JP2005257547A - ステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置 - Google Patents

ステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置 Download PDF

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憲彦 赤尾
Hideyuki Sato
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Abstract

【課題】 ノイズに影響されることなく、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置を特定することができるステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のステータの絶縁不良箇所特定方法は、ステップS5において、移動アンテナ信号測定位置ごとに、検出された移動アンテナ信号と固定アンテナ信号との組に基づいて、当該組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。ノイズ検出信号である(No)と判定した場合には、移動アンテナを移動させずに、ステップS3に戻り、再度、固定アンテナ及び移動アンテナによって、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号を検出する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置に関する。
従来より、ステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置について、様々なものが提案されている。
特開平04−296673号公報 特開2001−74802号公報 特開平04−313074号公報 特開平07−39111号公報
特許文献1は、回転電気(発電機あるいは電動機)の固定フレームの内壁面のうち巻線端部と対向する位置にループアンテナを固設し、使用に伴い絶縁劣化した箇所から生じる部分放電に基づく電磁波を検出して、絶縁劣化による異常を検出するものである。従って、特許文献1では、異常の有無を検出することはできるが、絶縁不良箇所を特定することは困難であった。
ところで、部分放電に基づく電磁波を検出することにより絶縁劣化(絶縁不良)による異常を検出する手法では、部分放電により放射された電磁波とは異なるノイズを検出した場合に、このノイズ信号を部分放電によるものと誤って判断してしまう虞がある。
これに対し、特許文献2は、回転電気のフレーム内部に部分放電センサを固設し、この部分放電センサで検出した信号を分岐して異なる2周波数帯域で同時に計測する。そして、計測した信号の2周波数強度相関に基づいて2周波強度比が一定範囲にある信号群に分離し、これを発生頻度別に分離して演算処理することで絶縁劣化による異常を検出するものである。すなわち、特許文献2は、回転電気の運転に伴うノイズに影響されることなく、絶縁劣化による異常を検出することができるが、絶縁不良箇所を特定することまでは困難であった。
特許文献3は、回転電気の固定フレームの内壁面のうちコイルエンドと対向する位置にリフレクタアンテナを周方向に複数個配設し、検出信号を異常検出器に入力して絶縁劣化による異常を検出するものである。従って、特許文献3では、リフレクタアンテナを周方向に複数個配設することにより、ノイズに影響を低減することはできるが、絶縁不良箇所を特定することまでは困難であった。
特許文献4は、各相に1つずつ配置した部分放電センサで検出した信号の時間差に基づき、時間差がゼロの場合には部分放電信号ではなくノイズ信号であると判断し、部分放電信号とノイズ信号との切り分けをする。さらに、時間差が生じた場合には、最も早い時間に信号が検出された相を、部分放電が発生した相と特定する。しかしながら、発電所等で使用する大きな回転電気では、時間差によってノイズの切り分けをすることは可能であるが、自動車等に用いる小型のモータ(ステータ)では、極めて僅かな時間差(ns以下)を解析することが困難であるため、このような手法を用いて部分放電信号とノイズ信号との切り分けをすることは困難であった。また、この手法では、絶縁不良が発生している相を特定することはできるが、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置まで特定することはできなかった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ノイズに影響されることなく、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置(ステータをその周方向に見たときの絶縁不良箇所が存在する位置)を特定することができるステータの絶縁不良箇所特定方法及び絶縁不良箇所特定装置を提供することを目的とする。
その解決手段は、ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する方法であって、上記巻線に所定の電圧を印加して、上記巻線の絶縁不良箇所で部分放電を繰り返し発生させた状態で、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動可能で、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナによって、上記ステータの周方向に複数箇所設定されたそれぞれの移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかにおいて、移動アンテナ信号を検出すると共に、上記ステータに対する相対的位置が固定され、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの固定アンテナによって、固定アンテナ信号を検出する信号検出ステップと、上記移動アンテナ信号測定位置ごとに、上記移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して検出された上記固定アンテナ信号との組に基づいて、当該組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、上記部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、及び上記部分放電により放射された電磁波とは異なるノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定し、上記ノイズ検出信号であると判定した場合には、上記移動アンテナを移動させずに、再度、上記固定アンテナ及び上記移動アンテナによって、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号を検出させる信号判定ステップと、上記移動アンテナを上記移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかに移動させるアンテナ移動ステップと、上記移動アンテナ信号測定位置における上記移動アンテナ信号と、これと相前後して検出される上記固定アンテナ信号との組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置について検出し終えた後、各々の上記信号判定ステップにおいて上記放電検出信号であると判定された、上記移動アンテナ信号と上記固定アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップと、を備えるステータの絶縁不良箇所特定方法である。
本発明の絶縁不良箇所特定方法は、移動アンテナ信号測定位置ごとに検出された移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して検出された固定アンテナ信号との組に基づいて、この組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、いずれも部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、またはノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定する信号判定ステップを有している。このように、各々の信号判定ステップにおいて放電検出信号とノイズ検出信号との切り分けをした後、絶縁不良箇所特定ステップにおいて、放電検出信号と判定した固定アンテナ信号と移動アンテナ信号とに基づいて絶縁不良箇所を特定するので、ノイズに影響されることなく、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
具体的には、検出した固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、信号判定ステップにおいて、ノイズ検出信号であると判定された場合には、移動アンテナを移動させることなく、再度、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号を測定し直す。放電検出信号であると判定された場合には、移動アンテナを次の移動アンテナ信号測定位置に移動させて、移動アンテナ信号と共に固定アンテナ信号を検出する。このようにして、移動アンテナ信号測定位置における移動アンテナ信号と、これと相前後して検出される固定アンテナ信号とを、所定の複数の移動アンテナ信号測定位置について検出し終えた後、放電検出信号と判定された移動アンテナ信号と固定アンテナ信号とに基づいて、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定する。このようにすれば、ノイズを検出したノイズ検出信号を排除することができるので、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
なお、ノイズを検出したノイズ検出信号であるかを判定する手法としては、例えば、固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比)に基づいて判定することができる。具体的には、固定アンテナ及び移動アンテナによって同じノイズ信号を測定した場合には、信号強度比が1付近の値となる傾向にあるので、信号強度比が1付近の値となった場合には、ノイズ検出信号であると判定できる。これは、ノイズ信号の場合には、ステータとの位置関係に影響されることが少ないからであると考えられる。
なお、信号の強度としては、得られた信号の波形から信号の強さを対比するのに適切なルールにしたがって取得した値であれば、いずれのものを用いても良い。具体的には、例えば、固定アンテナ及び移動アンテナによって取得した信号波形において、最も大きな信号レベルと、これが得られた山の直後に現れる谷の谷底の信号レベルとの間の差を用いることができる。その他、得られた最大の信号レベルを信号の強度として用いることもできる。
また、移動アンテナは、ステータの周方向に相対的に移動すれば良く、例えば、アンテナ自身をステータの周方向に移動させる場合が挙げられる。あるいは、アンテナを所定の位置に固定し、ステータを周方向に回転させるようにしても良い。あるいは、アンテナ自身をステータの周方向に移動させると共に、ステータも周方向に回転させるようにしても良い。
さらに、上記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記信号判定ステップでは、前記移動アンテナ信号の強度と前記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、算出した上記信号強度比に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
固定アンテナ及び移動アンテナによって同じノイズ信号を測定した場合には、両アンテナの特性が同様であれば、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比が1付近の値となる傾向にある。ノイズによる信号は、固定アンテナ及び移動アンテナの区別なく、同様に生じる傾向にあるためである。そこで、本発明の絶縁不良箇所特定方法では、組をなす移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比に基づいて、この組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定するようにした。具体的には、信号判定ステップにおいて、信号強度比が1付近の値となった場合には、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもがノイズ検出信号であると判定する。これにより、ノイズ検出信号を排除することができる。
さらに、上記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記固定アンテナを、前記ステータの周方向の複数箇所に設け、前記信号判定ステップでは、上記複数箇所に設けたそれぞれの上記固定アンテナによって検出した複数の前記固定アンテナ信号の強度と、前記移動アンテナによって検出した前記移動アンテナ信号の強度との比である信号強度比をそれぞれ算出し、算出した上記信号強度比に基づいて、上記複数の固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
移動アンテナが固定アンテナ付近に位置するときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度の比(信号強度比)が1付近の値となってしまうので、ノイズ検出信号であるか、放電検出信号であるかの判断が困難となる。
これに対し、本発明の信号判定ステップでは、複数箇所に設けた固定アンテナによって検出した複数の固定アンテナ信号の強度と、移動アンテナによって検出した移動アンテナ信号の強度とのそれぞれの比(信号強度比)に基づいて、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。
このような手法では、移動アンテナが複数の固定アンテナのうち1つの固定アンテナ付近に位置するときは、両アンテナ信号の強度の比(信号強度比)が1付近の値となる。しかしながら、このとき、移動アンテナは、他の固定アンテナとは離れて位置しているため、ノイズの影響がなければ、他の固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比)は、1付近の値から外れているはずである。従って、各固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比)がいずれも1付近の値となった場合に限り、ノイズ検出信号であると判定できる。
従って、本発明の絶縁不良箇所特定方法によれば、適切に、ノイズを検出したノイズ検出信号を排除することができる。
あるいは、前記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記信号判定ステップでは、前記信号強度比を算出する他に、上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、上記信号強度比と、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布とに基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
信号強度比のみに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する手法では、移動アンテナが固定アンテナ付近に位置したときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度比が1付近の値となるので、ノイズ検出信号であるか否かの判断が困難となることがある。
これに対し、本発明の信号判定ステップでは、信号強度比の他に、周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、放電検出信号とノイズ検出信号とでは、信号に含まれる各周波数成分の強度が異なることを利用して、例えば、周波数分析によって得られたスペクトルのうち、放電検出信号の共振周波数帯域近傍のスペクトルを積分し、この積分値が所定の基準値以上であるか否かを判断する。これにより、信号強度比が1付近の値となった場合でも、スペクトルの積分値が基準値以上の場合には放電検出信号であると判断でき、基準値よりも小さい場合にはノイズ検出信号であると判断できる。
従って、本発明の絶縁不良箇所特定方法によれば、検出した固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれについても、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを正確に判定することができ、ひいては、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
あるいは、前記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記信号判定ステップでは、前記移動アンテナ信号及び前記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
本発明の信号判定ステップでは、周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、放電検出信号とノイズ検出信号とのスペクトル分布が異なることを利用して、例えば、周波数分析によって得られたスペクトルのうち、放電検出信号の共振周波数帯域近傍のスペクトルを積分し、この積分値が所定の基準値以上であるか否かを判断する。基準値以上の場合には放電検出信号であると判断でき、基準値よりも小さい場合にはノイズ検出信号であると判断できる。
他の解決手段は、ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する方法であって、上記巻線に所定の電圧を印加して、上記巻線の絶縁不良箇所で部分放電を繰り返し発生させた状態で、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動可能で、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナによって、上記ステータの周方向に複数箇所設定された移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかにおいて検出された、上記部分放電による移動アンテナ信号と、上記ステータの周方向の複数箇所に上記ステータに対する相対的位置が固定されて上記部分放電により放射された電磁波を受信する複数の固定アンテナを用い、これら複数の固定アンテナによって、上記移動アンテナ信号と相前後して検出された上記部分放電による複数の固定アンテナ信号のうち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された第1固定アンテナにかかる上記部分放電による第1固定アンテナ信号と、の組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得し、取得した複数組の上記移動アンテナ信号と上記第1固定アンテナ信号とに基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップを備えるステータの絶縁不良箇所特定方法である。
本発明の絶縁不良箇所特定方法では、固定アンテナ信号として、ステータの周方向の複数箇所に設けられた固定アンテナによって検出された部分放電による複数の固定アンテナ信号のうち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された第1固定アンテナにかかる部分放電による第1固定アンテナ信号を用い、この第1固定アンテナ信号と移動アンテナ信号とに基づいて、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定する。
最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された第1固定アンテナは、通常部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近い固定アンテナであるため、毎回、安定して強度の大きな固定アンテナ信号を検出することができる。本発明では、このように安定で強度の大きな第1固定アンテナ信号と、移動アンテナ信号との複数の組に基づいて絶縁不良箇所を特定する(具体的には、各組とも、安定で強度の大きな第1固定アンテナ信号を基準として、移動アンテナ信号と比較する)ため、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を、位置精度良く、特定することができる。
また、固定アンテナ信号の処理については、複数の固定アンテナから選択した唯1つの固定アンテナからの固定アンテナ信号を処理するだけとなるため、信号処理が簡易となる。また、信号処理時間を短縮することができる。
さらに、上記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記複数の固定アンテナによって、前記部分放電による前記固定アンテナ信号をそれぞれ検出し、検出された上記固定アンテナ信号により最も強度の大きい固定アンテナ信号が得られる前記第1固定アンテナを選択する固定アンテナ選択ステップと、所定の複数の前記移動アンテナ信号測定位置について、前記移動アンテナによって検出される上記部分放電による前記移動アンテナ信号と、これと相前後して上記第1固定アンテナによって検出される上記部分放電による上記第1固定アンテナ信号との組をそれぞれ取得する信号検出ステップと、取得した複数の上記第1固定アンテナ信号と上記移動アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップと、を備えるステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
本発明の絶縁不良箇所特定方法では、ステータの周方向の複数箇所に固定された複数の固定アンテナのうち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された第1固定アンテナを選択し、この第1固定アンテナのみによって固定アンテナ信号を検出する。このように、固定アンテナ信号として、複数の固定アンテナから選択した唯1つの固定アンテナ(第1固定アンテナ)からの固定アンテナ信号(第1固定アンテナ信号)を検出するだけで足りるため、信号処理が簡易となる。また、信号検出時間を短縮することができる。
さらに、上記のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記複数の固定アンテナのうち、前記第1固定アンテナに対して前記ステータの周方向のうち第1周方向に隣り合う固定アンテナを第1隣在固定アンテナとし、上記第1固定アンテナに対して上記周方向のうち上記第1周方向と逆方向の第2周方向に隣り合う固定アンテナを第2隣在固定アンテナとし、上記第1隣在固定アンテナの周方向位置と上記第1固定アンテナの周方向位置との中間の周方向位置である第1中間周方向位置と、上記第2隣在固定アンテナの周方向位置と上記第1固定アンテナの周方向位置との中間の周方向位置である第2中間周方向位置とを両端とし、上記第1固定アンテナの周方向位置を含む周方向範囲を第1範囲としたとき、前記信号検出ステップでは、少なくとも、上記第1範囲に含まれる前記移動アンテナ信号測定位置について、前記移動アンテナ信号を検出するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
本発明の絶縁不良箇所特定方法では、前述のように、複数の固定アンテナのうち第1固定アンテナが、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近いことが既にわかっている。すなわち、第1固定アンテナの付近に、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在することがわかっている。そこで、本発明の絶縁不良箇所特定方法では、第1中間周方向位置と第2中間周方向位置とを両端とし、第1固定アンテナの周方向位置を含む周方向範囲を第1範囲としたとき、少なくとも、この第1範囲に含まれる移動アンテナ信号測定位置について移動アンテナ信号を検出するようにした。
このように、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲に限定して、移動アンテナ信号を測定するようにすれば、測定時間を短縮することができる。あるいは、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲について、測定点を細かく分割して測定すれば、位置精度良く、絶縁不良箇所を特定することができる。
なお、固定アンテナをステータの周方向の2カ所にのみ配置させた場合には、第1隣在固定アンテナと2隣在固定アンテナとは同一のアンテナとなり、第1範囲は、第1固定アンテナの周方向位置を中心としたステータ周りの半周となる。また、固定アンテナは、ステータの周方向の複数箇所に存在していればいくつでも良いが、多数の周方向箇所に固定アンテナを配置させるほど、移動アンテナを移動させる範囲が小さくなる点で好ましい。
さらに、上記いずれかのステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記複数の固定アンテナのうち、前記第1固定アンテナに次いで強度の大きい固定アンテナ信号が得られる固定アンテナを第2固定アンテナとしたとき、前記信号検出ステップでは、上記第1固定アンテナにおいて前記部分放電により放射された電磁波の信号を検出したと判断して前記第1固定アンテナ信号の取得を決定する基準信号レベルを、上記部分放電により放射された電磁波によって上記第1固定アンテナに生じる信号の信号レベルと上記第2固定アンテナに生じる信号の信号レベルとの間の値に設定しておき、前記移動アンテナ信号と共に、上記第1固定アンテナで上記基準信号レベルを上回る信号レベルを有する信号を上記第1固定アンテナ信号として取得するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
第1固定アンテナ信号の取得を決定する基準信号レベルを高い値に設定するほど、高い信号レベルを有する信号に限定して取得されるので、固定アンテナ信号を検出し難くなるが、第1固定アンテナによってノイズ信号を誤って検出してしまう虞を小さくできる。
そこで、本発明では、第1固定アンテナ信号の取得を決定する基準信号レベルを、部分放電により放射された電磁波によって第1固定アンテナに生じる信号の信号レベルと第2固定アンテナに生じる信号の信号レベルとの間の値に設定しておき、移動アンテナ信号と共に、基準信号レベルを上回る信号レベルを有する信号を第1固定アンテナ信号として取得するようにした。これにより、第1固定アンテナにおいて、少なくとも、部分放電により放射された電磁波によって第2固定アンテナに生じる信号の信号レベルよりも小さいノイズ信号を検出することを防止できる。従って、本発明の絶縁不良箇所特定方法は、ノイズの影響が小さくでき、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
さらに、上記いずれかのステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記絶縁不良箇所特定ステップでは、所定の複数の前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、上記移動アンテナ信号の強度と上記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、算出した複数の上記信号強度比に基づいて、前記絶縁不良箇所が存在する前記ステータの周方向位置を特定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
絶縁不良箇所で生じる部分放電によって放射される電磁波の強さは、部分放電の度ごとに異なっており、変化も不規則であることが多い。このため、固定アンテナで得られる固定アンテナ信号の信号強度も、同じ移動アンテナ信号測定位置で移動アンテナにより測定した移動アンテナ信号も、時間と共に変化する。しかし、1つの部分放電で放射された電磁波を、固定アンテナと移動アンテナの両者で測定した場合、得られた固定アンテナ信号と移動アンテナ信号の強度には、共通して同じ部分放電による電磁波の強さが反映されていると考えられる。
そこで、本発明では、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との比(信号強度比)に基づいて、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定することにした。このようにすれば、部分放電で放射される電磁波の強さが毎回異なっていても、これに影響されることなく、正確に絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置を特定することができる。
本発明の手法としては、例えば、固定アンテナ信号の強度に対する移動アンテナ信号の強度の比(移動アンテナ信号の強度/固定アンテナ信号の強度)を算出し、信号強度比が最も大きくなった移動アンテナ信号測定位置が、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置であると特定することができる。
あるいは、前記いずれかのステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記絶縁不良箇所特定ステップでは、前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号のうちいずれか一方が検出されてから他方が検出されるまでの経過時間を算出し、算出した複数の上記経過時間に基づいて、前記絶縁不良箇所が存在する前記ステータの周方向位置を特定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
本発明では、移動アンテナ信号及び固定アンテナ信号のうちいずれか一方が検出されてから他方が検出されるまでの経過時間に基づいて、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定する。このようにして、経過時間(時間差)を測定する手法は、信号強度比を算出する等の手法に比して処理が容易であるため、簡易に絶縁不良箇所を特定することができる。
本発明の手法としては、例えば、移動アンテナ信号が検出されてから固定アンテナ信号が検出されるまでの経過時間をそれぞれ算出し、経過時間(時間差)が最も長くなる移動アンテナのステータ周方向位置を、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置であると特定することができる。
あるいは、前記いずれかのステータの絶縁不良箇所特定方法であって、前記絶縁不良箇所特定ステップでは、前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、上記移動アンテナ信号の強度と上記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比と、上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号のうちいずれか一方が検出されてから他方が検出されるまでの経過時間と、を算出し、算出した複数の上記信号強度比と複数の上記経過時間とに基づいて、前記絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定するステータの絶縁不良箇所特定方法とすると良い。
本発明では、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との比(信号強度比)と、一方の信号が検出されてから他方の信号が検出されるまでの経過時間(時間差)との2つの要素に基づいて、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定する。このため、信号強度比及び経過時間(時間差)のいずれか一方のみに基づいて判断する場合に比して、精度良く、適切に、絶縁不良箇所を特定することができる。
本発明の絶縁不良箇所特定方法としては、例えば、次のような手法が挙げられる。まず、移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した移動アンテナ信号と固定アンテナ信号との組ごとに、固定アンテナ信号の強度に対する移動アンテナ信号の強度の比(信号強度比)をそれぞれ算出する。そして、信号強度比が最も大きくなった移動アンテナのステータ周方向位置を、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置と推定する。一方、移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した移動アンテナ信号と固定アンテナ信号との組ごとに、移動アンテナ信号が検出されてから固定アンテナ信号が検出されるまでの経過時間をそれぞれ算出する。そして、経過時間(時間差)が最も長くなる移動アンテナのステータ周方向位置を、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置と推定する。そして、これらを総合的に判断して絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置を特定する。これにより、精度良く、絶縁不良箇所が存在するステータ周方向位置を特定することができる。
他の解決手段は、ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する絶縁不良箇所特定装置であって、上記ステータに対する相対的位置が固定され、上記巻線に所定の電圧を印加して上記巻線の絶縁不良箇所で繰り返し生じさせた部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの固定アンテナと、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナと、上記移動アンテナを、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動させ、上記ステータの周方向に複数箇所設定された移動アンテナ信号測定位置のうちいずれかに配置するアンテナ移動手段と、上記移動アンテナ信号測定位置ごとに、上記移動アンテナによって検出された移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して、上記固定アンテナによって検出された固定アンテナ信号との組に基づいて、組をなす当該固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、上記部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、及び上記部分放電により放射された電磁波とは異なるノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定し、上記ノイズ検出信号であると判定した場合には、上記アンテナ移動手段によって上記移動アンテナを移動させずに、再度、上記固定アンテナ及び上記移動アンテナによって、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号を検出させる信号判定手段と、上記移動アンテナ信号測定位置における上記移動アンテナ信号と、これと相前後して検出される上記固定アンテナ信号との組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置について検出し終えた後、上記信号判定手段によって上記放電検出信号であると判定された、上記移動アンテナ信号と上記固定アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定手段と、を備える絶縁不良箇所特定装置である。
本発明の絶縁不良箇所特定方装置は、移動アンテナ信号測定位置ごとに検出された移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して検出された固定アンテナ信号との組に基づいて、この組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、いずれも部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、またはノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定する信号判定手段を有している。本発明の絶縁不良箇所特定方装置では、このように、信号判定手段によって放電検出信号とノイズ検出信号との切り分けをした後、絶縁不良箇所特定手段によって、放電検出信号と判定した固定アンテナ信号と移動アンテナ信号とに基づいて絶縁不良箇所を特定するため、ノイズに影響されることなく、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
なお、アンテナ移動手段は、移動アンテナをステータの周方向に相対的に移動すれば良く、例えば、アンテナ自身をステータの周方向に移動させる手段が挙げられる。あるいは、アンテナを所定の位置に固定し、ステータを周方向に回転させるようにしても良い。あるいは、アンテナ自身をステータの周方向に移動させると共に、ステータも周方向に回転させるようにしても良い。
さらに、上記の絶縁不良箇所特定装置であって、前記信号判定手段は、前記移動アンテナ信号の強度と前記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、算出した上記信号強度比に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する絶縁不良箇所特定装置とすると良い。
固定アンテナ及び移動アンテナによって同じノイズ信号を測定した場合には、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比が1付近の値となる傾向にある。そこで、本発明の絶縁不良箇所特定装置では、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比に基づいて、この固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定するようにした。具体的には、信号判定手段によって、算出した信号強度比が1付近の値となった場合には、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもがノイズ検出信号であると判定できる。
なお、信号の強度としては、得られた信号の波形から信号の強さを対比するのに適切なルールにしたがって取得した値であれば、いずれのものを用いても良い。具体的には、例えば、固定アンテナ及び移動アンテナによって取得した信号波形において、最も大きな信号レベルと、これが得られた山の直後に現れる谷の谷底の信号レベルとの間の差を用いることができる。その他、得られた最大の信号レベルを信号の強度として用いることもできる。
さらに、上記の絶縁不良箇所特定装置であって、前記固定アンテナを、前記ステータの周方向の複数箇所に有し、前記信号判定手段は、上記複数箇所に設けたそれぞれの上記固定アンテナによって検出した複数の前記固定アンテナ信号の強度と、前記移動アンテナによって検出した前記移動アンテナ信号の強度との比である信号強度比をそれぞれ算出し、算出した上記信号強度比に基づいて、上記複数の固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する絶縁不良箇所特定装置とすると良い。
移動アンテナが固定アンテナ付近に位置するときには、移動アンテナと固定アンテナとが同等の特性を有する場合、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度の比(信号強度比)が1付近の値となってしまう。このため、得られた信号が、ノイズ検出信号であるか、放電検出信号であるかの判断が困難となることがある。
これに対し、本発明の絶縁不良箇所特定装置は、固定アンテナを、ステータの周方向の複数箇所に有し、信号判定手段によって、複数箇所に設けた固定アンテナによって検出した複数の固定アンテナ信号の強度と、移動アンテナによって検出した移動アンテナ信号の強度とのそれぞれの比(信号強度比)に基づいて、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。
このような装置では、移動アンテナが複数の固定アンテナのうち1つの固定アンテナ付近に位置するときは、両アンテナ信号の強度の比(信号強度比)が1付近の値となる。しかしながら、このとき、移動アンテナは、他の固定アンテナとは離れて位置しているため、ノイズの影響がなければ、他の固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比)は、1付近の値から外れているはずである。従って、各固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比)がいずれも1付近の値となった場合に限り、ノイズ検出信号であると判定できる。
従って、本発明の絶縁不良箇所特定装置では、適切に、ノイズを検出したノイズ検出信号を排除することができる。
あるいは、前記の絶縁不良箇所特定装置であって、前記信号判定手段は、前記信号強度比を算出する他に、上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、上記信号強度比と、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布とに基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する絶縁不良箇所特定装置とすると良い。
信号強度比のみに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する信号判定手段では、移動アンテナと固定アンテナとが同等の特性を有する場合、移動アンテナが固定アンテナ付近に位置したときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度比が1付近の値となる。このため、得られた信号が、ノイズ検出信号であるか、放電検出信号であるかの判断が困難となることがある。
これに対し、本発明の信号判定手段では、信号強度比の他に、周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号またはノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、放電検出信号とノイズ検出信号とのスペクトル分布が異なることを利用し、例えば、周波数分析によって得られたスペクトルのうち、放電検出信号の共振周波数帯域近傍のスペクトルを積分し、この積分値が所定の基準値以上であるか否かを判断する。これにより、信号強度比が1付近の値となった場合でも、スペクトルの積分値が基準値以上の場合には放電検出信号であると判断でき、基準値よりも小さい場合にはノイズ検出信号であると判断できる。
従って、本発明の絶縁不良箇所特定装置では、検出した固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれについても、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを正確に判定することができ、ひいては、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
あるいは、前記の絶縁不良箇所特定装置であって、前記信号判定手段は、前記移動アンテナ信号及び前記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する絶縁不良箇所特定装置とすると良い。
本発明の信号判定手段は、周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、放電検出信号とノイズ検出信号とのスペクトル分布が異なることを利用して、例えば、周波数分析によって得られたスペクトルのうち、放電検出信号の共振周波数帯域近傍のスペクトルを積分し、この積分値が所定の基準値以上であるか否かを判断する。基準値以上の場合には放電検出信号であると判断でき、基準値よりも小さい場合にはノイズ検出信号であると判断できる。
他の解決手段は、ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する絶縁不良箇所特定装置であって、上記ステータの周方向に複数箇所配置され、上記ステータに対する相対的位置が固定された複数の固定アンテナであって、上記巻線に所定の電圧を印加して上記巻線の絶縁不良箇所で繰り返し生じさせた部分放電により放射された電磁波を受信する複数の固定アンテナと、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナと、上記移動アンテナを、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動させるアンテナ移動手段と、を備える絶縁不良箇所特定装置である。
本発明の絶縁不良箇所特定装置は、ステータの周方向の複数箇所に配置された複数の固定アンテナを有している。このような装置では、例えば、複数の固定アンテナのうち、強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナを1つ選択して用いるようにすると良い。最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナは、通常、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近い固定アンテナであるため、安定して強度の大きなした固定アンテナ信号を検出することができる。このように安定で強度の大きな固定アンテナ信号を検出できる固定アンテナを基準として、この固定アンテナ信号と移動アンテナ信号とを比較して絶縁不良箇所を検索すれば、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を、位置精度良く、特定することができるからである。
また、このような装置では、複数の固定アンテナのうち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナが、他の固定アンテナに比して、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近いと考えられる。すなわち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナの付近に、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在すると考えられる。そこで、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲に限定して測定すれば、測定箇所や測定時間を短縮することができる。あるいは、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲について、測定位置の間隔を小さくして測定すれば、位置精度良く、絶縁不良箇所を特定することができる。
さらに、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナ(第1固定アンテナ)の固定アンテナ信号の取得を決定する所定の基準信号レベルを設定しておき、移動アンテナ信号と共に、基準信号レベルを上回る信号レベルを有する信号を固定アンテナ信号として取得すると良い。基準信号レベルは、部分放電により放射された電磁波によって第1固定アンテナに生じる信号の信号レベルと、これに次いで強度の大きい固定アンテナ信号が検出される固定アンテナ(第2固定アンテナ)に生じる信号の信号レベルとの間の値に設定すると良い。このようにすれば、第1固定アンテナにおいて、少なくとも、部分放電により放射された電磁波によって第2固定アンテナに生じる信号の信号レベルよりも小さいノイズ信号を検出することを防止できる。従って、ノイズの影響が小さくなり、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
次に、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。
まず、実施例1でサンプルとして用いるステータ50の構成について説明する。ステータ50は、図1に示すように、ステータ鉄心60とコイル70とを有している。このうち、ステータ鉄心60は、図2(b)に示すように、円環状で、48個のティース61及びスロット1〜48を有している。コイル70は、U相,V相,W相の各相ごとに、U相巻線71,V相巻線72,W相巻線73を所定のスロット1〜48に挿入し、ティース61に分布巻きによって巻き付けて形成してなる。U相巻線71,V相巻線72,W相巻線73は、それぞれ一端にU相端子71b,V相端子72b,W相端子73bを有している。
次いで、実施例1の絶縁不良箇所特定装置100について説明する。絶縁不良箇所特定装置100は、図1,図2(a)に示すように、移動アンテナ111と、3本の固定アンテナ121,122,123と、アンテナ移動手段130と、金属製のステータ載置台140とを有している。なお、図1では、固定アンテナ122の図示を省略している。
アンテナ移動手段130は、ステッピングモータ131、このステッピングモータ131に連結された減速機133、及びこの減速機133に連結された移動アンテナホルダ135を有している。
移動アンテナ111は、移動アンテナホルダ135に装着されており、ステータ載置台140上にステータ50を載置したとき、ステータ鉄心60の板厚方向中心位置Dよりもステータ鉄心60の表面60b側で、コイル70のうちステータ鉄心60の表面60bから突出する表面側コイルエンド70bよりも径方向外側に位置するように配置されている。なお、ステータ50は、その軸線Cが移動アンテナホルダ135の回転軸と一致するようにステータ載置台140上に載置される。これにより、ステータ鉄心60とステータ載置台140とが電気的に導通する。
固定アンテナ121,122,123は、図2(a),(b)に示すように、ステータ50の周方向の3箇所に等間隔で固設されている。具体的には、軸線Cを含み、この軸線Cから放射状に延びて各スロット1〜48を通過するそれぞれの仮想平面K1〜K48を想定したとき、固定アンテナ121,122,123は、それぞれ、ステータ50の径方向外側であって仮想平面K1,K16,K32上の位置である固定アンテナ位置M1,M16,M32に配置されている。なお、これらの固定アンテナ121,122,123は、移動アンテナ111と同様に、表面側コイルエンド70bよりもステータ鉄心60の径方向外側で、且つステータ鉄心60の板厚方向中心位置Dよりもステータ鉄心60の表面60b側に位置している。
このような絶縁不良箇所特定装置100では、ステッピングモータ131を駆動させ、移動アンテナ111を、ステータ鉄心60の全周をスロット数と同数の48分割した等角度ごとに、ステータ50の周方向に移動させる。詳細には、図2(a),(b)に示すように、移動アンテナ111は、ステータ50の径方向外側であって仮想平面K1〜K48の各仮想平面上の位置である移動アンテナ信号測定位置J1〜J48を、各移動アンテナ信号測定位置ごとに移動する。なお、図1,図2(a)は、移動アンテナ111が、移動アンテナ信号測定位置J1に位置しているときの様子を示している。
本実施例1では、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて、移動アンテナ信号を検出し、これと相前後して固定アンテナ信号を検出する。
また、本実施例1では、図1に示すように、電源82によってU相巻線71、V相巻線72、W相巻線73、及びステータ鉄心60のいずれか2者の間に、所定の電圧を印加することで、絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させる。具体的には、例えば、U相巻線71とステータ鉄心60との間の絶縁不良箇所を調査する場合は、図1に示すように、U相巻線71、V相巻線72、及びW相巻線73の他端を互いに連結しない状態で、U相巻線71のU相端子71bと電源82の第1端子82bとを導線85bによって接続し、ステータ載置台140と電源82の第2端子82cとを導線85cによって接続する。この状態で、電源82によって所定の定常波電圧(例えば、Sin波)を印加すれば、U相巻線71の絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。従って、後に詳述するが、移動アンテナ111及び固定アンテナ121,122,123によって、部分放電により放射される電磁波を受信することができ、受信したアンテナ信号に基づいて絶縁不良箇所を特定することが可能となる。
また、V相巻線72とステータ鉄心60との間、あるいは、W相巻線73とステータ鉄心60との間の絶縁不良箇所を調査する場合は、U相巻線71、V相巻線72、及びW相巻線73の他端を互いに連結しない状態で、V相端子72bあるいはW相端子73bと電源82の第1端子82bとを導線85bによって接続し、ステータ載置台140と電源82の第2端子82cとを導線85cによって接続する。この状態で、電源82によって所定の定常波電圧(例えば、Sin波)を印加すれば、V相巻線72あるいはW相巻線73の絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。
また、U相巻線71,V相巻線72,W相巻線73のいずれかの相間で生じている絶縁不良箇所を調査する場合にも、電源82を用いて、絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。例えば、U相巻線71とV相巻線72との間の絶縁不良箇所を調査する場合には、U相巻線71、V相巻線72、及びW相巻線73の他端を互いに連結しない状態で、U相端子71bと電源82の第1端子82bとを導線85bによって接続し、V相端子72bと電源82の第2端子82cとを導線85cによって接続する。この状態で、電源82によって所定の定常波電圧(例えば、Sin波)を印加すれば、U相巻線71とV相巻線72との間の絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。
さらに、U相巻線71,V相巻線72,W相巻線73のいずれかの相内で生じている絶縁不良箇所を調査する場合にも、電源82を用いて、絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。例えば、U相巻線71内の絶縁不良箇所を調査する場合には、U相巻線71、V相巻線72、及びW相巻線73の他端を互いに連結して中性点とした状態で、V相端子72bと電源82の第1端子82bとを導線85bによって接続し、U相端子71bと電源82の第2端子82cとを導線85cによって接続する。この状態で、電源82によって所定のインパルス電圧を繰り返し印加すれば、U相巻線71内の絶縁不良箇所において部分放電を繰り返し発生させることができる。
固定アンテナ121,122,123からは、それぞれ導線155,156,157が導出されており、この導線155,156,157は、それぞれ、ストレージオシロスコープ81の第1〜第3チャンネル81b〜81dに接続されている。従って、部分放電により放射される電磁波に基づいて固定アンテナ121,122,123から送信されるそれぞれの固定アンテナ信号を、ストレージオシロスコープ81によって検出することが可能となる(図4(a)参照)。
同様に、移動アンテナ111からは導線151が導出されており、この導線151はストレージオシロスコープ81の第4チャンネル81eに接続されている。従って、部分放電により放射される電磁波に基づいて移動アンテナ111から送信される移動アンテナ信号を、ストレージオシロスコープ81によって検出することが可能となる(図4(b)参照)。
さらに、本実施例1では、ストレージオシロスコープ81がコンピュータ184(信号判定手段)に接続されている。このため、コンピュータ184によって、検出された固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号(部分放電により放射された電磁波を検出したときの信号をいう。以下同じ)及びノイズ検出信号(ノイズを検出したときの信号をいう。以下同じ)のいずれであるかを判定することができる。具体的には、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比が1付近の値となった場合には、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもがノイズ検出信号であると判定できる。これは、固定アンテナ121,122,123及び移動アンテナ111によって同じノイズ信号を測定した場合には、移動アンテナ信号の強度と固定アンテナ信号の強度との信号強度比が1付近の値となる傾向にあることを利用するものである。
なお、本発明の実施例では、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号の強度を、図4(a),(b)においてそれぞれA1及びA2で示すように、得られた信号波形のうち、最も大きな信号レベルと、これが得られた山の直後に現れる谷の谷底の信号レベルとの間の差とする。そして、固定アンテナ信号の強度A1に対する、移動アンテナ信号の強度A2の比(A2/A1)を信号強度比Rとする。具体的には、図4(a),(b)に示す固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組が検出された場合は、信号強度比R=A2/A1=0.055/0.006=9.2と算出する。なお、図4(b)は、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のいずれかにおいて、移動アンテナ111によって検出された移動アンテナ信号の経時変化を示すグラフである。また、図4(a)は、この移動アンテナ信号と相前後して、固定アンテナ123によって検出された固定アンテナ信号の経時変化を示すグラフである。
ところで、仮に、1つの移動アンテナと1つの固定アンテナとを用いて測定する手法を用いた場合には、移動アンテナが固定アンテナの付近に位置するときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度の比(信号強度比R)が1付近の値となってしまう。このため、取得した信号が、ノイズ検出信号であるか、ノイズ検出信号であるかの判断が困難となることがある。これに対し、本実施例1では、ステータ50の周方向の3箇所に設けた固定アンテナ121,122,123によって検出した固定アンテナ信号の強度と、移動アンテナ111によって検出した移動アンテナ信号の強度とのそれぞれの比(信号強度比R)に基づいて、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。
このような手法によれば、移動アンテナ111が固定アンテナ121,122,123のうちいずれかの付近に位置する場合でも、他の2つの固定アンテナとは離れて位置している。このため、得られた信号が部分放電によるものである場合には、ノイズの影響がなければ、他の2つの固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号111の強度との比(信号強度比R)は、1付近の値から外れているはずである。逆に、3つの固定アンテナ信号の強度と移動アンテナ信号の強度との比(信号強度比R)がいずれも1付近の値となった場合に限り、ノイズ検出信号であると判定できる。
さらに、本実施例1では、検出された固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号に基づいて、コンピュータ184(絶縁不良箇所特定手段)によって部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定することができる。具体的には、例えば、移動アンテナ111によって移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて移動アンテナ信号を取得し、各移動アンテナ信号と相前後して固定アンテナ121,122,123によって固定アンテナ信号を取得する。そして、各移動アンテナ信号測定位置について取得した移動アンテナ信号と固定アンテナ信号との組ごとに、それぞれ、固定アンテナ信号の強度に対する移動アンテナ信号の強度の比(信号強度比R)を算出する手法が挙げられる。この手法では、ステータ50のうち、信号強度比Rが最も大きくなった移動アンテナ信号測定位置と同一の周方向位置を、絶縁不良箇所が存在する周方向位置であると特定することができる。
さらに、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて取得した移動アンテナ信号と固定アンテナ信号との組ごとに、移動アンテナ信号が検出されてから固定アンテナ信号が検出されるまでの経過時間(検出時間差Tf)を、それぞれ算出しても良い。この手法では、ステータ50のうち、経過時間(検出時間差Tf)が最も長くなった移動アンテナ信号測定位置と同一の周方向位置を、絶縁不良箇所が存在する周方向位置であると特定することができる。
なお、本実施例1では、図4(a),(b)に示すように、移動アンテナ信号の第1のピークが検出されてから固定アンテナ信号の第1のピークが検出されるまでの経過時間をアンテナ信号の検出時間差Tfとした。具体的には、図4(a),(b)に示す固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組が検出された場合は、Tf=51.5−49.0=2.5(ns)となる。このようにして、各移動アンテナ信号測定位置ごとに取得した移動アンテナ信号と、これと相前後して取得した各固定アンテナ信号とについて、検出時間差Tfを算出する。
また、図1に示すように、ストレージオシロスコープ81及びコンピュータ184(信号判定手段、絶縁不良箇所特定手段)は、モニター83に接続されている。このため、ストレージオシロスコープ81によって検出された固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号に基づいて、コンピュータ184によって特定された部分放電位置(絶縁不良箇所)を、モニター83に表示させることができる。
次に、このような絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータ50の絶縁不良箇所特定方法について説明する。
なお、サンプルとして用いられるステータ50は、例えば、所定の組立ステップを経た後、検査ステップにおいて、絶縁不良が存在していると確認されたものである。本実施例1では、U相巻線71とステータ鉄心60との間で絶縁不良が存在していると確認されたステータ50をサンプルとして、絶縁不良箇所特定装置100を用いて絶縁不良箇所を特定する手法について、以下に説明する。
図3は、絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。まず、ステップ1において、ステータ50を、U相巻線71、V相巻線72、及びW相巻線73の他端を互いに連結しない状態で、図1に示すように、ステータ載置台140上に載置する。次いで、U相巻線71のU相端子71bと電源82の第1端子82bとを導線85bによって接続し、ステータ載置台140と電源82の第2端子82cとを導線85cによって接続する。
次いで、ステップ2に進み、ステッピングモータ131を駆動し、移動アンテナ111を、初期測定位置である移動アンテナ信号測定位置J1に配置する。そして、電源82により電圧を印加することにより、絶縁不良箇所において部分放電を発生させる。
次いで、ステップ3に進み、移動アンテナ信号測定位置J1において、3つの固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組を取得する。具体的には、移動アンテナ信号測定位置J1に位置する移動アンテナ111からの移動アンテナ信号と、固定アンテナ位置M1,M16,M32に位置する固定アンテナ121,122,123からの固定アンテナ信号とが、いずれかの信号をトリガとして、ストレージオシロスコープ81によって検出される。なお、本実施例1では、ステップS3が信号検出ステップに相当する。
次に、ステップS4に進み、取得した1組のアンテナ信号に基づいて、3つの信号強度比Rを算出する。具体的には、固定アンテナ121,122,123によって検出された3つの固定アンテナ信号の強度に対する、移動アンテナ111によって検出された移動アンテナ信号の強度の比を、それぞれ算出する。算出方法は、前述した通りである。
次いで、ステップS5に進み、算出した3つの信号強度比Rが適正であるか否かを判断する。具体的には、3つの信号強度比Rのうち、少なくともいずれかの値が1付近の値から外れている(例えば、R<0.9または1.1<R)場合には、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが放電検出信号であると判定する。すなわち、信号強度比Rは適正である(Yes)と判定する。一方、3つの信号強度比Rがいずれも1付近の値(例えば、0.9≦R≦1.1)となった場合には、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもがノイズ検出信号であると判定する。すなわち、信号強度比Rは適正でない(No)と判定する。なお、本実施例1では、ステップS5が信号判定ステップに相当する。
ステップS5において、信号強度比Rが適正である(Yes)と判断した場合には、ステップS6に進み、3つの検出時間差Tfを算出する。具体的には、移動アンテナ111によって移動アンテナ信号が検出されてから、固定アンテナ121,122,123によって固定アンテナ信号が検出されるまでの経過時間を、それぞれ算出する。算出方法は、前述した通りである。
一方、ステップS5において、信号強度比Rが適正でない(No)と判断した場合には、ステップS3に戻り、再度、移動アンテナ信号測定位置J1において、4つのアンテナ信号を取得し、次いで、ステップS4において、信号強度比Rを算出する。そして、ステップS5において、再び、信号強度比Rが適正であるか否かを判断する。
このようにして、信号強度比Rが適正な値となるまでステップS3〜S5の処理を行うことにより、固定アンテナ121,122,123と移動アンテナ111とによって、ノイズ信号を取得してしまうことなく、適切に、放電検出信号を取得することができる。
ステップS6において検出時間差Tfを算出した後、ステップS7に進み、移動アンテナ111が最終の移動アンテナ測定位置(本実施例1では、移動アンテナ信号測定位置J48)に位置しているか否かを判定する。すなわち、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて、移動アンテナ信号と固定アンテナ信号の組を検出し終えたか否かを判定する。移動アンテナ信号測定位置J48に位置していない(No)と判定されると、ステップS8に進み、ステッピングモータ131を駆動し、移動アンテナ111を、次の測定位置(例えば、移動アンテナ信号測定位置J2)に移動させる。次いで、ステップS3に戻り、再び、ステップS3〜S7の処理を行う。
このようにして、本実施例1では、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて、移動アンテナ信号と固定アンテナ信号の組を取得しつつ、信号強度比R及び検出時間差Tfを算出する。なお、本実施例1では、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて検出した移動アンテナ信号の強度、及びこれと相前後して固定アンテナ121,122,123で検出した固定アンテナ信号の強度は、図5に示すような結果となった。
そして、ステップS7において、移動アンテナ111が最終の移動アンテナ測定位置である移動アンテナ信号測定位置J48に位置している(Yes)と判定された場合には、ステップS9に進み、信号強度比R及び検出時間差Tfの算出結果を、モニター83にグラフで表示する。具体的には、本実施例1では、3つの信号強度比Rを、移動アンテナ信号測定位置Jのそれぞれについて算出した結果は、図6に示すような結果となった。また、3つの検出時間差Tfを移動アンテナ信号測定位置Jのそれぞれについて算出した結果のうち、移動アンテナ信号と固定アンテナ122の固定アンテナ信号との検出時間差Tfは、図7に示すような結果となった。なお、その他の検出時間差Tfについては図示を省略しているが、いずれも同様な結果となった。
次いで、ステップSAに進み、図6に示す信号強度比Rの算出結果と、図7に示す検出時間差Tfの算出結果とに基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する。具体的には、まず、図6に示す信号強度比Rの算出結果に基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する。図6に示すように、固定アンテナ121の固定アンテナ信号の強度に対する移動アンテナ信号の強度の比(信号強度比R)は、移動アンテナ信号測定位置J17で最も大きな値となった。一方、固定アンテナ122,123の固定アンテナ信号の強度に対する移動アンテナ信号の強度の比(信号強度比R)は、いずれも移動アンテナ信号測定位置J20で最も大きな値となった。これらの結果から、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J17またはJ20と同一の周方向位置に、部分放電位置(絶縁不良箇所)が存在すると考えられる。
さらに、図7に示す検出時間差Tfの算出結果に基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する。図7に示すように、固定アンテナ122の固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との検出時間差Tfは、移動アンテナ信号測定位置J18〜J20で最も大きな値となった。また、図示していないが、固定アンテナ121,123の固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との検出時間差Tfについても、同様な結果となった。これらの結果から、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J18〜J20のいずれかと同一の周方向位置に、部分放電位置(絶縁不良箇所)が存在すると考えられる。
従って、信号強度比Rに基づいて判定された結果と、検出時間差Tfに基づいて判定された結果とを総合的に判断すると、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J20と同一の周方向位置(スロット20にかかる周方向位置)を、部分放電位置(絶縁不良箇所)と特定することができる。このように、信号強度比Rと検出時間差Tfとの2つの要素に基づいて判断することで、精度良く、絶縁不良箇所を特定することができる。なお、本実施例1では、ステップSAが絶縁不良箇所特定ステップに相当する。
また、本実施例1の絶縁不良箇所特定装置100では、ステップSAにおいて特定した部分放電位置(絶縁不良箇所)を、モニター83に表示することができる。
以上説明したように、本実施例1の手法では、ステップS5(信号判定ステップ)において取得した信号について、放電検出信号とノイズ検出信号とのいずれであるか判定し、放電検出信号であると判定した固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組に基づいて、ステップSA(絶縁不良箇所特定ステップ)において絶縁不良箇所を特定する。このため、ノイズに影響されることなく、適切に、絶縁不良箇所(絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置)を特定することができる。
次に、実施例2にかかる絶縁不良箇所特定装置200及び絶縁不良箇所特定方法について説明する。実施例1では、ステータ50の周方向の3カ所に固定された固定アンテナ121,122,123のそれぞれによって、移動アンテナ信号と相前後して固定アンテナ信号を取得し、各移動アンテナ信号測定位置(J1〜J48)で取得した3つの固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組に基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定した。これに対し、本実施例2では、固定アンテナ121,122,123のうち最も大きな強度の固定アンテナ信号を検出する固定アンテナを1つ選択し、この選択した1つの固定アンテナの固定アンテナ信号と移動アンテナ信号との組に基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する点で異なり、その他の部分については、ほぼ同様である。また、実施例2の絶縁不良箇所特定装置200は、実施例1の絶縁不良箇所特定装置100と比較して、コンピュータ184(信号判定手段等)をコンピュータ284に変更した点が異なり、その他の部分については同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、その他の部分については説明を省略または簡略化する。
図8は、本実施例2にかかる絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。
まず、実施例1のステップS1,S2と同様に、ステップT1において、ステータ50を測定可能な状態に設定した後、ステップT2において、移動アンテナ111を移動アンテナ信号測定位置J1に配置する。
次いで、ステップT3に進み、移動アンテナ111から入力される移動アンテナ信号、及び固定アンテナ121,122,123から入力される3つの固定アンテナ信号のうち、3つの固定アンテナ信号のみを取得する。次いで、ステップT4に進み、固定アンテナ121,122,123のうち最も大きな強度の固定アンテナ信号が検出された固定アンテナを1つ選択する。なお、本実施例2では、実施例1と同様に、固定アンテナ122によって、最も大きな強度の固定アンテナ信号が検出された(図5の移動アンテナ信号測定位置J1における信号強度を参照)ので、ステップT4において、固定アンテナ122が選択されたとする。
次いで、ステップT5に進み、固定アンテナ信号の取得を決定する基準信号レベルを設定する。具体的には、ステップT3で検出した固定アンテナ信号をそれぞれ比較して、最も強度の大きな信号が検出された固定アンテナ(本実施例2では固定アンテナ122)の信号波形のうち第1ピークの信号レベルと、これに次いで強度の大きな信号が検出された固定アンテナ(本実施例2では固定アンテナ123)の信号波形のうち第1ピークの信号レベル(図4(a)参照)との間の値に設定する。例えば、固定アンテナ122の信号波形のうち第1ピークの信号レベルが10(mV)で、固定アンテナ123の信号波形のうち第1ピークの信号レベルが4(mV)であった場合には、基準信号レベルを、例えば、これらの間の7(mV)に設定する。
このように、基準信号レベルを比較的高い値に設定することで、後述するステップT6において、固定アンテナ122で検出され得る信号を、高い信号レベルを有する信号に限定して取得できるので、固定アンテナ122によってノイズを検出してしまう虞を小さくできる。具体的には、後述するステップT6において、少なくとも、部分放電により放射された電磁波によって固定アンテナ123に生じる信号の信号レベルよりも小さいノイズ信号を検出することを防止できる。例えば、基準信号レベルを7(mV)に設定した場合には、7(mV)よりも小さい信号レベルを有するノイズは検出される虞がなくなる。
次いで、ステップT6に進み、移動アンテナ111によって移動アンテナ信号を検出し、これと相前後して、選択した固定アンテナ122にかかる固定アンテナ信号を検出する。なお、ステップT6では、先のステップT5で設定した基準信号レベル(例えば、7mV)を上回る信号レベルを有する固定アンテナ信号が検出された場合に限り、移動アンテナ信号及び固定アンテナ122にかかる固定アンテナ信号を取得する。
次いで、ステップT7に進み、実施例1のステップS4と同様に、検出された両信号の信号強度比Rを算出する。次いで、ステップT8に進み、実施例1のステップS5と同様に、信号強度比Rが適正な値であるか否かを判定する。信号強度比Rが適正な値である(Yes)場合には、ステップT9に進み、実施例1のステップS5と同様に、検出された両信号の検出時間差Tfを算出する。
一方、信号強度比Rが適正な値でない(No)場合には、ステップTCに進み、信号強度比Rが適正な値でないと判定された回数(NG回数)が3回目であるか否かを判定する。未だ、3回目でない(No)と判定された場合には、ステップT6に戻り、再度、上述したステップT6〜T8の処理を行う。そして、ステップT8において信号強度比Rが適正な値である(Yes)と判定された場合、あるいは、ステップTCにおいて信号強度比RのNG回数が3回目である(Yes)と判定された場合には、ステップT9に進み、検出された両信号の検出時間差Tfを算出する。
なお、本実施例2では、上述のように、ステップTCにおいて信号強度比RのNG回数を判定しているが、これは次のような理由によるものである。本実施例2では、選択した1つの固定アンテナ122と移動アンテナ111とによって信号強度比Rを算出している。このため、移動アンテナ111が固定アンテナ122の付近に位置するときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号にかかる信号強度比Rが1付近の値となってしまう。この場合には、信号検出を何度行っても、信号強度比Rが1付近の値となってしまう。一方、移動アンテナ111及び固定アンテナ122によって、連続して3回もノイズによる信号が検出されることは考えにくい。そこで、NG回数が3回目であると判定された場合には、検出した信号を放電検出信号とみなすこととしたのである。
ステップT9において検出時間差Tfを算出した後は、ステップTAに進み、移動アンテナ111が最終測定位置である移動アンテナ信号測定位置J48に位置しているか否かを判定する。移動アンテナ信号測定位置J48に位置していない(No)と判定されると、ステップTBに進み、移動アンテナ111を次の測定位置に移動させる。その後、上述したステップT6〜TAの処理を行う。
そして、ステップTAにおいて、移動アンテナ信号測定位置J48に位置している(Yes)と判定された場合には、ステップTDに進み、実施例1のステップS9と同様に、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のそれぞれについて算出した、信号強度比R及び検出時間差Tfの結果を表示する。図示を省略しているが、本実施例2においても、実施例1と同様な結果を得ることができた。次いで、ステップTEに進み、実施例1のステップS10と同様に、算出した信号強度比R及び検出時間差Tfに基づいて、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する。なお、本実施例2においても、実施例1と同様に、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J20と同一の周方向位置(スロット20にかかる周方向位置)を、部分放電位置(絶縁不良箇所)と特定することができた。
ところで、本実施例2では、固定アンテナ121,122,123のうち最も大きな強度の固定アンテナ信号が検出された固定アンテナ122を1つ選択した。このように、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された固定アンテナ122は、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近い固定アンテナであるため、安定して強度の大きな固定アンテナ信号を検出することができる。本実施例2では、このように、安定して強度の大きな固定アンテナ信号を基準とし、これと移動アンテナ信号とを比較して絶縁不良箇所を特定するため、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を、位置精度良く、特定することができる。
このことは、実施例1で得られた信号強度比の算出結果により明らかである。具体的には、図6に示すように、最も強度の小さい信号を検出する固定アンテナ121を基準として信号強度比Rを算出した場合(図中(111/121)で示すグラフ)には、信号強度比Rが最も大きくなった移動アンテナ信号測定位置J17が、最終的に特定された部分放電位置が存在する周方向位置と一致せず、信頼性が低いことがわかる。これに対し、図6を拡大した図9(a)に示すように、2番目に強度の大きい信号を検出する固定アンテナ123を基準として信号強度比Rを算出した場合(図中(111/123)で示すグラフ)には、信号強度比Rが最も大きくなった移動アンテナ信号測定位置J20が、最終的に特定された部分放電位置が存在する周方向位置に一致している。さらに、図9(b)に示すように、最も強度の大きい信号を検出する固定アンテナ122を基準として信号強度比Rを算出した場合(図中(111/122)で示すグラフ)には、信号強度比Rが最も大きくなった移動アンテナ信号測定位置J20が、最終的に特定された部分放電位置が存在する周方向位置に一致すると共に、その頂点が明確に現れているため、最も信頼性が高いことがわかる。
また、本実施例2の手法では、ステップT6〜T9における固定アンテナ信号の処理について、3つの固定アンテナ121,122,123から選択した唯1つの固定アンテナ122からの固定アンテナ信号を処理するだけとなるため、処理が簡単である。また、信号処理時間を短縮することができる。
次に、実施例3にかかる絶縁不良箇所特定装置300及び絶縁不良箇所特定方法について説明する。実施例2では、固定アンテナ121,122,123のうち最も大きな強度の固定アンテナ信号を検出する固定アンテナを1つ選択し、この選択した1つの固定アンテナと移動アンテナとによって、移動アンテナ信号測定位置J1〜J48のいずれについても信号を検出した。これに対し、本実施例3では、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲に限定して、移動アンテナ信号と固定アンテナ信号とを検出するようにした点で異なり、その他の部分については実施例2とほぼ同様である。また、実施例3の絶縁不良箇所特定装置300は、実施例2の絶縁不良箇所特定装置200と比較して、コンピュータ284(信号判定手段等)をコンピュータ384に変更した点が異なり、その他の部分については同様である。従って、ここでは、実施例2と異なる点を中心に説明し、その他の部分については説明を省略または簡略化する。
前述のように、実施例2の絶縁不良箇所特定方法では、ステップT4において、複数の固定アンテナのうち最も大きな強度の固定アンテナ信号を検出する固定アンテナ122が、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)に最も近いことがわかる。すなわち、ステップT4において、ステータ50のうち、固定アンテナ122が配置されている固定アンテナ位置M16の周方向位置付近に、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在することがわかる。そこで、本実施例3の絶縁不良箇所特定方法では、実施例2とは異なり、移動アンテナ信号を、固定アンテナ位置M16の周方向位置付近(すなわち、移動アンテナ信号測定位置J16付近)に限定して、取得するようにした。以下、本実施例3の絶縁不良箇所特定方法について具体的に説明する。
図10は、実施例3にかかる絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。まず、実施例2と同様に、ステップT1において、ステータ50をセットする。次いで、移動アンテナ111を移動させることなく(実施例2のステップT2は実施しない)、実施例2と同様のステップT3〜T5の処理を行い、最も強度の大きい信号を検出する固定アンテナ122を選択すると共に、その基準信号レベルを設定する。
次に、実施例2とは異なり、ステップV1に進み、移動アンテナ111による移動アンテナ信号測定範囲を設定する。具体的には、まず、先のステップT4で選択した固定アンテナ122が配置されている固定アンテナ位置M16と、図2(a)において固定アンテナ122に対し反時計回りの方向(第1周方向)に隣り合う固定アンテナ121が配置されている固定アンテナ位置M1との周方向中間に位置する移動アンテナ信号測定位置J8を、移動アンテナ信号の初期測定位置に設定する。反対に、固定アンテナ位置M16と、図2(a)において固定アンテナ122に対し時計回りの方向(第2周方向)に隣り合う固定アンテナ123が配置されている固定アンテナ位置M32との周方向中間に位置する移動アンテナ信号測定位置J24を、移動アンテナ信号の最終測定位置に設定する。このようにして、移動アンテナ信号測定範囲を、移動アンテナ信号測定位置J8〜J24の範囲に設定する。
本実施例3では、このように、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲(移動アンテナ信号測定位置J8〜J24)に限定して、移動アンテナ信号を測定することで、測定時間を短縮することができる。
次いで、ステップV2に進み、移動アンテナ111を初期測定位置に移動させる。具体的には、ステップV1において初期測定位置に設定した移動アンテナ信号測定位置J8に、移動アンテナ111を配置する。その後、実施例2と同様にして、ステップT6〜TBの処理を繰り返し行う。そして、ステップTAにおいて、移動アンテナ111が、最終測定位置である移動アンテナ信号測定位置J24に位置していると(Yes)判定された場合には、ステップTD,TEに進み、実施例2と同様にして、部分放電位置を特定する。なお、本実施例3においても、実施例2と同様に、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J20と同一の周方向位置(スロット20にかかる周方向位置)を、部分放電位置(絶縁不良箇所)と特定することができた。
次に、実施例4にかかる絶縁不良箇所特定装置400及び絶縁不良箇所特定方法について説明する。実施例1〜3の絶縁不良箇所特定方法では、ステータ50の周方向の3カ所に固設された固定アンテナ121,122,123を用い、これらの固定アンテナから検出される固定アンテナ信号を利用した。これに対し、本実施例4では、これらの固定アンテナのうち1つの固定アンテナのみを用い(具体的には、固定アンテナ122)、この固定アンテナから検出される信号のみを固定アンテナ信号として利用する点で異なる。
さらに、本実施例4では、実施例1〜3の絶縁不良箇所特定方法と比較して、移動アンテナ信号及び固定アンテナ信号について周波数分析(FFT解析)を行うステップU5の処理を加えている点で異なり、その他の部分についてはほぼ同様である。また、実施例4の絶縁不良箇所特定装置400は、実施例1の絶縁不良箇所特定装置100と比較して、コンピュータ184(信号判定手段等)をコンピュータ484に変更した点が異なり、その他の部分については同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、その他の部分については説明を省略または簡略化する。
図11は、実施例4にかかる絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。まず、実施例1のステップS1,S2と同様に、ステップU1,U2において、ステータ50をセットした後、移動アンテナ111を初期測定位置(移動アンテナ信号測定位置J1)に配置する。次いで、ステップU3に進み、移動アンテナ信号測定位置J1において、移動アンテナ信号を取得し、固定アンテナ122のみから固定アンテナ信号を取得する。次いで、ステップU4に進み、実施例1のステップS4と同様な手法で、1組のアンテナ信号について信号強度比Rを算出する。
次に、ステップU5に進み、固定アンテナ122によって検出された固定アンテナ信号について、周波数分析(FFT解析)を行う。この周波数分析(FFT解析)により、図12または図13に示すようなスペクトル分布を取得することができる。なお、図12は、固定アンテナ122によって検出された信号が、部分放電により放射された電磁波である場合(放電検出信号)のスペクトル分布である。一方、図13は、固定アンテナ122によって検出された信号が、ノイズである場合(ノイズ検出信号)のスペクトル分布である。
次いで、ステップU6に進み、ステップU4で算出した信号強度比Rと、ステップU5で取得したスペクトル分布とに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、まず、実施例1のステップS5と同様にして、信号強度比Rの値が1付近の値であるか否かを判定する。
ところで、信号強度比Rのみに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定すると、移動アンテナ111が固定アンテナ122付近に位置するときには、検出される信号が放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかに拘わらず、両アンテナ信号の強度比が1付近の値となるので、ノイズ検出信号であるか否かの判断が困難となる。
これに対し、本実施例4のステップU6では、信号強度比Rの他に、ステップU5の周波数分析(FFT解析)によって得られたスペクトル分布に基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定する。具体的には、図12と図13とを比較するとわかるように、放電検出信号とノイズ検出信号とのスペクトル分布が異なることを利用して、周波数分析(FFT解析)によって得られたスペクトルのうち、放電検出信号の周波数帯域FB1(図12,図13参照)に含まれるスペクトルを積分し、この積分値が所定の基準値以上であるか否かを判断する。部分放電の場合、放電検出信号中には、巻線(U相巻線71等)の有するL成分や、線間、巻線とステータ鉄心60との間などに生じる静電容量Cによって決まる共振周波数の成分が、大きな成分として含まれている。このため、周波数分析をすると、特定の周波数帯域におけるスペクトルが大きく表われると考えられるからである。
従って、信号強度比Rが1付近の値となった場合でも、周波数帯域FB1に位置するスペクトルの積分値が所定の基準値以上の場合には、放電検出信号であると判断でき、基準値よりも小さい場合にはノイズ検出信号であると判断できる。なお、基準値としては、例えば、固定アンテナ122によって検出された放電検出信号を周波数分析(FFT解析)して得られたスペクトル分布について、周波数帯域FB1に含まれるスペクトルを積分した値の80%の値に設定することができる。
ステップU6において、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が放電検出信号である(検出信号が適正である)(Yes)と判断された場合には、実施例1のステップS6,S7と同様にして、ステップU7において検出時間差Tfを算出した後、ステップU8において、移動アンテナ111が最終測定位置(移動アンテナ信号測定位置J48)に位置しているか否かを判定する。最終測定位置(移動アンテナ信号測定位置J48)に位置していない(No)と判定されると、ステップU9に進み、実施例1のステップS8と同様にして、移動アンテナ111を次の測定位置に移動させ、その後、再びステップU3に戻る。
一方、ステップU6において、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号がノイズ検出信号である(検出信号が適正でない)(No)と判断された場合には、移動アンテナ111を移動させることなく、ステップU3に戻り、再度、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号を入力し直し、その後、上述したステップU4〜U6の処理を行う。そして、ステップU8において、移動アンテナ111が、最終測定位置である移動アンテナ信号測定位置J48に位置していると(Yes)判定された場合には、ステップUA,UBに進み、実施例1のステップS9,SAと同様にして、部分放電位置を特定する。なお、本実施例4においても、実施例1と同様に、ステータ50のうち、移動アンテナ信号測定位置J20と同一の周方向位置(スロット20にかかる周方向位置)を、部分放電位置(絶縁不良箇所)と特定することができた。
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1〜4では、図1に示すように、1本の移動アンテナ111のみを用いたが、移動アンテナの数は1本に限定されるものではない。例えば、移動アンテナを、表面側コイルエンド70bよりもステータ鉄心60の径方向内側の位置に追加すると良い。この移動アンテナを追加することにより、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定するばかりでなく、ステータの径方向内側及び外側のいずれの位置であるかをも特定することができる。
さらに、移動アンテナを、ステータ鉄心60の板厚方向中心位置Dよりもステータ鉄心60の裏面60c側にも設けると良い。この移動アンテナを追加することにより、絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定するばかりでなく、ステータの表面側及び裏面側のいずれの位置であるかをも特定することができる。このように、移動アンテナの本数を増やすことにより、部分放電位置(絶縁不良箇所)を特定する位置精度を向上させることができる。
また、実施例1〜4では、移動アンテナ111を、仮想平面K1〜K48上に位置する移動アンテナ信号測定位置ごとに移動させたが、移動間隔(角度)はこれに限定されるものではなく、いずれの移動間隔(角度)にしても良い。但し、移動間隔(角度)を小さくしたほうが、絶縁不良箇所を位置精度良く特定することができるので好ましい。
また、実施例1〜4では、アンテナ移動手段130によって、移動アンテナ111を、ステータ50の周りに移動させるようにした。しかし、移動アンテナ111は、ステータ50に対し、相対的にその周方向に移動すれば良く、例えば、ステータ50をその軸線周りに回転させるようにしても良い。
また、実施例3では、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲、具体的には、移動アンテナ信号測定位置J8〜J24の17カ所に限定して、移動アンテナ信号を測定した。これにより、測定時間を短縮することができた。しかしながら、このような手法に限らず、例えば、部分放電発生位置(絶縁不良箇所)が存在していると思われる範囲(移動アンテナ信号測定位置J8〜J24の周方向範囲)について、測定位置の間隔を小さくして測定するようにしても良い。具体的には、例えば、17カ所の移動アンテナ信号測定位置J8〜J24にかかる互いの中間位置についても測定するようにし、同一の周方向範囲において33カ所の測定位置について測定する手法が挙げられる。このような手法によれば、位置精度良く、絶縁不良箇所を特定することができる。
また、実施例4のステップU6では、信号強度比Rと検出した信号のスペクトル分布とに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定した。しかし、検出した信号のスペクトル分布のみに基づいて、固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号が、放電検出信号及びノイズ検出信号のいずれであるかを判定するようにしても良い。
実施例1〜3にかかる絶縁不良箇所特定装置100〜300の構成を示す説明図である。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、(a)は図1の上面視概略図、(b)はステータ鉄心60の上面図である。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、(a)はモニター83に表示される固定アンテナ信号を示す図、(b)はモニター83に表示される移動アンテナ信号を示す図である。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、各移動アンテナ信号測定位置における各アンテナの信号強度を示す図である。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、モニター83の信号強度比表示画面を示す図である。 実施例1にかかる絶縁不良箇所特定装置100を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、モニター83の検出時間差表示画面を示す図である。 実施例2にかかる絶縁不良箇所特定装置200を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。 実施例2にかかる絶縁不良箇所特定装置200を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法を説明する説明図であり、(a)は図6の信号強度比のスケールを2倍に拡大した図であり、(b)は4倍に拡大した図である。 実施例3にかかる絶縁不良箇所特定装置300を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。 実施例4にかかる絶縁不良箇所特定装置300を用いたステータの絶縁不良箇所特定方法の流れを示すフローチャートである。 部分放電により放射された電磁波を検出したときのアンテナ信号(放電検出信号)を示す図である。 ノイズを検出したときのアンテナ信号(ノイズ検出信号)を示す図である。
符号の説明
1〜48 スロット
50 ステータ
60 ステータ鉄心
70 コイル
71 U相巻線
72 V相巻線
73 W相巻線
100,200,300,400 絶縁不良箇所特定装置
111 移動アンテナ
121,122,123 固定アンテナ
130 アンテナ移動手段
J1〜J48 移動アンテナ信号測定位置
K1〜K48 仮想平面

Claims (18)

  1. ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する方法であって、
    上記巻線に所定の電圧を印加して、上記巻線の絶縁不良箇所で部分放電を繰り返し発生させた状態で、
    上記ステータに対し相対的にその周方向に移動可能で、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナによって、上記ステータの周方向に複数箇所設定されたそれぞれの移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかにおいて、移動アンテナ信号を検出すると共に、
    上記ステータに対する相対的位置が固定され、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの固定アンテナによって、固定アンテナ信号を検出する
    信号検出ステップと、
    上記移動アンテナ信号測定位置ごとに、上記移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して検出された上記固定アンテナ信号との組に基づいて、当該組をなす固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、上記部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、及び上記部分放電により放射された電磁波とは異なるノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定し、
    上記ノイズ検出信号であると判定した場合には、上記移動アンテナを移動させずに、再度、上記固定アンテナ及び上記移動アンテナによって、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号を検出させる
    信号判定ステップと、
    上記移動アンテナを上記移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかに移動させるアンテナ移動ステップと、
    上記移動アンテナ信号測定位置における上記移動アンテナ信号と、これと相前後して検出される上記固定アンテナ信号との組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置について検出し終えた後、
    各々の上記信号判定ステップにおいて上記放電検出信号であると判定された、上記移動アンテナ信号と上記固定アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップと、を備える
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  2. 請求項1に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記信号判定ステップでは、
    前記移動アンテナ信号の強度と前記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、
    算出した上記信号強度比に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  3. 請求項2に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記固定アンテナを、前記ステータの周方向の複数箇所に設け、
    前記信号判定ステップでは、
    上記複数箇所に設けたそれぞれの上記固定アンテナによって検出した複数の前記固定アンテナ信号の強度と、前記移動アンテナによって検出した前記移動アンテナ信号の強度との比である信号強度比をそれぞれ算出し、
    算出した上記信号強度比に基づいて、上記複数の固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  4. 請求項2に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記信号判定ステップでは、
    前記信号強度比を算出する他に、
    上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、
    上記信号強度比と、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布とに基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  5. 請求項1に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記信号判定ステップでは、
    前記移動アンテナ信号及び前記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、
    上記周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  6. ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する方法であって、
    上記巻線に所定の電圧を印加して、上記巻線の絶縁不良箇所で部分放電を繰り返し発生させた状態で、
    上記ステータに対し相対的にその周方向に移動可能で、上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナによって、上記ステータの周方向に複数箇所設定された移動アンテナ信号測定位置のうちのいずれかにおいて検出された、上記部分放電による移動アンテナ信号と、
    上記ステータの周方向の複数箇所に上記ステータに対する相対的位置が固定されて上記部分放電により放射された電磁波を受信する複数の固定アンテナを用い、これら複数の固定アンテナによって、上記移動アンテナ信号と相前後して検出された上記部分放電による複数の固定アンテナ信号のうち、最も強度の大きい固定アンテナ信号が検出された第1固定アンテナにかかる上記部分放電による第1固定アンテナ信号と、の組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得し、
    取得した複数組の上記移動アンテナ信号と上記第1固定アンテナ信号とに基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップを備える
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  7. 請求項6に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記複数の固定アンテナによって、前記部分放電による前記固定アンテナ信号をそれぞれ検出し、検出された上記固定アンテナ信号により最も強度の大きい固定アンテナ信号が得られる前記第1固定アンテナを選択する固定アンテナ選択ステップと、
    所定の複数の前記移動アンテナ信号測定位置について、前記移動アンテナによって検出される上記部分放電による前記移動アンテナ信号と、これと相前後して上記第1固定アンテナによって検出される上記部分放電による上記第1固定アンテナ信号との組をそれぞれ取得する信号検出ステップと、
    取得した複数の上記第1固定アンテナ信号と上記移動アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定ステップと、を備える
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  8. 請求項7に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記複数の固定アンテナのうち、前記第1固定アンテナに対して前記ステータの周方向のうち第1周方向に隣り合う固定アンテナを第1隣在固定アンテナとし、上記第1固定アンテナに対して上記周方向のうち上記第1周方向と逆方向の第2周方向に隣り合う固定アンテナを第2隣在固定アンテナとし、
    上記第1隣在固定アンテナの周方向位置と上記第1固定アンテナの周方向位置との中間の周方向位置である第1中間周方向位置と、上記第2隣在固定アンテナの周方向位置と上記第1固定アンテナの周方向位置との中間の周方向位置である第2中間周方向位置とを両端とし、上記第1固定アンテナの周方向位置を含む周方向範囲を第1範囲としたとき、
    前記信号検出ステップでは、少なくとも、上記第1範囲に含まれる前記移動アンテナ信号測定位置について、前記移動アンテナ信号を検出する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  9. 請求項7または請求項8に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記複数の固定アンテナのうち、前記第1固定アンテナに次いで強度の大きい固定アンテナ信号が得られる固定アンテナを第2固定アンテナとしたとき、
    前記信号検出ステップでは、
    上記第1固定アンテナにおいて前記部分放電により放射された電磁波の信号を検出したと判断して前記第1固定アンテナ信号の取得を決定する基準信号レベルを、上記部分放電により放射された電磁波によって上記第1固定アンテナに生じる信号の信号レベルと上記第2固定アンテナに生じる信号の信号レベルとの間の値に設定しておき、前記移動アンテナ信号と共に、上記第1固定アンテナで上記基準信号レベルを上回る信号レベルを有する信号を上記第1固定アンテナ信号として取得する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記絶縁不良箇所特定ステップでは、
    所定の複数の前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、上記移動アンテナ信号の強度と上記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、算出した複数の上記信号強度比に基づいて、前記絶縁不良箇所が存在する前記ステータの周方向位置を特定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  11. 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記絶縁不良箇所特定ステップでは、
    前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号のうちいずれか一方が検出されてから他方が検出されるまでの経過時間を算出し、算出した複数の上記経過時間に基づいて、前記絶縁不良箇所が存在する前記ステータの周方向位置を特定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  12. 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のステータの絶縁不良箇所特定方法であって、
    前記絶縁不良箇所特定ステップでは、
    前記移動アンテナ信号測定位置のそれぞれについて取得した前記移動アンテナ信号と前記固定アンテナ信号との組ごとに、
    上記移動アンテナ信号の強度と上記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比と、
    上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号のうちいずれか一方が検出されてから他方が検出されるまでの経過時間と、を算出し、
    算出した複数の上記信号強度比と複数の上記経過時間とに基づいて、前記絶縁不良箇所が存在するステータの周方向位置を特定する
    ステータの絶縁不良箇所特定方法。
  13. ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する絶縁不良箇所特定装置であって、
    上記ステータに対する相対的位置が固定され、上記巻線に所定の電圧を印加して上記巻線の絶縁不良箇所で繰り返し生じさせた部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの固定アンテナと、
    上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナと、
    上記移動アンテナを、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動させ、上記ステータの周方向に複数箇所設定された移動アンテナ信号測定位置のうちいずれかに配置するアンテナ移動手段と、
    上記移動アンテナ信号測定位置ごとに、上記移動アンテナによって検出された移動アンテナ信号と、この移動アンテナ信号と相前後して、上記固定アンテナによって検出された固定アンテナ信号との組に基づいて、組をなす当該固定アンテナ信号及び移動アンテナ信号のいずれもが、上記部分放電により放射された電磁波を検出した放電検出信号、及び上記部分放電により放射された電磁波とは異なるノイズを検出したノイズ検出信号のいずれであるかを判定し、
    上記ノイズ検出信号であると判定した場合には、上記アンテナ移動手段によって上記移動アンテナを移動させずに、再度、上記固定アンテナ及び上記移動アンテナによって、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号を検出させる
    信号判定手段と、
    上記移動アンテナ信号測定位置における上記移動アンテナ信号と、これと相前後して検出される上記固定アンテナ信号との組を、所定の複数の上記移動アンテナ信号測定位置について検出し終えた後、上記信号判定手段によって上記放電検出信号であると判定された、上記移動アンテナ信号と上記固定アンテナ信号との組に基づいて、上記絶縁不良箇所が存在する上記ステータの周方向位置を特定する絶縁不良箇所特定手段と、を備える
    絶縁不良箇所特定装置。
  14. 請求項13に記載の絶縁不良箇所特定装置であって、
    前記信号判定手段は、
    前記移動アンテナ信号の強度と前記固定アンテナ信号の強度との比である信号強度比を算出し、
    算出した上記信号強度比に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    絶縁不良箇所特定装置。
  15. 請求項14に記載の絶縁不良箇所特定装置であって、
    前記固定アンテナを、前記ステータの周方向の複数箇所に有し、
    前記信号判定手段は、
    上記複数箇所に設けたそれぞれの上記固定アンテナによって検出した複数の前記固定アンテナ信号の強度と、前記移動アンテナによって検出した前記移動アンテナ信号の強度との比である信号強度比をそれぞれ算出し、
    算出した上記信号強度比に基づいて、上記複数の固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    絶縁不良箇所特定装置。
  16. 請求項14に記載の絶縁不良箇所特定装置であって、
    前記信号判定手段は、
    前記信号強度比を算出する他に、
    上記移動アンテナ信号及び上記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、
    上記信号強度比と、上記周波数分析によって得られたスペクトル分布とに基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    絶縁不良箇所特定装置。
  17. 請求項13に記載の絶縁不良箇所特定装置であって、
    前記信号判定手段は、
    前記移動アンテナ信号及び前記固定アンテナ信号の少なくともいずれかについて周波数分析を行い、
    上記周波数分析によって得られたスペクトル分布に基づいて、上記固定アンテナ信号及び上記移動アンテナ信号のいずれもが、前記放電検出信号及び前記ノイズ検出信号のいずれであるかを判定する
    絶縁不良箇所特定装置。
  18. ステータ鉄心とこのステータ鉄心に巻かれた巻線とを有するステータにおける上記巻線の絶縁不良箇所を特定する絶縁不良箇所特定装置であって、
    上記ステータの周方向に複数箇所配置され、上記ステータに対する相対的位置が固定された複数の固定アンテナであって、上記巻線に所定の電圧を印加して上記巻線の絶縁不良箇所で繰り返し生じさせた部分放電により放射された電磁波を受信する複数の固定アンテナと、
    上記部分放電により放射された電磁波を受信する少なくとも1つの移動アンテナと、
    上記移動アンテナを、上記ステータに対し相対的にその周方向に移動させるアンテナ移動手段と、を備える
    絶縁不良箇所特定装置。
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