JP2005246652A - ゴム加硫金型のクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 金型を損傷または溶解せず、装置およびその維持のためのコストが低く抑えられ、クリーニング時間が短く、環境負荷が少なく、しかも有機物と無機物の双方に対して良好な清浄効果が得られるゴム加硫金型のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 使用により汚染されたゴム加硫金型のクリーニング方法において、金型を少なくとも170℃まで加熱する加熱工程A)と、沸点が200℃以上の有機溶剤を150〜170℃まで加熱して噴霧し、かつ/またはスチームを噴霧し、汚染物質を分解する分解工程B)と、分解された汚染物質を除去する除去工程C)と、を包含するゴム加硫金型のクリーニング方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タイヤのゴム状物質などの付着によって汚染されたゴム加硫金型のクリーニング(清浄化処理)方法に関する。
通常、タイヤを製造する工程は、タイヤコードを仕上げるコード処理工程と、混練された配合ゴムをトレッドやサイドウォールの断面形状に加工する押出し工程と、必要本数のワイヤを引き揃えてゴム被覆しリング状に成型するビード工程と、上記各工程で得られた中間製品を合体させ生タイヤに成型する成型工程と、成型された生タイヤの内面から加圧して金型の形状に膨らませて内外面から加熱してゴムに架橋反応を起こさせる加硫工程と、加硫済みタイヤのはみ出し等を切り取る仕上げ工程とで構成されている。いずれの工程も必要不可欠であるが、その中でも加硫工程は製品タイヤの品質を左右する重要な工程である。
通常、このような加硫工程で使用される金型は繰り返し使用される。このため、金型の内面は次第に汚染され、付着物の量が多くなると、適正に加硫処理を行なうことができなくなるため、通常1000回〜2000回の加硫処理毎に汚染した金型の内面のクリーニング(清浄化処理)が行なわれる。
金型の内面に付着した付着物は、ゴム状物が加硫のために加熱されて軟化した状態で金型の内面に強固に付着しているため、そのクリーニングは容易ではなく、これまで、そのクリーニング方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、汚染された加硫用の金型を再生するために、ガラスビーズ、セラミックビーズあるいは鉄粉などのメディアと呼ばれる清掃用粉体を、回転している金型の内面に吹き付け、この清掃用粉体を金型の内面に激突させることによって付着物を削ぎ落すショットブラスト法が提案されている。
また、特許文献2には、プラズマ環境下の処理槽内に加硫金型を装入することにより、加硫金型に付着したエラストマー加硫残滓の除去処理をした後、前記加硫金型を液中で高圧気液混合噴射による洗浄処理を行う加硫金型の清浄方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、金型を、付着物中の有機物の沸点以上の温度で高温加熱した後、加熱した金型を水洗する加硫金型のクリーニング方法が提案されている。その他、レーザー光を用いて汚染物質を熱分解する方法や、酸性またはアルカリ性の溶剤を用いた洗浄方法なども知られている。
特公昭56−20183号公報(特許請求の範囲等) 特開平7−314463号公報(特許請求の範囲等) 特開平6−262630公報(特許請求の範囲等)
従来のクリーニング方法として一般に広く知られている、メディアと称する清掃用粉体を高圧エアと共に噴射するショットブラスト法は、メディアが対象物に衝突する際の衝撃により汚れを落とすため、クリーニング対象となる金型を削ってしまうことから、金型表面を粗くしてしまったり、表面にある意匠を傷つけてしまったりするという問題があった。
また、レーザー光を用いて熱分解するクリーニング方法や高周波で励起したプラズマによる酸化分解(アッシング)等によるクリーニング方法は、いずれも装置コストや維持コストが高額であったり、クリーニングにかかる工数が長いといった問題があった。さらに、酸性やアルカリ性の溶剤を用いた洗浄方法では、金型の材質によっては溶解してしまったり、廃液による環境負荷の問題が生じたりした。
特許文献3に記載されているクリーニング方法は、金型の腐蝕や安全上問題のある強酸性や強アルカリ性の洗剤の使用や金型の分解掃除を行うことなくベント穴やスリット溝内部までクリーニングを行うことができ、しかも金型の摩滅を招くこともないが、金型を300℃程度まで加熱しなければならず、また、金型汚染物質である有機物と無機物の両方を効果的に除去するという点では、より一層の効果が望まれていた。
上述のように、従来のゴム加硫金型のクリーニング方法においては、1)クリーニングによる金型の損傷や溶解、2)クリーニング装置およびその維持に対するコスト、3)クリーニング時間、4)環境負荷、5)有機物と無機物の双方に対するクリーニング効果などの面で必ずしも満足できるものではなかった。
そこで本発明の目的は、金型を損傷または溶解せず、装置およびその維持のためのコストが低く抑えられ、クリーニング時間が短く、環境負荷が少なく、しかも有機物と無機物の双方に対して良好な清浄効果が得られるゴム加硫金型のクリーニング方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、ゴム加硫金型の汚染物質が有機物と無機物の双方からなることに着目して鋭意検討した結果、以下により上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のゴム加硫金型のクリーニング方法は、
使用により汚染されたゴム加硫金型のクリーニング方法において、
金型を少なくとも170℃まで加熱する加熱工程A)と、
沸点が200℃以上の有機溶剤を150〜170℃程度まで加熱して噴霧し、かつ/またはスチームを噴霧し、汚染物質を分解する分解工程B)と、
分解された汚染物質を除去する除去工程C)と、
を包含することを特徴とするものである。
加熱工程A)では、汚染物質を除去し易くするために、金型を少なくとも170℃まで加熱し、汚染物質の活性を上げることで、分解工程B)で用いる溶剤またはスチームを中性のものとすることができる。これにより、メディアによる金型の損傷や、酸性またはアルカリ性の洗浄剤による金型の溶解を回避することができる。また、酸やアルカリを用いないということは、特別な廃液処理を必要とせず、環境に対する負荷が小さいことを意味している。
また、本発明のクリーニング方法は、レーザー光やプラズマのような精密かつ大容量の電気を必要とする装置を用いることなく構成されるため、装置およびその維持コストを低く抑えることができる。また、分解工程B)と除去工程C)とを併せ持つことにより、ショットブラスト法には及ばないものの、各々の効果的な組み合せの結果、単一工程での洗浄対比で工数短縮が可能となり、クリーニング時間の短縮が可能となる。
本発明のゴム加硫金型のクリーニング方法によれば、金型を損傷または溶解せず、装置およびその維持のためのコストが低く抑えられ、クリーニング時間が短く、環境負荷が少なく、しかも有機物と無機物の双方に対して良好な清浄効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
先ず、本発明の加熱工程A)に使用する加熱装置は、加硫金型を少なくとも170℃程度まで加熱し得るものであればよく、加熱手段として誘導加熱や伝熱ヒータを備えたものを好適に使用することができる。図1に示す例は、誘導加熱手段2を備えた加熱炉1を摸式的に示すものであり、その中に設置された加硫金型Mは静置した状態でも、回転手段(図示せず)により回転させた状態であってもよい。
加熱炉1内において、加硫金型Mは少なくとも170℃に、好ましくは200℃〜300℃の温度にまで加熱される。この温度は表面温度ではなく、加硫金型Mの全体的な平均温度であり、この温度が170℃未満であると汚染物質の活性化が不十分であり、以下の工程で十分に汚れを除去することができず、一方、350℃以上とすることは装置やエネルギーのコスト的に好ましくない。
所定の温度まで加熱された加硫金型Mは、次いで、分解工程B)にて使用される分解装置10の遮蔽体11の内部に搬入され、配管12の先端に設けられた噴霧ノズル13から有機溶剤が加硫金型Mに向け噴霧される(図2参照)。噴霧ノズル13は適宜速度で回転し、加硫金型Mの内面全体に有機溶剤が低圧にて噴霧されるようにする。かかる有機溶剤は、沸点が200℃以上の有機溶剤を150〜170℃程度まで加熱したものとする。これにより、有機物の汚れに対し、相溶性が高くなり、低圧で噴霧することで有機物汚れを分解し、油分中に取り込むことができる。好適な有機溶剤としては、炭化水素系の溶剤であって、その沸点が200℃〜300℃であり、かつ、その引火点が90〜150℃のものである。このような有機溶剤は、引火点が高く、引火しにくいため、操作上安全であり、適切な温度にまで加熱することによって、有機物汚れに対する分解力が上昇し、加硫金型Mに強固に付着している有機物汚れを良好に分解することができる。かかる炭化水素系の有機溶剤としては、例えば、直鎖系の炭化水素を主成分とし、これに炭素数11以上の炭化水素を混合し、その沸点が200℃〜300℃、その引火点が90〜150℃になるように調整したものなども好適に使用することができる。有機溶剤の噴霧は、好ましくは0.1〜1.0MPaの圧力とし、時間については、ノズルの個数や噴霧形状により変動するものであるが、例えば、10〜30分とすることができる。
本発明においては、有機溶剤による上記分解工程B)を経た後、あるいは上記分解工程B)を経ることなく、所定の温度まで加熱された加硫金型Mに対し、分解工程B)における遮蔽体11の内部にて、配管12の先端に設けられた噴霧ノズル13から有機溶剤に代えスチームを噴霧する。無機物は、水に対して良く溶けることから、スチームを噴霧することで無機汚れを取り込むことができる。かかるスチーム噴霧は、所望の効果を得る上で、好ましくは0.5〜2MPaの圧力とし、時間については、同様にノズルの個数や噴霧形状により変動するが、例えば、5〜20分とすることができる。
模式的に図示する分解装置10は、有機溶剤またはスチームと噴霧空間Sとを外部から遮蔽する遮蔽体11と、加硫金型Mに有機溶剤またはスチームを供給する配管12と、該配管の先端に設置された噴霧ノズル13と、蒸発した有機溶剤で汚染された溶剤噴霧空間S内の空気を吸引して清浄化する排気清浄化手段(図示せず)とから基本構成されている。
配管12の先端に設けられた噴霧ノズル13は、回転しながら加硫金型Mの内面に向かって有機溶剤またはスチームを噴霧することができるようになっている。なお、配管12は、切替バルブ(図示せず)を介して有機溶剤容器およびスチーム発生装置に連結されており、有機溶剤はポンプアップされて配管12に供給されるようになっている。
分解工程B)において、所定の噴霧操作が完了すると、加硫金型Mは噴霧装置10から搬出され、次工程の除去工程C)の除去装置20の遮蔽体21の内部に搬入される(図3参照)。図示する除去装置20では、配管22の先端に設けられた噴霧ノズル23から高圧水が加硫金型Mに向けて噴霧され、分解工程B)における分解物質が高圧水によって除去され、加硫金型Mは清浄になる。噴霧ノズル23は適宜速度で回転し、加硫金型Mの内面全体に高圧水が噴霧されるようにする。かかる高圧水の噴霧は、所望の効果を得る上で、好ましくは5〜20MPaの圧力とし、時間については、同様にノズルの個数や噴霧形状により変動するが、例えば、10〜30分とすることができる。
除去工程C)に供された加硫金型Mは、それに付着している分解物質が容易に除去される形態となっているため、短時間にかつ効果的に除去され、能率的なタイヤ加硫用の金型Mの再生が実現する。
除去工程C)において、分解工程B)における分解物質を除去する手段としては、上記高圧水の噴霧の他、超音波洗浄、キャビテーションおよびドライアイスブラストを好適に挙げることができ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
タイヤの加硫成型に使用され汚染物質の付着した加硫金型を本発明のクリーニング方法を用いて以下のようにして処理した。
加熱工程A)
図1に示す加熱炉内において、電磁誘導により加硫金型を170℃程度に加熱した。
分解工程B)
(1)有機物の汚染物質に対する分解工程
沸点200℃以上のジプロピレングリコール(沸点222℃)を150〜170℃程度に加熱し、これを図2に示す噴霧装置内において噴霧用のノズルから加熱工程A)後の加硫金型に対して圧力0.5MPaで20分間噴射した。これにより、ジプロピレングリコールが汚染物質中の有機物の汚れに浸透し、汚れが分解又は膨潤した。
(2)無機物の汚染物質に対する分解工程
無機物の汚れに対しては、上記噴霧装置内においてジプロピレングリコールに代え高温の蒸気(スチーム)を圧力1MPaで10分間噴霧用のノズルから上記(1)の分解工程後の金型に対して噴射した。これにより、汚染物質中の無機物の汚れが抽出され、分解された。
除去工程C)
(1)高圧水による除去
分解工程B)後の金型に対して、5〜20MPaの高圧水によって金型に損傷を与えることなく上記分解物質を除去した。
(2)ドライアイスブラストによる除去
高圧水の除去に代え、分解工程B)後の金型に対して、圧力0.5MPaで15分間ドライアイスブラストすることによっても上記分解物を除去した。この場合も、金型に損傷を与えることなく上記分解物質を除去することができた。
加熱工程A)に使用し得る加熱装置の摸式的断面図である。 分解工程B)に使用し得る分解装置の摸式的断面図である。 除去工程C)に使用し得る除去装置の摸式的断面図である。
符号の説明
1 加熱炉
2 誘導加熱手段
10 分解装置
11、21 遮蔽体
12、22 配管
13、23 噴霧ノズル
20 除去装置
M 加硫金型
S 溶剤噴霧空間

Claims (4)

  1. 使用により汚染されたゴム加硫金型のクリーニング方法において、
    金型を少なくとも170℃まで加熱する加熱工程A)と、
    沸点が200℃以上の有機溶剤を150〜170℃まで加熱して噴霧し、かつ/またはスチームを噴霧し、汚染物質を分解する分解工程B)と、
    分解された汚染物質を除去する除去工程C)と、
    を包含することを特徴とするゴム加硫金型のクリーニング方法。
  2. 前記加熱工程A)における加熱手段が誘導加熱または伝熱ヒータである請求項1記載のクリーニング方法。
  3. 前記分解工程B)における前記有機溶剤として、沸点が200℃〜300℃の範囲内で、かつ、引火点が90℃〜150℃の範囲内の炭化水素系溶剤を用いる請求項1または2記載のクリーニング方法。
  4. 前記除去工程C)における汚染物質の除去手段が、高圧水の噴霧、超音波洗浄、キャビテーションおよびドライアイスブラストからなる群から選択される少なくとも1手段である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のクリーニング方法。
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