JP2005232595A - 高強度焼結部品用の鉄基粉末混合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的低い焼結温度でも焼結が促進され、さらには焼結後の熱処理を省略しても、高強度の焼結部品を得ることができる鉄基粉末混合物を提供する。
【解決手段】NiおよびMoを予合金化した合金鋼粉の表面に、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉を有機結合剤により付着させた鉄基粉末:100 質量部に対し、遊離潤滑剤を0.05〜0.6 質量部混合した鉄基粉末混合物であって、該遊離潤滑剤の少なくとも20質量%を、粒径:0.10〜80μm の一次粒子を凝集して造粒した粒径:10〜200 μm の二次粒子とし、前記合金鋼粉におけるNiおよびMoの予合金化率を、Ni:0.5 〜3質量%、Mo:0.7 超〜4質量%、また前記鉄基粉末におけるNi粉、Cu粉および黒鉛粉の配合率を、Ni粉:0.5 〜5質量%、Cu粉:0.5 〜3質量%、黒鉛粉:0.2 〜1.0 質量%とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、粉末冶金用鉄基粉末混合物に関し、特に自動車用の高強度焼結部品の製造に適用して好適なものである。
金属粉を金型内で加圧−成形したのち、焼結して焼結体とする粉末冶金法は、複雑な形状の機械部品も精度よく製造することができるため、高い寸法精度が要求されるギヤ等の自動車用部品の製造に広く利用されている。
金属粉として鉄粉を用いる場合には、通常、鉄粉にCu粉や黒鉛粉等の合金成分を混合し、さらに成形性を向上させるための潤滑剤を 0.8〜1.2 質量%程度混合した後、成形し、ついで焼結を行うことにより、 5.0〜7.2Mg/m3程度の密度を有する焼結体としている。
また、これらの自動車用部品には、高強度であることが要求されている。そこで、一層の強度向上のために、合金元素を添加した焼結体に、さらに焼入−焼戻等の熱処理を施して製品化することが一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、高強度粉末冶金部品用原料粉として、C,N,Si,Al,Oを低減すると共に、Mn,Cr,Mo,Vのうちから選んだ1種または2種以上の元素を予合金成分として含有させ、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる、圧縮性、成形性および熱処理特性に優れる合金鋼粉が提案されている。
また、特許文献2には、自動車用高強度部品用原料粉として、鉄粉の表面にCu,Ni,Moの粉末を同時に付着拡散させた、熱処理における寸法変化のばらつきの小さい部分合金化合金鋼粉が提案されている。
ところで、最近では、焼結部品の製造に際し、製造コスト低減のために、弱酸化性雰囲気中で焼結温度を低下させた低温焼結や、焼結後における熱処理の省略が指向されている。
そのため、かような低温焼結を実施した場合であっても、あるいはその後の熱処理を省略したとしても、高強度の焼結部品が確保できる原料粉の開発が要望されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたような、Cr,Mnなどの易酸化性合金元素を溶鋼の状態で予合金化させた予合金化合金鋼粉を用いて、弱酸化性雰囲気中で焼結すると、予合金化された合金元素が酸化されて、所望の強度を有する焼結部品が得られないという問題があった。
この点、特許文献2に記載のような、鉄粉に、NiやMo,Cu等の合金元素を部分合金化させた部分合金化合金鋼粉を用いた場合には、合金元素の酸化という問題はないが、この部分合金化合金鋼粉は、圧縮性が低いだけでなく、焼結後の熱処理によって高強度の確保を意図しているため、焼結のままでは引張強さ:800 MPa 以上の高強度を達成できないという問題があった。
このような問題に対し、特許文献3では、質量比率で、Ni:3〜5%、Mo:0.4 〜0.7 %、残部Feからなる組成の合金粉末に、Cu粉を1〜2%、Ni粉を1〜3%、黒鉛粉を焼結後のC量が 0.2〜0.7 %になるように混合した混合粉末を、圧縮成形し、得られた圧粉体を非酸化性雰囲気中で焼結し、その際、焼結炉中で5〜20℃/minの速度で冷却することからなる鉄系焼結合金の製造方法が提案されている。
また、特許文献4には、重量比率で、Ni:0.5 〜3質量%およびMo:0.7 超〜4質量、残部Feおよび不可避的不純物の組成になる合金粉末に、Ni粉を1〜5質量%、Cu粉を 0.5〜3質量%、黒鉛粉を0.2 〜0.9 質量%混合させた鉄基混合粉が提案されている。
特公昭58−10962 号公報 特開平1−215904号公報 特開平9−87794 号公報 特開2000−282103号公報
しかしながら、上記特許文献3および特許文献4に記載された技術では、いずれも合金鋼粉中にNiが予合金化されているため、焼入れ性は高いものの、合金鋼粉の圧縮性が低下することから、高い圧粉体密度が得られず、そのため高強度の焼結体が得られないという問題があった。
また、いずれの文献でも、潤滑剤を 0.8%程度添加しているため、脱ろう時間の短い焼結条件では、焼結の初期段階まで脱ろうに費やされ、実質的な焼結時間が短くなるため、高強度の焼結体が得られないという問題があることも判明した。
本発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、高い圧粉体密度が得られ、また脱ろう時間の短い厳しい焼結条件下でも、焼結のままで引張強さが 800 MPa以上の高強度焼結体を得ることができる鉄基粉末混合物を提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく、鉄基粉末混合物に添加する潤滑剤の種類および添加方法について鋭意検討を重ねた。
その結果、鉄基粉末混合物に添加する潤滑剤として遊離潤滑剤を用い、かつこの遊離潤滑剤の粒度分布を適切に制御することにより、圧粉成形時における抜出力を上昇させることなしに、潤滑剤の添加量を効果的に低減することができ、その結果、圧粉体密度が向上するだけでなく、焼結時における潤滑剤の脱ろう効率も向上するため、焼結体の強度が有利に向上するとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に、完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
NiおよびMoを予合金化した合金鋼粉の表面に、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉を有機結合剤により付着させた鉄基粉末:100 質量部に対し、遊離潤滑剤を0.05〜0.6 質量部混合した鉄基粉末混合物であって、該遊離潤滑剤の少なくとも20質量%が、粒径:0.10〜80μm の一次粒子を凝集して造粒した粒径:10〜200 μm の二次粒子からなり、前記合金鋼粉におけるNiおよびMoの予合金化率が、Ni:0.5 〜3質量%、Mo:0.7 超〜4質量%であり、また前記鉄基粉末におけるNi粉、Cu粉および黒鉛粉の配合率が、Ni粉:0.5 〜5質量%、Cu粉:0.5 〜3質量%、黒鉛粉:0.2 〜1.0 質量%であることを特徴とする高強度焼結部品用の鉄基粉末混合物。
本発明の鉄基粉末混合物を原料として使用することにより、高密度の高強度焼結部品を得ることができる。
また、本発明の鉄基粉末混合物は、比較的低い焼結温度でも焼結が促進され、高強度の焼結部品を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の主原料である鉄基粉末について説明する。本発明では、強度向上のための合金元素として、Ni,Mo,CuおよびC(黒鉛)を選択した。これら合金元素は、炭化水素変成ガス雰囲気中で焼結を行っても、酸化することがなく、強度を効率良く向上させることができる。
これらの合金元素のうち、Niは、粉体として用いた場合の焼結の活性化による空孔の微細化、および粉体と予合金化のいずれかを用いた場合の基地強化のために、粉体による添加と予合金化による添加の両方とする。
また、Cuは、焼結時に液相を形成して焼結を促進させるために、粉体で添加する。
さらに、Moは基地強化のために添加される。ただし、粉体で添加すると拡散しにくく、予合金化しても圧縮性の低下が少ないため、予合金化により添加する。
また、Cは焼結体の強度向上のために粉体(黒鉛粉)で添加する。予合金化によるCは鋼粉を硬化させて圧縮性を低下させるので0.02質量%以下に制限するとよい。
本発明における合金鋼粉は、所定量の合金元素を含有する溶鋼を、溶製したのち、例えば水アトマイズにより製造することができる。水アトマイズは、通常公知の装置および方法を用いて行えばよく、特に限定されることはない。なお、この予合金化合金鋼粉は、水アトマイズ後、常法に従い、仕上還元処理、ついで解砕処理が施されるのは言うまでもない。
上述した予合金化合金鋼粉におけるNiおよびMoの好適含有量は次のとおりである。
Ni:0.5 〜3質量%
Niは、マルテンサイト変態開始温度を低温側に移行させることにより、基地組織を微細化して、強度を向上させる有用元素である。しかしながら、Niの予合金化量が 0.5質量%未満では強度の向上効果が充分ではなく、一方3質量%を超えて予合金化させると鋼粉が著しく硬化し、圧縮性が著しく低下して、強度および靭性がともに低下する。このため、Niの予合金化量は 0.5〜3質量%の範囲に限定した。好ましくは 0.5〜2質量%の範囲である。
Mo:0.7 超〜4質量%
Moは、固溶強化および変態強化により強度を向上させる有用元素であり、しかも予合金化しても圧縮性の低下は少ない。しかしながら、Moの予合金化量が 0.7質量%以下では強度を向上させる効果が十分でなく、一方4質量%を超えて予合金化させると鋼粉が硬化し、圧縮性が著しく低下して、強度および靭性がともに低下する。このため、Moの予合金化量は 0.7超〜4質量%の範囲に限定した。好ましくは 0.7超〜3質量%の範囲である。
合金鋼粉において、上記した成分以外は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物のうち、SiやMn,S,P等は、それぞれSi:0.1 質量%以下、Mn:0.3 質量%以下、S:0.02質量%以下、P:0.02質量%以下で許容できる。
次に、合金鋼粉の表面に、有機結合剤によりNi粉、Cu粉および黒鉛粉を付着させた鉄基粉末において、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉の配合率を前記の範囲に限定した理由について説明する。
なお、鉄基粉末における各成分の配合率は、合金鋼粉、Ni粉、Cu粉、黒鉛粉および有機結合剤の合計量(鉄基粉末全体)に対する質量%で表示する。
Ni粉:0.5 〜5質量%
Ni粉は、焼結を活性化し、空孔を微細化して、強度を向上させるために添加する。しかしながら、Ni粉の配合率が 0.5質量%に満たないと焼結を活性化させる効果が十分でなく、一方5質量%を超えると残留オーステナイトが著しく増加して、強度の低下を招く。このため、Ni粉の配合率は 0.5〜5質量%の範囲に限定した。好ましくは2〜4質量%の範囲である。
なお、Ni粉としては、熱分解法により作製したカルボニルニッケル粉、Ni酸化物を還元して作製したNi粉など公知のものを用いればよい。
Cu粉:0.5 〜3質量%
Cu粉は、焼結時に液相形成により空孔を球状化して焼結を促進し、強度を向上させるため添加する。しかしながら、Cu粉の配合率が 0.5質量%未満では強度を向上させる効果が十分でなく、一方3質量%を超えると脆化する。このため、Cuの配合率は 0.5〜3質量%の範囲とした。好ましくは1〜2質量%の範囲である。
なお、Cu粉としては、電解Cu粉やアトマイズCu粉など公知のものを用いればよい。
黒鉛粉:0.2 〜1.0 質量%
黒鉛粉は、焼結時に鉄粉中に拡散して固溶強化により強度を高くする元素である。しかしながら、黒鉛粉の配合率が 0.2質量%未満では強度を向上させる効果が十分でなく、一方 1.0質量%を超えると、初析セメンタイトが粒界に析出し、強度が低下する。このため、黒鉛粉の配合率は 0.2〜1.0 質量%の範囲とした。
鉄基粉末の作製に際しては、Ni粉、Cu粉、黒鉛粉等の粉体は、合金鋼粉の表面に有機結合剤により付着させる。というのは、Ni粉やCu粉、黒鉛粉は合金鋼粉よりも微粉であるため、これらを単に混合しただけでは、輸送時やホッパへの装入・排出時、さらには金型充填時に、偏析が起こり易いため、焼結体の寸法や強度のばらつきが生じ易いからである。
この点、かような黒鉛粉等を予め合金鋼粉の表面に付着させておけば、上記のような偏析、ひいては焼結体における寸法や強度のばらつきを有利に解消することができる。
ここに、有機結合剤の添加量は、鉄基粉末に対する配合率で0.05〜0.3 質量%程度とするのが好適である。
上記した有機結合剤については、その種類が特に限定されるものではないが、次のものがとりわけ有利に適合する。
(1) 金属石鹸(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウムなど)
(2) 金属石鹸と脂肪酸の共融混合物(ステアリン酸、オレイン酸など)
(3) 脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミドなど)
(4) 金属石鹸と脂肪酸アミドの共融混合物
(5) 熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレンなど)
なお、これらは単独で使用しても、また複合して使用してもよいのは言うまでもない。
さて、上記したような鉄基粉末に対し、成形時における粉末同士および粉末と金型との間の摩擦の低減、さらには成形後の金型からの抜出力の低下を目的として適量の潤滑剤を添加する。
本発明では、かような潤滑剤として遊離潤滑剤を使用するわけであるが、本発明において最も重要なことは、上記した遊離潤滑剤中に一次粒子が凝集して造粒された二次粒子をある程度以上残存させることである。
すなわち、発明者らの研究によれば、鉄基粉末に対して遊離潤滑剤を混合する際、せん断力を適切に制御して、二次粒子をある程度以上の残存させることにより、少量の潤滑剤でも金型からの抜出力を効果的に低下させることができ、また潤滑剤量を少なくできるため圧粉体密度の有利な向上が達成されることが究明されたのである。
この理由については、まだ明確に解明されたわけではないが、遊離潤滑剤中に比較的粒径が大きい二次粒子を存在させると、鉄基粉末混合物を圧粉成形金型に装入した場合、金型壁面とそれに接する鉄基粉末との空隙にも二次粒子が侵入し、この二次粒子がほぐれる(さらに小さい二次粒子あるいは一次粒子に分割される)ことにより潤滑効果が格段に向上して、金型からの抜出力が低下するものと考えられる。
また、潤滑剤は、鉄基粉末に比べて比重が小さいため、少なくするほど圧粉体密度は向上する。
本発明では、少量の遊離潤滑剤で抜出力が低下するため、従来、鉄基粉末混合物全体で 0.8〜1.2 質量%程度添加していた潤滑剤量を、鉄基粉末:100 質量部に対し0.05〜0.6 質量部まで低減することができ、その分圧粉体密度の向上を図ることができる。さらに、潤滑剤量を低減したため、脱ろう性が改善され、脱ろう時間の短い厳しい焼結条件でも、高強度の焼結体を得ることができる。
ここに、一次粒子については、粒径を0.10〜80μm の範囲に制限する必要がある。というのは、一次粒子の粒径すなわち一次粒径が0.10μm に満たないと、凝集力が強くなり、二次粒子が成形時にほぐれ難くなって金型とのかじりが起こり、あるいは抜出力が高くなり、一方80μm を超えると、成形体中に潤滑剤粒子に起因した粗大な空孔が残留して圧粉体密度の低下を招き、焼結体強度を低下させてしまうからである。好ましくは1〜60μm である。
また、二次粒子については、その粒径を10〜200 μm の範囲に制限する必要がある。というのは、二次粒子の粒径すなわち二次粒径が10μm に満たないと、金型壁面と鉄基粉末との間に入り込む潤滑剤量が少なくなって、抜出力を十分に低下させることができず、一方 200μm を超えると、成形体中に潤滑剤粒子に起因した粗大な空孔が残留する結果、圧粉体密度の低下を招き、その結果、焼結体強度も低下してしまうからである。好ましくは10〜100 μm である。
なお、二次粒子への造粒は、スプレードライ法、マルメライザー等公知の方法を利用することができる。
そして、上記した粒径が10〜200 μm の二次粒子を、遊離潤滑剤全体に対して少なくとも20質量%の比率で含有させるのである。
というのは、二次粒子の比率が20質量%に満たないと、金型壁面とそれに接する鉄基粉末との空隙に侵入する二次粒子の量が少なすぎ、金型とのかじりが起こり、あるいは抜出力が高くなるからである。
以上の粒径は、レーザー回折式の粒度分布計で測定する平均粒径とする。二次粒子の比率は走査電子顕微鏡で二次粒子が100 個以上観察できる視野で、算出した二次粒子の面積率とする。
また、上記した遊離潤滑剤は、鉄基粉末:100 質量部に対し、0.05〜0.6 質量部の範囲で添加する必要がある。
というのは、鉄基粉末に対する遊離潤滑剤の混合量が0.05質量部に満たないと十分な潤滑効果が得られず,一方 0.6質量部を超えると高い圧粉体密度が得られず、また、脱ろう時間の短い厳しい焼結条件では、高強度の焼結体が得られることができないという弊害を生じるからである。好ましくは 0.1〜0.4 質量部である。
なお、本発明の遊離潤滑剤としては、その種類が特に限定されるものではないが、次のものがとりわけ有利に適合する。
(1) 金属石鹸(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウムなど)
(2) 金属石鹸と脂肪酸の共融混合物(ステアリン酸、オレイン酸など)
(3) 脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなど)
(4) 金属石鹸と脂肪酸アミドの共融混合物
(5) 熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレンなど)
なお、これらは単独で使用しても、また複合して使用してもよいのは言うまでもない。 その他、必要に応じてシリカやTiO2微粉等を混合しても良い。
次に、本発明の製造条件について説明する。
まず、本発明では、合金鋼粉の表面に、有機結合剤により、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉を付着させる。そのためには、合金鋼粉、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉を混合した鉄基粉末中に適量の有機結合剤を加えたのち、有機結合剤の融点以上に加熱して、合金鋼粉の表面にNi粉、Cu粉および黒鉛粉を付着させる。
ここに、加熱温度は有機結合剤の種類によって異なるけれども、有機結合剤としてエチレンビスステアロアミド(融点:148 ℃)を用いた場合には、 150〜160 ℃程度で十分である。
ついで、上記のようにして得た合金鋼粉の表面に黒鉛粉等を付着させた鉄基粉末中に、遊離潤滑剤を適量添加したのち、遊離潤滑剤の二次粒子が破壊しないせん断力の混合機を使用して混合を実施する。
かような混合機としては、容器回転式、機械撹拌式、流動撹拌式および無撹拌式等の、混合粉体に与えるせん断力が小さい混合機が好適である。容器回転式混合機では、水平円筒型、傾斜円筒型、V型、二重円錐型および連続V型が好ましく、撹拌羽が内蔵されている混合機も好適に使用できる。機械撹拌式混合機では、リボン型、スクリュー型、複軸パドル型、円錐形スクリュー型および回転円板型が好ましい。流動撹拌式混合機では、流動床式、旋回流動式、ジェットポンプ式が好ましい。
混合機の条件は、例えば、上記したV型容器回転式混合機を使用する場合、粒径が10〜200 μm の二次粒子を少なくとも20質量%残存させるためには、2リットルの容器の回転数を10〜100 rpm とすることが好適である。ただし、混合条件は、上記の範囲に限定されるものではなく、遊離潤滑剤の二次粒子の凝集強度に応じて、適宜決定されるものである。
成形方法については、従来公知の方法いずれもが適合する。
例えば、鉄基粉末混合物を室温とし、金型を50〜70℃に加熱する方法は、粉末の取り扱いが容易で、圧粉体密度がさらに向上するため好適である。
また、粉末、金型ともに 120〜130 ℃に加熱する温間成形も使用することができる。
なお、本発明の鉄基粉末混合物は、弱酸化性であるRXガス雰囲気中にて1100〜1200℃の低温焼結を施しても、焼結のままで 800 MPa以上の高強度を有する焼結体とすることができる。しかしながら、この条件に限定されるものではなく、N2,酸化性のAXガス等他の雰囲気中で高温焼結を行うこともできることは言うまでもない。
Ni:2.1 質量%およびMo:1.0 質量%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる溶鋼を、溶製し、水アトマイズ法で粉体とした後、仕上還元処理を施して、予合金鋼粉とした。ついで、この予合金鋼粉に、Ni粉:2質量%、Cu粉:1.5 質量%および黒鉛粉:0.6 質量%を配合し、さらに表1に示す有機結合剤を添加したのち、該有機結合剤の融点以上に加熱して合金鋼粉の表面にNi粉、Cu粉、黒鉛粉を付着させ、ついで表1に示す遊離潤滑剤を添加してV型混合機に入れ、15分間混合した。
得られた鉄基粉末混合物を、日本粉末冶金工業会(JAMA)のM04-1992に準拠して、成形圧力:686 MPa で引張試験片形状に成形した。ついで、これらの成形体に、RXガス雰囲気中で、特に脱ろうのための保持はせずに、昇温速度:60℃/分、1130℃×20分、冷却速度:60℃/分の条件で焼結を施し、焼結体とした。焼結後、大気中にて 180℃、60分の焼戻し処理を施した。
かくして得られた焼結体の密度および引張強さについて調べた結果を、表1に併記する。
なお、焼結体の密度はJIS Z 2501、引張強さはJIS Z 2550に従い測定した。
Figure 2005232595
同表に示したとおり、本発明に従い、潤滑剤として粒度分布を適切に制御した遊離潤滑剤を用いた場合には、遊離潤滑剤の添加量が0.6 質量部以下という少ない量で、引張強さが830 MPa以上の高強度焼結体を得ることができた。一方、一次粒径および二次粒径が小さいNo.11および二次粒子比率の小さいNo.13では、かじりが起こって成形ができず、一次粒径と二次粒径が大きいNo.12および遊離潤滑剤の添加量が過多のNo.14は引張強さが780 MPa以下と小さくなった。
表2に示す量のMo,Niを予合金化した合金溶鋼を、溶製し、水アトマイズ法で粉体とした後、仕上還元処理を施して、予合金鋼粉とした。ついで、これらの予合金鋼粉に、表2に示す量のNi粉、Cu粉、黒鉛粉を配合し、さらに有機結合剤として、ステアリン酸アミド:0.1 質量%とエチレンビスステアロアミド:0.1 質量%を加えた後、 150℃に加熱して合金鋼粉の表面にNi粉、Cu粉、黒鉛粉を付着させ、ついで遊離潤滑剤は表1のNo.6と同じものを同じ添加量で用い、V型混合機に入れ、15分間混合した。
得られた鉄基粉末混合物を、実施例1と同様にして成形、焼結して得た焼結体の密度および引張強さについて調べた結果を、表2に併記する。
Figure 2005232595
同表から明らかなように、Ni,Moの予合金化率およびNi粉、Cu粉および黒鉛粉の混合割合が本発明の範囲を満足する鉄基粉末混合物を用いた場合にはいずれも、焼結体の引張強さが 840 MPa以上という高強度焼結体を得ることができた。
これに対し、No.1, 5, 9, 13, 16の比較例はそれぞれ、合金鋼粉中のMo量、Ni量、鉄基粉末中のNi粉量、Cu粉量、黒鉛粉量が少なく、強度向上の効果が小さいため、高強度焼結体が得られていない。
また、No.4, 8 はそれぞれ、合金鋼粉中のMo, Ni量が多すぎ、鋼粉粒子が硬化するため、焼結体密度が著しく低下し、高強度が得られていない。
No.12 は、鉄基粉末中のNi粉量が多すぎ、残留オーステナイトが著しく多くなるため、高強度が得られていない。
No.15 は、鉄基粉末中のCu粉量が多すぎるため、高強度が得られていない。
No.18 は、鉄基粉末中の黒鉛粉量が多すぎ、セメンタイトが焼結体の結晶粒界に析出するため、高強度が得られていない。

Claims (1)

  1. NiおよびMoを予合金化した合金鋼粉の表面に、Ni粉、Cu粉および黒鉛粉を有機結合剤により付着させた鉄基粉末:100 質量部に対し、遊離潤滑剤を0.05〜0.6 質量部混合した鉄基粉末混合物であって、該遊離潤滑剤の少なくとも20質量%が、粒径:0.10〜80μm の一次粒子を凝集して造粒した粒径:10〜200 μm の二次粒子からなり、前記合金鋼粉におけるNiおよびMoの予合金化率が、Ni:0.5 〜3質量%、Mo:0.7 超〜4質量%であり、また前記鉄基粉末におけるNi粉、Cu粉および黒鉛粉の配合率が、Ni粉:0.5 〜5質量%、Cu粉:0.5 〜3質量%、黒鉛粉:0.2 〜1.0 質量%であることを特徴とする高強度焼結部品用の鉄基粉末混合物。
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