JP2005222573A - プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents

プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は高い精度の光学特性を具備したプラスチック製光学素子を作製し、良好なピックアップ特性を有した光ピックアップ装置を提供することである。
【解決手段】 重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、一般式(1)の脂環式構造を有する繰返し単位と、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される鎖状構造の繰返し単位(b)とを90質量%以上含有し、繰返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、一般式〔I〕の酸化防止剤を含み、260℃、2.16kgでのメルトインデックスが20〜60g/10minにある樹脂組成物を成形し、1つの光学面に、光学面を通過する光に対し、光路差を付与する光路差付与構造を有している光情報記録媒体に情報の再生、記録を行う光ピックアップ装置に用いるプラスチック製光学素子。
【化1】
Figure 2005222573

【化2】
Figure 2005222573

【選択図】 なし

Description

本発明は、複数種の光情報記録媒体に対して高い信頼性で光情報記録媒体への光の照射や光情報記録媒体で反射した光の収束を行なうことのできるプラスチック製光学素子と、このプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置に関する。
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1)等が知られている。
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような、複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通とすることがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
また、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)で用いるよりも短い波長で情報の記録、再生を行なうBlu−Ray Disc等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器の開発が新たに行なわれている。
特開2002−105131号公報 (第4頁)
しかしながら、Blu−Ray Disc等のいわゆる次世代光ディスクでは、情報の記録、再生には波長400nm近傍の光を用いるが、特許文献1の場合では、光学素子がこのような短波長の光照射を受けるのに伴い、光学素子自身が白濁したり、あるいは屈折率が変動を受けやすくなり、その結果、特性の劣化に伴い製品寿命が短くなり、光学素子の交換が必要になる場合があった。
また、複数の媒体に適用可能な情報機器では、光学素子を、個々の媒体に対応できるよう、光学機能面に溝や段差(回折格子)を設けて焦点距離や球面収差を調節できる構成としているが、従来より用いられていたプラスチック材料では、十分な熱可塑性を有さないため、例えば、射出成形で成形する際、金型に形成された溝や段差の対応部分の先端まで溶融したプラスチックが行き渡らず、光学素子の溝や段差が設計通りの形状とならなかった。そのため、光学素子が所要の光学特性を具備せず、この光学素子を適用した光ピックアップ素子においても所要のピックアップ特性が得られないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い精度の光学特性を具備し、長時間維持可能なプラスチック製光学素子を作製し、良好なピックアップ特性を容易に維持できるプラスチック製光学素子と、それを用いた光ピックアップ装置を提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔I〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
Figure 2005222573
〔一般式(1)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)〜一般式(4)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表し、少なくともn2は1質量%以上、10質量%未満を表す。〕
Figure 2005222573
〔式中、R10及びR11は各々アルキル基を表す。R12はアルキル基、−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。n1は0〜3の整数を表す。〕
(請求項2)
光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔II〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
Figure 2005222573
〔式中、R21は水素原子、ヒドロキシル基、オキシラジカル基、−SOR27、−SO227(R27はアルキル基またはアリール基を表す。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または−COR28(R28は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。R22、R23及びR24は各々アルキル基を表す。R25及びR26は各々、水素原子または−OCOR29(R29は一価の有機基を表す。)を表す。また、R23とR24は共同して複素環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。〕
(請求項3)
光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔III〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
Figure 2005222573
〔式中、R31はアルキル基またはトリアルキルシリル基を表し、R32、R33、R34、R35及びR36は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R31〜R36のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。〕
(請求項4)
光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔IV〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
Figure 2005222573
〔式中、R41、R42、R43、R44及びR45は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R41〜R45のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。ただし、R41及びR44がいずれもアルキル基であることはない。〕
(請求項5)
光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔V〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
Figure 2005222573
〔式中、R53はアリール基または複素環基を表し、Z54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表す。但し、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の炭素数の総和は3〜6である。Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表し、Z56はアルキル基またはアリール基を表す。n5は0〜2の整数を表す。〕
(請求項6)
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項7)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項8)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項9)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
該複数の回折輪帯のうち少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項10)
前記光源から出射される光の波長は、390nm〜420nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項11)
前記光源から出射される光を、光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項12)
複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項13)
複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔I〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
Figure 2005222573
〔一般式(1)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)〜一般式(4)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表し、少なくともn2は1質量%以上、10質量%未満を表す。〕
Figure 2005222573
〔式中、R10及びR11は各々アルキル基を表す。R12はアルキル基、−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。n1は0〜3の整数を表す。〕
(請求項14)
複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔II〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
Figure 2005222573
〔式中、R21は水素原子、ヒドロキシル基、オキシラジカル基、−SOR27、−SO227(R27はアルキル基またはアリール基を表す。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または−COR28(R28は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。R22、R23及びR24は各々アルキル基を表す。R25及びR26は各々、水素原子または−OCOR29(R29は一価の有機基を表す。)を表す。また、R23とR24は共同して複素環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。〕
(請求項15)
複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔III〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
Figure 2005222573
〔式中、R31はアルキル基またはトリアルキルシリル基を表し、R32、R33、R34、R35及びR36は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R31〜R36のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。〕
(請求項16)
複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔IV〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
Figure 2005222573
〔式中、R41、R42、R43、R44及びR45は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R41〜R45のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。ただし、R41及びR44がいずれもアルキル基であることはない。〕
(請求項17)
複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔V〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
Figure 2005222573
〔式中、R53はアリール基または複素環基を表し、Z54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表す。但し、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の炭素数の総和は3〜6である。Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表し、Z56はアルキル基またはアリール基を表す。n5は0〜2の整数を表す。〕
(請求項18)
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項19)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項20)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項21)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
該複数の回折輪帯のうち少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項22)
前記光源は、波長390nm〜420nmの光を出射することを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項23)
前記プラスチック製光学素子は、前記光源から出射される光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
(請求項24)
前記プラスチック製光学素子は、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
本発明によれば、プラスチック製光学素子は、樹脂組成物に特定の構造を有する酸化防止剤が添加されているので、短波長の光の照射を継続的に受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられる。また、これらの酸化防止剤は、成型性を損なうことがない。
また、樹脂組成物のメルトインデックスが射出成形等の成形法に適した範囲にあり、溶融した樹脂組成物が適度な流動性を有するので、射出成形等の方法で光学素子を作製するとき、成形性に優れ、高い精度を有する光路差付与構造を具備する。したがって、複数種の光情報記録媒体に対して再生、記録を行う光ピックアップ装置において、それぞれの光情報記録媒体に対応した波長の光束を反射面で収束させたり、上記反射面で反射した光を集光して受光素子に導いたりする動作を高い信頼性で行うことができる。また、このことにより、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行える光ピックアップ装置を作製できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、前記一般式〔I〕〜一般式〔V〕で表される特定の構造を有する酸化防止剤の少なくとも1種とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子、あるいは複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、上記本発明のプラスチック製光学素子の少なくとも1つを有する光ピックアップ装置により、例えば、Blu−Ray Disc等のいわゆる次世代光ディスク、情報の記録、再生に波長400nm近傍の光を用いても、光学素子がこのような短波長の光照射を受けても、光学素子自身が白濁したり、屈折率が変動を受けことがなく、極めて製品寿命のが長く、かつ高い精度の光学特性を具備したプラスチック製光学素子と、それを用いて良好なピックアップ特性を有した光ピックアップ装置を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
本発明でいう光学素子とは、光ピックアップ装置の光学系を構成する、例えば、対物レンズ、対物レンズユニット、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材として使用することができるものを指す。
また、対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズとともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズを指すものとする。
本発明でいう光情報記録媒体とは、CD、DVD、CD−R、MD、MO、高密度DVD等の所定の波長の光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う一般的な光ディスクを指す。
また、情報の再生とは光情報記録媒体の情報記録面上に記録された情報を再生することをいい、情報の記録とは光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録することをいう。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
また、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置は、情報の記録だけあるいは再生だけを行うために用いるものであってもよいし、記録と再生の両方を行うために用いるものであってもよい。
本発明で規定するメルトインデックスMIとは、260℃における荷重2.16kgの条件で測定される溶融指数(g/10分)のことである(ASTM D1238準拠)。
また、少なくとも1つの光学面とは、レンズの表裏面のうちの光の入射面又は出射面のことを言い、これら入射面と出射面のどちらか一方の面に光路差付与構造を有していても良いし、両方の面に有していても良い。
次いで、本発明の特徴を以下に述べる。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子を上記脂環式炭化水素系共重合体と、特定の構造を有する酸化防止剤とを含む樹脂組成物から構成し、該樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックスは、20<MI(g/10分)<60の範囲であるので、射出成形等の成形方法に適した範囲にある。すなわち、溶融した樹脂組成物が適度な流動性を有するので、射出成形等の方法で光学素子を作製するとき、光路差付与構造に対応する部分の先端まで到達でき、成形性が良好となり、こうして成形された光学素子は高い精度を有する光路差付与構造を具備する。
したがって、複数種の光情報記録媒体に対して再生、記録を行う光ピックアップ装置において、それぞれの光情報記録媒体に対応した波長の光束を反射面で収束させたり、上記反射面で反射した光を集光して受光素子に導いたりする動作を高い信頼性で行うことができる。また、このことにより、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行える光ピックアップ装置を作製できる。
特に、本発明に係る樹脂組成物は、特定の構造を有する酸化防止剤が添加されているので、例えば、400nmといった短波長の光の照射を継続的に受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、Blu−Ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対して、長期間にわたって良好なピックアップ特性で情報の読み書きを行うことができる。したがって、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
請求項6〜9に係る発明によれば、射出成形等の成形法に適したメルトインデックスの樹脂組成物を光学素子に適用することで、光学素子を成形する時に、金型の輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部に対応する部分に、溶融した樹脂組成物が先端まで行き渡ることができる。そのため、光路差付与構造をなす輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部が高い精度で形成される。
したがって、複数種の光情報記録媒体に対して再生、記録を行う光ピックアップ装置において、それぞれの光情報記録媒体に対応した波長の光束を反射面で収束させたり、上記反射面で反射した光を集光して受光素子に導いたりする動作を高い信頼性で行うことができる。また、このことにより、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行える光ピックアップ装置を作製できる。
請求項10に係る発明によれば、本発明のプラスチック製光学素子は樹脂組成物中に、特定の構造を有する本発明に係る酸化防止剤を含んでいることが大きな特徴であり、Blu−Ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対応した390nm〜420nmという範囲の短波長の光束が透過する場合でも、白濁や透過率の変動が抑えられる。よって、プラスチック製光学素子の寿命を伸ばし、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
また、請求項11に係る発明によれば、高い精度で光路差付与構造が形成された光学素子を光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子とすることで、複数種の光情報記録媒体に対して高い信頼度で光束を集光することができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
また、請求項12に係る発明によれば、光学素子ユニットの単玉光学素子のうちの少なくとも一つに、高い精度で光路差付与構造が形成された光学素子を適用することで、高い信頼性で光情報記録媒体に光束を照射したり、光情報記録媒体で反射した光束を集光したりすることができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
請求項13〜17に係る光ピックアップ装置においては、プラスチック製光学素子をなす樹脂組成物のメルトインデックスは射出成形等の成形法に適した範囲にある。そのため、射出成形等の方法で光学素子を作製するとき、溶融した樹脂組成物が光路差付与構造に対応する部分の先端まで到達でき、こうして成形された光学素子は高い精度を有する光路差付与構造を具備する。したがって、このような高い精度の光路差付与構造を具備した光学素子を備えることによって、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行える光ピックアップ装置とすることができる。
特に、本発明に係る樹脂組成物は、特定の構造を有する酸化防止剤が添加されているので、例えば、400nmといった短波長の光の照射を継続的に受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、Blu−Ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対して、長期間にわたって良好なピックアップ特性で情報の読み書きを行うことができる。したがって、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
また、請求項18〜21に係る発明によれば、請求項6〜9と同様の効果を奏することができる。また、請求項22に係る発明によれば、請求項10と同様の効果を奏することができる。また、請求項23に係る発明によれば、請求項11と同様の効果を奏することができる。また、請求項24に係る発明によれば、請求項12と同様の効果を奏することができる。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のプラスチック製光学素子(以下、単に光学素子ともいう)においては、樹脂組成物として、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体で、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を用いることを特徴の1つとする。
特に、該脂環式炭化水素系共重合体としては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)の連鎖が、関係式A≦0.3×Bの条件を満たすものであることが好ましい。
上記関係式において、Aは、脂環式構造を有する繰り返し単位の連鎖の重量平均分子量を表し、Bは脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数)を表す。
前記一般式(1)〜一般式(4)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができる。極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
前記一般式(1)におけるXは、脂環式炭化水素基を表し、それを構成する炭素数は、4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで、複屈折を低減することができ好ましい。また、脂環式構造は単環構造に限らず、例えば、ノルボルナン環やジシクロヘキサン環などの多環構造のものでも良い。
n1〜n4はそれぞれ質量%を表し、少なくともn2は1質量%以上、10質量%未満を表す。
次いで、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体について、その詳細を説明する。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性を向上させることができ好ましい。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、例えば、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、極性基(例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等)等で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、前記一般式(3)においては、主鎖中に炭素−炭素不飽和結合を有しているが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、炭素−炭素不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
特に、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(5)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
Figure 2005222573
また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(6)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
Figure 2005222573
また、前記一般式(3)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(7)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
Figure 2005222573
また、前記一般式(4)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(8)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
Figure 2005222573
上記一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)及び一般式(8)において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rm、Rn、Rpはそれぞれ独立に水素原子または低級鎖状炭化水素基を示し、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であることが、耐熱性、低吸水性に優れる観点から好ましい。
n5〜n8はそれぞれ質量%を表す。
前記一般式(2)及び一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の中では、前記一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の方が、得られる炭化水素系重合体の強度特性に優れている点で好ましい。
本発明においては、炭化水素系共重合体中の、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量が、質量基準で、90%以上であることが特徴の1つであるが、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。合計含有量を上記で規定する範囲にすることにより、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされた脂環式炭化水素系共重合体を得ることができる。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体における鎖状構造の繰り返し単位(b)の含有量は、質量基準で1%以上、10%未満であることが特徴の1つであるが、好ましくは1%以上、8%以下、より好ましくは2%以上、6%以下の範囲である。繰り返し単位(b)の含有量を上記で規定する範囲とすることにより、低複屈折性、耐熱性、低吸水性が高度にバランスされた脂環式炭化水素系共重合体を得ることができる。
また、繰り返し単位(a)の連鎖長は、脂環式炭化水素系共重合体の分子鎖長に対して十分に短く、具体的には、脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量をAとし、(脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw))×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数)をBとしたとき、AがBの30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下の範囲である。Aがこの範囲外では、低複屈折性に劣る。
更に、繰り返し単位(a)の連鎖長が、特定の分布を有しているもの好ましい。具体的には、脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量をAとし、脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の数平均分子量をCとしたとき、A/Cが好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3〜8、最も好ましくは1.7〜6の範囲である。A/Cが過度に小さいとブロック程度が増加し、過度に大きいとランダムの程度が増加して、いずれの場合にも低複屈折性に劣る。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPC)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは50,000〜250,000の範囲である。脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと成形物の複屈折が大きくなる。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50℃〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは90℃〜180℃である。
次いで、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の製造方法について説明する。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体の製造方法としては、(方法1)芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法、(方法2)脂環式ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、必要に応じて水素化する方法等が挙げられる。
上記の方法で本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体を製造する場合には、芳香族ビニル系化合物または脂環式ビニル系化合物(a′)と共重合可能なその他のモノマー(b′)との共重合体で、共重合体中の化合物(a′)由来の繰り返し単位が、D=(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、E=(炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位数/炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))とした時、DがEの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である連鎖構造を有する共重合体の、主鎖、及び芳香環やシクロアルケン環等の不飽和環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法により効率的に得ることができる。Dが上記で規定する条件を外れると、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
本発明においては、上記各製造方法の中でも、上記(方法1)に記載の方法がより効率的に脂環式炭化水素系共重合体を得ることができる点で好ましい。
上記水素化前の共重合体としては、更に、芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位の連鎖の数平均分子量をFとしたときの、D/Fが一定の範囲であるのが好ましい。具体的には、D/Fが好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3以上、8以下、最も好ましくは1.7以上、6以下の範囲である。D/Fがこの範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
上記化合物(a′)由来の繰り返し単位の連鎖の重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、文献Macromorecules 1983,16,1925−1928に記載の芳香族ビニル系共重合体の主鎖中不飽和二重結合をオゾン付加した後還元分解し、取り出した芳香族ビニル連鎖の分子量を測定する方法等により確認できる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
上記(方法1)において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(方法2)において使用する脂環式ビニル系化合物の具体例としては、例えば、シクロブチルエチレン、シクロペンチルエチレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘプチルエチレン、シクロオクチルエチレン、ノルボルニルエチレン、ジシクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレン、α−t−ブチルシクロヘキシルエチレン、シクロペンテニルエチレン、シクロヘキセニルエチレン、シクロヘプテニルエチレン、シクロオクテニルエチレン、シクロデケニルエチレン、ノルボルネニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレンが好ましい。
これらの芳香族ビニル系化合物及び脂環式ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの鎖状ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記化合物(a′)を重合する方法は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー逐次添加法(モノマー全使用量の内の一部を用いて重合を開始した後、残りのモノマーを逐次添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー逐次添加法を用いると、好ましい連鎖構造を有する炭化水素系共重合体が得られる。水素化前の共重合体は、前述のDの値がより小さい程、及び/又は、D/Fが大きな値を示す程、よりランダムな連鎖構造を有する。共重合体がどの程度のランダム性を有しているかは、芳香族ビニル系化合物の重合速度と共重合可能なその他のモノマーの重合速度との速度比で決まり、この速度比が小さい程、よりランダムな連鎖構造を有していることになる。
前記モノマー逐次添加法によれば、均一に混合された混合モノマーが重合系内に逐次的に添加されるため、バッチ法とは異なり、ポリマーの重合による成長過程においてモノマーの重合選択性をより下げることができるので、得られる共重合体がよりランダムな連鎖構造になる。また、重合系内での重合反応熱の蓄積が小さくてすむので重合温度を低く安定に保つことがでる。
モノマー逐次添加法の場合、まずモノマーの全使用量のうち、通常、0.01〜60質量%、好ましくは0.02〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%のモノマーを初期モノマーとして予め重合反応器内に存在させた状態で開始剤を添加して重合を開始する。初期モノマー量をこのような範囲にすると、重合開始後の初期反応において発生する反応熱除去を容易にすることができ、得られる共重合体をよりランダムな連鎖構造にすることができる。
上記初期モノマーの重合転化率を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上になるまで反応を継続すると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。その後、前記モノマーの残部を継続的に添加するが、添加の速度は重合系内のモノマーの消費速度を考慮して決定される。
通常は、初期モノマーの重合添加率が90%に達するまでの所要時間をT、初期モノマーの全使用モノマーに対する比率(%)をIとしたとき、関係式[(100−I)×T/I]で与えられる時間の0.5〜3倍、好ましくは0.8〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍となる範囲内で残部モノマーの添加が終了するように決定される。具体的には通常0.1〜30時間、好ましくは0.5時間〜5時間、より好ましくは1時間〜3時間の範囲となるように、初期モノマー量と残りモノマーの添加速度を決定する。また、モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率を上記の範囲とすると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
ラジカル重合の場合は、開始剤の存在下で、通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いることができるが、特に樹脂中への不純物等の混入等を防止する必要のある場合は、塊状重合、懸濁重合が望ましい。ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノペンタン酸、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムに代表される水溶性触媒やレドックス開始剤などが使用可能である。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下で、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
重合反応においては、重合促進剤やランダマイザー(或る1成分の連鎖が長くなるのを防止する機能を有する添加剤)などを使用できる。アニオン重合の場合には、例えば、ルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。
上記のラジカル重合やアニオン重合により得られた重合体は、例えば、スチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法で回収できる。また、重合時に、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素添加工程に使用することができる。
以下、不飽和結合の水素化方法について、更に詳細に説明する。
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体に対して、質量基準にて、通常、0.01〜100部、好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜30部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
本発明の光学素子を構成する樹脂組成物においては、上記説明した脂環式炭化水素系共重合体と共に、本発明に係る前記一般式〔I〕〜一般式〔V〕で表される酸化防止剤の少なくとも1種を含有することが1つの特徴である。
以下、本発明に係る一般式〔I〕〜一般式〔V〕で表される酸化防止剤について、その詳細を説明する。
はじめに、前記一般式〔I〕で表される酸化防止剤について説明する。
前記一般式〔I〕において、R10及びR11は各々アルキル基を表す。R12はアルキル基、−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。n1は0〜3の整数を表す。
一般式〔I〕においてR10およびR11で表されるアルキル基として、好ましくは炭素原子数1〜12個のアルキル基であり、更に好ましくは炭素原子数3〜8個のα位が分岐のアルキル基であり、特に好ましくはt−ブチル基、またはt−ペンチル基である。
12で表されるアルキル基は、直鎖でも分岐のものでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、オクタデシル基等である。このアルキル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、複素環基等が挙げられる。
12で表される−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)における、R13およびR14で表される一価の置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基等が挙げられる。これらの有機基が置換基を有する場合、この置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシルオキシ基などが挙げられる。
本発明において一般式〔I〕で表される化合物の中で好ましいのは下記の一般式〔I′〕で表される化合物である。
Figure 2005222573
式中、R15およびR16は、各々、炭素原子数3〜8個の直鎖または分岐のアルキル基を表し、特にt−ブチル基、t−ペンチル基等が好ましい。Rkはk価の有機基を表す。kは1〜6の整数を表す。
Rkで表されるk価の有機基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、多価不飽和炭化水素基(エチレン、トリメチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、2−クロロトリメチレン、プロパン−トリ−イル基、ネオペンタン−テトラ−イル基等)、脂環式炭化水素基(シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル基等)、アリール基(フェニル基等)、アリーレン基(1,2−、1,3−または1,4−フェニレン基、3,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2−t−ブチル−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、ナフチレン基等)、1,3,5−三置換ベンゼン基が挙げられる。
Rkは、更に上記の基以外に、上記基のうち任意の基を−O−、−S−、−SO2−基を介して結合したk価の有機基を包含する。
Rkは、更に好ましくは、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ペンチルフェニル基、p−オクチルフェニル基、p−ドデシルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジ−t−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル基である。
kは好ましくは、1〜4の整数である。
以下に一般式〔I〕で表される具体的化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005222573
Figure 2005222573
次に、前記一般式〔II〕で表される酸化防止剤について説明する。
一般式〔II〕において、R21は水素原子、ヒドロキシル基、オキシラジカル基、−SOR27、−SO227(R27はアルキル基またはアリール基を表す。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または−COR28(R28は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。R22、R23及びR24は各々アルキル基を表す。R25及びR26は各々、水素原子または−OCOR29(R29は一価の有機基を表す。)を表す。また、R23とR24は共同して複素環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。
一般式〔II〕において、R21で表されるアルキル基として好ましくは、炭素原子数1〜12個のアルキル基であり、アルケニル基およびアルキニル基の好ましくは炭素原子数2〜4個のアルケニル基およびアルキニル基であり、R21の好ましい基としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基および−COR28である。R28で表される一価の有機基は、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等である。
22、R23およびR24で表されるアルキル基として好ましくは、炭素原子数1〜5個の直鎖または分岐のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
25およびR26において、R29で表される1価の有機基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等である。R23およびR24が共同して形成する複素環としては、例えば、
Figure 2005222573
などが挙げられる。ここにおいて、Raは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を表す。
本発明において、一般式〔II〕で表される化合物の中で好ましいものは下記一般式〔II′〕で表されるものである。
Figure 2005222573
式中、Rbはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアシル基を表す。
Rbの更に好ましい基としては、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、プロピニル基、ベンジル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基である。
以下に一般式〔II〕で表される具体的化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005222573
Figure 2005222573
次に、前記一般式〔III〕で表される酸化防止剤について説明する。
一般式〔III〕において、R31はアルキル基又はトリアルキルシリル基を表すが、一般式〔III〕において、R31の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、オクチル、ラウリル等)又はトリアルキルシリル基(例えば、ジメチルプロピルシリル基等)が挙げられる。
一般式〔III〕において、R32、R33、R34、R35及びR36は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基又はスルホンアミド基を表す。一般式〔III〕において、R32、R33、R34、R35及びR36の例としては各々、水素原子、アルキル基(例えば、メチル、エチル、オクチル、ラウリル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブチルオキシ、オクチルオキシ等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ等)、アルケニル基(例えば、オクテニル等)、アルケニルオキシ基(例えば、オクテニルオキシ等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、パルミトイルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素等)、アルキルチオ基(例えば、オクチルチオ、ラウリルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシル基(例えば、アセチル、バレリル、ステアロイル、ベンゾイル等)、スルホンアミド基(例えば、オクチルスルホンアミド、ラウリルスルホンアミド等)が挙げられる。
また、R31〜R36のいちの二つの基が連結して5〜6員環(例えば、インダン、スピロインダン、クロマン、スピロクロマン環等)を形成してもよい。
一般式〔III〕において、R33、R35はアルコキシ基でないことが好ましい。
一般式〔III〕において好ましい化合物は、下記一般式〔IIIA〕または一般式〔IIIB〕で表される化合物である。
Figure 2005222573
上記一般式〔IIIA〕において、R37〜R40はそれぞれアルキル基を表す。
Figure 2005222573
上記一般式〔IIIB〕において、R31′〜R38′はそれぞれアルキル基を表す。
以下に、一般式〔III〕で表される具体的化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005222573
Figure 2005222573
次に、前記一般式〔IV〕で表される化合物について説明する。
一般式〔IV〕において、R41〜R45は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基又はスルホンアミド基を表す。一般式〔IV〕において、R41、R42、R43及びR44の例としては各々、水素原子、アルキル基(例えば、メチル、エチル、オクチル、ラウリル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブチルオキシ、オクチルオキシ等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ等)、アルケニル基(例えば、オクテニル等)、アルケニルオキシ基(例えば、オクテニルオキシ等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、パルミトイルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素等)、アルキルチオ基(例えば、オクチルチオ、ラウリルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシル基(例えば、アセチル、バレリル、ステアロイル、ベンゾイル等)、スルホンアミド基(例えば、オクチルスルホンアミド、ラウリルスルホンアミド等)等が挙げられる。
一般式〔IV〕において、R41及びR44が同時にアルキル基であることはない。
一般式〔IV〕において好ましい化合物は、下記一般式〔IVA〕で表される化合物である。
Figure 2005222573
上記一般式〔IVA〕において、R41′〜R43′はそれぞれアルキル基を表す。
更に好ましい化合物は、下記一般式〔IVB〕で表される化合物である。
Figure 2005222573
上記一般式〔IVB〕において、R44′〜R47′はそれぞれアルキル基を表し、Jは分岐鎖を有してもよいアルキレン基を表す。
以下に、一般式〔IV〕で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
次に、前記一般式〔V〕で表される化合物について説明する。
一般式〔V〕において、R53はアリール基または複素環基を表し、Z54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表す。但し、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の炭素数の総和は3〜6である。Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表し、Z56はアルキル基またはアリール基を表す。n5は0〜2の整数を表す。
53で表されるアリール基としては例えば、フェニル基、1−ナフチル基等が挙げられ、これらのアリール基には置換基を有しても良い。
53で表される複素環基としては、例えば2−フリル基、2−チエニル基等が挙げられる。
54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表すが、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の総和は3〜6である。
Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表すが、好ましくはS(O)n5である。また、Z56で表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、またアルール基としては、例えば、フェニル基を表し、これらの各基は更に置換基を有していてもよい。
n5は0〜2の整数を表し、好ましくは2である。
以下、一般式〔V〕で表される酸化防止剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
Figure 2005222573
本発明において、上記説明した各酸化防止剤は、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で添加することが好ましい。酸化防止剤の添加量が0.1質量部未満である場合、白濁や屈折率の変動を効果的に抑制できない。一方、酸化防止剤の添加量が10質量部を超える場合、脂環式炭化水素系共重合体の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。なお、酸化防止剤の添加量は、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して0.5〜5質量部が更に好ましく、1〜3質量部が特に好ましい。
上述のように本発明に係る酸化防止剤を添加することで、光学素子が、例えば、400nmといった短波長の光を照射されることに伴なう白濁や屈折率の変動を防止してプラスチック製光学素子の寿命を延ばすことができる。
本発明に係る樹脂組成物には、上記説明した本発明に係る酸化防止剤の他、従来公知の酸化防止剤を本発明の目的効果を損なわない範囲で使用することができ、また、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体と、(1)軟質重合体、(2)アルコール性化合物、(3)有機または無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種類の配合剤を含有することができる。これらの配合剤を配合することにより、更に、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
これらの中でも、本発明に係る酸化防止剤と共に、(1)軟質重合体及び(2)アルコール性化合物を用いることが、高温高湿度環境下における白濁防止効果、得られる樹脂組成物の透明性に優れる。
(1)軟質重合体
本発明に用いる軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であればよい。
これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、などのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、などのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
(2)アルコール性化合物
アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合又はエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。
2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α、β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。
(3)有機または無機フィラー
有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β−不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。
無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
上記(1)〜(3)に記載の化合物の配合量は、脂環式炭化水素系共重合体と配合される化合物の組み合わせによって決まるが、一般に、配合量が多すぎれば、組成物のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、光学材料として使用するのに不適である。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成形物の白濁を生じる場合がある。配合量としては、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部、特に好ましくは0.05〜2質量部の割合で配合する。配合量が少なすぎる場合には高温高湿度環境下における白濁防止効果が得られず、配合量が多すぎる場合は成形品の耐熱性、透明性が低下する。
・その他の配合剤
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、その他の配合剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などを配合することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を適宜混合することにより得ることができる。混合方法としては、炭化水素系重合体に各成分が十分に分散される方法であれば特に限定されず、例えばミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法などが挙げられる。二軸混練機を用いる場合、混錬後に通常は溶融状態で棒状に押し出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化した成形材料として用いられることが多い。
また、上記樹脂組成物は、温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックスMIが、20<MI(g/10分)<60の範囲であることが好ましい。ここで、MIの測定方法は、ASTM D1238に準拠する。MIは、さらに好ましくは30<MI(g/10分)<60である。
ここで、上記MIは、例えば、α−オレフィン、環状オレフィンの種類や、α−オレフィン及び環状オレフィンからそれぞれ誘導される構成単位の組成比の選定による結晶度の制御、可塑剤の添加といった公知方法により、調節することができる。
添加する可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、環状オレフィンの透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
次いで、本発明のプラスチック製光学素子について説明する。
本発明のプラスチック製光学素子は、前記脂環式炭化水素系共重合体または樹脂組成物からなる成形材料を成形して得られる。成形方法としては、格別な制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた光学素子を得る為には溶融成形が好ましい。溶融成形法としては、例えばプレス成形、押し出し成形、射出成形等が挙げられるが、射出成形が成形性、生産性の観点から好ましい。成形条件は使用目的、又は成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、成形品にヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、光学素子が黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
本発明のプラスチック製光学素子は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れる。
プラスチック製光学素子の具体例としては、以下のものが挙げられる。光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザービームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザー走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
これらの中でも、低複屈折性が要求される光ピックアップ装置を構成する光学系レンズやレーザー走査系レンズとして好適であり、光ピックアップ装置の光学系レンズに最も好適である。
光ピックアップ装置の光学系レンズとしては、例えば、対物レンズ、対物レンズユニット、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等として使用することができる。
対物レンズユニットは、複数の単玉光学レンズを光軸方向に一体に組み合わせて構成してなるレンズ群であり、前記複数の単玉光学レンズのうちの少なくとも一つの単玉光学レンズとして本発明のプラスチック製光学素子を使用することが好ましい。
次いで、本発明のプラスチック製光学素子を組み込んだ光ピックアップ装置について、図を交えて説明する。
図1は、本発明のプラスチック製光学素子を有する光ピックアップ装置の全体構成の一例を示す概略図である。また、図2は、本発明のプラスチック製光学素子(対物レンズ)の一例を示す側断面図である。
図1において、本発明の光ピックアップ装置1は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用するいわゆる次世代の光ディスク(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なう装置である。
光ピックアップ装置1は、光源(レーザー発振器)2から出射されるレーザ光(光)を、コリメータレンズ3、図2に記載の構成からなる対物レンズ(プラスチック製光学素子)10を通過させて、光軸4上で光情報記録媒体5の情報記録面6に集めて集光スポットを形成し、情報記録面6からの反射光を、偏向ビームスプリッタ7で取り込み、検出器8の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
光源2は、レーザダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmという2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。
コリメータレンズ3、対物レンズ(本発明のプラスチック製光学素子)10、偏向ビームスプリッタ7により、光学素子ユニットを構成している。
本発明に係る対物レンズ10は、本発明に係る樹脂組成物を射出成形で成形することにより作製される。対物レンズ10は図2に示すように、両面非球面の単レンズであり、その一方(光源側)の光学面11上に、該光学面11を通過する所定の波長の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造20を有している。
光路差付与構造20は、光学面11が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面21〜23のうち隣り合う輪帯状レンズ面21〜23は異なる屈折力を有している。
第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは、同一の光学面11上にあり、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっている。
第1輪帯状レンズ面21は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面22は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面23は、次世代光ディスクに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面21〜23を通過した光は、情報記録面6の同じ位置に集光されるようになっている。
なお、図2では、第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは同一光学面11上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面21、23とは同一光学面上に設けなくても良く、また、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくても良い。また、3つの輪帯状レンズ面21〜23は5つであっても良く、少なくとも3つ以上であれば良い。
対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を適用しているので、溶融して金型に射出して成形する際、金型の第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23の境界部分に対応する部分に確実に樹脂が行き渡っている。そのため、対物レンズ10は光路差付与構造20が高い精度で付与されている。
この様にして形成された光路差付与構造20の作用により、対物レンズ10は現行DVD、次世代光ディスクといった複数種の光情報記録媒体5に対して、光源2で出射した光の情報記録面6への集光と、情報記録面6で反射した光の検出器8へ向けての集光を高い信頼性で行なうことができる。また、対物レンズ10をなす樹脂組成物は、本発明に係る特定の構造からなる酸化防止剤を含んでいるので、次世代光ディスクの情報を再生、記録するための405nmという光を透過する場合でも、白濁や屈折率の変動がほとんど生じない。よって、光ピックアップ装置1を長期間にわたり、高いピックアップ特性で作動させることができる。
なお、本発明のプラスチック製光学素子(対物レンズ10)は、上記光路差付与構造20を有するものに限らず、例えば、図3〜図7にその一例を示す光路差付与構造20a〜20dを有する対物レンズ10a〜10eとしても良い。
図3における光路差付与構造20aは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21aからなり、複数の回折輪帯21aの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21aの光学面11aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯21aは、光軸4から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図3に示す対物レンズ10aは、いわゆる回折レンズである。
図4における光路差付与構造20bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部21bを同心円状に有している。輪帯状凹部21bは、光学面11bのうちの光軸4を中心とした一方の面(図4における光軸4を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部21bどうしは、連続して一体になっており、各輪帯状凹部21b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部21bを形成する光学面22bは、光学面11bに対して平行移動した面となっている。図4に示す対物レンズ10bはいわゆる位相差レンズである。
なお、図4では、隣り合う輪帯状凹部21bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面11bに輪帯状凹部21bを個々に設けたものとしても良い(この場合、例えば図2に示した対物レンズ10と同様の構造となる)。
また、図4では輪帯状凹部21bを同心円状に有しているとしたが、図5に示すように、図2の第3輪帯状レンズ面23上に輪帯状凸部23bを有した対物レンズ10cとしても良い(図5中、図2と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
図6における光路差付与構造20dは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21dからなり、複数の回折輪帯21dの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21dの光学面11dが不連続面である。そして、各回折輪帯21dの断面が光軸方向に沿った3段22dの階段状であり、各段22dの光学面12dが不連続面で、光軸4に対して直交する面となっている。
なお、図6に示すレンズ10dは、例えば、図7に示すように図6と同様の光路差付与構造20dを有するホログラム光学素子(HOE)10eと対物レンズ10fとで別体の構成としても良い。この場合、ホログラム光学素子10eは、平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ10fの面に光路差付与構造20dを設ける。
本発明の光ピックアップ装置1は、例えば、CD、現行DVD、次世代光ディスクの3種の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なうこととしてもよい。光ピックアップ装置1で情報の再生、記録を行なう光情報記録媒体5の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《プラスチック製光学素子の作製》
〔試料1の作製〕
脂環式炭化水素系共重合体として、ポリマー1を用いて、これを220℃に加熱溶融した後、射出成型法により、厚さ3mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレートを作製した。
Figure 2005222573
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、酸化防止剤として、下記の比較化合物(金属錯体化合物)を、ポリマー1に対し2質量%相当量を混練りして添加した以外は同様にして、試料2を作製した。
Figure 2005222573
〔試料3の作製〕
上記試料1の作製において、酸化防止剤として、加熱溶融した例示化合物I−5を、ポリマー1に対し2質量%相当量を混練りて添加した以外は同様にして、試料3を作製した。
〔試料4〜12の作製〕
上記試料3の作製において、例示化合物I−5を表1に記載の酸化防止剤に変更した以外は同様にして、試料4〜12を作製した。
《プラスチック製光学素子の評価》
〔メルトインデックスの測定〕
各試験用プレートについて、温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックスをASTM D1238で規定された方法に従って測定した。
〔試料の着色性及び透明性の評価〕
上記作製した各試験用プレートを、波長400nmによる光線透過率の測定と、透過光を介してのプラスチックの色調を目視観察し、下記の基準に従って、着色性及び透明性の評価を行った。
◎:試験用プレートは、光線透過率が95%以上で、かつ着色を呈していない
○:試験用プレートは、光線透過率が90%以上、95%未満で、かつ着色を呈していなく無色に近い
△:試験用プレートは、光線透過率が85%以上、90%未満で、ごく薄い着色を呈している
×:試験用プレートは、光線透過率が85%未満で、かつ強い着色を呈しており、実用に耐えない
〔耐久性の評価〕
23℃、55%RHの環境室内で、図1に記載の光ピックアップ装置を用いて、光源2よりレーザダイオードにより405nmの波長の光を、各試験用プレート上に、直径1cmの円形スポット光として250時間の連続照射を施した後、そのレーザー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って耐久性の評価を行った。
◎:連続照射後も、レーザー照射箇所に変質は全く認められない
○:連続照射後に、レーザー照射箇所に極弱い濁りが認められるが実用上は全く問題がない
△:連続照射後に、レーザー照射箇所に弱い白濁現象が認められるが実用上許容の範囲にある
×:連続照射後に、レーザー照射箇所に強い白濁現象が認められ、実用上問題がある
以上により得られた結果を、表1に示す。
Figure 2005222573
表1の結果より明らかなように、本発明に係る重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、本発明に係る酸化防止剤とを含む樹脂組成物を用いて成形した本発明のプラスチック製光学素子は、比較例に対し、透明性が高く、着色もなく、かつCDやDVDの記録、再生用いられるBlu−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることが分かる。
実施例2
実施例1に記載のポリマー1に代えて、ポリマー2を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様にして、試料21〜32を作製し、実施例1に記載の方法に従って同様の評価を行った結果、本発明の試料は、比較例に対し、透明性が高く、着色もなく、かつCDやDVDの記録、再生用いられるBlu−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることを確認することができた。
Figure 2005222573
実施例3
実施例1及び実施例2に記載の本発明の試料と同様の組成で、射出成型法により図2〜図7に記載の構成からなるプラスチック製光学素子(対物レンズ)を作製し、図1に記載の構成で各光ピックアップ装置を作製した。次いで、各光ピックアップ装置を用いて、レーザダイオードによる405nmの波長の光を用いて、DVDへの記録及び再生を行ったところ、本発明のプラスチック製光学素子を用いた光ピックアップ装置は、いずれも良好な特性を示した。
本発明のプラスチック製光学素子を有する光ピックアップ装置の全体構成の一例を示す概略図である。 本発明のプラスチック製光学素子(対物レンズ)の一例を示す側断面図である。 本発明の光路差付与構造を有する対物レンズの他の一例を示す側断面図である。 本発明の光路差付与構造を有する対物レンズの他の一例を示す側断面図である。 本発明の光路差付与構造を有する対物レンズの他の一例を示す側断面図である。 本発明の光路差付与構造を有する対物レンズの他の一例を示す側断面図である。 本発明の光路差付与構造を有するホログラム光学素子及び対物レンズとから構成される一例を示す側断面図である。
符号の説明
1 光ピックアップ装置
2 光源
4 光軸
5 光情報記録媒体
10、10a、10b、10c、10d、10f 対物レンズ(プラスチック製光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b 輪帯状凸部

Claims (24)

  1. 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
    重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔I〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
    Figure 2005222573
    〔一般式(1)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)〜一般式(4)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表し、少なくともn2は1質量%以上、10質量%未満を表す。〕
    Figure 2005222573
    〔式中、R10及びR11は各々アルキル基を表す。R12はアルキル基、−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。n1は0〜3の整数を表す。〕
  2. 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
    重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔II〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
    Figure 2005222573
    〔式中、R21は水素原子、ヒドロキシル基、オキシラジカル基、−SOR27、−SO227(R27はアルキル基またはアリール基を表す。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または−COR28(R28は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。R22、R23及びR24は各々アルキル基を表す。R25及びR26は各々、水素原子または−OCOR29(R29は一価の有機基を表す。)を表す。また、R23とR24は共同して複素環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。〕
  3. 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
    重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔III〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
    Figure 2005222573
    〔式中、R31はアルキル基またはトリアルキルシリル基を表し、R32、R33、R34、R35及びR36は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R31〜R36のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。〕
  4. 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
    重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔IV〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
    Figure 2005222573
    〔式中、R41、R42、R43、R44及びR45は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R41〜R45のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。ただし、R41及びR44がいずれもアルキル基であることはない。〕
  5. 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
    重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔V〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とするプラスチック製光学素子。
    Figure 2005222573
    〔式中、R53はアリール基または複素環基を表し、Z54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表す。但し、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の炭素数の総和は3〜6である。Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表し、Z56はアルキル基またはアリール基を表す。n5は0〜2の整数を表す。〕
  6. 前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  7. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  8. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  9. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
    該複数の回折輪帯のうち少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  10. 前記光源から出射される光の波長は、390nm〜420nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  11. 前記光源から出射される光を、光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  12. 複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
  13. 複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
    該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔I〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
    Figure 2005222573
    〔一般式(1)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)〜一般式(4)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表し、少なくともn2は1質量%以上、10質量%未満を表す。〕
    Figure 2005222573
    〔式中、R10及びR11は各々アルキル基を表す。R12はアルキル基、−NHR13、−SR13(R13は一価の有機基を表す。)または−COOR14(R14は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。n1は0〜3の整数を表す。〕
  14. 複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
    該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔II〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
    Figure 2005222573
    〔式中、R21は水素原子、ヒドロキシル基、オキシラジカル基、−SOR27、−SO227(R27はアルキル基またはアリール基を表す。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または−COR28(R28は水素原子または一価の有機基を表す。)を表す。R22、R23及びR24は各々アルキル基を表す。R25及びR26は各々、水素原子または−OCOR29(R29は一価の有機基を表す。)を表す。また、R23とR24は共同して複素環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。〕
  15. 複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
    該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔III〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
    Figure 2005222573
    〔式中、R31はアルキル基またはトリアルキルシリル基を表し、R32、R33、R34、R35及びR36は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R31〜R36のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。〕
  16. 複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
    該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔IV〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
    Figure 2005222573
    〔式中、R41、R42、R43、R44及びR45は各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基またはスルホンアミド基を表す。R41〜R45のうちの二つの基が連結して5〜6員環を形成しても良い。ただし、R41及びR44がいずれもアルキル基であることはない。〕
  17. 複数の光学素子を備えるとともに、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
    該光学素子の少なくとも1つが、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)、前記一般式(3)及び前記一般式(4)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式〔V〕で表される酸化防止剤とを含み、かつ温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minの範囲にある樹脂組成物を成形してなり、
    少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の波長の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有しているプラスチック製光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。
    Figure 2005222573
    〔式中、R53はアリール基または複素環基を表し、Z54及びZ55はそれぞれ炭素数1〜3のアルキレン基を表す。但し、Z54及びZ55で表されるアルキレン基の炭素数の総和は3〜6である。Aは、酸素原子、N−Z56、S(O)n5を表し、Z56はアルキル基またはアリール基を表す。n5は0〜2の整数を表す。〕
  18. 前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  19. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  20. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  21. 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、該複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
    該複数の回折輪帯のうち少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  22. 前記光源は、波長390nm〜420nmの光を出射することを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  23. 前記プラスチック製光学素子は、前記光源から出射される光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  24. 前記プラスチック製光学素子は、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
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US11130724B2 (en) 2015-12-25 2021-09-28 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Compound, resin, composition, resist pattern formation method, and circuit pattern formation method

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