以下、本発明が適用された液体カートリッジ、液体吐出カートリッジ、液体吐出装置及び液体吐出方法について、図面を参照して説明する。図1に示すインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインク等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。ここでは、例えば医療用撮影装置等の入力装置で得られた医療用画像情報を同一色の記録液で記録するプリンタ装置1について説明する。
このプリンタ装置1は、図2及び図3に示すように、記録紙Pに対して画像や文字等を記録する記録液であるインク2を吐出するインクジェットプリントヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジと記す。)3と、このヘッドカートリッジ3を装着するプリンタ本体4とを備える。プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ3がプリンタ本体4に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ3に対してインク供給源となり、インク2を収容する液体カートリッジであるインクカートリッジ11を有する。また、プリンタ本体4に対して着脱可能なヘッドカートリッジ3と、ヘッドカートリッジ3に対して着脱可能なインクカートリッジ11とは消耗品として交換可能になっている。
このようなプリンタ装置1は、記録紙Pを積層して収納するトレイ55aをプリンタ本体4の前面底面側に設けられたトレイ装着部5に装着することにより、トレイ55aに収納されている記録紙Pをプリンタ本体4内に給紙できる。トレイ55aは、プリンタ本体4の前面のトレイ装着部5に装着されると、給排紙機構54により記録紙Pが給紙口55からプリンタ本体4の背面側に給紙される。プリンタ本体4の背面側に送られた記録紙Pは、反転ローラ83により走行方向が反転され、往路の上側をプリンタ本体4の背面側から前面側に送られる。プリンタ本体4の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体4の前面に設けられた排紙口56より排紙されるまでに、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置69より入力された文字データや画像データに応じた印刷データが文字や画像として印刷される。
記録液となるインク2は、色素となる水溶性染料や、各種顔料等といった着色剤と、この着色剤を分散させる溶媒等を混合したものからなる。プリンタ装置1では、同一色で濃度の異なる複数のインク2、例えばブラックの着色剤を用い黒色のインクであり、着色剤の濃度が異なる複数のブラックインク2a、2b、2c、2d(以下、ブラックインク2)を用いる。
ブラックインク2aは、着色剤の含有量が最も少なく、最も着色剤の濃度が薄い、即ち記録紙Pに着弾して定着した色の濃度(以下、印画濃度という)が最も薄い。ブラックインク2bは、ブラックインク2aの次に着色剤の濃度が薄い、即ちブラックインク2aよりも着色剤の濃度及び印画濃度が濃く、他のブラックインク2c、2dよりも着色剤の濃度が薄い。ブラックインク2cは、ブラックインク2bの次に着色剤の濃度が薄い、即ちブラックインク2bよりも着色剤の濃度及び印画濃度が濃く、ブラックインク2dよりも着色剤の濃度が薄い。ブラックインク2dは、着色剤の含有量が最も多く、最も着色剤の濃度が濃い、即ち印画濃度が最も濃い。このようにブラックインク2は、同一色で、印画濃度が異なり、この印画濃度の濃度が複数の段階になっている。具体的には、上述したようブラックインク2a、2b、2c、2dは、着色剤の濃度がそれぞれ異なるため、印画濃度が4段階となっている。
この複数のブラックインク2a,2b,2c,2dは、ブラックインク2を収容するそれぞれのインクカートリッジ11a、11b、11c、11dに収容される。プリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ3にインクカートリッジ11a、11b、11c、11dを装着する際、例えば着色剤の濃度が薄いブラックインク2aを収容するインクカートリッジ11aを記録紙Pの搬送方向の最も上流側に配置し、次に下流側に向かって、ブラックインク2aの次に着色剤の濃度が薄いブラックインク2bを収容するインクカートリッジ11bを配置し、次に着色剤の濃度が薄いブラックインク2cを収容するインクカートリッジ11cを配置し、最も上流側に最も濃度の濃いブラックインク2dを収容するインクカートリッジ11dを配置する。
ブラックインク2に用いられる着色剤としては、以下に示す一般的に用いられる染料、顔料又は染料と顔料とを混合したものであり、これらを水性の溶媒に溶解若しくは分散させたものである。特に、有機性の染料や顔料を用いることが好ましい。このような有機性の染料や顔料は、ブラックインク2の印画濃度があざやかになる。
具体的に染料としては、酸性染料、直接染料、反応性染料、食用染料等があり、これらの他に塩基性染料、分散染料、建染染料、及び可溶性建染染料を用いることもできる。また、これらの染料に限定されず、一般にプリンタ装置に用いられる各種染料を用いることができる。
ブラック系の酸性染料としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同7、同24、同26、同29、同31、同48、同50、同51、同52、同58、同60、同62、同63、同64、同67、同72、同76、同77、同94、同107、同108、同109、同110、同112、同115、同118、同119、同121、同122、同131、同132、同139、同140、同155、同156、同157、同158、同159、同191等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
ブラック系の直接染料としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同56、同62、同71、同74、同75、同77、同94、同105、同106、同107、同108、同112、同113、同117、同118、同132、同133、同146、同154、同168等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
ブラック系の反応性染料としては、C.I.リアクティブブラック1、同3、同4、同5、同6、同8、同9、同10、同12、同13、同14、同18等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
ブラック系の食用染料としては、C.I.フードブラック2等が挙げられる。
ブラックインク2に用いられる顔料としては、無機顔料や有機顔料等の一般的な短量を用いることができる。無機顔料としては、例えば酸化チタン及び酸化鉄に、コンタクト法やファーネル法、サーマル法等の方法によって製造したカーボンブラックを加えたもの等がある。また、有機顔料としては、例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含むアゾ顔料、フタシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等の染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等がある。
顔料は、アルカリ溶液中に分散したものを用いる。アルカリ溶液中に顔料を分散させたものとしては、例えば、カラー系の顔料を分散剤でアルカリ溶液中に分散させたものやカラー系の顔料の表面に官能基を付与する処理を行ってアルカリ溶液中に分散させたもの等がある。
具体的に、顔料としては、次のようなものがある。黒色系のものとしては、例えばカーボンブラックおよびC.I.ピグメントブラック1が挙げられる。また、その他に、上述した顔料の表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の加工顔料等も使用できる。顔料としては、平均粒径が25〜1000nm、好ましくは20〜250nmに調製したものを用いると、分散性がよい。
アルカリ溶液としては、水に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール等を加えた溶液を用いる。
分散剤としては、例えばスチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、アクリル−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等が挙げられる。
以上に挙げた染料等を分散させる溶媒としては、例えば低粘度、取り扱いが容易、低コスト、無臭等といった特性を満たす水等を用いる。また、ブラックインク2の溶媒としては、ブラックインク2中に不要なイオンの混入を防止するたに、例えばイオン交換水等を用いることもできる。
また、ブラックインク2には、水やイオン交換水等といった溶媒の他に、例えば脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの誘導体等といった水溶性有機溶剤も溶媒として含有させる。
具体的に、脂肪族一価アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。以上に挙げた脂肪族一価アルコールを溶媒として用いた場合、インク2の表面張力を適切にでき、記録紙P等に対する浸透性、ドット形成性、印刷された画像の乾燥性に優れたインクが得られる。そして、この場合、脂肪族一価アルコールのうち、エチルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等をインク2の溶媒として用いることで、上述した特性の優れたインクが得られる。
脂肪族多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、チオジグリコール等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
脂肪族多価アルコールの誘導体としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル等の上述した脂肪族多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エチレングリコールジアセテート等の上述した脂肪族多価アルコールの低級カルボン酸エステル類等を挙げることができる。以上に挙げた脂肪族多価アルコール及びその誘導体をブラックインク2の溶媒として用いた場合、ブラックインク2を乾きにくくさせ、ブラックインク2の氷点を低くできることから、ブラックインク2を長期保存したときの物性の変化を抑え、且つ乾いたブラックインク2でノズル44aが目詰まりを起こすことを抑えることが可能になる。
したがって、染料等を分散させる溶媒として、水等の他に、それぞれが特有の性質を有する脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの誘導体等のうちの一種又は複数種を混合して用いることで、目的や用途にあったブラックインク2を得ることができる。
また、ブラックインク2には、脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール及びその誘導体等の他に、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、ケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、γ―ブチルラクトン、グリセリン、1.2.6−ヘキサントリオール等の3価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1.3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物等のうち一種又は複数種を混合して添加してもよい。これにより、ブラックインク2では、上述した諸特性の向上を図ることが可能になる。
また、ブラックインク2には、低表面張力を有するグリコールエーテル類を含有させてもよい。ブラックインク2に、低表面張力を有するグリコールエーテル類を含有させることによって、ブラックインク2全体の表面張力が低くなり、浸透性が向上する。ブラックインク2に用いるグリコールエーテル類としては、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメタルエーテル、トリエチレングリコールノモブチルエーテル等がある。
ブラックインク2には、上述した染料、溶媒、界面活性剤等の他に、例えば粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、防かび剤等を添加させることも可能である。具体的に、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤等としては、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、アラビアゴム等の天然ゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらのうちの一種以上を添加させることも可能である。また、pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカリ金属の水酸化物或いはアミン類も用いることができる。
また、防腐剤、防錆剤、防かび剤等としては、例えば安息香酸、ペタンクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリム、デビドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を用いることができる。さらに消泡剤や、尿素などを含有することができる。なお、上述した溶媒や粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤等は、着色剤にブラックを用いた場合だけではなく、他のイエロー、マゼンタ、シアン等にも用いることができる。
また、上述したブラックインク2には、界面活性剤が含有されている。含有させる界面活性剤としては、例えばノニオン系界面活性剤を用いる。ノニオン系界面活性剤は、各ブラックインク2の濡れ性を良好し、ブラックインク2を記録紙Pの厚み方向に速やかに浸透させるのに有効である。したがって、ブラックインク2では、ノニオン系界面活性剤を含有させて記録紙Pに対する濡れ性が良くすることによって、各ブラックインク2a,2b,2c,2dの吐出量が少なくても、記録紙Pの厚み方向及び記録紙Pの面方向に適切に広がるようになり、印画濃度が薄くなりすぎたりすることが抑えられる。また、ノニオン系界面活性剤は、イオン性の界面活性剤と比べてブラックインク2a,2b,2c,2dが泡立つことを抑えることができる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。また、ブラックインク2には、ノニオン系界面活性剤の他に、アセチレングリコール系界面活性剤を加えると、ブラックインク2の濡れ性が向上する。
ブラックインク2には、例えば着色剤の濃度、即ち印画濃度毎に液体全体に対する界面活性剤の含有量が異ならせて含有させ、この界面活性剤の含有量によって記録紙Pに対する浸透性が異なるようにする。ブラックインク2では、印画濃度毎に記録紙Pに対する浸透性を変えることによって、記録紙P上で隣接するブラックインク2同士が混じり合わないようする。隣接するブラックインク2同士が混じり合い原因としては、隣接するブラックインク2の境界においてブラックインク2に含有されている着色剤が拡散することによって起きるものであり、着色剤の濃度の濃いブラックインク2から着色剤の濃度の薄いブラックインク2に向かって拡散する現象の方が大きく、濃度差が大きいほど境界において目立ち易くなる。
そこで、ブラックインク2では、印画濃度の濃いものの記録紙Pに対する浸透性が低くし、印画濃度の薄いものの記録紙Pに対する浸透性を高くなるように界面活性剤の含有量を調整する。これにより、印画濃度の異なるブラックインク2の境界において、印画濃度の濃いものが印画濃度の薄いもの側へと拡散することを抑えた。ブラックインク2a,2b,2c,2dでは、具体的に、次のように記録紙Pに対する浸透性を界面活性剤の含有量によって調製した。
例えば、上述したブラックインク2a,2b,2c,2dのように、各ブラックインク2a,2b,2c,2dの印画濃度がそれぞれ異なっている、即ち印画濃度が4段階となっている場合、最も印画濃度の濃いブラックインク2dの記録紙Pに対する浸透性が、ブラックインク2dの印画濃度よりも薄い印画濃度を有するブラックインク2a、2b、2cの浸透性よりも低くなるように、ブラックインク2dに含有させる界面活性剤をブラックインク2a、2b、2cの含有量よりも少なくする。ブラックインク2dの浸透性を他のブラックインク2b、2c、2dの浸透性よりも低くなるようにすることによって、記録紙P上の印画濃度の濃いブラックインク2dと、印画濃度の薄いブラックインク2a、2b、2cとの境界において、ブラックインク2dが他のブラックインク2a、2b、2c側に浸透する大きさよりも、ブラックインク2a、2b、2cがブラックインク2d側に浸透する大きさの方が大きくなる。これにより、ブラックインク2dとブラックインク2a、2b、2cとの境界では、濃度の濃いブラックインク2dが境界を越えて、ブラックインク2a、2b、2c側に拡散することが抑えられ、境界においてブラックインク2a,2b,2c,2dが混じり合って、滲んでしまうことが抑制される。
また、ブラックインク2cと、このブラックインク2cよりも印画濃度の薄いブラックインク2a、2bとの境界においても、ブラックインク2cの浸透性をブラックインク2a、2bの浸透性よりも低くすることによって、ブラックインク2cがブラックインク2a、2b側に拡散することが抑えられ、滲んでしまうことが抑制される。また、ブラックインク2bと、このブラックインク2bよりも印画濃度の薄いブラックインク2aとの境界においても、ブラックインク2bの浸透性をブラックインク2aの浸透性よりも低くすることによって、ブラックインク2bがブラックインク2b側に拡散することが抑えられ、滲んでしまうことが抑制される。
したがって、各ブラックインク2a,2b,2c,2dの印画濃度が異なる場合は、印画濃度が濃くなるにしたがって、記録紙Pに対する浸透性を低くすることによって、各インク同士の境界におけるインクの拡散を抑えることができるため、印画濃度が濃い順、即ちブラックインク2a,2b,2c,2dの順に、記録紙Pに対する浸透性を低くしていく。
以上では、ブラックインク2a、2b、2c、2dの印画濃度がすべて異なっていたが、最も印画濃度の薄いブラックインク2a以外の他のブラックインク2b、2c、2dにおいて、少なくとも1つのブラックインクの印画濃度が他のブラックインクの印画濃度と異なっている、即ちブラックインク2b、2c、2dの印画濃度が2段階以上となっていてもよい。この場合では、ブラックインク2a、2b、2c、2dは、3段階以上の印画濃度から構成されている。また、ブラックインク2b、2c、2dは、2段階以上の印画濃度毎に浸透性が異なっていればよい。
具体的に、ブラックインク2a、2b、2c、2dを3段階の濃度に調製する場合、ブラックインク2aの印画濃度が最も薄くなるように着色剤の濃度を調製し、次にブラックインク2b、2cの印画濃度をブラックインク2aより濃く、且つブラックインク2bとブラックインク2cの印画濃度を等しくなるように着色剤の濃度を調製し、ブラックインク2dの印画濃度が最も濃くなるように着色剤の濃度を調製する。印画濃度を3段階に調製したブラックインク2a、2b、2c、2dを次のようにして記録紙Pに対する浸透性を調製する。ブラックインク2のうち、印画濃度の最も薄いブラックインク2aの浸透性を最も高くし、印画濃度の最も濃いブラックインク2dの浸透性を最も低くして、他のブラックインク2b、2cの浸透性をブラックインク2aよりも低く、ブラックインク2dよりも高くして、それぞれが同一の浸透性となるようにし、印画濃度の最も濃いブラックインク2dの浸透性を最も低くする。これにより、各ブラックインク2a,2b,2cと、ブラックインク2dとの境界において、印画濃度の濃いブラックインク2dが印画濃度の薄いブラックインク2a及びブラックインク2b、2c側に拡散することが抑えられ、滲みが抑制される。同様に、ブラックインク2aと、ブラックインク2b、2cとの境界において、印画濃度の濃いブラックインク2b、2cが印画濃度の薄いブラックインク2a側に拡散することが抑えられ、滲みが抑制される。また、ブラックインク2bと、ブラックインク2cは、ブラックインク2cの浸透性が同一であっても、ブラックインク2bとブラックインク2cの印画濃度が等しいため、境界において互いに拡散しても滲みが目立たない。また、ブラックインク2bの印画濃度と、ブラックインク2cの印画濃度との差が異なるが、印画濃度の差が小さい場合、浸透性が同一となるように調製した場合であっても、滲みが目立たない。
また、上述した印画濃度が異なる複数のブラックインク2a,2b,2c,2dのうち、ブラックインク2aは、最も着色剤の濃度が濃いブラックインク2dの1/6以下の着色剤の濃度とする。この場合では、次のように各ブラックインク2の記録紙Pに対する浸透性を調製する。着色剤の濃度が最も濃いブラックインク2dの浸透性を最も低くし、着色剤の濃度が薄くなるにしたがって浸透性が高くなるようにして、最も着色剤の濃度の薄いブラックインク2aの浸透性を最も高くする。これにより、印画濃度差が大きいブラックインク2aと、ブラックインク2bとの境界において、ブラックインク2dがブラックインク2a側に浸透することが抑えられる。したがって、印画濃度の濃いブラックインク2dと、印画濃度の薄いブラックインク2aとの境界における滲みが抑えられる共に、印画濃度が1/6以下であるブラックインク2aの印画濃度が薄くなるため、ざらつきを低減でき、画質を向上させることができる。一方、ブラックインク2aの印画濃度が1/6以上である場合、滲みは抑えられるが、ざらつきが目立ってしまう場合がある。
また、最も着色剤の濃度が薄いブラックインク2aの着色剤の濃度をブラックインク2dの1/8以下の着色剤の濃度にした場合、ブラックインク2dの浸透性を最も低くし、ブラックインク2aの浸透性を最も高くすることによって、ブラックインク2dがブラックインク2a側に拡散することが抑えられ、滲みが抑制される。これにより、印画濃度が1/8以下であるブラックインク2aがほとんど視認することが困難な程の白色であるためざらつきを更に低減させることができ、且つ滲みを抑制される。一方、ブラックインク2aの印画濃度が1/8より濃い場合、十分にざらつきを抑えることができなくなってしまう。
以上のような構成の各ブラックインク2a,2b,2c,2dは、次のように調製される。着色剤に染料等を用いた溶解系の各ブラックインク2a,2b,2c,2dを調製する場合、上述した染料からなる着色剤と、溶媒と、界面活性剤とを着色剤の濃度、及び界面活性剤の含有量を適宜、調節して、20℃における蒸気圧が0.1mmHg以下で表面張力35mN/m以下であるグリコールエーテル類とを混合し、40℃〜80℃に加熱ながらスクリュー等で攪拌、分散させることで調製できる。
また、着色剤に顔料などを用いた分散系のブラックインク2a,2b,2c,2dの場合、従来から用いられている顔料微細分散法、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシュルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジライザー、パールミル、湿式ジェットミル等といった分散装置等を用い、顔料及び界面活性剤を溶媒に分散させることで調製できる。このようにして調製されたインク2は、例えばゴミ、粗大粒子、混裁物を除去するために、フィルタを用いて加圧濾過処理、または減圧濾過処理を少なくとも1回、あるいは遠心分離機を用いて遠心分離処理を少なくとも1回、あるいはそれらを組み合わせた処理が施される。
そして、以上のように調製されたブラックインク2a,2b,2c,2dは、図2及び図3に示すように、印画濃度の最も薄いブラックインク2aがインクカートリッジ11aに収容され、次に印画濃度の薄いブラックインク2bがインクカートリッジ11bに収容され、次に印画濃度の薄いブラックインク2cがインクカートリッジ11cに収容され、最も印画濃度の濃いブラックインク2dがインクカートリッジ11dに収容される。
次に、上述したプリンタ装置1を構成するプリンタ本体4に対して着脱可能であり、インク2を吐出する吐出手段となるヘッドカートリッジ3と、このヘッドカートリッジ3に着脱可能であり、インク2が収容されたインクカートリッジ11a,11b,11c,11dとについて図面を参照して説明する。
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ3は、図1に示すように、プリンタ本体4の上面側から、すなわち図1中矢印A方向から装着され、図13に示す給排紙機構54により走行する記録紙Pに対してブラックインク2を吐出して印刷を行う。
ヘッドカートリッジ3は、上述したブラックインク2を、例えば電気熱変換式又は電気機械変換式等を用いた圧力発生手段が発生した圧力により微細に粒子化して吐出し、記録紙P等といった対象物の主面に液滴状態にした各ブラックインク2a,2b,2c,2dを吹き付ける。具体的に、ヘッドカートリッジ3は、図2及び図3に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、各ブラックインク2a,2b,2c,2dが充填された容器であるインクカートリッジ11a,11b,11c,11dが装着される。なお、以下では、インクカートリッジ11a,11b,11c,11dを単にインクカートリッジ11ともいう。
ヘッドカートリッジ3に着脱可能なインクカートリッジ11は、強度や耐インク性を有するポリプロピレン等の樹脂材料等を射出成形することにより成形されるカートリッジ容器12を有している。このカートリッジ容器12は、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジ容器12には、ブラックインク2を収容するインク収容部13と、インク収容部13からヘッドカートリッジ3のカートリッジ本体21にブラックインク2を供給するインク供給部14と、外部よりインク収容部13内に空気を取り込む外部連通孔15と、外部連通孔15より取り込まれた空気をインク収容部13内に導入する空気導入路16と、外部連通孔15と空気導入路16との間でブラックインク2を一時的に貯留する貯留部17と、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に係止するための係止突部18及び係合段部19とが設けられている。
インク収容部13は、気密性の高い材料によりブラックインク2を収容するための空間を形成している。インク収容部13は、略矩形に形成され、長手方向の寸法が使用する記録紙Pの幅方向、すなわち図3中に示す記録紙Pの幅方向Wの寸法と略同じ寸法となるように形成されている。
インク供給部14は、インク収容部13の下側略中央部に設けられている。このインク供給部14は、インク収容部13と連通した略突形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ3の接続部26に嵌合されることにより、インクカートリッジ2のカートリッジ容器12とヘッドカートリッジ3のカートリッジ本体21を接続する。
インク供給部14は、図4(A)及び図4(B)に示すように、インクカートリッジ11の底面14aにブラックインク2を供給する供給口14bが設けられ、この底面14aに、供給口14bを開閉する弁14cと、弁14cを供給口14bの閉塞する方向に付勢するコイルバネ14dと、弁14cを開閉する開閉ピン14eとを備えている。ヘッドカートリッジ3の接続部26に接続されるブラックインク2を供給する供給口14bは、図4(A)に示すように、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ3のカートリッジ本体21に装着される前の段階において、付勢部材であるコイルバネ14dの付勢力により弁14cが供給口14bを閉じる方向に付勢され閉塞されている。そして、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されると、図4(B)に示すように、開閉ピン14eがヘッドカートリッジ3を構成するカートリッジ本体21の接続部26の上部によりコイルバネ14dの付勢方向とは反対の方向、図4(B)中矢印B方向に押し上げられる。これにより、押し上げられた開閉ピン14eは、コイルバネ14dの付勢力に抗して弁14cを押し上げて供給口14bを開放する。このようにして、インクカートリッジ11のインク供給部14は、ヘッドカートリッジ3の接続部26に接続され、インク収容部13とインク溜め部31とを連通し、インク溜め部31へのブラックインク2の供給が可能な状態となる。
また、インクカートリッジ11をヘッドカートリッジ3側の接続部26から引き抜くとき、すなわちインクカートリッジ11をヘッドカートリッジ3の装着部22より取り外すときは、弁14cの開閉ピン14eによる押し上げ状態が解除され、弁14cがコイルバネ14dの付勢方向、即ち図4(B)中矢印B方向と反対の方向に移動して供給口14bを閉塞する。これにより、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21に装着する直前にインク供給部14の先端部が下方を向いている状態であってもインク収容部13内のブラックインク2が漏れることを防止することができる。また、インクカートリッジ11をカートリッジ本体21から引き抜いたときには、直ちに弁14cが供給口14bを閉塞するので、インク供給部14の先端からブラックインク2が漏れることを防止できる。
外部連通孔15は、図3に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部13に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ3の装着部22に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、装着部22への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジ容器12の上面、ここでは上面略中央に設けられている。外部連通孔15は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されてインク収容部13からカートリッジ本体21側にブラックインク2が流下した際に、インク収容部13内のブラックインク2が減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
空気導入路16は、インク収容部13と外部連通孔15とを連通し、外部連通孔15より取り込まれた空気をインク収容部13内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着された際に、ヘッドカートリッジ3のカートリッジ本体21にブラックインク2が供給されてインク収容部13内のブラックインク2が減少し内部が減圧状態となっても、インク収容部13には、空気導入路16によりインク収容部13に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてブラックインク2をカートリッジ本体21に適切に供給することができる。
貯留部17は、外部連通孔15と空気導入路16との間に設けられ、インク収容部13に連通する空気導入路16よりブラックインク2が漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにブラックインク2を一時的に貯留する。この貯留部17は、長い方の対角線をインク収容部13の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部13の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路16を設けるようにし、インク収容部13より進入したブラックインク2を再度インク収容部13に戻すことができるようにしている。また、貯留部17は、短い方の対角線上の最も下側の頂部に外部連通孔15を設けるようにし、インク収容部13より進入したブラックインク2が外部連通孔15より外部に漏れにくくする。
係止突部18は、インクカートリッジ11の短辺の一方の側面に設けられた突部であり、ヘッドカートリッジ3のカートリッジ本体21のラッチレバー24に形成された係合孔24aと係合する。この係止突部18は、上面がインク収容部13の側面に対して略直交するような平面で形成されると共に、下面は側面から上面に向かって傾斜するように形成されている。
係合段部19は、インクカートリッジ11の係止突部18が設けられた側面の反対側の側面の上部に設けられている。係合段部19は、カートリッジ容器12の上面と一端を接する傾斜面19aと、この傾斜面19aの他端と他方の側面と連続し、上面と略平行な平面19bとからなる。インクカートリッジ11は、係合段部19が設けられていることで、平面19bが設けられた側面の高さがカートリッジ容器12の上面より1段低くなるように形成され、この段部でカートリッジ本体21の係合片23と係合する。係合段部19は、ヘッドカートリッジ3の装着部22に挿入されるとき、挿入端側の側面に設けられ、ヘッドカートリッジ3の装着部22側の係合片23に係合することで、インクカートリッジ11を装着部22に装着する際の回動支点部となる。
以上のような構成のインクカートリッジ11は、上述した構成の他に、例えばインク収容部13内のブラックインク2の残量を検出するための残量検出部や、インクカートリッジ11a,11b,11c,11dを識別するための識別部等を備えている。
次に、以上のように構成されたブラックインク2a,2b,2c,2dを収納したインクカートリッジ11a,11b,11c,11dが装着されるヘッドカートリッジ3について説明する。
カートリッジ本体21は、図2及び図3に示すように、インクカートリッジ11が装着される装着部22a,22b,22c,22d(以下、全体を示すときには単に装着部22ともいう。)と、インクカートリッジ11を固定する係合片23及びラッチレバー24と、インクカートリッジ11を取り出し方向に付勢する付勢部材25と、インク供給部14と接続されてブラックインク2が供給される接続部26と、ブラックインク2を吐出するヘッドチップ27と、ヘッドチップ27を保護するヘッドキャップ28とを有している。
インクカートリッジ11が装着される装着部22は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは4本のインクカートリッジ11が記録紙Pの幅方向と略直交方向、すなわち記録紙Pの走行方向に並んで収納される。装着部22は、インクカートリッジ11が収納されることから、インクカートリッジ11と同様に印刷幅の方向に長く設けられている。カートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が収納装着される。
装着部22は、図2に示すように、インクカートリッジ11が装着される部分であり、ブラックインク2a用のインクカートリッジ11aが装着される部分を装着部22aとし、ブラックインク2bのインクカートリッジ11bが装着される部分を装着部22bとし、ブラックインク2cのインクカートリッジ11cが装着される部分を装着部22cとし、ブラックインク2dのインクカートリッジ11dが装着される部分を装着部22dとし、各装着部22a,22b,22c,22dは、隔壁22eによりそれぞれ区画されている。
また、インクカートリッジ11が装着される装着部22の開口端には、図3に示すように、係合片23が設けられている。この係合片23は、装着部22の長手方向の一端縁に設けられており、インクカートリッジ11の係合段部19と係合する。インクカートリッジ11は、インクカートリッジ11の係合段部19側を挿入端として斜めに装着部22内に挿入し、係合段部19と係合片23との係合位置を回動支点として、インクカートリッジ11の係合段部19が設けられていない側を装着部22側に回動させるようにして装着部22に装着することができる。これによって、インクカートリッジ11は、装着部22に容易に装着することができる。
ラッチレバー24は、板バネを折曲して形成されるものであり、装着部22の係合片23に対して反対側の側面、すなわち長手方向の他端の側面に設けられている。ラッチレバー24は、基端部が装着部22を構成する長手方向の他端の側面の底面側に一体的に設けられ、先端側がこの側面に対して近接離間する方向に弾性変位するように形成され、先端側に係合孔24aが形成されている。ラッチレバー24は、インクカートリッジ11が装着部22に装着されると同時に、弾性変位し、係合孔24aがインクカートリッジ11の係止突部18と係合し、装着部22に装着されたインクカートリッジ11が装着部22より脱落しないようにする。
付勢部材25は、インクカートリッジ11の係合段部19に対応する側面側の底面上にインクカートリッジ11を取り外す方向に付勢する板バネを折曲して設けられる。付勢部材25は、折曲することにより形成された頂部を有し、底面に対して近接離間する方向に弾性変位し、頂部でインクカートリッジ11の底面を押圧し、装着部22に装着されているインクカートリッジ11を装着部22より取り外す方向に付勢するイジェクト部材である。付勢部材25は、ラッチレバー24の係合孔24aと係止突部18との係合状態が解除されたとき、装着部23よりインクカートリッジ11を排出する。
各装着部22a,22b,22c,22dの長手方向略中央には、インクカートリッジ11a,11b,11c,11dが装着部22a,22b,22c,22dに装着されたとき、インクカートリッジ11a,11b,11c,11dのインク供給部14が接続される接続部26が設けられている。この接続部26は、装着部22に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部14からカートリッジ本体21の底面に設けられた各ブラックインク2a,2b,2c,2dを吐出するヘッドチップ27に各ブラックインク2a,2b,2c,2dを供給するインク供給路となる。
具体的に、接続部26は、図5に示すように、インクカートリッジ11から供給されるブラックインク2を溜めるインク溜め部31と、接続部26に連結されるインク供給部14をシールするシール部材32と、ブラックインク2内の不純物を除去するフィルタ33と、ヘッドチップ27側への供給路を開閉する弁機構34とを有している。
インク溜め部31は、インク供給部14と接続されインクカートリッジ11から供給されるブラックインク2を溜める空間部である。シール部材32は、インク溜め部31の上端に設けられた部材であり、インクカートリッジ11のインク供給部14が接続部26のインク溜め部31に接続されるとき、ブラックインク2が外部に漏れないようインク溜め部31とインク供給部14との間を密閉する。フィルタ33は、インクカートリッジ11の着脱時等にブラックインク2に混入してしまった塵や埃等のごみを取り除くものであり、インク溜め部31よりも下流に設けられている。
弁機構34は、図6(A)及び図6(B)に示すように、インク溜め部31からブラックインク2が供給されるインク流入路34aと、インク流入路34aからブラックインク2が流入するインク室34bと、インク室34bからブラックインク2を流出するインク流出路34cと、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側との間に設けられた開口部34dと、開口部34dを開閉する弁34eと、弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する付勢部材34fと、付勢部材34fの強さを調節する負圧調整ネジ34gと、弁34eと接続される弁シャフト34hと、弁シャフト34hと接続されるダイアフラム34iとを有する。
インク流入路34aは、インク溜め部31を介してインクカートリッジ11のインク収容部13内のブラックインク2をヘッドチップ27に供給可能にインク収容部13と連結する供給路である。インク流入路34aは、インク溜め部31の底面側からインク室34bまで設けられている。インク室34bは、インク流入路34a、インク流出路34c及び開口部34dと一体となって形成された略直方体をなす空間部であり、インク流入路34aからブラックインク2が流入し、開口部34dを介してインク流出路34cからブラックインク2を流出する。インク流出路34cは、インク室34bから開口部34dを介してブラックインク2が供給されて、更にヘッドチップ27と連結された供給路である。インク流出路34cは、インク室34bの底面側からヘッドチップ27まで延在されている。
弁34eは、開口部34dを閉塞してインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分割する弁であり、インク室34b内に配設される。弁34eは、付勢部材34fの付勢力と、弁シャフト34hを介して接続されたダイアフラム34iの復元力とにより、インク流出路34c側のブラックインク2の負圧によって上下に移動する。弁34eは、下端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを分離するように開口部34dを閉塞し、インク流出路34cへのブラックインク2の供給を遮断する。弁34eは、付勢部材34fの付勢力に抗して上端に位置するとき、インク室34bをインク流入路34a側とインク流出路34c側とを遮断せずに、ヘッドチップ27へブラックインク2の供給を可能とする。なお、弁34eを構成する材質は、その種類を問わないが、高い閉塞性を確保するため例えばゴム弾性体、いわゆるエラストマー等により形成される。
付勢部材34fは、例えば圧縮コイルバネ等であり、弁34eの上面とインク室34bの上面との間で負圧調整ネジ34gと弁34eとを接続し、付勢力により弁34eを開口部34dの閉塞する方向に付勢する。負圧調整ネジ34gは、付勢部材34fの付勢力を調整するネジであり、負圧調整ネジ34gを調整することで付勢部材34fの付勢力を調整することができるようにしている。これにより、負圧調整ネジ34gは、詳細は後述するが開口部34dを開閉する弁34eを動作させるブラックインク2の負圧を調整することができる。
弁シャフト34hは、一端に接続された弁34eと、他端に接続されたダイアフラム34iとを連結して運動するように設けられたシャフトである。ダイアフラム34iは、弁シャフト34hの他端に接続された薄い弾性板である。このダイアフラム34iは、インク室34bのインク流出路34c側の一主面と、外気と接する他主面とからなり、大気圧とブラックインク2の負圧により外気側とインク流出路34c側とに弾性変位する。
以上のような弁機構34では、図6(A)に示すように、弁34eが付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞するように押圧されている。そして、ヘッドチップ27からブラックインク2が吐出された際に、開口部34dで分割されたインク流出路34c側のインク室34bのブラックインク2の負圧が高まると、図6(B)に示すように、ブラックインク2の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側と間の開口部34dが開放され、ブラックインク2がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給される。そして、ブラックインク2の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、ブラックインク2を吐出する度にブラックインク2の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
また、この接続部26では、インク収容部13内のブラックインク2がインク室34bに供給されると、インク収容部13内のブラックインク2が減少するが、このとき、空気導入路16から外気がインクカートリッジ11内に入り込む。インクカートリッジ11内に入り込んだ空気は、インクカートリッジ11の上方に送られる。これにより、インク液滴iが後述するノズル44aから吐出される前の状態に戻り、平衡状態となる。このとき、空気導入路16内にブラックインク2がほとんどない状態で平衡状態となる。
ヘッドチップ27は、図5に示すように、カートリッジ本体21の底面に沿って配設されており、接続部26から供給されるインク液滴iを吐出するインク吐出口である後述するノズル44aが各印画濃度毎、記録紙Pの幅方向、すなわち図5中矢印W方向に略ライン状をなすようにされている。
ヘッドキャップ28は、に示すように、ヘッドチップ27を保護するために設けられたカバーであり、印刷動作するときにはヘッドチップ27より取り外される。ヘッドキャップ28は、開閉方向に設けられた溝部28aと、長手方向に設けられヘッドチップ27の吐出面27aに付着した余分なブラックインク2を吸い取る清掃ローラ28bとを有している。ヘッドキャップ28は、開閉動作時にこの溝部28aに沿ってインクカートリッジ11の短手方向、即ち図2中矢印C方向に開閉するようにされており、このとき清掃ローラ28bがヘッドチップ27の吐出面27aに当接しながら回転することで、余分なブラックインク2を吸い取り、ヘッドチップ27の吐出面27aを清掃する。この清掃ローラ28bには、例えば吸水性の高い部材が用いられる。また、ヘッドキャップ28は、印刷動作しないときにはヘッドチップ27内のブラックインク2が乾燥しないようにする。
以上のような構成のヘッドカートリッジ3は、上述した構成の他に、例えばインクカートリッジ11内におけるインク残量を検出する残量検出部や、接続部26にインク供給部14が接続されたときにブラックインク2の有無を検出するインク有無検出部等を備えている。
上述したヘッドチップ27は、図7及び図8に示すように、ベースとなる回路基板41と、記録紙Pの走行方向と略直交方向、すなわち記録紙Pの幅方向に並設された一対の発熱抵抗体42a,42bと、ブラックインク2の漏れを防ぐフィルム43と、ブラックインク2が液滴の状態で吐出されるノズル44aが多数設けられたノズルシート44と、これらに囲まれてブラックインク2が供給される空間であるインク液室45と、インク液室45にイブラックインク2を供給するインク流路46とを有する。
回路基板41は、シリコン等の半導体基板であり、その一主面41aに、一対の発熱抵抗体42a,42bが形成されており、一対の発熱抵抗体42a,42bが回路基板41上の後述する吐出制御部63とそれぞれ接続されている。この吐出制御部63は、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等で構成されている電気回路である。
一対の発熱抵抗体42a,42bは、吐出制御部63から供給されるパルス電流で発熱し、インク液室45内のブラックインク2を加熱して内圧を高める、すなわち圧力発生素子である。そして、一対の発熱抵抗体42a,42bにより加熱されたブラックインク2は、後述するノズルシート44に設けられたノズル44aから液滴の状態で吐出する。
フィルム43は、回路基板41の一主面41aに積層されている。フィルム43は、例えば露光硬化型の程度のドライフィルムレジストからなり、回路基板41の一主面41aの略全体に積層された後、フォトリソグラフプロセスによって不要部分が除去され、一対の発熱抵抗体42a,42bを略凹状に囲むように形成されている。フィルム43においては、一対の発熱抵抗体42a,42bそれぞれを囲む部分がインク液室45の一部を形成する。
ノズルシート44は、インク液滴iを吐出させるためのノズル44aが形成された厚みが10μm〜15μm程度のシート状部材であり、フィルム43の回路基板41と反対側の面上に積層されている。ノズル44aは、ノズルシート44に円形状に開口された直径が15μm〜18μm程度の微小孔であり、一対の発熱抵抗体42a,42bと対向するように配置されている。なお、ノズルシート44はインク液室45の一部を構成する。
インク液室45は、回路基板41、一対の発熱抵抗体42a,42b、フィルム43及びノズルシート44に囲まれた空間部であり、インク流路46から供給されたブラックインク2を貯留する空間である。インク液室45内のブラックインク2は、一対の発熱抵抗体42a,42bにより加熱され、内圧が上昇される。
インク流路46は、接続部26のインク流出路34cと接続されており、接続部26に接続されたインクカートリッジ11からブラックインク2が供給され、このインク流路46に連通する各インク液室45にブラックインク2を送り込む流路を形成する。すなわち、インク流路46と接続部26とが連通されている。これにより、インクカートリッジ11から供給されるブラックインク2がインク流路46に流れ込み、インク液室45内に充填される。
上述した1個のヘッドチップ27には、インク液室45毎に一対の発熱抵抗体42a,42bが設けられ、このような一対の発熱抵抗体42a,42bが設けられたインク液室45を各色インクカートリッジ11毎に100個〜5000個程度備えている。そして、ヘッドチップ27においては、プリンタ装置1の制御部68からの命令によってこれら一対の発熱抵抗体42a,42bそれぞれを適宜選択して発熱させ、発熱した一対の発熱抵抗体42a,42bに対応するインク液室45内のブラックインク2を、インク液室45に対応するノズル44aから液滴の状態で吐出させる。
すなわち、ヘッドチップ27において、ヘッドチップ27と結合されたインク流路46から供給されたブラックインク2がインク液室45を満たす。そして、一対の発熱抵抗体42a,42bに短時間、例えば1μsec〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、一対の発熱抵抗体42a,42bがそれぞれ急速に発熱し、その結果、一対の発熱抵抗体42a,42bと接する部分のブラックインク2が加熱されて気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のブラックインク2が押圧される(ブラックインク2が沸騰する)。これによって、ノズル44aに接する部分でインク気泡に押圧されたブラックインク2と同等の体積のブラックインク2がインク液滴iとしてノズル44aから吐出されて記録紙P上に着弾される。
このヘッドチップ27では、図8に示すように、1つのインク液室45内に、一対の発熱抵抗体42a,42bが互いに略平行に並設されている。すなわち、1つのインク液室45内に、一対の発熱抵抗体42a,42bを備えるものである。そして、ヘッドチップ27においては、記録紙Pの走行方向と略直交方向、すなわち図11中矢印Wで示す記録紙Pの幅方向に互いに略平行に並設されている一対の発熱抵抗体42a,42bが複数並ぶようにされている。なお、図8では、ノズル44aの位置を1点鎖線で示している。
このように、一対の発熱抵抗体42a,42bは、1つの抵抗体を2つに分割したような形状となり長さが同じで幅が半分になることから、それぞれの抵抗体の抵抗値がほぼ2倍の値になる。これら一対の発熱抵抗体42a,42bにおける抵抗体を直列に接続した場合、2倍程度の抵抗値を有する抵抗体が直列に接続されることとなり、抵抗値は分割する前の4倍程度になる。
ここで、インク液室45内のブラックインク2を沸騰させるためには、一対の発熱抵抗体42a,42bに一定のパルス電流を加えて一対の発熱抵抗体42a,42bを発熱させる必要がある。この沸騰時のエネルギーにより、インク液滴iを吐出させるためである。そして、抵抗値が小さいと、流すパルス電流を大きくする必要があるが、1つの抵抗体を2つに分割したような形状にされた一対の発熱抵抗体42a,42bは抵抗値が高くなっていることから、値の小さなパルス電流で沸騰させることが可能となる。
これにより、ヘッドチップ27では、パルス電流を流すためのトランジスタ等を小さくすることができ、省スペース化を図ることができる。なお、一対の発熱抵抗体42a,42bの厚みを薄く形成すれば抵抗値を更に高くすることができるが、一対の発熱抵抗体42a,42bとして選定される材料や強度(耐久性)等の観点から、一対の発熱抵抗体42a,42bの厚みを薄くするには一定の限界がある。このため、厚みを薄くすることなく、分割することで、一対の発熱抵抗体42a,42bの抵抗値を高くしている。
ところで、インク液室45内のブラックインク2をノズル44aより吐出させる際に、一対の発熱抵抗体42a,42bによってインク液室45内のインクが沸騰するまでの時間、すなわち気泡発生時間が同じになるように一対の発熱抵抗体42a,42bを駆動制御すると、インク液滴iはノズル44aより略真下に吐出される。また、一対の発熱抵抗体42a,42bの気泡発生時間に時間差が発生した場合には、一対の発熱抵抗体42a,42b上で略同時にインク気泡を発生させることが困難になり、一対の発熱抵抗体42a,42bが並んでいる方向の何れか一方にずれてインク液滴iが吐出される。
具体的には、図9に示すように、ヘッドチップ27と結合されたインク流路46によりブラックインク2が供給され、インク液室45内にブラックインク2が満たされる。そして、一対の発熱抵抗体42a,42bに同じ電流値のパルス電流が略同時に流れることで、一対の発熱抵抗体42a,42bが急速に加熱され、その結果、一対の発熱抵抗体42a,42bと接する部分のブラックインク2に気相のインク気泡B1,B2がそれぞれ発生し、このインク気泡B1,B2の膨張によって所定の体積のブラックインク2が押圧される。これによって、ヘッドチップ27においては、図10に示すように、ノズル44aに接する部分でインク気泡B1,B2によって記録紙Pに向かって略垂直に押圧されたブラックインク2と同等の体積のブラックインク2がインク液滴iとしてノズル44aから略真下に吐出され、記録紙P上に着弾される。なお、ここでは、発熱抵抗体42a上にインク気泡B1が形成され、発熱抵抗体42b上にインク気泡B2が形成されるものとして説明する。
また、ヘッドチップ27においては、図11に示すように、一対の発熱抵抗体42a,42bに異なる値のパルス電流を略同時に供給させることで、一対の発熱抵抗体42a,42bと接する部分のブラックインク2に異なる大きさのインク気泡B1,B2がそれぞれ発生し、このインク気泡B1,B2の膨張によって所定の体積のブラックインク2が押圧される。これによって、ヘッドチップ27においては、図12に示すように、ノズル44aに接する部分でインク気泡B1,B2に押圧されたブラックインク2と同等の体積のブラックインク2がインク液滴iとしてノズル44aから図12中矢印Wで示す記録紙Pの幅方向、インク気泡B1,B2のうち小さい体積の方にずれて吐出され、記録紙P上に着弾される。なお、図12には、発熱抵抗体42a上に形成されたインク気泡B1の体積が、発熱抵抗体42b上に形成されたインク気泡B2の体積より大きくなったときを示している。
次に、以上のように構成されたヘッドカートリッジ3が装着されるプリンタ装置1を構成するプリンタ本体4について図面を参照して説明する。
プリンタ本体4は、図1及び図13に示すように、ヘッドカートリッジ3が装着されるヘッドカートリッジ装着部51と、ヘッドカートリッジ3をヘッドカートリッジ装着部51に保持、固定するためのヘッドカートリッジ保持機構52と、ヘッドキャップを開閉するヘッドキャップ開閉機構53と、記録紙Pを給排紙する給排紙機構54と、給排紙機構54に記録紙Pを供給する給紙口55と、給排紙機構54から記録紙Pが出力される排紙口56とを有する。
ヘッドカートリッジ装着部51は、ヘッドカートリッジ3が装着される凹部であり、走行する記録紙にデータ通り印刷を行うため、ヘッドチップ27の吐出面27aと走行する記録紙Pの紙面とが互いに略平行となるようにヘッドカートリッジ3が装着される。ヘッドカートリッジ3は、ヘッドチップ27内のインク詰まり等で交換する必要が生じる場合等があり、インクカートリッジ11程の頻度はないが消耗品であるため、ヘッドカートリッジ装着部51に対して着脱可能にヘッドカートリッジ保持機構52によって保持される。
ヘッドカートリッジ保持機構52は、ヘッドカートリッジ装着部51にヘッドカートリッジ3を着脱可能に保持するための機構であり、ヘッドカートリッジ3に設けられたつまみ52aをプリンタ本体4の係止孔52b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することによってプリンタ本体4に設けられた基準面4aに圧着するようにしてヘッドカートリッジ3を位置決めして保持、固定できるようにする。
ヘッドキャップ開閉機構53は、ヘッドカートリッジ3のヘッドキャップ28を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにヘッドキャップ28を開放してヘッドチップ27が記録紙Pに対して露出するようにし、印刷が終了したときにヘッドキャップ28を閉塞してヘッドチップ27を保護する。
給排紙機構54は、記録紙Pを搬送する駆動部を有しており、給紙口55から供給される記録紙Pをヘッドカートリッジ3のヘッドチップ27まで搬送し、ノズル44aより吐出されたインク液滴iが着弾し、印刷された記録紙Pを排紙口56に搬送して装置外部へ排出する。
給紙口55は、給排紙機構54に記録紙Pを供給する開口部であり、トレイ55a等に複数枚の記録紙Pを積層してストックすることができる。排紙口56は、インク液滴iが着弾し、印刷された記録紙Pを排出する開口部である。
次に、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する図14に示す制御回路61について図面を参照して説明する。
制御回路61は、上述したプリンタ本体4の各駆動機構53,54の駆動制御するプリンタ駆動部62と、各印画濃度のブラックインク2に対応するヘッドチップ27に供給される電流等を制御する吐出制御部63と、各印画濃度のブラックインク2の残量を警告する警告部64と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子65と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)66と、読み出された制御プログラム等を一旦格納し、必要に応じて読み出されるRAM(Random Access Memory)67と、各部の制御を行う制御部68とを有している。
プリンタ駆動部62は、制御部68からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構53を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28を開閉するように、ヘッドキャップ開閉機構を制御する。また、プリンタ駆動部62は、制御部68からの制御信号に基づき、給排紙機構54を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体4の給紙口55から記録紙Pを給紙し、印刷後に排紙口56から記録紙Pを排出するように、給排紙機構を制御する。
吐出制御部63は、図15に示すように、それぞれが抵抗体である一対の発熱抵抗体42a,42bにパルス電流を流すための電源71a,71bと、一対の発熱抵抗体42a,42bと電源71a,71bとの電気的な接続をオン/オフさせるスイッチング素子72a,72b,72cと、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流を制御するための可変抵抗73と、スイッチング素子72b,72cの切り換えを制御する切換制御回路74a,74bと、可変抵抗73の抵抗値を制御する抵抗値制御回路75とを備える電気回路である。
電源71aは、発熱抵抗体42bに接続され、電源71bは、スイッチング素子72cを介して可変抵抗73に接続され、それぞれ電気回路にパルス電流を供給する。なお、電気回路に供給されるパルス電流は、電源71a,71bを電力源としてもよいが、例えば制御部68等から直接供給されるようにすることも可能である。
スイッチング素子72aは、発熱抵抗体42aとグランド76との間に配置され、吐出制御部63全体のオン/オフを制御する。スイッチング素子72bは、一対の発熱抵抗体42a,42bと可変抵抗73との間に接続され、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流を制御する。スイッチング素子72cは、可変抵抗73と電源71b及びグランド76との間に配置され、インク液滴iの吐出方向を制御する。そして、これらスイッチング素子72a,72b,72cは、それぞれオン/オフが切り換えられることで電気回路に供給されるパルス電流を制御する。
可変抵抗73は、抵抗値を可変することで発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値を変化させる。すなわち、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値は、可変抵抗73の抵抗値の大きさによって決まる。
切換制御回路74aは、スイッチング素子72bのオン/オフを切り換えて、可変抵抗73と一対の発熱抵抗体42a,42bとを接続させるか、若しくは可変抵抗73と一対の発熱抵抗体42a,42bとをオフの状態にする。切換制御回路74bは、スイッチング素子72cのオン/オフを切り換えて、電源71bと電気回路との接続のオン/オフを切り換える。
抵抗値制御回路75は、可変抵抗73の抵抗値の大きさを制御し、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の大きさを調節する。
以上のような構成の吐出制御部63では、スイッチング素子72bをオフにして可変抵抗73と一対の発熱抵抗体42a,42bとが接続されていないとき、スイッチング素子72aをオンにすると、電源71aからパルス電流が直列に接続された一対の発熱抵抗体42a,42bに供給される(可変抵抗73には電流が流れない)。このとき、一対の発熱抵抗体42a,42bの抵抗値が略同一である場合には、パルス電流が供給されたときに一対の発熱抵抗体42a,42bが発生する熱量が略同一になる。
この場合、ヘッドチップ27は、図16(A)に示すように、一対の発熱抵抗体42a,42bで発生する熱量が略同一となり、インク気泡B1,B2が発生する時間、すなわち気泡発生時間が略同一になって略同じ体積のインク気泡B1,B2が一対の発熱抵抗体42a,42b上にそれぞれ形成されることから、ブラックインク2の吐出角度が記録紙Pの主面に対して略垂直になり、インク液滴iをノズル44aから略真下に吐出する。
また、図15に示す吐出制御部63では、スイッチング素子72bが一対の発熱抵抗体42a,42bと可変抵抗73との接続をオンにし、スイッチング素子72aをオンにし、スイッチング素子72cをグランド76と接続したときに、図16(B)に示すように、ヘッドチップ27より吐出されるインク液滴iを、吐出方向が図16(B)に示す記録紙Pの幅方向Wの発熱抵抗体42a側に可変された状態で吐出させる。すなわち、スイッチング素子72cがグランドに接続されることで、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値は可変抵抗73の抵抗値に応じて小さくなり、インク気泡B1の体積がインク気泡B2の体積より小さくされた状態でインク気泡B1,B2が一対の発熱抵抗体42a,42b上にそれぞれ形成されることから、ブラックインク2の吐出角度を発熱抵抗体42a側に変化させてインク液滴iをノズル44aから略斜めに吐出する。この吐出制御部63では、発熱抵抗体42bに供給されるパルス電流の電流値は不変であり、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値を変化させている。
この場合、可変抵抗73の抵抗値が大きいと、電源71aからスイッチング素子72cを介してグランド76に流出される電流が小さくなって発熱抵抗体42aに電源71aより供給されるパルス電流の電流値の減少量が小さいことから、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流の差異が小さくなり、一対の発熱抵抗体42a,42bの間で生じる熱量の差異も小さくなり、吐出面27aを基準にしてノズル44aより吐出されたインク液滴iの吐出角度は大きくなる。すなわち、可変抵抗73の抵抗値が大きいほど、ノズル44aより略真下にインク液滴iを吐出したときの着弾点Dに対し、発熱抵抗体42a側でより近い位置に着弾するようにインク液滴iを吐出する。一方、可変抵抗73の抵抗値が小さいと、電源71aからスイッチング素子72cを介してグランドに流出される電流が大きくなって発熱抵抗体42aに電源71aより供給されるパルス電流の電流値の減少量が大きいことから、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流の差異が大きくなり、一対の発熱抵抗体42a,42bの間で生じる熱量の差異も大きくなり、吐出面27aを基準にしてノズル44aより吐出されたインク液滴iの吐出角度は小さくなる。すなわち、可変抵抗73の抵抗値が小さいほど、ノズル44aより略真下にインク液滴iを吐出したときの着弾点Dに対し、発熱抵抗体42a側でより遠い位置に着弾するようにインク液滴iを吐出する。
また、図15に示す吐出制御部63では、スイッチング素子72bが一対の発熱抵抗体42a,42bと可変抵抗73との接続をオンにし、スイッチング素子72aをオンにし、スイッチング素子72cを電源71bと接続したときに、図16(C)に示すように、ヘッドチップ27より吐出されるインク液滴iを、吐出方向が図16(C)に示す記録紙Pの幅方向Wの発熱抵抗体42b側に可変された状態で吐出させる。すなわち、スイッチング素子72cが電源71bに接続されることで、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値は可変抵抗73の抵抗値に応じて大きくなり、インク気泡B2の体積がインク気泡B1の体積より小さくされた状態でインク気泡B1,B2が一対の発熱抵抗体42a,42b上にそれぞれ形成されることから、ブラックインク2の吐出角度を発熱抵抗体42b側に変化させてインク液滴iをノズル44aから略斜めに吐出する。ヘッドチップ27においては、一対の発熱抵抗体42a,42bの発熱状態がスイッチング素子72cをグランド76に接続したときとは逆になる。
この場合、可変抵抗73の抵抗値が大きいと、電源71aの他に電源71bより発熱抵抗体42aに加算されて供給されるパルス電流が小さくなることから、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流の差異が小さくなり、一対の発熱抵抗体42a,42bの間で生じる熱量の差異も小さくなり、吐出面27aを基準にしてノズル44aより吐出されたインク液滴iの吐出角度は大きくなる。すなわち、可変抵抗73の抵抗値が大きいほど、ノズル44aより略真下にインク液滴iを吐出したときの着弾点Dに対し、発熱抵抗体42b側でより近い位置に着弾するようにインク液滴iを吐出する。一方、可変抵抗73の抵抗値が小さいと、電源71aの他に電源71bより発熱抵抗体42aに加算されて供給されるパルス電流が大きくなることから、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流の差異が大きくなり、一対の発熱抵抗体42a,42bの間で生じる熱量の差異も大きくなり、吐出面27aを基準にしてノズル44aより吐出されたインク液滴iの吐出角度は小さくなる。すなわち、可変抵抗73の抵抗値が小さいほど、ノズル44aより略真下にインク液滴iを吐出したときの着弾点Dに対し、発熱抵抗体42b側でより遠い位置に着弾するようにインク液滴iを吐出する。
このように、吐出制御部63では、スイッチング素子72a,72b,72cを切り換え、可変抵抗73の抵抗値を変化させることで、インク液滴iのノズル44aからの吐出方向を、一対の発熱抵抗体42a,42bが並設されている方向、すなわち記録紙Pの幅方向に変化させることができる。
なお、以上では、可変抵抗73の抵抗値を制御することで発熱抵抗体42aに供給される電流値を調整したが、このことに限定されることはなく、例えば電源71aを発熱抵抗42aに接続するような構成にすることで発熱抵抗体42b側に供給される電流値を変化させることも可能である。
図14に示す警告部64は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段であり、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示する。また、警告部64は、例えばスピーカ等の音声出力手段であってもよく、この場合は、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を音声で出力する。なお、警告部64は、表示手段及び音声出力手段をともに有するように構成してもよい。また、この警告は、情報処理装置69のモニタやスピーカ等で行うようにしてもよい。
入出力端子65は、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置69等に送信する。また、入出力端子65は、外部の情報処理装置69等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置69は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
情報処理装置69等と接続される入出力端子65は、インタフェースとして例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)232C、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子65は、情報処理装置69との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
入出力端子65と情報処理装置69との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子65は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
ROM66は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)等のメモリであり、制御部68が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部68によりRAM67にロードされる。RAM67は、制御部68によりROM66から読み出されたプログラムや、プリンタ装置1の各種状態を記憶する。
制御部68は、入出力端子65から入力された印刷データ、ヘッドカートリッジ3から入力されがブラックインク2の残量データ等に基づき、各部を制御する。制御部68は、入力された制御信号等に基づいて各部を制御する処理プログラムをROM66から読み出してRAM67に記憶し、この処理プログラムに基づき各部の制御や処理を行う。
なお、以上のように構成された制御回路61においては、ROM66に処理プログラムを格納するようにしたが、処理プログラムを格納する媒体としては、ROM66に限定されるものでなく、例えば処理プログラムが記録された光ディスクや、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路61は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置69を介して接続されてこれら記録媒体から処理プログラムを読み出すように構成する。
ここで、以上のように構成されるプリンタ装置1の印刷動作について図17に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM66等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部68内の図示しないCPU(Central Processing Unit)の演算処理等により実行されるものである。
先ず、ユーザが、印刷動作をプリンタ装置1が実行するように、プリンタ本体4に設けられている操作パネル等を操作して命令する。次に、制御部68は、ステップS1において、各装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が装着されているかどうかを判断する。そして、制御部68は、全ての装着部22に所定の色のインクカートリッジ11が適切に装着されているときはステップS2に進み、装着部22においてインクカートリッジ11が適切に装着されていないときはステップS4に進み、印刷動作を禁止する。
制御部68は、ステップS2において、接続部26内のブラックインク2が所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときは、警告部64でその旨を警告し、ステップS4において、印刷動作を禁止する。一方、制御部68は、接続部26内のブラックインク2が所定量以上であるとき、すなわちブラックインク2が満たされているとき、ステップS3において、印刷動作を許可する。
印刷動作を行う際は、制御部68がプリンタ制御部62によって各駆動機構53,54を駆動制御して記録紙Pを印刷可能な位置まで移動させる。具体的に、制御部68は、図18に示すように、ヘッドキャップ開閉機構53を構成する駆動モータを駆動させてヘッドキャップ28をヘッドカートリッジ3に対してトレイ55a側に移動させ、ヘッドチップ27のノズル44aを露出させる。そして、制御部68は、給排紙機構54を構成する駆動モータを駆動させて記録紙Pを走行させる。具体的に、制御部68は、トレイ55aから給紙ローラ81を図18中矢印D方向に回転させ、記録紙Pをトレイ55aから引き出し、図18中矢印E方向及び矢印F方向に、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ82a,82bによって引き出された記録紙Pの一枚を図18中矢印G方向に回転する反転ローラ83に搬送して搬送方向を反転させた後に、搬送ベルト84に記録紙Pを搬送し、搬送ベルト84に搬送された記録紙Pを押さえ手段85が所定の位置で保持させることでブラックインク2が着弾される位置が決定されるように給排紙機構54を制御する。
そして、制御部68は、記録紙Pが印刷位置に保持されたことを確認すると、ヘッドチップ27のノズル44aより記録紙Pに向かってインク液滴iを吐出するように吐出制御部63を制御する。具体的には、図16(A)に示すように、ノズル44aより略真下にインク液滴iを吐出する場合、一対の発熱抵抗体42a,42bに供給されるパルス電流の電流値が略同じになるように吐出制御部63を制御する。また、制御部68は、図16(B)に示すように、ノズル44aより発熱抵抗体42a側に吐出方向を変えてインク液滴iを吐出する場合、発熱抵抗体42bに供給されるパルス電流より、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値が小さくなるように吐出制御部63を制御する。また、制御部68は、図16(C)に示すように、ノズル44aより発熱抵抗体42b側に吐出方向を変えてインク液滴iを吐出する場合、発熱抵抗体42bに供給されるパルス電流に比べ、発熱抵抗体42aに供給されるパルス電流の電流値が大きくなるように吐出制御部63で制御する。
このとき、上述したような印画濃度が異なる複数のブラックブラックインク2を用いることによって、このブラックインクの印画濃度が濃くなるにしたがって、記録紙Pに対する浸透性が低くなっているため、印画濃度の異なるインク同士の境界において、印画濃度の濃いものが印画濃度の薄いもの側に拡散することが抑制され、記録紙P上で滲んでしまうことが抑えられる。これにより、このブラックインク2を用いることによって、滲みの抑えられた鮮明な画像が形成される。
以上ように、インク液滴iがノズル44a吐出されると、インク液滴iを吐出した量と同量のブラックインク2がインク流路46から直ちにインク液室45内に補充され、図6(B)に示すように、元の状態に戻る。ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出されると、付勢部材34fの付勢力とダイアフラム34iの付勢力とによってインク室34bの開口部34dを閉塞している弁34eは、図6(A)に示すように、ヘッドチップ27からインク液滴iが吐出された際に、開口部34dに分割されたインク流出路34c側のインク室34b内のブラックインク2の負圧が高まると、インク2の負圧によりダイアフラム34iが大気圧により押し上げられて、弁シャフト34hと共に弁34eを付勢部材34fの付勢力に抗して押し上げる。このとき、インク室34bのインク流入路34a側とインク流出路34c側との間の開口部34dが開放され、ブラックインク2がインク流入路34a側からインク流出路34c側に供給され、ヘッドチップ27のインク流路46にブラックインク2が補充される。そして、ブラックインク2の負圧が低下してダイアフラム34iが復元力により元の形状に戻り、付勢部材34fの付勢力により弁シャフト34hと共に弁34eをインク室34bが閉塞するように引き下げる。以上のようにして弁機構34では、インク液滴iを吐出する度にブラックインク2の負圧が高まると、上述の動作を繰り返す。
このようにして、給排紙機構54によって走行している記録紙Pには、順に印刷データに応じた文字や画像が印刷されることになる。そして、印刷が終了した記録紙Pは、給排紙機構54によって排紙口56より排出される。
以上で説明したプリンタ装置1では、複数のブラックインク2a、2b、2c、2dの印画濃度がそれぞれ異なり、印画濃度が高いもの浸透性を印画濃度の低いもの浸透性よりも低くすることによって、記録紙P上の印画濃度の高いものと印画濃度の低いものとの境界において、印画濃度が高いものが境界を越えて印画濃度の低いものの側に浸透することが抑えられ、滲みが抑制される。これにより、プリンタ装置1では、重なり合うインク同士の印画濃度差が大きい場合であっても滲みのない高画質な画像及び文字を印刷することができる。
また、プリンタ装置1では、記録紙Pの走行方向の上流側に印画濃度の薄いブラックインク2aを収容したインクカートリッジ11aを配置し、記録紙Pの走行方向の下流側に向かってブラックインク2aよりも印画濃度の濃いブラックインク2b、2c、2dがそれぞれ収容されたインクカートリッジ11b、11c、11dを配置することによって、後に吐出される印画濃度の濃いブラックインク2の浸透性よりも先に吐出された印画濃度の薄いブラックインク2の浸透性が高いため、後に吐出された印画濃度のブラックインク2が先に吐出されたブラックインク2の側に浸透することが抑えられている。これにより、プリンタ装置1では、先に印画濃度の薄いブラックインク2を吐出し、後に印画濃度の濃いブラックインク2を吐出した場合であっても、重なり合うインク同士の間での滲みが抑えられ、高画質な画像及び文字を印刷することができる。
また、プリンタ装置1では、印画濃度の薄いブラックインク2を先に吐出させることによって、このブラックインク2が吐出された際に発生するミストが印画濃度の濃い他のブラックインク2の吐出面27aに付着した場合でも、吐出面27aにおけるブラックインク2同士の色の混ざり合いが目立たず、印画濃度の濃いブラックインク2を吐出した際に画像や文字に色の乱れが生じることを抑えることができる。
また、以上のプリンタ装置1では、記録紙Pの走行方向の上流側に印画濃度の薄いブラックインク2を収容したインクカートリッジ11を配置し、記録紙Pの走行方向の下流側に向かって印画濃度の濃いブラックインク2を配置したが、このことに限定せず、インクカートリッジ11の配置する順を逆にして、上流側に印画濃度の濃いブラックインク2が収容されたインクカートリッジを配置し、下流側に印画濃度の薄いブラックインク2を配置してもよい。
プリンタ装置1では、上流側に印画濃度の濃いブラックインク2を収容したインクカートリッジ11を配置して、印画濃度の濃いブラックインク2を先に吐出させた場合であっても、先に吐出された印画濃度の濃いブラックインク2の浸透性が低く、後に吐出された印画濃度の薄いブラックインク2の浸透性が高いため、先に吐出された印画濃度の濃いブラックインク2が印画濃度の薄いブラックインク2側へ浸透することが抑えられ、印画濃度の濃いブラックインク2と印画濃度の薄いブラックインク2との境界において、滲みが抑えられる。
また、以上のプリンタ装置1では、同一色として黒色のブラックインクを用いた例を挙げて説明したが、このことに限定されず、このブラックインク2の他にイエロー、マゼンタ、シアン等のうち、一色のインクの印画濃度を異ならせて用いるようにしてもよい。また、プリンタ装置1では、印画濃度の異なるブラックインクのほかに、ヘッドカートリッジ3には他のイエローやマゼンタ、シアン等のインクを備えて、カラー印刷ができるようにしてもよい。
また、ブラックインク2は、医療用の分析機器等の備え付けられているプリンタ装置1で用いられることに限定されず、一般の家庭等で用いられるプリンタ装置についても適用可能である。
ここで、ブラック以外のイエロー、マゼンタ、シアン等を用いた場合の着色剤としては、以下のようなものがある。
イエロー系の酸性染料としては、C.I.アシッドイエロー1、同3、同11、同17、同19、同23、同25、同29、同36、同38、同40、同42、同44、同49、同59、同61、同70、同72、同75、同76、同78、同79、同98、同99、同110、同111、同127、同131、同135、同142、同162、同164、同165等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
イエロー系の直接染料としては、C.I.ダイレクトイエロー1、同8、同11、同12、同24、同26、同27、同33、同39、同44、同50、同58、同85、同86、同87、同88、同89、同98、同110、同132、同142、同144等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
イエロー系の反応性染料としては、C.I.リアクティブイエロー1、同2、同3、同4、同6、同7、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同22、同23、同24、同25、同26、同27、同37、同42等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
イエロー系の食用染料としては、C.I.フードイエロー3、同4等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。挙げられる。
マゼンタ系の酸性染料としては、C.I.アシッドレッド1、同6、同8、同9、同13、同14、同18、同26、同27、同32、同35、同37、同42、同51、同52、同57、同75、同77、同80、同82、同85、同87、同88、同89、同92、同94、同97、同106、同111、同114、同115、同117、同118、同119、同129、同130、同131、同133、同134、同138、同143、同145、同154、同155、同158、同168、同180、同183、同184、同186、同194、同198、同209、同211、同215、同219、同249、同252、同254、同262、同265、同274、同282、同289、同303、同317、同320、同321、同322等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
マゼンタ系の直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、同2、同4、同9、同11、同13、同17、同20、同23、同24、同28、同31、同33、同37、同39、同44、同46、同62、同63、同75、同79、同80、同81、同83、同84、同89、同95、同99、同113、同197、同201、同218、同220、同224、同225、同226、同227、同228、同229、同230、同231等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
マゼンタ系の反応性染料としては、リアクティブレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同11、同12、同13、同15、同16、同17、同19、同20、同21、同22、同23、同24、同28、同29、同31、同32、同33、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同43、同45、同46、同49、同50、同58、同59、同63、同64等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
マゼンタ系の食用染料としては、C.I.フードレッド7、同9、同14等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
シアン系の酸性染料としては、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同27、同29、同40、同41、同43、同45、同54、同59、同60、同62、同72、同74、同78、同80、同82、同83、同90、同92、同93、同100、同102、同103、同104、同112、同113、同117、同120、同126、同127、同129、同130、同131、同138、同140、同142、同143、同151、同154、同158、同161、同166、同167、同168、同170、同171、同182、同183、同184、同187、同192、同199、同203、同204、同205、同229、同234、同236、同249等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
シアン系の直接染料としては、C.I.ダイレクトブルー1、同2、同6、同15、同22、同25、同41、同71、同76、同77、同78、同80、同86、同87、同90、同98、同106、同108、同120、同123、同158、同160、同163、同165、同168、同192、同193、同194、同195、同196、同199、同200、同201、同202、同203、同207、同225、同226、同236、同237、同246、同248、同249等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
シアン系の反応性染料としては、C.I.リアクティブブルー1、同2、同3、同4、同5、同7、同8、同9、1同3、同14、同15、同17、同18、同19、同20、同21、同25、同26、同27、同28、同29、同31、同32、同33、同34、同37、同38、同39、同40、同41、同43、同44、同46等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
シアン系の食用染料としては、C.I.フードブルー1、同2等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
カラー系の顔料としては、次のようなものがある。イエロー系の顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同14C、同15、同16、同17、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同114、同117、同120、同128、同129、同138、同150、同151、同153、同154、同180等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
レッド系の顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同48(Ca)、同48(Mn)、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同53、同55、同57(Ca)、同57:1、同60、同60:1、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同101(べんがら)、同104、同105、同106、同108(カドミウムレッド)、同112、同114、同122(キナクリドンブラック3)、同123、同146、同149、同163、同166、同168、同170、同172、同177、同178、同179、同184、同185、同190、同193、同202、同209、同219等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
ブルー系の顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:34、同16、同17:1、同22、同25、同56、同60等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
また、ブルー系の顔料としては、C.I.バットブルー4、同60、同63等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
オレンジ系の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5、同13、同16、同17、同36、同43、同51等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
グリーン系の顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、同4、同7、同8、同10、同17、同18、同36等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
紫系の顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、同3、同5:1、同16、同19(キナクリドンレッド)、同23、同38等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
また、プリンタ装置1では、複数の発熱抵抗体42a,42bが設けられたヘッドチップ27を例に挙げて説明したが、このような構成に限定されることはなく、例えば図19に示すヘッドチップ91のように、発熱抵抗体92がノズル93と対向する位置に一つだけ設けられたものにも適用可能である。この場合、ヘッドチップ91は、ノズル93よりインク液滴iを略真下方向、すなわち記録紙Pに対し略垂直方向だけに吐出する。なお、図19でも、ヘッドチップ91におけるノズル93の位置を点線で示している。
また、以上では、プリンタ本体4に対してヘッドカートリッジ3が着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ3に対してインクカートリッジ11が着脱可能なプリンタ装置1を例に取り説明したが、プリンタ本体4とヘッドカートリッジ3とが一体化されたプリンタ装置にも適用可能である。
また、プリンタ装置1では、ブラックインク2の各印画濃度毎にインクカートリッジ11を設け、それぞれ収容していたが、このことに限定されず、1つにインクカートリッジの内部に複数のインク収容部13を設けるようにしてもよい。この場合は、1つインクカートリッジ11の内部に設けた複数のインク収容部13に、印画濃度の異なるブラックインク2を収容する。
さらにまた、以上では、一対の発熱抵抗体42a,42bによってブラックインク2を加熱しながらノズル44aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
さらにまた、以上では、ライン型のプリンタ装置1を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えばインクヘッドが記録紙の走行方向と略直交する方向に移動するシリアル型のインクジェットプリンタ装置にも適用可能である。この場合、シリアル型のインクジェットプリンタ装置のヘッドチップには少なくとも複数の圧力発生素子が設けられることになる。
以下、本発明を適用したインクを実際に調製した実施例1〜実施例6及び比較例について説明する。
〈実施例1〉
実施例1では、色の濃度が異なる4つのブラックインク1、2、3、4を次のようにして調製した。ブラックインク1、2、3、4は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表1に示す割合で混合し、各インク前駆体を調製した。
そして、このような配合で得られた各インク前駆体を、60℃に加温した状態で4時間攪拌し、攪拌後に、メッシュ径が0.8μmのアドバンテック社製メンブレンフィルタでインク前駆体を加圧しながら強制的に濾過した。このようにして、ブラックインク1、2、3、4を調製した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク1、2、3、4について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、ブラックインク4の浸透性が最も高かった。これは、ブラックインク4に非イオン界面活性剤が0.5重量%含有されており、他のブラックインク1、2、3に含有されている非イオン界面活性剤の含有量0.05重量%よりも多いため、ブラックインク4の浸透性が高くなった。
また、各ブラックインク1、2、3、4について、次のような印字評価を行った。用いたインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置)は、ノズル径が20μm、一対の発熱抵抗体の抵抗値がそれぞれ135Ω、ノズル数が24個のヘッドチップを備え、ヘッドカートリッジが記録紙の走行方向と略直交方向に移動するシリアル型のものである。印字評価は、ヘッドカートリッジを片方向に走行させ、ヘッドチップを駆動電圧11Vで駆動させて、ゼロックス社製のPPC用紙、本州製紙製の再生紙、ミード社製のボンド用紙にアルファベッド文字の印刷や、所定の領域の塗り潰した印刷、いわゆるべた印刷をして行った。
印字評価を行った結果、実施例1では、染料の含有量が1重量%で最も印画濃度の薄いブラックインク4と、染料の含有量が6重量%、4重量%、2重量%でブラックインク4の染料の含有量よりも多いブラックインク1、2、3との境界において、滲みが目立たなかった。これは、ブラックインク4が含有されている非イオン性界面活性剤の含有量が0.5重量%であるため、ブラックインク4の浸透性が、0.05重量%しか含有されていないブラックインク1、2、3よりも高くなっていることから、印画濃度の濃い他のブラックインク1、2、3が、ブラックインク4との界面において、ブラックインク4側に浸透することが抑えられ、滲みが防止された。また、印字評価結果から、ブラックインク同士の界面において滲みが防止されてことによって、シリアル型のプリンタ装置を用いた場合であっても、印画濃度の濃いものほど浸透性を低くすることによって、インク同士の境界において滲みを抑えることができた。
〈実施例2〉
実施例2では、色の印画濃度が異なる3つのブラックインク5、6、7を次のようにして調製した。ブラックインク5、6、7は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表2に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク5、6、7を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク5,6,7について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、ブラックインク7の浸透性が最も高かった。これは、ブラックインク7には非イオン界面活性剤が0.5重量%含有されており、他のブラックインク5,6に含有されている非イオン界面活性剤の含有量0.05重量%よりも多いため、ブラックインク5の浸透性が高くなった。
以上のように調製した各ブラックインク5、6、7について、印画濃度が最も濃いブラックインク5を最初に吐出し、次に印画濃度の濃いブラックインク6をブラックインク5の次に吐出し、次に印画濃度が濃い、即ち最も印画濃度の薄いブラックインク7をブラックインク6の次に吐出するように、各インクカートリッジをヘッドカートリッジに配置し、実施例1と同様に印字品質評価を行った。
印字評価を行った結果、先に吐出された印画濃度が濃いブラックインク5、6と、後に吐出された印画濃度が薄いブラックインク7と境界において滲みは見られなかった。これは、ブラックインク7には、非イオン性界面活性剤が0.5重量%含有されており、ブラックインク5、6には非イオン性界面活性剤が0.05重量%含有されているため、ブラックインク7の方が浸透性が高くなっている。これにより、先に記録紙に吐出された色の濃度が濃いブラックインク5、6が、後に記録紙上に吐出された濃度の薄いブラックインク7側に浸透することが抑制されるため、先に吐出されたブラックインク5、6と、後に吐出されたブラックインク7との境界に滲みが防止された。
〈実施例3〉
実施例3では、色の濃度が異なる4つのブラックインク8、9、10、11を次のようにして調製した。ブラックインク8、9、10、11は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表2に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク8、9、10、11を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク8、9、10、11について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、最も印画濃度の薄いブラックインク11の浸透性が最も高く、最も印画濃度の低いブラックインク8の印画濃度が最も低く、ブラックインク9,10の浸透性がほぼ等しかった。これは、ブラックインク11に非イオン界面活性剤が0.5重量%含有されており、他のブラックインク8,9,10よりも多いため浸透性が最も高くなり、ブラックインク8は非イオン性界面活性剤の含有量0.05重量%であり最も少ないため浸透性が最も低くなり、ブラックインク9,10は非イオン性界面活性剤の含有量が0.1重量%であるため、ブラックインク8の浸透性よりも大きく、ブラックインク11の浸透性よりも低く、互いに含有量が等しいため、浸透性がほぼ等しくなった。
以上のように調製した各ブラックインク8、9、10、11については、印画濃度が最も濃いブラックインク8を最初に吐出し、次に印画濃度の濃いブラックインク9をブラックインク8の次に吐出し、次に印画濃度が濃いブラックインク10をブラックインク9の次に吐出し、次に印画濃度が濃い、即ち最も印画濃度の薄いブラックインク11をブラックインク10の次に吐出するように、各インクカートリッジをヘッドカートリッジに配置し、実施例1と同様に印字品質評価を行った。
印字評価を行った結果、先に記録紙に吐出された色の濃度が濃いブラックインク8、9、10と、後に吐出された色の濃度が薄いブラックインク11と境界、及びブラックインク8と、ブラックインク9,10との境界において滲みは見られなかった。これは、先に記録紙に吐出された色の濃度が濃いブラックインク8の浸透性が低く、後に記録紙上に吐出された印画濃度の薄いブラックインク9、10、11の浸透性が高いため、ブラックインク8がブラックインク9,10,11側に浸透することが抑制され、先に吐出されたブラックインク8と、後に吐出されたブラックインク9、10、11との境界に滲みが防止された。
同様に、ブラックインク9、10と、ブラックインク11との間でも、非イオン性界面活性剤の含有量が異なるため、先に吐出された印画濃度の濃いブラックインク8の浸透性が低く、後に吐出された印画濃度の薄いブラックインク9,10の浸透性が高いため、先に吐出されたブラックインク8がブラックインク9、10側に浸透することが抑制され、ブラックインク8と、ブラックインク9,10と境界においても滲みが防止された。
したがって、先に打ち込まれたインクに対して、後に打ち込まれたインクが引き寄せられて浸透することが抑制されたため、境界において滲みがなく、鮮明な画像が形成された。また、ブラックインク9と、ブラックインク10との間では、記録紙上に着弾させた際に、印画濃度に差が見られなかったので、非イオン性界面活性剤の含有量を同じ含有量としたが境界において滲みは見られなかった。
<実施例4>
実施例4では、色の濃度が異なる4つのブラックインク12,13,14,15を次のようにして調製した。ブラックインク12,13,14,15は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表4に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク12,13,14,15を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク12,13,14,15について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、最も濃度の薄いブラックインク15の浸透性が最も高く、最も印画濃度の濃いブラックインク12の印画濃度が最も低く、ブラックインク13,14の浸透性がほぼ等しかった。これは、ブラックインク15に非イオン界面活性剤が0.5重量%と、トリエチレングリコールエーテルが3重量%含有されており、他のブラックインク12,13,14よりも非イオン性界面活性剤の含有量が多いため浸透性が最も高くなり、ブラックインク12は非イオン性界面活性剤の含有量が最も少なく、トリエチレングリコールエーテルが含有されていないため浸透性が最も低くなり、ブラックインク13,14は非イオン性界面活性剤が0.1重量%と、トリエチレングリコールエーテルが3重量%含有されているため、ブラックインク12の浸透性よりも高く、ブラックインク15の浸透性よりも低く、互いに含有量が等しいため、浸透性がほぼ等しくなった。また、ブラックインク12は、非イオン性界面活性剤の含有量が少なく、トリエチレングリコールエーテルが含有されていないため、ブラックインク13,14の浸透性との差が大きかった。
以上のように調製した各ブラックインク12,13,14,15について、印画濃度が最も薄いブラックインク15を最初に吐出し、次に印画濃度の薄いブラックインク14をブラックインク15の次に吐出し、次に印画濃度が薄いブラックインク13をブラックインク14の次に吐出し、次に印画濃度が薄い、即ち最も印画濃度の濃いブラックインク12をブラックインク13の次に吐出するように、各インクカートリッジを配置し、実施例1と同様に印字品質評価を行った。
印字評価を行った結果、先に記録紙に吐出された色の濃度が薄いブラックインク13,14、15と、後に吐出された色の濃度が薄いブラックインク12と境界において滲みが見られなかった。これは、上述したように、ブラックインク13,14、15の浸透性が高く、ブラックインク12の浸透性が最も低くなっているため、後に記録紙上に吐出された印画濃度の薄いブラックインク12が、先に記録紙に吐出された色の濃度が薄いブラックインク13,14、15側に浸透することが抑制される。これにより、先に吐出されたブラックインク13,14,15と、後に吐出されたブラックインク12との境界において滲みが防止された。また、ブラックインク15と、ブラックインク13,14との境界において、ブラックインク15の浸透性が高く、ブラックインク13,14の浸透性が低いため、ブラックインク13,14がブラックインク15側に浸透することが抑制され、滲みが防止される。
したがって、先に打ち込まれるブラックインク13,14,15の印画濃度が薄い場合であっても、後に打ち込まれる印画濃度の濃いブラックインク12との境界において滲むことが抑えられているため、印画濃度の薄いものを先に吐出させ、次の印画濃度の濃いものを吐出させる吐出順序であってもよい。このように、印画濃度の濃いものを後から吐出させることによって、インク液滴iを吐出する際に発生する粒子状のインクがヘッドチップに付着して画像品質を低下させてしまうことも抑えられる。
<実施例5>
実施例5では、色の濃度が異なる4つのブラックインク16,17,18,19を次のようにして調製した。ブラックインク16,17,18,19は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表5に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク16,17,18,19を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク16,17,18,19について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、ブラックインク19の浸透性が最も高く、ブラックインク16の印画濃度が最も低く、ブラックインク17,18の浸透性がほぼ等しかった。これは、ブラックインク19に非イオン界面活性剤が0.5重量%と、トリエチレングリコールエーテルが5重量%含有されており、他のブラックインク16,17,18に含有されている非イオン性界面活性剤の含有量よりも多いため浸透性が最も高くなり、ブラックインク16は非イオン性界面活性剤の含有量が最も少なく、トリエチレングリコールエーテルが含有されていないため浸透性が最も低く、ブラックインク17,18は0.1重量%の非イオン性界面活性剤と、トリエチレングリコールエーテルが3重量%含有されているため、ブラックインク16の浸透性よりも大きく、ブラックインク19の浸透性よりも低く、互いに含有量が等しいため、浸透性がほぼ等しくなった。また、ブラックインク16は、非イオン性界面活性剤の含有量が少なく、トリエチレングリコールエーテルが含有されていないため、ブラックインク13,14の浸透性との差が大きかった。同様に、ブラックインク19は、ブラックインク17,18と比べてトリエチレングリコールの含有量が多いため、ブラックインク17,18の浸透性との差が大きかった。
以上のように調製した各ブラックインク16,17,18,19について、印画濃度が最も薄いブラックインク19を最初に吐出し、次に印画濃度の薄いブラックインク18をブラックインク18の次に吐出し、次に印画濃度が薄いブラックインク17をブラックインク18の次に吐出し、次に印画濃度が薄い、即ち最も印画濃度の濃いブラックインク19をブラックインク18の次に吐出するように、各インクカートリッジをヘッドカートリッジに配置し、ヘッドカートリッジを双方向に走行させたこと以外は実施例1と同様に印字品質評価を行った。
印字評価を行った結果、各印画濃度のブラックインク16,17,18,19において、ブラックインク16と、このブラックインク16よりも印画濃度が薄いブラックインク17,18,19との境界において滲みは見られなかった。
これは、印画濃度の薄いものを先に吐出させ、印画濃度の濃いものを後に吐出させた場合でも、逆に印画濃度の濃いものを先に吐出させて、印画濃度の薄いものを後に吐出させた場合でも、印画濃度の濃いブラックインク16の浸透性が低く、他のブラックインク17,18,19の浸透性が高いため、ブラックインク16が他のブラックインク17,18,19側に浸透することが抑制されて、ブラックインク16と、ブラックインク17,18,19との境界において滲みが抑えられた。
同様に、ブラックインク17、18と、ブラックインク19との境界においても、ブラックインク17,18がブラックインク19側に浸透することが抑制され、滲みが抑えられた。また、ブラックインク17と、ブラックインク18との境界では、互いに浸透性が等しいため、互いに浸透せず滲みが抑えられた。また、ブラックインク19には、トリエチレングリコールエーテルが5重量%含有されており、他のブラックインク16,17,18よりも多く含有されているため、他のブラックインク16,17,18よりも浸透性が高くなっている。
これにより、逆方向に走行した場合、即ち印画濃度の濃いブラックインク16,17,18を先に吐出し、印画濃度の薄いブラックインク19を後に吐出した場合、印画濃度の濃いブラックインク16,17,18が印画濃度の薄いブラックインク19側に浸透しやすいが、印画濃度の濃いブラックインク16,17,18が印画濃度の薄いブラックインク19の側に浸透することが抑えられるため、滲みが抑制された。したがって、ヘッドカートリッジを双方向に走行させた場合であっても、ブラックインク16,17,18,19の各境界において、滲みが抑えられた鮮明な画像が形成された。
<実施例6>
実施例6では、色の濃度が異なる4つのブラックインク20,21,22,23を次のようにして調製した。ブラックインク20,21,22,23は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表6に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク20,21,22,23を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク20,21,22,23について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、ブラックインク23の浸透性が最も高く、ブラックインク20の印画濃度が最も低く、ブラックインク20の次にブラックインク21の浸透性が低く、次にブラックインク22の浸透性が低かった。これは、ブラックインク23に非イオン界面活性剤が0.5重量%と、トリエチレングリコールエーテルが7重量%含有されており、他のブラックインク20,21,22よりも非イオン界面活性剤の含有量が多いため浸透性が最も高くなり、ブラックインク20は非イオン性界面活性剤の含有量が最も少ないため浸透性が最も低くなり、ブラックインク21は0.3重量%の非イオン性界面活性剤が含有されており、ブラックインク20よりも多いためブラックインク20よりも浸透性が高く、ブラックインク22は0.3重量%の非イオン性界面活性剤と、トリエチレングリコールエーテルが3重量%含有されているため、ブラックインク22よりも浸透性が高く、ブラックインク23よりも浸透性が低くなった。
以上のように調製した各ブラックインク20,21,22,23について、印画濃度が最も濃いブラックインク20を最初に吐出し、次に印画濃度の濃いブラックインク21をブラックインク20の次に吐出し、次に印画濃度が濃いブラックインク22をブラックインク21の次に吐出し、次に印画濃度が濃い、即ち最も印画濃度の薄いブラックインク23をブラックインク22次に吐出するように、各インクカートリッジをヘッドカートリッジに配置し、実施例1と同様に印字品質評価を行った。
印字評価を行った結果、各ブラックインク20,21,22,23において、ブラックインク20と、このブラックインク20の1/8の印画濃度を有し、濃度差が大きいブラックインク23との境界において、リエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量%含有するブラックインク23の浸透性がブラックインク20の浸透性よりも非常に高いため、ブラックインク20がブラックインク23側に浸透することが抑制され、濃度差の大きいインク同士であっても滲むことが抑えられている。また、ブラックインク21,22と、このブラックインク21,22よりも薄いブラックインク20とは、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが含有されているブラックインク21,22の方が浸透性が高いため、ブラックインク20がブラックインク22側に浸透性せず、濃度差が小さいインク同士の境界においても滲みが抑えられた。<比較例>
比較例では、色の濃度が異なる4つのブラックインク24,25,26,27を次のようにして調製した。ブラックインク24,25,26,27は、着色剤となる染料としてダイレクトブラック154と、溶媒としてイオン交換水と、その他の溶媒としてエチレングリコールと、グリセリンと、非イオン系界面活性剤としてサーフィノール465とを以下の表6に示す割合で混合し、インク前駆体を調整した。なお、このような前駆体を調整したこと以外は、実施例1と同様にしてブラックインク20,21、22、23を調整した。
そして、以上のように調整した各ブラックインク24,25,26,27について、Bristow法にて浸透性を比較したところ、各ブラックインク24,25,26,27の浸透性がほぼ同じであった。
そして、以上のように調製した各ブラックインク24,25,26,27について、印画濃度が最も濃いブラックインク24を最初に吐出し、次に印画濃度の濃いブラックインク25をブラックインク24の次に吐出し、次に印画濃度が濃いブラックインク26をブラックインク25の次に吐出し、次に印画濃度が濃い、即ち最も印画濃度の薄いブラックインク27をブラックインク26の次に吐出するように、各インクカートリッジをヘッドカートリッジに配置し、実施例1と同様に印字品質評価を行った。
評価を行った結果、各ブラックインク24,25,26,27同士の境界において、滲みが生じた。これは、各ブラックインク24,25,26,27に含有されている非イオン性界面活性剤の含有量が同じであるため、印画濃度の濃いインクが印画濃度の薄いインク側に拡散し、混じり合い、境界において滲みが生じた。
一方、上述した実施例1〜実施例6では、同一色で印画濃度の異なるインクにおいて、印画濃度の濃いブラックインクの浸透性を印画濃度の薄いブラックインクの浸透性よりも低くすることによって、印画濃度の濃いブラックインクが印画濃度の薄いブラックインク側に浸透することが抑制されるため、滲みが抑えられる。これにより、滲みがなく、色の濃淡が現れるため、画像に階調を鮮明に現れ、高画質な画像や文字を印刷することができるようになる。
1 プリンタ装置、2 ブラックインク、3 インクジェットプリントヘッドカートリッジ、4 プリンタ本体、11 インクカートリッジ、21 カートリッジ本体、27,91,101,111 ヘッドチップ、27a 吐出面、41 回路基板 42a,42b 発熱抵抗体、43 フィルム、44 ノズルシート、44a ノズル、45 インク液室、46 インク流路、61 制御回路、62 プリンタ駆動部、63 吐出制御部、64 警告部、65 入出力端子、66 ROM、67 RAM、68 制御部、71a,71b 電源、72a,72b,72c スイッチング素子、73 可変抵抗、74a,74b 切換制御回路、75 抵抗値制御回路