JP2005233427A - 流体軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 構造改良により性能を向上させた、軸を回転可能に支承する流体軸受を提供する。
【解決手段】 回転体を支持する円筒開口と、該円筒開口の内周面の長手方向に設けたスロットとを備え、該円筒開口と前記回転体の間に円環状隙間が形成される固定保持部材と;前記円環状隙間内に配置される第1フォイル部材と;前記円環状隙間内に配置される第2フォイル部材と;前記円環状隙間内に、前記第1及び第2のフォイル部材と同軸状に配置された弾性支持体と、を備えた流体軸受において、前記第1及び第2のフォイル部材の一端部を互いに接合して、前記円筒開口の径方向に延びる回転防止フィンを形成し、該回転防止フィンを前記固定保持部材に形成された前記スロットに装着したことを特徴とする流体軸受。
【選択図】 図2

Description

本発明は、流体軸受に関し、より具体的には、流体軸受内に流体膜を形成するための一以上のフォイル部材と、このフォイル部材の撓み及び軸又はスラストランナ等の回転体の偏位を吸収する弾性支持体とを備えた流体軸受に関する。
流体軸受は、一般に、軸又はスラストランナ等の回転体と、この回転体と同軸状にかつ径方向外側に配置されるフォイル部材との間に加圧された流体膜を形成するという原理に基づいて動作する。そして、通常「楔膜」と称されるこの流体膜により、回転体は、潤滑剤を用いることなく、流体軸受により支持される。流体軸受けは、カートリッジ、保持器又はベース等の固定部材を有し、この固定部材に上記回転体が挿通され、上記フォイル部材が、該固定部材の内周面と回転体との間に同軸状に配置され、さらに、この固定部材の内周面と上記フォイル部材との間にバネ等の弾性支持手段が配置されることが多い。このような弾性支持体により、流体膜から受ける圧力によるフォイル部材の撓み、軸受にかかる負荷、又は自励等の負荷による回転体の偏位を調整することができる。
現在一般に普及している流体軸受では、流体膜を形成するために一枚のフォイル部材又は複数枚のフォイル部材が用いられている。そして、複数枚のフォイル部材を備えた構造(複層フォイル構造)には、クーロン減衰効果を高めるという利点がある。このような複層フォイル構造により得られるエネルギー分散効果は流体軸受に特に適している。また、複層フォイル構造には、回転体が接続されるロータの偏位に対する高い許容度、複数フォイルの膨張度差、製造時の取付け誤差、及びフォイル部材の不良に対する高い許容度、耐汚染性、高速回転時並びに回転始動及び停止時における良好な耐摩耗特性などの利点がある。
米国特許第4,415,280号及び第4,415,281号明細書に開示されているフォイル部材を従来例として図1に示す。流体ジャーナル軸受10は、固定保持部材12を備え、高速ロータに接続された回転軸14がこの固定保持部材12に支持されている。そして、固定保持部材12の内周面及び回転軸14の外周面の間に円環状隙間16が形成され、さらに、固定保持部材12の内周面には長手方向のキー溝18が形成されている。このキー溝18には、キー22が長手方向に摺動可能な状態で収納されている。
円環状隙間16内には、略円筒形の第1フォイル部材20が配置され、この第1フォイル部材20の一端部(装着端)が、キー溝18内に収納されたキー22の一側面に固定されている。円環状隙間16内にはさらに、略円筒形の第2フォイル部材24が、第1フォイル部材20の径方向内側に同心状に配置されている。この第2フォイル部材24も、その一端部(装着端)がキー22の一側面に固定されている。図1に示す構成は、上述の複層フォイル構造であり、例えば、第1フォイル部材20は、固定保持部材12の内周面と第2フォイル部材24に位置する中間フォイル部材と、また、第2フォイル部材24は、回転軸14に対向するトップフォイル部材と定義することができる。回転軸14の回転始動及び停止時には、十分な流体膜が形成されるまでの間、トップフォイル部材(第2フォイル部材24)が回転軸14に摺接することが多いため、トップフォイル部材の回転軸14と対向する面(半径方向内面)には一般に低摩擦コーティングが施されている。
円環状隙間16内において、固定保持部材12の内周面と第1フォイル部材20との間には、波板状のバネ26(弾性支持体)が配置されている。このバネ26も略円筒形状を有し、その一端部(装着端)がキー22の一側面に固定されている。そして、図1に示すように、第1フォイル部材20、第2フォイル部材24及びバネ26は、円周方向に関して、(装着端を基準として)配置の方向を交互に異ならせている。一方、第1フォイル部材20、第2フォイル部材24及びバネ26それぞれのキー22に固定されていない他端部は、図1に示すように、自由状態となっている。
フォイル部材(20、24)及びバネ26はそれぞれ別部材、すなわち、単一の板(箔)材からコイル状に形成されたものではないため、軸方向の負荷によりこれらの部材が軸方向に沿ってずれて回転軸14に摺接することによる損害を最小限に抑えることができる。さらに、このようにフォイル部材を複数設けることにより、厚さ及び弾性等様々な特性を持ったフォイル部材を組み合わせて用いることができ、流体軸受に必要な特性を正確に得ることができる。
図1に示す構造を有する流体軸受は、近年、航空機の空冷(冷房)及び換気のための空気循環装置に用いるターボコンプレッサに使用されている。複層フォイル構造には上述のような利点はあるが、生産性、減衰特性及びコンプライアンス(整合性)、組立分解及びフォイル部材交換の容易度、フォイル部材のずれ対策、様々な厚さのフォイル部材を供給することの利便性等についてさらなる改良が求められている。
また、図1に示すキー構造には解決すべき問題も存在する。特に、流体軸受が支障なく動作するためには、フォイル部材の製造に高い完成度が求められる。すなわち、キー22は完全に直線状でなければならず、かつフォイル部材はキー22に対し完全に直角に接着されなければならない。少しでも隙間、曲がり、又はずれがあると、軸受の負荷容量に影響し、また軸受の早期故障につながる恐れもある。図示の如く、少なくとも2つのフォイル部材がキーに接着されているため、位置合わせも非常に重要となる。そして、キー22、フォイル部材、溶接部分に少しでも不良があれば、流体軸受の動作に影響が及ぼすことになる。断面積の小さなキーに薄いフォイル部材を接着する作業はしばしば複雑かつ困難であり、このために製造コストの上昇を招いている。
上記流体軸受が支障なく動作するためには、さらに、キーが固定保持部材のキー溝内で完全な直線状態を保つ必要がある。しかし、キーは、製造中及び流体軸受の作動中に曲げを起こしやすく、また、作動中にフォイル部材が受ける力によってキー溝内で傾いたり捩れることもある。キーの曲げ及び捩れは軸受の負荷容量及び整合性の低減の要因となり、究極的には故障原因ともなる。
流体軸受の性能は、その構成部材間の整合性に大きく影響される。図1に示すキー構造では、軸受のキー方向の整合性が低いことが判明している。実際、キーには、上述の曲げ、傾き又は捩れ等が発生するいわゆる「ハードスポット」が存在する。すなわち、整合性に関して、このハードスポットが、流体軸受及び軸回転時に形成される流体膜の本来発揮すべき性能に悪影響を及ぼすので、流体軸受の負荷容量が低くなり、また、衝撃負荷耐性及び減衰力もともに低下する。
米国特許第4,415,280号明細書 米国特許第4,415,281号明細書
本発明は以下に図示説明する通り、流体軸受におけるこれらの欠点を低減あるいは解消することを目的とする。
本発明の流体軸受は、回転体を支持する円筒開口と、該円筒開口の内周面の長手方向に設けたスロットとを備え、該円筒開口と前記回転体の間に円環状隙間が形成される固定保持部材と;前記円環状隙間内に配置される第1フォイル部材と;前記円環状隙間内に配置される第2フォイル部材と;前記円環状隙間内に、前記第1及び第2のフォイル部材と同軸状に配置された弾性支持体と、を備えた流体軸受において、前記第1及び第2のフォイル部材の一端部を互いに接合して、前記円筒開口の径方向に延びる回転防止フィンを形成し、該回転防止フィンを前記固定保持部材に形成された前記スロットに装着したことを特徴とする。
前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材が、円周方向に関して、前記スロットから、互いに反対方向に配置されることが好ましい。
前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材の前記一端部を溶接して前記回転防止フィンを形成してもよい。
前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材は一体に構成され、この一体に構成された第1及び第2フォイル部材の所定部分が前記スロットに装着されると好ましい。
前記円環状隙間内に配置される前記弾性支持体は、前記円筒開口の径方向に突出するフランジ部を有すると好ましい。
前記弾性支持体の前記フランジ部が前記スロットに装着されることにより前記弾性支持体の回転を防止することができる。
前記弾性支持体の前記フランジ部が前記第1及び第2フォイル部材により形成される回転防止フィン(130)に接合されていると好ましい。
前記弾性支持体の前記フランジ部は前記回転防止フィンに溶接されると好ましい。
前記第1フォイル部材及び前記第2フォイル部材は、前記円環状隙間内において、前記スロットから、円周方向に関して、互いに反対方向に配置し、それぞれの自由端を重なり合わせると好ましい。
前記第1フォイル部材が半径方向内面に低摩擦コーティング層を設けると好ましい。
前記弾性支持体が、波形状を有するフォイル部材であることが好ましい。
前記円環状隙間内において、同軸状に隣接する前記第1フォイル部材、前記第2フォイル部材及び前記弾性支持体は、円周方向に関して、互いに異なる方向に配置され、前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材とが摺接すること、及び、前記第1及び第2フォイル部材のうち少なくとも一つと前記弾性支持体とが摺接すること、によりクーロン減衰効果が向上させると好ましい。
本発明の流体軸受によれば、第1及び第2のフォイル部材の一端部を互いに接合して、固定保持部材の円筒開口の径方向に延びる回転防止フィンを形成し、この回転防止フィンを、従来のキー構造を用いることなく、前記固定保持部材に形成された前記スロットに装着するので、第1及び第2のフォイル部材の回転を簡単な構造で防止でき、流体軸受の負荷容量及び衝撃耐性容量を高く維持することができるとともに、部材の交換を容易に行うことができる。
図2及び図3に示すように、本発明の流体軸受110は、カートリッジ112(固定保持部材)を有し、その内周面に形成された円筒開口に軸114が回転可能に配置されている。軸114は、空気循環装置用高速ターボコンプレッサに用いる高速電動モータ又はロータなどの高速ロータに接続される。カートリッジ112と軸114との間には円環状隙間116が形成されている。さらに、カートリッジ112の内周面には、円環状隙間116に向けて開口し、かつ、長手方向に延びるスロット118が形成されている。
円環状隙間116内には、軸114の径方向外側に略円筒形状の第1フォイル部材120が、円環状隙間116の内周域のほぼ全域に亘り、かつ、該軸114と同軸状に配置されている。そして、第1フォイル部材120の一端部は曲げられ、径方向外側に突出する第1突出端部122を形成している。
図2及び図3に示すように、カートリッジ112の内周面と軸114の外周面の間には、上述の第1フォイル部材120に加え、第2フォイル部材124が、上記カートリッジ112の内周面からこの順序で、同心状に配置されている。そして、これら第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124のそれぞれは、端面視(図2及び図3に示す状態)で端部どうしは結合せず、各フォイル部材の対向する部分により、スロット118近傍で、開口が形成されている。一方、図4に示すように、第2フォイル部材124及び第1フォイル部材120を、上記カートリッジ112の内周面からこの順序で、同心状に配置してもよい。
一般に知られているように、軸の回転始動及び停止時において、円環状隙間内に十分な流体膜が形成されるまでは、この軸に直接対向するフォイル部材(トップフォイル)は軸と摺接する。したがって、トップフォイルの軸に対向する面(半径方向内面)には低摩擦コーティングを施すと好ましい。図2及び図3に示す構成においては、軸114の回転始動及び停止時において、円環状隙間116内に十分な流体膜が形成されるまでは、第2フォイル部材124が軸114と摺接する。したがって、摩擦低減のため、第2フォイル部材124の半径方向内面には低摩擦コーティングを施すと好ましい。ただし、軸114に直接対向するフォイル部材、すなわち上述のトップフォイルは、第1フォイル部材120又は第2フォイル部材124のどちらであってもよい。さらに、いずれの場合も、円環状隙間116内において、トップフォイル(第1フォイル部材120又は第2フォイル部材124)は、軸114の回転方向とは逆の方向に向けて配置されると好ましい。すなわち、トップフォイルは、その装着点(スロット118)から該トップフォイルの自由端に向かう方向が、軸114の回転方向と逆になるように配置される。なお、本発明の一実施形態においては、上記トップフォイルに対して中間フォイル又は接触フォイルとも称される第1フォイル部材120は、軸114の回転方向に沿って配置されている。
さらに、図2及び図3に示すように、カートリッジ112の内周面と第1フォイル部材120との間には、長手方向に可撓性を有するバネ126(弾性支持体)が、カートリッジ112の内周面に接して配置されている。このバネ126は、波状の板材で構成され、上記第1及び第2のフォイル部材(120、124)と同様に、端面視(図2及び図3に示す状態)で端部どうしは結合せず、バネ126の対向する部分により、スロット118近傍で、開口が形成されている。
また、図4の別の実施形態に示すように、バネ126を、カートリッジ112の内周面と第2フォイル部材124の間に配置してもよい。
第1フォイル部材120と同様に、第2フォイル部材124も、円環状隙間116の内周域のほぼ全域に亘り、かつ、該軸114と同軸状に配置されている。そして、第2フォイル部材124の一端部は曲げられ、径方向外側に突出する第2突出端部128を形成している。第1フォイル部材120の第1突出端部122及び第2フォイル部材124の第2突出端部128は互いに接着され、カートリッジ112に設けられたスロット118内に摺動可能に収納され、回転防止フィン130を形成している。すなわち、この回転防止フィン130をスロット118に挿入することにより、第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124のカートリッジ112内での回転が防止される。さらに、スロット118の長手方向両端は、第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124をカートリッジ112内に保持すべく閉じられた構造となっている。スロット118に挿入されるこのような回転防止フィン130の使用により、部材の交換を容易に行えるので、軸受の負荷条件に従って減衰力を調整することができる。
なお、図2及び図3においては別部材として示しているが、図4に示すように、第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124は単体のフォイル部材から形成してもよい。この場合、フォイル部材には曲げ部134を設けて、図視左右側にそれぞれ既述の第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124に相当する部分を設けている。流体軸受110の組立て時には、曲げ部134のみをスロット118に挿入するのみで、フォイル部材の回転を防止することができる。
第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124と同様に、バネ126も、円環状隙間116の内周域のほぼ全域に亘り、かつ、該軸114と同軸状に配置されている。そして、バネ126の一端部は曲げられ、径方向外側に突出するフランジ部132を形成している。フランジ部132をスロット118に挿入することにより、バネ126が、カートリッジ112及び第1及び第2フォイル部材(120、124)に対して位置決めされ、かつ、該バネ126の回転が防止される。
また、フランジ部132は、フィン130又は曲げ部134に貼着してもよく、又は、フィン130又は曲げ部134との表面接触によってスロット118内に保持してもよい。
一方、バネ126を、フィン130、曲げ部134、第1フォイル部材120又は第2フォイル部材124のいずれにも接着することなく保持するようにすれば、バネ126の弾性に頼らずに、すなわち、バネ126のフランジ部132の配置角度を厳密に管理することなく、第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124を、カートリッジ112に組み込みかつ調整ができ、流体軸受の製造を容易にすることができる。
カートリッジ112のスロット118は、フィン130及びバネ126のフランジ部132と補完的な形状及び幅を有することが望ましい。すなわち、スロット118の周方向の幅は、例えば、第1フォイル部材120の第1突出部122、第2フォイル部材124の第2突出部128、及びバネ126のフランジ部132の厚さを合計した値にほぼ等しくなるよう設計する。したがって、スロット118の周方向の幅は、図1の従来例に示されるキー溝18の周方向の幅より小さくなる。スロット118の径方向の深さはフィン130又は曲げ部134の長さより大きいことが望ましい。例えば、フィン130又は曲げ部134の先端とスロット118底部との間の空間は、0.030インチ程度とする。一般に、フィン130又は曲げ部134の占有体積が小さいほど、流体軸受の整合性は高くなる。図1に示す従来例のキー構成では、キー22の可動の程度が低いため、既述の「ハードスポット」が形成されると、流体軸受けの整合性、負荷容量及び衝撃耐性容量の低下を招いていた。
当業者には自明の通り、軸114に加わる攪乱は、軸114と隣接するフォイル部材(図2及び図3の例では第2フォイル部材124、図4の例では第1フォイル部材120)との間の流体膜の加圧又は圧縮、バネ126の波部分の圧縮、及びクーロン減衰効果により減衰される。
流体軸受110は、軸114並びに第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124の間における流体動圧発生の原理に基づいて、動作する。理論上、負荷がゼロの条件では、軸114の幾何学的中心点はカートリッジ112並びに第1及び第2フォイル部材(120、124)が形成する円筒形の幾何学的中心点に一致する。しかし、実際の運転中には負荷が軸114に加わるため、軸114の幾何学的中心点がカートリッジ112並びに第1及び第2フォイル部材(120、124)の幾何学的中心点から偏心し、軸114と第1及び第2フォイル部材(120、124)との間に楔形の隙間が形成される。軸114が回転するとその幾何学的中心点は、第1及び第2フォイル部材(120、124)の幾何学的中心点回りに旋回するため、楔形の隙間もこれらフォイル部材の中心点回りを旋回する。そして、第1及び第2フォイル部材(120、124)に対して偏心する軸114、及び、この軸114の連続回転により、軸114と第1及び第2フォイル部材(120、124)との間に楔形の高圧領域と低圧領域が形成される。これにより高圧領域から低圧領域への流体の流れが生じ、軸114と第1及び第2フォイル部材(120、124)間の流体が圧縮される。このような現象により、流体膜が形成されるので、軸受110にラジアル負荷がかかっても、軸114は第1及び第2フォイル部材(120、124)に接触することがない。
上記バネ126は2つの目的を持つ。すなわち、第1に、バネ126の弾性により、流体膜からの加圧に起因するフォイル部材の撓みを吸収して流体膜の形成を助け、第2に、流体軸受全体の負荷容量を決定し、かつ、軸負荷や不均衡による軸偏位を吸収する。減衰効果及び安定性の観点から、バネ126のバネ率特性は比較的低いことが好ましいが、適度の負荷容量及び軸の偏位制限のためには、バネ率が比較的高いことが望ましい。したがって、米国特許第4,415,281号明細書に開示されているような、二重あるいは双線形(bilinear)のバネ率を有する単体バネが好適である。
上記実施形態では、バネ126のフランジ部132をスロット118に挿入することにより流体軸受110に装着しているが、本発明はこれに限らず、例えば、カートリッジ112の内壁にバネ126の一部を溶接するなど、バネ126は他の方法で流体軸受110内に保持することも可能である。また、バネ126は、第1及び第2フォイル部材(120、124)とは別部材として説明したが、例えば、フランジ部132をフィン130又は曲げ部134に溶接するなど、バネ126を第1及び第2フォイル部材(120、124)に接着させて構成することも可能である。
クーロン減衰効果向上のためには、軸とカートリッジ(固定保持部材)間の円環状隙間に複層フォイル構造を設けるのが一般的であった。図1に示す構成は、このような複層フォイル構造の一例である。
本発明においても、クーロン減衰効果を向上するため、図2及び図3に示すように、第2フォイル部材124を第1フォイル部材120の半径方向内側に同心状に設けている。第1及び第2フォイル部材(120、124)は円環状隙間116内で互いに重なり合っており、バネ126は第1フォイル部材120の半径方向外側に同心状に設けられている。このため、軸114に加わる攪乱は、第1フォイル部材120と第2フォイル部材124の間、及び、第1フォイル部材120とバネ126の波部頂点間のクーロン減衰効果により一部減衰される。
上記クーロン減衰効果は、互いに隣接する第1フォイル部材120、第2フォイル部材124及びバネ126を、円周方向に関して、(装着端を基準として)その配置の方向を交互に異ならせることにより、さらに向上する。図2及び図3に示す構成では、軸114と第2フォイル部材124間の流体膜からの半径方向外側への圧力が第2フォイル部材124を外側に押圧し、該第2フォイル部材124が形成する円筒を開き、装着端を中心として、第2フォイル部材124を時計回りに回動させる。この第2フォイル部材124が、隣接する第1フォイル部材120に摺接することにより、クーロン減衰効果が得られる。このクーロン減衰効果は、上述の如く、第1フォイル部材120を、円周方向に関して、第2フォイル部材124とは反対方向に配置することにより、さらに向上する。流体膜が加圧されると第2フォイル部材124が外側へ押圧され、この押圧力が第1フォイル部材120を外側へ押圧し、第1フォイル部材120が形成する円筒を開く。そして、第1フォイル部材120の装着端を中心として、反時計回りに第1フォイル部材120を回動させる。当業者には自明の通り、複数のフォイル部材が装着点から同じ円周方向に延設されていたり、若しくは、単一の板(箔)材からコイル状に形成された場合のように、フォイル部材が同じ円周方向に動くより、互いに反対方向に動く方が、より高いエネルギー消費及び減衰効果が得られる。
図2及び図3においてさらに、流体膜からの圧力により第1及び第2フォイル部材(120、124)は外側へ移動し、バネ126を押圧し、バネ126を外側へ開き、装着端を中心として、時計回りに回動させる。前述のように、第1フォイル部材120は圧力がかかると、反時計回りに回動するので、バネ126と第1フォイル部材120の互いに反対方向に回動し、クーロン減衰効果が向上する。
図4は、クーロン減衰効果に関する別の実施形態を示す。本実施形態においては、第2フォイル部材124が、円環状隙間116内において第1フォイル部材120の半径方向外側に同心状に設けられている。したがって、バネ126が、第2フォイル部材124に隣接し、かつ、その半径方向外側に同心状に設けられている。軸114に加わる攪乱は、第1及び第2フォイル部材(120、124)間と、第2フォイル部材124とバネ126の波部頂点間のクーロン減衰効果により一部減衰される。図4に示す実施形態においても、ここでも第1フォイル部材120を、円周方向に関して、バネ126とは反対方向に配置している。一方、第2フォイル部材124は、円周方向に関して、バネ126と同一方向に配置され、かつ、第1フォイル部材120とは反対方向に配置されている。
円環状隙間116内には、さらにフォイル部材を追加してフォイル層を増してもよい。この場合、隣接するフォイル部材は、円周方向に関して、交互に配置の向きを変えると好ましい。但し、本発明は、隣接するフォイル部材が、円周方向に関して、同一方向に配置される場合も含むものとする。例えば、図2乃至4に示される第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124の双方を、フィン130(図2及び図3)又は曲げ部134(図4)から、バネ126と同じ円周方向に配置してもよい。一方、図2乃至4に示す構成に、さらに、バネ126の径方向内側に、かつ、同軸状に配置した、さらなるフォイル部材を、円周方向に関して、第1フォイル部材120及び第2フォイル部材124と反対方向に配置してもよい。フォイル部材を複数追加する場合は、それぞれがフランジ部を備え、かつ、これらを互いに接着してフォイルアセンブリの回転防止フィンを構成すると好ましい。
カートリッジ112、軸114、第1フォイル部材120、第2フォイル部材124、及びバネ126の寸法は、流体軸受の用途及び予想負荷に応じて決められることは言うまでもない。一例を挙げれば、回転数40,000RPMの空気循環空調装置用ターボコンプレッサで使用する場合の流体軸受110は、直径2インチである。直径2インチの流体軸受に用いられる第1及び第2フォイル部材(120、124)は、厚みが0.002〜0.010インチ程度であり、バネ126も概ね同程度の厚さを有する。同様に、これらフォイル部材から半径方向に突出するフィン130又は曲げ部134の長さは、流体軸受110のサイズ及び直径に応じて決定される。カートリッジ112のスロット118は、は上述したように、フィン130及びバネ126のフランジ部132と補完的な形状及び周方向の幅を有すると好ましく、同様に、曲げ部134及びバネ126のフランジ部132と補完的な形状及び周方向の幅を有すると好ましい。また、スロット118の径方向の深さは、フィン130又は曲げ部134先端とスロット118底部との間に0.030インチ程度の空間が形成されるような深さであると好ましい。
フィン130の形成方法は第1及び第2フォイル部材(120、124)の材料によって異なるが、フォイル部材が金属材料である場合は、溶接及び鑞付けが好適である。第1及び第2フォイル部材(120、124)及びバネ126の好適材料としてはINCONEL(登録商標)が挙げられるが、その他のアルミ又はステンレス材料でもよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、これらは本発明の解説を目的とするものであって、これらの説明が発明の全てであり開示された内容にのみ発明が限定されるものではない。本発明に関連する技術の当業者には自明の通り、上述した実施形態には、本発明のより広い解釈から外れることなく様々な改変を加えることができる。
従来の流体軸受を示す端面図である。 本発明の流体軸受を示す端面図である。 図2の流体軸受を拡大して示す部分端面図である。 本発明の別の実施形態に係る流体軸受を拡大して示す部分端面図である。
符号の説明
110 流体軸受
112 固定保持部材(カートリッジ)
116 円環状隙間
118 スロット
120 第1フォイル部材
124 第2フォイル部材
126 弾性支持体(バネ)
130 回転防止フィン



Claims (12)

  1. 回転体を支持する円筒開口と、該円筒開口の内周面の長手方向に設けたスロットとを備え、該円筒開口と前記回転体の間に円環状隙間が形成される固定保持部材と;
    前記円環状隙間内に配置される第1フォイル部材と;
    前記円環状隙間内に、前記第1フォイル部材と同軸状に配置される第2フォイル部材と;
    前記円環状隙間内に、前記第1及び第2のフォイル部材と同軸状に配置された弾性支持体と、を備えた流体軸受において、
    前記第1及び第2のフォイル部材の一端部を互いに接合して、前記円筒開口の径方向に延びる回転防止フィンを形成し、該回転防止フィンを前記固定保持部材に形成された前記スロットに装着したことを特徴とする流体軸受。
  2. 前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材が、円周方向に関して、前記スロットから、互いに反対方向に配置されることを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  3. 前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材の前記一端部が溶接されて前記回転防止フィンを形成していることを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  4. 前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材は一体に構成され、この一体に構成された第1及び第2フォイル部材の所定部分が前記スロットに装着されることを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  5. 前記円環状隙間内に配置される前記弾性支持体は、前記円筒開口の径方向に突出するフランジ部を有することを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  6. 前記弾性支持体の前記フランジ部が前記スロットに装着されることにより前記弾性支持体の回転が防止されることを特徴とする請求項5記載の流体軸受。
  7. 前記弾性支持体の前記フランジ部が前記第1及び第2フォイル部材により形成される回転防止フィンに接合されていることを特徴とする請求項5記載の流体軸受。
  8. 前記弾性支持体の前記フランジ部は前記回転防止フィンに溶接されることを特徴とする請求項7記載の流体軸受。
  9. 前記第1フォイル部材及び前記第2フォイル部材は、前記円環状隙間内において、前記スロットから、円周方向に関して、互いに反対方向に配置され、それぞれの自由端が重なり合うことを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  10. 前記第1フォイル部材が半径方向内面に低摩擦コーティング層を有することを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  11. 前記弾性支持体が、波形状を有するフォイル部材であることを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
  12. 前記円環状隙間内において、同軸状に隣接する前記第1フォイル部材、前記第2フォイル部材及び前記弾性支持体は、円周方向に関して、互いに異なる方向に配置され、前記第1フォイル部材と前記第2フォイル部材とが摺接すること、及び、前記第1及び第2フォイル部材のうち少なくとも一つと前記弾性支持体とが摺接すること、によりクーロン減衰効果が向上することを特徴とする請求項1記載の流体軸受。
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