先述の図34に従来から多くある熱間圧延ライン(熱間圧延機列)100の設備列の一例を示した。本発明を適用すべき熱間圧延ライン(熱間圧延機列)は必ずしもこれに限るものではないが、便宜上、これを例として以下に本発明に至る経緯について説明する。
((1)の条件:面荒れスケール疵の発生の抑制による製品の高品質化)
図39に、このような熱間圧延ライン(熱間圧延機列)100にて圧延した際に被圧延材8の表面に発生した面荒れスケール疵8Aの表面品質不良の様子を示したが、図1(a)は、面荒れスケール疵が発生した直後に熱間仕上圧延機列18のうちのある圧延機から抜き出したロール19の様子である。図1(b)には、図39と同じものを示している。ロール19の表面には直前に圧延した被圧延材の幅に一致する範囲にスケール19Sが濃く付着しているが、面荒れスケール疵の発生した被圧延材表面上の幅方向部分に符号するロール19の表面上の部分19Aでスケールが剥離している様子がわかる。
面荒れスケール疵は、帯鋼の熱間圧延の場合、対象被圧延材が薄物と呼ばれる製品厚2mm未満の薄い品種の場合や、中炭素鋼や高張力鋼等、硬質なため圧延荷重が高くなる材質の場合、また、被圧延材の温度が一定以上に高い場合によく発生し、また、その原因となるロール19の表層からのスケールの剥離は、熱間仕上圧延機列18のうちの前方の圧延機(特にF2,F3)によく発生することが従来から経験的に知られていたものの、ロール19の表層からのスケールの剥離が起こる条件や、それが、面荒れスケール疵となるメカニズムについては必ずしも明確になっていなかった。
発明者らは、この面荒れスケール疵の発生メカニズムを明確にするため、被圧延材を数本圧延する毎に、ロール19の表層のスケールの厚み、表面粗度を調査した。対象材は、1〜15本目は製品厚2〜5mm、製品幅800〜1500mmの低炭素鋼、16本目以降は製品厚1.2mm、製品幅1200mmの低炭素鋼とした。圧延条件を表1に、調査結果を表2と図2に示す。
ちなみに図2は熱間仕上圧延機列18のうちの前方から数えて2番目の圧延機であるF2のロールの圧延本数とスケール(黒皮と呼ばれるマグネタイト(Fe3 O4 ))の厚み、表面粗度を調査した結果である。データは、JISB0601−2001、JISB0651−2001に準拠し、触針式表面粗さ測定器をロール表面に当てて、ロールの軸方向に移動させ、粗さ曲線用の基準長さlr(λc)を0.8mm、うねり曲線用の基準長さlw(λf)を8mm、断面曲線用の基準長さlpすなわち評価長さlnを40mmとして測定した値である。ちなみにロールの胴長方向中央部で測定した。図2に示すように、圧延本数が多くなるほどスケールの厚みが増すことが分かった。また、表面粗度は、一旦小さくなった後に大きくなることが分かった。この調査においては、圧延本数50本目において、ロール19の表面には、図1(a)に示したのと同様なスケールの剥離が観察された。
発明者らは、同様の調査を、後述のように粗圧延機列12、熱間仕上圧延機列18のうちの各圧延機(スタンド)のロール13、19(以下、代表して19と記載)について実施し、また、ステンレス鋼等他の品種の被圧延材についても実施した。その結果、ロール19からスケールの剥離が発生する条件及び面荒れスケール疵の発生するメカニズムを解明した。その概略を図3に示す。
図3(a)に示すように、圧延機入側のデスケーリング装置16により、一旦、スケール8Sを除去された被圧延材8の表面には、図3(b)に示すように、ロール19に実際に圧延されるまでの間にスケールが成長する。図3(c)に示すように、この被圧延材8を圧延することによりロール19の表面にはスケール19Sが付着、成長する。何本もの被圧延材を圧延していくうちに、図3(d)に示すように、ロール19の表層のスケール19Sの厚み、表面粗度とも増していくことは先にも述べた。圧延中のロール19と被圧延材8との間には図3(e)に示すように、せん断力が作用していることから、これによりロール19の表層のスケール19Sが剥離すると考えられる。ここで、スケールが剥離したロールの凹んだ部分19Aで被圧延材8の圧延を継続すると、ロール19が回転して同部分19Aで被圧延材8を圧延する毎に、被圧延材表面に一様に生じていたスケール8Sが、ロール19の凹んだ部分19Aで圧延された被圧延材8の箇所でだけ破壊されて被圧延材8の表面上、長さ方向に周期的に凝集する形で付着し、次の圧延機での圧延により被圧延材8中に押し込まれて噛み込み、面荒れスケール疵8Aとなる。
ロールの凹んだ部分19Aで被圧延材8を圧延する毎に被圧延材8の表面に一様に生じていたスケール8Sが破壊されて被圧延材8の表面上、長さ方向に周期的に凝集するのは、図3(e)の拡大した図に示すように、スケールが剥離したロールの部分の方が、そうでない部分よりも強いせん断力を被圧延材に与えるから、と推定される。
このメカニズムに基づき、発明者らは、下記に示す面荒れ指標を考案した。
φ=φ0・K2/D・Σ(K1・L・P/W) …(5)
φ:面荒れ指数
ここで、
φ0:比例定数 (m/kN)
K1:品種により決まる定数
K2:圧延機により決まる定数
L:当該圧延機における、ある被圧延材の圧延長さ (m)
P:当該圧延機における、そのある被圧延材の圧延荷重 (kN)
W:当該圧延機における、そのある被圧延材の幅 (m)
D:当該圧延機におけるロールの直径 (m)
Σ:被圧延材毎の和
をそれぞれ表すものとする。
すなわち、ある圧延機をとった場合、該圧延機での被圧延材8の圧延長さLを被圧延材毎に和をとった累積の圧延長さが長いほど、ロールの直径Dが小さいほど、ロールと被圧延材の接触する回数が大きくなり、ロールのスケールが厚くなるため、この一部の剥離とともに面荒れスケール疵が発生しやすい。P/Wは単位幅当たりの圧延荷重を示しており、これが大きくなるほど、スケールにかかるせん断力が大きく、面荒れスケール疵が発生しやすい。
K2は、圧延機により決まる定数であり、図34に示す設備列における粗圧延機列12中の各圧延機、熱間仕上圧延機列18中の各圧延機それぞれに対して、表3の様に決めた。
粗圧延機(R1,2,3)においてK2=0となっているのは、粗圧延機においては、デスケーリング装置16からロール19と被圧延材8の接触する場所(ロールバイト)までの距離が約1〜3mであり、熱間仕上圧延機列18のうちの第1スタンドF1の場合の5m内外と比べて短い上に、搬送速度が100mpm以上と、熱間仕上圧延機列の場合の最大60mpm内外と比べて速いこともあって、被圧延材表面のスケールの厚みが比較的薄いことに加え、一旦、ロールからスケールが剥離し、スケールが剥離したロール部分の凹みにより圧延することで被圧延材表面のスケールを破壊したとしても、次の圧延パスの入側では再度別のデスケーリング装置16により、スケールが除去されるため、次の圧延機で押し込まれることがなく、面荒れスケール疵が発生しないからと考えられる。
熱間仕上圧延機列18のうちの各圧延機(F1〜F7)におけるK2の値は、表1、図4に示す低炭素鋼の薄物を対象とした実験結果より求めた。図4は熱間仕上圧延機列18のうちの各圧延機(F1〜F7)それぞれのスケールの厚みの実績と、各被圧延材の圧延条件をもとに計算した面荒れ指数を表す直線と、を併せて示したものである。F2に較べF1は、同じ圧延本数でのスケールの厚みが約1/10と小さいことが分かる。これは、デスケーリング装置16からの距離が、5m内外とF2の10m内外と比べて短く、被圧延材表面のスケールの厚みが比較的薄いためである。また、熱間仕上圧延機F5、F6、F7に関しては、殆どスケールが付着しなかった。これは、従来から知られているように、ロールの周速が速いため、ロールが摩耗し、スケールが成長しないからである。
F3については、スケールの厚みはF2の80%であった。F4はF2の5%であった。ロールの摩耗がF2に比べ大きいことの影響があると考えられる。
各圧延機のK2は、面荒れ指数式中のK2以外の指標が同じ場合の各圧延機の面荒れのしやすさを表す係数であり、F2におけるK2=1として求めた。たとえば、F1におけるK2は、スケールの厚みの比1/10に圧延荷重比26186/28635、圧延機出側での被圧延材長さの比243/131を乗じて0.2と求めた。F3におけるK2は、スケールの厚みの比0.8に圧延荷重比26186/23972、圧延機出側での被圧延材長さの比243/441を乗じて0.5と求めた。
F4におけるK2は、スケールの厚みの比1/20に圧延荷重比26186/18245、圧延機出側での被圧延材長さの比243/722を乗じて0.02と求めた。F5、F6、F7におけるK2は、ロールに殆どスケールが付着しないことから0とした。
K1は、被圧延材の品種により決まる定数であり、図5に示す実験結果より、回帰直線の傾きが、ステンレス鋼以外の品種と比べ、ステンレス鋼の場合、0.1倍であったことから、表4に示すように決定した。
ここで、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼の区別はC%(質量%)によったが、その他の成分は、低炭素鋼、中炭素鋼の場合はJIS G 3131に、高炭素鋼の場合はJIS G 3311に従うものとした。ステンレス鋼の場合はJIS G 4304に従うものとした。
図5は、圧延条件が同じ製品厚3.0mmの被圧延材であって、異なる品種の被圧延材を圧延し、F2のロールのスケールの厚みを比較したものである。低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼に較べ、ステンレス鋼はスケールの厚みが1/10であった。ステンレス鋼は、Crを多く含有しており、被圧延材表面にスケールが生成しにくく、面荒れスケール疵が発生しにくいことを示している。
一方、φ0であるが、これは、適宜な比例定数でよい。
ただ、このφ0は、分かり易さのため、基準条件のときに、ちょうどφ=1となるような、規格化定数のように扱うのも好ましい。例えば、仮にであるが、厚さ260mm、長さ8.12mのスラブを、50本連続して、表5に示すような、熱間仕上圧延機列18のうちの各圧延機での出側板厚と出側長さとに圧延する場合(F7出側板厚1.2mmの場合。因みに幅は表示していないが1200mm)のF2(圧延荷重は表示していないが26186kN)を基準条件とすれば、φ0=3.0215E−09となる。
(3.0215E−09×1/0.8×50×1×242.7×26186/1.2=1)
そうすれば、φ=1以上となったときに、面荒れスケール疵発生の危険性がある、と判定し、φ<1であれば、面荒れスケール疵発生の危険性がない、と判定すればよいから、面荒れ指数φ=1を境に、その上下で面荒れスケール疵発生の危険性の有無を容易に判定できて、好都合である。もっとも、被圧延材1本1本の圧延毎に、面荒れ指数φの値は増加していくわけであるから、面荒れスケール疵発生の危険性の有無だけでなく、現在、ワークロールの面荒れの程度がどのくらいか、が被圧延材1本1本の圧延毎に推定できる。
本発明での、面荒れスケール疵発生の危険性の有無の判定の仕方や、ワークロールの面荒れの程度の推定の仕方は、上記のように面荒れ指数φ=1を境に、その上下で行なう場合に限られるものではなく、とにかく、比例定数φ0としてどのような値を適用するとしても、面荒れ指数φが、ある値を境に、その上下で面荒れスケール疵発生の危険性の有無を判定したり、ワークロールの面荒れの程度を推定できるものであればよい。
図6は、本発明の対象となる熱間圧延ライン(熱間圧延機列)の設備列の1実施例である。ここでは熱間圧延ライン(熱間圧延機列)200としよう。図34に示す従来の設備列に加え、熱間仕上圧延機列18のうちの圧延機F2、F3にもオンラインロールグラインダ28を設置している。
図7は、オンラインロールグラインダ28の構造の1実施例を示す図である。研削ユニット30が、上下ロール19それぞれに対して、各1台設置されている。各研削ユニット30は、砥石36、押付装置38、回転装置40、オシレートモータ56、車輪58、ピニオン66等より構成されている。回転装置40により、砥石36を回転させた状態で、押付装置38により、砥石36をロール19に押し付け、ロール19の研削を実施する。研削ユニット30は、オシレートモータ56でピニオン66を回転させ、傾動フレーム60に設置されたラック68と噛み合わせることで、レール70に沿って、車輪58と共に被圧延材8の幅方向に移動する。また、傾動フレーム60は、ベースフレーム62に設置された傾動支点ピン64のまわりを回転自由に構成されている。ベースフレーム62には、傾動ジャッキ72、スタビライザシリンダ74が設置され、傾動フレーム60のベースフレーム62に対する回転位置を決定する。これにより、ロール19の直径の変化に合わせ、砥石36の中心をロール19の中心に向けることができる。ロール19は、被圧延材8の搬送方向に回転しており、砥石36は、ロール19との接触面において、ロールと反対の方向に回転している。
こうした構造によるオンラインロールグラインダ28を、プロセスコンピュータ92からの指令により、傾動、回転、押付、オシレートすることでロール19の表面の全範囲を研削する。
ロールの半径あたり、深さ0.5μm以上研削すれば、十分に面荒れスケール疵の発生を抑制できる。
図8は、オンラインロールグラインダ28によるロール19の研削を、表1に条件を示した薄物の低炭素鋼を含む250本の連続した被圧延材の圧延に適用した結果である。横軸に圧延本数、縦軸にF2ロールのスケールの厚みと面荒れ指数を示している。F2,F3とも、40本に1回、オンラインロールグラインダ28による研削を実施した。圧延本数が増すにつれ、スケールの厚み、面荒れ指数とも増加するが、オンラインロールグラインダ28により研削することによって、スケールの厚み、面荒れ指数とも減少することがわかる。これを繰り返すことにより、250本以上、ロール19からのスケールの剥離も、面荒れスケール疵も発生しないという良好な結果が得られた。
熱間仕上圧延機のロールは、従来はスケールの剥離ではない疲労層(クラックのある層)の厚さがある一定以上に進展したと判定される毎に圧延機から抜き出して別の研磨済のロールと交換するものであったが、F2,F3でオンラインロールグラインダ28による研削を実施した結果、250本の被圧延材を圧延してもなおロールを研磨済のものと交換しないで済んだ。
250本という圧延本数は、被圧延材重量として約5000tonに相当し、オンラインロールグラインダ28による研削を実施していなかった従来、100本、約2000ton程度が限界だったのに比べると、十分大きい。F7出側での長さに換算して圧延長が1本の被圧延材あたり1730m(F2では243m)にもなる、薄物と呼ばれるF7出側での厚さが2mm未満の品種(表2の条件のものは1.2mm)で250本もの圧延が可能であったことも大きいが、薄物以外も含めた1本の被圧延材あたりのF7出側での長さは、実は平均して1000mを下回る。発明者らの検証したところでは、350本はロールを研磨済のものと交換しないで済んだ。それ以上(250×1730÷1000=425本)ロールを研磨済のものと交換しないで圧延を継続できる可能性もある。
しかし、オンラインロールグラインダ28の発揮する効果は本当はそれ以上であり、後述の疲労層研削を行えば、ロールは、実質的に研磨済のものと交換しなくても良くなる。これについて詳細は後述する。
粗圧延機(R1、R2、R3)、熱間仕上圧延機(F1、F4)については、オンラインロールグラインダ28を設置していないが、面荒れ指数は1未満となり、ロールのスケール剥離は発生しなかった。熱間仕上圧延機(F5、F6、F7)については、ロール表面の摩耗段差を解消して平坦化することを目的に、オンラインロールグラインダ28を設置し、使用した。
ここでは、40本に1回の研削の場合について示しているが、この研削パターンについては、面荒れ指数を1未満とすれば良く、研削タイミング(何本おき、または、圧延中常時研削)や、研削量(完全にロール表面のスケールを除去するか残すか)については、各種の条件次第で適宜調整可能なことは言うまでもない。
また、現在、熱間仕上圧延機列18のうちの後方の3スタンドに主に実用化されているオンラインロールグラインダ28では、ロール表層のスケールだけではなく、ロールの胴長両端域の未通板部については、ロール生地ごと研削する必要があり、ロールの単位時間あたりの研削体積(研削能)にして10〜20cc/分は発揮できる仕様とする必要があり、砥石36一個での単位時間あたりの研削体積が6〜8cc/分であることから、上下ロール19それぞれに対して、砥石36ひいては研削ユニット30を2個以上とする必要があった。
これに対し、本発明の評価方法からすると、F2、F3に設置するオンラインロールグラインダ28は、ロールの生地ごと研削、除去する必要まではなく、ロール表面のスケールだけを除去すれば面荒れスケール疵の発生を抑制できることが解明できたこともあり、単位時間あたりの研削体積は1〜3cc/分程度でよく、砥石、研削ユニットは、少なくとも面荒れスケール疵の発生を抑制する観点からは、上下ロール19それぞれに1個の砥石、研削ユニットとすることが可能である。
オンラインロールグラインダは、被圧延材8の先端がロールに噛み込む際と、尾端が尻抜けする際には、それら衝撃が伝わって破損してしまうのを防止するため、ロールから退避しておき、そのロールでの被圧延材8の圧延時間中にロールを研削するか(バー内研削という)、インターバル(先行被圧延材の尾端がその圧延機を抜けてから、次の被圧延材の先端がその圧延機に噛み込むまでの、圧延していない時間帯)中にロールを研削するか(バー間研削という)、どちらかにする。しかし、バー間研削するのに研削ユニットが1個しかないと、時間がかかりすぎ、生産能率が低下するため、極力バー内研削を指向した方が良い。被圧延材8の先端をロールが噛み込んでから、尾端が尻抜けするまでの時間は、熱間仕上圧延機列18のうちの各スタンドで最大数秒の違いはあるものの、平均的に、1本の被圧延材あたり60秒内外である。もっとも、製品厚が厚かったり、被圧延材そのものが短かったりすると、30秒内外と短い場合もあるし、製品厚が薄かったり、被圧延材そのものが長かったりすると120秒内外と長い場合もある。この間に、ロール全面を研削できることが好ましい。ロール全面を研削するのに与えられる時間が60秒とすると、3.14×ロール直径0.8m×ロール胴長2.2m×研削深さ0.5μm=2.76ccとなるから、大体上記1〜3cc/分の範囲に入り、妥当ということが計算上わかる。
もしも、被圧延材8の先端をロールが噛み込んでから尾端が尻抜けするまでの時間が30秒内外しかない、製品厚が厚かったり、被圧延材そのものが短かったりする被圧延材が何本も続く場合、最悪バー内研削できなくなる可能性があるが、そういう場合は稀であり、もし万一そういう場合に遭遇しても、インターバルを延ばしてバー間研削を行うことで、生産能率は多少落ちるが、操業を継続する方法はある。生産能率も落とさない方法としては、更に、巻末に述べる連続熱間圧延を併用する方法がある。
以上の例では、熱間仕上圧延機F2,F3に研削ユニットが上下ロールそれぞれに各1個のオンラインロールグラインダ28を設置する例を示したが、面荒れスケール疵の発生を抑制する目的上は、粗圧延機列12、熱間仕上圧延機列18のうちの別の圧延機にオンラインロールグラインダ28を設置しても良いし、上下ロールそれぞれに何個の研削ユニットを設置するかは圧延条件(プロダクトミックス上最も短い圧延時間、インターバルとして許容できる最長時間、研削すべき深さ等)から必要となる研削能により適宜決定して良いことは言うまでもない。特に、研削に要する時間をできるだけ短縮したい場合には、研削ユニットの数を増やすことは、これを妨げるものではない。
但し、2個以上の砥石、研削ユニットとする場合にも、本発明のような評価方法を用いれば、オンラインロールグラインダ28の設置数を最低限とすることができ、設備費を抑制することができるほか、本発明のような評価方法により砥石36の無用な損耗を抑制し、ランニングコストを最小にすることもできる。
以上述べたことから、次のことが言える。
第1の条件、すなわち面荒れスケール疵の発生の抑制による製品の高品質化の観点からは、表3の結果からもわかる通り、熱間仕上圧延機列18のうちの、
F2 > F3 > F1 > F4
の順に、面荒れスケール疵が発生しやすいから、オンラインロールグラインダ28の設置優先順も同じ順になる。
よって、従来からオンラインロールグラインダ28を備えてきた、熱間仕上圧延機の最終3スタンドに加え、
(1)1つ以上のスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることが好ましいと言え、そして、
(2)第2スタンドF2と第3スタンドF3に、オンラインロールグラインダを備えることが好ましく、また、
(3)第4スタンドF4でも面荒れスケール疵が発生する場合があることを考慮すると、第4スタンドF4も含めた(6スタンドから成る熱間仕上圧延機列の場合は、最終3スタンドに含まれるため、結果的に備えることになる)、第2スタンドF2以降の全てのスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることも好ましく、更に、
(4)第1スタンドF1でも面荒れスケール疵が発生する場合があることを考慮すると、第1スタンドF1も含めた、全てのスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることも好ましい。そして、次のようなことも言える。
(5)ロール表層のスケールさえ研削できればよいのか、あるいは、ロール生地ごと研削できる必要性があるのか、に応じて、研削ユニットの数は1個だけで良いのか、あるいは2個以上とする必要があるのか、等を考慮すると、オンラインロールグラインダの研削ユニットの数がスタンドによって異なるようにするのが好ましい。それは、上記(1)及至(4)いずれの場合にも共通して言えることである。
((2)−1の条件:ロールと被圧延材の先端との間のスリップの発生の抑制による、稼働率、生産能率のアップ)
ロールと被圧延材の先端との間でのスリップの発生は、熱間仕上圧延機列18の例でいえば、そのうちのどのスタンドでも起こり得る。ただし、そう頻度的に多発する性質のものではないため、稼働率に与える影響はそう大きくはなく、図42中にミスロールとして示した2.24%のうちの0.04%を占めるにすぎない。F1,F2,F3、F4の各スタンド別に直すと各0.01%になり、粗圧延機では、ロールと被圧延材の先端との間でのスリップは、殆ど起こらない。
それでも、ひとたびロールと被圧延材の先端との間でのスリップが発生すると、1hr以上程度の長時間にわたり、熱間圧延ライン(熱間圧延機列)の操業が停止してしまうため、スリップの発生を抑制することには意味がある。
この状況を改善するため、F1,F2,F3、F4のどれか1つのスタンド、あるいは2つ以上のスタンドに、オンラインロールグラインダ28を備えるようにし、ロール19の表面を研削して、ロールと被圧延材の先端との間でスリップが発生しにくくなるようにするのが好ましい。以下にその実施形態の例を説明する。
(第1実施形態)
図34に示すような熱間圧延ライン(熱間圧延機列)100を考えて、圧延サイクル中、仕上圧延機18の前段スタンドF1、F2、F3のうちの少なくとも一つ以上のスタンドのロール19の表層に、黒皮と呼ばれるマグネタイト(Fe3 O4 )が生成し、それがある程度以上の厚さになると、被圧延材8の先端とロール19の表面との間の摩擦係数が低下するからであろう、被圧延材8の先端とロール19の表面がスリップしやすくなる。摩擦係数を実際に測定することは難しい。このため、その他の条件から間接的に摩擦係数が低下したもの、と判定した場合に、被圧延材8の先端がロール19に噛み込み易くするため、次の被圧延材8を圧延する直前に、ロール19をオンラインロールグラインダ28で研削するようにする。これにより、被圧延材8の先端とロール19との間の摩擦係数を上げ、被圧延材8の先端がスリップしてロール19に噛み込まなくなるのを抑制する。
被圧延材8の先端とロール19との間の摩擦係数は、黒皮の生成状況、生成の程度に依存すると推定されるが、被圧延材8の先端とロール19との間の摩擦係数を上げるためには、図9に示すような、ロール19の表面の黒皮を完全に除去することがまず考えられ、この場合、ロール19の半径あたり0.5〜10μm研削することになる(下限0.5μmは(1)の条件から、上限10μmは図2から決まる)。
但し、実際上は、被圧延材8の先端とロール19との間のスリップの発生を抑制する、という目的を達成するには、1本前の被圧延材の圧延の際に供給した圧延油の燃焼枯渇のし残しによって、被圧延材8の先端がスリップしてロール19に噛み込まなくなるのを抑制するべく、燃焼枯渇し残した圧延油を掻き取るようなイメージで、ほんの少し撫でるように研削するだけでも効果があるため、ロール19の半径あたり0.5〜1.5μm研削するのが好ましい。
ここで、上記した圧延サイクルとは、オンラインロールグラインダ28の開発実用化以前から、研磨したてのロール19を熱間仕上圧延機列18の全スタンドに組み入れるロール交換をしてから、通常60乃至120本程度の被圧延材8を圧延したら、次の別の研磨したてのロール19を熱間仕上圧延機列18の全スタンドに組み入れるようにロール交換をして操業していたことと関連した概念であり、前出の図36にも示したように、研磨したてのロール19を熱間仕上圧延機列18の全スタンドに組み入れてから、次に別の研磨したてのロール19を熱間仕上圧延機列18の全スタンドに組み入れるまでの、言い換えると、ロール交換から次のロール交換までの間に圧延する、60〜120本程度の一群の被圧延材8を圧延順に並べた構成単位のことである。
摩擦係数を実際に測定することは難しい。しかし、発明者らの研究によれば、15本を超えて被圧延材8を断続的に圧延すると、熱間仕上圧延機列18の前段スタンドでは、黒皮の生成により、ロール19の表面と被圧延材8の先端の間の摩擦係数が低くなるからであろう、スリップする場合があることを確認している。
この15本という数字は、高炭素鋼の圧延サイクルにて検証した結果、見出したものであるため、より軟質な被圧延材を圧延する場合は、もっと大きな数字になると考えられるが、そのような場合も、適宜実験にて前記のようなスリップする臨界的な数字を見出すことによって、他の種類の被圧延材を圧延する場合にも本発明は適用できる。上記の場合は、研磨したてのロール19を熱間仕上圧延機列18の全スタンドに組み入れてから、16本目の被圧延材8の圧延の直前に、前段スタンドのロール19をオンラインロールグラインダ28で研削するようにする。
すなわち、本実施形態では、ロールの使用開始から、若しくは前回の研削から所定本数15本の被圧延材を圧延したことを以って、圧延する次の被圧延材の先端と上記ロール19の表面との間の摩擦係数が、スリップするおそれのある値に低下したと判定する。
ここで、ロール19の表面のスリップ抑制のための研削は、ロール19の表面のうち、被圧延材8の通板部のみ、もしくは被圧延材8の非通板部を含むロール19の全面、いずれを研削するようにしてもよい。あるいは、被圧延材8の通板部あるいは非通板部に跨る領域を研削する等の研削の仕方も考えられるが、とにかく確実に、ロール19の表面と被圧延材8の先端の間でのスリップを抑制できるのであれば、いかなる研削の仕方をしてもよい。
16本目の被圧延材8の圧延の直前でひとたび研削を実施すれば、次は、また、15本の被圧延材8を圧延した後、すなわち31本目の被圧延材の圧延の直前で研削を実施すればよく、以降、46本目の直前、61本目の直前、・・・という具合に、研削が行われる。
他の種類の被圧延材を圧延する場合には、予め実験して得られている、スリップする臨界的な数字がN本であった、とすると、(N+1)本目の被圧延材の圧延の直前、(2N+1)本目の直前、(3N+1)本目の直前、・・・という具合に、研削を行えばよい。
なお、上記の例では、熱間仕上圧延機列18の前段スタンド、すなわちF1からF3までについて、15本の被圧延材8を圧延する毎に研削を実施する場合を例に説明したが、本発明はこれに限るものではない。各社の実情に合わせ、例えば、F1だけにオンラインロールグラインダ28を設置した場合は、F1について、15本毎に研削を実施する等すればよいし、熱間仕上圧延機列18ではなく粗圧延機列12にオンラインロールグラインダ28を設置した、あるいは、熱間仕上圧延機列18の前段スタンドと粗圧延機列12の一部または全部のスタンドにもオンラインロールグラインダ28を設置した、等の場合も、所定本数の被圧延材8を圧延する毎に研削を実施するようにすればよい。
また、粗圧延機列と熱間仕上圧延機列あるいはさらに両者とも各スタンド毎に、被圧延材の温度が異なるため黒皮の生成の程度も異なるわけであり、前記した所定本数は、粗圧延機列と熱間仕上圧延機列あるいはさらに各スタンド毎に異なる値としても良い。
さらに、被圧延材1本の長さは各社まちまちであるから、15本に限らず、各社の実情に合わせ、適宜な本数圧延する毎に研削を実施するようにしてよい。すなわち、上記所定本数は、被圧延材の条件や圧延設備の条件等によって異なるものである。
次に、第2実施形態について説明する。
(第2実施形態)
上記第1実施形態と同様な構成とした場合に、今、ある特定の圧延機にとって、次に圧延すべき被圧延材8の材質が高炭素鋼の中でも特に硬質なものであると判定した場合には、被圧延材8を圧延する直前に、ロール19(粗圧延機のロールの場合は、ロール13。以下、代表してロール19と記載)をオンラインロールグラインダ28で研削することにより、ロール19の表面の黒皮を一部研削し、被圧延材8の先端とロール19の表面との間の摩擦係数を上げる。これによって、被圧延材8の先端がスリップしてロール19に噛み込まなくなるのを抑制する。
すなわち、15本の被圧延材8を圧延する毎に研削を実施することに代えて、又は併用して、材質が硬質である被圧延材8を圧延する直前に、ロール19をオンラインロールグラインダ28で研削するようにした点を除いて、第1実施形態と同様である。
材質が硬質である被圧延材8には、硬質であることを示す何らかの指標が、例えば、圧延命令組段階で、各被圧延材8に関連付けされたデータとして、後述の実施例中のビジネスコンピュータ94等の計算機内にて付与される。この硬質であることを示す何らかの指標は、一例として常温での引張強さの命令値とするのが簡単であるが、これに限るものではない。例えば、ブリネル、ロックウエル、ビッカース、ショア各種の硬さの指標、あるいはその他であってももちろんよい。高温状態での硬さと常温での引張強さ等は、値としては違うわけであるが、硬軟に相関があるため、実用上、これで十分である。
(第1、2実施形態を通じた実施例)
図10に示す熱間圧延ライン(熱間圧延機列)300に、本発明を適用した場合を例にして、以下、説明する。
ビジネスコンピュータ94を用いて、オペレータ操作により圧延サイクルを作成する。これが情報伝達ルートを通じてプロセスコンピュータ92に伝送される。プロセスコンピュータ92では、被圧延材8の材質、粗圧延機12、仕上圧延機18の各スタンド出側の被圧延材厚、被圧延材幅をはじめとする各種の膨大なデータを記憶、認識している。
これらデータに基いて、プロセスコンピュータ92から、制御装置50に向けて、どのスタンド(圧延機)のオンラインロールグラインダ28について、どの被圧延材8を圧延する直前に、ロール19のどの領域について研削を実施するか、についての情報が情報伝達ルートを通じて伝送される。
そして、本実施例では、15本の被圧延材を圧延すると、次に圧延する被圧延材の先端と上記ロール表面との間の摩擦係数が所定以下に低下した、すなわち、被圧延材の先端とロールの表面がスリップしやすいと判定すると共に、被圧延材の引張強さ(命令値)が550MPa以上の場合に、被圧延材の硬さと相関のある指標(引張強さ)が所定以上と判定するように、プロセスコンピュータ92に対しプログラムが組み込まれ、上記いずれかの判定を満足すると、次の被圧延材を圧延する前に、対象とする圧延機のロール19をオンラインロールグラインダ28で研削するように制御する。
図10に、熱間仕上圧延機列18の前段スタンドF1,F2,F3にオンラインロールグラインダ28を設置して研削した例を示す。
ここで、研削には、通常のF1インターバル40秒内外よりも長い時間を要するため、プロセスコンピュータ92からの指令により、図11に示すように、F1インターバルを70秒程度に延ばすように設定してある。
上記のように、オンラインロールグラインダ28で研削した結果、被圧延材8の先端とロール19の表面の間でスリップは発生しなかった。なお、図11及び次に述べる図12において、50本目以降については図示を省略してある。
ちなみに、このときの被圧延材8の仕上圧延後厚、被圧延材幅、被圧延材長さ、引張強さ(命令値)についての、被圧延材圧延本数順の構成を図12に示す。
図11において、49本目の直前にインターバルを長くしているのは、ここでも研削を実施しているのであるが、これは、49本目の被圧延材の引張強さ(命令値)が550MPaと、他の被圧延材に比して高かったためである。本実施例では、引張強さ(命令値)が550MPa以上の被圧延材を次に圧延する場合は、上述のように、被圧延材の硬さと相関のある指標(引張強さ)が所定以上の被圧延材であると判定して、その直前にF1,F2,F3のオンラインロールグラインダが研削を実施するようにプログラムしてある。
表6に、本実施例における被圧延材等についての情報を示す。
ここで、上記実施形態では、圧延した本数で摩擦係数がスリップが起こる程度にまで低下したかどうかを判定しているが、本発明はこれに限らない。例えば、特定の圧延機に着目した場合に、当該圧延機にとってのインターバル(先行する被圧延材8の尾端が尻抜けしてから、次の被圧延材8の先端が噛み込むまでの時間)が、予定される時間を超えた場合も、被圧延材8の先端とロール19の表面の間の摩擦係数が低下し、被圧延材8の先端とロール19の間でスリップが発生しやすいことが経験的にわかっている。従って、その圧延機にとってのインターバルが、予定される時間を超えた場合に、がスリップが起こる程度の摩擦係数まで低下したと判定して、次の被圧延材の圧延直前に、オンラインロールグラインダ28により、ロール19の表面を研削するようにしてもよい。
また、上述の説明では、全て自動で研削が行われるものとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。インターバルが所定時間を超えると予測されるため、オンラインロールグラインダ28によるロール研削時間が確保できるものと判断される場合に、人意判断により、被圧延材8が加熱炉10より抽出される前にオペレータの釦押下等によりオンラインロールグラインダ28への研削指示の予定入力を行えるような仕組、被圧延材8が加熱炉10より抽出された後にオペレータの釦押下等により被圧延材8の搬送を一旦停止させるとともに、オンラインロールグラインダ28へ研削指示の(突発)入力を行えるような仕組、等にしてもよいし、あるいはこれらの仕組を、自動で研削が行われる仕組と併設してもよい。所定時間は90秒とか120秒とか、定数として自動系あるいは人間系で認識しておけば良い。
更に、上述の説明では、熱間圧延操業開始時の熱間仕上圧延機列18のロール19が研磨したてのロールであった例を示したが、熱間圧延操業開始時の熱間仕上圧延機列18のロール19が別の圧延チャンスで使用された再使用ロールであっても、ビジネスコンピュータ94あるいはプロセスコンピュータ92からの指令またはオペレータの判断により研削タイミングを調整しても構わない。また、オンラインロールグラインダ28によるロール研削時間が確保できるようにするために、オペレータの判断により、インターバルを延ばすように調整する等してもよい。
また、上述の説明では、熱間仕上圧延機列18のうちの前段スタンド(F1,F2,F3)の全てのスタンドにオンラインロールグラインダ28を備えた場合を例に取って説明したが、その例に限らず、熱間仕上圧延機列18のうちの前段スタンド(F1,F2,F3)のうちのどれか1つのスタンドにオンラインロールグラインダ28を備えただけでも、スリップ発生の抑制の効果があることは間違いなく、また、前段スタンド以外の圧延機、例えば、粗圧延機列12のうちのどれか1つ以上のスタンドや、熱間仕上圧延機列18のうちの後段スタンドに備えられたオンラインロールグラインダ28であっても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、上述の説明では、引張強さの命令値により、被圧延材の硬さと相関のある指標が所定以上となったかどうかを判定して研削実施の有無を決定しているが、本発明はこれに限定されない。
実際のロール19の表面の状態をCCDカメラ等で観察した表面状態に基づき、所定以下の摩擦係数となっているか否かを判定して、研削実施の有無を決定することや、温度計による被圧延材8の先端部の実測温度にて、被圧延材の硬さと相関のある指標が所定以上となったか否かを判定することで、被圧延材8のロール19への噛み込み難さを自動判断し、研削実施の有無を決定するようにした方が、より高精度な被圧延材8の先端の噛み込み不良(スリップ)を回避できる手段であると考えられるため、そのようにしても勿論良い。
以上述べたことから、次のことが言える。
第2の条件、即ち、ロールと被圧延材の先端との間のスリップの発生の抑制による、稼働率、生産能率の向上の観点からは、従来からオンラインロールグラインダ28を備えてきた、熱間仕上圧延機の最終3スタンドに加え、
(1)1つ以上のスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることが好ましいと言え、そして、
(2)第2スタンドF2と第3スタンドF3に、オンラインロールグラインダを備えることも、
(3)第4スタンドF4も含めた(6スタンドから成る仕上圧延機の場合は、最終3スタンドに含まれるため、結果的に備えることになる)、第2スタンドF2以降の全てのスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることも、
(4)第1スタンドF1も含めた、全てのスタンドに、オンラインロールグラインダを備えることも好ましい。
そして、次のようなことも言える。ロール表層のスケールさえ研削できればよいのか、あるいは、ロール生地ごと研削できる必要性があるのか、と同様に発想して、スリップが発生するのを抑制するためには、どの程度の深さ研削すれば良いのか、を検証すれば、それにより、研削ユニットの数は1個だけで良いのか、あるいは2個以上とする必要があるのか、がわかるはずであることを考慮すると、
(5)オンラインロールグラインダの研削ユニットの数がスタンドによって異なるようにするのも好ましい。それは、上記(1)及至(4)いずれの場合にも共通して言えることである。
((2)−2の条件:ロールの交換頻度低減による、稼働率、生産能率の向上)
稼働率を上げるために、ロール交換を極力不要とするためには、目標とする研削深さに対する実績の研削深さのずれが小さいこと、即ち研削精度が高いことが要求される。そのためには、以降に述べるような施策を講ずるのが効果的である。
その施策とは、第1に、押付装置の移動量を実測する位置センサを設置すること、
第2に、押付装置の押付方向の機械抵抗を下記式の範囲内とすること、
第3に、押付装置が油圧シリンダの場合、油圧シリンダのシールを樹脂製とすると共に回転装置と砥石をつなぐ連結軸のスプラインをボールスプラインとすること、
第4に、第3の施策における油圧シリンダの油圧配管のヘッド側に油だまり、ロッド側にアキュムレータを設置すること、
第5に、第1及至第4の施策のうちのいずれか1つ以上の形態を用いて、ロールの胴長方向に複数設置されたオンラインロールグラインダを用いて、隣り合う研削ユニットのロール胴長方向研削範囲のラップ量を5〜10mmとすること、である。
第5の施策の場合は、研削ユニットが複数あることが前提であるが、第3、第4の施策の場合も、研削ユニットが複数ある場合、特に好適に適合する。
ここに、機械抵抗とは、押付装置38が油圧シリンダの場合は、油圧シリンダのロッド38Rとシール部54のパッキンとの摺動抵抗等を意味し、油圧モータやステッピングモータの場合は、ベーンとケーシングとの間の摩擦等や、モータ軸とケーシングの間のベアリングの摩擦等を意味し、いずれの場合も、スプライン44の摺動抵抗等も含み、とにかく機械的に抵抗になるものに該当する場合について用いる。
これらの施策により、圧延後の製品金属帯の厚みが幅方向に平坦でない不良の発生を抑制できるため、ロール交換の必要頻度が著しく低減でき、熱間圧延ライン(熱間圧延機列)の稼働率が上がる。以降にその理由を説明する。
(第1の施策)
図13は、研削前後のロール径を測定することによって評価した、従来のオンラインロールグラインダの設定した研削量と実績の研削量との差を比較して示した図である。設定と実績では、±30%程度も違う場合もあり、しかも、その違いは、ばらついている。発明者らの対象としている熱間圧延ライン(熱間圧延機列)300等にて、金属帯の製品板厚の精度を左右する最終F7スタンドでは、1本のロールに対する研削量(研削深さ)は最大で50μm程度としていることから、その場合、15μm(50μm×0.3)程度の研削量の誤差が発生しうることになる。2個の研削ユニットの研削量の差としては、設定に対する実績の誤差がそれぞれ±30%発生すると考えると、最大30μm(15μm×2)となるから、図14(a)、(b)に示す段差プロフィールは容易に発生し得ることが分かる。
図14(c)の2個の研削ユニットでの研削時におけるロール胴長方向中央部でのラップ量の誤差の発生原因について、図15に示す。研削ユニット2個にてロール胴長方向中央部を境に片側ずつを研削すると説明したが、ロール胴長方向中央部に未研削部が残らぬ様、図15の一番下の図(d)に示すように2個の研削ユニット30の研削範囲を、砥石とロール接触幅の約半分のラップ量L(20mm程度)だけラップさせている。
研削前、図15の一番上の図(a)に示すように、ロール胴長方向端(図では左端)にオンラインロールグラインダ28が寄った状態にあり、図示しない押付装置は後退した状態にある。
研削の開始時の状況を説明する。図15の上から2番目の図(b)に示すように、ロール19からある一定の距離Gだけ離してあった研削ユニット30のうちの片方は、図示しないオシレートモータ56(図7参照)によりロール19の胴長方向に移動しつつ、研削を開始すべきロール19の胴長方向位置から研削を開始できるよう、少し手前でプロセスコンピュータ92からの砥石前進指令により、押付装置によりロール19側に前進を開始する。
図15の一番上の図(a)に示すように、ロール胴長方向端にオンラインロールグラインダ28が寄った状態で、研削ユニット30のうちの片方が、押付装置によりロール19側に前進を開始し、ロール胴長方向端から研削を開始する場合もある。
ロールに接触したと制御装置90が認識する時点から研削が開始されるが、接触による荷重の起立をトリガーにすると、荷重センサの値はばらつくため、前進開始からのタイマ値とせざるを得ない。
前進開始から接触までの時間の実績がタイマ値からずれると、ロール胴長方向での研削位置がずれ、ある位置をとってみると研削深さが所望の値からずれることになる。オシレートが進み、ロール胴長方向中央部に近い後半を研削しようとする頃になると、図15の上から3番目の図(c)に示すように、もう片方の研削ユニット30がロール側に前進を開始する。前進開始から接触までの時間のずれ方は、もう一方の研削ユニット30と異なる場合が少なくない。すると、図14(a)に示したようなラップ部での段差Sが発生する。
図14(a)に示したようなラップ部の段差Sは、研削状態にある研削ユニット30に比べ、待機状態にある研削ユニット30の方が前進開始から接触までにより短い時間しか要しない場合に発生する。
一方、図14(b)に示したようなプロフィールは、何らかの理由により、研削状態にある研削ユニット30も待機状態にある研削ユニット30もロール側への前進開始から接触までの時間が所望の値よりも短くて過研削になる場合、図14(c)に示したようなプロフィールは、何らかの理由により、研削状態にある研削ユニット30も待機状態にある研削ユニット30もロール19側への前進開始から接触までの時間が所望の値よりも長くて研削不足になる場合を示している。このような場合、ロール胴長方向中央部には、2つの研削ユニットのラップ量Lに、所望の値からの誤差が発生しやすく、すると、それに起因して、ロール胴長方向中央部に凸状の段差Sが発生しやすい。
図14(a)では、厚みが幅中央部を境に11μm変化している。図14(b)では、幅端部に厚み減少部が見られる。図14(c)では、幅中央部に7μmの厚み減少部が見られる。こうした厚みの段差は、会社にもよるが、5μm内外以上となるとロースポット、ハイスポットと呼ばれる不良となり、切り捨てにより大きく歩留まりを低下させてしまう。図14は幅方向断面での板厚分布を示しているだけであるが、実際には長手方向にずっと被圧延材が延在するわけであるから、それら不良部全長を切り捨てざるを得ないからである。
このように、従来は、図14(a)、(b)、(c)のような段差が発生する場合があったが、押付装置の移動量を実測する位置センサを設置する(押付装置が油圧シリンダ38である場合は、図16中に示す位置センサ76)ことで、図14(a)のような段差は少なくとも抑制できる。
タイマ値によると、前進指令からロール19への接触に時間的なばらつきが出ることは避けられないが、この点、位置センサ76の出力が、押付装置が後退限にある状態での砥石36の研削面からロール19の表面までの機械的な距離(ロール19の直径を測定することで圧延機に組み込んだときの周辺機器との寸法的な取り合いから幾何学的にわかる)に達したなら、砥石36の前進を停止するようにすれば、研削深さに2個の研削ユニット30で差が出にくくなるからである。砥石36の研削面からロール19の表面までの機械的な距離は、複数あるうちの1つの研削ユニットの前進指令から荷重検出(ある荷重の閾値を超えたことを油圧の圧力センサPTの出力を以って検出する)までの位置センサ76の出力の変化から見た移動量を以って制御装置90で記憶しておき、他の研削ユニット30が前進指令を受けてから、その移動量だけ前進したときに砥石36がロール19に接触したものとする、という具合に運用することもできる。
加えて、位置センサ76を設置すれば、目標とするロール19のイニシャルクラウン(ロールを中心軸を通る仮想的な断面で切った場合を想定したときに、半径当り100μm乃至300μmの凹あるいは凸のカーブを、1500乃至2600mmのロール胴長に対し、サインカーブ状や円弧カーブ状等、曲線状に描くようにプロフィールを形成したもの)に沿うように押付装置38の押付方向の変位を制御することができるから、オンラインロールグラインダ28によりロール19にイニシャルクラウンを形成するよう研削することもできる。
しかし、位置センサ76を用いて制御したとしても、絶対的な押付装置の前進速度が所望の値より速かったり、遅かったりすると、図14(b)、(c)のような段差は、抑制されることなく依然として発生する問題が残る。発明者らは、これをいかにして抑制するか、を考えた。それを以降に述べる。
(第2、第3の施策)
図16は、圧延後の製品金属帯の厚みが幅方向に平坦でない不良の発生を抑制できる、本発明のオンラインロールグラインダの研削ユニットの構造である。押付装置38のシール部を、従来、ゴム製であったものを、樹脂製のシール54Pとしている。また、回転装置40と砥石36とを繋ぐ連結軸42は、スプライン形状をしているが、回転装置40側の軸と砥石36側の軸のスプライン溝の間に、砥石36と回転装置40の間の距離が変動した時に転動する鋼鉄製の玉を配置したボールスプライン44Bを設置している。
発明者らは、回転装置40、押付装置38の押付方向の機械抵抗を下記式を満たすように従来のオンラインロールグラインダより低減することで、研削誤差が格段に低減することを見出した。
機械抵抗低減による研削精度向上のメカニズムを図17を用いて以下に説明する。砥石36のロール19への押付は、押付装置である油圧シリンダ38によって行われることは、先述したが、ロール19への押付力Frは、油圧シリンダの出力Fから、回転装置、押付装置の押付方向の機械抵抗Fμを差し引いた値となり、機械抵抗が変動するとロール19への押付力Frも変動してしまう。
又、油圧シリンダが(a)前進方向移動時か(b)後退方向移動時かによっても機械抵抗の方向が異なり、砥石36のロール19への押付力が変動してしまう。このことは、日常生活上も経験する通り、抵抗のあるものを介して何かを押そうとすると、機械抵抗の分を差し引いた力でしか押せないことと、逆に、押す力を緩めるときは、ドンと押し戻されるように抵抗の分が加わってくることからも容易に理解でき、油圧シリンダ38を前進方向に押し付けるときは機械抵抗Fμを差し引いた値がロール19への押付力Frとなり、後退方向に押し付ける(押し戻される)ときは機械抵抗Fμを足し合わせた値がロール19への押付力Frとなる。
上記した式は、熱間仕上圧延機最終圧延機であるF7スタンドの出側での被圧延材の板厚誤差を許容値以下とするために押付装置の押付方向の機械抵抗をいくら以下に抑えるべきかを示したものであり、今、対象としている圧延機の、押付力の設定値や、熱間仕上圧延機出側での被圧延材の板厚誤差の許容量が大きいほど大きく、今、対象としている圧延機の、ロールの最大研削深さや、ロール表層の段差が仕上圧延機の最終圧延機であるF7スタンドの出側での被圧延材の板厚に転写する割合が大きいほど小さい。
この転写割合ηは、熱間仕上圧延機各圧延機毎に値をとる。最終圧延機であるF7スタンド以外の圧延機における転写割合は、F7スタンドよりも前方の圧延機にて被圧延材に転写された段差の影響が、どの程度F7スタンドの出側での被圧延材の板厚に残存しているか、を示す指標であるから、いわば、遺伝割合とも言える。実験等により求まる。
αは、実験等により求まる押付力と研削深さの関係を回帰して決まる値であり、0乃至1の間の値である。
押付装置の押付方向の機械抵抗(以下、単に機械抵抗)その他の値は、ここでの例では、オンラインロールグラインダを設置した熱間仕上圧延機F4〜F7各スタンド共通で、Fn=900N、ΔHcrit=0.000005m、Tmax=0.00005m、α=0.6、η=0.63とした。これより、Fμ=298Nとなる。
機械抵抗を低減するために各種の研削ユニットの構造を実験した。結果を図18に示す。従来のゴム製シールとスプライン構造では、600Nもの機械抵抗があった。これは、ばね秤でロッドを引っ張って実際に測定した値である。スプライン部に潤滑剤を塗布したものは多少改善されたが、500Nであり、効果は不十分であった。結局、シールを樹脂製のシールとし、スプラインをボールスプラインとすることで機械抵抗も250Nと、上記で求めた298N以下となり、上記式を満足した。
(第4の施策)
図19は、本発明のオンラインロールグラインダの、油圧シリンダ38周辺の油圧の配管系統図を示している。圧力ライン80から供給される油圧シリンダ38のヘッド側の圧力は、比例減圧弁81で制御され、又、同じく圧力ライン80から供給される油圧シリンダ38のロッド側の圧力は、減圧弁82で制御される。又、ヘッド側、ロッド側とも、配管内に油が封じ込められた状態で圧縮された場合に異常な高圧とならない様にリリーフ弁83を有しており、配管内の圧力が、リリーフ弁83の設定圧力以上になると、リリーフ弁83及びタンクライン84を通じ、図示しないタンクに油を逃がし、圧力を低減させる構造である。リリーフ弁83の設定圧は、常時作動させることのない様、ヘッド側、ロッド側とも比例減圧弁81、減圧弁82の設定圧より10乃至15%高く設定されている。図19において、85は油圧の圧力センサ(PT)である。
油圧シリンダ38のヘッド側に容量10Lの油たまり86、ロッド側に容量5Lのアキュムレータ87を設置している点が、従来と異なる。
油圧シリンダでは、ヘッド側の圧力を目標とする圧力に設定したとしても、砥石36がロール19から押し戻されたような場合、配管内の油は圧縮されて内圧が上昇する。図19に示したとおり、リリーフ弁83を設け、配管内の内圧が上がらないようにしているが、リリーフ弁83の設定圧を比例減圧弁81の設定圧より10乃至15%大きくしているため、比例減圧弁81の設定圧とリリーフ弁83の設定圧の間であれば圧力は上昇してしまう。又、ロッド側についても、研削時の砥石36の振動を抑制するため、押付時の値であるが、ロッド側も2.4MPa程度の圧力を設定して使用しており、油圧シリンダ38が前進する時にヘッド側と同様、ロッド側においても配管内の油が圧縮され、リリーフ弁83の設定圧との範囲内で圧力が変動してしまう。
油圧シリンダ38のヘッド側の径を0.032m、ロッド側の径を0.025m、ロッド側の減圧弁82の設定圧を2.4MPa、押付力の設定値を90Nとすると、ヘッド側の比例減圧弁81の設定圧は2.1MPa(2.4×106×π/4×(0.0322−0.0252)+900)/(π/4×0.0322))、リリーフ弁83の設定圧は、ヘッド側2.4MPa(2.1×1.15)、ロッド側2.8MPaとなり、各0.3〜0.4MPa、比例減圧弁81、減圧弁82の各設定圧より大きい。0.3〜0.4MPaの圧力変動を砥石36のロール19の押付力Frに換算すると、最大322N(0.4×106×π/4×0.0322)となり、先述の機械抵抗の目標値298Nと同等となることから、無視できないことが分かる。また、従来、一般的なリリーフ弁の設定圧の目標に対する実績のばらつきは、最小でも±1MPa程度はあり、圧力変動を0.3〜0.4MPaの範囲に抑えることさえ困難であった。
そこで、発明者らは、こうした圧力上昇が、ヘッド側であれば、ロール19による砥石36の押し戻しにより起こるものであり、ロッド側であれば、油圧シリンダ38の前進に対する機械抵抗Fμによる妨げが原因になって起こるものであることに着目し、図19に示したように、こうした現象による配管内の油の圧縮による圧力上昇を吸収する、油たまり86、アキュムレータ87を設置することに想到した。ヘッド側については、ロール19による砥石36の押し戻し量が1mm程度と小さいことから、圧縮性のガスを詰めた風船状のものを内包したアキュムレータではなく、単なる油たまりで良い。油たまりの体積は、目標圧力変動量を、全く研削能力に影響を与えない0.05MPaとし、油の体積弾性係数を650MPa、配管体積を0.7m3、押し戻される体積を8×10-7 m3(0.001×π/4×0.0322)とすると、10L((650×106×8×10-7/(0.05×106)−0.7)×1000)となる。ロッド側については、押し戻される量が油圧シリンダのストロークの約200mmあるため、単なる油たまりでは非常に大きなものとなってしまう。このため、同様の計算により圧力変動量を0.05MPa以下とするよう5Lのアキュムレータを設置した。
(第5の施策)
図20は、本発明の機械抵抗低減、油圧系統改善後の、製品厚みの幅中央部での段差量S(図14(a)に示したのと同様のもの)の製品1000本での最大値を示したものである。本発明により、製品厚みの幅中央部での段差量は、最大でも4μmとなり、5μmの不良判定値以下となるという良好な結果が得られた。また、図14(b)に示したような幅端部での研削残しに起因する段差も同時に撲滅できた。
しかしここで、発明者らは図14(c)に示す幅中央部のラップ部の不良を、より確実に撲滅できる方法に想到した。それについて、以降に説明する。
図21は、第1乃至第4の施策を講じた後の、製品厚みの幅方向分布を示したものである。幅中央部のラップ部に相当する20mmの範囲が段差Sとなって厚くなっていることが分かる。
図22は、砥石前進指令から、ロール接触までの時間のばらつきを、(a)本発明の機械抵抗低減、油圧系統改善前、(b)本発明の機械抵抗低減、油圧系統改善後に測定したもの同士を比較して示した図である。
(a)本発明の機械抵抗低減、油圧系統改善前は、オシレート装置によるロール胴長方向の移動速度が120mm/秒程度であることよりロール胴長方向の研削位置のずれは17mm(120mm/秒×0.14秒)、ロール胴長方向中央部でのラップ量の誤差は、2個の研削ユニットの誤差の合計であるから、34mm程度は容易に発生し、20mm程度のラップ量では、容易に未研削部が残っていた。又、ラップ部は2個の研削ユニットにより研削する原理上、1個の研削ユニットにて研削するロール胴長方向のその他の範囲より本来過研削となるため、ラップ量が大きくなる時は勿論、20mm程度の設定値通りであっても、段差を発生させる可能性があった。
しかしながら、(b)本発明の機械抵抗低減、油圧系統改善後は、機械抵抗低減、油圧系統改善により、砥石の前進速度のばらつきが低減したことに加え、押付装置の油圧シリンダ部に位置センサ76を設置し、ロールと砥石の距離を正確に測定することができるようになったことに加え、研削前のロールと砥石との距離を、従来、砥石がロールに接触しないよう50mm程度離していたものを、10mm程度に近接化したことで、砥石前進指令から、ロール接触までの時間のばらつきはσ=0.02秒と大幅に低減していることがわかる。
図15に示したラップ量L(片方の研削ユニット30と、もう片方の研削ユニット30との、砥石36とロール19の接触幅のラップする領域の、ロール胴長方向の幅)の誤差も4.9mmと、ラップ量20mmに対して十分小さい値となったが、ばらつきが低減したことにより、未研削というような現象は無くなったものの、2個の研削ユニットが、ラップ部を確実に研削することで、ロールを深く削りすぎ、製品幅中央部が厚くなってしまったと考えられる。
図23は、この問題を解決するために実施したラップ量の変更実験結果である。従来のオンラインロールグラインダでは砥石36への前進指令から、ロール19に接触するまでの時間のばらつきのために設定困難であった5〜10mmとすることで、製品幅中央部の厚み段差不良を撲滅できることが分かった。5mmより小さくすると、逆に研削不足になった。
以上の説明は、研削ユニット30が2つの場合を例に説明したが、3つ以上の場合についても、各ラップ量を5〜10mmとすることで過研削、研削不足の発生を抑制することができることは言うまでもない。
以上、稼働率を上げるために、ロールの交換頻度低減による、稼働率、生産能率の向上のための施策について述べたが、それは、研削ユニットが2つ以上の場合に特に好適に適合するとともに、目標とする研削深さに対し、実際の研削深さのずれが大きいと、それが被圧延材8に転写して製品の板厚品質に悪影響を及ぼし易い、熱間仕上圧延機列18のうちの後段スタンドに備えるオンラインロールグラインダ28に特に好適に適合する。
(疲労層の研削について)
さて、次に述べるのは、熱間仕上圧延機列18のうちの後段スタンドに備えるオンラインロールグラインダ28にでも、あるいは前段スタンドに備えるオンラインロールグラインダ28にでも、好適に適合する、疲労層ごと研削除去する具体的方法である。
ロール19の表層には、被圧延材8からの圧延反力を受けながらの回転に伴う圧延荷重の負荷、除荷の繰返しの影響により、形成されていく所謂転動疲労による疲労層が生成する。これに被圧延材8との接触による入熱の影響が加わって、ロール19の表層には、亀の甲状にひび割れて見えるヒートクラックが発生するようになり、その後、さらに被圧延材の圧延を継続することによっても自然には消失しない。ロール19の表面の亀の甲状のひび割れは大体、直径3〜5mmの円内に入る程度の大きさである。最表層には所謂黒皮と呼ばれるマグネタイト層があるが、被圧延材の圧延を1本行うと、まず、図9中、ロール19の深さ方向に伸びる1次ヒートクラック19Cができる。更に被圧延材8の圧延を継続すると、1次ヒートクラック19Cの先端よりも深さの浅いところから枝分かれする形でロール19の表面に略平行な方向に2次ヒートクラック19Dができる。
やがて、更に被圧延材8の圧延を継続すると、2次ヒートクラック19Dが進展し、2次ヒートクラック19Dよりもロール19の表面に近い側のロール19の表層部分が剥離し、ロール19のプロフィルに大きな起伏ができる。すると、それが被圧延材8に転写し、程度がひどくなると、熱間仕上圧延機列18のうちの後段スタンドのロール19による圧延を経てもなお残存し、金属板製品の表面品質に悪影響が出る場合もある。
疲労層ごと研削除去することこそ、ロール交換を極力不要とする直接的な施策と言え、稼働率、生産能率の向上につながる。
もしも疲労層ごと研削除去するとしたら、オンラインロールグラインダ28が無いとした場合にロールを交換する必要が生じる本数、例えば、80〜120本の被圧延材を圧延し終わった後、インターバル(先行被圧延材の尾端がその圧延機を抜けてから、次の被圧延材の先端がその圧延機に噛み込むまでの、圧延していない時間帯)を、操業中の10〜60秒内外よりも比較的長い、70〜300秒内外に延長して、そのインターバルでロールを疲労層ごと研削除去するようにするのが好ましい。
もしも、1本毎とか、5本毎とか、頻繁に疲労層ごと研削除去すると、研削除去する毎に、更に新しく疲労層が発生して進展し、すぐにまた研削が必要になって、却ってロール原単位が悪化してしまうとともに、疲労層ごと研削除去する毎にインターバルが70〜300秒内外も必要になって、却って生産能率が低下してしまうからである。
図24は、圧延長による疲労層の進展の様子を示したものである。F7出側換算圧延長が50km程度までは急激に疲労層が進展するものと推定される。しかし、その後の進展は0.32μm/kmであり、バー間研削で十分研削できる。
疲労層深さがロールの半径あたり80μm(F7出側換算圧延長が80km程度)までは疲労層を研削除去しない方が、その後に却って疲労層の進展が飽和状になって進展速度が鈍ることからすると好ましい。それまでは疲労層を研削除去しなくても、疲労層が欠け落ち、ロール表面が凹凸状になって、それが転写する被圧延材の表面品質が悪化する問題は回避できる。
但し、上記した80μmという数字はロールの材質や被圧延材のプロダクトミックス中の硬質あるいは軟質なものの比率の代償等に依存すると考えられるため、それに応じて、適宜調整して良く、要は、ある一定の疲労層深さになるまで(疲労層深さを圧延中に測定することは困難であるため、実際はロールを研磨済みのものと交換してからのスタンド毎の圧延本数または圧延長によることになる)は、面荒れスケール疵の発生の抑制、あるいは、被圧延材の先端がロールに噛み込む際のスリップ抑制を目的に、黒皮の一部を研削するようにし、そのある一定の疲労層深さに達した以降は、そのある一定の疲労層深さ以下に疲労層深さを調整するように研削深さを調整するのが好ましいわけである。疲労層深さの定義は図9中に示すように、最も深い2次ヒートクラックの存在する深さとする。
以降、疲労層ごと研削除去する際の具体的方法についてより詳細に説明する。
(研削能決定式)
今、一つのロールをとって考えた場合、そのロールにとっての累積圧延負荷を考慮した研削能を表すモデル式として、一例を次式(1)に示す。
Vg=9.8(1+d・L)・a・Pb・Vrc ・・・(8)
Vg:研削能(cc/分)
P:砥石押付線圧(kN/mm)
Vr:相対摺動速度(mpm)
(Vr=VR+VG、VR:ロール周速(mpm)、VG:砥石周速(mpm))
a、b、c、d:研削能パラメータ
L:圧延長(km)
この式のa、b、c、dとして所定の値
a=0.0245
b=0.692
c=0.503
d=0.00750
を用いた場合、押付線圧と研削能の関係を図に示したものが図25である。
しかしながら、これらa,b,c,d等の研削パラメータは、その熱間圧延ライン(熱間圧延機列)の製造品種や寸法の構成(プロダクトミックス)、あるいはロール19の材質等により変わってくるもの、と考えられるから、必ずしも上記各値に限るものではなく、実測データと合うように回帰して求めればよいわけで、適宜調整してよい。
また、累積圧延負荷としては、必ずしも上記の例のように圧延長を用いなくともよく、研削能を表すモデル式として、例えば上記(8)式とは別な、下記(9)式のようなモデル式、あるいは全く別な形のモデル式を用いる等してもよい。
Vg=9.8φΣ(L×Pr)÷(D×W)・a・Pb・Vrc ・・・(9)
Vg:研削能(cc/分)
L:圧延長(km)
Pr:被圧延材の圧延荷重(kN)
D:ロール直径(mm)
W:被圧延材幅(mm)
P:砥石押付線圧(kN/mm)
Vr:相対摺動速度(mpm)
(Vr=VR+VG、VR:ロール周速(mpm)、VG:砥石周速(mpm))
φ、a、b、c、d:研削能パラメータ
Σ:各被圧延材一本毎であることを示す。
ちなみに上記(9)式中の、
φΣ(L×Pr)÷(D×W)
の部分は、被圧延材から受ける荷重Prを被圧延材幅Wで割った線圧に、その被圧延材の圧延長Lをロール直径Dで割った転動回数を掛け算することで、そのロールにどの位の負荷が加わったか、そのロールへの圧延負荷を表すパラメータ的な指標である。ここで円周率πはφの中に含まれている。Σで各被圧延材一本毎に累計することで、累積圧延負荷となる。
ところで、砥石36を平面図的に見た様子を図26に示すが、砥石は例えば8個で構成され、全体でリング状になるよう配列され、リング外径は200mm、内径は120mm内外の大きさであるが、今、図示しないロール19と砥石36の接触部分がAだとすると、Aのロール胴長方向の幅wが決まっていて、ロール19の一周当たりの、ロール胴長方向への、砥石36とロール19の接触部分Aの移動量も、この幅wで一定とした場合、ロール19の表層が研削される現象は、砥石36とロール19の接触押圧により発生する荷重(押付線圧)、及び、砥石36とロール19が接触した状態でロール19が回転して摺動する回数に支配される。ちなみに図中点線で囲まれるA’で示す領域は、ロール19が丁度一周後の砥石36とロール19の接触部分を示す。
(ロール軸方向の累積圧延負荷の分布に応じて、オンラインロールグラインダ砥石のロールへの押付線圧を変化させる制御)
さて、被圧延材には各種の幅のものがあり、被圧延材の幅方向とロール胴長方向は一致するが、被圧延材に各種の幅のものがあることからすると、ロール表面上のあるロール胴長方向直線上で見た場合、ロール胴長方向中点付近は全ての被圧延材と接触するが、ロール胴長方向端部にいくにつれ、より広い幅の被圧延材としか接触しないため、この疲労層の深さは、ロール胴長方向に分布をもち、それはロール胴長方向の累積圧延負荷の分布と相関することを発明者らは見出した。
ロール胴長方向の累積圧延負荷の分布に応じて、砥石のロールへの押付線圧を変化させる制御に反映する。ここで、ロール胴長方向の累積圧延負荷の分布とは、図27に示したように、例えばロール19の端面19Eを原点としてロール胴長方向をX軸にとった場合に、個々の被圧延材と接触した、しないによって圧延負荷が加算されたり、されなかったりする結果、X軸方向のある位置に対して、その位置での圧延負荷が累積的に加算されてどのような値になっているのかを、X軸方向に異なる点の値どうしを結んで示した分布のことを指す。押付線圧とは、砥石36のロール19への押付時の荷重を、ロール19と砥石36の接触部分Aのロール胴長方向の幅wで割った値である。
(制御方法)
疲労層の深さは、ロール胴長方向に階段状の分布を持ち、それはロール胴長方向の累積圧延負荷の分布と比例的な関係にあることを発明者らは見出した。
なぜなら、被圧延材に各種の幅のものがあり、被圧延材の幅は一本毎に異なる値となることを考慮すると、ロール表面上のあるロール胴長方向直線上で見た場合、ロール胴長方向中点付近は全ての被圧延材と接触するが、ロール胴長方向端部にいくにつれ、より広い幅の被圧延材としか接触しないから、そのようになるのである。
(ある板道に相当する領域の研削から次の板道に相当する領域の研削に移行する際の過渡的な制御方法)
してみれば、以上述べた方法に従った場合の、ある板道に相当する領域の研削から次の板道に相当する領域の研削に移行する際の過渡的な制御方法は、以下に述べる形態をとるのが好ましい、との結論に達する。ちなみに板道とは、被圧延材と接触するロール上の領域のことである。
第一義的には、図28(a)に示すように、今、ロール胴長方向中点寄りに存在するある被圧延材の板道Bと、その被圧延材よりもロール胴長方向端部寄りに存在する別の被圧延材の板道Cとが、同図28(a)に示すような、ロールと砥石の接触部分Aとの位置関係にある場合を考えると、ロールと砥石の接触部分Aのロール胴長方向中点寄りのポイントpが、ロール胴長方向中点寄りに存在するある被圧延材の板道Bにかかったときを起点に、ロールが丁度1/2周したときに、板道Cに相当する領域の累積圧延負荷から、板道Bに相当する領域の累積圧延負荷に、図示しない駆動制御装置内での認識を切り替えて、それに相当する研削能が発揮されるものと認識するようにする。
ここで、ロールが丁度1/2周したときに認識を切り替えるようにした理由は、板道Bと板道Cとの影響係数を0.5ずつと仮定したからであるが、厳密に1/2周したときでなくても、0〜1周の範囲内で、いつのタイミングで切り替えても別段支障が生ずるわけではなく、この範囲内で適宜調整可能である。
板道Cに相当する領域に比べ、板道Bに相当する領域の方が、ロール胴長方向中点寄りに存在するから、累積圧延負荷は大きくなっているわけであり、図25に示した関係からすると、同じ押付線圧に対して発揮される研削能は大きくなってしまい、ロールがより深く研削される結果を招くことになる。
そこで、研削能が一定となることを目標に、板道Cに相当する領域の累積圧延負荷から、板道Bに相当する領域の累積圧延負荷に移行した場合でも、そのような一定の研削能となるような押付線圧を、やはり図25に示した関係から逆算することができるから、その値になるように押付線圧を制御するのである。
第二義的に、図28(b)に示すように、ロールと砥石の接触部分Aに板道の境界が入ってくる場合は、今、ロール胴長方向中点寄りに存在するある被圧延材の板道Bと、その被圧延材よりもロール胴長方向端部寄りに存在する別の被圧延材の板道Eと、それよりもロール胴長方向端部寄りに存在するさらに別の被圧延材の板道Fが、同図28(b)に示すような、ロールと砥石の接触部分Aとの位置関係にある場合を考えると、ロールと砥石の接触部分Aのロール胴長方向中点寄りのポイントpが、被圧延材の板道Eにかかったときを起点に、ロールが丁度1/2周したときに、板道Cに相当する領域の累積圧延負荷から、板道Eに相当する領域の累積圧延負荷に、図示しない制御装置90内での認識を切り替えて、それに相当する研削能が発揮されるべきものと認識するようにする。そして、ロールと砥石の接触部分Aのロール胴長方向中点寄りのポイントpが、被圧延材の板道Bにかかったときを起点に、例えばロールが丁度1/2周したときに、板道Eに相当する領域の累積圧延負荷から、板道Bに相当する領域の累積圧延負荷に、図示しない制御装置90内での認識を切り替えて、それに相当する研削能が発揮されるべきものと認識するようにする。ロールと砥石の接触部分Aに板道の境界が入ってくる場合も、漸次、ロールと砥石の接触部分Aのロール胴長方向中点寄りのポイントpが、被圧延材の板道にかかったときを起点に、ロールが丁度1/2周したときに、前の板道に相当する領域の累積圧延負荷から、次の板道に相当する領域の累積圧延負荷に、図示しない制御装置90内での認識を切り替えて、それに相当する研削能が発揮されるべきものと認識するようにする。但し、厳密に1/2周したときでなくても、0〜1周の範囲内で適宜調整可能である。
図29に示すような熱間圧延ライン(熱間圧延機列)400の仕上圧延機第2スタンドF2に本発明を適用した場合を例に、以下、オンラインロールグラインダ28によるロール表層の研削方法について説明する。制御装置90から指令されて、オンラインロールグラインダ28が動き、砥石36がその待機位置からロール19の表面に向かって移動する。砥石36がロール19の表面に到達する前の予め設定された所定位置に到達すると、砥石を回転させる回転装置40が駆動されて砥石36が回転し始める。続いて、押付装置38の動作で砥石36がロール19の表面に押し付けられて、砥石36によるロール19の表層の研削が始まる。砥石36はロール19の胴長方向一端側から他端側へ移動しながら研削を行ない、予め設定されている所定量の研削能の研削を、漸次、累積圧延負荷に応じて行った後、研削が終了したら、押付装置38が後退方向へと作動して砥石36が後退する。その後、砥石36は待機位置へ移動して、次の研削に備える。
((3)ロールの交換頻度低減による、稼働率、生産能率の向上)
以上、稼働率を上げるために、ロール交換を極力不要とするための設備上の施策および疲労層研削の方法について、説明したが、本発明により、どの程度稼働率が上がるかを以降、説明する。
熱間仕上圧延機列のうちの最終3スタンドにオンラインロールグラインダ28を設置した従来の場合、90.20%の稼働率を100%から差し引いた9.80%の休止率の内訳のうち、3.52%をロール交換(バックアップロールの交換は除く)が、そして、2.24%をミスロールが占めている。2.24%のうち、0.04%は、ロールと被圧延材の先端との間のスリップの発生によるものである。これに対し、
(I)熱間仕上圧延機列のうちの最終3スタンドに加え、1つ以上のスタンドにオンラインロールグラインダ28を設置した場合、停止率は1スタンドにつき0.01%低下し、稼働率は1スタンドにつき0.01%上昇する。
(II)F2、F3を含むスタンドにオンラインロールグラインダ28を設置した場合、上記の1スタンドにつき0.01%の分に加え、面荒れスケール疵発生抑制による圧延サイクル大型化の寄与分0.5%を加算した分、ロール交換頻度が低減し、稼働率が上昇する(F2だけなら0.3%上昇する)。
(III)熱間仕上圧延機列のうちの全てのスタンドにオンラインロールグラインダ28を設置した場合、最終3スタンドに加えて更に他のスタンドに増設したスタンドの数の分だけ、休止率は1スタンドにつき0.01%低下し、稼働率は1スタンドにつき0.01%上昇するとともに、ロール交換が不要になるため、3.00%休止率が減少し、稼働率は3.00%上昇する。熱間仕上圧延機列がF1〜F7の7スタンドであれば、増設したスタンドの数は4つであるから、ロールと被圧延材の先端との間のスリップの発生によるもの0.04%分に加え、ロール交換が不要になる分3.00%が上乗せになるから、合計で、3.04%休止率が減少し、稼働率は3.04%上昇する。熱間仕上圧延機列のうちの全てのスタンドについてロール交換が不要になるにもかかわらず、図42で示していたロール交換による休止率3.52%が完全に解消しなかったのは、粗圧延機のワークロール交換が残るからである。
(IV)熱間仕上圧延機列のうちの全てのスタンドに加え、粗圧延機列のうちの全てのスタンドにもオンラインロールグラインダ28を設置した場合、熱間仕上圧延機列のうちの最終3スタンドに加えて熱間仕上圧延機列の他のスタンドに更に増設したスタンドの数の分だけ、休止率は1スタンドにつき0.01%低下し、稼働率は1スタンドにつき0.01%上昇するとともに、ロール交換は粗圧延機列も熱間仕上圧延機列も不要になるため、3.52%休止率が減少し、稼働率は3.52%上昇する。熱間仕上圧延機列がF1〜F7の7スタンドであれば、増設したスタンドの数は4つであるから、ロールと被圧延材の先端との間のスリップの発生によるもの0.04%分に加え、ロール交換が不要になる分3.52%が上乗せになるから、合計で、3.56%休止率が減少し、稼働率は3.56%上昇する。
(V)熱間仕上圧延機列、粗圧延機列のうちの全てのスタンドにオンラインロールグラインダ28を設置するとともに、バックアップロールにもオンラインロールグラインダ28を設置すると、設置したスタンドでは、バックアップロールの交換が不要になる。全てのスタンドに設置する場合に限るものではないが、全てのスタンドに設置すれば、稼働率外にカウントされていた計画休止の時間帯48hrのうち、24hrが操業可能な時間帯に変わる。
以上(I)〜(V)による休止率の低下、稼働率の上昇の様子を図30に示す。
稼働率は1%上がる毎に6.72hrが操業可能な時間帯に変わる。してみれば、究極的な(V)のケースでは、6.72hr×3.52+24=47.65hrが操業可能な時間帯に変わることになるから、操業時の生産能率が600ton/hrであれば、2万8千6百トンも毎月増産できることになる。
また、次に述べるように、休止時間帯に加熱炉10内で無駄に燃焼している燃料や、圧延機等を無駄に空転させている電力が節約できるようになる。それが、
(3)エネルギー原単位の低減((2)により低減される寄与分がある)
に寄与する量は、以下に示す実施例表の通りである。