリビニルブチラール膜等があげられるが、PVA膜が好ましい。かかる偏光膜の膜厚は10〜50μm、好ましくは25〜35μm程度である。
偏光膜のみでも偏光機能は有するが、強烈な光線照射、高温または高温高湿の過酷な環境条件に対して十分高い耐久性を付与する為に、好ましくは紫外線吸収剤を含有するトリアセチルセルロース等の支持フィルムを両面より積層接着して偏光板とするのが好ましい。支持フィルムとしては、例えばTAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂もしくはポリアミド系樹脂からなるフィルム処理したものがあげられるが、TACフィルムが好ましい。この支持フィルムの膜厚は、30〜250μ、好ましくは50〜190μ程度がよい。
また、位相差フィルムには、1/2波長板、1/4波長板、液晶フィルム等があげられる。1/2波長板、1/4波長板には株式会社ポラテクノ製の商品名「NR」(ポリビニルアルコール系)や「HPC」(ポリカーボネート系)や「WBR」(広帯域用)などを用いることができる。低位相差フィルムには、トリアセチルセルロース系、ジアセチルセルロース系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等の、位相差値が2〜100nm程度の位相差フィルムがある。また、液晶フィルムには富士写真フィルム社製の商品名「WVA」や日石化学(株)製の商品名「NH」などがある。
本発明で使用する偏光フィルムおよび位相差フィルム、液晶フィルムなどの表面には透明な保護膜を設けても良い。保護膜としては、例えばアクリル系やポリシロキサン系のハードコート膜やウレタン系の膜等があげられる。また、この保護膜の上にAR(反射防止)層を設けても良い。AR層としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着またはスパッタリング処理によって形成することができ、また、フッ素系物質を薄く塗布することにより形成することもできる。
このような偏光膜及び必要に応じて支持フィルム、保護膜等を含む光学用フィルムの大きさは、各々の目的に応じた所望の大きさで良く、具体的には、例えば一辺または径が5〜300mm、好ましくは10〜200mm程度である。また、その形状は長方形、正方形、円形等、特に制限はないが、通常は長方形が好ましい。厚みは限定されないが、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.3〜2mm程度である。
本発明で用いられる偏光フィルムおよび位相差フィルム、液晶フィルムなどの光学用フィルム基体は、ガラス等の基板からなる支持体の上に貼付されたものであってもよい。このように支持体に貼付することにより、透過する偏光の偏光状態を維持することができ、映像コントラストをよりはっきりさせることができる。
かかる支持体として用いられるガラス基板の大きさは所望の大きさで良く特に限定されるものではない。また、その形状は長方形、正方形、円形等、特に制限はないが、通常は長方形が好ましい。大きさは、例えば一辺または径が5〜300mm、好ましくは20〜200mm程度がよく、その厚さは0.1〜1mm、好ましくは0.1〜0.3mm程度がよい。
また、上記基板からなる支持体に貼付されている場合、単板光透過率をより向上させるために、該基板面または光学用フィルム面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
また、本発明の光学用フィルムは、上記の偏光フィルムに位相差フィルムを付加させたものなど、2種以上のフィルムを組み合わせたものであっても良い。偏光フィルムに位相差フィルムを付加させることで、映像の明るさがより向上し、色相がより鮮明となり、コントラストも向上する。また、カラー液晶ディスプレイの場合には、3原色光集光部における集光漏れによる3原色のクロストークを防止することができる。
(2)被膜
本発明の光学用複合フィルムは、上記光学用フィルム基体の少なくとも片面に、その可視光線透過率がフィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともにフィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量がフィルム基体のそれより小さいという条件を満たす被膜を設けたものであり、これによりフィルム基体に吸収された熱を効率的に放熱することができるため、高放熱性の光学用複合フィルムを得ることができる。
(a)可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率、並びに熱容量
本発明は、次のような知見に基づいてなされたものである。すなわち、フィルム本来の可視光線帯域の透明度を損なわずに光学用フィルムの放熱性を向上させるには、放射熱伝達を大きくさせる方法、例えば光学用フィルム表面に放射率の大きい被膜を形成させる方法や、可視光線の透明度や透過性を損なうブラスト加工やフィンの増設などで表面積を大きくさせる方法は、むしろ実用的ではなく、逆に、放射率(放射熱吸収率)を大きくさせずに、光学用フィルムの熱容量を冷却流体に対し相対的に小さくさせ、対流熱伝達を大きくさせることで、冷却効果を格段に高めることができる、というものである。この点について、以下に説明する。
<放射熱伝達>
以下に放熱の原理について述べる。
通常、金属のような物体は、放射熱の一部を吸収して、他をすべて反射するので吸収率α、反射率ρの間に次の関係式「α+ρ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過しないことが分かる。しかし、ガラスやプラスチックスなどの物体は、放射熱を一部吸収し、一部反射し、一部透過する灰色体である。このような灰色体の場合は、吸収率α、反射率ρ及び透過率τの間に次の関係式「α+ρ+τ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過することが分かる。
また、放射熱伝達における放射熱Qは、次の式で表わされ、これは真空中においても伝達可能である。
(数1)
Q=σ・ε・(T/100)4
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、εは物体の放射率、Tは物体の絶対温度である。この式から明らかなように、放射率を大きくすればその物体から放射される熱量は多くなる。
また、放射による熱伝達Q2は、物体表面から低温帯域の物体及び流体に伝達される。これを式で表わすと次のようになる。
(数2)
2=σ×f(ε)×[(Tr/100)4−(T0/100)4
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、f(ε)は物体間の放射伝熱の放射係数、Trは物体の表面温度(K)、T0は低温帯域の物体の表面温度(K)である。この式から明らかなように、物体表面間の放射伝熱の放射係数を大きくすればその物体間の放射熱伝達量は増大する。
なお、キルヒホッフの法則によると、熱の吸収率と放射率とは等しいので、放射熱吸収率の大きい物質を選択すれば、その物体から放射される熱量は大きくなる。
通常、フィルムは可視光線や近赤外線および2.5μmより長い波長の赤外線のほとんどを透過させる。
しかし、偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルムなどの光学用フィルムは着色されているため、可視光線や近赤外線および2.5μm以上の赤外線を吸収して温度上昇が大きくなり、放射率が透明なフィルムに比べ、偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルムなどの温度は大幅に高くなる。
また、光学用フィルムの温度を上昇させないためには、反射をさせればよいが、一般的には、近赤外線帯域で反射率の大きい金属やセラミックスなどの物質は、可視光線などの各波長域でも同じように反射する。つまり、反射率の大きい金属を用いて反射率を大きくさせると可視光線帯域まで反射して透過率が落ちたり変色したりして、光学用フィルムとしての機能まで損なってしまう。また、その反射した光が隔壁や光源などにも反射して乱反射が起こるという欠点がある。
そして、近赤外線帯域を吸収させる赤外線吸収剤なども同様であり、赤外線帯域における放射熱吸収率を大きくさせようとすると、可視光帯域における吸収率まで大きくなり可視光帯域の透過率が落ちたり変色したりしてしまい、同様に、光学用フィルムとしての機能まで損なってしまう。
したがって、2.5μmまでの近赤外線から2.5μm以上の遠赤外線だけを選択的に吸収させたり反射させたりすれば、可視光線の透明度や透過性を損なうことはないが、現在の技術においては非常に難しい。
また、密閉された領域と外気の隔壁として着色された光学用フィルムを用いる場合、着色された光学用フィルムの放射熱吸収率すなわち放射率が大きいと、放射熱を多く吸収して内部や外部の温度より高くなる。そして、着色された光学用フィルム表面から密閉された内部と外部へ対流熱伝達と放射熱伝達により熱は、伝達される。そして、密閉された内部の温度は上昇する。
密閉された内部における熱伝達は、対流熱伝達より放射熱伝達が大きいため、放射率の小さい被膜を着色された光学用フィルムの中側に形成すると、高温となった光学用フィルムから内部への放射による熱伝達が軽減され、内部温度の上昇を抑えられる。そして、外気側には放射熱伝達率が大きい被膜を形成させれば外気への放射による放熱は増大するが、可視光線の透明度や透過性まで失い、偏光フィルムや位相差フィルム、液晶フィルム本来の機能まで損なってしまう。
したがって、着色された光学用フィルムからの放熱を向上させるには、着色された光学用フィルム表面に放射率の大きい被膜を形成させたり、可視光線の透明度や透過性を損なうブラスト加工やフィンなどで表面積を大きくさせる方法を用いて放熱性を向上させることは実用的ではないため、対流熱伝達を大きくさせる方法が必要である。
<対流熱伝達>
次に、対流熱伝達について述べる。
物体に冷却流体を接触させて冷却を行う場合は、通常、冷却効果を大きくさせるために、冷却流体の流速を上げている。すなわち、流体の熱輸送能力を大きくさせて冷却効果を大きくさせている。
流体の熱輸送能力は、A(断面積:cm2)×u(速度:cm/s)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)で与えられる流体の体積、密度、比熱の関数である。すなわち、熱輸送能力とは、時間当たりの熱容量(cal/℃)と同じであるといえる。
通常、空気の冷却効果は水に対し小さい。これは、空気の熱容量が水の熱容量に対し小さいためである。
空気による冷却効果を高めるためにファンを用いて光学用フィルムに送風することは、光学用フィルム周辺の高温となった空気を除去し、低温の空気を接触させて放熱させることであるが、これは、光学用フィルムに接する空気の風量を増加させることでもある。つまり、ファンを用いて送風することは、空気の熱容量を大きくさせることと同じといえる。
冷却効果を高めるために光学用フィルムの熱容量を小さくさせる方法があるが、これは空気と接する光学用フィルムの熱容量を小さくさせることにより、空気の量が同じでも空気の熱容量が光学用フィルムの熱容量に対し相対的に大きくなり、放熱効果を向上させる技術である。
また、熱は温度が高い物体から対流、放射により低温の外気へ伝達される。そして、同一面積の場合、放射により伝達される熱は、その物体の放射率により決まるが、対流による熱伝達は、その物体に接する流体の状態に大きく影響される。
高温の物体から低温の流体への熱伝達は、次式で表される。
(数3)
q=λ/L(T1−T2)
=α(T2−T0)
ただし、q=熱流(kcal/h・m2)、λ=物体の熱伝導率(kcal/℃・h・m)、L=物体の厚さ(m)、T1=物体の温度(℃)、T2=低温側の物体の表面温度(℃)、T0=流体の温度(℃)、α=流体の熱伝達率(kcal/℃・h・m2)。
上式から明らかなように、同じ条件の流体中に置かれた物体の熱伝達は、熱伝導率が大きく、厚さが薄いほど外気中に放熱される量が多くなる。
また、熱容量を含む系の熱平衡は、次式で表される。
(数4)
q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh
ここで、q=供給熱量(kcal/h)、T1=内部温度(℃)、T0=外気温度(℃)、h=時間(h)、W=比例定数(kcal/℃)、C=熱容量(kcal/℃)。
熱容量は、C(熱容量:kcal/℃)=Q(熱量:kcal)/ΔT(温度差:℃)と定義される。そして、ΔT=q/Cの関係式で表される。
上式から、供給熱量が一定であると、熱容量が小さいほど外気への放熱は増加することが分かる。したがって、熱容量の小さい光学用フィルムを使用すると、内部の蓄熱が小さくなり、外気への放熱量が増加できる。
また、熱容量の異なる物体が接触したときの平衡温度は、下記の式で表される。
(数5)
Te(平衡温度)=(C1・T1+C2・T2)/C1+C2
この式を検討すると、平衡温度Teは、高温側の温度T1と低温側の温度T2が一定とすると、熱容量の大きい物体の温度に近くなることが分かる。つまり、低温流体の熱容量が大きいと、光学用フィルムと空気の平衡温度は、空気の温度に近い温度で平衡になることが分かる。
そして、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。すなわち、同量の水と空気を冷媒として用いた場合、水の比熱、密度が空気に対し大きいため熱容量が大きくなり、水−光学用フィルム間の熱コンダクタンスが空気−光学用フィルム間の熱コンダクタンスに対し大きくなる。したがって、冷却効果を向上させるには、冷却流体として熱容量の大きい物質を用いればよい。また、冷却流体が熱容量の小さい物質でもその冷却流体の量を多くすれば熱容量を大きくさせることができ、冷却効果を高めることができる。
つまり、ファンを用いて送風し光学用フィルムに接する空気の量を多くして光学用フィルムに対して空気の熱容量を大きくすることができる。
ファンを用いて強制冷却することは、光学用フィルムの付近に滞留している高温の空気を除去して、低温の空気を光学用フィルムに接触させることにより光学用フィルムの熱を奪うことであるが、空気の熱輸送能力を熱容量と同じと考えると、強制冷却することは、光学用フィルムに対し空気の熱容量を大きくさせて光学用フィルムからの熱を多く奪うことと同じといえる。
<熱容量>
次に、空気に対し光学用フィルムの熱容量を小さくさせる方法を考える。つまり、光学用フィルムの表面に薄膜を形成させたときの熱の流れについて考える。
第一に、冷却流体としての空気と薄膜についてマクロ的に考えると、薄膜の熱容量は空気の熱容量に対して圧倒的に小さいため薄膜の温度は空気の温度に近い温度で熱力学的に平衡になる。
第二に、薄膜と光学用フィルムについて考えると、薄膜の熱容量は光学用フィルムの熱容量に対して圧倒的に小さいため、薄膜の温度は光学用フィルムの温度に近い温度で平衡になる。
前記で示したように、熱容量を含む系の熱平衡は、「q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh」の式で表され、そのときの平衡温度は、熱容量の大きい物質の温度に近くなる。
第三に、空気と薄膜と光学用フィルムについて考えると、薄膜は空気と光学用フィルムの間に位置して平衡になるので、空気の熱輸送能力すなわち空気が奪う熱量は同じであるから、薄膜の分だけ熱抵抗が大きくなり放熱効果が減少すると考えられる。
しかし、光学用フィルムにファンを用いて、直接送風したときの空気の熱輸送能力すなわち空気の熱容量は、光学用フィルムの熱容量に対し圧倒的に大きくなると考えられる。すなわち、これは空気の熱輸送能力が大きくても光学用フィルムから空気中への熱伝達が小さいことが原因と考えられる。
次に、ミクロ的に考えると、通常、空気中における物体には、空気中の成分が物体表面にファンデル・ファールス力などの物理的な力で付着している。そして、伝熱工学においては、伝熱面のごく近傍では温度境界層が存在し、熱伝導による熱移動が境界面に対し垂直に行われることが確認されている。
つまり、この伝熱面のごく近傍に付着している空気層は、非常に少なく、その熱容量も非常に小さい数値を示す。この空気層と光学用フィルムの熱容量を比較すると、空気層の熱容量は光学用フィルムの熱容量に対し非常に小さくなり、その平衡温度は光学用フィルムの温度に近い温度になると考えられる。すなわち、光学用フィルムに付着している薄い空気層の温度は高くなる。つまり、熱流の式における空気のλ(熱伝導率)/L(厚み)だけ放熱性が低減すると考えられる。
次に、薄膜を形成したときの薄膜に付着している空気層と薄膜の熱容量を比較すると、光学用フィルムに付着している空気層の熱容量よりも薄膜に付着している空気層の熱容量のほうが相対的に大きくなり、薄膜に付着している空気層の平衡温度は流動している空気層の温度に近い温度になると考えられ、光学用フィルムに直接付着していたときの空気層の温度よりは低くなると考えられる。
次に、固体中を移動する熱伝導は、次式で表される。
(数6)
q=λ/L(T1−T2)
そして、複層体の熱伝導は、q=(λ/L+λ‘/L’)(T1−T2)で表される。薄膜の厚さを物体の厚さに対して無視できる程度の厚さにすると、固体中の温度勾配は、薄膜を形成しても同じになる。
また、固体の熱伝導率が大きくても、固体に熱伝導率の非常に小さい空気層が付着していると、この固体中央部から空気中への熱伝達は大きく阻害される。一般的に、流動している空気の熱輸送能力に対して固体中を移動する熱量、すなわち対流による熱伝達より伝導による熱伝達の方が大きいが、固体に付着している熱伝導率の小さい空気層により、固体中を移動する熱量の方が小さくなると考えた。したがって、空気の熱輸送能力が大きいとすると、固体表面(正確には、固体に付着している空気層表面)から空気中へ移動する熱量は同じである。
次に、薄膜に付着している空気層の温度が低下すると薄膜の温度も低下する。そして、固体中央部と薄膜に付着している空気層の温度差が大きくなり、固体中央部から表面への熱流は増加して固体中央部の温度も低下する。
次に、固体中央部の温度が低下すると、熱源と固体中央部の温度差も大きくなり、放熱効果を向上できると考えた。
また、固体に付着している空気層を無視して考えると、結果として、対流熱伝達の式「q=α(T2−T0)で表される対流熱伝達率αが大きくなったと同じことになる。
これらの考えから、光学用フィルムの表面に熱容量が小さくなるように被膜を形成し、その被膜を空気に接触させることにより相対的に空気の熱容量を大きくさせ、放熱効果の向上が図れると考え実験により見出した。
したがって、本発明の光学用複合フィルムにおける被膜は、その熱容量が光学用フィルム基体の熱容量より小さいものであることが必要であり、好ましくは該被膜の熱容量は、光学用フィルム基体のそれに対し10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。熱容量がこの範囲を超えると、放熱性の向上効果があまり得られない場合がある。
<日射熱吸収率、放射熱吸収率>
また、光学用フィルムの表面に、放射熱吸収率が小さい物質で被膜を形成させると、放射率は非常に小さくなり放射による放熱は低減するので、放熱性の向上には放射熱吸収率の大きい物質が一見望ましいように思われる。しかし、ファンを用いて送風させながら冷却を行うと、放射による冷却効果は、対流熱伝達による冷却効果に比較してほとんど無視できるほど小さいものとなる。
したがって、ファンを用いて送風させながら冷却を行う場合、たとえ放射率の大きい被膜例えば真っ黒な被膜を形成させても、放熱性の向上にはほとんど貢献しない。逆に、放射率の大きい物質すなわち可視光線帯域と赤外線帯域の吸収、反射が大きい物質は、可視光線帯域と赤外線帯域の透過が小さい物質であるから、そのような物質で光学用フィルム基体の表面に被膜を形成すると、光学用フィルム本来の透明度や透過性が劣るものとなる。
したがって、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずに光学用フィルムからの放熱性を向上させるには、むしろ放射熱吸収率の小さい被膜を光学用フィルムの表面に形成させることが望ましい。
すなわち、本発明においては、光学用フィルム基体の片面あるいは両面に形成させる被膜として、放射率の小さいものが選択される。具体的には、その日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が、光学用フィルム基体の日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい被膜を形成させるのがよい。
より好ましくは、前記被膜の日射熱吸収率は0.01〜11%であり、さらに好ましくは0.09〜11%、特に好ましくは0.09〜16.9%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は0.01〜20%、さらに好ましくは0.02〜17%、特に好ましくは0.48〜16.9%である。日射熱吸収率及び放射熱吸収率が大きすぎると、光学用フィルム本来の透明度や透過性が損なわれる可能性があり、一方小さすぎると、放熱性の向上効果があまり得られない場合がある。
なお、このときの常温熱放射の波長域は5〜50μmの範囲である。そして、そのような波長域において放射熱吸収率の小さい物質を選択して形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムから放熱させる場合、その放熱性は格段に向上する。
<可視光線透過率>
本発明の光学用複合フィルムは、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずにフィルムからの放熱性を向上させたものである。したがって、フィルム基体の片面あるいは両面に形成させる被膜の可視光線透過率は、フィルム基体の可視光線透過率より大きいものである。具体的には、前記被膜の可視光線透過率の値が90%以上、より好ましくは92%以上、特に好ましくは94.2%以上が望ましい。可視光線透過率が低すぎると光学用フィルム本来の透明度や透過性を損なわずに該フィルムからの放熱性の向上効果を高めるという本発明の目的を十分達成できない場合がある。
以上述べたように、光学用フィルム基体の片面あるいは両面に可視光線透過率が90%以上で日射熱吸収率が0.01〜11%及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%の範囲で、かつ、被膜の熱容量が光学用フィルムに対して10%以下になるように被膜を形成させて、形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムからの放熱を促進することが必要である。
<測定方法>
次に、ここでいう被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法を示す。
常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法は、JIS−R−3106の板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率における測定に準拠して、まず一般の化学分析用の赤外分光光度計を用い、アルミニウム板の上に被膜を形成してJIS−R−3106の標準反射率の値を用いて反射率を測定し、次いで灰色体の吸収率αと反射率ρと透過率τの間に成り立つ関係式「α+ρ+τ=1」に基づき、吸収率αを、「吸収率α=1−(反射率ρ+透過率τ)」により求めた。
また、アルミニウム板の上に形成されたときの被膜の放射熱吸収は、放射熱の入射したときと反射して出るときの2回生じるので、吸収率αは、測定値の1/2とした。この数値を理論値として用い、光学用フィルム表面に形成した被膜の常温熱放射の波長域における吸収率とした。また、被膜の表面に生じる反射は0として計算した数値を用いた。
可視光線透過率及び日射熱吸収率は、JIS−R−3106により光学用フィルムと光学用フィルムに被膜を形成した状態で測定し、その差を被膜の可視光線透過率及び日射熱吸収率とした。
次に、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。そして、V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)=W(全重量:g)であるから、被膜の全重量と比熱とから熱容量を求めた。ここで、被膜の全重量は、溶剤を用いて規定の濃度に薄めた液剤の重量を測定した後、フィルムに流し塗りの方法で塗布し、流れ落ちた塗布液の重量を測定してフィルムに付着した重量を求めた。また、比熱:(cal/g・℃)は、各材料に固有のもので、その数値は、温度により変化するが、本発明においては、常温で通常の比熱測定装置を用いて得た測定値を使用した。
(b)被膜の材質
本発明の光学用複合フィルムにおける被膜の材質は、上述した可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率、並びに熱容量が本発明の条件を満たすものであれば特に制限はないが、一般的に、プラスチックスは、可視光帯域や常温熱放射における波長域の透過率が大きく、吸収率の小さい物質であるから、被膜を形成させる物質としてプラスチックスが好適と考えられる。
本発明の被膜の材料としては、可視光線透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域すなわち5〜50μmの範囲における吸収率の小さいプラスチックスを用いるのが好ましい。
したがって、被膜の材料としては、可視光線透過率が大きく、日射熱吸収率および常温熱放射の波長域である5〜50μmの範囲で小さい吸収を示すプラスチックス、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α‐オレフィン共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、アクリル酸・塩化ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、ナイロン66、エポキシ樹脂、ブタジエン・スチレン樹脂、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、MBS樹脂、ポリブタジエン、ポリエーテルスルホンなどの各種物質やこれらの混合物を用いるのが好ましい。
また、被膜の厚さを薄くするとランバート・ベールの法則により可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなるので、被膜の厚さを薄くすると各波長域において透明になる各種酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、ムライト、スピネル、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化ランタンなどのセラミックスも、被膜の形成材料として用いることができる。
さらに、金属なども薄くコーティングすると可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなり、各波長域において透明になるので被膜の形成材料として用いることができる。そのような金属としては、例えば、金、銀、銅、スズ、鉄、亜鉛、プラチナ、ニッケル、マンガン、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、インジウム及びそれらの合金などが挙げられる。
これらのうち、より好ましいものとしては、スチレン樹脂(ポリスチレン)、アクリル樹脂(ポリアクリル酸)、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチルブチルなどのアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、等を挙げることができる。より好ましいものとしては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体等のアクリル・スチレン系樹脂等を挙げることができる。特に好ましいものとしては、アクリル・スチレン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂を挙げることができる。
このような被膜材料を用いて所定の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率、熱容量を有する被膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、上記被膜材料を溶剤により希釈して一定濃度の溶液を作成し、所望の被膜を得ることができる。
ここで用いられる好ましい溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、シンナー等が挙げられる。これらの溶剤を用いて所定の被膜を得るためには、濃度0.01〜10%程度とするのが好ましい。
また、所望の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率を得るために、上記被膜材料に着色剤、赤外線吸収剤などを適宜添加して調整することもできる。添加量は特に限定されるものではなく、公知の技術にしたがって、添加剤の種類や性質に応じて所望の被膜が得られる量を経験的に求めることができる。
(c)被膜の厚さ
ランバート・ベールの法則によると、放射する(すなわち光を吸収する)材料の厚さを大きくすると、吸収量が増加するし、小さくすると吸収量は減少する。したがって、その厚さを薄くすれば薄くするほど吸収率は小さくなり透過率は大きくなる。つまり、物質を薄く形成して近赤外線帯域や常温熱放射における波長域の透過率を大きくして吸収率が小さくなるように被覆すると被膜の可視光線の透過率も大きくなる。
したがって、本発明による被膜の形成は、可視光線透過率を大きく、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率を小さくさせるために、その厚さを薄くすることが好ましい。それにより、吸収を減らし、可視光線透過率を大きくし、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率を小さくし、且つ被膜の熱容量も小さくすることができる。光学用フィルムの片面または両面に被膜を形成しても、厚さが薄ければ、光学用フィルムの可視光線帯域の透過率の低減はほとんどなく、該光学用フィルム本来の透明度や透過性を損なうことはない。そして、その薄い被膜面に冷却流体を接触させ、光学用フィルムからの放熱を促進させることによって、該光学用フィルム本来の透明度や透過性を損なわずに、高い放熱性を備えた光学用複合フィルムが得られる。
よって、本発明の被膜の厚さは、特に制限はないものの、好ましくは0.01〜70μm、より好ましくは0.01〜50μmとするのがよい。被膜の厚さが厚すぎると放射熱吸収率が大きくなり可視光線の透過率が低下する傾向にあり、薄すぎると被膜自体の強度が低下しすぎる場合がある。
(3)光学用複合フィルム
本発明の光学用複合フィルムの種類には特に制限はなく、偏光フィルム、位相差フィルムや液晶フィルムなどの光学用フィルムとして用いることができる。
本発明の光学用複合フィルムの構造を、添付図面に従ってさらに詳細に説明する。図1は、本発明の光学用複合フィルムの構造の一例を示す断面図であって、フィルム基体1の片面に、可視光線透過率が該フィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともにフィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量がフィルム基体のそれより小さい被膜2が形成されている。
そして、その被膜表面に冷却流体Aを接触させながら、放射熱を吸収して高温となった光学用フィルムからの放熱を促進させ、光学用フィルムの温度を効果的に下げることができる。なお、図1はフィルム基体の片面のみに被膜を形成した例であるが、本発明においては、被膜はフィルム基体の少なくとも片面に形成されておればよく、よって被膜はフィルム基体の片面のみに形成させることも、また両面に形成させることもできる。
光学用フィルム基体の片面のみに被膜を形成する場合は、被膜表面を光線の入射側、出射側のどちらに配置しても良いが、液晶プロジェクター、液晶ディスプレイなどに用いる場合には、支持基板に密着させる反対側に被膜を形成させる必要がある。つまり、被膜の温度を低下させることによって光学用フィルム基体の温度を下げるので、冷却流体を被膜に接触させる必要がある。そして、冷却流体を送る位置は、冷却流体を被膜に接触させれば良いので、被膜側、光学用複合フィルムの下あるいは上など、どの位置からでも良い。
また、光学用フィルム基体に形成させた被膜の配置は、光源側あるいは光源と反対側のどちらでも良い。
本発明における光学用複合フィルムの形状には、特に制限はなく方形状、円形状、筒状、半球状、球状など任意の形状に形成できるし、また、波形表面、凸凹表面、突起状表面などの表面形状に加工された光学用フィルムでもよい。
本発明における光学用複合フィルムを製造するには、被膜材料としてプラスチックスを用いる場合は、上述したように、プラスチックスを適当な溶剤に溶かして慣用されている方法により塗布し、乾燥、固化させる方法や、あらかじめフィルム状又はシート状に形成した被膜材料を熱融着や接着、粘着などによりフィルム基体へ貼着する方法など、他の材料に積層するのに慣用されている方法の中から任意に選択してフィルム基体に被覆することができる。また、所定の材料を分散、溶解などのこれまで慣用されている方法により処理した後、上記と同様の方法を用いて被覆することもできる。
セラミックスや金属などからなる被膜をフィルム基体に薄く形成させる場合には、スパッタリング、真空蒸着、メッキ、PVD、CVDなどの方法を用いることもできる。また、AR層やハードコート層を設けた場合にはその表面に被膜を形成させる必要がある。そして、従来からある光学用フィルム基体に後から被覆することもでき、被覆を形成した光学用複合フィルムを用いて、液晶パネルや液晶ディスプレイおよび映像機器などのディスプレイなどを作ることもできる。
図1には、光学用フィルム基体が単体の場合の例を示したが、本発明においては、光学用フィルム基体自体を2層以上の複合体に構成することもできる。この場合においては、空気層に接している層(最外層)の可視光線透過率が光学用フィルム基体のそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共に光学用フィルム基体のそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量が光学用フィルム基体のそれより小さく(好ましくは光学用フィルム基体の10%以下)なるように、被膜を形成するのが望ましい。
このようにして、放射熱を吸収して温度が高くなった光学用フィルムからの放熱を促進し光学用フィルムの温度を下げることで、光学用フィルムに密着させた液晶などの劣化を防止させたり、光線のユラギを防止して鮮明な画像を得たりすることができる高放熱性の光学用複合フィルムができる。
2.光学用複合フィルムの放熱方法
本発明の光学用複合フィルムの放熱方法は、フィルム基体の少なくとも片面に、上述したように、可視光線透過率が該フィルム基体のそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともにフィルム基体のそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量がフィルム基体のそれより小さい(好ましくはフィルム基体に対して10%以下)被膜を形成し、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする。
用いる冷却流体は特に制限されないが、好ましくは空気又は水、より好ましくは空気である。冷却手段としては、従来公知の各種手段から適宜選択することができ、例えばファンを用いて空気を光学用複合フィルム表面に送風する方法、コンプレッサーを用いて空気を送風する方法等が挙げられる。その場合、少なくとも前記被膜表面に冷却流体を接触させるようにする。それによって、本発明の効果を有効に発揮させることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−スチレン共重合体を酢酸エチルにより希釈して同じ濃度の溶液を作成した。そして、着色剤(日本化薬社製、商品名「KAYASET BLACK A−N」)と赤外線吸収剤(日本化薬社製、商品名「IRG・820B」)を適量混合して、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる溶液を調整した。
この溶液を流し塗りの方法を用いて、縦33mm×横30mm×厚さ0.2mmの同一の青色の偏光フィルム(株式会社ポラテクノ製、商品名「SHC」;厚み0.2mm)上に、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる被膜を形成した。このときの常温熱放射の波長域における吸収率の値は、前記に示した理論値を用いた。また、このときの被膜の熱容量の光学用フィルム基体の熱容量に対する割合{X2(被膜の熱容量)/X1(光学用フィルム基体の熱容量)×100(%)}は、試料1では0.01%であり、この被膜の厚みは0.13μmであった。試料2〜5では、被膜の熱容量の光学用フィルム基体の熱容量に対する割合はいずれも0.70%であり、これらの被膜の厚みはいずれも5.1μmであった。
次に、厚さ5mmの発泡スチロール板に縦30mm、横27mmの穴を2ヶ所開け、その開口部に、水晶ガラス板に被膜面と反対側を粘着剤で密着させた、片面に被覆した青色の偏光フィルム及び被覆していない青色の偏光フィルムを、被膜面が光源側になるように配置して取り付けた。
被覆した青色の偏光フィルム及び被覆していない青色の偏光フィルムを取り付けた発泡スチロール製の板を垂直に立てて、20℃に設定された室内に置き、100W−赤外線ランプを発泡スチロール製の板から50cm離れた位置に、偏光フィルムと同じ高さにして平行に配置した。そして、被覆した青色の偏光フィルム及び被覆していない青色の偏光フィルムに均等に光線が照射されるように位置を調整した。次に、ファンを用いて被膜表面に冷却流体(空気)が接するように送風させながら、100W−赤外線ランプを照射して水晶ガラス面(以下、単に「ガラス」という場合がある。)の温度が平衡になるまで加熱して、そのときの水晶ガラス面の表面温度を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2005262554
赤外線ランプにより加熱したときの水晶ガラスの平衡温度は、日射熱吸収率が0.09〜10.1%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.47〜16.9%のときにガラスより0.7〜2.6℃低くなり、赤外線ランプにより加熱されて高温となった光学用フィルム表面からの放熱が増加したことが分かる。そして、被膜を形成した青色の偏光フィルムの可視光線透過率が67.3%以上あり、青色の偏光フィルム本来の透明度をほとんど低減させないことが分かる。
実施例1の試料1および2で用いた溶液を実施例1と同じ流し塗りの方法を用いて縦33mm、横30mm、厚さ0.2mmの同一の青色の偏光フィルムの上に厚みを変えて、被膜の熱容量が異なるように塗布した。
青色の偏光フィルムに対する被膜の熱容量の割合を、{X2(被膜の熱容量)/X1(偏光フィルムの熱容量)×100(%)}として求めた。各試料の被膜の厚みと熱容量は、以下の通りである。
試料1:被膜の厚み0.02μm/熱容量の割合0.01%
試料2:被膜の厚み0.13μm/熱容量の割合0.65%
試料3:被膜の厚み1.98μm/熱容量の割合0.99%
試料4:被膜の厚み5.87μm/熱容量の割合2.93%
試料5:被膜の厚み13.7μm/熱容量の割合6.85%
試料6:被膜の厚み19.3μm/熱容量の割合9.65%
試料7:被膜の厚み20.9μm/熱容量の割合10.45%
実施例1で用いた厚さ5mmの発泡スチロール板に、実施例1と同様の方法で青色の偏光フィルムを取り付け、ファンで送風しながら、100W−赤外線ランプを照射して水晶ガラスの温度が平衡になったときの温度を測定した。被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用い、熱容量は前記の方法で測定した。この結果を表2に示す。
Figure 2005262554
赤外線ランプにより加熱したときの青色の偏光フィルムを貼付した水晶ガラスの平衡温度は、青色の偏光フィルムに形成した被膜の熱容量が、青色の偏光フィルムに対して10%以下のときに、青色の偏光フィルムだけ(被膜なし)のときより0.2〜2.6℃低くなり、被膜の熱容量が小さいほど放熱効果が大きいことが分かる。
実施例1の試料1で用いた溶液を、実施例1と同じ流し塗りの方法を用いて縦33mm、横30mm、厚さ0.2mmの赤色の偏光フィルム及び縦33mm、横30mm、厚さ0.2mm緑色の偏光フィルムの上に塗布した。次に、それを水晶ガラスに粘着材を用いて貼付した。
実施例1で用いた厚さ5mmの発泡スチロール板に、実施例1と同様の方法でガラスを取り付け、ファンで送風させながら、100W−赤外線ランプを照射して偏光フィルムを貼付した水晶ガラスの温度が平衡になったときの温度を測定した。被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用い、熱容量は前記の方法で測定した。この結果を表3に示す。
Figure 2005262554
日射熱吸収率0.09%、常温熱放射の波長域における吸収率0.48%、可視光線透過率99.8%でX2(被膜の熱容量)/X1(フィルムの熱容量)が0.01%の被膜を形成した赤色の偏光フィルムおよび緑色の偏光フィルムを貼付した水晶ガラス板を赤外線ランプにより加熱したときの平衡温度は、被膜を形成しない赤色の偏光フィルムおよび緑色の偏光フィルムを貼付した水晶ガラスに対して1.1〜1.9℃低くなり、放熱効果が向上したことが分かる。
実施例1の試料2で作成したメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−スチレン共重合体を酢酸エチルにより希釈した溶液を、縦33mm、横30mm、厚さ0.7mmの水晶ガラス板の上に実施例1と同じ流し塗りの方法を用いて被膜を形成した水晶ガラス板と被膜を形成していない水晶ガラス板を各々1枚用意した。
そして、実施例1の試料1と同じ方法で被膜を形成した青色の偏光フィルムを2枚用意して、上記で作成した被膜を形成した水晶ガラス板と被膜を形成していない水晶ガラス板の被膜を形成した面と反対側に粘着剤を用いて貼付した。
青色の偏光フィルム及び水晶ガラスに対する被膜の熱容量の割合を、{X2(被膜の熱容量)/X1(偏光フィルム又はガラスの熱容量)×100〈%〉}として求めた。各試料の被膜の厚みと熱容量は、以下の通りである。
試料1:被膜の厚み0.12μm/水晶ガラスの熱容量の割合0.01%
試料2:被膜の厚み0.02μm/青色の偏光フィルムの熱容量の割合0.01%
実施例1で用いた厚さ5mmの発泡スチロール板に、実施例1と同様の方法で水晶ガラスを取り付け、ファンで送風させながら、100W−赤外線ランプを照射して青色の偏光フィルムを貼付した水晶ガラスの温度が平衡になったときの温度を測定した。被膜及び被膜を形成した偏光フィルム又は水晶ガラスの可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、実施例1と同じく理論値を用い、熱容量は前記の方法で測定した。この結果を表4に示す。また、水晶ガラスの平衡温度の測定結果を表5に示す。
Figure 2005262554
注1;ガラスに貼り付けた熱電対を同じ大きさのアルミ箔で覆い赤外線ランプの直射による影響を排除した。
注2;1−1及び2−1は、青色の偏光フィルムに被膜を形成したときの被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率である。
注3;1−2は、水晶ガラスに被膜を形成したときの被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率である。
注4;2−2は、水晶ガラスだけの被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率である。
注5;3は、青色の偏光フィルムだけの被膜の日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率、被膜の可視光線透過率である。
Figure 2005262554
同じ被膜を形成した青色の偏光フィルムを用いた場合、赤外線ランプにより加熱したときの水晶ガラスの平衡温度は、被膜を形成した水晶ガラスに貼付すると被膜を形成していない水晶ガラスに貼付したものに対し2.5℃低くなった。支持体としての水晶ガラス表面および光学用フィルム表面からの放熱が増加して放熱効果が大きくなることが分かる。そして、被膜を形成した青色の偏光フィルムを、被膜を形成した水晶ガラスに貼付しても可視光線透過率が64.5%以上あり、青色の偏光フィルムを水晶ガラスに貼付して用いる場合、本来の透明度をほとんど低減させないことが分かる。
本発明によれば、光学機器や映像機器などに用いられる光学用フィルムの両面または片面に、可視光線透過率が大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が小さい被膜を、その被膜の熱容量が該フィルム基体に対して小さくなるように形成させて、その形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムから放熱を促進させることにより、光学用フィルム本来の可視光線の透明度を損なわずに、該フィルムの温度上昇を格段に効率よく防止し、液晶ディスプレイやプロジェクター用の液晶パネルなど用いられている偏光フィルム、位相差フィルム、液晶フィルムなどの光学用フィルムの劣化を防止させたり、光線のユラギを防止して鮮明な画像を得たりすることができる。
本発明の光学用複合フィルムの一例の構造を示す断面図である。
符号の説明
1・・・光学用フィルム基体
2・・・被膜
A・・・冷却流体

Claims (9)

  1. フィルム基体と該基体の少なくとも片面に形成された被膜とからなる複合フィルムであって、前記被膜の可視光線透過率が前記フィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記フィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量が前記フィルム基体のそれより小さいことを特徴とする、カラー液晶ディスプレイ用の高放熱性光学用複合フィルム。
  2. 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の高放熱性光学用複合フィルム。
  3. 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.09%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.48%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の高放熱性光学用複合フィルム。
  4. 前記フィルム基体の厚みが10〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高放熱性光学用複合フィルム。
  5. 前記被膜の厚みが0.01〜70μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高放熱性光学用複合フィルム。
  6. カラー液晶ディスプレイ用の光学用複合フィルムの放熱方法であって、フィルム基体と、該基体の少なくとも片面に形成された被膜であって可視光線透過率が前記フィルム基体のそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記フィルム基体のそれより小さく、且つ熱容量が前記フィルム基体のそれより小さい被膜とからなる複合フィルムの、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする、光学用複合フィルムの放熱方法。
  7. 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項6記載の放熱方法。
  8. 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.09%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.48%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量がフィルム基体の熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項6記載の放熱方法。
  9. 冷却流体が空気又は水であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の放熱方法。


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