JP2005228694A - 放射電磁波抑制電線及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 放射電磁波抑制効果を有し、成形性、可撓性に優れた放射電磁波抑制電線の製造方法及び放射電磁波抑制電線を提供する。
【解決手段】 磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア11周囲に押し出して放射電磁波抑制層13を被覆する電線1の製造方法において、樹脂組成物を押し出す際に押し出しダイスを回転させることにより放射電磁波抑制層13内の周方向に剪断力を生じさせ、磁性体を電線1周方向に配向させる放射電磁波抑制電線1の製造方法及び放射電磁波抑制電線1である。
【選択図】 図1
【解決手段】 磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア11周囲に押し出して放射電磁波抑制層13を被覆する電線1の製造方法において、樹脂組成物を押し出す際に押し出しダイスを回転させることにより放射電磁波抑制層13内の周方向に剪断力を生じさせ、磁性体を電線1周方向に配向させる放射電磁波抑制電線1の製造方法及び放射電磁波抑制電線1である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ケーブルに係り、特に押し出しにより製造され放射電磁波抑制が可能な電線に関するものである。
従来の放射電磁波抑制電線は、図7に示すような断面構造をしている。
放射電磁波抑制電線(以下、単に抑制電線と称する。)71は、電線コア11の周囲に遮蔽層(銅編組シールド層)12が施され、その周囲に放射電磁波抑制層73が形成され、さらに保護層14で覆われた断面構造となっている。
抑制電線71の放射電磁波抑制層73は、一般的には図8に示すように放射電磁波抑制層73のベースポリマ75に各種フェライトや軟磁性金属等の磁性材料76が不規則に分散混合されている。これらの磁性材料76の磁気特性を向上させるためには、抑制電線71の周方向に磁性材料76を配向させることが効果的である。
そこで従来は、オープンロール或いは、プレス機により放射電磁波抑制層73をシート状に形成し、形成の際にシートの面方向に磁性材料76を配向させた状態として、その形成したシートを遮蔽層(銅編組シールド層)12の周囲に巻き付けて、抑制電線71に磁性材料76が配向した放射電磁波抑制層73を形成していた。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
しかしながら、上記のような方法で放射電磁波抑制層73を形成すると、ケーブル作製の工程で、磁性材料76が配向したシートやテープの成型、テープの巻き付けなどの作業工程が増えるため、生産性が悪かった。
また、磁性材料76を高濃度で含有したテープ材は、強度が弱くテープの伸びも少ないため、シート単体での薄肉化やテープ化が困難であるという問題があった。
また、テープ化した後も、電線に巻き付ける際に破断し易いため、巻き付け作業が迅速・容易に行えないという問題があった。
一方、生産性の向上を図るためにテープ材の厚みを増すと、電線の外径の増加による可搬性、可撓性が著しく悪化するという問題があった。
そこで、本発明の目的は、放射電磁波抑制効果を有し、成形性、可撓性に優れた放射電磁波抑制電線の製造方法及び放射電磁波抑制電線を得ることにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、第1の発明は、磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して放射電磁波抑制層を被覆する電線の製造方法において、上記樹脂組成物を押し出す際に押し出しダイスを回転させることにより上記放射電磁波抑制層内の周方向に剪断力を生じさせ、その剪断力で上記磁性体を上記電線周方向に配向させる放射電磁波抑制電線の製造方法である。
第2の発明は、磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して放射電磁波抑制層を被覆する電線の製造方法において、上記樹脂組成物を押し出す際に上記電線を回転させることにより上記放射電磁波抑制層内の周方向に剪断力を生じさせ、その剪断力で上記磁性体を上記電線周方向に配向させる放射電磁波抑制電線の製造方法である。
第3の発明は、上記磁性体に形状磁気異方性を有するものを用いる方法である。
第4の発明は、磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して被覆した放射電磁波抑制層を有する電線において、上記磁性体が形状磁気異方性を有し、上記磁性体を上記電線周方向に配向させた放射電磁波抑制電線である。
第5の発明は、上記磁性体が、形状磁気異方性を有するセンダスト、パーマロイ、フェライト等の強磁性体材料からなるものである。
第6の発明は、上記磁性体が、上記強磁性体材料及び形状磁気異方性を有さない材料からなるものである。
第7の発明は、上記磁性体が、上記強磁性体材料の混合比20〜60vol%であるものである。
本発明によれば、充分な放射電磁波抑制効果を有する成形性、可撓性に優れた放射電磁波抑制電線の製造方法及び放射電磁波抑制電線を得られる。
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の好適実施の形態を示す放射電磁波抑制電線の構造を示す断面構造図である。
図示したように放射電磁波抑制電線1は、電線コア11の周囲に、遮蔽層12を銅編組材等で形成し、磁性体を混合した樹脂組成物を遮蔽層12の周囲に押し出して放射電磁波抑制層13を被覆した後、さらにその周囲に保護層14を形成した放射電磁波抑制効果を有するケーブルである。
電線コア11は、1又は複数の各種信号を伝送するための信号伝送用コア及び電源を供給するための電源線コアからなり、各コアが信号伝送用コアであるか若しくは電源線コアであるかその種類や、また各々の本数はケーブルの用途により適宜決められる。複数の電線コア11は適宜撚り合わせたり、束ねられ電線コア11のコア束が形成される。
電線コア11若しくは電線コア11の束は、その周囲に例えば銅編組で形成され電磁的なシールド層の役割を有する遮蔽層12が設けられる。
この遮蔽層12は、放射電磁波抑制電線1を他のケーブルや外部からの静電誘導などの影響から保護するために設けられる。静電誘導からの保護のために、例えば軟アルミテープ、軟銅線で編まれた編組線などが用いられる。
なお、この遮蔽層12は必要に応じて設ければよく、放射電磁波抑制層13が遮蔽層12を兼ねることができる場合には必ずしも設ける必要はない。遮蔽層12が不要な場合には、電線コア11若しくは電線コア11の束の周囲に直接放射電磁波抑制層13を被覆すればよい。
遮蔽層12が形成された電線コア11の束のさらにその外側は、強磁性体材料などからなる放射電磁波抑制層13で覆われる。
この放射電磁波抑制層13は、この層が形成されることにより電線コア11において伝送される信号や電源供給の電力から発生する放射電磁波のノイズを抑制し外部に漏洩させない所謂EMI対策の効果を有しており、磁性体を混合した樹脂組成物を抑制層材料として電線コア11周囲(電線コア11周囲に遮蔽層12設けられている場合は、遮蔽層12の周囲)に押し出して設けた抑制層である。
放射電磁波抑制層13の抑制層材料としては、例えば樹脂組成物(以下、ベースポリマと称する。)に直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度d=0.900g/cm3、成形速度MFR:2g/10Min、住友化学工業株式会社製)を用い、混合する形状磁気異方性を有する磁性体として厚み0.5μm〜1.5μm、アスペクト比5〜50の軟磁性鱗片状センダスト粉を用いる。
他に形状磁気異方性を有する磁性体としては、パーマロイ、フェライト等の強磁性体材料粉が用いられる。
これらの形状磁気異方性を有する磁性体は、その磁性体のなす形状により帯びる磁気の方向及び磁気強度が決まる性質を有している。すなわち、形状磁気異方性を有する磁性体の形状は、例えば円盤状、棒状(針状)、或いは鱗片状等の粒子形状を有しており、これらの形状により針状の場合であれば長手方向の両端に磁極が形成される。
他にベースポリマとしては、高充填可能なポリマ例えばエチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、エチレンオクテンゴム(EOR)、エチレンブテンゴム(EB)等のエラストマやポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリオレフィン系ポリマ、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体等を1種又は2種類以上混合したものが用いられる。
これらのベースポリマと磁性体を150℃のオープンロールを用いて混合し、均一分散させた後ペレタイズして放射電磁波抑制層13の抑制層材料とする。磁性体の混合比は、20〜60vol%とするとよい。
このペレット状に形成された抑制層材料は、溶融加熱されて遮蔽層12の周囲に押し出され、放射電磁波抑制層13が形成される。
放射電磁波抑制層13を形成されたコア束のさらにその外側は、ケーブル保護用の保護層14で覆われる。
保護層14は、電線コア11の束の防水や機械的防護を目的として設けられるもので、ケーブルの用途、使用環境等によって、例えばクロロプレン、ポリ塩化ビニル等のゴム・プラスチック系の部材が用いられたり、アルミ等の金属部材がシース材として用いられたりする。
図2は、放射電磁波抑制電線1の放射電磁波抑制層13の断面を模式的に示したものである。
図示したように放射電磁波抑制層13の形成は、扁平形状の磁性体16をベースポリマ15に混練して抑制層材料を生成した後に加熱溶融して、この抑制層材料を放射電磁波抑制電線1の周方向に被覆させたものである。
磁性体16は、この磁性体16が含まれている抑制層材料が放射電磁波抑制電線1の周方向に被覆されたことで、抑制層材料が周方向に伸びると共に磁性体16が周方向に配列・配向され、この方向に沿って磁路が形成される。この磁性体16の周方向の配向のため、放射電磁波抑制電線1は周方向の複素透磁率が向上し、ケーブルの電磁波抑制効果が高くなる。
磁性体16は、形状磁気異方性を有する強磁性体を含み、この材料の粒子形状により形状の特定の方向に磁性を有する性質を有しており、抑制層材料に機械的な剪断力が加わった際に磁性体16が剪断方向(すなわち、放射電磁波抑制電線1の周方向)に配向する。配向した磁性体16は、粒子形状の方向が各々略放射電磁波抑制電線1の周方向に揃い、このため磁性体16の有する磁性の方向が略一致して、放射電磁波抑制電線1の周方向の複素透磁率を向上させる。
この際に、放射電磁波抑制電線1の断面径方向には磁性体16が配向若しくはストラクチャ形成をしないため、従来技術の単純分散の場合に比べて電磁波抑制層の体積抵抗率は高くなっている。
すなわち、これらの磁性体16は径方向の繋がりは少ないため、磁性体を混合したことによる電線径方向の体積抵抗率は殆ど低下しない。このため、放射電磁波抑制電線1が比較的強い電界下で使用される場合においても、放射電磁波抑制電線1はこの電界による電磁的な影響を殆ど受けない。
なお、磁性体16は、形状磁気異方性を有する強磁性体材料と形状磁気異方性を有しない材料の混合物で構成してもよい。
図3は、本実施の形態である放射電磁波抑制電線の製造方法を示す説明図である。
図3は、本実施の形態である放射電磁波抑制電線の製造方法を示す説明図である。
図示したように放射電磁波抑制層13を形成するための押し出し成形機17は、混練されペレット状に形成された抑制層材料を投入し加熱溶融するシリンダスクリュ22と、シリンダスクリュ22にて溶融された抑制層材料を押し出すための押し出しヘッド20と、押し出しヘッド20から押し出された磁性体16を回転させながらケーブル1pに被覆する押し出しダイス(以下、回転する押し出しダイスを回転ヘッドと称する。)21とを備えて構成される。
押し出し成形機17は、ケーブル1pに放射電磁波抑制層13の被覆を施すための機器で、形状磁気異方性を有する磁性体を含んだ抑制層材料を加熱溶融し、この加熱溶融された抑制層材料を押し出して、押し出し成形機17内を一定速度で移動するケーブル1p周囲に一定厚の放射電磁波抑制層13を被覆することができる。
予めペレタイズされた抑制層材料(樹脂組成物)は、図示した押し出し成形機17のシリンダスクリュ22に投入され、シリンダスクリュ22にて加熱溶融される。シリンダスクリュ22にて加熱溶融された抑制層材料は、押し出しヘッド20から押し出されて回転ヘッド21に送出される。
図に示すように、押し出しヘッド20の出口側に設けられた回転ヘッド21は、矢印34方向に一定速度で回転している。
同時に、押し出しヘッド20から回転ヘッド21には、図中矢印33方向に電線コア11束の周囲に遮蔽層(銅編組シールド層)12が施されたケーブル1pが一定速度で移動している。
回転ヘッド21は、矢印34の方向に回転しつつ溶融された抑制層材料を押し出す。ここで、このケーブル1p上に押し出した抑制層材料が冷却・固化される前、すなわち抑制層材料を溶融状態でケーブル1pに向けて押し出すときに、押し出し成形機17の回転ヘッド(押し出しダイス)21をケーブル1p周方向(図中、矢印34で示す方向)に回転させる。
押し出しヘッド20から回転ヘッド21(矢印33方向)に移動したケーブル1pの遮蔽層12の周囲に厚さ0.4mmの放射電磁波抑制層13を被覆して形成する。この回転ヘッド21は、回転速度は100rpmで回転しつつ、ケーブル1pの周方向に溶融された抑制層材料を押し出す。
磁性体16は、その形状が扁平或いは棒状であるため、磁性体16がベースポリマ15と共に押し出しヘッド20より回転ヘッド21を通して押し出される際に、回転ヘッド21の矢印34方向の回転によりベースポリマ15が円周方向に回転力を受けるため、ベースポリマ15中の扁平方向若しくは棒状の磁性体16は、ベースポリマ15の円周方向への移動に合わせて図2に示したように円周方向に配向される。これにより、ベースポリマ15中に磁性体16が配向した放射電磁波抑圧層13が形成される。
また、磁性体16を周方向に配向させるために回転ヘッド21を一定速度で回転させる代わりに、押し出し成形機17の押し出しヘッド20内面に螺旋状の溝を入れて(設けて)、押し出し方向に周方向の回転成分を与える方法等を用いることでも回転ヘッド21を一定速度で回転させることと同様の効果を得ることができる。
このようにして矢印33方向にケーブル1pが押し出し成形機17に送られ、放射電磁波抑制層13が形成されたケーブル1qが一定速度10m/minで回転ヘッド21から矢印33方向に送出される。
このとき、ケーブル1pが矢印33方向に移動しつつ、回転ヘッド21が矢印34方向に回転してケーブル1pの周方向に放射電磁波抑制層13が設けられるため、磁性体16の配向は厳密には周方向成分のみでなく、遮蔽層12の周囲に螺旋(スパイラル)状に配向されることになる。
この磁性体16の螺旋状の配向の状態すなわち螺旋状のピッチにより、抑制したい電磁波の波長(すなわち、電磁波の周波数の逆数)が決定される。押し出しにより形成される磁性体16のスパイラルのピッチ幅が、抑制したい電磁波の波長に比して充分小さい値である場合に、放射電磁波抑制の効果が充分に得られることが分かっている。
配向される磁性体16の螺旋状のピッチは、上述のケーブル1qが送出される速度と、回転ヘッド21の回転速度との比で決定される。従って、電線コア11を伝送する信号の周波数や電磁波の抑制周波数を考慮して抑制する電磁波の波長を求め、この波長に対応する磁性体16の螺旋状のピッチを決定する。この螺旋状のピッチに対応するように、ケーブル1qの送出速度と回転ヘッド21の回転速度とを設定するとよい。
また、磁性体16を混合するベースポリマ15の粘性弾性特性、磁性体16の形状及び表面処理状態によっても、放射電磁波の抑制効果は左右される。従って、充分な放射電磁波の抑制効果を得るには、ベースポリマ15の粘性弾性特性、磁性体16の形状及び表面処理状態についても考慮して、特性、形状、処理状態を設定するとよい。
また、電磁波抑制層13を形成する材料を押し出して電線に被覆する際に、その材料を延伸させながら電線の周囲に引き落とす(すなわち、電線の長手方向に沿った方向に引き伸ばして層を形成する)ようにすれば、磁性体16を電線の軸方向(長手方向)に配向させることができる。
また、使用する抑制層材料を円盤形状としてこの円盤形状の抑制層材料を電線に被覆させるようにすれば、磁性体16を電線外周の周方向へ配向させることができる。
ケーブル1qには、この後に図1に示すような保護層14が例えばポリ塩化ビニル等により放射電磁波抑制層13の周囲に設けられ、所望の放射電磁波抑制電線1となる。
次に、これまで説明したような工程・方法で形成された放射電磁波抑制電線1と、従来の磁性材料を単純分散させた抑制電線71との特性評価試験及び比較を行った。
図4は、電線の放射電磁波抑制効果の特性比較評価結果を示す。図の横軸は、強磁性体材料の混合比すなわち磁性体混合量(単位:vol%)を示し、縦軸は、電線の放射電磁波抑制効果(単位:dBμV/m)を示す。
図の太線は、磁性体を配向させた場合すなわち放射電磁波抑制電線1の特性を示し、破線は、磁性材料を単純分散させた場合すなわち従来の抑制電線71の特性を示す。
この特性評価試験の条件は、次の通りである。
上述の放射電磁波抑制電線1及び従来の抑制電線71は、パーソナルコンピュータ等に接続することのできるUSB(Universal Serial Bus)ケーブルの形態とした。
このUSBケーブルをパーソナルコンピュータとハードディスク装置とに接続し、パーソナルコンピュータとハードディスク装置間でデータを転送する際にUSBケーブルから放射される妨害波電界強度をVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)の基準(クラスB:情報技術装置に基づく基準)が定めた妨害波電界強度測定法に準拠して測定・比較した。
特性図は、放射電磁波抑制層13の材料の軟磁性体材料16の混合比(磁性体混合量)を、30〜50vol%に変化させて、周波数100MHzにおける各々の混合比に対する放射電磁波抑制効果を測定した結果を示している。
実線(本実施の形態である放射電磁波抑制電線1)と破線(従来の抑制電線71)とを比較して見ると、例えば強磁性体材料の混合比が40vol%の場合、従来の抑制電線71の放射電磁波抑制効果は約10dBμV/mであるのに対して、放射電磁波抑制電線1の放射電磁波抑制効果は約13dBμV/mであり、磁性体を配向させることにより約3dB放射抑制効果が向上していることが分かる。
この特性図から分かるように、同じ軟磁性体材料の混合比であっても、磁性体16を配向させて放射電磁波抑制層13を設けた放射電磁波抑制電線1の方が、抑制電線71よりも高い放射電磁波抑制効果が得られる。
このため、同じ軟磁性体材料の混合比であっても磁性体16を配向させることにより、より高い放射電磁波抑制効果が得られることが分かる。逆に同じ放射電磁波抑制効果を得るためには、磁性体16を配向させることで磁性体16の使用量を低減することができる。この結果から、高価な磁性体16を使用する量が低減でき、放射電磁波抑制電線1の低コスト化が実現できる。また、放射電磁波抑制層13の薄肉化が実現できるので、放射電磁波抑制電線1の細径化、軽量化を行うことができると共に、細径化によりケーブルの可撓性を向上させることも可能になる。
また同じ、磁性体16を配向させて放射電磁波抑制層13が形成される場合であっても、放射電磁波抑制層13の軟磁性体材料の混合比が高い程、高い放射電磁波抑制効果が得られる。
次に、本発明の他の実施の形態について図1、図2、図5により説明する。
図5は、他の実施の形態である放射電磁波抑制電線の製造方法を示す説明図である。
図示したように放射電磁波抑制層13を形成するための押し出し成形機27は、混練されペレット状に形成された抑制層材料を投入し加熱溶融するシリンダスクリュ22と、シリンダスクリュ22にて溶融された抑制層材料を押し出してケーブル1rに被覆するための押し出しヘッド26と、ケーブル1rを送り出す電線送り出し装置23と、送り出されたケーブル1rを把持し回転させる電線把持回転装置25と、押し出しヘッド26で放射電磁波抑制層13を被覆されたケーブル1sを巻き取るための電線巻き取り装置24とを備えて構成される。
押し出し成形機27は、ケーブル1rに放射電磁波抑制層13の被覆を施すための機器で、抑制層材料を加熱溶融し、この加熱溶融された抑制層材料を押し出して、押し出し成形機27内を一定速度で移動するケーブル1r周囲に一定厚の放射電磁波抑制層13の被覆を施すことができる。
シリンダスクリュ22は、予めペレタイズされた抑制層材料を投入し加熱溶融し、溶融された抑制層材料を送出して押し出しヘッド26に供給するためのポッドである。
電線送り出し装置23は、ケーブル1rを一定速度で矢印33方向に送り出し、同時に一定速度(例えば、回転速度60rpm)でケーブル1rを周方向(図中では、矢印35方向を回転方向の例として示す。)に回転させる装置である。
電線把持回転装置25は、電線送り出し装置23から送り出されたケーブル1rを把持して、ケーブル1rを芯ずれ無しにガイドして押し出しヘッド26に供給するための装置であり、電線把持回転装置25は電線送り出し装置23と同期して同方向に回転速度60rpmで回転する。
押し出しヘッド26は、電線把持回転装置25から回転しつつ一定速度で送り出されてきたケーブル1rに放射電磁波抑制層13を被覆する装置である。押し出しヘッド26は、シリンダスクリュ22で加熱溶融された抑制層材料を押し出し、回転して送り出されているケーブル1rの方面に周方向に沿って放射電磁波抑制層13を被覆する。
電線巻き取り装置24は、放射電磁波抑制層13が被覆されたケーブル1sを一定速度で巻き取る装置である。電線巻き取り装置24は、電線送り出し装置23及び電線把持回転装置25と同期して同方向(矢印36方向)に回転速度60rpmで回転する。
以上のような構成による押し出し成形機27により、以下に説明するようにして放射電磁波抑制電線が形成される。
予めペレタイズされた抑制層材料は、図示した押し出し成形機27のシリンダスクリュ22に投入され、シリンダスクリュ22にて加熱溶融される。シリンダスクリュ22にて加熱溶融された抑制層材料は送出され、押し出しヘッド26に供給される。
一方、電線送り出し装置23は、遮蔽層12で被覆されたケーブル1rを矢印35方向に一定速度で回転させると共に、ケーブル1rを一定速度で電線把持回転装置25に向かって図中矢印33の方向に送り出す。
電線送り出し装置23から送り出されたケーブル1rは、電線把持回転装置25に達し、ケーブル1rの芯(ケーブル軸)がずれないように電線把持回転装置25にガイドされつつ、押し出しヘッド26に供給される。この時電線把持回転装置25は、電線送り出し装置23に同期して同方向に一定速度で回転しているため、ケーブル1rは電線送り出し装置23により与えられた回転速度を保ち矢印35方向に回転しながら、押し出しヘッド26に送られる。
押し出しヘッド26に送られたケーブル1rは、回転しつつ一定速度で押し出しヘッド26の中を矢印33方向に移動し、ケーブル1rの表面には溶融された抑制層材料により一定厚(例えば、厚さ0.4mm)の放射電磁波抑制層13が形成される。
放射電磁波抑制層13が形成されたケーブル1sは、電線送り出し装置23と同期した一定速度で、電線巻き取り装置24により回転しつつ巻き取られる。
このようにして矢印33方向にケーブル1rが押し出し成形機27に送られ、放射電磁波抑制層13が形成されたケーブル1sが一定速度(例えば、10m/min)で押し出しヘッド26から矢印33方向に送出される。
このとき、ケーブル1rが矢印33方向に移動しつつ、ケーブル1rが矢印35方向に回転してケーブル1rの周方向に放射電磁波抑制層13が設けられるため、磁性体16は遮蔽層12の周囲に螺旋(スパイラル)状に配向されることになる。
このためケーブル1rは、図3に示した方法で形成された放射電磁波抑制電線1と同様に、螺旋(スパイラル)状に配向された磁性体16の螺旋状ピッチにより、抑制電磁波の波長(すなわち抑制される電磁波の周波数を意味する。)が決まり、電線コア11からの放射電磁波を効果的に抑制できる。
配向される磁性体16の螺旋状のピッチは、上述のケーブル1r、1sが送出される速度と、ケーブル1r、1sの回転速度との比で決定される。従って、所望の放射電磁波の波長に対応するように、ケーブル1r、1sの送出速度と回転速度を設定し、配向される磁性体16の螺旋状のピッチを設定するとよい。
また、磁性体16を混合するベースポリマ15の粘性弾性特性、磁性体16の形状及び表面処理状態によっても、放射電磁波の抑制効果は左右されることも放射電磁波抑制電線1と同様である。従って、充分な放射電磁波の抑制効果を得るには、ベースポリマ15の粘性弾性特性、磁性体16の形状及び表面処理状態についても考慮して、特性、形状、処理状態を設定するとよい。
ケーブル1sには、この後に図1に示すような保護層14が例えばポリ塩化ビニル等により放射電磁波抑制層13の周囲に設けられ、所望の放射電磁波抑制電線となる。
次に、説明したような工程・方法で形成された放射電磁波抑制電線と、従来の磁性体を単純分散させた抑制電線71との特性比較を行った。
図6は、電線の放射電磁波抑制効果の特性比較評価結果を示す。図の横軸は、磁性体混合量(単位:vol%)を示し、縦軸は、電線の放射電磁波抑制効果(単位:dBμV/m)を示す。
図の太線は、磁性体を配向させた場合すなわち他の実施の形態の放射電磁波抑制電線の特性を示し、破線は磁性体を単純分散させた場合すなわち従来の抑制電線71の特性を示す。
この評価試験の条件等は、図4の条件と同じである。
実線(他の実施の形態である放射電磁波抑制電線)と破線(従来の抑制電線71)とを比較して見ると、例えば軟磁性体材料の混合比が40vol%の場合、従来の抑制電線71の放射電磁波抑制効果は約10dBμV/mであるのに対して、放射電磁波抑制電線1の放射電磁波抑制効果は約12dBμV/mであり、磁性体を配向させることにより約2dB放射抑制効果が向上していることが分かる。
この特性図から分かるように、同じ軟磁性体材料の混合比であっても、磁性体16を配向させて放射電磁波抑制層13を設けた放射電磁波抑制電線の方が、抑制電線71よりも高い放射電磁波抑制効果が得られる。
このため、同じ軟磁性体材料の混合比であっても磁性体16を配向させることにより、より高い放射電磁波抑制効果が得られる。
この結果、配向された磁性体16を含んだ電磁波抑制層13を形成することで、電線の遮蔽層12や電線コア11(信号線コア及び電源線コア)に重畳したノイズによる不要放射電磁波を抑制することができる。
以上説明したように、ケーブル周方向に配向された電磁波抑制層13を被覆することで、放射電磁波抑制効果に優れた放射電磁波抑制電線を得ることができる。
この放射電磁波抑制電線は、加熱溶融した抑制層材料をケーブルに直接一定厚被覆する方法であるため、従来の抑制層形成と異なり生産性が向上し、ケーブル製造の低コスト化が図れる。
また、磁性体の混合比を低減させつつ放射電磁波抑制効果を向上させることができ、かつ磁性体の混合比を低減させることができるため放射電磁波抑制層の充分な強度を確保できる。
さらには、放射電磁波抑制電線は、磁性体の混合比を低減させることができるため、ケーブルの製造性、可搬性、可撓性が向上する。
ケーブル周方向に磁性体を配向させることで、放射電磁波抑制層の体積抵抗率を維持したままで高い放射電磁波抑制効果が得られる。
1 放射電磁波抑制電線
11 電線コア
12 遮蔽層(銅編組シールド層)
13 放射電磁波抑制層
14 保護層
11 電線コア
12 遮蔽層(銅編組シールド層)
13 放射電磁波抑制層
14 保護層
Claims (7)
- 磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して放射電磁波抑制層を被覆する電線の製造方法において、上記樹脂組成物を押し出す際に押し出しダイスを回転させることにより上記放射電磁波抑制層内の周方向に剪断力を生じさせ、その剪断力で上記磁性体を上記電線周方向に配向させることを特徴とする放射電磁波抑制電線の製造方法。
- 磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して放射電磁波抑制層を被覆する電線の製造方法において、上記樹脂組成物を押し出す際に上記電線を回転させることにより上記放射電磁波抑制層内の周方向に剪断力を生じさせ、その剪断力で上記磁性体を上記電線周方向に配向させることを特徴とする放射電磁波抑制電線の製造方法。
- 上記磁性体に形状磁気異方性を有したものを用いることを特徴とする請求項1または2記載の放射電磁波抑制電線の製造方法。
- 磁性体を混合した樹脂組成物を電線コア周囲に押し出して被覆した放射電磁波抑制層を有する電線において、上記磁性体が形状磁気異方性を有し、上記磁性体を上記電線周方向に配向させたことを特徴とする放射電磁波抑制電線。
- 上記磁性体が、形状磁気異方性を有するセンダスト、パーマロイ、フェライト等の強磁性体材料からなる請求項4記載の放射電磁波抑制電線。
- 上記磁性体が、上記強磁性体材料及び形状磁気異方性を有さない磁性体からなる請求項4または5記載の放射電磁波抑制電線。
- 上記磁性体が、上記強磁性体材料の混合比20〜60vol%である請求項4〜6いずれか記載の放射電磁波抑制電線。
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- 2004-02-16 JP JP2004038460A patent/JP2005228694A/ja active Pending
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