JP2005238613A - インクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法 - Google Patents

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Yuji Kawasaki
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Abstract

【課題】 カチオン性化合物とアニオン性の蛍光増白染料を用いながら、塗料組成物の混合安定性に優れ、かつ、塗料組成物中の蛍光増白染料の効果を低下させることのない塗料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも、顔料と、結着剤と、カチオン性化合物と、蛍光増白染料とを混合してなるインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法であって、少なくとも該蛍光増白染料とを含みかつ該カチオン性化合物を含まない水性溶液を調整した後、該水性溶液にカチオン性化合物を混合する工程を含む。蛍光増白染料が、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体であることが好ましく、また、カチオン性化合物は、アンモニアと、アミン類と、エピハロヒドリン類とを反応させてなる重縮合物であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録用紙用塗料に好適で混合安定性の良好な塗料組成物の製造方法に関するものである。
インクジェット記録方式は、多色化が容易なことや印字騒音が少ないことなどから、近年急速に普及してきた。インクジェットプリンターは、発色性に優れる染料を溶媒に溶解した、いわゆる染料系インクを使用したプリンターが主流をなしている。一般的に染料系インクは、水溶性のアニオン性の色素を用いている。このため、インクジェット記録用紙用塗料組成物にはカチオン性のインク定着剤や、耐水化剤等が用いられることが多い。また、インクの優れた発色性を実現するため、記録用紙には高い白色度が要求される。このためインクジェット記録用紙は、蛍光増白染料を用いて染色を行い製造されている。この際用いられる蛍光増白染料は、一般的にアニオン性であるため、前述した定着剤、耐水化剤等のカチオン性化合物との結合による不溶化、結晶の析出、蛍光染料の効果の低下が大きな問題であった。そのため蛍光増白染料を配合する際には、ジアリルアミン系高分子を添加する方法(特許文献1)や、分散液中で特定の構造をとる蛍光増白染料を添加する方法(特許文献2)がある。
特開2001−39013号公報 特開2003−266923号公報
しかしながら特許文献1及び2の発明では、特殊な薬品の添加によってコスト高となる欠点があった。
従って本発明の目的は、カチオン性化合物とアニオン性の蛍光増白染料を用いながら、塗料組成物の混合安定性に優れ、かつ、塗料組成物中の蛍光増白染料の効果を低下させることのない塗料組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の上記の目的は、少なくとも、顔料と、結着剤と、カチオン性化合物と、蛍光増白染料とを混合してなるインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法であって、少なくとも該蛍光増白染料とを含みかつ該カチオン性化合物を含まない水性溶液を調整した後、該水性溶液にカチオン性化合物を混合する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法によって達成された。
また、本発明において、該蛍光増白染料が、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体であることが好ましく、また、カチオン性化合物は、アンモニアと、アミン類と、エピハロヒドリン類とを反応させてなる重縮合物であることが好ましい。
本発明によりアニオン性の蛍光増白染料を用いた、安価でかつ混合安定性が良好なインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造が容易に可能となり、また、本発明で得られたインクジェット記録用紙用塗料組成物を塗布したインクジェット記録用紙は、高い耐水性と白色度を有すことができる。
本発明により製造されるインクジェット記録用紙用塗料組成物は、インク受理層を形成するために用いられるものであり、例えばシート状の基材に塗布乾燥することにより、基材上にインク受理層を形成する。
本発明においては、以下に詳細に述べる顔料、結着剤、カチオン性化合物、蛍光増白染料を、水又は水と少量の有機溶剤からなる媒体中に混合分散し、インクジェット記録用紙用塗料組成物を製造するが、混合順序が重要である。
蛍光増白染料は、カチオン性化合物を含まない顔料分散液、或いはカチオン性化合物を含まない顔料・結着剤混合分散液、或いはカチオン性化合物を含まない結着剤溶液に、添加することが好ましい。蛍光増白染料と他インクジェット記録用紙用塗料組成物を構成する材料とを混合した後にカチオン性化合物を混合することにより、得られるインクジェット記録用紙用塗料組成物の経時による増粘や、蛍光増白染料の効果の低下を防止することができる。特に、顔料を水又は水と少量の有機溶剤からなる媒体中に混合分散後、結着剤、蛍光増白染料、カチオン性化合物の順に混合することが好ましい。これらの材料を分散する装置としては、スターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式、超音波方式等の公知の分散装置を用いることができる。
本発明の製造方法においては、インクジェット記録用塗料組成物の増粘を防ぐことが可能となる。これは、塗料組成物中の蛍光増白染料を均一に分散することが可能となるためと考えられる。インクジェット記録用紙用塗料組成物を構成する材料の混合順序が異なる場合、24時間静置後のインクジェット記録用紙用塗料組成物が著しく増粘する。特に、顔料分散液とカチオン性化合物を直接混合すると凝集を起こし、混合液は著しく増粘する。インクジェット記録用紙用塗料組成物の粘度が大きい場合、塗工不良を起こしやすく問題となる。一般的に固形分濃度を低くすることで粘度を下げることができるが、インクジェット記録用紙製造時の乾燥負荷が増大する等の問題を引き起こすこととなる。
このとき使用される基材シートとしては、紙、布、不職布、紙の上に樹脂フィルムをラミネートしたシート、フィルムシート等の公知のものを使用することができる。好ましくは、LBKP、NBKPなどの化学パルプやGP、TMPなどの機械パルプ、及び古紙パルプなどの木材パルプを主体とし、合成繊維、無機質繊維を必要に応じて配合し、填料、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤、染料、有機顔料、蛍光増白染料等を適宜添加して、長網抄紙機あるいはツインワイヤー抄紙機で抄紙した紙基材を用いる。
インクジェット記録用紙用塗料組成物に含有される顔料として、炭酸カルシウム、合成シリカ、カオリン、焼成カオリン、タルク、ゼオライト、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸カルシウム、プラスチックピグメント等公知の顔料を適宜選択して使用することができる。又、これらを併用することも可能である。
上記塗料組成物中に顔料を均一に分散することが好ましく、このため、分散剤や界面活性剤を使用することができる。特に、顔料の分散性が向上するという点において、顔料を主成分とした顔料分散液を作成し、これにインクジェット記録用紙用塗料組成物を構成する他の材料を混合すると好ましい。顔料分散液には必要に応じて消泡剤、分散助剤等の助剤を入れることが可能である。
インクジェット記録用紙用塗料組成物に含有される結着剤としては塗工乾燥後のインク受理層中では、顔料のバインダーとして機能するものであればいずれの材料を使用することができるが、このうち、水系で水酸基を多く有するノニオン性の樹脂が好ましい。ここで、「水系」とは、水又は水と少量の有機溶剤からなる媒体中で樹脂が溶解又は分散し、安定化することを意味する。インク受理層に用いる結着剤の配合割合は、好ましくは顔料100重量部に対し5〜100重量部,より好ましくは10〜60重量部である。
上記結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物、酸化デンプン、エーテル化デンプン等の変成澱粉を含む澱粉類、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、カルボキシメチルセルロース等の水溶性樹脂、また、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン等の水系の合成樹脂分散体が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して使用することができる。
本発明では、カチオン性化合物をインクジェット記録用紙用塗料組成物中に含有する。このとき用いられるカチオン性化合物は、カチオン性の水溶性高分子であり、例えば、ポリエチレンイミン4級アンモニウム塩誘導体、ポリアミンポリアミドエピハロヒドリン縮重合体、アンモニアとモノアミンやポリアミン等のアミン類とエピハロヒドリン類とを反応させてなる縮重合物(ジアルキルアミン・アンモニア・エピクロロヒドリン縮重合体等)、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド樹脂、ジエチレントリアミン・ジシアンジアミド・アンモニウムクロライド重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物等が例示できるが、特にその高いインクジェットインク定着性能を示し、かつ、蛍光増白染料の効果を低下させないという点で、アンモニアとアミン類とエピハロヒドリン類とを反応させてなる縮重合物が好ましい。
上記アミン類としては、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ポリアルキレンポリアミン、及びアルカノールアミンモノアミン等を挙げることができ、具体的には、第2級アミンとしてジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルラウリルアミン、及びジベンジルアミン等が、第3級アミンとして具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、及びトリベンジルアミン等を挙げることができる。これらの内では、第2級アミンであるジメチルアミン及びジエチルアミンが特に好ましい。
上記エピハロヒドリン類としてはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、メチルエピクロルヒドリン等の1種類以上を使用でき、これらエピハロヒドリン類の中でも、エピクロロヒドリンが最も好ましい。
蛍光増白染料としては、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、イミダゾロン誘導体等が例示できるが、特に高い増白効果を有するジアミノジスチルベンジスルホン酸誘導体が好ましい。
更に、上記したインクジェット記録用紙用塗料組成物には必要に応じて、蛍光増白剤を混合後、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色顔料、着色染料、サイズ剤等の助剤を添加することができる。
本発明により製造されるインクジェット記録用紙用塗料組成物を、基材シート上に塗布乾燥することにより、インクジェット記録用紙を得ることができる。インクジェット記録用紙用塗料組成物の塗布量は、1〜10g/m(乾燥質量)が好ましく、1g/m未満では十分な印字濃度と画質が得られない。一方、10g/mを超えると、普通紙の風合いからかけ離れたものとなる。
基材シートへのインクジェット記録用紙用塗料組成物の塗布は、2ロールサイズプレス装置やフィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、キスコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター又はコンマコーター等の従来公知のオンマシン、若しくはオフマシン塗工装置の中から適宜選択して行うことができる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、特に明示のない限り「乾燥質量部」及び「乾燥質量%」を表す。
<実施例1>
広葉樹漂白クラフトパルプ100重量部に、カオリン12重量部、内添用サイズ剤0.2重量部、硫酸アルミニウム0.6重量部に歩留まり向上剤を100ppm加えたスラリーを調製し、オントップツインワイヤータイプの抄紙機により坪量72g/mの基紙を作製した。
次いで、平均粒子径が2μmのシリカ50部、平均粒子径が0.3μmの軽質炭酸カルシウム50部からなる濃度30%の顔料分散液を調整した。次に、完全けん化型PVA25部、ヒドロキシエチル化澱粉25部を加えて、濃度30%の混合液を調整した。ここで、ジアミノジスチルベン酸誘導体のアニオン性蛍光増白染料1部を顔料分散液に加えた。
一方、カチオン性化合物として、ポリアミドエピクロロヒドリン20部を、先に調整した混合液に添加し、pH7.6、濃度35%のインクジェット記録用紙用塗料組成物を得た。
得られたインクジェット記録用紙用塗料組成物には、凝集物等全く認められなかった。また、調整中及び、静置24時間後に著しい増粘を示さなかった。塗料調整中及び、塗料静置24時間後に測定した粘度を表1に示す。次いで、このインクジェット記録用紙用塗料組成物を、基紙に、バー塗工にて4.5g/mとなるように塗布し、インクジェット記録用紙を得た。
このインクジェット記録用紙に、インクジェットプリンター(商品名:PM−950C、セイコーエプソン製)にてフルカラー印字を行った結果、良好な画質と高い印字濃度が得られ、また、水滴を印字部に滴下してその耐水性を評価したところ、画像の滲みが無く十分な耐水性が確認された。この蛍光増白されたインクジェット記録用紙について測定したJIS P8148に記載の測定方法に準じて測定したISO白色度、及び耐水性を表2に示す。
<実施例2>
実施例1で使用したアニオン性蛍光増白染料を2部添加した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙用塗料組成物及びインクジェット記録用紙を得た。インクジェット記録用使用塗料組成物は若干増粘したが、実用上問題はなかった。得られたインクジェット記録用紙について、実施例1と同様、充分な耐水性と白色度が確認された。
<実施例3>
実施例1で使用したアニオン性蛍光増白染料を10部添加した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙用塗料組成物及びインクジェット記録用紙を得た。実施例1と同様、充分な耐水性と白色度が確認された。
<比較例1>
広葉樹漂白クラフトパルプ100重量部に、カオリン12重量部、内添用サイズ剤0.2重量部、硫酸アルミニウム0.6重量部に歩留まり向上剤を100ppm加えたスラリーを調製し、オントップツインワイヤータイプの抄紙機により坪量72g/mの基紙を作製した。
次いで、平均粒子径が2μmのシリカ50部、平均粒子径が0.3μmの軽質炭酸カルシウム50部からなる濃度30%の顔料分散液を調整し、完全けん化型PVA25部、ヒドロキシエチル化澱粉25部を加えて、濃度30%の混合液を調整した。さらに、カチオン性化合物として、ポリアミドエピクロロヒドリン20部を先に調整した混合液に添加した。
ここで、実施例1で使用したジアミノジスチルベン酸誘導体のアニオン性蛍光増白染料1部を顔料/バインダー/カチオン性化合物混合液に添加し、濃度35%のインクジェット記録用紙用塗料組成物を得た。しかしながら、得られた塗料組成物は実施例よりも大きく増粘し、また、多くの凝集物が認められ、バー塗工で均一なインクジェット記録用紙を得ることができなかった。
<比較例2>
平均粒子径が2μmのシリカ50部、平均粒子径が0.3μmの軽質炭酸カルシウム50部からなる濃度30%の顔料分散液を調整した。ついで、カチオン性化合物として、ポリアミドエピクロロヒドリン20部を顔料分散液に混合した。混合液は著しく増粘し、均一なインクジェット塗料組成物を得ることができなかった。
<比較例3>
アニオン性蛍光増白染料を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙用塗料組成物及びインクジェット記録用紙を得た。
<比較例4>
カチオン性化合物を添加しなかった以外は、実施例3と同様にしてインクジェット記録用紙用塗料組成物及びインクジェット記録用紙を得た。しかしながら、得られたインクジェット記録用紙について実施例1と同様に耐水性評価を行ったが、水滴を滴下した画像は滲んで判別不能となり耐水性はなかった。
Figure 2005238613
Figure 2005238613
表1、表2によれば、本発明の製造方法にて作成した実施例1〜3のインクジェット記録用紙用塗料組成物は増粘することはなく、この塗料組成物を用いて作成したインクジェット記録用紙の白色度はいずれも高いものであった。一方、カチオン性化合物を混合した後に蛍光増白染料を混合した比較例1、及び蛍光増白染料を混合する前に顔料分散剤とカチオン性化合物を混合した比較例2はいずれも増粘し、インクジェット記録媒体を得ることができなかった。さらに、蛍光増白染料を配合していない比較例3は増粘しなかったものの白色度の値が低く、カチオン性化合物を配合しない比較例4においては増粘しなかったものの耐水性が非常に劣った。

Claims (3)

  1. 少なくとも、顔料と、結着剤と、カチオン性化合物と、蛍光増白染料とを混合してなるインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法であって、少なくとも該蛍光増白染料とを含みかつ該カチオン性化合物を含まない水性溶液を調整した後、該水性溶液にカチオン性化合物を混合する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法。
  2. 該蛍光増白染料が、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法。
  3. 該カチオン性化合物がアンモニアと、アミン類と、エピハロヒドリン類とを反応させてなる重縮合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙用塗料組成物の製造方法。
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