ところで、上述した従来の、リブ部に通ずる湯口を設けた鋳造成形方法にあっては、該リブ部に高温の金属溶湯が直接流入するから、冷却に要する時間が長くなる。このため、凝固時間も長くなり、該凝固により形成される金属結晶が粗大化して鋳物の強度が低下することともなり得る。このように強度が低下すると、リブ部を薄肉化することは難しく、これによる軽量化もできない。また、このように冷却時間や凝固時間が長くなると、製造工程におけるサイクルタイムが長くなるため、生産性を低下させることともなる。
一方、磁石式中子を予め磁気吸着させるようにした方法にあっては、上述したように、鋳造欠陥が生じることを防止でき、薄肉化と軽量化とを行うことが可能である。ところが、これを表した特許文献2では、磁石式中子を吸着して金属溶湯をキャビティ内に充填することは示されていても、具体的に実用可能な構成はなんら提案されていない。すなわち、この磁石式中子に、最も一般的なフェライト磁石や、最も磁気特性に優れたネオジウム・鉄・ボロン系焼結磁石を用いても、該磁石式中子は金属溶湯の充填によって成形金型から離れてキャビティ内を移動してしまう。このため、磁石式中子が鋳包まれる位置を特定できず、自動車用ホイールの成形に利用することはできない。而して、この従来の方法は、優れた効果を期待できるが、特許文献2の記載事項だけでは実用に供し得ないものである。
本発明は、磁石を用いて肉盗みを行うことが実用上可能である鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材及び鋳包み鋳造方法を提案するものである。
本発明の第1発明は、所要成形面を成形する成形金型の型面に取り付けられ、キャビティ内に金属溶湯が充填されることにより鋳包まれて、冷却後に取り除かれることによって、該所要成形面に肉盗み凹部を形成する鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材において、キャビティ内に充填される金属溶湯からの伝熱作用によって磁気特性の著しい劣化を生じない鉄・クロム・コバルト合金系磁石からなる耐熱性磁石が、成形金型の型面に磁気吸着された場合に、該磁石の両磁極面間で成形金型を介して磁力線が流れる磁気回路を形成するように設けられ、該磁気回路により成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部と、該磁気吸着面と直交する方向に鋳抜き可能なテーパー形状の傾斜側周部とを備えていることを特徴とする鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材である。
また、第2発明は、上記した第1発明の耐熱製磁石を、アルニコ磁石からなるものとした被鋳包み材である。さらに、第3発明は、上述した第1発明の耐熱製磁石を、サマリウム・コバルト系の焼結磁石からなるものとした被鋳包み材である。
一般的に、磁石はキュリー点以上の高温となると、強磁性から常磁性に変態する。したがって、成形金型に磁気吸着された磁石は、高温の金属溶湯から受ける伝熱作用によって、キュリー点を超える温度に加熱されると、磁力を失い、該成形金型から離れてキャビティ内を移動することとなってしまう。このため、キュリー点が比較的低い、最も一般的なフェライト磁石や、最も磁気特性に優れたネオジウム・鉄・ボロン系焼結磁石(図1参照)を用いた場合には、約650℃〜700℃に熱されたアルミニウム合金の溶湯によって、該キュリー点以上に加熱されることとなるため、これら磁石は使用できないことを確認した。また、発明者らは、さらに鋭意研鑽を重ねた結果、キュリー点以上に加熱されなくとも、金属溶湯からの伝熱作用により著しく磁気特性が低下するものがあることもわかった。そして、鋳造成形に用いる場合には、金属溶湯により加熱されても、該金属溶湯が充填される場合の流入圧力に対して、充分な磁力を発揮でき得る磁気特性を保持していることが必要であるということを見出した。このような磁気特性を有する磁石として、鉄・クロム・コバルト合金系磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト系の焼結磁石のいずれかからなる耐熱性磁石を選定し、本発明にかかる被鋳包み材を構成するようにしている。
そして、本発明の被鋳包み材にあっては、上記した耐熱性磁石を、成形金型の型面に磁気吸着した場合に、該磁石の両磁極面間で成形金型を介して磁力線が流れる磁気回路を形成するように設ける。この構成により、当該被鋳包み材を、成形金型に強い磁力により磁気吸着させることができるから、金属溶湯の流入圧力にも充分耐えることができると共に、該金属溶湯からの伝熱作用によって磁気特性がある程度低下しても充分な磁力を発揮できる。
このように、本発明にかかる被鋳包み材は、成形金型の型面に磁気吸着してキャビティ内に高温の金属溶湯を充填した場合にあっても、該金属溶湯からの伝熱作用により磁化特性が著しく劣化せず、かつ、磁気回路による強い磁気吸着力を発揮することから、当初磁気吸着した所定の位置から移動することなく該位置で保持され、鋳包まれることとなる。そして、冷却後に成形金型を脱型し、被鋳包み材を取り除くことによって、肉盗み凹部を所望の位置に正確に形成することができ得る。また、キャビティの、この被鋳包み材が鋳包まれた部位は、狭窄化されることとなるため、凝固速度も向上する。したがって、上述した自動車用ホイールの鋳造成形にあって、キャビティの、リブ部が成形される部位に本構成の被鋳包み材を磁気吸着して鋳包むことにより、冷却速度が速くなる冷やし金的な作用を生じ、厚肉形状のリブ部でも指向性凝固を適正に進行させることができ、鋳造欠陥の発生を防止することができる。さらに、凝固速度が速くなることにより、金属結晶を小さく凝固生成することができるから、当該リブ部の強度を向上させ得る。そして、冷却後に、この被鋳包み材を取り除くことによって、部分的に薄肉化されたリブ部が形成され、当該自動車用ホイールを軽量化することもできる。このように、本発明の被鋳包み材は、自動車用ホイールの鋳造成形にも適用することができる、充分に実用可能なものである。
また、このような被鋳包み材にあっては、冷却後に、所要成形面から取り除くことができるように、テーパー形状の傾斜側周部が形成されている。この傾斜側周部のテーパー角度としては、約5度以上とすることにより比較的容易に取り除くことができる。さらに容易に取り除くには、テーパー角を約15度に設定することが好適である。
ここで、上述した耐熱性磁石にあっても、一度鋳造成形を行うと、磁化特性が少し低下することとなる。したがって、磁化特性の低下した状態で、幾度か連続して鋳造成形を行うと、金属溶湯の充填に抗して磁気吸着することができる磁化特性を有しなくなってしまう。このため、鋳造成形する毎に、耐熱性磁石を再着磁する。この耐熱性磁石は、磁化特性の低下が比較的少ないことから、再着磁することにより当初の磁化特性に戻ることができる。而して、鋳造成形毎に再着磁することによって、当初の磁化特性を発揮して連続して鋳造成形に供することができ得る。
上述した第1の発明にあって、被鋳包み材を構成する鉄・クロム・コバルト合金系磁石としては、JIS C 2502に分類されるR2−0−2やR2−1−4等のいずれを用いても良い。このなかでも、真の保磁力(固有保磁力とも言う、iHc)が比較的高い磁石が好適であり、さらには、真の保磁力(iHc)が0.6kOe(48kA/m)以上のものが望ましい。このように、真の保磁力(iHc)の高いものを使用することにより、金属溶湯の伝熱作用により磁化特性が低下しても、充分な磁気吸着力を保持することができ、上述した本発明の作用効果を確実に発揮させ得る。
一方、上述した第2の発明にあって、被鋳包み材を構成するアルニコ系磁石としては、等方性のもの、異方性のもののいずれを用いることもできる。なかでも、総じて真の保磁力(iHc)が高い異方性磁石が好適である。さらに望ましくは、上記した鉄・クロム・コバルト合金系磁石と同様に、真の保磁力(iHc)が0.6kOe以上のものが適する。具体的には、JIS C 2502に分類されるR1−1−2やR1−1−7等が好ましい。
さらに、上述した第3の発明にあって、被鋳包み材を構成するサマリウム・コバルト系の焼結磁石としては、1−5系焼結磁石(以下、SmCo5系焼結磁石)、2−17系焼結磁石(以下、Sm2Co17系焼結磁石)等様々なものを用いることができる。なかでも、磁化特性に優れたSmCo5系焼結磁石、Sm2Co17系焼結磁石が好適に用い得る。ここで、上述した自動車用ホイールの鋳造成形にあって、マグネシウム合金の溶湯を充填する場合には、このSmCo5系焼結磁石、Sm2Co17系焼結磁石を用いることにより、上述した本発明の作用効果を適正に発揮することができる。一方、マグネシウム合金に比して溶湯温度の高いアルミニウム合金の場合には、溶湯による伝熱作用により、磁化特性が著しく低下しないSm2Co17系焼結磁石が好適である。
また、上述した鉄・クロム・コバルト合金系磁石、又はアルニコ磁石のいずれかからなる耐熱性磁石を備えた被鋳包み材にあって、耐熱性磁石が、両磁極面を夫々に被覆する強磁性体と、該磁極面以外の非磁極面を被覆する非磁性体とにより内包されると共に、成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部を、成形金型面に沿って相互に面一となる非磁性体の着座面と、各強磁性体の着座面とで構成し、各強磁性体の着座面の着座面積が、磁極面の面積の約50%〜100%の範囲となるように形成されてなる構成が提案される。
かかる構成にあっては、耐熱性磁石が強磁性体と非磁性体とにより内包されることにより、該耐熱性磁石がキャビティ内に充填される金属溶湯に直接触れることを防ぐようにしたから、該金属溶湯による伝熱作用を軽減でき、磁化特性の低下を抑制することができる。ここで、鉄・クロム・コバルト合金系磁石やアルニコ磁石は、比較的脆く欠け易いことから、このように内包されることにより、被鋳包み材として高い耐久性を有するものとなる。したがって、鋳造成形に連続して使用する場合にも、充分な耐久性を有し、適正に肉盗み凹部を形成することができ得る。また、かかる構成の被鋳包み材にあっては、成形金型の型面に磁気吸着された場合に、両磁曲面を被覆する各強磁性体が、それぞれの着座面で成形金型に磁気吸着することとなる。これにより、大多数の磁力線が、磁石のN極面からこの強磁性体を通じ、成形金型を介して、他方の強磁性体を通じてS極面に流れる磁気回路が形成される。この磁気回路によって、耐熱性磁石が内包された本構成にあっても、当該被鋳包み材が成形金型の型面に強い磁力により磁気吸着され得る。ここで、強磁性体の着座面の着座面積を、磁極面の面積に対して、約50%〜100%の範囲とすることにより、大多数の磁力線が効率良く流れ、高い磁気吸着作用を発揮し得る。尚、着座面積を50%より小さくしたり、100%より大きくすると、逆に磁力線の密度が低くなり、磁気吸着力も低下する。而して、この被鋳包み材は、高温の金属溶湯の伝熱作用や金属溶湯の流入圧力によっても、充分な磁気吸着力を保持でき、成形金型の型面の所要位置にしっかりと固定されることとなり、上述した本発明にかかる作用効果を一層適正に発揮することができ得る。尚、磁極面以外の他面を非磁性体で被覆することにより、該磁極面間で流れる磁力線が優先的に磁気回路に従って流れることとなるため、前述のように強い磁気吸着力を発揮できる。
さらにまた、上述した鉄・クロム・コバルト合金系磁石、又はアルニコ磁石のいずれかからなる耐熱性磁石が、磁石の磁化方向に沿った長尺寸法Lと、該磁石の磁極面積Sとが式(1)を満足するものとし、湾曲状の所要成形面を成形する場合にあっては、前記耐熱性磁石を、その磁化方向が成形金型の湾曲型面に対する接線方向に沿うように配置されるようにした構成が提案される。
L/S1/2≧1 (1)
かかる構成にあっては、耐熱性磁石を、式(1)を満足する、磁化方向に沿った長尺形状とすることにより、見かけ上の残留磁束密度を大きくできるから、充分な磁力により成形金型の型面に磁気吸着することができ得る。そして、上述した自動車用ホイールのリブ部を形成する成形金型の湾曲型面に磁気吸着させる場合に、当該耐熱性磁石を、その長手方向がリブ部成形金型の湾曲型面に対して接線方向(すなわち、自動車用ホイールの周方向)に配置することにより、キャビティ内に充填される金属溶湯の流入圧力に対して、充分な磁気吸着力により保持させ得る。而して、湾曲状の所要成形面にも、肉盗み凹部を正確かつ容易に形成することができ得る。
一方、上述したサマリウム・コバルト系の焼結磁石からなる耐熱性磁石を備えた被鋳包み材にあって、耐熱性磁石が、一方の磁極面及び磁極面以外の非磁極面を被覆する非磁性体と、他方の磁極面を被覆し、かつ前記非磁性体の非磁極面を被覆する部位に外嵌される強磁性体とにより内包されると共に、成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部に、成形金型面に沿って相互に面一となる、非磁性体の磁極面を被覆する着座面と、各強磁性体の着座面とを備え、該強磁性体の着座面の着座面積が、磁極面の面積の約50%〜100%の範囲となるように形成されてなる構成が提案される。
かかる構成にあっては、耐熱性磁石が強磁性体と非磁性体とにより内包されることにより、該耐熱性磁石がキャビティ内に充填される金属溶湯に直接触れることを防ぐようにしたから、該金属溶湯による伝熱作用を軽減でき、磁化特性の低下を抑制することができる。ここで、サマリウム・コバルト系の焼結磁石は、該磁石の表面に塗型を塗布して直接成形金型の型面に磁気吸着した場合には、アルミニウム合金と反応して初期形状で取り出すことが難しく、一回の鋳造成形毎に新しい磁石を使用する場合は良いが、繰り返し使用することは実用的でない。而して、このように内包させた構成とすることにより、金属溶湯との反応を防ぐことができるから、冷却後の取り出しも容易に行うことができ、鋳造成形に繰り返し使用することも可能となる。また、このサマリウム・コバルト系の焼結磁石は、上述した鉄・クロム・コバルト合金系磁石やアルニコ磁石に比して高い磁化特性を有していることから、磁極面が非磁性体に被覆されていても、該非磁性体が比較的薄肉である場合には、大多数の磁力線がこの非磁性体を通過することが可能である。したがって、かかる構成にあっては、成形金型に磁気吸着された場合に、例えば、N極面から発した大多数の磁力線が、強磁性体を通じて該強磁性体の着座面から成形金型に流れ、非磁性体の着座面を通過してS曲面に流れる磁気回路を形成できる。このような磁気回路が形成されることにより、本構成の被鋳包み材は成形金型の型面に強い磁力により磁気吸着されることとなる。尚、磁極面以外の他面では、該磁極面に比して磁力線の密度が低いことから、該磁力線が非磁性体の外側に通過することを妨げ得る。このため、該非磁性体を外嵌する強磁性体を流れる磁力線が優先的に成形金型に流れ、他方の磁極面との間で大多数の磁力線が流れる磁気回路を形成できるため、高い磁気吸着力を発揮できる。また、ここで、強磁性体の着座面の着座面積を、磁極面の面積に対して、約50%〜100%の範囲とすることにより、大多数の磁力線が効率良く流れ、高い磁気吸着作用を発揮し得る。尚、着座面積を50%より小さくしたり、100%より大きくすると、逆に磁力線の密度が低くなり、磁気吸着力も低下する。而して、この被鋳包み材は、高温の金属溶湯の伝熱作用や金属溶湯の流入圧力によっても、充分な磁気吸着力を保持でき、成形金型の型面の所要位置にしっかりと固定されることとなり、上述した本発明にかかる作用効果を一層適正に発揮することができ得る。
一方、本発明は、上述した鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材を、所要成形面を成形する成形金型の型面に磁気吸着して、キャビティ内に突出するように配置し、該キャビティ内に金属溶湯を充填して前記被鋳包み材を鋳包み、冷却後に該成形金型を脱型した後に、被鋳包み材を所要成形面から取り除くことにより肉盗み凹部を形成するようにしたことを特徴とする鋳包み鋳造方法である。かかる方法により、強い磁力によって磁気吸着した被鋳包み材は、高温の金属溶湯が充填された場合にも磁気吸着位置に留まり、鋳包まれることとなるから、予め設計等により定めた位置に所望の肉盗み凹部を正確に成形することができる。さらに、この被鋳包み材が磁気吸着され、狭窄化されたキャビティ内部位は、冷やし金的作用により、指向性凝固が適正に進行することとなり得るから、鋳造欠陥の発生を防ぐことができ、健全な鋳造成形を行うことができる。また、冷却速度が向上することにより、凝固速度が速くなるから、金属結晶も小さく凝固生成され、強度を向上できる。而して、従来、充分な強度を保持するために、厚肉形状とせざるを得なかった成形品も、薄肉化と軽量化とを容易かつ適正に行うことが可能となる。かかる方法は、上述した車両用ホイールの鋳造成形で実用でき、該ホイール軽量化と、この車両の走行性能を向上させることを実現し得る方法である。
また、被鋳包み材を、金属箔を介して成形金型の型面に磁気吸着するようにした鋳包み鋳造方法が提案される。ここで、被鋳包み材の磁気吸着面部を、成形金型の型面に、高精度で整一に接触させ得るように成形することは難しい。また、被鋳包み材を鋳造成形に供する回数が増加することによって、該被鋳包み材の磁気吸着面に凹凸が生成されることもあり得る。このため、被鋳包み材の磁気吸着面部と成形金型の型面との間には、僅かな隙間を生じ易い。この隙間に、金属溶湯が差し込むと、被鋳包み材を取り除く前に、差し込んで固化した金属の除去作業が必要となり、該作業効率が低下する。また、除去作業時に被鋳包み材に欠けや割れ等の損傷を生じると、この損傷によって一層溶湯の差し込みが発生することとなるため、再使用することができなくなってしまう。かかる構成にあっては、被鋳包み材を、金属箔を介して磁気吸着することによって、該被鋳包み材の磁気吸着面部と成形金型の型面との間に隙間が生じることを防ぎ、金属溶湯の差し込みを防止できる。これにより、被鋳包み材の容易な除去と、該被鋳包み材の繰り返し使用と、良好な鋳造成形品の鋳造とを適切に行い得る。尚、また、類似形状の成形金型に、被鋳包み材を応用する場合にも、金属溶湯の差し込みを防止でき、被鋳包み材の適応性を拡大できる。
本発明の第1は、上述したように、キャビティ内に充填される金属溶湯からの伝熱作用によって磁気特性の著しい劣化を生じない鉄・クロム・コバルト合金系磁石からなる耐熱性磁石が、成形金型の型面に磁気吸着された場合に、該磁石の両磁極面間で成形金型を介して磁力線が流れる磁気回路を形成するように設けられ、該磁気回路により成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部と、該磁気吸着面と直交する方向に鋳抜き可能なテーパー形状の傾斜側周部とを備えていることを特徴とする鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材である。また、この他の第2発明として、耐熱製磁石を、アルニコ磁石からなるものとした被鋳包み材である。さらにまた、第3発明として、耐熱製磁石を、サマリウム・コバルト系の焼結磁石からなるものとした被鋳包み材である。
このような本発明の被鋳包み材にあっては、次の効果を発揮し得る。
(1)キャビティ内に高温の金属溶湯が充填された場合でも、該金属溶湯からの伝熱作用により磁化特性が著しく劣化せず、かつ、磁気回路により強い磁気吸着力を発揮でき、予め設定された位置に鋳包むことができるため、肉盗み凹部を所望の位置に正確に形成することができる。而して、この鋳包み材は、例えば、自動車用ホイールの鋳造成形に、適正かつ容易に実用可能である。
(2)この被鋳包み材が鋳包まれることにより、キャビティを狭窄化できるため、冷やし金的な作用を生じ、例えば、自動車用ホイールのリブ部でも指向性凝固を適正に進行させることができ、鋳造欠陥の発生を防止することができる。さらに、凝固速度が速くなることにより、金属結晶を小さく凝固生成することができるから、当該リブ部の強度を向上させ得る。而して、自動車用ホイールを軽量化できる。
(3)本発明の耐熱性磁石にあっては、一度鋳造成形により低下した磁化特性を、再着磁することにより当初の磁化特性に戻すことができ、鋳造成形に繰り返し使用することができる。
また、耐熱性磁石を、鉄・クロム・コバルト合金系磁石、又はアルニコ磁石のいずれかによるものとした被鋳包み材にあって、耐熱性磁石が、両磁極面を夫々に被覆する強磁性体と、該磁極面以外の非磁極面を被覆する非磁性体とにより内包されると共に、成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部を、成形金型面に沿って相互に面一となる非磁性体の着座面と、各強磁性体の着座面とで構成し、各強磁性体の着座面の着座面積が、磁極面の面積の約50%〜100%の範囲となるように形成されてなるものとした構成にあっては、耐熱性磁石が金属溶湯に直接触れることを防ぎ、磁化特性の低下を抑制することができると共に、該耐熱性磁石の欠損を防ぎ、耐久性を向上させ得る。また、磁極面間で各強磁性体の着座面から成形金型を介して磁力線の流れる磁気回路が形成されることから、耐熱性磁石が内包されていても、当該被鋳包み材が成形金型の型面に強い磁力により磁気吸着できる。而して、高温の金属溶湯の伝熱作用や金属溶湯の流入圧力によっても、充分な磁気吸着力を保持でき、成形金型の型面の所要位置にしっかりと固定されることとなり、上述した本発明にかかる作用効果を一層適正に発揮することができ得る。
さらにまた、鉄・クロム・コバルト合金系磁石、又はアルニコ磁石のいずれかの耐熱性磁石が、磁石の磁化方向に沿った長尺寸法Lと、該磁石の磁極面積Sとが式(1)を満足するものとし、湾曲状の所要成形面を成形する場合にあっては、前記耐熱性磁石を、その磁化方向が成形金型の湾曲型面に対する接線方向に沿うように配置されるようにしたものとした構成が提案される。
L/S1/2≧1 (1)
かかる構成にあっては、耐熱性磁石の見かけ上の残留磁束密度を大きくできるから、充分な磁力により成形金型の型面に磁気吸着することができ得る。また、例えば、自動車用ホイールのリブ部を形成する成形金型の湾曲型面に磁気吸着させる場合にあって、キャビティ内に充填される金属溶湯の流入圧力に対して、充分な磁気吸着力により保持され、湾曲状の所要成形面にも、肉盗み凹部を正確かつ容易に形成できる。
また、耐熱性磁石を、サマリウム・コバルト系の焼結磁石からなるものとした被鋳包み材にあって、耐熱性磁石が、一方の磁極面及び磁極面以外の非磁極面を被覆する非磁性体と、他方の磁極面を被覆し、かつ前記非磁性体の非磁極面を被覆する部位に外嵌される強磁性体とにより内包されると共に、成形金型に磁気吸着する磁気吸着面部に、成形金型面に沿って相互に面一となる、非磁性体の磁極面を被覆する着座面と、各強磁性体の着座面とを備え、該強磁性体の着座面の着座面積が、磁極面の面積の約50%〜100%の範囲となるように形成されてなる構成にあっては、耐熱性磁石が金属溶湯に直接触れることを防ぐことができ、磁化特性の低下を抑制することができると共に、サマリウム・コバルト系の焼結磁石が金属溶湯と反応することを防ぎ、耐久性を向上できる。また、強磁性体の着座面と非磁性体の着座面とにより、成形金型を介して大多数の磁力線が流れる磁気回路を形成することができるから、この被鋳包み材は、高温の金属溶湯の伝熱作用や金属溶湯の流入圧力によっても、充分な磁気吸着力を保持でき、成形金型の型面の所要位置にしっかりと固定されることとなり、上述した本発明にかかる作用効果を一層適正に発揮することができ得る。
一方、本発明は、上述した鋳包み鋳造成形用の被鋳包み材を、所要成形面を成形する成形金型の型面に磁気吸着して、キャビティ内に突出するように配置し、該キャビティ内に金属溶湯を充填して前記被鋳包み材を鋳包み、冷却後に該成形金型を脱型した後に、被鋳包み材を所要成形面から取り除くことにより肉盗み凹部を形成するようにした鋳包み鋳造方法にあっては、高温の金属溶湯が充填された場合にも、被鋳包み材が予め設計等により定めた位置に留まり、鋳包まれることとなるから、所望の肉盗み凹部を正確に成形することができる。そして、被鋳包み材が磁気吸着された部位では、指向性凝固が適正に進行して、鋳造欠陥の発生を防ぎ、健全な鋳造成形を行うことができると共に、凝固速度が速くなることにより、金属結晶も小さく生成され、強度を向上できる。而して、従来、充分な強度を保持するために、厚肉形状とせざるを得なかった成形品も、薄肉化と軽量化とを容易かつ適正に行うことが可能となり、上述した車両用ホイールの鋳造成形で実用上極めて有効な方法である。
ここで、被鋳包み材を、金属箔を介して成形金型の型面に磁気吸着するようにした鋳包み鋳造方法にあっては、金属箔により、該被鋳包み材の磁気吸着面部と成形金型の型面との間に隙間が生じることを防ぎ、金属溶湯の差し込みを防止でき、被鋳包み材の容易な除去と、該被鋳包み材の繰り返し使用と、良好な鋳造成形品の鋳造とを適切に行い得る。
本発明の実施形態例を添付図面を用いて詳述する。
本実施形態例として、図7に示すようなアルミニウム合金製の自動車用ホイール51を鋳造成形する場合について例示する。そして、自動車用ホイール51の鋳造金型1は、図6(及び、図13)のように、意匠面形状を成形する下成形金型2と、リム外周形状を成形する横成形金型3と、該ホイールの裏側形状を成形する上成形金型4とが組み合わされてなり、その内部にキャビティ5が形成される。このキャビティ5は、自動車用ホイール51のハブ部55を成形するハブ形成部6、スポーク部56を成形するスポーク形成部7、リム部57を成形するリム形成部8、該スポーク部56とリム部57とが交差するリブ部52を成形するリブ形成部9等から構成されている。尚、下成形金型2、横成形金型3、上成形金型4はそれぞれ分離することができ、キャビティ5に金属溶湯を充填し、冷却した後、成形品を取り出せるようになっている。
また、下成形金型2には、略中央に湯口10が形成されており、この湯口10は鋳造金型1の下方に配設された保持炉13(図13参照)内に設けられたストークス12と連結されている。そして、鋳造成形時には、保持炉13内を加圧することによって、保持炉13内に保持されているアルミニウム合金の金属溶湯を、ストークス12から湯口10を通じてキャビティ5内に注入する。このキャビティ5内に流入した金属溶湯は、ハブ形成部6からスポーク形成部7、リブ形成部9、リム形成部8に順次流れていき、キャビティ最奥部まで進行する。こうして、金属溶湯をキャビティ5に鋳込み、鋳造成形が行われる。
本実施形態例にあって、このように鋳造成形される自動車用ホイール51は、図7のように、リブ部52のホイール裏面側に肉盗み凹部53が形成されるように、上成形金型4の、リブ形成部9を成形する位置に、本発明にかかる被鋳包み材15(又は25,35)を磁気吸着する(図6参照)。そして、アルミニウム合金の金属溶湯を充填することにより鋳包み、冷却後、上成形金型4を脱型した後に当該被鋳包み材15を取り除き、肉盗み凹部53が形成されたリブ部52を形成する。尚、この被鋳包み材は、上成形金型4の脱型方向(上方向)と異なる方向に突出させて配置できることから、様々な大きさに設定することが可能である。
次に、本発明にかかる被鋳包み材を構成する耐熱性磁石として、鉄・クロム・コバルト合金系磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト系焼結磁石について、上述した自動車用ホイール51の鋳造金型1を用いて、該自動車用ホイール51の鋳造成形に実用可能とするための予備試験を行った。
尚、本実施形態例にあって、鉄・クロム・コバルト合金系磁石には、図2の磁気特性を示す図表のように、二種類の磁石(K−5,KX−4:NECトーキン製)を用い、アルニコ磁石には、一種類の磁石(NKS−1000:住友特殊金属製)を用いた。また、サマリウム・コバルト系焼結磁石には、二種類のSmCo5系焼結磁石(H18C:日立金属製、REC−20H:TDK製)と、四種類のSm2Co17系焼結磁石(REC−22、REC−26AH、REC−32AH:以上TDK製、R−28HS:信越化学製)を用いた。
先ず、第1の予備試験として、製造工程で脱型した直後の上成形金型4に、上記各磁石と、最も一般的なフェライト磁石及び最も優れた磁化特性を有するネオジウム・鉄・ボロン系焼結磁石とをそれぞれ磁気吸着させて、3分経過後の磁気特性を測定した。ここで、上成形金型4の型面温度は約470℃であり、各磁石は、該上成形金型4のリブ形成部9を形成する辺りに磁気吸着した。この試験で、ネオジウム・鉄・ボロン系焼結磁石は、磁気吸着開始から1分も経過しないうちに落下した。これは上成形金型4からの伝熱作用により、磁石の温度が上昇してキュリー点近傍に達したことによる(図1参照)。一方、その他の各磁石について、3分後の磁気特性を測定した。ここで、この第1予備試験に用いた鉄・クロム・コバルト合金系磁石(I)は、残留磁束密度の低下が約15%だけであった(図4参照)。また、アルニコ磁石も、ほぼ同様の結果であった。一方、サマリウム・コバルト系焼結磁石にあっては、SmCo5系焼結磁石が約25%低下し、Sm2Co17系焼結磁石が約10%低下するに留まり、Sm2Co17系焼結磁石の耐熱性の高さがわかる(図2及び図3(イ)参照)。ところが、フェライト磁石は、残留磁束密度が約70%〜90%低下し、磁化特性が著しく劣化していた。このように磁化特性が著しく劣化すると、金属溶湯の流入圧力によって磁気吸着されている状態を維持できないと思われる。これにより、被鋳包み材には、鉄・クロム・コバルト合金系磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト系焼結磁石が適用可能であることが判断された。
第2予備試験として、上成形金型4のリブ形成部9を形成する、周方向に湾曲する形状の型面に磁気吸着させる場合における、上記した耐熱性磁石の形状効果について検討した。この予備試験には、丸棒状の鉄・クロム・コバルト合金系磁石(I)を用い、この形状として、外径が約5mmであり、長さが約4mm、15mm、35mmの三種類を準備した。ここで、各磁石は、長さ方向に着磁されており、両側端面が磁極面となっている。これら磁石に、予めアルミナ系塗型を磁石表面に約0.3mm厚に塗布し、上成形金型4のリブ形成部9を形成する型面に磁気吸着させる。そして、キャビティ5を形成した後、約700℃のアルミニウム合金(AC4CH)の溶湯を該キャビティ5内に充填させ、この溶湯を直接磁石に触れさせるようにして鋳造成形を行った。先ず、各磁石を、一方の磁極面を上成形金型4の型面に磁気吸着させるようにして、前記のようにアルミニウム合金の溶湯を充填した。その結果、長さ約15mm及び約35mmの磁石は、磁気吸着させた位置から移動しており、また、長さ約4mmのものでも僅かに移動していた。これは、一方の磁極面では、上成形金型4を介して磁力線が入力(又は、出力)されるが、他方の磁極面は、上成形金型4と接触していないから、両磁曲面と上成形金型4との間で、金属溶湯の流入圧力に抗するに必要な強い磁気回路を形成できないためであると推察される。次に、各磁石を、長さ方向(磁化方向)が、上成形金型4の周方向に対する接線方向に沿うように磁気吸着させ、アルミニウム合金の溶湯を充填させた。この結果、長さ約15mm、約35mmのものでは磁気吸着させた位置から移動していなかった。しかし、長さ約4mmのものでは磁気吸着させた位置から極僅かなズレが生じている場合もあった。これにより、磁極面の大きさに対して磁石の長さが短い場合には、金属溶湯の充填時の流入圧力に対して充分な磁気吸着力が発揮できないことがわかった。したがって、この結果から、棒状の耐熱性磁石は、磁化方向に沿った長尺寸法Lと、該磁石の磁極面積Sとが次式(1)を満足するものであることが好適である。
L/S1/2≧1 (1)
さらに、湾曲形状の部位に磁気吸着させる場合には、金属溶湯の充填時における流入圧力に対して充分な磁気吸着力を発揮できるように、その接線方向と、磁石の磁化方向とが平行となるように磁気吸着することが好適である。尚、このように磁石を配置した場合には、両磁極面が直接上成形金型4に接触していないものの、接触する部位を通じて上成形金型4を介して磁力線の流れる磁気回路が形成されることから、金属溶湯の流入圧力に充分に抗し得る磁気吸着力を発揮できる。
第3予備試験として、上述した第2予備試験結果に従う耐熱性磁石を、上成形金型4の、リブ形成部9を形成する型面の所定部位に磁気吸着し(図6参照)、約700℃のアルミニウム合金の溶湯をキャビティ5内に充填し、冷却後に取り出し、磁気特性を測定した。ここで、耐熱性磁石には、外径4mm、長さ16mmの丸棒形状の鉄・クロム・コバルト合金系磁石(I)を用い、予め表面に約0.3mmの厚さにアルミナ系塗型を塗布している。図4が、この結果を示す磁化曲線である。鋳造後の磁石は、残留磁束密度4.4kG(0.44T)、最大エネルギ積1.1MGOe(8.8kJ・m3)であった。これを、5kOe(400kA/m)以上の磁場中で、 再着磁すると鋳造前の初期状態と同等の残留磁束密度14.0kG(1.4T)、最大エネルギ積5.6MGOe(45kJ・m3)になった。磁束の値は、鋳造後には483Mx(483×10-6Wb)、再着磁後には966Mx(966×10-6Wb)である。尚、この耐熱性磁石の外観形状は、塗型を塗布していることから、殆ど変化は見られなかった。これにより、鋳造成形により鋳包まれても、磁化特性の著しい低下がなく、さらに、一回の鋳造成形毎に、再着磁することで繰り返し使用することが可能であることがわかった。
上述した第2予備試験及び第3予備試験を、アルニコ磁石についても同様におこなったところ、鉄・クロム・コバルト合金系磁石とほぼ同等の結果が得られた。すなわち、アルニコ磁石にあっても、上述したような形状効果を有し、鋳包まれた場合にも著しい磁化特性の低下を生じず、鋳造成形毎に再着磁して繰り返し使用することが可能である。
一方、サマリウム・コバルト系焼結磁石についても、上成形金型4のリブ形成部9を形成する、周方向に湾曲する形状の型面に磁気吸着させる第4予備試験を行った。
サマリウム・コバルト系焼結磁石は、上記の鉄・クロム・コバルト合金系磁石やアルニコ磁石に比して、高い磁化特性を有していることから(図1及び図2参照)、外径約10mm、高さ約7mmの円柱形状(磁化方向=高さ方向)のものを用いて、一方の磁極面を、上成形金型4の型面に磁気吸着させるようにした(図示省略)。そして、約700℃のアルミニウム合金(AC4CH)の溶湯を該キャビティ5内に充填させ、この溶湯を直接磁石に触れさせるようにして鋳造成形を行った。ここで、サマリウム・コバルト系焼結磁石として、上述した二種類のSmCo5系焼結磁石と、四種類のSm2Co17系焼結磁石とを試験に供し、各磁石表面には、予め表面に約0.3mmの厚さにアルミナ系塗型を塗布して行った。この結果、SmCo5系焼結磁石では、二種類いずれも磁気吸着した位置から移動しており、Sm2Co17系焼結磁石では、四種類全て磁気吸着位置で存在していた。これにより、アルミニウム合金の溶湯を充填する鋳造成形の場合には、Sm2Co17系焼結磁石が適していることがわかった。尚、アルミニウム合金に比して溶湯温度の低いマグネシウム合金の鋳造成形の場合には、SmCo5系焼結磁石及びSm2Co17系焼結磁石のいずれも好適に用いることができる。
上記の第4予備試験では、いずれの磁石も、鋳包まれた状態から取り除くことが難しく、塗型を塗布していてもアルミニウム合金と反応を生じており、元の形状を維持できなかった。しかたがって、サマリウム・コバルト系焼結磁石は、直接鋳包むようにした場合、一回の鋳造成形では有効に使用できるが、繰り返し利用することには向かないこともわかった。そこで、第5予備試験として、上記した円柱形状の磁石が、円柱状の保護ケースに内包されたものを、第4予備試験と同様に鋳造成形を行った(図11参照)。ここで、円柱状の保護ケースにあっては、上側のかぶせ蓋と下側の受け器とから成るかぶせふた形状の箱であり、該受け器の側周部に、かぶせ蓋の側周部が外嵌するようになっている。そして、受け器にかぶせ蓋を嵌め合わされた状態で、受け器の底面とかぶせ蓋の側周部の端面とが、上成形金型4の型面に等しく接触できるように、該型面に沿って相互に面一な形成となっている。ここで、受け器は、非磁性のステンレス鋼から形成されており、かぶせ蓋は強磁性のステンレス鋼から形成されている。この保護ケースに、円柱形状の磁石を、かぶせ蓋の上面、受け器の下面に各磁極面がそれぞれ被覆されるように配する。すなわち、磁石の磁化方向が保護ケースの開閉方向となるように内包させる。このように、サマリウム・コバルト系焼結磁石を内包した保護ケースを、受け器の底面が、上成形金型4の型面に磁気吸着させるようにして、約700℃のアルミニウム合金(AC4CH)の溶湯を該キャビティ5内に充填させる鋳造成形を行った。尚、保護ケース表面には、予めアルミナ系塗型を塗布している。ここで、保護ケースが上成形金型4に磁気吸着された場合には、一方の磁極面が、かぶせ蓋の上面部から側周部を介して上成形金型4に通じ、他方の磁極面が、受け器の底面部を介して上成形金型4に通じることにより、磁気回路が形成されることとなる。尚、サマリウム・コバルト系焼結磁石は、強い磁気特性を有していることから、非磁性体の受け器の底面部を磁力線が通過することができる。
このような第5予備試験を行った結果、第4予備試験と同様に、SmCo5系焼結磁石は磁気吸着した位置から移動しており、Sm2Co17系焼結磁石は磁気吸着位置で存在していた。また、この保護ケースは、比較的容易に鋳包まれた状態から取り出すことができた。そして、この保護ケースから磁石を取り出し、磁気特性を測定した結果を図3(ロ)の図表に示す。SmCo5系焼結磁石(I)では、磁束が6Mx(試験前の0.2%)に低下し、SmCo5系焼結磁石(II)では82Mx(試験前の2%)に低下しており、ほとんど磁石としての特性を示していなかった。このことから、鋳造成形時に、アルミニウム合金の溶湯の流入圧力に、磁気吸着力が耐えられなくなったと考えられる。一方、Sm2Co17系焼結磁石(III)〜(IV)は、充分な磁気特性を有していることがわかった。これは、図5に例示した、Sm2Co17系焼結磁石(III)の磁化曲線からも明らかである。また、これらSm2Co17系焼結磁石を再着磁した結果、図3(ロ)のように、初期状態とほぼ同レベルの磁気特性に戻る。このように、サマリウム・コバルト系焼結磁石が、保護ケースに内包されることにより、鋳造成形に繰り返し使用することが可能となる。尚ここで、Sm2Co17系焼結磁石にあっても、鋳包み鋳造成形には、真の保磁力が比較的高い(IV)、(V)、(VI)が好適である。
さらなる試験検討を重ねた結果、上述のように、磁石を保護ケースに内包する場合にあっては、かぶせ蓋を、磁極面の被覆面積に対して、側周面の端面の面積が約50%〜100%の範囲にあるようにすることが好適であることがわかった。この範囲から外れると、磁気吸着力が充分に発揮し得なくなる。また、受け器の底面部は、磁力線が充分に通過できるように、薄くすることが望ましい。上記の予備試験に供した寸法形状のSm2Co17系焼結磁石であれば、約1mm以下の厚みが好適である。
次に、上述した各予備試験の結果に基づき、自動車用ホイール51のリブ部52に肉盗み凹部53を形成するため(図7参照)、被鋳包み材を用いて鋳包み鋳造成形を行った実施例を以下に詳説する。
(実施例1)
この実施例1にあっては、被鋳包み材15を、図8(イ)に示すように、鉄・クロム・コバルト合金系磁石(II)が、頭部を截断された角錐、いわゆる截頭矩形角錐形状に形成されてなるものとしている。この被鋳包み材15は、上成形金型4の、リブ形成部9を形成する湾曲形状部分とほぼ同じ湾曲形状の磁気吸着面部16と、該磁気吸着面部16に対向し、キャビティ5内に突出する突出面部18と、該磁気吸着面部16と直交する方向に鋳抜き可能となるように、側面にテーパー角を設けた傾斜側周面部17とから構成されている。この被鋳包み材15は、長手方向が磁化方向であり、長手方向両端がN極の磁極面19aとS極の磁極面19bとなっている。尚、本実施例1でも、予備試験と同様に、KX−4(NECトーキン製)の鉄・クロム・コバルト合金系磁石(II)を用いている。
ここで、本実施例にあって、被鋳包み材15は、突出面部18の長尺寸法を約35mm、該突出面部の短尺寸法を約10mmとしている。また、磁気吸着面部16の短尺寸法を約15mmとしており、湾曲弧長を約41mmとしている。さらに、傾斜側周面部17は四面のテーパー角をそれぞれ約15度としている。この被鋳包み材15は、磁極面19a,19bの面積S=137.5mm2と平均長尺寸法L=38mmとの関係が、
L/S1/2=38/137.51/2=3.24>1
である。
このような被鋳包み材15の表面に、予めアルミナ系塗型剤を約0.3mmの厚みでほぼ均一に塗布する。そして、図8(ロ)のように、上成形金型4の、リブ形成部9を形成する湾曲形状の型面の所定位置に、この被鋳包み材15の磁気吸着面部16とほぼ等しい形状の、厚み約12μm〜18μmのアルミニウム箔20を敷き、該アルミニウム箔20の外側に、被鋳包み材15を磁気吸着させる。ここで、被鋳包み材15は、磁化方向が、上成形金型4の周方向に対する接線方向に沿って配置される。尚、この被鋳包み材15を、上成形金型4の周方向に亘ってほぼ均等間隔で複数個磁気吸着するようにし、自動車用ホイールが周方向でほぼ均等に軽量化されるようにする。
この上成形金型4は、下成形金型2及び横成形金型3と共に、キャビティ5を形成する(図6参照)。このキャビティ5にあって、リブ形成部9は、被鋳包み材15が配置された場所では狭窄化されており、該リブ形成部9全体としての容積を減少させている。そして、鋳造金型1の下方に配設された保持炉13(図13参照)内に保持されたアルミニウム合金の溶湯を、ストークス12から湯口10を通じてキャビティ5内に流入する。このように流入した溶湯は、ハブ形成部6からスポーク形成部7を介して、リブ形成部9に進入し、さらにリム形成部8に進み、溶湯は最奥方に向かって充填されていく。このように充填された溶湯は、最奥部から順に冷却され徐々に凝固していく。この凝固過程は、順次流入されてくる溶湯の押湯作用により、凝固時に引け巣等の欠陥が発生することを防止でき得る指向性凝固によって進行する。ここで、リム形成部8及びスポーク形成部7に比して容積が大きいリブ形成部9にあっては、被鋳包み材15が鋳包まれて該容積が減少されていると共に、該被鋳包み材15による冷やし金効果によって、前記指向性凝固が適正に進み、かつ凝固速度も比較的速くなる。これにより、引け巣の発生を防止できると共に、結晶粒も小さくなって強度が向上することとなり、健全な鋳物を成形することができる。
そして、冷却した後に、上成形金型4、下成形金型2、横成形金型3をそれぞれ脱型する。その後、当該自動車用ホイールの鋳物に鋳包まれている被鋳包み材15を取り除く。ここで、上成形金型4との間にアルミニウム箔20を配したことから、充填時における溶湯の差し込みを生じない。これにより、この被鋳包み材15は比較的容易に取り除くことができる。こうして、自動車用ホイール51のリブ部52内側に、肉盗み凹部53を形成することができ(図7参照)、当該自動車用ホイール51を軽量化することができ得る。
このように、取り除いた被鋳包み材15を、再着磁した後再び鋳造成形に用いる。ここで、再着磁には5kOe以上の磁場中に曝すことにより行った。そして、上述と同様の鋳造成形を行い、取り除いた後に、さらに再着磁して鋳造成形に繰り返し供した。この時の磁束変化を図9に示す。このように被鋳包み材15の磁力は、当初の磁束を100%とすると、鋳造成形毎に約15%〜20%低下するが、再着磁によりほぼ100%に戻る。したがって、本実施例1の被鋳包み材15は、上述したように、健全かつ優れた鋳物を成形する鋳包み鋳造成形に繰り返し使用可能なものである。而して、この鋳包み鋳造成形は、自動車用ホイールの製造工程で使用することが充分に可能であり、実用上の有用性が極めて高い。
尚、このような実施例1に対して、アルミニウム箔20を敷かず、直接磁気吸着面部を上成形金型4に磁気吸着して鋳造成形を行った。これにより、アルミニウム箔20の作用効果を検証した。この場合には、被鋳包み材15の磁気吸着面部16と上成形金型4の型面との間に溶湯の差し込みが発生し易くなった。そして、この差し込みが生じた場合には、当該被鋳包み材15を取り除く作業に比較的多くの時間を要し、また、取り除く際に、被鋳包み材15を損傷していまい、繰り返して使用することができなった。而して、被鋳包み材15と上成形金型4の型面との間に配するアルミニウム箔20は、該被鋳包み材15を取り除くための作業性の向上と、被鋳包み材15を繰り返し使用するために必要であり、実用上有効なものである。
(実施例2)
実施例2にあっては、磁化方向に長尺な長方体形状の鉄・クロム・コバルト合金系磁石21を、図10のように、両磁極面29a、29bを強磁性のステンレス鋼からなる強磁性体22a,22bで覆い、磁極面以外を非磁性のステンレス鋼からなる非磁性体23で覆うようにして内包した被鋳包み材25とする。この被鋳包み材25は、上記実施例1と同様の截頭矩形角錐形状となっており、被鋳包み材25の磁気吸着面部26にあっては、上成形金型4の型面に等しく接触するように、互いに面一な、磁石の下面を被覆する非磁性体底面の着座面30と、該着座面30の両側に配された強磁性体22a,22bの着座面28a,28bとからなる。そして、本実施例2にあって、鉄・クロム・コバルト合金系磁石21は、磁化方向の長尺寸法Lが約38mm、短尺寸法及び厚みが約8mmである。また、被鋳包み材25は、テーパー角が約5度の傾斜側周面部27を有し、非磁性体23の、磁石21の下面を被覆する非磁性体23の厚みを約1mm、強磁性体の着座面28a,28bの面積をそれぞれ約40mm2としている。すなわち、磁石21の磁極面の面積に対して、強磁性体22a,22bの着座面28a,28bの各面積は、約0.6倍である。尚、本実施例2でも、鉄・クロム・コバルト合金系磁石21には、上述と同様の、KX−4(NECトーキン製)を用いている。
このような被鋳包み材25を、上述した実施例1と同様に、その表面にアルミナ系塗型剤を約0.3mmの厚みでほぼ均一に塗布した後、アルミニウム箔20を介して、上成形金型4のリブ形成部9を形成する型面の所定位置に磁気吸着する。そして、下成形金型2及び横成形金型3と共にキャビティ5を形成し、アルミニウム合金の溶湯を充填する鋳造成形を行う。ここで、本実施例2の被鋳包み材25にあっては、上成形金型4の型面に磁気吸着された場合に、N極の磁極面29aから発した大多数の磁力線が、強磁性体22aを通じて着座面28aから上成形金型4に流れ、該上成形金型4を介して、他方の着座面28bから強磁性体22bに通じ、S極の磁極面29bに入る磁気回路が形成されることとなる。このように、両磁極面29a,29bが上成形金型4を介して大多数の磁力線が通じた磁気回路が形成されることにより、当該被鋳包み材25は上成形金型4に強い磁力でしっかりと固定されることとなり、溶湯の流入圧力に充分に耐えることができる。
そして、アルミニウム合金の溶湯が湯口10を通じて順次充填されていく過程にあっては、上述した実施例1と同様に、リブ形成部9の狭窄化と、冷やし金効果とにより、指向性凝固が適正に進行することとなり得る。これにより、リブ部に、引け巣等の欠陥を生じることを防ぎ、かつ、結晶粒の小さい高強度に形成することができ、健全な鋳物を成形することができる。
この鋳造成形によって、被鋳包み材25が鋳包まれて冷却した後に、各成形金型2,3,4を脱型した後、該被鋳包み材25を取り除くことにより、リブ部52に肉盗み凹部53を形成することができる(図7参照)。ここで、被鋳包み材25は、アルミニウム箔20を敷いて磁気吸着されていることから、溶湯の差し込みもなく、比較的容易に取り除くことができる。この鋳造成形後に、被鋳包み材25から磁石21を取り出して磁気特性を調べたところ、上述の実施例1と同様に、磁気特性が僅かに低下していたため、再着磁して磁気特性を回復させた。そして、再び、被鋳包み材25として、上述したような鋳包み鋳造成形に供した。このように、鋳造成形を行う毎に再着磁することにより、繰り返し使用することができ得る。
尚、この実施例2にあっては、上述した実施例1と被鋳包み材の構成を変更した以外は、同じ鋳造金型1及び鋳造成形方法を用いており、同じ説明は省略した。
(実施例3)
この実施例3にあっては、サマリウム・コバルト系焼結磁石31が内包された被鋳包み材35を用いて、鋳包み鋳造成形を行っている。この被鋳包み材35は、図11のように、サマリウム・コバルト系焼結磁石31と、該サマリウム・コバルト系焼結磁石31を内包する保護ケース32と、該保護ケース32のかぶせ蓋33が内嵌される鋳包み本体43とから構成されている。ここで、サマリウム・コバルト系焼結磁石31には、図2の(IV)のSm2Co17系焼結磁石31を用いた。このSm2Co17系焼結磁石31は、外径約10mm、高さ約7mmの円柱形状としている。このSm2Co17系焼結磁石31を内包する保護ケース32は、上述した第5予備試験と同様の、円柱状のかぶせふた形状であり、上側のかぶせ蓋33と下側の受け器34とから構成される。そして、受け器34の側周部42に、かぶせ蓋33の側周部41が外嵌し、該受け器34に該かぶせ蓋33を嵌め合わされた状態で、受け器34の底面とかぶせ蓋33の側周部41の円環状端面とが相互に面一であり、上成形金型4の型面に等しく接触できるようになっている。すなわち、かぶせ蓋33の側周部41の円環状端面が、強磁性体の着座面38であり、受け器34の底面が、非磁性体の着座面40である。ここで、かぶせ蓋33が強磁性のステンレス鋼からなる強磁性体であり、受け器34が非磁性のステンレス鋼からなる非磁性体である。また、鋳包み本体43は、非磁性のステンレス鋼で形成されている。
この保護ケース32に、Sm2Co17系焼結磁石31を、N極の磁極面39aが受け器34の底面部に被覆され、S極の磁極面39bがかぶせ蓋33の上面部に被覆されるように内包させる。すなわち、Sm2Co17系焼結磁石31は、その磁化方向が保護ケース32の開閉方向(図11中の上下方向)となるように配されている。さらに、この保護ケース32は、鋳包み本体43に、かぶせ蓋33が内嵌されて、本実施例3の被鋳包み材35を構成する。この鋳包み本体43は、略載頭矩形角錐形状となっており、上成形金型4の型面に磁気吸着する磁気吸着面部36に、前記保護ケース32のかぶせ蓋33(強磁性体)の着座面38と受け器34(非磁性体)の着座面40とが、該磁気吸着面部36を面一な形状とするように配されている。そして、この鋳包み本体43は、長手方向の平均長さが約40mm、傾斜側周面37のテーパー角が約5度に形成されている。尚、鋳包み本体43には、長手方向に二個の保護ケース32が配設されるようになっている。
このような被鋳包み材35にあって、Sm2Co17系焼結磁石31を内包する保護ケース32は、かぶせ蓋33及び受け器34の各厚みを約1mmとしている。したがって、かぶせ蓋33(強磁性体)の着座面38の着座面積は、約41mm2であり、磁極面39bの面積に対して約52%となっている。尚、受け器34の底面部(着座面40を構成する部位)の厚みも約1mmである。
そして、この被鋳包み材35に、Sm2Co17系焼結磁石31を内包した保護ケース32を嵌め込み、上述した実施例1と同様に、上成形金型4のリブ形成部9を形成する型面の所定位置に磁気吸着させる。ここで、二個のSm2Co17系焼結磁石31,31は、それぞれの磁化方向が同向きとなるように、N極の磁極面が、受け器34の着座面40に被覆されるように配する。また、この被鋳包み材35の表面には、アルミナ系塗型材を約0.3mmの厚みでほぼ均一に塗布している。さらに、この被鋳包み材35は、アルミニウム箔20を介して、上成形金型4の型面に磁気吸着させている。ここで、本実施例3の被鋳包み材35にあっては、上成形金型4の型面に磁気吸着された場合に、受け器34の底面により被覆されたN極の磁極面39aから発せられた大多数の磁力線が、この受け器34を通過して着座面40から上成形金型4に流れる。そして、この磁力線は、上成形金型4を介してかぶせ蓋33の着座面38から入り、該かぶせ蓋33の側周部41を通じてS極の磁極面39bに流れることとなる。このような、両磁極面間に、上成形金型4を介して大多数の磁力線の通ずる磁気回路が形成されることにより、当該被鋳包み材35は上成形金型4に強い磁力でしっかりと固定されることとなり、溶湯の流入圧力に充分に耐えることができる。
このように被鋳包み材35を磁気吸着した上成形金型4と、上述した実施例1と同様に、下成形金型2及び横成形金型3と共にキャビティ5を形成し、アルミニウム合金の溶湯を充填する鋳造成形を行う。そして、アルミニウム合金の溶湯が湯口10を通じて順次充填されていく過程にあっては、上述した実施例1と同様に、リブ形成部9の狭窄化と、冷やし金効果とにより、指向性凝固が適正に進行することとなり得る。これにより、リブ部に引け巣等の欠陥を生じることを防ぎ、かつ、金属結晶が小さく凝固生成された高い強度を発揮するものとして形成することができ、健全な鋳物を成形することができる。
この鋳造成形によって、被鋳包み材35が鋳包まれて冷却した後に、各成形金型2,3,4を脱型した後、該被鋳包み材35を取り除くことにより、リブ部52に所望の肉盗み凹部53を形成することができる(図7参照)。ここで、被鋳包み材35は、アルミニウム箔20を敷いていることから、溶湯の差し込みもなく、比較的容易に取り除くことができる。この鋳造成形後に、被鋳包み材35からSm2Co17系焼結磁石31を取り出して磁気特性を調べたところ、磁気特性が僅かに低下していたため、再着磁して磁気特性を回復させた。そして、再び、被鋳包み材35として、上述したような鋳包み鋳造成形に供した。このように、鋳造成形を行う毎に、再着磁することにより、繰り返し使用することができ得る。尚、この実施例3のように、各磁石の磁化方向を等しくしている場合には、被鋳包み材35のままで、真の保磁力の1.5倍以上の磁場でパルス着磁することにより再着磁することが可能であるため、この再着磁作業も効率化することができる。
尚、この実施例3にあっても、上述した実施例1と被鋳包み材を変更した以外は、同じ鋳造金型1及び鋳造成形方法を用いており、同じ説明は省略した。
このように、本実施形態例に例示した実施例1〜実施例3にあっては、実際の自動車用ホイールの製造工程にかかる鋳造成形に適用することができ、比較的厚肉形状のリブ部に所望の肉盗み凹部を形成することを容易に行い得る。而して、本発明にかかる被鋳包み材及び、該被鋳包み材を用いた鋳包み鋳造方法は、実用上の有用性が極めて高いものである。
ここで、上述した実施例1及び実施例2にあっては、鉄・クロム・コバルト合金系磁石を用いた構成であるが、代わりにアルニコ磁石とした場合でも、同様に用いることができ、同じ作用効果を発揮できる。また、実施例3にあっては、Sm2Co17系焼結磁石31が内包された保護ケース32を被鋳包み材35に二個配設した構成であるが、他の構成として、一個の保護ケース32を配設しても良いし、三個や四個など複数個配設することも可能である。尚、上述した実施例1〜実施例3は一具体例であり、各構成を示す寸法数値はこれに限定するものではなく、対象とする成形品に応じて様々に設定することができる。また、磁石は、その寸法形状によって磁化特性も変化するため、上記した磁化特性を表す各特性値も、設定された寸法形状に従って変わることとなる。
一方、上述した実施例1〜実施例3にあって、上成形金型4を、被鋳包み材が磁気吸着する位置に、予め磁石を内在させる構成とし、被鋳包み材と上成形金型4とを一層強い磁力により磁気吸着させるようにすることも可能である。例えば、図12のように、上述した実施例1にあって、上成形金型4’に、被鋳包み材15のS極(磁極面19b)を磁気吸着させる位置の表層に、該S極に対峙するようにN極の磁極面46aを配する磁石45を埋め込み、該被鋳包み材15のN極(磁極面19a)に対峙するように、S極の磁極面46bを配した磁石45を埋め込む。これにより、被鋳包み材15が磁気吸着された場合に、該被鋳包み材15のN極及びS極が、上成形金型4’を通じて、該上成形金型4’に埋め込まれた各磁石45,45を介して磁力線の流れる磁気回路が形成されることとなる。この磁気回路により、被鋳包み材15を一層強い磁気吸着力によって上成形金型4’の型面に磁気吸着させることができる。また、このように予め上成形金型4の型面に磁石45,45を埋め込んでおくことにより、被鋳包み材15の磁気吸着させる位置を常に特定でき、容易かつ適切に磁気吸着できるという優れた利点も有する。尚、上成形金型4’に埋め込まれる磁石45,45としては、本発明にかかる耐熱磁石とすることが好適である。
本発明は、上述した実施形態例に限定されるものではなく、様々な形態で実施することが可能である。上述した実施例では、アルミニウム合金の溶湯を充填することにより、自動車用ホイールの鋳造成形を例示しているが、マグネシウム合金製のホイールを鋳造成形する場合にも用いることができる。また、自動車以外にも二輪車等の車両ホイールや、その他の鋳造成形される部品にも適用可能である。