JP2005245307A - ポリフェノール類の分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリフェノール類を選択的に吸着する吸着剤を用いて、植物抽出液からポリフェノール類を効率よく分離する。
【解決手段】茶葉を煮出して得た茶抽出水のような植物抽出液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、弱塩基性陰イオン交換樹脂に茶カテキン類などのポリフェノール類を選択的に吸着させる。ついで、水酸化ナトリウム溶液などを脱離用液として、陰イオン交換樹脂に吸着されたポリフェノール類を脱離させた脱離液を得る。弱塩基性陰イオン交換樹脂は、炭酸ガスの吹込みなどにより、HCO3 −型としたものを用いることが好ましい。また、脱離液には、酸を添加してpH2〜6程度とする中和処理を行なうことが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】茶葉を煮出して得た茶抽出水のような植物抽出液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、弱塩基性陰イオン交換樹脂に茶カテキン類などのポリフェノール類を選択的に吸着させる。ついで、水酸化ナトリウム溶液などを脱離用液として、陰イオン交換樹脂に吸着されたポリフェノール類を脱離させた脱離液を得る。弱塩基性陰イオン交換樹脂は、炭酸ガスの吹込みなどにより、HCO3 −型としたものを用いることが好ましい。また、脱離液には、酸を添加してpH2〜6程度とする中和処理を行なうことが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ポリフェノール類の分離方法に関し、特に、吸着剤を用いてカテキン類を他の物質から分離する方法に関する。
植物に含まれるポリフェノール類の一種であるカテキン類は、酸化防止、抗菌、コレステロール低減、その他の生理作用を有することが知られている。このため、茶葉の熱水抽出液もしくは溶媒抽出液、または果汁などの植物汁から、カテキン類をはじめとする各種ポリフェノール類が濃縮分離され、食品や化粧品などの添加物、または医薬品などの原料として利用されている。
茶葉抽出液などの植物抽出液から、ポリフェノール類を濃縮して分離する方法としては、合成樹脂製の吸着剤を用いて、吸着剤にポリフェノール類を吸着させて濃縮分離する方法が知られている。例えば、特許文献1には、非イオン性のスチレン系の吸着剤と、イオン交換樹脂とを用いて、植物抽出液に含まれるポリフェノール類を濃縮して分離する方法が開示されている。
具体的には、ポリフェノール類を含む植物抽出液を、スチレン系の吸着剤と接触させ、ポリフェノール類を吸着剤に吸着させる。次に、アルカリ性の脱離用液を用いて吸着剤に吸着されたポリフェノール類を脱離させ、ポリフェノール類が濃縮された脱離液を得る。さらに、この脱離液をイオン交換樹脂と接触させることにより、脱離液に含まれるカフェインなどの不純物を除去して、純度が高められたポリフェノール類の濃縮液を得る。
上記方法では、スチレン系の吸着剤に吸着されたポリフェノール類を脱離させる脱離用液として、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性の液体を用いる。このため、有機溶媒を用いて吸着剤に吸着されたポリフェノール類を脱離させる方法に比して、脱離用液の管理取り扱いが容易で、ポリフェノール類を濃縮した脱離液に残存する脱離用液成分を除去することも容易である。また、脱離用液として有機溶媒を使用した場合は、カフェインなどの他物質が脱離液に含まれるため、これらの物質を除去する工程を要するという問題があるが、上記方法によれば、脱離液中のカフェインなどの他物質含有量を抑えることができる。
しかし、非イオン性のスチレン系の吸着剤は、カテキン類などのポリフェノール類の他にカフェインなどの物質も吸着する。このため、吸着剤がこれらの物質を吸着して飽和に達した際、吸着剤に吸着されているポリフェノール類の量は少なくなり、ポリフェノール類を効率的に回収できない。
特開2002−335911号公報
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリフェノール類を吸着剤に選択的に吸着させて、植物抽出液から高純度のポリフェノール類を効率よく分離する方法を提供することにある。本発明はまた、カテキン類の分解を防ぎ、高い回収率でカテキン類などのポリフェノール類を濃縮して分離することができるポリフェノール類の分離方法を提供することを目的とする。
本発明においては、植物抽出液を弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、弱塩基性陰イオン交換樹脂にポリフェノール類を選択的に吸着させた後、脱離用液を用いて、陰イオン交換樹脂に吸着されたポリフェノール類を脱離させることにより、不純物が少なく、ポリフェノール類が分離されたポリフェノール類の濃縮液を得る。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)ポリフェノール類を含有するポリフェノール含有液を弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて、前記ポリフェノール類を前記弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程と、前記ポリフェノール類を吸着した弱塩基性陰イオン交換樹脂に脱離用液を接触させて、前記ポリフェノール類を脱離させた脱離液を得る脱離工程と、を含むポリフェノール類の分離方法。
ここで、本明細書において「ポリフェノール含有液」とは、ポリフェノール類が他の物質とともに含まれる液体を指す。ポリフェノール含有液には、植物体を原料として植物性ポリフェノール類を抽出するために調整された「植物抽出液」、および、飲料製造工場などから排出される排液であって、植物性ポリフェノール類を含有する「植物性ポリフェノール含有排液」が含まれる。植物抽出液には、植物体に水もしくは溶媒などの液体を添加して、植物体中のポリフェノール類を液体側に溶出させた「植物性ポリフェノール類溶出液」と、植物体を搾汁して得られる「植物汁」が含まれる。
なお、「植物性ポリフェノール類」とは、植物体に含有される成分のうち、フェノール水酸基を有する成分群の総称であり、フラボノイド類、フェノールカルボン酸類、カテキン類、およびタンニン類などを含む。これらの植物性ポリフェノール類のうち、例えばカテキン類には、茶葉に含まれる茶カテキン類などがあり、本発明によれば、茶葉を熱水抽出して得られる茶葉抽出水や、茶カテキン類を含有する茶飲料製造排水などから、茶カテキン類を効率よく濃縮して分離できる。
(2)前記吸着工程において、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を、HCO3 −型とする(1)記載のポリフェノール類の分離方法。
本発明で使用する弱塩基性陰イオン交換樹脂は、特に制限なく使用できる。具体的には、スチレン系、アクリル系、メタアクリル系、フェノール系の基体に、官能基としてアミン類を導入した弱塩基性陰イオン交換樹脂などが挙げられる。また、樹脂の基体構造にも特に制限なく、ゲル型、ポーラス型またはハイポーラス型のいずれも使用できる。これらの弱塩基性陰イオン交換樹脂の中で、HCO3−型の弱塩基性陰イオン交換樹脂は、カテキン類などのポリフェノール類に対する選択吸着性が高く、特に好適に使用できる。
(3)前記脱離工程において、前記脱離用液を、アルカリ性溶液とし、前記脱離工程で得られる前記脱離液と酸とを混合する中和工程をさらに含む(1)または(2)記載のポリフェノール類の分離方法。
ポリフェノール類を吸着した弱塩基性陰イオン交換樹脂には、アルカリ性溶液を脱離用液として供給し、前記樹脂に吸着されたポリフェノール類を脱離させ、樹脂の吸着性能を回復させる。脱離用液としては、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液などの水酸化アルカリ溶液、並びに炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ溶液からなる群より選ばれた1種以上を、単独または混合して用いることができる。これらの脱離用液の中で、水酸化ナトリウム溶液は、弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されたポリフェノール類の脱離効果が高く、ポリフェノール類の回収率を上げることができるため、特に好ましい。
脱離用液を接触させ、吸着したポリフェノール類を脱離させた弱塩基性陰イオン交換樹脂は、吸着性能が回復されており、繰り返し使用できる。ポリフェノール類を脱離させて再生させた弱塩基性陰イオン交換樹脂は、ポリフェノール含有液の通液に先立ち、HCO3−型とすることが好ましい。すなわち、例えば脱離用液として水酸化ナトリウム溶液を用いてポリフェノール類を脱離させた弱塩基性陰イオン交換樹脂は、OH−型となっているため、脱離工程を行なった後に炭酸ガスの吹込みなどによりHCO3−型とする。
弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されたポリフェノール類は、アルカリ性溶液を用いることにより、高効率で前記樹脂から脱離させることができる。しかし、ポリフェノール類の中でもカテキン類は、アルカリ性溶液中で分解する傾向があるため、弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されたカテキン類をアルカリ性の脱離用液で脱離させて得られる脱離液は、酸性の液体と混合して中和し、pHが1〜7、特にpH2〜6とすることが好ましい。
なお、本明細書において中和とは、アルカリと酸とを混合することを意味し、混合処理後の液体を中性にすることに限定されない。脱離液と混合する酸は液体に限定されず、気体、または固体であってもよい。中和手段としては、塩酸、リン酸、炭酸、酢酸、およびクエン酸などの酸性の液体を添加する方法や、炭酸ガスの吹込みなどが挙げられる。
弱塩基性陰イオン交換樹脂により、他成分から分離されたポリフェノール類を含有する脱離液は、さらに非イオン交換性の合成吸着剤と接触させ、ポリフェノール類をさらに濃縮した濃縮液としてもよい。脱離液は、脱離工程から排出された状態で非イオン交換性の合成吸着剤と接触させてもよいが、カテキン類の分解を防ぎ、かつ、ポリフェノール類の吸着剤への吸着を促進するため、酸と混合して酸性化したのちに非イオン交換性の合成吸着剤と接触させることが好ましい。
本発明によれば、簡易な操作で効率よく、植物由来のポリフェノール含有液に含まれるポリフェノール類を他の共存物質から分離して濃縮することができる。また、本発明によれば、簡易な操作で、カテキン類の分解を防止して、高い回収率でカテキン類を得ることができる。
以下、本発明の一実施形態として、茶カテキン類を濃縮して分離する場合について、図面を参照して説明する。原液としては、茶カテキン類の他にカフェインやアミノ酸などを含む植物抽出液を用いる。具体的には、茶葉を原料とし、熱水抽出により茶カテキン類を熱水中に溶出させた茶抽出水を原液とする。
図1は、本発明の一実施形態に係る茶カテキン類の分離に使用する茶カテキン類分離装置1(以下、単に「分離装置」とする)の模式図である。図1において、分離装置1は、弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填された陰イオン交換樹脂塔10を備える。
陰イオン交換樹脂塔10は、金属製の樹脂塔本体10aと、この樹脂塔本体10aの内部充填された弱塩基性陰イオン交換樹脂(以下、単に「陰イオン交換樹脂」という)10bとを含んで構成されている。陰イオン交換樹脂塔10には、茶抽出水が供給される原液供給管11と、後述する脱離工程で発生する脱離液を陰イオン交換樹脂塔10から排出する脱離液管12と、陰イオン交換樹脂塔10でアニオン交換処理された茶抽出水を吸着処理水として陰イオン交換樹脂塔10から排出する処理水管13とが接続されている。また、処理水管13には、接続点cにおいて、脱離用液を陰イオン交換樹脂塔10に供給する脱離用液管14が接続されている。
本発明においては、まず、茶カテキン類を含む茶抽出水を、原液供給管11を介して陰イオン交換樹脂塔10内に供給し、陰イオン交換樹脂10bと接触させて、茶抽出水中の茶カテキン類を陰イオン交換樹脂10bに吸着させる吸着工程を実施する。吸着工程における原液(茶抽出水)の通液速度は、SV=0.5〜20hr−1、好ましくはSV=1〜10hr−1とする。茶抽出水の通液方向は上向流、下向流のいずれでもよいが、本実施形態では原液は、陰イオン交換樹脂塔10下部に接続された原液供給管11から供給され、上向流で通液され、吸着処理水として処理水管13から排出する。
吸着工程では、陰イオン交換樹脂10bが破過するまで茶抽出水を陰イオン交換樹脂塔10に通液し、陰イオン交換樹脂10bの破過点近くになるまで茶抽出水を供給したら、茶抽出水の供給を止めて吸着工程を終了する。なお、陰イオン交換樹脂10bの破過点は、茶抽出水の茶カテキン類の濃度などに基づき、あらかじめ計算または実験を行なうことにより、求めることができる。
吸着工程の終了後、陰イオン交換樹脂塔10には、水酸化ナトリウム水溶液などの脱離用液を供給し、陰イオン交換樹脂10bに吸着保持された茶カテキン類を脱離させるとともに陰イオン交換樹脂10bを再生させる脱離工程を実施する。脱離工程では、脱離用液に含まれるOH−イオンが茶カテキン類と交換され、陰イオン交換樹脂10bから脱離された茶カテキン類が含まれる脱離液が、脱離液管12を通じて陰イオン交換樹脂塔10から排出される。
脱離工程で使用する脱離用液としては、アルカリ性溶液を用いることが好ましく、特に水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。ポリフェノール類は、かなり強固に陰イオン交換樹脂10bに吸着されることから、使用する水酸化ナトリウム溶液の濃度は比較的高濃度とすることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム溶液の濃度は、1〜8重量%、好ましくは3〜6重量%とする。
また、後述する茶カテキン類の変性を防ぐため、水酸化ナトリウム溶液は比較的高速度で通液することが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム溶液の通液速度はSV=5〜50hr−1、特にSV=10〜40hr−1とすることが好ましい。
脱離用液の通液方向に制限はないが、脱離を効果的に行なうため、茶抽出水の通液方向と対向する方向とすることが好ましい。本実施形態では、茶抽出水は上向流で通液していることから、脱離用液は陰イオン交換樹脂塔10の上部から下部へ流れる下向流で通液する。陰イオン交換樹脂10bは、比重が軽く、一方、水酸化ナトリウム溶液は密度が高いため、脱離用液の通液中に陰イオン交換樹脂10bが浮上することを防ぐためには、水酸化ナトリウム溶液は下向流で通液することが好ましい。
なお、脱離用液にアルカリ性の液体を用いた場合、脱離された茶カテキン類、特にエピガロカテキンガレートがアルカリの影響により変性し易くなる。このため、前述した通り、アルカリ性の脱離用液を比較的高流速で通液し、また、陰イオン交換樹脂塔10から排出される脱離液は、排出直後(例えば1分以内)に酸と混合し、pHが1〜7、特にpH2〜6となるように、速やかに中和処理することが好ましい。脱離液の中和処理の方法としては、脱離液管12の途中に酸供給管(図示せず)を接続し、塩酸などの酸性液体を添加する方法や、炭酸ガスを吹込む方法などが挙げられる。
脱離工程終了後、陰イオン交換樹脂塔10には再び茶抽出水を供給し、前記吸着工程に始まる処理を繰り返す。水酸化アルカリ水溶液により茶カテキン類が脱離され、再生された陰イオン交換樹脂10bは、OH−型となっている。このため、脱離工程後、吸着工程を再開する前に、陰イオン交換樹脂10bをHCO3 −型とするコンディショニングを行なうことが好ましい。コンディショニングは、炭酸ガスの吹込みにより行なうことができる。炭酸ガスの吹込みによるコンディショニングは、陰イオン交換樹脂塔10内の液相のpHが4〜7になるまで行なう。
なお、脱離工程で発生する脱離液は、濃縮工程へ供給して茶カテキン類をさらに濃縮することもできる。茶カテキン類の濃縮工程は、アクリル系やスチレン系の非イオン性の合成吸着剤などを充填した吸着塔に脱離液を供給し、脱離液を合成吸着剤と接触させることにより行うことができる。吸着塔へ供給する脱離液の通液速度は、SV=0.5〜20hr−1程度が好ましい。通液方向は上向流、下向流のいずれでもよい。
脱離液を一定量、吸着塔に供給したのち、脱離液の供給を停止し、吸着塔には、エタノールその他の有機溶媒など抽出溶媒を供給し、合成吸着剤に吸着保持された茶カテキン類を脱離させる回収工程を行なう。抽出溶媒は、SV=0.5〜20hr−1程度で通液し、通液方向は特に制限されないが、脱離液の通液方向と対向する方向とすることが好ましい。
なお、上述した吸着塔を用いる濃縮工程は必ずしも必要なく、図示していない。また、上記の分離装置1は、単一の陰イオン交換樹脂塔10を備えた装置として構成されているが、分離装置は、2塔以上の陰イオン交換樹脂塔を備えたメリーゴーランド方式のものとしてもよい。メリーゴーランド方式の分離装置を用いれば、吸着工程と脱離工程とを別々の陰イオン交換塔で同時に行うことができるため、連続処理が可能となる。
[実施例1]
煎茶を、65℃の温水に30分間浸漬して煮出したのち、孔径100μmの金属濾過膜で濾過して茶カテキン類944mg/Lを含み、カフェイン濃度が150mg/Lの茶抽出水800mlを得た。なお、本実施例を含む以下の例では、茶カテキン類は、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4物質の合計濃度として示す。本実施例において、各物質の濃度は、それぞれ、EC=69mg/L、EGC=342mg/L、ECg=94mg/L、EGCg=439mg/Lであった。
煎茶を、65℃の温水に30分間浸漬して煮出したのち、孔径100μmの金属濾過膜で濾過して茶カテキン類944mg/Lを含み、カフェイン濃度が150mg/Lの茶抽出水800mlを得た。なお、本実施例を含む以下の例では、茶カテキン類は、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4物質の合計濃度として示す。本実施例において、各物質の濃度は、それぞれ、EC=69mg/L、EGC=342mg/L、ECg=94mg/L、EGCg=439mg/Lであった。
この茶抽出水を、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹(バイエル社製、商品名「レバチットMP62)10mlを充填したカラムに、通液速度をSV=10hr−1で上向流通液した。カラムから排出される吸着処理水の茶カテキン類濃度は215mg/L、カフェイン濃度は145mg/Lであった。
茶抽出水の通液後、カラムに脱離用液として濃度1モルの水酸化ナトリウム水溶液30mlをSV=20hr−1として下向流で通液し、樹脂に吸着された茶カテキン類を脱離させた脱離液を得るとともに、樹脂を再生した。この脱離液に酸を添加混合することなく、室温で2時間放置した後、塩酸でpHを2としてから茶カテキン類の濃度を測定し、樹脂への吸着量に対する回収率を求めたところ、26%であった。
脱離処理後の樹脂は新品と同様の色で、脱離処理により再生した樹脂に再度、上記と同じ条件で茶抽出水を通液したところ、吸着処理水の茶カテキン類濃度は220mg/Lであり、吸着性能の低下はほとんどなかった。なお、茶抽出水の通液に先立ち、陰イオン交換樹脂はあらかじめ水酸化ナトリウム水溶液でコンディショニングし、水洗し、炭酸ガスを吹込んでHCO3 −型として用いた。
実施例1により、弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いることにより、茶カテキン類を選択的に樹脂に吸着させ、カフェインなどの他の共存物質から分離できることが示された。一方、アルカリ性の脱離液を中和せずに放置した場合、脱離液中に含まれる茶カテキン類は少なくなることがわかった。
[実施例2]
実施例2として、実施例1でカラムから排出される脱離液を即座に1Nの濃度の塩酸を入れた容器に入れ、脱離液のpHを2とする中和処理を行なった。この酸性の脱離液を室温で2時間放置したのち、脱離液の茶カテキン類濃度を測定し、樹脂への吸着量に対する回収率を求めたところ、回収率は72%であった。
実施例2として、実施例1でカラムから排出される脱離液を即座に1Nの濃度の塩酸を入れた容器に入れ、脱離液のpHを2とする中和処理を行なった。この酸性の脱離液を室温で2時間放置したのち、脱離液の茶カテキン類濃度を測定し、樹脂への吸着量に対する回収率を求めたところ、回収率は72%であった。
この実施例2により、脱離液を酸と混合する中和処理することにより、回収率を改善できることが示された。
[比較例1]
比較例1として、陰イオン交換樹脂の代わりに、スチレン系の非イオン交換性の合成吸着剤を用いた他は、実施例1と同じ操作を行なった。合成吸着剤が充填されたカラムから排出される吸着処理水の茶カテキン類濃度は360mg/L、カフェイン濃度は100mg/Lであった。また、脱離液の茶カテキン類濃度を測定し、吸着剤への吸着量に対する茶カテキン類の回収率を求めたところ、回収率は80%であった。
比較例1として、陰イオン交換樹脂の代わりに、スチレン系の非イオン交換性の合成吸着剤を用いた他は、実施例1と同じ操作を行なった。合成吸着剤が充填されたカラムから排出される吸着処理水の茶カテキン類濃度は360mg/L、カフェイン濃度は100mg/Lであった。また、脱離液の茶カテキン類濃度を測定し、吸着剤への吸着量に対する茶カテキン類の回収率を求めたところ、回収率は80%であった。
比較例1では、カフェインなどが吸着剤に吸着されたため、茶カテキン類の吸着量が減少し、実施例1と比較して、吸着剤に吸着されずに吸着処理水に含まれてカラムから排出される茶カテキン類が多くなった。
また、脱離処理により吸着剤を再生した吸着剤充填カラムに再度、上記と同じ条件で茶抽出水を通液したところ、吸着処理水の茶カテキン類濃度は380mg/Lであり、吸着性能の低下が認められた。
[比較例2]
比較例2として、脱離用液を水酸化ナトリウムの代わりに濃度90重量%のエタノールとした他は比較例1と同じ操作を行なった。比較例2については、吸着処理水の茶カテキン類濃度は367mg/L、カフェイン濃度は100mg/L、脱離液の茶カテキン類濃度から求めた吸着剤への吸着量に対する茶カテキン類の回収率は90%であった。また、脱離処理後の吸着剤の吸着性能の低下も生じていなかったが、脱離液には吸着剤に吸着されたカフェインとほぼ同量のカフェインが含まれていた。
比較例2として、脱離用液を水酸化ナトリウムの代わりに濃度90重量%のエタノールとした他は比較例1と同じ操作を行なった。比較例2については、吸着処理水の茶カテキン類濃度は367mg/L、カフェイン濃度は100mg/L、脱離液の茶カテキン類濃度から求めた吸着剤への吸着量に対する茶カテキン類の回収率は90%であった。また、脱離処理後の吸着剤の吸着性能の低下も生じていなかったが、脱離液には吸着剤に吸着されたカフェインとほぼ同量のカフェインが含まれていた。
本発明は、種々の液体から茶カテキン類をはじめとするポリフェノール類を濃縮して分離することができる。分離されたポリフェノール類は、食品添加物として利用することができる。また、ポリフェノール類が分離された後の液体は、有機物濃度が低減されていることから、廃水として処理する場合、そのまま下水放流もしくは簡易な処理で環境中に放流することもできる。
1 分離装置
10 陰イオン交換樹脂塔
10b 弱塩基性陰イオン交換樹脂
10 陰イオン交換樹脂塔
10b 弱塩基性陰イオン交換樹脂
Claims (3)
- ポリフェノール類を含有するポリフェノール含有液を弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて、前記ポリフェノール類を前記弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させる吸着工程と、
前記ポリフェノール類を吸着した弱塩基性陰イオン交換樹脂に脱離用液を接触させて、前記ポリフェノール類を脱離させた脱離液を得る脱離工程と、を含むポリフェノール類の分離方法。 - 前記吸着工程において、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を、HCO3 −型とする請求項1記載のポリフェノール類の分離方法。
- 前記脱離工程において、前記脱離用液を、アルカリ性溶液とし、
前記脱離工程で得られる前記脱離液と酸とを混合する中和工程をさらに含む請求項1または2記載のポリフェノール類の分離方法。
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