次に、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1乃至図6は本発明に係る変位センサ1の第1実施形態を示したもので、図1乃至図5は変位センサ1を示す概要図である。
図1は、変位センサ1の全体を示した平面図で、変位センサ1は、例えば自動車のステアリングシャフト等の回転軸Shに組み付けられて、回転軸Shの回転角度を検知してこれにより回転軸Shの舵角あるいは回転軸Shに発生するトルクを検出したり、あるいは回転軸Shの回転数を検出したりして用いられる。
図2は、図1の変位センサ1の断面図を示したもので、変位センサ1は、ロータ2、コイルコア4及び測定装置6を備え、これらロータ2、コイルコア4及び測定装置6はケース3内に収納される。
ロータ2は、図2、及び図3に示すように、ロータ板2a、センシング板2b、磁性板2c及び取付部2dとから構成され、シャフト等の回転軸Shに取付け固定される。
前記ロータ板2aは、合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)からなり、円板状に形成され、中央部に回転軸Shが挿通される孔を有する。
前記センシング板2bは、導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)製の薄板からなり、前記ロータ板2aの一方の面に、接着剤等により貼付して設けられている。図3に示すように、センシング板2bは、前記ロータ板2aの周方向に沿って幅Wを変化させて設けられ、位置P1で最小の幅を有し、180°回転した位置P2で最大の幅を有し、ロータ2の回転角度に対応して半径方向の幅が変化するように形成されている。このセンシング板2bには、後述する交流磁界によって回転角度に対応した大きさの渦電流が誘起される。
前記磁性板2cは、磁性体(例えば、ステンレス材(例えばSUS430等)、アモルファス材、フェライト材等)からなる薄板で、前記センシング板2bの前記ロータ板2aに貼付されている面の面積よりも大きな面積を有し、この面の全面を覆うことができる大きさでドーナツ状に形成されている。この磁性板2cは、前記ロータ板2aを介して前記センシング板2bの全面に対向させて、前記ロータ板2aの他方の面に、この面からはみ出ないように接着剤等により貼付して設けられている。尚、磁性板2cは、前記ロータ板2aを介して前記センシング板2bの全面に対向して設けることができればどのような形状でもよく、ドーナツ状に限定されない。
前記取付部2dは、リング状に形成され、前記ロータ2の孔に固定して設けられる。この取付部2dはシャフト等の回転軸Shに取付けられ、前記ロータ2は、取付部2dを介してシャフト等の回転軸Shに固定されて回転軸Shと一体に回転する。
コイルコア4は、図1乃至図3に示すように、交流励磁電流が流され磁気回路を形成する励磁コイル4bと、この励磁コイル4bを保持するコア4aとから構成され、前記ロータ2の周方向に沿って中心角90°間隔で4箇所に配置され、これらのコイルコア4は、上面側が前記センシング板2bに対して対向配置され、下面側がサブステータ5に固定して設けられる。
前記コア4aは、絶縁磁性材(例えば、Ni−Zn系、Mn−Zn系、Mg−Zn系のフェライトに、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等の電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂を混合したもの、あるいはセラミック等)からなり、円柱状に形成され、上面側に励磁コイル4bを収容するリング状の空間部を有する。
前記励磁コイル4bは、例えばエナメル線等を巻回して形成され、前記コア4aの空間部に収容され保持されて、前記センシング板2bに対して対向配置して設けられる。各励磁コイル4bは、直列に接続され測定装置6に電気的に接続され、交流励磁電流が流される。これらの励磁コイル4bは、交流励磁電流が流れると、周囲に交流磁界を形成して、磁気回路Cmgを形成する。
ケース3は、図1、及び図2に示すように、中央部に回転軸Shが挿通される孔3cが形成された円板状の上ケース3aと、中央部に回転軸Shが挿通される孔3dが形成された円板状の底板部に円環状に側壁が設けられた下ケース3bとから構成され、これら上下ケース3a、3bは合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)あるいは導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)から形成される。そして、ケース3は、上ケース3aと下ケース3bとを係合して設けられ、前記ロータ2、各コイルコア4及び測定装置6は、前記上ケース3aと下ケース3bとにより形成される円環状の空隙部に収納して設けられている。
図2に示すように、前記ロータ2は、センシング板2bを下ケース3bの底板部側に向けて、前記ケース3内で回転軸Shと一体に回転可能に設けられる。前記各コイルコア4は、励磁コイル4bを前記センシング板2bに対向して前記センシング板2bに対して前記回転軸Shの軸線方向に数mm程度の間隔を置いて対向配置されて、下ケース3b内に固定して設けられた板状のサブステータ5の上面側に固定して設けられる。前記測定装置6は、前記サブステータ5の下面側に固定して設けられている。そして、ケース3は、図示しない固定部材に固定して配置される。
測定装置6は、基板に回路を構成して設けられ、測定装置6は、ケース3から外部へ延出させた複数の電線19に設けられたコネクタ(図示せず)を介して電源や信号伝送用のワイヤハーネスと接続されると共に、ケース3の外部に設けられた外部装置と電気的に接続される。測定装置6は、図5に示すように、分周回路6bと測定部6gとの間に、位相シフト部6c1、位相シフト量検出部6d1、コンバータ6e1、位相シフト部6c2、位相シフト量検出部6d2、コンバータ6e2、位相シフト部6c3、位相シフト量検出部6d3、コンバータ6e3及び位相シフト部6c4、位相シフト量検出部6d4、コンバータ6e4が並列に接続されている。尚、サブステータ5を設けずに、測定装置6の基板をサブステータとして用いてもよい。
コンバータ6e1の出力信号Sc1とコンバータ6e2の出力信号Sc2は、差動アンプ6h1で差分された後、図示しない増幅器で増幅されて測定部6gのA/Dコンバータへ電圧信号の出力Po1として出力される他、直接測定部6gへと出力される。また、差動アンプ6h1には、増幅された電圧値の電圧レベルを調整するシフトレベル調整部6j1が接続されている。
同様に、コンバータ6e3の出力信号Sc3とコンバータ6e4の出力信号Sc4は、差動アンプ6h2で差分された後、図示しない増幅器で増幅されて測定部6gのA/Dコンバータへ電圧信号の出力Po2として出力される他、直接測定部6gへと出力される。また、差動アンプ6h2には、増幅された電圧値の電圧レベルを調整するシフトレベル調整部6j2が接続されている。さらに、コンバータ6e5の出力信号Sc5は、直接測定部6gへ出力される。
発振回路6aは、分周回路6bを介して特定周波数の発振信号を、図5に示す抵抗R1〜R4、励磁コイル4b1〜4b4、及びコンデンサC1〜C4からなる位相シフト部6c1〜6c4に出力する。このとき、各コンデンサC1〜C4の両端における電圧信号の位相は、励磁コイル4b1〜4b4の後述するインピーダンスの変動によって変化する。コンデンサC1〜C4両端の電圧信号は、位相シフト量検出部6d1〜6d4へ出力される。
各位相シフト量検出部6d1〜6d4は、各コンデンサC1〜C4両端の電圧信号の位相シフト量を検出する。コンバータ6e1〜6e4は、検出された前記位相シフト量を対応する電圧値に変換する。変位センサ1は、例えば、ワンチップマイクロプロセッサ等を用いた測定部6gに、図5に示すように、増幅された2つの差分信号である出力Po1、Po2及び4つのコンバータ6e1〜6e4からの出力信号Sc1〜Sc4が入力される。すると、測定部6gは、先ず、4つの出力信号Sc1〜Sc4のレベルの大小関係を比較することによって、ロータ2のセンシング部3bにおいて、励磁コイル4b1〜4b4が配置された位置を判別する。その後、その位置に従い、リニアリティが優れている励磁コイル4b1〜4b4の差分信号を用いて測定部6gが適当な信号処理を行い、処理された信号を角度信号としてワンチップマイクロプロセッサから出力する。本実施例では、測定部6gのワンチップマイクロプロセッサから出力される角度信号は、一定周期のパルス信号で、そのデューティー比はロータ2の回転角度に比例する。
上記のように構成される変位センサ1は、各励磁コイル4bに交流励磁電流が流されると、図4に示されるように、各励磁コイル4bは、周囲に交流磁界を形成し、コア4aと磁性板2cは協同して磁気回路Cmgを形成する。この磁気回路Cmgは、センシング板2bを介して磁性板2cを通過して形成され、コア4aからの磁束はセンシング板2bを横切ってから磁性板2cを通過する。このとき、磁束がセンシング板2bを横切ると、センシング板2bの表面には渦電流が誘起され、励磁コイル4bのインピーダンスを変動させる。このインピーダンスの変動量は、センシング板2bの表面に誘起される渦電流量に対応して変動する。センシング板2bの表面に誘起される渦電流量は、コイルコア4に対向する部分のセンシング板2bの面積により変動する。よって、ロータ2が回転すると、各コイルコア4と対向するロータ2のセンシング板2bの幅はロータ2の回転角度に比例して変動し、これに伴って、センシング板2bのコイルコア4に対向する部分の面積も変動する。この結果、各励磁コイル4bのインピーダンスの変動が生じ、この変動を前記測定装置6が検知し、ロータ2の角度信号に変換して、ロータ2の回転角度を360度にわたって検出することができる。これにより、回転軸Shの回転角度は360度にわたって検出される。
ここで、例えば変位センサ1が自動車等、振動が加わる箇所に配置される等して変位センサ1に振動が加わった場合、前記コイルコア4とロータ2との間隔は変動するため、センシング板2bの磁束に与える影響は変動し、これに伴いセンシング板2bの各励磁コイル4bのインピーダンスに与える影響も変動する。また、ロータ板2aの他方の面には磁性板2cが設けられているため、磁性板2cの磁束に与える影響も変動して、これに伴い磁性板2cの各励磁コイル4bのインピーダンスに与える影響も変動する。このとき、センシング板2bと磁性板2cはロータ板2aに一体に設けられているので、両者の各励磁コイル4bとの間隔の変動量は同じである。物性上、センシング板2bは磁束を通しにくくするものであるのに対して磁性板2cは磁束を通し易くするものであるため、それぞれの磁束へ与える影響は相反する。よってセンシング板2bと磁性板2cが、各励磁コイル4bのインピーダンスに与える影響も相反するものとなり、両者の励磁コイル4bのインピーダンスに与える影響は相殺される。この結果、図4に示すように、センシング板2bとコイルコア4との間隔をA、センシング板2bとコイルコア4との間隔の変動量をα、この変動量αによる変位センサ1の出力変動の大きさをBとすると、図6に示すように、変位センサ1の振動等に起因する出力変動は、従来の変位センサ20の出力変動と比較して1/10程度となり、検出誤差を低減させることができる。さらに、従来技術のように各コイルコア4を対向して設ける必要はなく、磁性板2cの厚みはコイルコア4の高さ方向の寸法と比較して小さいため、ケース3の回転軸Shの軸線方向の高さを低くして変位センサ1を小型化でき、コストを低減することができる。また、変位センサ1を容易に組立てることもできる。
尚、本実施形態では図2あるいは図4に示されるように、ロータ板2aの一方の面にセンシング板2bを貼付して設け、他方の面に磁性板2cを設けてロータ2を形成したが、図7に示すように、センシング板2bの全面が覆われるようにセンシング板2bと磁性板2cとを貼り合わせて設けたものを、センシング板2bがコイルコア4の励磁コイル4b側に配置されるようにロータ板2aの下面側に貼付して、磁気回路Cmgが前記センシング板2bを介して磁性板2cを通過するようにロータ2′を形成してもよい。
また、図8に示すように、センシング板2bの全面が覆われるようにセンシング板2bと磁性板2cとを貼り合わせて設けたものを、センシング板2bがコイルコア4の励磁コイル4b側に配置されるようにロータ板2aの上面側に貼付して、磁気回路Cmgが前記センシング板2bを介して磁性板2cを通過するようにロータ2″を形成してもよい。
さらに、図7あるいは図8において、特に支障なければ、取付部2dを磁性板2cに設ける等してロータ板2aを省略することもできる。
次に、本発明の第2実施形態の変位センサ7を図9により説明する。図9は、本発明の第2実施形態の変位センサ7の要部を示した断面図である。この変位センサ7は、本発明の第1実施形態における変位センサ1において、ロータ2の代わりにロータ8を用いたもので、その他の構成は第1実施形態の変位センサ1と同じである。また、ロータ8を構成する各部材の材質と形状も、ロータ2の各部材の材質と形状と実質的に同じである。
図9に示すように、ロータ8は、導電性部材を周方向に沿って幅を変化させて設けられた環状のセンシング板8bと磁性部材からなる環状の磁性板8cとを、ロータ板8aの一方の面に貼り付けて設けられ、両者は、磁気回路Cmgが前記センシング板8bを介して磁性板8cを通過するように配置される。
変位センサ7の各コイルコア4の各励磁コイル4bに交流励磁電流が流されると、各励磁コイル4bは周囲に交流磁界を形成し、コア4aと磁性板8cは協同して磁気回路Cmgを形成する。この磁気回路Cmgは、センシング板8bを介して磁性板8cを通過して形成され、コア4aからの磁束はセンシング板8bを通過してから磁性板8cを通過する。このとき、磁束がセンシング板8bを通過すると、センシング板8bには渦電流が誘起され、励磁コイル4bのインピーダンスを変動させる。このインピーダンスの変動量は、ロータ8の回転に伴い、ロータ8の回転角度に比例して変動するように設けられているので、この各励磁コイル4bのインピーダンスの変動を前記測定装置6で検知し、ロータ8の角度信号に変換して、ロータ8の回転角度を検出することができる。これにより、回転軸Shの回転角度は検出される。
このように構成しても、センシング板8bと磁性板8cはロータ板8aに一体に設けられているので両者の励磁コイル4bのインピーダンスに与える影響を相殺することができ、変位センサ1と同様に、振動等に起因する変位センサ7の検出誤差を低減して回転軸Shの回転角度を検出することができる。さらに、変位センサ7を小型化でき、コストを低減することができる。また、変位センサ7を容易に組立てることもできる。尚、センシング板8bと磁性板8cとを、磁気回路Cmgが前記センシング板8bを介して磁性板8cを通過するように配置して設ければ、両者をロータ板8aの他方の面側に設けてもよい。
次に、本発明の第3実施形態の変位センサ9を図10乃至図14により説明する。変位センサ9は、対象物の回転数を検出するセンサである。
変位センサ9は、図10、図11に示すように、例えば、本発明の第1実施形態の変位センサ1近傍に配置され、変位センサ1のロータ2の回転数を検出することができる。尚、変位センサ9を、本発明の第2実施形態の変位センサ7近傍に配置して、変位センサ7のロータ8の回転数を検出してもよい。
図11は、図10の変位センサ9の断面図を示したもので、変位センサ9は、ロータ10、コイルコア12及び測定装置13を備え、これらロータ10、コイルコア12及び測定装置13は、変位センサ1のロータ2、コイルコア及び測定装置等と共にケース11内に収納されている。尚、変位センサ1のロータ2は、ロータ板の側縁部に1つの突出部2eが径方向に突き出して設けられている。
尚、ロータ2の代わりに、図7に示されるロータ2′または図8に示されるロータ2″を用いてもよい。
ロータ10は、図10乃至図12に示すように、ロータ板10a、センシング板10b、磁性板10c及び突部10dとから構成される。
前記ロータ板10aは合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)からなり、円板状に形成される。また、ロータ板10aの中央部には回転軸Zが設けられる。さらに、ロータ板10aの一方の面には、5つの突部10dが、周方向に中心角72°の等間隔で5個所に配置されて一体に設けられている。これらの突部10dは、前記変位センサ1のロータ2が一回転する度に該ロータ2の突出部2eと係合される。尚、突部の数は、5個所に限定されることはなく、いくつ設けてもよい。
前記センシング板10bは、導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)製の薄板からなり、前記ロータ板10aの他方の面に、接着剤等により貼付して設けられている。センシング板10bは、図12に示すように、前記ロータ板10aの周方向に沿って幅を変化させて、ロータ10の回転角度に対応して半径方向の幅が変化するように形成されている。このセンシング板10bには、変位センサ1のロータ2のセンシング板と同様に交流磁界によって回転角度に対応した大きさの渦電流が誘起される。
前記磁性板10cは、磁性体(例えば、ステンレス材(例えばSUS430等)、アモルファス材、フェライト材等)からなる薄板で、前記センシング板10bの前記ロータ板10aに貼付されている面の面積よりも大きな面積を有し、この面の全面を覆うことができる大きさでドーナツ状に形成されている。この磁性板10cは、前記ロータ板10aを介して前記センシング板10bの全面に対向させて、前記ロータ板10aの一方の面に、この面からはみ出ないように接着剤等により貼付して設けられている。尚、磁性板10cは、前記ロータ板10aを介して前記センシング板10bの全面に対向して設けることができればどのような形状でもよく、ドーナツ状に限定されない。
コイルコア12は、図10及び図11に示すように、交流励磁電流が流され磁気回路を形成する励磁コイル12bと、この励磁コイル12bを保持するコア12aとから構成され、前記センシング板10bに対して上面側を対向配置して、下面側を測定装置13に固定して設けられる。
前記コア12aは、絶縁磁性材(例えば、Ni−Zn系、Mn−Zn系、Mg−Zn系のフェライトに、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等の電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂を混合したもの、あるいはセラミック等)からなり、円柱状に形成され、上面側に励磁コイル12bを収容するリング状の空間部を有する。
前記励磁コイル12bは、例えばエナメル線等を巻回して形成され、前記コア12aの空間部に収容され保持されて、前記センシング板10bに対して対向配置して設けられる。励磁コイル12bは測定装置13に電気的に接続され、交流励磁電流が流される。この励磁コイル12bは、交流励磁電流が流れると、周囲に交流磁界を形成して、磁気回路Cmgを形成する。
ケース11は、図10、及び図11に示すように、円板状の上ケース11aと、円板状の底板部に円環状に側壁が設けられた下ケース11bとから構成され、これら上下ケース11a、11bは合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)あるいは導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)から形成される。そして、ケース11は、上ケース11aと下ケース11bとを係合して設けられ、前記ロータ10、コイルコア12及び測定装置13は、前記上ケース11aと下ケース11bとにより形成される空隙部に収納して設けられている。さらに、変位センサ1のロータ2、コイルコア及び測定装置も、第1実施形態におけるケース1内に設けられるのと同様にケース11内に収納して設けられる。
図11に示すように、前記測定装置13が設けられた基板は、前記下ケース11bの底板部上面に固定して設けられている。前記ロータ10は、センシング板10bを下ケース11bの底板部側に向けて、前記突部10dが前記変位センサ1のロータ2の突出部2eと係合可能に配置され、前記回転軸Zと一体に回転可能に設けられる。前記回転軸Zは下ケース11bに回転自在に軸支される。前記コイルコア12は、励磁コイル12bを前記センシング板10bに対向して前記センシング板10bに対して前記回転軸Zの軸線方向に数mm程度の間隔を置いて対向配置されて、前記測定装置13の基板の上面側に固定して設けられる。そして、ケース11は、図示しない固定部材に固定して配置される。
尚、変位センサ9のロータ10の突部10dと、変位センサ1のロータ2の突出部2eは互いに係合可能に設けられているので、前記ロータ10は、前記ロータ2が1回転する毎に突出部2eが突部10dと係合して72°ずつ回転される。
測定装置13は、基板に回路を構成して設けられ、測定装置13は、ケース11から外部へ延出させた複数の電線19に設けられたコネクタ(図示せず)を介して電源や信号伝送用のワイヤハーネスと接続されると共に、ケース11の外部に設けられた外部装置と電気的に接続される。測定装置13は、図13に示すように、分周回路13bと測定部13gとの間に、位相シフト部13c、位相シフト量検出部13d、コンバータ13e及び増幅回路13fが接続されている。
発振回路13aは、分周回路13bを介して特定周波数の発振信号を、図13に示す抵抗R、励磁コイル12b、及びコンデンサCからなる位相シフト部13cに出力する。このとき、コンデンサCの両端における電圧信号の位相は、励磁コイル12bのインピーダンスの変動によって変化する。コンデンサCの両端の電圧信号は、位相シフト量検出部13dへ出力される。
位相シフト量検出部13dは、コンデンサCの両端の電圧信号の位相シフト量を検出する。コンバータ13eは、検出された前記位相シフト量を対応する電圧値に変換する。変位センサ9は、例えば、ワンチップマイクロプロセッサ等を用いた測定部13gに、図13に示すように、コンバータ13eからの出力信号Scが増幅回路13fで増幅されて入力される。すると、測定部13gは、出力信号Scの電圧値を読み取り、適当な信号処理を行い、後述するようにロータ10の回転数を検出する。
上記のように構成される変位センサ9においては励磁コイル12に交流励磁電流が流されると、励磁コイル12bは、周囲に交流磁界を形成し、コア12aと磁性板10cは協同して磁気回路Cmgを形成する。この磁気回路Cmgは、センシング板10bを介して磁性板10cを通過して形成され、コア10aからの磁束はセンシング板10bを横切ってから磁性板10cを通過する。このとき、磁束がセンシング板10bを横切ると、センシング板10bの表面には渦電流が誘起され、励磁コイル12bのインピーダンスを変動させる。このインピーダンスの変動量は、センシング板12bの表面に誘起される渦電流量に対応して変動する。センシング板10bの表面に誘起される渦電流量は、コイルコア12に対向する部分のセンシング板10bの面積により変動する。よって、ロータ10が、変位センサ1のロータ2が1回転する度にこれに伴い間欠的に回転すると、コイルコア12と対向するロータ10のセンシング板10bの幅はロータ10の回転に伴って変動し、センシング板10bのコイルコア12に対向する部分の面積も変動する。この結果、励磁コイル12bのインピーダンスの変動が生じ、この変動を前記測定装置13が検知し、ロータ10の回転数信号に変換して、図14に示されるように、ロータ10の回転数が5段階にわたって検出される。これにより、前記ロータ2の回転数を5段階にわたって検出できる。
よって、変位センサ1と変位センサ9とを組み合わせて用いることにより、変位センサ1が取付け固定された回転軸Shの回転角度は、時計回り方向に900度、反時計回り方向に900度ずつ(左右に2回転半ずつ)、あわせて1800度にわたって検出することができる。
ここで、例えば変位センサ9が自動車等、振動が加わる箇所に配置される等して変位センサ9に振動が加わった場合、前記コイルコア12とロータ10との間隔は変動するため、センシング板10bの磁束に与える影響は変動し、これに伴いセンシング板10bの各励磁コイル12bのインピーダンスに与える影響も変動する。また、ロータ板10aの一方の面には磁性板10cが設けられているため、磁性板10cの磁束に与える影響も変動して、これに伴い磁性板10cの励磁コイル12bのインピーダンスに与える影響も変動する。このとき、センシング板10bと磁性板10cはロータ板10aに一体に設けられているので、両者の励磁コイル12bとの間隔の変動量は同じである。物性上、センシング板10bは磁束を通しにくくするものであるのに対して磁性板10cは磁束を通し易くするものであるため、それぞれの磁束へ与える影響は相反する。よって、センシング板10bと磁性板10cが、各励磁コイル12bのインピーダンスに与える影響も相反するものとなり、両者の励磁コイル12bのインピーダンスに与える影響は相殺される。この結果、振動等に起因する変位センサ9の検出誤差を低減させることができる。
尚、測定装置13は、変位センサ1の測定装置6と同じ基板に回路を形成して設けてもよい。この場合、前記位相シフト部13c、位相シフト量検出部13d及びコンバータ13eは、測定部6の各位相シフト部、位相シフト量検出部及びコンバータ等と並列に接続して設けられ、コンバータ13eからの出力信号Scを変位センサ1の測定装置6の測定部6gに入力して処理してもよい。
次に、本発明の第4実施形態の変位センサ14を図15乃至図19により説明する。変位センサ14は、対象物の直線方向の移動量を検出するセンサである。
図15は、変位センサ14の全体を示した図である。変位センサ14は、移動子15dを、例えば自動車のシート等の直線方向に移動可能に設けられた部材に取り付けて、前記部材の長手方向の移動量を検知して用いられる。
図16は、図15の変位センサ14の断面図を示したもので、変位センサ14は、移動体15、コイルコア17及び測定装置18を備え、これら移動体15、コイルコア17及び測定装置18はケース16内に収納されている。
移動体15は、図16及び図17に示すように、移動板15a、センシング板15b、磁性板15c及び移動子15dから構成され、移動子15dが例えば自動車内のシート等に取付け固定して設けられる。
前記移動板15aは、合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)からなり、板状に形成され、センシングの対象となる移動部材に取り付け固定されて該移動部材と共に移動する棒状の移動子15dが、端部に一体に設けられる。
図17に示すように、前記センシング板15bは、導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)製の薄板からなり、前記移動板15aの一方の面に、接着剤等により貼付して設けられている。センシング板15bは、前記移動板15aの長手方向に沿って幅を変化させて、移動体15の移動量に対応して長手方向の幅が変化するように形成されている。このセンシング板15bには、後述する交流磁界によって移動量に対応した大きさの渦電流が誘起される。
前記磁性板15cは、磁性体(例えば、ステンレス材(例えばSUS430等)、アモルファス材、フェライト材等)からなる薄板で、前記センシング板15bの前記移動板15aに貼付されている面の面積よりも大きな面積を有し、この面の全面を覆うことができる大きさで長方形に形成されている。この磁性板15cは、前記移動板15aを介して前記センシング板15bの全面に対向させて、前記移動板15aの他方の面に、この面からはみ出ないように接着剤等により貼付して設けられている。尚、磁性板15cは、前記移動板15aを介して前記センシング板15bの全面に対向して設けることができればどのような形状でもよく、長方形に限定されない。
コイルコア17は、図15及び図16に示すように、交流励磁電流が流され磁気回路を形成する励磁コイル17bと、この励磁コイル17bを保持するコア17aとから構成される。このコイルコア17は、上面側が前記センシング板17bに対して対向配置され、下面側を測定装置18に固定して設けられる。
前記コア17aは、絶縁磁性材(例えば、Ni−Zn系、Mn−Zn系、Mg−Zn系のフェライトに、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等の電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂を混合したもの、あるいはセラミック等)からなり、円柱状に形成され、上面側に励磁コイル17bを収容するリング状の空間部を有する。
前記励磁コイル17bは、例えばエナメル線等を巻回して形成され、前記コア17aの空間部に収容され保持されて、前記センシング板15bに対して対向配置して設けられる。励磁コイル17bは測定装置18に電気的に接続され、交流励磁電流が流される。この励磁コイル17bは、交流励磁電流が流れると、周囲に交流磁界を形成して、磁気回路Cmgを形成する。
ケース16は、図15及び図16に示すように、中央部に長手方向にわたって前記移動子15dが挿通される長孔16dが設けられた板状の上ケース16aと、板状の底板部に同じ高さを有する4枚の長方形の側壁が設けられ、前記移動体15を所定のクリアランスを確保して保持する一対の保持部16cが、前記側壁内側に対向させて形成された下ケース16bとから構成され、これら上下ケース16a、16bは合成樹脂等(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ABS樹脂等ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等)あるいは導電性部材(例えば、銅、銀、アルミニウム、黄銅等)から形成される。そして、ケース16は、上ケース16aと下ケース16bとを係合して設けられ、前記移動体15、コイルコア17及び測定装置18は、前記上ケース16aと下ケース16bとにより形成される直方体状の空隙部に収納して設けられる。
図17に示すように、前記測定装置18が設けられた基板は、前記下ケース16bの底板部上面に固定して設けられている。前記移動体15は、センシング板15bを下ケース16bの底板部側に向けて、移動板15aの長辺縁部を前記保持部16上に移動可能に保持されてケース16内に設けられる。前記コイルコア17は、励磁コイル17bを前記センシング板15bに対向して前記センシング板15bに対して数mm程度の間隔を置いて対向配置されて、前記測定装置18の基板の上面側に固定して設けられる。そして、上ケース16aは、前記長孔16dに前記移動子15dが挿通されて下ケース16bと係合されてケース16が設けられ、このケース16は、図示しない固定部材に固定して配置される。
測定装置18は、基板に回路を構成して設けられ、測定装置18は、ケース16から外部へ延出させた複数の電線19に設けられたコネクタ(図示せず)を介して電源や信号伝送用のワイヤハーネスと接続されると共に、ケース16の外部に設けられた外部装置と電気的に接続される。測定装置18は、図18に示すように、分周回路18bと測定部18gとの間に、位相シフト部18c、位相シフト量検出部18d、コンバータ18e及び増幅回路18fが接続されている。
発振回路18aは、分周回路18bを介して特定周波数の発振信号を、図18に示す抵抗R、励磁コイル18b、及びコンデンサCからなる位相シフト部18cに出力する。このとき、コンデンサCの両端における電圧信号の位相は、励磁コイル18bのインピーダンスの変動によって変化する。コンデンサCの両端の電圧信号は、位相シフト量検出部18dへ出力される。
位相シフト量検出部18dは、コンデンサCの両端の電圧信号の位相シフト量を検出する。コンバータ18eは、検出された前記位相シフト量を対応する電圧値に変換する。変位センサ14は、例えば、ワンチップマイクロプロセッサ等を用いた測定部18gに、図18に示すように、コンバータ18eからの出力信号Scが増幅回路18fで増幅されて入力される。すると、測定部18gは、出力信号Scの電圧値を読み取り、適当な信号処理を行い、後述するように移動体15の移動量を検出する。
上記のように構成される変位センサ14においては励磁コイル17bに交流励磁電流が流されると、励磁コイル17bは、周囲に交流磁界を形成し、コア17aと磁性板15cは協同して磁気回路Cmgを形成する。この磁気回路Cmgは、センシング板15bを介して磁性板15cを通過して形成され、コア17aからの磁束はセンシング板15bを横切ってから磁性板15cを通過する。このとき、磁束がセンシング板15bを横切ると、センシング板15bの表面には渦電流が誘起され、励磁コイル17bのインピーダンスを変動させる。このインピーダンスの変動量は、センシング板15bの表面に誘起される渦電流量に対応して変動する。センシング板15bの表面に誘起される渦電流量は、コイルコア17に対向する部分のセンシング板15bの面積により変動する。よって、移動体15が長手方向に移動すると、コイルコア17と対向する移動体15のセンシング板15bの幅は移動体15の移動量に比例して変動し、これに伴って、センシング板15bのコイルコア17に対向する部分の面積も変動する。この結果、励磁コイル17bのインピーダンスの変動が生じ、この変動を前記測定装置18が検知し、移動体15の移動信号に変換して、図19に示すように、移動体15が取り付け固定されているシート等の移動量が検出される。
ここで、例えば変位センサ14が自動車等、振動が加わる箇所に配置される等して変位センサ14に振動が加わった場合、移動体15は移動し易くするために所定のクリアランスを有して保持部16cに保持されているので、前記コイルコア17と移動体15との間隔は前記クリアランスの範囲内で変動するため、センシング板15bの磁束に与える影響は変動し、これに伴いセンシング板15bの励磁コイル17bのインピーダンスに与える影響も変動する。また、移動板15aの他方の面には磁性板15cが設けられているため、磁性板15cの磁束に与える影響も変動して、これに伴い磁性板15cの励磁コイル17bのインピーダンスに与える影響も変動する。このとき、センシング板15bと磁性板15cは移動板15aに一体に設けられているので、両者の励磁コイル17bとの間隔の変動量は同じである。物性上、センシング板2bは磁束を通しにくくするものであるのに対して磁性板2cは磁束を通し易くするものであるため、それぞれの磁束へ与える影響は相反する。よって、センシング板15bと磁性板15cが、各励磁コイル17bのインピーダンスに与える影響も相反するものとなり、両者の励磁コイル17bのインピーダンスに与える影響は相殺される。この結果、振動等に起因する変位センサ14の検出誤差を低減させることができる。さらに、2つのコイルコア17を対向して設ける必要はなく、ケース16の高さを低くして変位センサ14を小型化でき、コストを低減することができる。また、変位センサ14を容易に組立てることもできる。
尚、本実施形態では図16に示されるように、移動板15aの一方の面にセンシング板15bを貼付して設け、他方の面に磁性板15cを設けて移動体15を形成したが、図20に示すように、センシング板15bの全面が覆われるようにセンシング板15bと磁性板15cとを貼り合わせて設けたものを、センシング板15bがコイルコア17の励磁コイル17b側に配置されるように移動板15aの下面側に貼付して、磁気回路が前記センシング板15bを介して磁性板15cを通過するように移動板15´を形成してもよい。
また、図21に示すように、センシング板15bの全面が覆われるようにセンシング板15bと磁性板15cとを貼り合わせて設けたものを、センシング板15bがコイルコア17の励磁コイル17b側に配置されるように移動板15aの上面側に貼付して、磁気回路が前記センシング板15bを介して磁性板15cを通過するように移動板15″を形成してもよい。
さらに、図20あるいは図21において、特に支障なければ、移動子15dを磁性板15cに設ける等して移動板15aを省略することもできる。
尚、上述した各実施形態では、コイルコア側を固定し、このコイルコアに対してセンシング部材側を相対的に移動させたが、センシング部材側を固定して、このセンシング部材に対してコイルコア側を相対的に移動させてもよい。