JP2005262211A - 空気から酸素富化空気を分離回収する方法、および、気体分離膜モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体と、原料気体流路となる供給側スペーサとを、交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成した気体分離膜モジュールを用い、最大送風量および最大静圧を気体分離膜の有効膜面積で割った値がそれぞれ100m3/min・m2以下および4000Pa/m2以下となるような送風手段によって原料気体流路内に空気を流しながら、芯管の中空部を減圧手段によって95kPaA(絶対圧)以下に減圧することによって、芯管の中空部から酸素富化空気を分離回収する。
【選択図】 なし
Description
このようなスパイラル型の気体分離膜モジュールは構造が簡単であり製造も容易であるが、中空糸型の気体分離膜モジュールなどに比べて分離効率が悪くなりまた分離回収気体の濃度が低くなるために実用上は必ずしも好適に用いられていない。
特許文献1には、空気分離を目的としたスパイラル型の気体分離膜モジュールにおいて、圧力損失による性能低下を防ぐために、透過気体流路の厚みを巻終わりから巻始めにいたる過程で順次厚くすることが開示されている。しかしながら、この分離膜モジュールは加圧した空気を供給して高濃縮窒素を分離回収することを目的としたものである。供給側をおおよそ大気圧とし透過側を減圧にして空気から酸素富化空気を分離回収する方法については記載がない。
気体分離膜モジュールを用いて空気から酸素富化空気を分離回収するときには窒素富化空気の排出を必ず伴う。気体分離膜モジュールに加圧した空気を供給する方法では、透過側でほぼ大気圧の酸素富化空気を得ると同時に非透過側で加圧状態の窒素富化空気を得ることになる。すなわち、加圧法の場合は、結果として併産される窒素富化空気までもあらかじめ供給空気として圧縮しなければならない。空気中の窒素は酸素に比べて4倍程度あるから、この窒素を含む供給空気を圧縮のための動力を考慮すると、加圧法はエネルギー的に極めて非効率で不利である。更に、スパイラル型の気体分離膜モジュールの供給側に圧力をかけるには、分離膜モジュールを供給側、非透過側、透過側の開口を有する耐圧容器内に収納されたものにするか、少なくとも分離膜モジュールの最外殻を相応の耐圧性を持った構造、部材にしなければならない。更に加えて、供給側の圧力を維持するために、気体流路の所定位置にバルブなどの圧力調整手段を付けることが必要になるなど、余分な部品や構造が必要になる。
図1は、本発明の気体分離膜モジュールの一例のモジュールを展開したときの断面の概略図を示したものである。芯管1は中空部を有し透過気体を集めてモジュール外へ排出する役割を有する。透過側スペーサ2を2枚の平膜状気体分離膜3の間に挟んで一組とした積層体4、4’が芯管の左右にそれぞれ延びている。各積層体4,4’内には透過側スペーサ2によって透過気体流路が確保され、透過気体流路が芯管1の中空部と連通するように芯管1に取り付けられている。これらの積層体4,4’内の透過側スペーサ2が形成する透過気体流路は、積層体4、4’の周辺端部では接着剤5、5’によって封止されており、芯管1の中空部へ連通する開口部を除いて、平膜状気体分離膜3によって外側の空間とは隔絶されている。これらの積層体4、4’に原料気体流路を確保する供給側スペーサ6、6’を図1のように配置し、これらが交互に重なるように芯管1の周りにスパイラル状に巻回される。この巻回は図1中の矢印で示してある。巻回の最外殻には実質的に気体を透過しない外フィルム7が巻回される。供給側スペーサ6、6’は積層体4、4’や外フィルム7によって芯管1の長手方向の両端部を除いて隔絶される。この結果、原料気体流路は芯管1の長手方向の両端部のみが開口し、また透過気体流路は芯管1の中空部へ連通し、相互に平膜状気体分離膜3を挟んで隔絶された空間を形成している。また、図2は図1の断面を上から眺めたときの概略図である。
本発明では原料気体流路に空気を流すために、従来のような圧縮装置で加圧された空気を送る必要はなく、ファン等の簡単な送風装置を使用する。送風手段の能力としては、最大送風量が、気体分離膜の有効膜面積(以下、単に膜面積ということもある。)あたり100m3/min・m2以下、好ましくは10m3/min・m2以下、特に好ましくは4m3/min・m2以下であり、且つ最大静圧が気体分離膜の有効膜面積あたり4000Pa/m2以下、好ましくは600Pa/m2以下、特に好ましくは150Pa/m2以下となるような送風手段を使用する。つまり、送風能力としてあまり強力ではないこのような送風手段によって空気が原料気体流路(供給側スペーサ)内に流されるので、運転時における原料気体流路内での空気の圧力はおおよそ大気圧である。従って、原料気体流路を構成する供給側スペーサは、このような送風手段で送風できる程度に圧力損失が小さい必要がある。すなわち、原料気体通路における圧力損失は、膜面積あたり4000Pa/m2未満である必要があり、好ましくは600Pa/m2未満であり、さらに好ましくは150Pa/m2未満である。
気体分離膜の有効膜面積あたりの供給空気量が100m3/min・m2且つ静圧が4000Pa/m2を越えると、送風が所要動力の少ないファンやブロアなどでは賄えなくなり、所要動力の大きいコンプレッサなどを必要とするようになるのでエネルギー的に不利となるから好ましくない。
また、送風量は、分離膜の供給側で酸素分圧が低くり過ぎないように十分な量が必要である。好ましくは供給側の排出空気の酸素濃度が1%以下にならないだけの空気を供給すればよい。
図3において、分離膜モジュール10の長手方向の一方の端部にファン11とカバー(ケース)12が設けられ、実線矢印の方向に空気を吸引している。この吸引量は予め設定されており、分離膜モジュール10のファン11が接続された端部とは反対の端部の原料気体流路の開口から、分離膜モジュール10の有効膜面積あたりの供給量が100m3/min・m2以下且つ静圧が4000Pa/m2以下になるようにして空気が供給される。分離膜モジュール10にファン11が設けられた側の芯管1の端部は封止されている。分離膜モジュール10のファン11が設けられた側とは反対側の芯管1の端部は真空ポンプ13と接続されており、圧力計14で減圧度が測定される。真空ポンプ13の排出口からは酸素富化空気が破線矢印方向に排出され、必要に応じてバッファータンク15を経由して分離回収される。
平膜状気体分離膜としてポリエチレンテレフタレート不織布(支持体)にポリエーテルイミド多孔質膜及びその表面にシリコーンゴム分離層を積層した厚さが0.15mmで、25℃における酸素ガスの透過速度が8×10−4cm3(STP)/cm2・sec・cmHg、窒素ガスに対する酸素ガスの透過速度比が1.8倍の分離性能を有する非対称複合分離膜、供給側スペーサとして厚さ0.5mmのポリエチレン製成形メッシュ(1枚のみ使用)、透過側スペーサとして厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレート製成形メッシュ、芯管として円柱形であって長さ298mm外径17.2mmであり内部に内径9.5mmの中空部を該中空部と外部を連通させる内径2.85mmの12個の孔を有したABS樹脂製で一端が封止され他端が開口したもの、外フィルムとして片面に粘着材を有した厚さ1.5mmのポリエチレン製フィルムを用いて、透過側スペーサを平膜状気体分離膜に挟んで一組とした積層体は1組(幅264mm、芯管からの長さ650mmで膜全体の長さは表裏合わせて1300mmの積層体1枚)とし、その端部を芯管に透過気体通路が芯管の中空部と連通するように取り付け、供給側スペーサを交互に重なるように芯管の周りにスパイラル状に巻回して有効膜面積が0.2m2のスパイラル型の分離膜モジュールを作成した。
この分離膜モジュールを図3に示すようにして酸素富化空気の分離回収を行った。ファンは最大流量が0.9m3/min、最大静圧が25Paの能力を有するもの、真空ポンプは排気速度14L/min、到達圧力24kPaAのものを用いた。バッファータンクとして内寸で径42mm長さ440mmの円筒形タンクを用い、バッファータンクを経由して排出される酸素富化空気の流量と酸素濃度とを測定した。流量測定は浮遊式流量計、酸素濃度はジルコニア式酸素濃度計を用いた。
結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:1であるが、回収されたガスの酸素濃度は21%であって、酸素富化空気を得ることができなかった。供給側スペーサの厚さが小さいために圧損が大きくなったこと及び供給量が少ないことが酸素富化できなかった原因と考えられた。
供給側スペーサを厚さ1.5mmのポリエチレン製成形メッシュを用いたこと以外は比較例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:3であるが、回収されたガスの酸素濃度は24%であって、分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
透過側スペーサを平膜状気体分離膜に挟んで一組とした積層体を2組(幅264mm、芯管からの長さ325mmで膜全体の長さは表裏合わせて650mmの積層体2枚)としたこと以外は実施例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:3で、積層体が2組であるが、回収されたガスの酸素濃度は25%であって、実施例1よりも更に分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
平膜状気体分離膜としてポリエチレンテレフタレート不織布(支持体)にポリエーテルイミド多孔質膜及びその表面にシリコーンゴム分離層を積層した厚さが0.15mmで、25℃における酸素ガスの透過速度が8×10−4cm3(STP)/cm2・sec・cmHg、窒素ガスに対する酸素ガスの透過速度比が1.8倍の分離性能を有する非対称複合分離膜、供給側スペーサとして厚さ0.5mmのポリエチレン製成形メッシュ、透過側スペーサとして厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレート製成形メッシュ、芯管として円柱形であって長さ298mm外径17.2mmであり内部に内径9.5mmの中空部を該中空部と外部を連通させる内径2.85mmの12個の孔を有したABS樹脂製で一端が封止され他端が開口したもの、外フィルムとして片面に粘着材を有した厚さ1.5mmのポリエチレン製フィルムを用いて、透過側スペーサを平膜状気体分離膜に挟んで一組とした積層体は2組(幅264mm、芯管からの長さ425mmで膜全体の長さは表裏合わせて850mmの積層体2枚)とし、その端部を芯管に透過気体通路が芯管の中空部と連通するように取り付け、供給側スペーサを交互に重なるように芯管の周りにスパイラル状に巻回して有効膜面積が0.3m2のスパイラル型の分離膜モジュールを作成した。
この分離膜モジュールを図2に示すようにして酸素富化空気の分離回収を行った。ファンは最大流量が0.9m3/min、最大静圧が25Paの能力を有するもの、真空ポンプは排気速度14L/min、到達圧力24kPaAのものを用いた。バッファータンクとして内寸で径42mm長さ440mm円筒形タンクを用い、バッファータンクを経由して排出される酸素富化空気の流量と酸素濃度とを測定した。流量測定は浮遊式流量計、酸素濃度はジルコニア式酸素濃度計を用いた。
結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:1であるが、回収されたガスの酸素濃度は21%であって、酸素富化空気を得ることができなかった。供給側スペーサの厚さが小さいために圧損が大きくなったこと及び供給量が少ないことが酸素富化できなかった原因と考えられた。
供給側スペーサを厚さ1.5mmのポリエチレン製成形メッシュを2枚重ねて使用したこと以外は比較例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:6であるが、回収されたガスの酸素濃度は26%であって、分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
供給側スペーサを厚さ1.5mmのポリエチレン製成形メッシュを3枚重ねて使用したこと以外は比較例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。結果を表1に示した。この例は、透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:9であるが、回収されたガスの酸素濃度は27%であって、分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
平膜状気体分離膜としてポリエチレンテレフタレート不織布(支持体)にポリエーテルイミド多孔質膜及びその表面にシリコーンゴム分離層を積層した厚さが0.15mmで、25℃における酸素ガスの透過速度が1.6×10−3cm3(STP)/cm2・sec・cmHg、窒素ガスに対する酸素ガスの透過速度比が1.8倍の分離性能を有する非対称複合分離膜、供給側スペーサとして厚さ2.2mmのポリエチレン製成型メッシュ、透過側スペーサとして厚さ1.0mmのポリエチレンテレフタレート製成型メッシュ、芯管として円柱形であって長さ298mm外径17.2mmであり内部に内径9.5mmの中空部を該中空部と外部を連通させる内径2.85mmの12個の孔を有したABS樹脂製で一端が封止され他端が開口したもの、外フィルムとして片面に粘着材を有した厚さ1.5mmのポリエチレン製フィルムを用いて、透過側スペーサを平膜状気体分離膜に挟んで一組とした積層体は1組(幅264mm、芯管からの長さは425mmで膜全体の長さは表裏合わせて850mmの積層体1枚)とし、その端部を芯管に透過気体通路が芯管の中空部と連通するように取り付け、供給側スペーサを交互に重なるように芯管の周りにスパイラル状に巻回して有効膜面積が0.17m2のスパイラル型の分離膜モジュールを作製した。
この分離膜モジュールを用いて、参考例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。その結果を表1に示した。この例は透過側スペーサと供給側スペーサの厚さの比が1:2.2である。回収されたガスの酸素濃度は26%であって、分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
分離膜モジュールは実施例5のものを、ファンは最大流量が0.4m3/min、最大静圧が93Paの能力を有するものを用いたこと以外は、参考例1と同様にして酸素富化空気の分離回収を行った。結果を表1に示した。回収されたガスの酸素濃度が27%であって、分離効率よく酸素富化空気を得ることができた。
2:透過側スペーサ
3:平膜状気体分離膜
4、4’:透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体
5、5’:接着剤
6、6’:供給側スペーサ(図中では2枚用いたときを示している)
7:外フィルム
10:分離膜モジュール
11:ファン
12:カバー(ケース)
13:真空ポンプ
14:圧力計
15:バッファータンク
Claims (7)
- 透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体と、原料気体流路となる供給側スペーサとを、交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成した気体分離膜モジュールを用い、最大送風量および最大静圧を気体分離膜の有効膜面積で割った値がそれぞれ100m3/min・m2以下および4000Pa/m2以下となるような送風手段によって原料気体流路内に空気を流しながら、芯管の中空部を減圧手段によって95kPaA以下に減圧することによって、芯管の中空部から酸素富化空気を分離回収することを特徴とする空気から酸素富化空気を分離回収する方法。
- 前記気体分離膜モジュールが、透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体を複数組備え、前記複数組の各積層体と原料気体流路となる供給側スペーサとを、交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成されることを特徴とする前記請求項1に記載の方法。
- 前記気体分離膜モジュールの透過側スペーサと供給側スペーサとの厚さの比が、1:2〜1:10であることを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
- 透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体を複数組備え、前記複数組の各積層体と原料気体流路となる供給側スペーサとを交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成され、更に供給側スペーサと透過側スペーサとの厚さの比が1:2〜1:10である、原料気体流路に空気を供給し芯管の中空部を減圧にして前記中空部から酸素富化空気を分離回収するために使用される気体分離膜モジュール。
- 透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体と、原料気体流路となる供給側スペーサとを交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成した気体分離膜モジュールと、最大送風量および最大静圧を前記気体分離膜の有効膜面積で割った値がそれぞれ100m3/min・m2以下および4000Pa/m2以下となる前記原料気体流路内に空気を流す送風手段と、前記芯管の中空部を減圧手段によって95kPaA以下に減圧し前記芯管の中空部から酸素富化空気を分離回収する減圧手段とを有する酸素富化空気分離回収装置。
- 前記気体分離膜モジュールが、透過気体を集めて排出する芯管の中空部に連通した透過気体流路となる透過側スペーサを2枚の平膜状気体分離膜の間に挟んで一組とした積層体を複数組備え、前記複数組の各積層体と原料気体流路となる供給側スペーサとを、交互に重なるように前記芯管の周りにスパイラル状に巻回して構成されることを特徴とする前記請求項5に記載の装置。
- 前記気体分離膜モジュールの透過側スペーサと供給側スペーサとの厚さの比が、1:2〜1:10であることを特徴とする前記請求項5〜6のいずれかに記載の装置。
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