JP2005255568A - α−グルコシダーゼ阻害剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、牛蒡の抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】 牛蒡の抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤等に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、牛蒡からの抽出物を有効成分とするα−グルコシダーゼ阻害剤に関する。
糖生物学における最近の進歩により、免疫反応、腫瘍形成、腫瘍の転移、ウイルス性や細菌性感染症および神経細胞の分化等の様々な生物機能においてグルコシダーゼが重要な役割を果たすことが分かってきた。グルコシダーゼの特異的阻害剤は、様々な疾病の治療の可能性を有している。α−グルコシダーゼは糖タンパク質プロセシング及びグリコーゲン分解に関与し、α−グルコシダーゼの阻害剤は、糖尿病、肥満、ウィルス性感染症等の治療のために用いられている(非特許文献1〜3)。そのため、これまでα−グルコシダーゼ阻害剤の探索が精力的に行われてきている。例えば、オレアノール酸(oleanolic acid)やその誘導体が、α−グルコシダーゼ阻害剤として報告されている(例えば、非特許文献4)。
一方、キク科(Composite family)の野菜であるアルクチウム ラッパ L.(Arctium lappa L)(牛蒡)は多年生の植物であり、潜在的に多様な有用化学物質を産生することが示され、天然の食物繊維の研究に用いられてきている。しかし、これまでに、牛蒡の抽出物がα−グルコシダーゼ活性阻害作用を有することについては報告例がない。
Eur. J. Clin. Invest. 1994 , 524, 3-10 Bioorg. Med. Chem. Lett. 2000, 10, 1081-1084 FEBS Lett. 2001, 501, 84-86 Phytochemistry 2002, 60, 295-299
本発明の目的は、アルクチウム ラッパ L.(Arctium lappa L)(牛蒡)の抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤を提供することにある。
本発明の発明者らは、アルクチウム ラッパ L.(Arctium lappa L)(牛蒡)のアルコール抽出物が極めて高いα−グルコシダーゼ活性阻害作用を有することを見出すとともにその活性化合物をつきとめ、さらにこれに検討を重ねることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、牛蒡の抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤を提供する。
以下、本発明について詳細に説明する。
I.牛蒡の抽出物
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は牛蒡の抽出物を有効成分とする。本発明において用いられる牛蒡とは、被子植物門・双子葉植物綱・キキョウ目・キク科ゴボウ属の植物であればよく、その品種は特に限定はない。例えば、根の長大な滝野川群であっても、短い大浦群であってもよい。また、牛蒡の根、葉、
種、花等のいずれの抽出物であってもよいが、特に牛蒡の根の抽出物であることが好ましい。
上記の牛蒡は、そのまま抽出に供することができるが、より細かく粉砕した後、抽出に供してもよい。また、粉末にした後更に乾燥して抽出に供したり、水中で粉砕してスラリー状にして抽出に供することもできる。
抽出溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等のグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の極性有機溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の無極性有機溶媒等を用いることができる。また、これらの溶媒を単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。これらの内で、アルコール類、グリコール類、及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種の抽出溶媒を用いることが好ましい。特に、メタノール、エタノール及び酢酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出溶媒を用いる場合には、取り扱いが容易であり、しかも優れたα−グルコシダーゼ阻害活性を有する抽出物を得ることができる点で好ましい。溶媒を混合して用いる場合には、各溶媒の混合比は、溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。
抽出方法については、特に限定されるものではなく、牛蒡に溶媒を加えた後、抽出物のα−グルコシダーゼ阻害活性を失活させない程度に加温加熱する加熱抽出法や、超臨界抽出法等を適宜適用できる。また、一定量の溶媒に牛蒡を浸漬してバッチ処理する浸漬抽出法や連続的に溶媒を送り続ける連続抽出法等、公知の種々の抽出法を適用できる。
具体的な抽出方法の一例を挙げると、例えば、牛蒡に対して、その乾燥重量の0.5〜5重量倍程度、好ましくは、0.8〜1.2重量倍程度の抽出溶媒を加えて浸漬して加熱し、30〜60分間程度溶媒を還流させることにより、活性成分を抽出することができる。或いは、牛蒡に対して、その乾燥重量の0.5〜5重量倍程度、好ましくは、0.8〜1.2重量倍程度の抽出溶媒を加えて浸漬し、室温で1〜14日間程度放置するか、或いは40〜60℃程度に加熱して10〜20時間程度加熱することにより活性成分を抽出することも可能である。勿論、溶媒量や加熱温度、加熱時間等については、活性成分を効率的に抽出できるように適宜調整すればよい。
上記した方法によって牛蒡から抽出物を得た後、通常、濾過、遠心分離等の常法によって残渣と固液分離することによって、抽出液を得ることができる。本発明では、得られた抽出液をそのままα−グルコシダーゼ阻害剤として用いることが可能であるが、活性が低い場合もあるため、適宜濃縮又は溶媒を留去して、エキス状や粉末状として用いることもできる。更に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒を1種又は2種以上用いた溶媒分画操作によって、得られた抽出液から活性画分を分取することができる。更に、必要に応じて、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。α−グルコシダーゼ阻害活性を有する画分を取り出すことによって、少量の摂取で優れた活性を発揮するα−グルコシダーゼ阻害剤を得ることができる。
なお、牛蒡からの活性化合物の単離及び同定は、具体的には実施例1の記載に従い行うことができる。
II.α−グルコシダーゼ阻害剤
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、牛蒡の抽出物を有効成分として含有するものである。そして、上記牛蒡の抽出物は、一般式(I):
Figure 2005255568
(式中、R1〜R4は同一又は異なってH、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示す)
で表される化合物、及び/又は、一般式(II):
Figure 2005255568
(式中、R5はH又は低級アルキル基、R6は直鎖状C10-25アルキル基、直鎖状C10-25アルケニル基、又は直鎖状C10-25アルキニル基を示す)
で表される化合物を含有している。
すなわち、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、化合物(I)及び/又は(II)を有効成分として含有していることを特徴とする。
化合物(I)において、R1〜R4で示されるアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のC1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは、直鎖状、分岐状又は環状のC1-6アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示される。そのうち、メチル基、エチル基が好ましい。
化合物(I)において、R1〜R4で示されるアリール基としては、1〜3環のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基等が例示される。
化合物(I)において、R1〜R4で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が例示される。
化合物(I)において、R1〜R4で示されるアシル基としては、アルカノイル基、アロイル基等が挙げられる。アルカノイル基としては、直鎖状又は分岐状のC1-6アルカノイル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐状のC1-3アルカノイル基である。具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等が例示される。
化合物(I)において、R1〜R4で示されるアルコキシカルボニル基としては、アルコキシのアルキル部分が上記のアルキル基であるものが挙げられる。好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。
化合物(I)において、R1〜R4は同一又は異なって上記の置換基であればよいが、α−グルコシダーゼ阻害活性が高いR1〜R4がすべてHであるダウコステロールが好ましい。なお、ダウコステロールはステリル グルコシド(steryl glucosides)であり、これまで高いα−グルコシダーゼ阻害活性を有することは知られていない。
次に、化合物(II)において、R5で示される低級アルキル基としては、直鎖状又は分岐状のC1-6アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基基等が例示される。そのうち、メチル基、エチル基が好ましい。
化合物(II)において、R6で示される直鎖状C10-25アルキル基のうち、好ましくは直鎖状C12-23アルキル基、より好ましくは直鎖状C15-20アルキル基であり、特に直鎖状C15アルキル基又は直鎖状C17アルキル基が好ましい。
化合物(II)において、R6で示される直鎖状C10-25アルケニル基のうち、好ましくは直鎖状C12-23アルケニル基、より好ましくは直鎖状C15-20アルケニル基であり、特に直鎖状C15アルケニル基又は直鎖状C17アルケニル基が好ましい。また、R6で示される直鎖状C10-25アルケニル基は、二重結合を1〜5個有しており、好ましくは1〜4個、より好ましくは1又は3個を有している。直鎖状C10-25アルケニル基の二重結合は、シス体又はトランス体のいずれであっても高いα−グルコシダーゼ阻害活性を有するが、カルボニル炭素原子から数えてアルキル側鎖のC9位−C10位に二重結合を有することが好ましく、それはシス体であるのが好ましい。さらに、C9位−C10位及びC12位−C13位に二重結合を有することが好ましく、ともにシス体であるのが好ましい。特に、C9位−C10位、C12位−C13位及びC15位−C16位に二重結合を有することが好ましく、いずれもシス体であるのが好ましい。
化合物(II)において、R6で示される直鎖状C10-25アルキニル基のうち、好ましくは直鎖状C12-23アルキニル基、より好ましくは直鎖状C15-20アルキニル基であり、特に直鎖状C15アルキニル基又は直鎖状C17アルキニル基が好ましい。また、R6で示される直鎖状C10-25アルキニル基は、二重結合を1〜5個有しており、好ましくは1〜4個、より好ましくは1又は3個を有している。
化合物(II)のうち好ましい化合物としては、一般式(III):
Figure 2005255568
(式中、R5はH又は低級アルキル基、実線及び点線からなる結合は単結合又は二重結合を示す)
で示される化合物が挙げられる。化合物(III)が二重結合を有する場合、カルボニル炭素原子から数えてアルキル側鎖のC9位−C10位に二重結合を有することが好ましく、それはシス体であるのが好ましい。さらに、C9位−C10位及びC12位−C13位に二重結合を有することが好ましく、ともにシス体であるのが好ましい。特に、C9位−C10位、C12位−C13位及びC15位−C16位に二重結合を有することが好ましく、いずれもシス体であるのが好ましい。また、R5は、前記に定義される通りであり、そのうち、メチル基、エチル基が好ましい。
上記の化合物(II)のうちより好ましくは、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、パルミチン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチルが挙げられ、特に好ましくは、パルミチン酸メチル、リノレン酸が挙げられる。
上記の化合物(I)及び(II)は、いずれも公知化合物或いは公知化合物から当業者が容易に合成することができる。
上述のように、牛蒡の抽出物、化合物(I)及び/又は(II)は、α−グルコシダーゼ活性に対し高い阻害活性を有し、α−グルコシダーゼ阻害剤として有効である。具体的には、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、糖尿病、肥満、ウィルス性感染症の治療剤などとして有用である。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、牛蒡の抽出物、化合物(I)及び(II)からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、人体、動物に対して、注射、経直腸、点眼等の非経口投与、固形もしくは液体形態での経口投与等のための製薬上許容しうる担体とともに組成物として処方することができる。
注射剤としての本発明の組成物の形態としては、例えば、製薬上許容しうる無菌水もしくは非水溶液、懸濁液もしくは乳濁液が挙げられる。適当な非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油等)等が挙げられる。このような組成物は、補助剤を含んでいてもよく、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を挙げることができる。これらの組成物は、例えば、細菌保持フィルターによるろ過により、又は使用直前に滅菌水を混入することにより滅菌することができる。点眼投与のための製剤としては、例えば、溶解補助剤、保存剤、等張化剤、増粘剤等を加えてもよい。
経口投与のための固形製剤としては、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。この固形製剤は、例えば、化合物(I)及び/又は(II)に少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、乳糖、でんぷん等)を混和して調製することができる。この製剤はまた、通常の製剤化において、不活性希釈剤以外に滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)等を含んでいても良い。カプセル剤、錠剤、又は丸剤の場合には、緩衝剤を含んでいても良い。これらの固形製剤には、さらに腸溶解性被膜を施すこともできる。
経口投与のための液体製剤には、当業者間で普通に使用される不活性希釈剤(例えば、水を含む製薬上許容しうる乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等)が含まれていても良い。かかる不活性希釈剤に加えて、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、調味剤、香味剤等)等を配合することができる。経直腸投与のための製剤は、好ましくは化合物(I)及び/又は(II)に加えて、賦形剤(例えば、カカオ脂、坐剤ワックス等)等を含んでいても良い。
本発明の化合物(I)及び/又は(II)の投与量は、投与される化合物の性状、投与経路、所望の処置時間、その他の要因によって左右されるが、一般に、成人に対し一日あたり約0.1から100mg/kg、特に約0.1から10mg/kgが好ましい。また、所望によりこの一日量を2〜4回に分割して投与することもできる。
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を経口的に摂取する場合には、食品添加剤として食品に添加して摂取することができる。
食品添加剤として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、食品の種類に応じ適宜決めればよい。例えば、清涼飲料、炭酸飲料などの液体食品や菓子類やその他の各種食品等の固形食品に添加して用いることができるが、これらの場合の添加量については、食品の種類に応じて適宜決めればよく、一例としては、上記した抽出物の乾燥重量として、含有量が0.005重量%〜5重量%程度の範囲内となるように添加すればよい。
本発明の牛蒡の抽出物、化合物(I)及び/又は(II)は、高いα−グルコシダーゼ阻害作用を有するため、これらを有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤として有用である。
以下、本発明の具体例(実施例)を示すが、これにより本発明が限定されるものではない。
実施例1(牛蒡からの活性化合物の単離)
(1)α−グルコシダーゼ阻害活性の評価
牛蒡からの抽出物のα−グルコシダーゼ阻害活性の評価は、次のようにして行った。
α−グルコシダーゼ(100U/1.2mg)の酵素溶液を蒸留水に溶かし、5 units/mlとし、試料をDMSOに溶解する。1.0Mマルトース溶液を水に溶かし、0.1Mマレイン酸塩バッファ(pH7, マレイン酸1.16gを1N NaOH溶液19.1mlに溶解し、水で100mlに希釈したもの)を調整する。グルコース オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及び4−アミノアンチピリン0.51μmol/lを含む着色剤を、バッファ溶液75ml(30mMのリン酸塩バッファpH7.4とフェノール10.6μmol/l)に溶解する。
酵素溶液(20μl)、試料(20μl、DMSO溶液)、1.0Mマルトース溶液(500μl)、及び0.1Mマレイン酸塩バッファ(1500μl)を試験管に加えて、37℃で60分インキュベートする。その後、酵素反応を中断するために、素早く80℃にし3分加熱する。グルコースの確認のため、その溶液20μlを着色剤(3.0ml)と混合し、37℃で20分インキュベートする。酵素活性は、505nmの吸収を測定することにより、定量化する。α−グルコシダーゼ活性は、下記式(IV)により得られる。
α−グルコシダーゼ活性(%)=[(B−C)/A]×100 (IV)
A:ポジティブコントロールの吸収(酵素溶液、マレイン酸塩バッファ、DMSO及びマルトース溶液)
B:試料の吸収(酵素溶液、マレイン酸塩バッファ、試料溶液及びマルトース溶液)
C:ネガティブコントロール(水、マレイン酸塩バッファ、DMSO及びマルトース溶液)
上記のα−グルコシダーゼ阻害活性の評価の手順を、図1に示す。
(2)牛蒡からのα−グルコシダーゼ活性阻害化合物の抽出及び単離
上記(1)の評価方法を用いて、牛蒡からのα−グルコシダーゼ活性阻害化合物の抽出及び単離を行った。
アルクチウム ラッパ L.(牛蒡)からの阻害活性を有する化合物の抽出、単離は、図2に示すバイオアッセイ誘導分画を用いて行った。牛蒡(17kg)をメタノールで12時間還流し、メタノール抽出物(480g)を得た。この抽出物を水に懸濁させ、酢酸エチルと水で再抽出した。各画分を減圧下濃縮し、酢酸エチル画分(11g)及び水画分(469g)を得た。酢酸エチル画分は、α−グルコシダーゼ阻害活性を示した(表1)。
酢酸エチル画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:クロロホルム−メタノール)で画分1〜4に分画した。画分3が阻害活性を示したため、この画分をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:クロロホルム−メタノール)で繰り返し分画し、最終的に阻害活性を有する画分10(化合物1)を単離した。化合物1のスペクトルデータの一部を下記に示す。
<化合物1>
白色粉末: EI-MS, m/z 414 ([M-C6H10O5]+, 13), 396 (100), 382 (18), 381 (18), 255 (19), 147 (21), 44 (21) ; HR-EIMS, m/z 414.3845, calcd for C29H50O4 ; IR KBrνmax(cm-1) 3365, 2924, 1466, 1384, 1366. 1H, 13C NMR EI-MS, FAB-MS 及び HR-MS の測定値は、標品のダウコステロール(J. Agric Food Chem.. 2002, 50, 4709-4712, Phytochemistry 1990, 29, 2351-2355, Phytochemistry 1973, 12, 393-395, Phytochemistry 1990, 29, 2539-2543, J. Lipid Res. 1989, 30, 1963-1967)と一致した。
また、画分1も阻害活性を示したため、この画分をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン−エーテル)で繰り返し分画し、最終的に阻害活性を有する画分6(化合物2−4)を単離した。
表1にそのバイオアッセイの結果を示す。
Figure 2005255568
(3)活性化合物の同定
最終的に活性化合物として、化合物1及び化合物2−4を単離精製した。化合物1及び化合物2−4のスペクトルデータを、標品のスペクトルデータと対比することにより、化合物1はダウコステロール(daucosterol)であり、化合物2はパルミチン酸メチル(methyl palmiteate)、化合物3はリノール酸メチル(methyl linoleate)、化合物4はリノレン酸メチル(methyl linoleneate)であることを確認した。これらは何れも公知の化合物であり、具体的な化合物の化学構造式を図3に示す。
実施例2(活性の評価)
上記化合物1−4に加えて、ステアリン酸メチル(化合物5とする)、オレイン酸メチル(化合物6とする)、及び化合物2−6の加水分解化合物7−11についても(図3)、濃度200.0μmol/lにおけるα−グルコシダーゼ活性阻害を測定した。測定評価方法は、実施例1(1)を用いて行った。化合物1の活性評価結果を図4に、化合物2−11の活性評価結果を図5に示す。いずれの化合物も高いα−グルコシダーゼ阻害活性を有していることが分かる。
特に、図4より、ダウコステロール(化合物1)は、濃度200.0μmol/lにおいて、α−グルコシダーゼ活性を97.3%阻害し、そのID50値(50%阻害濃度)は、30.0μmol/lであった。
また、図5より、パルミチン酸メチル(化合物2)は、濃度200.0μmol/lにおいて、α−グルコシダーゼ活性を73.4%阻害し、そのID50値(50%阻害濃度)は、52.8μmol/lであり、また、リノール酸(化合物9)は、濃度200.0μmol/lにおいて、α−グルコシダーゼ活性を89.7%阻害し、そのID50値(50%阻害濃度)は、17.9μmol/lであった。
α−グルコシダーゼ阻害活性の評価の手順を示す図である。 牛蒡からの活性成分の単離操作を示す工程図である。 化合物1−11の化学構造式を示す図である。 ダウコステロール(化合物1)のα−グルコシダーゼ阻害活性を示す図である。 化合物2−11のα−グルコシダーゼ阻害活性を示す図である。

Claims (8)

  1. 牛蒡の抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
  2. 上記抽出物が、アルコール類、グリコール類、及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種の抽出溶媒を用いて抽出されたものである請求項1に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
  3. 牛蒡の抽出物が一般式(I):
    Figure 2005255568
    (式中、R1〜R4は同一又は異なってH、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基を示す)
    で示される化合物を含有する抽出物である請求項1又は2に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
  4. 牛蒡の抽出物が一般式(II):
    Figure 2005255568
    (式中、R5はH又は低級アルキル基、R6は直鎖状C10-25アルキル基、直鎖状C10-25アルケニル基、又は直鎖状C10-25アルキニル基を示す)
    で表される化合物を含有する抽出物である請求項1又は2に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
  5. 一般式(I)及び一般式(II)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
  6. 一般式(III):
    Figure 2005255568
    (式中、R5はH又は低級アルキル基、実線及び点線からなる結合は単結合又は二重結合を示す)
    で示される化合物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
  7. 糖尿病治療剤、肥満治療剤及びウィルス性感染症治療剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜6のいずれかに記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
  8. 患者に請求項1〜6のいずれかに記載のα−グルコシダーゼ阻害剤の有効量を投与して糖尿病、肥満又はウィルス性感染症を治療する方法。
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