JP2005246958A - 射出成形方法及びフッ素ゴム硬化物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 キャビティCに、射出ノズル14を射出口140をキャビティのゲート110に密着させて配設すると共に、射出ノズル内に、射出口を閉止するノズル閉止ピン15を配設し、キャビティ内を減圧した後、射出ノズル内の液状フッ素ゴム組成物の温度を0〜70℃の範囲で所定温度に安定に維持した状態で、ノズル閉止ピンを移動させて射出口を開放してキャビティへの上記組成物の射出を開始し、上記組成物がキャビティに所定量充填された時に、ノズル閉塞ピンを瞬時に移動させて射出口を閉止して射出を停止する。
【効果】 液状フッ素ゴム組成物の使用量が少ない容積の小さいキャビティであっても簡易な設定操作により所定量正確に射出でき、粘度の温度依存性が高い上記組成物の射出時のキャビティ外への流出やエアーの巻き込みを抑制して、キャビティへの上記組成物の射出時に起因するバリやエアー不良等の成形不良を可及的に低減することができる。
【選択図】図2
【効果】 液状フッ素ゴム組成物の使用量が少ない容積の小さいキャビティであっても簡易な設定操作により所定量正確に射出でき、粘度の温度依存性が高い上記組成物の射出時のキャビティ外への流出やエアーの巻き込みを抑制して、キャビティへの上記組成物の射出時に起因するバリやエアー不良等の成形不良を可及的に低減することができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、液状フッ素ゴム組成物の射出成形方法及びその方法により液状フッ素ゴム組成物を硬化させて得たフッ素ゴム硬化物に関する。
フッ化ビニリデン系フッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などに優れたエラストマーとして、自動車及び機械産業を中心に広い分野で工業的に使用されているが、耐薬品性が充分ではないため、ケトン系、低級アルコール系、カルボニル系、有機酸系などの極性溶剤には容易に膨潤してしまい、アミンを含む薬品には劣化してゴム強度や伸びが極端に低下してしまうという欠点を有している。また、低温特性においても限界があり、−20℃以下ではゴム弾性を失ってしまうため、寒冷地でのシール材としての使用にも限界がある。
このようなフッ化ビニリデン系フッ素ゴムの欠点を克服できる材料として、パーフルオロ化合物と含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとを主成分とする液状タイプの含フッ素硬化性組成物及びその硬化物が提案(特許文献1:特開平8−199070号公報参照)されている。このような組成物は、液状ゴム組成物の射出成形により成形される。
液状ゴム組成物の射出成形法として知られているLIMS(Liquid Injection Molding System)は、液状ゴム組成物を射出ノズルに導入して金型内に射出し、硬化させる成形方法であり、代表的なものとしては、付加硬化型等の液状シリコーンゴム組成物の成形方法として採用されている。また、近年では、ノーバリ・ランナーレス成形という2次加工の必要がない方法も普及し始めており、LIMSによって成形したシリコーンゴム成形品の適用分野は更に広がっている。
しかしながら、従来のLIMSでは、液状フッ素ゴム組成物のような液状ゴム組成物の中でも高粘度のものや、温度によって粘度が大きく変動するものを用いて成形する場合において、液状フッ素ゴム組成物の金型のキャビティへの射出充填中にキャビティ内で液状フッ素ゴム組成物の流動状態や充填挙動が変化し、低粘度状態で液状フッ素ゴム組成物がキャビティ外に流出してバリを生じたり、高粘度状態でエアーを巻き込んだりすることがあり、更に、液状フッ素ゴム組成物の気体透過率が小さいためエアーが抜けず、成形品のエアー不良率が高くなるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、粘度の温度依存性が高く、温度によって低粘度状態や高粘度状態に変化する液状フッ素ゴム組成物の射出時のキャビティ外への流出、エアーの巻き込みを抑制して、キャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出時に引き起こされるバリやエアー不良などの成形不良を可及的に低減する射出成形方法及びこの方法により得たフッ素ゴム硬化物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに所定量射出して硬化させる射出成形方法であって、金型のキャビティに、射出ノズルを、該射出ノズルの射出口をキャビティのゲートに密着させて配設すると共に、上記射出ノズル内に、射出ノズルの射出口近傍の内壁に先端部が当接して射出口を閉止するノズル閉止ピンを、ノズル閉止ピンの移動と共に射出口が開閉するように液状フッ素ゴム組成物の流路方向に移動可能に配設し、上記キャビティ内を減圧した後、射出ノズル内の液状フッ素ゴム組成物の温度を0〜70℃の範囲で所定温度に安定に維持した状態で、上記ノズル閉止ピンを射出口から離間する側に移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、液状フッ素ゴム組成物がキャビティに所定量充填された時に、ノズル閉塞ピンを射出口側に瞬時に移動させて射出口を閉止して射出を停止することを特徴とする射出成形方法を提供する。
本発明の射出成形方法においては、液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに射出する射出ノズルの射出口が、金型のキャビティのゲートに密着して設けられ、液状フッ素ゴム組成物のキャビティへの射出が完了した後には、射出ノズルの射出口がノズル閉止ピンにより閉止されて、キャビティと射出ノズルの連通が射出口の位置で遮断される。また、ノズル閉止ピンを移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、キャビティに液状フッ素ゴム組成物が所定量充填された時に、ノズル閉止ピンを移動させて射出口を瞬時に閉止して射出を停止する。そのため、射出口の開閉、即ち、ノズル閉止ピンの移動のタイミングを設定するだけで、キャビティに所定量の液状フッ素ゴム組成物をキャビティに対して正確に射出することができ、また、液状フッ素ゴム組成物の粘度依存性を考慮して射出速度、射出時間を簡易な操作で調整することが可能である。
更に、本発明の射出成形方法においては、上述した構成により液状フッ素ゴム組成物を射出する際、キャビティ内を減圧して、液状フッ素ゴム組成物を射出するため、粘度の温度依存性が高く、また気体透過性も低い液状フッ素ゴム組成物を射出する場合であっても、キャビティへの充填中にキャビティ内で液状フッ素ゴム組成物がエアーを取り込む現象を抑制することができ、エアー不良によって引き起こされる成形不良を可及的に低減することができる。
本発明によれば、液状フッ素ゴム組成物の使用量が少ない容積の小さいキャビティであっても簡易な設定操作により所定量正確に射出でき、粘度の温度依存性が高い液状フッ素ゴム組成物の射出時のキャビティ外への流出やエアーの巻き込みを抑制して、キャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出時に起因するバリやエアー不良等の成形不良を可及的に低減することができ、LIMSによる液状フッ素ゴム組成物の形成における生産性を向上させ、その硬化物の不良率が低減する。
また、本発明によれば、ノーバリ成形が可能となり、材料ロスが少なく、得られたフッ素ゴム硬化物の仕上げ工程も不要となるので、生産を大幅に向上させることが可能であり、更に、自動取り出し装置を装着すれば無人運転も可能となる。従って、生産効率が向上するのでその工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明は、液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに所定量射出して硬化させる射出成形方法であり、金型のキャビティに、射出ノズルを、該射出ノズルの射出口をキャビティのゲートに密着させて配設すると共に、上記射出ノズル内に、射出ノズルの射出口近傍の内壁に先端部が当接して射出口を閉止するノズル閉止ピンを、ノズル閉止ピンの移動と共に射出口が開閉するように液状フッ素ゴム組成物の流路方向に移動可能に配設し、上記キャビティ内を減圧した後、射出ノズル内の液状フッ素ゴム組成物の温度を0〜70℃の範囲で所定温度に安定に維持した状態で、上記ノズル閉止ピンを射出口から離間する側に移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、液状フッ素ゴム組成物がキャビティに所定量充填された時に、ノズル閉塞ピンを射出口側に瞬時に移動させて射出口を閉止して射出を停止する方法である。
本発明は、液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに所定量射出して硬化させる射出成形方法であり、金型のキャビティに、射出ノズルを、該射出ノズルの射出口をキャビティのゲートに密着させて配設すると共に、上記射出ノズル内に、射出ノズルの射出口近傍の内壁に先端部が当接して射出口を閉止するノズル閉止ピンを、ノズル閉止ピンの移動と共に射出口が開閉するように液状フッ素ゴム組成物の流路方向に移動可能に配設し、上記キャビティ内を減圧した後、射出ノズル内の液状フッ素ゴム組成物の温度を0〜70℃の範囲で所定温度に安定に維持した状態で、上記ノズル閉止ピンを射出口から離間する側に移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、液状フッ素ゴム組成物がキャビティに所定量充填された時に、ノズル閉塞ピンを射出口側に瞬時に移動させて射出口を閉止して射出を停止する方法である。
本発明は、液状フッ素ゴム組成物を射出成形するものであるが、液状フッ素ゴム組成物には、非フッ素系の液状シリコーンゴム組成物と異なり、(1)粘度の温度による依存性が特殊であり、金型内での流動性が複雑になる、(2)気体透過率が小さいためにエアー不良が発生しやすい、という特性があり、液状フッ素ゴム組成物の射出成形においては、これらの点を考慮する必要がある。
液状フッ素ゴム組成物の温度に対する粘度の挙動は、図1に示されるように特殊であり、非フッ素系の液状シリコーンゴム組成物が、温度変化に対してほぼ一定の粘度を示すのに対し、液状フッ素ゴム組成物は、温度の上昇と共に粘度が複雑に変化する。即ち、この粘度挙動では、金型のキャビティ内を流れる温度で粘度が一旦下がり、組成物の硬化のために熱を加えると粘度が再び上昇する挙動をとることが考えられ、このような粘度挙動をとると、液状フッ素ゴム組成物が金型のキャビティ内を移動している間の粘度が低くなって、割型の接合部分に流出してバリが発生することになる。そのため、特に、ダイヤフラム等の複雑な形状の成形品を成形する場合においてバリの発生が懸念され、従来の方法ではノーバリ成形は困難である。
一方、液状フッ素ゴム組成物の気体透過率は、表1に示されるように、非フッ素系の液状シリコーンゴム組成物のほぼ1/10であることから金型内にエアーが残留するとエアーが抜けにくくエアー不良が発生し易い。
更に、液状フッ素ゴム組成物が低粘度状態で金型のキャビティ内を流れる際に、エアーが金型のキャビティ内に残った場合は成形条件によってはエアーを巻き込みながら材料が流れる一種の乱流状態になり、材料内のエアーは液状フッ素ゴム組成物の気体透過性が低いためにエアーを巻き込んだまま硬化してしまい、エアー不良が発生しやすくなる。
本発明の射出成形方法においては、このような射出成形に対する弱点を有する液状フッ素ゴム組成物であっても、バリの発生や、エアー不良を発生させずに射出成形することが可能である。
以下に、本発明の射出成形方法に好適な射出成形装置の一例を示して、本発明の射出成形方法をより具体的に説明する。図2,3は本発明の射出成形方法に好適な射出成形装置の具体的な態様の一例を示す縦断面図、図4は図3のA〜Hの各線に沿った横断面図である。
この射出成形装置は、金型11、射出ノズル14、ノズル閉止ピン15、液状フッ素ゴム組成物の供給路16及びノズル閉止ピンの駆動装置を具備している。
金型11は、上型111及び下型112から構成され、上型111及び下型112の間にキャビティc(図の場合はダイヤフラム形状のキャビティ)が形成されており、キャビティcには液状フッ素ゴム組成物をキャビティc内に導入するためのゲート110が設けられている。また、キャビティcには、キャビティcから上型111上面に貫通するエアーベントaが設けられている。
射出ノズル14は、キャビティcに液状フッ素ゴム組成物を射出するためのものであり、射出ノズル14は、射出口140をキャビティcのゲート110に密着させて配設されている。この場合、射出ノズル14は、ノズル基体141と、ノズル基体141の先端に接続されたノズル筒先142と、ノズル基体141の外周面の一部を覆うように設けられたノズル外筒143とにより構成されている。ノズル筒先142に射出口140が設けられ、ノズル基体141の先端にノズル筒先142が接続されてノズル流路151を形成している。また、ノズル基体141のノズル流路151方向中央部は両端部より小径に形成されて、上記両端部の外径と同径の内径を有する円筒状のノズル外筒143との間に空間部144が形成されるようになっており、この空間部144に冷却水等の冷媒を流通させることができるようになっている。なお、図2,3中、145a,145bはOリングである。
この射出ノズル14には、一端が液状フッ素ゴム組成物の供給槽(図示せず)に接続した液状フッ素ゴム組成物の供給路16が接続されており、供給槽から供給路16を経由して液状フッ素ゴム組成物を射出ノズル14に供給できるようになっている。この場合、この液状フッ素ゴム組成物の供給路16は2枚のランナー板161,162に溝及び孔を形成し、これらランナー板161,162を重ね合わせることによって供給路16が形成されるように構成されており、下方のランナー板162設けられた凹陥部に射出ノズル14(ノズル基体141)が挿入されて固定された構成になっている。なお、図2〜4中、162aはノズル基体141をランナー板162に固定するための固定ピン、162bはワッシャーである。
また、射出ノズル14内には、ノズル閉止ピン15が液状フッ素ゴム組成物の流路方向に沿って移動可能に配設されており、ノズル閉止ピン15は、射出ノズル14の射出口140近傍の内壁に先端部が当接したときに射出口140を閉止するようになっている。
一方、ノズル閉止ピン15の後端側は、射出ノズル14から突出し、液状フッ素ゴム組成物の流路の密閉を保った状態で、更に供給路16から突出して液状フッ素ゴム組成物の流路外に延出されている。そして、この流路外に延出されたノズル閉止ピン15の後端部は、シリンダー172に挿入されている。このシリンダー172はピストン171を内包し、ピストン171がその外周面とシリンダー172の内周面とが接触して摺動するようになっており、また、ノズル閉止ピン15の後端部はシリンダー172の内部でピストン171と接続されており、ノズル閉止ピン15とピストン171とが連動するようになっている。なお、図2〜4中、173はノズル閉止ピン15をピストン171に固定するためのスクリュープラグである。
シリンダー172にはその両端部に、各々圧縮空気の入出口172a,172b(各々2つずつ)が設けられており、この入出口172a,172bへの圧縮空気の出入りと共に、ピストン171が押し下げられ又は押し上げられてノズル閉止ピン15が上下に移動し、これにより射出ノズル14の射出口140が開閉するようになっており、これらピストン171及びシリンダー172により駆動装置が構成されている。なお、図5,6中、163a,163b,163cは軸受、164a,164b,164cはO−リングである。また。この駆動装置17への圧縮空気の導入及び遮断の切り換えは、従来公知の方法で可能であり、例えば、各々の圧縮空気入出口172a,172bに接続された流路に遮断弁を設けて、各々の遮断弁の開閉のタイミングをタイマーにより制御する方法が採用できる。
このような射出成形装置を用いて液状フッ素ゴム組成物の射出成形を実施する場合、まず、図2に示されるように、ノズル閉止ピン15により射出ノズル14の射出口140が閉止した状態で、キャビティc内を、エアーベントaを介して真空ポンプ等の適宜な減圧手段(図示せず)により減圧する一方で、液状フッ素ゴム組成物の供給路16及び射出ノズル流路151を液状フッ素ゴム組成物で満たして、供給路16及び射出ノズル流路151が液状フッ素ゴム組成物で充填された状態とし、その後、圧縮空気入出口172aに圧縮空気を導入して、ピストン171を押し上げると共に、ノズル閉止ピン15を射出口140から離間するように移動させて射出口140を開放し、液状フッ素ゴム組成物の射出を開始する。
そして、キャビティcに液状フッ素ゴム組成物が充填された時点で、圧縮空気入出口172bに圧縮空気を導入して、ピストン171を押し下げると共に、ノズル閉止ピン15を射出口140側に瞬時に移動させて射出口140を閉止し、射出ノズル151とキャビティcとの連通を遮断する。そして、キャビティcに充填された液状フッ素ゴム組成物を加熱して硬化すれば成形物を得ることができる。
即ち、本発明においては、液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに射出する射出ノズルの射出口が、金型のキャビティのゲートに密着して設けられ、液状フッ素ゴム組成物のキャビティへの射出が完了した後には、射出ノズルの射出口がノズル閉止ピンにより閉止されて、キャビティと射出ノズルの連通が射出口の位置で遮断される。また、空気圧や油圧などの適宜な駆動機構により、ノズル閉止ピンを移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、キャビティに所定量が充填された時に、ノズル閉止ピンを移動させて射出口を瞬時に閉止して射出を停止する。そのため、射出口の開閉、即ち、ノズル閉止ピンの移動のタイミングを設定するだけで、キャビティに所定量の液状フッ素ゴム組成物をキャビティに対して正確に射出することができる。即ち、液状フッ素ゴム組成物の粘度依存性に合わせて射出速度、射出時間を簡易な操作で調整することが可能である。そのため、この方法は、短時間で液状フッ素ゴム組成物を射出するのに好適であり温度による粘度変化の激しい材料において特に効果を発揮する方法である。
また、射出ノズルの温度を制御することで粘度を安定化すると共に、液状フッ素ゴム組成物の硬化のため金型に与えられる熱を遮断することができるので、成形前に、成形の前サイクルにおいて射出ノズルの射出口付近に半硬化物が発生しないため半硬化物除去のためのスラグエル構造を用いなくてもよい。従って、半硬化物除去のスラグエル及びランナーが不要であるため廃棄する材料がなくなり、材料の節約が可能となり、また、バリ取り及び仕上げ工程を実施せずに製品を得ることが可能となる。
なお、射出ノズルの温度制御は、上述した射出成形装置の例のように、射出ノズルの外周部をジャケット構造とし、このジャケット内に冷却水等の冷媒を循環させる方法が構造も簡単で効果が大きく、冷媒温度は材料粘度や成形品形状により適宜調整すればよいが半硬化物の発生のない温度設定にする必要がある。具体的な温度範囲は、0〜70℃であり、好ましくは室温付近の10〜30℃である。0℃未満では冷媒配管付近の結露の発生や材料粘度の上昇による流れ抵抗の上昇があるため好ましくなく、70℃を超えるとゲート付近で半硬化物が発生してノズル閉止ピンによる開閉が不安定になる。
一方、液状フッ素ゴムの気体透過性の低さは、特に成形品のエアー不良に密接に関係する。一般的な射出成形においてはゲートから材料を注入し材料が最終的に到達する部分(材料が最も遅く到達する部分)にキャビティ内のエアーを追い出す目的でエアーベントを設ける。しかしながらこの方法では気体透過性の低い液状フッ素ゴム組成物では射出時に巻き込んだエアーが抜けにくく、形状が複雑になるほど成形圧力により圧縮されたエアーが成形品の外観不良を発生させやすくなる。また、金型内を流れる液状フッ素ゴム組成物の粘度が低下した場合、例えば10μm未満の間隙にも液状フッ素ゴム組成物が容易に流れ込む。このような部分に入り込んだエアーはエアーベントのみでは除去困難である。
本発明の射出成形方法においては、上述したように、ノズル閉止ピンにより射出ノズルの射出開始及び停止を制御して液状フッ素ゴム組成物を射出すると共に、キャビティ内を減圧して液状フッ素ゴム組成物を射出するため、粘度の温度依存性が高く、また気体透過性も低い液状フッ素ゴム組成物を射出する場合であっても、キャビティへの充填中にキャビティ内で液状フッ素ゴム組成物がエアーを取り込む現象を抑制することができ、エアー不良によって引き起こされる成形不良を可及的に低減することができる。
この場合、射出開始前に金型のキャビティ内が減圧されていることが好ましく、減圧の解除は、液状フッ素ゴム組成物の射出、充填、流動状態に応じて適宜選定することができるが、特に、金型のキャビティを減圧後、射出開始時にはキャビティの減圧状態を維持したまま、真空ポンプ等の減圧装置とキャビティとの間の流路を遮断しておくことが好ましい。なお、キャビティの減圧度は、特に限定されるものではないが、0.01〜10,000Pa、特に0.1〜1,000Paであることが好ましい。
本発明により成形する液状フッ素ゴム組成物としては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物と、1分子中にヒドロシリル基を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物と、ヒドロシリル化反応触媒とを含有するパーフルオロポリエーテル系液状フッ素ゴム組成物などが挙げられる。
このようなパーフルオロポリエーテル系液状フッ素ゴム組成物としては、上記フルオロポリエーテル化合物、有機ケイ素化合物(架橋剤)及びヒドロシリル化反応触媒が配合され、更に、必要に応じて架橋速度を調整するための反応制御剤、硬度やゴム物性を調整するためのシリカ等の充填剤を添加したものが一般的であり、例えば、信越化学工業社製商品名「SIFELシリーズ:SIFEL3511、SIFEL3702、SIFEL3510」などとして入手することができる。
本発明の金型には磨耗性の向上、腐食防止、離型性の向上などの目的で表面処理を行うことが一般的である。この表面処理は、通常の金型表面処理であるニッケルメッキ、クロムメッキなどでも何ら問題ない。
また、射出成形条件として、射出速度は0.01〜1000cc/秒が適当であり、更に好ましくは0.1〜500cc/秒である。この範囲未満では生産効率が著しく劣る場合があり、この範囲を超えると形状によっては材料供給が不足したり、スコーチが発生したりするなどの問題が発生してしまうおそれがある。
硬化温度及び硬化時間は、液状フッ素ゴム組成物が架橋できる温度及び時間であり、通常、温度は80〜220℃、特に100〜200℃が好ましく、時間は1〜600秒間である。硬化温度及び硬化時間が上記範囲未満であると、架橋時間が長くなってしまい生産効率が低下するおそれがあり、硬化温度及び硬化時間が上記範囲を超えると、金型内を流れる間に架橋が進行して材料の流動性がなくなり成型不能となってしまうおそれがある。
本発明の射出成形方法は、ダイヤフラム、バルブ、キャップなどの形状のもの、特にリング状でない形状のものに好ましく適用でき、金型のサイズを調整して大きさの選択も適宜可能である。
また、本発明の射出成形方法により得られるフッ素ゴム硬化物は、自動車用、化学プラント用、インクジェットプリンタ用、半導体製造ライン用、分析・理化学機器用、医療機器用、航空機用、燃料電池用等のフッ素ゴム製品として適用できる。
以下、実施例及び比較例を示し本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1,2]
射出成形機(10トンLIMS成形機 NS−10 LIMS仕様 日精樹脂社製)と、ダイヤフラム形状又はキャップ形状の2個取りレイアウトの金型(ピーアールシー社製)を用いて図1〜3に示されるような配置に射出ノズルとノズル閉止ピンと金型とを配置した射出成形装置を構成し、射出ノズルの温度を20℃とし、成形材料(液状フッ素ゴム組成物)としてSIFEL3511(信越化学工業社製)を用い、表2に示される射出成形条件で、図5(A)に示される断面形状の円形ダイヤフラム又は図5(B)に示される断面形状の円形キャップのフッ素ゴム硬化物を成形した。
射出成形機(10トンLIMS成形機 NS−10 LIMS仕様 日精樹脂社製)と、ダイヤフラム形状又はキャップ形状の2個取りレイアウトの金型(ピーアールシー社製)を用いて図1〜3に示されるような配置に射出ノズルとノズル閉止ピンと金型とを配置した射出成形装置を構成し、射出ノズルの温度を20℃とし、成形材料(液状フッ素ゴム組成物)としてSIFEL3511(信越化学工業社製)を用い、表2に示される射出成形条件で、図5(A)に示される断面形状の円形ダイヤフラム又は図5(B)に示される断面形状の円形キャップのフッ素ゴム硬化物を成形した。
具体的には、まず、図2に示されるように、ノズル閉止ピン15により射出ノズル14の射出口140が閉止した状態で、キャビティc内を、エアーベントaを介して真空ポンプ等の適宜な減圧手段(図示せず)により減圧する一方で、液状フッ素ゴム組成物の供給路16及び射出ノズル流路151を液状フッ素ゴム組成物で満たして、供給路16及び射出ノズル流路151が液状フッ素ゴム組成物で充填された状態とし、その後、ノズル閉止ピン15を射出口140から離間するように移動させて、射出口140を開放し、液状フッ素ゴム組成物の射出を開始した。
そして、キャビティcに液状フッ素ゴム組成物が充填された時点で、ノズル閉止ピン15を移動させて射出口140を閉止して、射出ノズル151とキャビティcとの連通を遮断した。そして、キャビティcに充填された液状フッ素ゴム組成物を加熱して硬化させて成形物を得た。得られた10ショット(20個)分の成形品(フッ素ゴム硬化物)の外観状態に関して評価を行った結果を表2に示す。
なお、表2中、シャットオフ動作ONとは、上述したようにノズル閉止ピンの開閉動作により液状フッ素ゴム組成物の射出の開始及び停止を制御して成形したものであり、一方、シャットオフ動作OFFとは、成形時にノズル閉止ピンの開閉動作を実施せず、射出ノズルの射出口を開放したままの状態で成形したものである。
実施例1のダイヤフラム形状のものでは、外観に問題がないノーバリ成形品が得られたのに対して、シャットオフ動作又は減圧動作のいずれかを実施しなかった比較例1、2では明らかに外観上の異状が観察され良品を全く得ることができなかった。また、実施例2,3ではキャップ形状の成形を行ったが、成形条件(特に射出時間)を大きく変化させても成形品のほとんどか良好品であった。
11 金型
110 ゲート
111 上型
112 下型
14 射出ノズル
140 射出口
15 ノズル閉止ピン
16 供給路
171 ピストン
172 シリンダー
a エアーベント
c キャビティ
110 ゲート
111 上型
112 下型
14 射出ノズル
140 射出口
15 ノズル閉止ピン
16 供給路
171 ピストン
172 シリンダー
a エアーベント
c キャビティ
Claims (3)
- 液状フッ素ゴム組成物を金型のキャビティに所定量射出して硬化させる射出成形方法であって、
金型のキャビティに、射出ノズルを、該射出ノズルの射出口をキャビティのゲートに密着させて配設すると共に、上記射出ノズル内に、射出ノズルの射出口近傍の内壁に先端部が当接して射出口を閉止するノズル閉止ピンを、ノズル閉止ピンの移動と共に射出口が開閉するように液状フッ素ゴム組成物の流路方向に移動可能に配設し、
上記キャビティ内を減圧した後、射出ノズル内の液状フッ素ゴム組成物の温度を0〜70℃の範囲で所定温度に安定に維持した状態で、上記ノズル閉止ピンを射出口から離間する側に移動させて射出口を開放してキャビティへの液状フッ素ゴム組成物の射出を開始し、液状フッ素ゴム組成物がキャビティに所定量充填された時に、ノズル閉塞ピンを射出口側に瞬時に移動させて射出口を閉止して射出を停止することを特徴とする射出成形方法。 - 上記液状フッ素ゴム組成物が、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物と、1分子中にヒドロシリル基を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物と、ヒドロシリル化反応触媒とを含有するパーフルオロポリエーテル系液状フッ素ゴム組成物であることを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
- 請求項1又は2記載の射出成形方法により液状フッ素ゴム組成物を硬化させて得たフッ素ゴム硬化物。
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JP2004372632A JP2005246958A (ja) | 2004-12-24 | 2004-12-24 | 射出成形方法及びフッ素ゴム硬化物 |
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CN107803311A (zh) * | 2017-11-14 | 2018-03-16 | 中山市高远精密模具有限公司 | 一种注胶控制装置 |
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-
2004
- 2004-12-24 JP JP2004372632A patent/JP2005246958A/ja active Pending
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